説明

ダクト継手およびダクト構造

【課題】ダクトを高所に取付ける場合にあっても、高所でのダクトの切欠き作業を省略させて作業性を向上させる。
【解決手段】被固定部30に取付部材10を介して取付けられ、筒状ダクト20の端部同士を連結するためのダクト継手1であって、2分割された一対の継手半体2、3と、断面環状になるように各継手半体2、3の周方向の端部2b、3b同士を係脱可能に連結する連結手段と、前記各継手半体2、3の周方向の端部2b、3b同士のうちの少なくとも片方3bに設けられ、前記取付部材10を挿通させるための切欠部7とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機の室内機と室外機とを繋ぐ配管や配線が室外へ導出された部分を覆うためのダクトを連結するダクト継手およびダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した配管や配線をダクトにより覆う作業は、壁等の被固定部に取付金具を取付け、その取付金具にダクトを取付けて固定し、例えば特許文献1等のダクト継手を用いてダクト同士を連結するように行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−316851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したダクトを被固定部に取付ける作業には、被固定部に取付けた取付金具をダクトに挿通させるための切欠きをダクトに形成する作業を必要とする。この作業を行うに際し、ダクトを高所に取付けることが多く、その場合にあっては、例えば高所でダクトを持ちながら取付金具の取付け高さ位置に応じたダクトの位置に切欠きを形成する作業を必要とし、作業性が悪い状態となっていた。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたもので、ダクトを高所に取付ける場合にあっても、高所でのダクトの切欠き作業を省略させて作業性を向上させることが可能なダクト継手およびダクト構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のダクト継手は、被固定部に取付部材を介して取付けられ、筒状ダクトの端部同士を連結するためのダクト継手であって、2分割された一対の継手半体と、断面環状になるように各継手半体の周方向の一端同士を係脱可能に連結する連結手段と、前記各継手半体の周方向の一端同士のうちの少なくとも片方に設けられ、前記取付部材を挿通させるための切欠部または切欠予定部とを具備することを特徴とする。本発明による場合には、取付部材を挿通させるための切欠部(または切欠予定部)がダクト継手に設けられているので、被固定部に取付部材を取付け、その取付部材に切欠部(または挿通前に切欠予定部を切欠いた切欠部)を挿通させることで、被固定部にダクト継手を取付けることができる。このとき、ダクト継手の切欠部及び取付部材を配置する高さ位置が、このダクト継手に連結されるダクトの長さに応じて予め決まっているので、ダクトの取付け箇所が高所であっても、従来のように高所でのダクトの切欠き作業を必要とせず、作業性を向上させ得る。また、取付けたダクト継手にダクトを連結すればよく、ダクト同士の連結も簡単に行うことができる。なお、切欠予定部に対しては、ダクトの取付け前に、低いところで切欠予定部を切欠いて切欠部を形成すればよい。
【0007】
この構成のダクト継手において、前記切欠予定部は、前記取付部材のサイズに対応した複数の切欠き深さとする目印として複数設けられている構成にすることができる。この構成による場合には、切欠きを要する切欠予定部を有するダクト継手において、用いる取付部材のサイズが設置現場において判明したとき、当該取付部材のサイズに対応する目印に基づいて切欠きを形成すれば、取付部材に応じた切欠部を形成することができる。よって、切欠部が小さい場合の再度の切欠き作業を不要にでき、また切欠部が大きい場合の隙間からのゴミ等の侵入を抑制することができる。
【0008】
また、この構成のダクト継手において、更に、前記各継手半体の周方向の他端同士を連結するヒンジを有する構成とすることが好ましい。この構成による場合には、ヒンジで両継手半体が繋がっているので、両継手半体の連結手段側を大きく広げた状態に保持することができ、これによってダクト継手の取付け作業性を向上させ得る。また、作業者が両継手半体をそれぞれ保持する必要がない。
【0009】
