説明

チップの保持構造、ダイソート用シート及び半導体装置の製造方法

【課題】 チップの脱落なく保管・搬送が可能であり、数十日の保管期間を経た後にチップをピックアップする際には、厚みの薄いチップであっても破損することなく容易にピックアップが可能であるチップの保持構造を提供すること。
【解決手段】 本発明のチップの保持構造は、基材フィルムと、その上に形成された自着性樹脂層とからなるダイソート用シートにチップが保持されているチップの保持構造において、前記自着性樹脂層の23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.5〜200MPaであり、前記自着性樹脂層の表面粗さ(Ra)が1μm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自着性樹脂層を有するダイソート用シートにてチップを搬送または保管する際のチップの保持構造、基材フィルムとその上に形成された自着性樹脂層とからなるダイソート用シート及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一つに、所要の前処理を経て回路が形成された半導体ウエハを複数個のチップに切断分離するダイシング工程がある。この工程では、リングフレームと呼ばれる円形または方形の枠に、半導体ウエハ固定用のダイシングシートを貼着し、このダイシングシートに半導体ウエハを添付し、回路毎にダイシングし、半導体チップとする。その後、ボンディングマシンによるエキスパンド工程に続いて、たとえばエポキシ樹脂等のダイボンド用接着剤をチップ用基板のパッド部に塗布して半導体チップをチップ用基板に接着するダイボンディング工程が行われる。さらに、ワイヤボンディング工程や検査工程などを経て、最終的にモールディング工程で樹脂封止を行い、半導体装置が製造される。
【0003】
一方、個片化された半導体チップをダイボンドせずに、収容・搬送することもある。なお、このような場合はアウトラインにてダイボンディング工程が行われる。
【0004】
このような半導体チップの収容・搬送には、熱可塑性樹脂シートにポケット状凹部をエンボス加工により形成した、リール状のエンボスキャリアテープやチップトレイ等が用いられている。この凹部に半導体チップを収容後、カバーシートで被覆して、半導体チップを電子装置に組み込むまで保管・搬送する。このようなエンボスキャリアテープを用いることによりダイシング工程後、良品のみを選り分けて出荷することができ、更に1枚の半導体ウエハから複数の工場への出荷も可能となる。
【0005】
しかしながら、半導体装置では埃・汚れ等が不具合を起こす原因となるため、半導体チップが搬送された場所で、これを使用する前に水洗浄することもある。エンボスキャリアテープを用いたときは、再度ダイシングテープ等に固定し洗浄する必要があるため、大変非効率的である。
【0006】
これに対して、熱剥離テープや汎用ダイシングテープ等の粘着テープを用いて半導体チップをマウントし、半導体チップを収容・搬送するという手法も用いられている(特許文献1)。この場合は、粘着テープの粘着剤層に半導体チップが貼付され、保管・搬送される。
【0007】
しかしながら、半導体チップの保管は数十日におよぶこともあり、特許文献1の粘着テープでは、粘着剤層の粘着力が大きい場合には保管・搬送のための時間の経過と共に、半導体チップが粘着剤層に密着してしまう。その結果、半導体チップのピックアップ作業が困難となり、特に半導体チップが薄い場合には、ピックアップ作業中に半導体チップを破損する危険があった。また、粘着剤層の粘着力が小さい場合には保管・搬送中に半導体チップが脱落する危険があった。
【特許文献1】特開2000−95291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものである。すなわち、本発明は、チップの脱落なく保管・搬送が可能であり、数十日の保管期間を経た後にチップをピックアップする際には、厚みの薄いチップであっても破損することなく容易にピックアップが可能であるチップの保持構造を提供することを目的としている。また、本発明は、該保持構造の構成に用いられるダイソート用シート、及び該保持構造を経由する工程を含む半導体装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下の通りである。
(1)基材フィルムと、その上に形成された自着性樹脂層とからなるダイソート用シートにチップが保持されているチップの保持構造において、
前記自着性樹脂層の23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.5〜200MPaであり、
前記自着性樹脂層の表面粗さ(Ra)が1μm以下であるチップの保持構造。
(2)前記自着性樹脂層が50〜2000mN/25mmのループタック値を有する(1)に記載のチップの保持構造。
(3)基材フィルムとその上に形成された自着性樹脂層とからなり、
前記自着性樹脂層の23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.5〜200MPaであり、その表面粗さ(Ra)が1μm以下であるダイソート用シート。
