説明

チャンバ、真空処理装置、基板移載方法

【課題】スループットの向上及び低コスト化を図ることができるロードチャンバを提供する。
【解決手段】サブチャンバ42を有するロードチャンバLL1は、サブチャンバ42内を上下方向に移動し、基板カセット5Lが載置される基板カセットベース47が上昇位置にあるときには基板カセットベース47を隔壁としてサブチャンバ42内の上部に気密な空間を形成でき、基板カセットベース47が下降位置にあるときには基板カセット5Lから搬送装置に基板を移載できる。サブチャンバ42内に補充された基板を搬送装置側に排出するためのGVを必要としないため部品点数を削減できるとともに、基板カセット5Lへの基板13の補充のときに排気とベントが必要な空間が限定されるためスループットを向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバ、真空処理装置、基板移載方法に係り、特に、大気圧側から真空排気された容器内に基板を投入又は搬出するチャンバ、真空処理装置、基板移載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気側から供給される成膜処理前の基板を真空雰囲気のプロセスチャンバ内に投入するためのロードチャンバや、所定の真空処理が終了した基板を大気側のパスライン(基板搬送ライン)に排出するためのアンロードチャンバを備えた真空処理装置が知られている。そして、高スループットのロードチャンバやアンロードチャンバでは、プロセスチャンバ側の搬送チャンバと、基板搬送ライン側のサブチャンバとに内部構造が分かれている真空処理装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
サブチャンバは、基板を載せる基板カセットを内部に備え、基板の投入側と排出側にGV(ゲートバルブ)を有している。そして、大気側の基板収納部から成膜処理前の基板を投入する作業毎、または、所定の成膜処理が終了した基板をサブチャンバから搬出する作業毎に大気圧と真空雰囲気に調整するため、ベント及び真空排気が頻繁に行われる。ロードチャンバに比べて内部容積の小さいサブチャンバを備えることで、真空排気に必要な時間を短縮しスループットの向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−274142号公報
【特許文献2】特開2001−210695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に開示された真空処理装置においても、プロセスチャンバ側のタクトタイム短縮の要請からサブチャンバの真空排気に使用できる時間に制約がある。これにより、排気容量の大きな真空ポンプを使用しなくてはならず、さらなる低コスト化を困難にしていた。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、スループットの向上を図るとともに低コスト化に資するチャンバ、真空処理装置、基板移載方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るチャンバは、基板に所定の真空処理が行われる処理チャンバに向けて基板を供給し、又は真空処理後の基板が排出されるチャンバであって、基板が装填される基板カセットが配置される移動可能なカセット保持部と、所定位置に移動したカセット保持部に当接し、前記チャンバ内に気密な第1の空間を形成できるようにチャンバの内壁に沿って設けられたシール部と、チャンバに設けられ、開放することで第1の空間内の基板カセットに基板を投入又は排出可能な状態となるゲートバルブと、第1の空間のみを真空排気できる真空排気装置と、第1の空間のみにガス導入できるガス導入装置とを有することを特徴とする。
或いは、本発明に係る基板移載方法は上述のチャンバを用い、カセット保持部を所定位置に移動させるとともにゲートバルブを開放して、カセット保持部に配置されている基板カセットに未処理基板を装填する基板投入工程と、カセット保持部を所定位置に位置させた状態でゲートバルブを閉じて第1の空間を形成するとともに第1の空間を真空排気し、ロボットチャンバ内と同等の真空度にする排気工程と、カセット保持部を所定位置から移動させて、基板カセットをロボットチャンバと連通する空間に移動するカセット保持部移動工程と、基板カセットに配設された未処理基板を前記ロボットによって搬送装置に移載する基板移載工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、真空処理装置のスループットを落とすことなく、必要な排気時間を確保することができるチャンバ、真空処理装置及び基板移載方法を提供することができる。