また、本発明のダクト構造は、上述したダクト継手が被固定部に取付部材を介して取付けられ、そのダクト継手の両端部にそれぞれダクトが連結された構造である。このダクト構造においても上述したダクト継手と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による場合には、取付部材を挿通させるための切欠部(または切欠予定部)がダクト継手に設けられているので、そのダクト継手の切欠部(または切欠予定部)を配置する被固定部の箇所に取付部材を取付け、その取付部材に切欠部(または低い箇所で切欠予定部を切欠いた切欠部)を挿通させることで、被固定部にダクト継手を取付けることができる。よって、ダクトの取付け箇所が高所であっても、従来のように高所でのダクトの切欠き作業を必要としないため、作業性を向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施:形態に係るダクト継手を被固定部に取付けた状態を示す斜視図である。
【図2】図1のダクト継手を示す分解斜視図である。
【図3】図1のダクト継手を用いてダクト同士を連結した状態を示す正面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】図4のA−A線による断面図である。
【図6】図1のダクト継手を示す正面図である。
【図7】図6の右側面図である。
【図8】図6の平面図である。
【図9】図6の底面図である。
【図10】図6のB−B線による断面図である。
【図11】図6のC−C線による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施:形態に係るダクト継手を被固定部に取付けた状態を示す斜視図であり、図2はそのダクト継手を示す分解斜視図、図3は図1のダクト継手を用いてダクト同士を連結した状態を示す正面図、図4は図3の平面図、図5は図4のA−A線による断面図、図6は図1のダクト継手を示す正面図、図7は図6の右側面図、図8は図6の平面図、図9は図6の底面図、図10は図6のB−B線による断面図、図11は図6のC−C線による断面図である。なお、図1及び図2においては、図3及び図5に示す上下に配したダクトのうち上側のダクトを省略して表している。
【0014】
このダクト継手1は、被固定部としての壁30に取付けられた取付部材10に固定される。そして、このダクト継手1には、下側のダクト20と上側のダクト21とが連結されることにより、壁30に対してダクト20、21を固定することができる。このように壁30に取付部材10を介して取付けられたダクト継手1の両端部にそれぞれダクト20、21を連結することで、本発明の一実施形態に係るダクト構造が得られる。
【0015】
取付部材10は、例えば金属製のもので、壁30に固定される固定部11と、この固定部11に繋がる脚部12と、この脚部12に繋がる配管支持部13とを有する(図4参照)。なお、取付部材10は、金属製に限らない。
【0016】
上記脚部12は、固定部11から配管支持部13へ延びる延出片11aと、配管支持部13から固定部11へ延びる一対の延出片13aとを一部重ならせ、その重なる部分をボルト14aとナット14bとにより締結して構成される。前記配管支持部13は、環状に形成されていて、その内側に配管や配線などが挿通される。この図示例では、3つの配管31と1つの配線32とが配管支持部13の内側を挿通し、配管支持部13により支持されている。
【0017】
ダクト20、21は、公知のものであって同一構成であり、周方向の一箇所で長手方向の全長に亘って分断されていて、その分断部の一方の縁に被係止部20a、21aが形成され、前記分断部の他方の縁に、前記被係止部20a、21aに係脱可能に係止される係止部20b、21bが形成されている(図2参照)。
【0018】
各ダクト20、21は、前記配管31及び配線32を覆うとき、被係止部20a、21aと係止部20b、21bとの係止状態を解いて内部に入れ、内部に前記配管31等が入った後に、被係止部20a、21aと係止部20b、21bとを係止させることで前記配管31等に取付けられる。
【0019】
前記ダクト継手1は、2分割された一対の継手半体2、3と、断面環状になるように各継手半体2、3の周方向の端部2a、3a同士を連結するヒンジ4と、各継手半体2、3の周方向の端部2b、3b同士を係脱可能に連結する連結手段5と、前記各継手半体2、3の周方向の端部2b、3b同士のうちの片方、図示例では端部3bに設けられた切欠予定部6とを具備する。このダクト継手1は、軸心方向の長さが、例えば15cm以下であって、切欠予定部6の位置は所定の位置、例えばダクト継手1の長さ方向の中央位置に配設されている。
【0020】
各継手半体2、3は、それぞれ本実施形態においては断面を半円状に形成されていて、後で詳述する連結手段5により端部2b、3b同士を連結することにより、断面が円形になる。なお、各継手半体2、3は、断面半円状である必要はなく、各継手半体2、3の一方が半円よりも小さく、他方が半円よりも大きいものであってもよい。また、ダクト継手1の断面形状は円形に限られるものでもない。