(4)前記自着性樹脂層が、エネルギー線硬化性樹脂の硬化物からなる(3)に記載のダイソート用シートであって、
前記自着性樹脂層のエネルギー線照射後の23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.5〜200MPaであり、その表面粗さ(Ra)が1μm以下であるダイソート用シート。
(5)上記(1)または(2)に記載のチップの保持構造において、半導体チップを搬送もしくは保管する工程、および該チップをダイソート用シートからピックアップする工程を含む半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チップの保持構造を形成するダイソート用シートにおける自着性樹脂層の貯蔵弾性率及び表面粗さを最適化することによって、チップの脱落なく搬送・保管が可能であり、数十日の保管期間を経た後にチップをピックアップする際には、厚みの薄いチップであっても破損することなく容易にピックアップが可能であるチップの保持構造が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。
本発明に係るチップの保持構造は、図1に示すように、基材フィルム10と、その一方の面に形成された自着性樹脂層20とを有するダイソート用シートの自着性樹脂層20にチップ30が保持されてなることを特徴とする。また、本発明に係るダイソート用シートは、基材フィルム10と、その一方の面に自着性樹脂層20とを有する。このようなダイソート用シートは、自着性樹脂層20にチップ30が保持され、外周部がリングフレーム40に固定されて搬送、保管される。さらにまた、本発明に係る半導体装置の製造方法は、該チップの保持構造においてチップを搬送、保管する工程と該チップをダイソート用シートからピックアップする工程とを有する。
【0012】
基材フィルム10としては特に制限はなく、各種粘着シートの基材フィルムとして慣用されているものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢ビフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、フッ素樹脂フィルム等のプラスチックシートが用いられる。
【0013】
基材フィルムは、これらのプラスチックシートの積層フィルムであってもよいし、架橋されたフィルムであってもよい。また、無色であっても有色であってもよい。さらに、後述する自着性樹脂層を形成する際にエネルギー線を照射する場合は、使用するエネルギー線に対し透過性を有していれば、基材フィルムは透明であっても不透明であってもよい。
【0014】
基材フィルムの厚さは、使用目的や状況に応じて適宜定めればよいが、通常50〜300μm、好ましくは60〜200μmの範囲である。
【0015】
また、この基材フィルムの表面には、その上に設けられる自着性樹脂層との接着性を向上させる目的で、所望により、サンドブラストや溶剤処理などによる凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理などの酸化処理などを施すことができる。また、プライマー処理を施すこともできる。
【0016】
自着性樹脂層20は、粘着剤特有のべとつき感はほとんど有さないが、チップを仮着し、保持できる程度のタックを有する樹脂層である。本発明に係るチップ保持構造における自着性樹脂層は、チップが貼付され、搬送・保管する際、すなわちチップを保持している状態での貯蔵弾性率(G’)(23℃)が、0.5〜200MPa、好ましくは1〜180MPa、さらに好ましくは2〜100MPaである。チップ貼付時およびチップのピックアップ時における自着性樹脂層の貯蔵弾性率は特に限定されないが、上記と同様であることが好ましい。
【0017】
自着性樹脂層の23℃における貯蔵弾性率が上記範囲より高い場合には、チップの密着性が悪く、チップを安定して保持できないという不具合を生じる。また、チップを仮着できたとしても搬送、保管、水洗浄中にチップが脱落するという不具合を生じる。一方、貯蔵弾性率が上記範囲より低い場合には、チップの保持は容易であるが、チップの密着性が高くなりすぎ、ピックアップが困難になる不具合を生じる。
【0018】
また、自着性樹脂層の表面粗さ(Ra)は1μm以下、好ましくは0.7μm以下、さらに好ましくは0.0001〜0.2μmの範囲である。
【0019】
自着性樹脂層の表面粗さ(Ra)が上記範囲よりも大きい場合には、チップの保持性が悪く、また、チップを仮着できたとしても搬送、保管、水洗浄中にチップが脱落するという不具合を生じる。
【0020】
チップが脱落することなく搬送、保管、水洗浄し、チップが破損することなく容易にピックアップするためには、自着性樹脂層の貯蔵弾性率と表面粗さのコントロールが重要である。
【0021】
上記範囲よりも自着性樹脂層の貯蔵弾性率が高い場合、もしくは表面粗さが大きい場合には、搬送中にチップが脱落する不具合を生じる。
また、上記範囲よりも自着性樹脂層の貯蔵弾性率が低い場合には、ピックアップすることができず、特にチップの厚みが薄い場合にチップ破損の危険がある。