また、大出力の真空ポンプを必要とせず、ロボットやゲートバルブなどの部材の必要数を減ずることができるため低コストでチャンバ、真空処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る真空処理装置の概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るキャリアの概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るロードチャンバの断面図(A−A断面図)である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るロードチャンバの断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るロードチャンバの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は発明を具体化した一例であって本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。なお、本明細書中においてロード/アンロードチャンバユニット(又は単にチャンバ)とは、ロードチャンバとアンロードチャンバのいずれか一方又は両方を示す用語とする。また、以下に記載する各実施形態において、基板カセットベース47,56は上下方向に移動可能に構成されるが、移動方向は重力方向に平行な方向に限定されないことはもちろんである。例えば、基板カセットベース47,56は重力方向に角度を有する方向に移動してもよい。また、後述する第1の空間などが形成される構造であれば基板カセットベース47,56が水平方向に移動する構成であっても本発明を適用できるものとする。
【0011】
(第1実施形態)
図1〜図3は、本発明の第1実施形態に係る真空処理装置について説明した図であり、図1は真空処理装置の概略図(上面図)、図2はキャリアの概略図(斜視図)、図3はロードチャンバの断面図(図1のA−A断面図)である。なお、図面の煩雑化を防ぐため一部を除いて省略している。
【0012】
図1に示す真空処理装置Sは、ゲートバルブGVを介して無端状に連結された複数のチャンバS1と、チャンバS1に連結されたロードチャンバLL1及びアンロードチャンバULを備えているインライン型の成膜装置である。基板13は、基板カセット5Lに搭載された状態でロードチャンバLL1に装填され、ロボット23L(基板移載装置)によって後述するキャリア11に移載され、基板搬送装置(搬送装置)によって各チャンバS1に搬送される。基板は、基板搬送装置によってキャリア11に搭載された状態で基板搬送路10に沿ってチャンバS1内を搬送されながら所定の真空処理が施される。チャンバS1には、プロセスチャンバや搬送チャンバ29,31、その他の処理室として機能するチャンバを含むものとする。なお、基板13はロードチャンバLL1内に固定された基板カセット5Lに補充する機構としてもよい。
【0013】
図2にキャリア11の概略図を示す。キャリア11は、基板搬送路10から推進力を得る機構部が設けられたスライダー12上に、基板13を支持できるホルダ14が接続されて構成されている。基板搬送路10は公知の磁気ネジ機構を有して構成され、機構部は磁気ネジ機構の磁石と磁気カップリングを形成する永久磁石を有して構成されている。ホルダ14には基板13を起立した姿勢で所定位置に支持するための基板支持爪15が3つ設けられている。基板支持爪15は屈曲形状の板ばねから構成されている。本実施形態において用いられるキャリア11は2つのホルダ14を備えているため基板13を同時に2枚搭載することができる。
【0014】
キャリア11は、基板13を搭載した状態で搬送チャンバ29などのチャンバS1内の基板搬送路10に沿って移動可能であり、後述する基板13の移載動作中、搬送チャンバ29,31内の所定位置(基板移載位置)に停止制御される。キャリア11は、各チャンバS1内を循環するように移動し、真空処理装置Sの外側の雰囲気に曝されることがないためチャンバS1内の汚染を抑えることができる。なお、キャリア11の形状は機構部に応じて変更できるものとする。基板13を支持するための基板支持爪15の形状や数量も適宜変更可能である。磁気ネジ機構に替えてリニアモータやラックアンドピニオンを用いた機構を採用することもできる。
【0015】