【0021】
ヒンジ4は、継手半体2の端部2aに設けた一対の突起2cと、両突起2cの間に設けられ、突起2cに両端が繋がった軸部2dと、継手半体3の端部3aに設けられ、前記軸部2dに取付けられる凹部3cを有する係止片3iとにより構成される(図6、図8、図11参照)。
【0022】
前記軸部2dは、ダクト継手1の軸心方向と平行に形成されていて、前記凹部3cの前記軸心方向の長さ寸法は、一対の突起2cの離隔距離よりも少し短く形成されている。この凹部3cの内奥部は、軸部2dの半径と同じ曲率半径の円弧状に形成され、その開口側は軸部2dの直径よりも少し狭く形成されていて、軸部2dに凹部3cを嵌め込むと、凹部3cが軸部2dに係止された状態で回動し得るようになっている。この回動により、各継手半体2、3は、互いに開閉し得る。なお、軸部2dから凹部3cを外すことにより、継手半体2と継手半体3とを分離させ得る。但し、これら2つの継手半体2と継手半体3とが、分離しない構成としてもよい。
【0023】
連結手段5は、継手半体3の他端3bに設けられた貫通孔3dと、継手半体2の他端2bの外側に設けられた連結突起2eとで構成される(図9参照)。継手半体2の端部2b側は、継手半体3の端部3bに重なるように周方向に延出していて、その延出した部分に前記連結突起2eが設けられている。前記貫通孔3dは、例えば矩形の長孔状に形成されており、一方の連結突起2eは貫通孔3dに入る断面矩形状に形成されている。この連結手段5において、前記連結突起2eを貫通孔3dに嵌入させることにより継手半体3の端部3bと継手半体2の端部2bとが連結される。逆に連結突起2eを貫通孔3dから抜くと、継手半体3の端部3bと継手半体2の端部2bとの連結が解除される。なお、貫通孔3dの形状と連結突起2eの断面形状は、矩形状に限らず、他の形状(例えば円形など)にしてもよい。また、貫通孔3dと連結突起2eの個数は1つに限らず、複数個にしてもよい。
【0024】
切欠予定部6は、継手半体3の端部3bに設けられていて、容易に切欠くことができるように、切欠予定部6の周辺部よりも薄肉に形成されている。この切欠予定部6は、例えば図10に示すように、継手半体3の端部3bの縁3hに直交する2つの切込み部6a、6aと、縁3hから少し離れていて両切込み部6a、6aに繋がる、縁3hに平行な切込み部6bとで囲まれる箇所である。切込み部6bが本実施形態における目印に相当する。この切欠予定部6は、2つの切込み部6a、6aを挟み等で切込み、切欠予定部6を指等で折り曲げることで、所定の大きさの凹状の切欠部7になり(図2参照)、この切欠部7に前記取付部材10の脚部12が挿通される。
【0025】
継手半体2の内面側には、ダクト20、21の端部を止めるストッパ2f、2gが形成され、一方の継手半体3の内面側にも、ダクト20、21の端部を止めるストッパ3f、3gが形成されている(図5、図7、図11参照)。これらストッパ2f、2g、3f、3gは、内側に周方向に沿って突出形成されていて、ダクト20、21の端部を所定深さまで挿入することを可能とするものである。図5においては、上側のストッパ3f(2f)で上側のダクト21の端部の位置を規制し、下側のストッパ3g(2g)で下側のダクト20の端部の位置を規制している。
【0026】
このように構成された本実施形態におけるダクト継手1による場合には、取付部材10を挿通させるための切欠予定部5がダクト継手1に設けられているので、そのダクト継手1の切欠予定部5を配置する被固定部30の箇所に取付部材10を取付ける。この取付けと前後して、例えば地面上の低い箇所で切欠予定部6を切欠いて切欠部7を形成する。そして、取付部材10に切欠部7を挿通させることで、被固定部30にダクト継手1を取付けることができる。このとき、ダクト継手1に連結されるダクト、例えば下側のダクト20(または上側のダクト21)の長さは、予め定まっているので、それに応じて取付部材10やダクト継手1の切欠部7を配置する高さ位置も決まっているため、ダクト20、21の取付け箇所が高所であっても、従来のように高所でのダクトの切欠き作業を必要とせず、作業性を向上させ得る。また、取付けたダクト継手1にダクト20、21を連結すればよく、ダクト20、21同士の連結も簡単に行うことができる。更に、取付部材10に切欠部7を挿通させるとき、ヒンジ4で両継手半体2、3が繋がっているので、両継手半体2、3の連結手段5側を大きく広げた状態に保持することができ、これによってダクト継手1の取付け作業性を向上させ得る。更にまた、本実施形態におけるダクト継手1にあっては、切欠予定部6を切欠いて切欠部7を形成する構成であるので、ダクト継手1を単に2つのダクト20、21の連結に用い、取付部材10を切欠部7に挿通する必要が無い場合には、切欠予定部6をそのまま残すこともできるため、部品の共通化が図れる。つまり、切欠部7が設けられたダクト継手と、切欠部7が無いダクト継手との両方を用意する必要がない。