さらにまた、上記範囲よりも自着性樹脂層の貯蔵弾性率が低く、表面粗さが大きい場合には、搬送中にチップが脱落する不具合は生じないが、チップの保管期間が数十日以上経過後にピックアップする場合、自着性樹脂層とチップとが密着性が増大しピックアップが困難となり、特にチップの厚みが薄い場合にチップ破損の危険がある。
【0022】
本発明に係るチップ保持構造における自着性樹脂層は、チップが貼付され、搬送・保管する際、すなわちチップを保持している状態でのループタック値が好ましくは50〜2000mN/25mm、さらに好ましくは70〜1500mN/25mmの範囲である。
【0023】
ループタック値が上記範囲より大きいと、ピックアップが困難になる場合がある。ループタック値が上記範囲より小さいと、仮着したチップとの密着性が悪く、搬送、水洗浄中にチップが脱落する場合がある。
【0024】
自着性樹脂層の厚さは、1〜50μm、好ましくは3〜30μmである。
【0025】
このような自着性樹脂層を構成する樹脂材料は、上記特性を有する限り特に限定はされないが、一例として、粘着剤として汎用されているアクリル酸エステル共重合体が挙げられる。アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、100,000以上であり、好ましくは100,000〜1,500,000であり、特に好ましくは150,000〜1,000,000である。アクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルモノマーあるいはその誘導体等から導かれる構成単位からなる。(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。(メタ)アクリル酸エステルモノマーの誘導体としては、ジメチルアクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド等のジアルキル(メタ)アクリルアミドがあげられる。これらの中でも、特に好ましくはメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド等である。これらのモノマーの他に、酢酸ビニル、スチレン、ビニルアセテート等が共重合されていてもよい。
【0026】
官能基を有するアクリル酸エステル共重合体としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート等のヒドロキシル基含有アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有化合物を構成単位として有する。
【0027】
アクリル酸エステル共重合体は、粘着剤として汎用される重合体であり、多くの場合、粘着剤特有のべとつき感を有する。本発明の自着性樹脂層として使用する場合には、架橋剤で部分架橋し、べとつき感を抑え、前述した貯蔵弾性値を有するように調整する。架橋剤としては、有機多価イソシアナート化合物、有機多価エポキシ化合物、有機多価イミン化合物等があげられる。
【0028】
一般に架橋剤の使用量が多くなると、アクリル酸エステル共重合体のべとつき感は低下し、貯蔵弾性率は上昇する。
【0029】
また、アクリル酸エステル共重合体にエネルギー線重合性化合物と必要に応じ光重合開始剤とを配合したエネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて、自着性樹脂層を形成してもよい。
【0030】
エネルギー線重合性化合物としては、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系などエネルギー線重合性のオリゴマーや、エネルギー線重合性のモノマーが用いられる。エネルギー線重合性のモノマーとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレートなどの脂環式化合物、フェニルヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノールエチレンオキシド変性アクリレートなどの芳香族化合物、もしくはテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリンアクリレート、N−ビニルピロリドンまたはN−ビニルカプロラクタムなどの複素環式化合物が挙げられる。また必要に応じて、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどの3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能型などの多官能(メタ)アクリレートを用いてもよい。このようなエネルギー線重合性化合物は単独で、あるいは複数を組合せて用いても良い。
【0031】
これらの中でも特に、ウレタンアクリレート系オリゴマーが好ましく用いられる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物たとえば2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナートなどを反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレートたとえば2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなどを反応させて得られる。このようなウレタンアクリレート系オリゴマーは、分子内にエネルギー線重合性の二重結合を有し、エネルギー線照射により重合硬化する。ウレタンアクリレート系オリゴマーとしては、重量平均分子量が100〜50000のものが好ましく、1000〜30000のものが特に好ましい。