本実施形態における基板13としては、磁気ディスクや光ディスクなどの記憶メディアに用いられる円盤状部材が用いられ、特に、中心部分に円形の開口部(センタ孔)を有する円盤状部材が好適に用いられる。しかし、キャリア11に取り付けられた基板ホルダ14を交換することにより、種々の形状のガラス基板、アルミニウム若しくはアルミニウム合金などの金属基板、シリコン基板、樹脂基板などを用いることができる。
【0016】
本実施形態における基板搬送装置は、インライン型のスパッタリング成膜装置に適用した例(真空処理装置S)であり、少なくともキャリア11と基板搬送路10を有する装置として説明されるが、搬送装置としてはこれに限定されない。すなわち基板搬送装置は、ロードチャンバ(アンロードチャンバ)とチャンバS1(処理チャンバ)との間で基板を搬送できる装置を意味するものとし、クラスター型のスパッタリング成膜装置、電子ビームなどを使用した薄膜形成、若しくは、表面改質、ドライエッチングのような内部に基板搬送機構を備える真空処理装置に幅広く適用可能なものである。
【0017】
図3はロードチャンバの断面図である。なお、図3はロードチャンバについて示したが、アンロードチャンバにも同様の構成を採用できることはもちろんである。本実施形態に係るロードチャンバLL1は、サブチャンバ42とロボットチャンバ41が一体に連結された構成を有しており、ロボットチャンバ41は内部空間が一体となるように搬送チャンバ29と連結されている。搬送チャンバ29は、ゲートバルブGVを介して他のチャンバS1と連結されるチャンバであり、他のチャンバS1にキャリア11を搬送する基板搬送路10(基板搬送装置)が内部に設けられている。
【0018】
ロボットチャンバ41は、ロボット23Lが設けられているチャンバであり、一方側でサブチャンバ42に連結され、他方側で搬送チャンバ29に連結されている。また、搬送チャンバ29と同等な圧力に真空排気するための真空ポンプが取り付けられている。ロボット23Lは、駆動部232Lによって駆動制御できるスカラアーム231Lを備えた公知の基板搬送ロボットであり、スカラアーム231Lの先端には基板を載せるようにして保持できるピック(把持部)が取り付けられている。また少なくともピックが取り付けられている部分は上下動可能に構成されているため、基板13の開口部(センタ孔)にピックを挿し込んで上下動させることにより基板13を保持及び載置することができる。サブチャンバ42(後述するサブ搬送部42b)とロボットチャンバ41と搬送チャンバ29は内部が連続しているため、サブチャンバ42内の基板カセットに装填されている基板13をロボット23Lによって搬送チャンバ29内のキャリア11に移載(基板移載動作)することができる。
【0019】
サブチャンバ42は、その内壁から内側に向かって張り出したシール部45と、上下方向に移動可能(上下動作)な基板カセットベース47(カセット保持部)を内部に備えている。基板カセットベース47は、基板カセット5Lを載置できる板状部材であり、駆動機構部44によってサブチャンバ42内を移動可能に設けられている。駆動機構部44は、モータ44cによって支柱44aを介して基板カセットベース47(カセット保持部)を移動させる機構であり、ベローズ44bによりサブチャンバ42内のシールを保つ構造とされているが、ベローズ44bに替えてOリングなどのシール材による軸シールなどの構造を採用することもできる。また、モータ44cに替えて公知のシリンダなどのアクチュエータを用いてもよい。
【0020】
シール部45は、サブチャンバ42の内周の一周(無端状)に亘って板状若しくは突起状に張り出している部分であり、サブチャンバ42の内側に張り出したシール部45の先端(内縁)は、基板カセットベース47の外縁に重なるように調整されている。このため、基板カセットベース47が上昇して、基板カセットベース47の外縁に沿った部分がシール部45に当接する位置(所定位置)となると、基板カセットベース47の基板カセット5Lを載置した面(上面)の外縁に沿った無端状の領域がシール部45の下側(下面)の内縁に沿った無端状の領域と当接する。この無端状の当接面がシール面として作用するため、基板カセットベース47を真空隔壁としてサブチャンバ42内の空間を上部と下部に分割することができる。なお、後述するように基板カセットベース47の上面には外縁に沿ってシール材としてのOリング47aが装着されているので、本実施形態におけるシール面はシール部45の下面とOリング47aとの当接部分に沿って形成される。
【0021】
基板カセットベース47が真空隔壁として機能しているとき、サブチャンバ42内は基板投入部42aとサブ搬送部42bに分割される。サブチャンバ42内の上側に形成される空間が基板投入部42a(第1の空間)であり、そのときにサブチャンバ42内の下側に形成される空間はサブ搬送部42bである。シール部45が設けられる高さはロボットチャンバ41の天板41aの高さ付近であるため、基板投入部42aとサブ搬送部42bは天板41aの高さ付近を境目にしている。