【0027】
なお、上述した実施形態においては、切欠予定部6を切欠いて所定の大きさの切欠部7を形成する構成としているが、本発明はこれに限らず、切欠予定部の切欠く深さを変えることで、より大きな或いはより小さな切欠部を形成させることも可能である。その場合において、異なる深さの切欠きを寸法的に正確に形成することを可能とすべく、切欠予定部に、前記縁3hと平行に複数の目印を形成しておくことが好ましい。これら複数の目印の位置を、取付部材10のサイズ、具体的には脚部12の厚みW(図4参照)に応じて形成しておくことで、用いる取付部材10のサイズが設置現場において判明したとき、当該取付部材10のサイズに対応する目印に基づいて切欠くことで、取付部材10に応じた切欠部7を形成することができる。よって、切欠部が小さい場合の再度の切欠き作業を不要にでき、また切欠部が大きい場合の隙間からのゴミ等の侵入を抑制することができる。
【0028】
また、上述した実施形態においては、切欠予定部6または切欠部を継手半体3の端部3bに設けているが、本発明はこれに限らず、前記継手半体3の端部3bと、その端部3bに連結される継手半体2の端部2bとの両方に跨るように、切欠予定部6または切欠部を設けてもよい。
【0029】
更に、上述した実施形態においては、継手半体3の端部3aの縁部に切欠予定部6を設けているが、本発明は、これに限らない。例えば、継手半体3の端部3aの縁部と、継手半体2の端部2aの縁部とに跨るように切欠予定部6を設けてもよい。また、本発明は、切欠予定部6に代えて、貫通状態の切欠部7をダクト継手に設けてもよい。
【0030】
更にまた、上述した実施形態においては、継手半体2の端部2aと継手半体3の端部3aとを連結するようにヒンジ4を設けた構成としているが、本発明はこれに限らない。例えば、継手半体2の端部2aと継手半体3の端部3aとが、上述した連結手段5(貫通孔3dと連結突起2eとで構成される)により連結される構成にも同様に適用される。また、本発明は、ダクト継手の周方向の1箇所が分断された構成、例えば端部2bと端部3bとの1箇所だけが分断され、端部2aと端部3aとの部分が分断されずに繋がった構成にも同様に適用される。
【符号の説明】
【0031】
1 ダクト継手
2、3 継手半体
2a、3a 端部(他端)
2b、3b 端部(一端)
4 ヒンジ
5 連結手段
6 切欠予定部
7 切欠部
10 取付部材
20、21 ダクト
30 壁(被固定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定部(30)に取付部材(10)を介して取付けられ、筒状ダクト(20、21)の端部同士を連結するためのダクト継手であって、
2分割された一対の継手半体(2、3)と、
断面環状になるように各継手半体(2、3)の周方向の一端(2b、3b)同士を係脱可能に連結する連結手段(5)と、
前記各継手半体(2、3)の周方向の一端(2b、3b)同士のうちの少なくとも片方に設けられ、前記取付部材(10)を挿通させるための切欠部(7)または切欠予定部(6)とを具備することを特徴とするダクト継手。
【請求項2】
請求項1に記載のダクト継手において、
前記切欠予定部(6)は、前記取付部材(10)のサイズに対応した複数の切欠き深さとする目印として複数設けられていることを特徴とするダクト継手。
【請求項3】
請求項1または2に記載のダクト継手において、
更に、前記各継手半体(2、3)の周方向の他端(2a、3a)同士を連結するヒンジ(4)を有することを特徴とするダクト継手。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載のダクト継手が被固定部(30)に前記取付部材(10)を介して取付けられ、そのダクト継手の両端部にそれぞれダクト(20、21)が連結されるダクト構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−237007(P2011−237007A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110682(P2010−110682)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【出願人】(393024717)オーケー器材株式会社 (58)
【Fターム(参考)】