【0032】
光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが例示できる。エネルギー線として紫外線を用いる場合に、光重合開始剤を配合することにより照射時間、照射量を少なくすることができる。
【0033】
また、側鎖にエネルギー線重合性基を有するアクリル酸エステル共重合体(エネルギー線重合性粘着性重合体)と必要に応じ光重合開始剤とを配合したものをエネルギー線硬化性樹脂組成物として用いて、自着性樹脂層を形成してもよい。エネルギー線重合性粘着性重合体は、たとえば、官能基を有するアクリル酸エステル共重合体と、該官能基に反応する置換基とエネルギー線重合性基を1分子中に有する重合性基含有化合物(エネルギー線重合性基含有化合物)とを反応させて得られる。官能基を有するアクリル酸エステル共重合体としては、上記アクリル酸エステル共重合体で挙げた官能基モノマーを構成単位として有するアクリル酸エステル共重合体が用いられる。エネルギー線重合性基含有化合物としては、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアナート、メタクリロイルイソシアナート、アリルイソシアナート、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。官能基を有するアクリル酸エステル共重合体と該官能基に反応する置換基を有する重合性含有化合物との反応は、通常、酢酸エチル等の溶液中でジブチル錫ラウレート等の触媒を用いて室温、常圧にて24時間撹拌して行われる。
【0034】
上記のようのエネルギー線硬化性樹脂組成物にエネルギー線照射を行うと、エネルギー線重合性化合物またはエネルギー線重合性粘着性重合体が硬化し、粘着剤特有のべとつき感が失われ、貯蔵弾性率が増加する。
【0035】
このように、自着性樹脂層の貯蔵弾性率やループタック値は、樹脂層を構成する樹脂材料の架橋度や、エネルギー線重合性化合物あるいはエネルギー線重合性粘着性重合体の配合量を適宜に選択することで調整することができる。
【0036】
また、自着性樹脂層の表面粗さを制御する方法としては、自着性樹脂層形成時にエンボス剥離フィルムを貼り合わせる方法、自着性樹脂組成物の乾燥時に組成物中の発泡剤が発砲する方法等が挙げられるが、剥離フィルムを貼り合わせる方法が好ましい。さらに好ましくは、溶剤に希釈した自着性樹脂を剥離フィルムに塗布し、乾燥させることで自着性樹脂層を形成する方法である。
【0037】
一般に、剥離フィルム上に自着性樹脂を塗布すると、剥離フィルム表面の凹凸に自着性樹脂が埋め込まれ、自着性樹脂が乾燥すると、剥離フィルム表面の凹凸がほぼ忠実に転写された自着性樹脂層を得ることができる。したがって、表面粗さの大きな剥離フィルムを用いると、表面粗さ(Ra)の大きな自着性樹脂層が形成される。また、表面粗さの小さな剥離フィルムを用いると、表面粗さ(Ra)の小さな自着性樹脂層が形成される。
【0038】
つまり、自着性樹脂層の表面粗さ(Ra)は、剥離フィルムの剥離処理面の表面粗さとほぼ等しいが、自着性樹脂層の経時的変化あるいはエネルギー線照射時の体積変動により、自着性樹脂層の表面粗さは変化することがある。
【0039】
自着性樹脂層がエネルギー線硬化性を有しない樹脂組成物から形成される場合には、前記のように所定の貯蔵弾性率を有するように架橋度を調整し、所定の剥離フィルム上に製膜して自着性樹脂層が得られる。得られた自着性樹脂層を基材フィルムに転写することで、本発明のダイソート用シートが得られる。
【0040】
また、自着性樹脂層をエネルギー線硬化性樹脂組成物から形成する場合にも上記と同様にしてダイソート用シートが得られる。この際、エネルギー線硬化前の自着性樹脂層が、上記の貯蔵弾性率を有する場合には、得られるダイソート用シートをそのまま使用すればよい。
【0041】
また、エネルギー線硬化前の自着性樹脂層が、上記の貯蔵弾性率を有しない場合には、エネルギー線硬化性の自着性樹脂層に、チップを仮着する前にエネルギー線を照射して、貯蔵弾性率を上述の範囲にしてもよいし、チップを仮着後にエネルギー線を照射して、貯蔵弾性率を上述した範囲にしてもよい。
いずれにしろ、チップを保持している状態での自着性樹脂層の貯蔵弾性率および表面粗さが上記の範囲にあればよい。
【0042】
チップの仮着前に、エネルギー線硬化性の自着性樹脂層にエネルギー線を照射する場合、ダイソート用シート作製時にエネルギー線を照射することが好ましい。ダイソート用シート作製時にエネルギー線を照射し、所定の貯蔵弾性率としておくことで、チップ仮着等の工程において、エネルギー線を照射する必要がなくなり、工程を簡略化できる。
【0043】
チップの仮着前にエネルギー線硬化性の自着性樹脂層の自着性が小さく、エネルギー線を照射した後ではチップの仮着が困難である場合は、チップ仮着後であって搬送、保管、水洗浄の前に、自着性樹脂層にエネルギー線を照射してもよい。チップを仮着する時点での自着性樹脂層は、エネルギー照射前の粘着力を有する状態のため、チップの仮着が容易であり、チップ仮着後にエネルギー照射を行うため、チップの搬送、保管、水洗浄、ピックアップの工程では、所定の貯蔵弾性率を有するため、本発明の効果が奏される。