【0022】
基板投入室42aは、基板カセットベース47が所定位置にあるときにサブチャンバ42の上側に形成される領域(第1の空間)であり、基板カセットベース47の基板カセット5Lを載置した面とサブチャンバ42内の上部の内壁に囲まれている。基板投入部42aの側壁(サブチャンバ42の上部の壁面)には、基板や基板カセット5Lの出し入れができるゲートバルブ(GV)48が設けられ、GV48を開放することで基板や基板カセットを基板投入室42a内に投入することができる。
【0023】
また、基板投入部42aには不図示の調圧装置が接続されている。調圧装置は、基板投入部42aだけを独立して真空排気可能な真空排気装置61と、基板投入部42aにだけ任意のガスを導入できるベント装置(ガス導入装置)62とを備えて構成されている。サブ搬送部42bは、基板カセットベース47が所定位置にあるときにサブチャンバ42の下側に形成される領域であり、基板カセットベース47の基板カセット5Lを載置する面の裏面とサブチャンバ42内の下部の内壁に囲まれる領域であるが、ロボットチャンバ41に連結されているため内部空間は常にロボットチャンバ41と一体に連続している。
【0024】
このように本実施形態に係るロードチャンバLL1は、基板の投入や排出に際して、真空排気とベントを繰り返すのはサブチャンバ42内に形成される基板投入部42a(第1の空間)だけとなる。すなわち、基板カセットベース47と駆動機構部44により、真空排気とベントを繰り返す体積を限定することで真空排気やベントに要する時間を短縮し、基板を出し入れする際のスループットの向上を図っている。また、移動できる基板カセットベース47を真空隔壁として活用することで、基板投入部42aとサブ搬送部の間にゲートバルブを設置する必要がなく部品点数を減らすことができる。
【0025】
ここで、本実施形態に係るロードチャンバLL1の使用方法について説明する。
まず、大気圧雰囲気である真空処理装置Sの外側(系外)より投入される基板13(未処理基板)は、開放されたGV48を通して基板カセットベース47に設置されている基板カセット5Lに搭載される(基板投入工程)。このとき、基板カセットベース47はシール部45と当接する上昇位置(所定位置)に移動されるとともにGV48は開放されている。すなわち、シール部45と基板カセットベース47とでシールされ、サブチャンバ42の上方側は大気圧、下方側は真空雰囲気となっている。なお、基板投入工程は基板13が搭載された基板カセット5Lを基板カセットベース47に設置する工程でもよく、この場合、基板13が搭載された基板カセット5Lを、基板13を移載されて空になった基板カセットと交換する。
【0026】
次に、GV48を閉じて基板カセットベース47上方の空間(第1の空間)を所定の真空度に到達するまで真空排気する(排気工程)。所定の真空度とはロボットチャンバ41内と同等の真空雰囲気のことである。所定の真空度に到達した後に基板カセットベース47を降下させる(カセット保持部移動工程)。基板カセットベース47が降下した状態で基板13のキャリア11への移載がロボット43によって順次行われる(基板移載工程)。
【0027】
基板カセット5Lに保持された基板13がなくなると、基板カセットベース47を再び上昇させる。基板カセットベース47の縁部分をシール部45に密着させてシールし、サブチャンバ42の上方側(第1の空間)をベントして系外と同じ雰囲気(大気圧)にする(ベント工程)。このとき、サブチャンバ42の下方側が大気暴露されることはない。ベント工程で第1の空間に導入されるガスには、ベント装置(ガス導入装置)によって水分などの不純物成分が管理された窒素ガスが用いられることが望ましい。ベント工程の後に、GV48が開放されて上述の基板投入工程が行われる。
【0028】
上記の基板投入工程〜ベント工程を繰り返すことで基板処理装置Sへの基板13の補充が連続的に行われる。本実施形態に係るロードチャンバLL1はこのような使い方ができるため、基板13の補充の際にも真空排気やベントされる領域はシール部45の上方側(第1の空間)に限定することができる。すなわち、排気やベント時間を短縮することでスループットの向上を図ることができる。
【0029】
アンロードチャンバULはロードチャンバLL1とほぼ同様に構成されている。すなわち、搬送チャンバ31内のキャリア11に搭載された処理済の基板13は、ロボット23Uの動作によって基板カセット5Uに格納される。そして、アンロードチャンバULの基板カセットベースが上昇して、その基板カセットベースの縁部分をシール部のシール面に密着させてシールし、サブチャンバの上方側をベントし大気圧にした後、アンロードチャンバULから取り出されパスラインに歯位置される。従って、ロードチャンバLL1とアンロードチャンバUL(チャンバ)を用いることで基板処理装置1への基板13の補充と排出を連続的に行うことができる。
【0030】
(第2実施形態)
図4,5は、本発明の第2実施形態に係る真空処理装置について説明した図であり、図4は真空処理装置のロードチャンバの断面図、図5はロードチャンバの動作説明図である。第1実施形態の構成要素と同一の構成要素については同一の参照番号を付して説明を省略する。なお、図4に示したロードチャンバLL2の断面図は、図1のロードチャンバLL1に替えてロードチャンバLL2を取り付けた場合のA−A断面図に相当する図である。また、図4、5はロードチャンバ側について示したがアンロードチャンバにも同様の構成を採用できることはもちろんである。
【0031】
本実施形態に係るロードチャンバLL2は、サブチャンバ52とロボットチャンバ41が一体に連結された構成を有しており、ロボットチャンバ41は内部空間が一体となるように搬送チャンバ29と連結されている。サブチャンバ52は、サブチャンバ42の内側に張り出したシール部55(55a,55b)、移動(上下動作)可能な基板カセットベース56(カセット保持部)、基板カセットベース56に連結された第2カセットベース57(第2カセット保持部)を内部に備えている。基板カセットベース56は基板カセット5L(基板カセット)を、第2カセットベース57は基板カセット6L(第2基板カセット)をそれぞれ設置できる板状部材であり、駆動機構部54によりサブチャンバ52内を上下方向に移動可能に設けられている。
【0032】
第2カセットベース57は係止部材57aによって基板カセットベース56の下方側に固定されているため駆動機構部54により基板カセットベース56と同期して移動する構造である。係止部材57aは剛性を有する棒状部材であり、第2カセットベース57を基板カセットベース56に固定している。
サブチャンバ52は第1の実施形態のサブチャンバ42よりも下方側に拡張された形状を有しており、第2カセットベース57を移動させることで、ロボットチャンバ41の底板41bの高さよりも低い位置に基板カセット6Lを配置することができる。
【0033】
基板カセットベース56は、第1の実施形態の基板カセットベース47と同様な構成であるが、係止部材57aが連結されている点と、駆動機構部54に連結されていない点、また、後述のようにシール部55bにも当接してシールできる点で主に異なっている。駆動機構部54は第1の実施形態の駆動機構部44と同様な構成であるが第2カセットベース57に連結されている点で異なっている。
【0034】
サブチャンバ52には、シール部55(55a,55b)が2箇所形成されている。シール部55aは第1の実施形態のシール部45と同様な構成である。シール部55bはサブチャンバ42の内周の一周に亘ってシール部55aと同様に無端状に張り出している部分である。シール部55bはロボットチャンバ41の底板41bの高さ付近に設けられている。シール部55bの先端(内縁)は、基板カセットベース56の外縁に重なるように調整されており、基板カセットベース56はロボットチャンバ41の天板41aと底板41bの高さ間を移動できるように構成されている。なお、サブチャンバ52の上方に形成されているシール部をシール部55a,下方に形成さているシール部を第2シール部55b(第2シール部)とする。基板カセットベース56の移動方向に対して、第2シール部55bが当接する基板カセットベース56の部分は、シール部55aが当接する部分の逆側に位置している。
【0035】
基板カセットベース56には、シール材59a,59b(Oリングなど)が上面と下面に1つずつ装着されている。シール材59a,59bはシール部55a,55bとそれぞれ当接してシール面を形成することができる。このため、基板カセットベース56がシール部55aに接する位置(所定位置)まで上昇したとき、基板カセットベース56の基板カセット5Lを載置した面(上面)の外縁に沿った無端状の領域が、Oリング59aと当接してシール部55bの上面の内縁に沿った無端状のシール面を形成する。このとき、基板カセットベース56を真空隔壁としてサブチャンバ52内の空間を上部と下部に分割することができる。
【0036】