【0044】
また、チップの厚みが薄く、ピックアップ時にチップ破損の恐れがある場合は、チップのピックアップ前にさらにエネルギー線を照射しても良い。
【0045】
上述した自着性樹脂層を有するダイソート用シートにチップが保持された状態で、チップを搬送、保管し、チップをダイソート用シートからピックアップし、ダイボンド樹脂封止を行うことで、半導体装置を製造することができる。該半導体装置の製造方法は、搬送、保管する際にダイソート用シートからチップの脱落を有効に防止することができる。また、チップをピックアップする際には、厚みの薄いチップであっても破損することなくチップをピックアップすることができる。
【0046】
(実施例)
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、各成分の配合量(含有量)は、断りがない限りすべて固形分での値とする。
実施例および比較例における評価方法及び試験方法を以下に示す。
【0047】
[貯蔵弾性率(G’)測定]
(紫外線照射しない場合の貯蔵弾性率)
実施例および比較例について、シリコーン剥離処理を行った2枚のポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離フィルム)で挟まれた自着性樹脂層を得た。片方の剥離フィルムを剥がし、自着性樹脂層が重なるように積層を繰り返し、厚みが3mmの自着性樹脂層を得た。直径8mmの円柱形に型抜きして弾性率測定用の試料を作製した。両側の剥離フィルムを剥がし、この試料の捻り剪断法による周波数1Hz、温度23℃における貯蔵弾性率(G’)を、粘弾性測定装置(REOMETRIC社製DYNAMIC ANALYZER RDA-II)を用いて測定した。
(紫外線照射した場合の貯蔵弾性率)
実施例および比較例について、自着性樹脂層を厚さ300μm程度まで積層し、その後紫外線照射装置(リンテック(株)製、Adwill RAD2000m/8)を用いて紫外線照射(照度220mW/cm2、光量320mJ/cm2)した。積層した自着性樹脂層を幅4mm、長さ(チャック間距離)30mmのサイズの試料とし、この試料の周波数11Hz、温度23℃における貯蔵弾性率(E’)を、動的粘弾性測定装置(オリエンテック社製RHEOVIBRON DDV-II-EP)を用いて測定した。
なお、紫外線照射した場合と紫外線照射しない場合との測定方法の違いによる差を無くすため、E’=3G’の式(「フェリー高分子の粘弾性」参照)を用いて測定値E’をG’換算した。
【0048】
[表面粗さ(Ra)測定]
実施例および比較例について、ANSI/ASME B46.1に準拠し、光干渉式表面粗さ計(Veeco社製、WycoNT1100)により算術平均粗さRaを測定した。
対物レンズ倍率:10倍、内部レンズ倍率:1倍
測定している面積:0.35mm2
【0049】
[ループタック試験]
FINAT No.9に基づき、ループタックの測定を行った。
実施例および比較例に記載したダイソート用シートを、幅25mm、長さ300mm(両端におけるつかみ部25mmずつを含む)のテープ状に切断し、試験片とした。次いで、試験片の剥離フィルムを剥がし、測定面(自着性樹脂層面)を外側にし、両端の基材フィルム面同士が接するようにそろえてループ状にして、引張試験機(オリエンテック社製万能引張試験機)の上部つかみに両端のつかみ部を挟んで取り付けた。一方、引張試験機の下部つかみには、試験板を水平に取り付け、試験板に両面テープを貼り、試験片と同一のダイソート用シートを基材面を介して貼付した。試験板に貼付したダイソート用シートの剥離フィルムを剥がし、上部つかみを300mm/minの速度で下げた。試験片の測定面と試験板側のダイソート用シートの自着性樹脂層面との接触面積が25×50mmとなるように貼着する。その位置で15秒間保持した後、300mm/minの速度で引き剥がし、23℃の環境条件下で得られる引張荷重値をループタック値として測定した。得られた結果を表1に示す。
【0050】
[半導体チップの製造]
実施例および比較例において、シリコンウエハの裏面を、(株)Disco製DGP8760を用いて厚さ100μmに研削しドライポリッシュ仕上げとし、5mm×5mmにダイシングし、半導体チップを得た。
【0051】
[半導体チップの搬送(チップの保持性)]
実施例および比較例において、ダイボンド装置(キヤノンマシナリー(株)製BESTEM-D02)を用いて半導体チップをピックアップし、ダイソート用シートの自着性樹脂層に、合計100個の半導体チップを互いに300μm程度の間隔で離間するように格子状に配列して仮着した。この状態で、24時間保管(23℃)後、スピン洗浄機((株)Disco製ウエハ研削装置、DFD651内ユニット)を用いて水洗浄(回転数3000rpm、1分間)した。この時のチップの脱落の有無を確認し、脱落しなかったチップの個数をカウントしOK数とした。
【0052】
[ピックアップテスト]
ダイボンド装置を用いて半導体チップをピックアップし、実施例および比較例のダイソート用シートの自着性樹脂層に、合計100個の半導体チップを互いに300μm程度の間隔で離間するように格子状に配列して仮着した。この状態で、24時間保管(23℃)後、チップを、ピックアップ装置(キヤノンマシナリー(株)製BESTEM-D02)を用いて、ダイソート用シート側よりニードルで突き上げ、ピックアップした。ランダムに20個ピックアップし、チップを破損することなくダイソートシートから剥離した個数をカウントした。また、保管時間を720時間(23℃)とした以外は、上記と同じ方法でテストを行った。
ピックアップは、5本のニードルが四隅および中央部に配置されたピックアップ装置を用い、下記の突上量で行った。
1段突上量4本(四隅のニードル):100μm
1段突上量1本(中央のニードル):100μm
2段突上量1本(中央のニードル):300μm
【0053】
(実施例1)
自着性樹脂組成物として、ブチルアクリレート(BA)90重量部、アクリル酸(AA)10重量部を共重合させて得られたアクリル共重合体(重量平均分子量500,000)100重量部に対し、3から4官能のウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量3,500)60重量部、5から9官能のウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量2,200)60重量部、多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートL)10重量部と、ベンゾフェノン系光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)3重量部を混合し、トルエンで30重量%になるように濃度を調整して、自着性樹脂組成物の溶液を得た。
【0054】
シリコーン剥離処理を行った、表面粗さが0.001μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)の剥離処理面上に上記自着性樹脂組成物溶液を塗布し、乾燥(オーブンにて100℃、1分間)し、厚み10μmの自着性樹脂層を作製した。次いで基材フィルムとしてエチレン−メタクリル酸共重合体フィルム(厚み80μm)を用い、この片面に自着性樹脂層を転写した。紫外線照射装置(リンテック(株)製、RAD-2000m/8、照度220mW/cm2、光量180mJ/cm2)を用いて基材フィルム面から紫外線を照射し、ダイソート用シートを得た。ダイソート用シートの自着性樹脂組成層上にチップを仮着し、チップの保持構造を得た。この構成体について、半導体チップの搬送(チップの保持性)及びピックアップテストを行った。また、これとは別の該ダイソート用シートについて、貯蔵弾性率測定、表面粗さ測定、ループタック試験を行った。結果を表1に示す。
【0055】
(実施例2)
自着性樹脂組成物として2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)20重量部、イソブチルアクリレート(iBA)60重量部、メチルメタクリレート(MMA)15重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)5重量部を共重合させて得られた共重合体(重量平均分子量500,000)100重量部に対し、多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートL)5重量部を混合し、トルエンで30重量%になるように濃度を調整して、自着性樹脂組成物の溶液を得た。シリコーン剥離処理を行った、表面粗さが0.001μmのPETフィルム(厚み38μm)の剥離処理面上に上記自着性樹脂組成物溶液を塗布し、乾燥(オーブンにて100℃、1分間)し、厚み10μmの自着性樹脂層を作製した。次いで基材フィルムとしてエチレン−メタクリル酸共重合体フィルム(厚み80μm)を用い、この片面に自着性樹脂層を転写することでダイソート用シートを得た。実施例1と同様の方法でチップの保持構造を得、評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例3)
自着性樹脂組成物としてBA85重量部、HEA15重量部からなるアクリル共重合体100重量部と、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート16重量部を反応させて得られた共重合体(重量平均分子量500,000)100重量部に対し、多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートL)0.5重量部と、ベンゾフェノン系光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)3重量部を混合し、トルエンで30重量%になるように濃度を調整して、自着性樹脂組成物の溶液を得た。シリコーン剥離処理を行った、表面粗さが0.7μmのPETフィルム(厚み38μm)の剥離処理面上に上記自着性樹脂組成物溶液を塗布し、乾燥(オーブンにて100℃、1分間)し、厚み10μmの自着性樹脂層を作製した。次いで基材フィルムとしてエチレン−メタクリル酸共重合体フィルム(厚み80μm)を用い、この片面に自着性樹脂層を転写した。紫外線照射装置(リンテック(株)製、RAD-2000m/8)を用いて基材フィルム面から紫外線を照射し、ダイソート用シートを得た。実施例1と同様の方法でチップの保持構造を得、評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例4)