一方、基板カセットベース56がシール部55bに接する位置(第2の所定位置)まで下降したとき、基板カセットベース56の基板カセット5Lを載置した面の裏面(下面)の外縁に沿った無端状の領域が、Oリング59bと当接してシール部55bの上面の内縁に沿った無端状のシール面を形成する。このとき、基板カセットベース56を真空隔壁としてサブチャンバ52内の空間を上部と下部に分割することができる。
【0037】
基板カセットベース56の上面(Oリング59a)がシール部55aと当接した状態で、サブチャンバ52内の上側に形成される空間が基板投入部52a(第1の空間)であり、一方、基板カセットベース56の下面(Oリング59b)がシール部55bと当接した状態で、サブチャンバ42内の下側に形成される空間は第2基板投入部52c(第2の空間)である。また、ロボットチャンバ41の天板41aの高さと底板41bの高さの間に位置するサブチャンバ52内の空間をサブ搬送部52bとする。
【0038】
上述のように、基板投入室52aは、基板カセットベース56の基板カセット5Lを載置した面とシール部55aよりも上側のサブチャンバ52の内壁に囲まれて気密に区画される領域(第1の空間)である。この基板投入部52aの側壁(サブチャンバ52の上部の壁面)には基板や基板カセット5Lの出し入れができるゲートバルブ(GV)58aが設けられている。同様に、第2基板投入部52cの側壁(サブチャンバ52の下部の壁面)には基板や基板カセット6Lの出し入れができるゲートバルブ(GV)58b(第2ゲートバルブ)が設けられている。
【0039】
GV58aを開放することで基板や基板カセットを基板投入部52a内に投入することができ、GV58bを開放することで基板や基板カセットを基板投入室52c内に投入することができる。また、基板投入部52aだけを独立して真空排気な真空ポンプ(真空排気装置)61と、基板投入部52aだけに任意のガスを導入できるベント装置(ガス導入装置)62とを有する調圧装置が基板投入部52aに接続されている。同様に、ロードチャンバLL2は第2基板投入部52cだけを独立して真空排気できる真空ポンプ(第2真空排気装置)63及びガスを導入できるベント装置(第2ガス導入装置)64を有する調圧装置(第2調圧装置)が第2基板投入部52cに接続されている。
【0040】
ここで、図5(a),(b)に基づいて、本実施形態に係るロードチャンバLL2の動作について説明する。なお、図5では簡略化のため真空ポンプ61,63、ベント装置62,64を不図示とする。
図5(a)は、基板カセット5L,6Lが載置された基板カセットベース56,57を駆動機構部54により上昇させた状態であり、基板カセットベース56(Oリング59a)がシール部55aに当接する高さ(所定位置)に移動しており、また、サブチャンバ52上側のGV58aが開放されている。このため、基板カセットベース56のシール材59aによりロボットチャンバ41及びサブチャンバ52の下側(サブ搬送部52bと基板投入部52c)はシールされ所定の真空度に保持される。この状態ではロボットチャンバ51の真空を維持しつつ、サブチャンバ52上側(基板投入部52a:第1の空間)にガス導入するベントを行う(ベント工程)。
【0041】
基板投入部52aのベント完了後、サブチャンバ52上側のGV58aを開き、基板カセット5Lに基板13(未処理基板)を投入する(基板投入工程)。この基板投入工程は基板13が搭載された基板カセット5Lを基板カセットベース56に設置する工程でもよいものとする。基板投入工程の終了後、GV58aを閉じて再び第1の空間を形成し、ロボットチャンバ41内と同等の真空度になるまで真空排気を行う(排気工程)。ロボットチャンバ内と同等の真空度になった後、基板カセットベース56(Oリング59b)がシール部55bに当接する高さ(第2の所定位置)に移動して、基板カセット5Lをサブ搬送部52b内に位置させる(カセット保持部移動工程、又は、第2のカセット保持部移動工程)。この基板カセットベース56が降下した状態で基板13のキャリア11への移載がロボット23Uによって行われる(基板移載工程)。
【0042】
図5(b)は、基板カセットベース56(Oリング59b)がシール部55bに当接する位置(第2所定位置)に移動するとともにサブチャンバ52下側の空間(基板投入部52c:第2の空間)がベント(第2ベント工程)された後に、GV58bが開放された状態である。すなわち、第2のカセット保持部移動工程(又は、カセット保持部移動工程)が実行された後の状態である。このとき、基板カセットベース56のシール材59bによりロボットチャンバ41及びサブチャンバ52の上側(基板投入部52aとサブ搬送部52b)はシールされ所定の真空度に保持されている。この状態で基板カセットベース57上の基板カセット6Lに基板13(未処理基板)を投入する(第2の基板投入工程)。