自着性樹脂組成物としてBA85重量部、HEA15重量部からなるアクリル共重合体100重量部と、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート16重量部を反応させて得られた共重合体(重量平均分子量500,000)100重量部に対し、多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートL)0.5重量部と、ベンゾフェノン系光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)3重量部を混合し、トルエンで30重量%になるように濃度を調整して、自着性樹脂組成物の溶液を得た。シリコーン剥離処理を行った、表面粗さが0.0004μmのPETフィルム(厚み38μm)の剥離処理面上に上記自着性樹脂組成物溶液を塗布し、乾燥(オーブンにて100℃、1分間)し、厚み10μmの自着性樹脂層を作製した。次いで基材フィルムとしてエチレン−メタクリル酸共重合体フィルム(厚み80μm)を用い、この片面に自着性樹脂層を転写し、ダイソート用シートを得た。ダイソート用シートの自着性樹脂組成層上にチップを仮着し、紫外線照射装置(リンテック(株)製、RAD-2000m/8)を用いて基材フィルム面から紫外線を照射し、チップの保持構造を得た。実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例5)
自着性樹脂組成物の溶液として、メチルアクリレート(MA)85重量部、HEA15重量部を共重合させて得られた共重合体(重量平均分子量800,000)100重量部に対し、多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートL)0.5重量部を用い、かつ剥離フィルムとして、シリコーン剥離処理を行った、表面粗さが0.001μmのPETフィルム(厚み38μm)を用いた以外は実施例2と同様の方法でチップの保持構造を得、評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例6)
自着性樹脂組成物の溶液として、BA90重量部、AA10重量部を共重合させて得られたアクリル共重合体(重量平均分子量500,000)100重量部に対し、2から3官能のウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量7,000)25重量部、多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートL)2重量部と、ベンゾフェノン系光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)1重量部を用いた以外は実施例1と同様の方法でチップの保持構造を得、評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例7)
自着性樹脂組成物の溶液として、BA80重量部、HEA20重量部からなるアクリル共重合体100重量部と、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート21.4重量部を反応させて得られた共重合体(重量平均分子量500,000)100重量部に対し、多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートL)1重量部と、ベンゾフェノン系光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)3重量部を混合し、トルエンで30重量%になるように濃度を調整して、自着性樹脂組成物の溶液を得た。この自着性樹脂組成物を用い、かつ剥離フィルムとして、シリコーン剥離処理を行った、表面粗さが0.14μmのPETフィルム(厚み38μm)を用いた以外は実施例1と同様の方法でチップ保持構造を得、評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
(比較例1)
自着性樹脂組成物の溶液として、2EHA40重量部、酢酸ビニル(VAc)40重量部、HEA20重量部からなるアクリル共重合体100重量部と、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート21.4重量部を反応させて得られた共重合体(重量平均分子量500,000)100重量部に対し、多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートL)1重量部と、ベンゾフェノン系光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)3重量部を混合し、トルエンで30重量%になるように濃度を調整して、自着性樹脂組成物の溶液を得た。シリコーン剥離処理を行った、表面粗さが0.001μmのPETフィルム(厚み38μm)の剥離処理面上に上記自着性樹脂組成物溶液を塗布し、乾燥(オーブンにて100℃、1分間)し、厚み10μmの自着性樹脂層を作製した。次いで基材フィルムとしてエチレン−メタクリル酸共重合体フィルム(厚み80μm)を用い、この片面に自着性樹脂層を転写し、ダイソート用シートを得た。ダイソート用シートの自着性樹脂組成層上にチップを仮着し、紫外線照射装置(リンテック(株)製、RAD-2000m/8)を用いて基材フィルム面から紫外線を照射し、チップの保持構造を得た。実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(比較例2)
自着性樹脂組成物の溶液には比較例1と同じものを用い、それ以外は実施例2と同様の方法でチップの保持構造を得、評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
(比較例3)
自着性樹脂組成物の溶液として、2HEA20重量部、酢酸ビニル(VAc)78重量部、アクリル酸(AA)1重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)1重量部を共重合させて得られたアクリル共重合体(重量平均分子量500,000)100重量部に対し、3から4官能のウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量3,000)70重量部、多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートL)3重量部と、ベンゾフェノン系光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)3重量部を用いた以外は比較例1と同様の方法でチップの保持構造を得、評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例4)
自着性樹脂組成物の溶液として、2EHA85重量部、MMA5重量部、HEA10重量部を共重合させて得られた共重合体(重量平均分子量500,000)100重量部に対し、多価イソシアナート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネートL)4重量部を用いた以外は実施例2と同様の方法でチップの保持構造を得、評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例5)
剥離フィルムとして、シリコーン剥離処理を行った、表面粗さが1.20μmのPETフィルム(厚み38μm)を用いた以外は実施例3と同様の方法でチップの保持構造を得、評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
(比較例6)
剥離フィルムとして、シリコーン剥離処理を行った、表面粗さが1.20μmのPETフィルム(厚み38μm)を用いた以外は比較例4と同様の方法でチップの保持構造を得、評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明のチップ保持構造を説明するための図である。
【符号の説明】
【0069】
10…基材フィルム
20…自着性樹脂層
30…チップ
40…リングフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、その上に形成された自着性樹脂層とからなるダイソート用シートにチップが保持されているチップの保持構造において、
前記自着性樹脂層の23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.5〜200MPaであり、
前記自着性樹脂層の表面粗さ(Ra)が1μm以下であるチップの保持構造。
【請求項2】
前記自着性樹脂層が50〜2000mN/25mmのループタック値を有する請求項1に記載のチップの保持構造。
【請求項3】
基材フィルムとその上に形成された自着性樹脂層とからなり、
前記自着性樹脂層の23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.5〜200MPaであり、その表面粗さ(Ra)が1μm以下であるダイソート用シート。
【請求項4】
前記自着性樹脂層が、エネルギー線硬化性樹脂の硬化物からなる請求項3に記載のダイソート用シートであって、
前記自着性樹脂層のエネルギー線照射後の23℃における貯蔵弾性率(G’)が0.5〜200MPaであり、その表面粗さ(Ra)が1μm以下であるダイソート用シート。
【請求項5】
請求項1または2に記載のチップの保持構造において、半導体チップを搬送もしくは保管する工程、および該チップをダイソート用シートからピックアップする工程を含む半導体装置の製造方法。



【図1】
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【公開番号】特開2009−246301(P2009−246301A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94136(P2008−94136)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】