【0043】
その後、GV58bを閉じて第2の空間を形成し、ロボットチャンバ内と同等の真空度になるまで真空排気を行う(第2排気工程)。第2排気工程の後、基板カセットベース56(Oリング59a)をシール部55aに当接する位置(所定位置)に移動させて、基板カセット6Lをロボットチャンバと連通する空間に移動し(第3のカセット保持部移動工程)、下側基板カセット6Lに配設された基板13をロボット23Lによってキャリア11(搬送装置)に移載する(第2基板移載工程)。下側基板カセット6L上の基板13は、ロボット23Lにより順次キャリア50へ移載される。第2基板移載工程の実行中にサブチャンバ52上側(基板投入部52a)にガス導入するベントを行った後、GV58aを開き、基板カセット5Lに基板13(未処理基板)を投入する工程(基板投入工程)が行われる。第2基板移載工程の実行中に行われる基板投入工程は図5(a)に基づいて上述した状態である。
【0044】
図5(a),(b)に基づいて説明した上述の工程(基板投入工程〜第2基板移載工程)を繰り返し行うことにより、ロードチャンバLL2内に配設されるロボットを1台とし、ロボットチャンバ41内のGVを必要としないと構造が可能となる。
【0045】
本実施形態のロードチャンバLL2は、基板カセットベース56に載置された基板カセットからの移載作業が行われている間に第2カセットベース57上に載置された基板カセットがある空間の排気やベント作業を行うことができる。このため、1つのサブチャンバのみ備える従来の真空処理装置のロードチャンバLLやアンロードチャンバULに比較して、基板カセットが配置される空間の排気時間やベント時間を十分に確保することが可能となる。
【0046】
すなわち、本実施形態に係るロードチャンバLL2により、基板13の補充の際にも真空排気やベントされる領域はシール部55aの上方側、又はシール部55bの下方側に限定することができる。すなわち、排気やベント時間を短縮することでスループットの向上を図ることができる。
【0047】
本発明に係るチャンバを用いることで、基板カセットが配置される空間の排気時間やベント時間を多くとることができるため、投入時に基板に付着した水成分などの成膜に与える有害物質を取り除くとともに、搬出時には時間をかけてベントすることが可能となる。そのため、基板とベントガスとの化学的、物理的ダメージを軽減することができる。化学的ダメージとは例えばベント用の窒素ガスによる基板の窒化であり、物理的ダメージとは例えばベント(真空排気動作)のガス流により巻き上がったパーティクルによって基板を損傷することである。
【0048】
本発明に係るチャンバを用いることで、排気容量の大きな真空ポンプを使用する必要がなきためコストの上昇を抑えることができる。また、基板カセットベースが上下方向に移動することで、基板カセットを搬送装置側に近い位置に配置することができるため、ロードチャンバ内に配設されるロボットを1台にすることができ、さらに、サブチャンバに基板を排出するためのGV(ゲートバルブ)を取り付ける必要がないため、部品点数を減少させることができる。
【0049】
本発明は、成膜用装置として発明されたが、広く真空を利用する産業や、液体、気体などの隔壁を必要とする装置に応用することが可能である。また、基板カセット5L,5U,6Lは、基板13を25枚若しくは50枚ずつ二列に並べることができる。本実施形態における基板の投入及び搬出は、所定数量の基板を基板カセットに移載することで行われるが、交換する基板を搭載した基板カセット自体を交換してもよい。
【0050】
本発明に係るチャンバ若しくはサブチャンバは、基板カセットベースが上下方向に移動する構成だけではなく、水平方向に移動する構成にも適用することが可能である。基板カセットベースが上下方向に移動する場合は、基板カセットベースの基板カセットが載置される面の両側に板状のシール部材を起立して取り付けるとよい。すなわち、このシール部材を真空隔壁として用いることで水平方向の移動に本発明を適用することができる。
【0051】
また、チャンバの構造を工夫することにより、ロードチャンバ(基板供給装置)とアンロードチャンバ(基板排出装置)の両者の機能を1つのチャンバ(ロードチャンバ)で実行できるように構成することもできる。例えば、ロボットを1台設置したロボットチャンバを、基板の投入側と排出側のチャンバに連通させて、キャリアからの基板の取り外し動作と搭載動作を1台のロボットで行うようにすることもできる。この場合、投入側と排出側のチャンバに取り付けられた基板カセットベースを連動させれば、基板カセットベースの駆動系を1つにまとめることができる。
【符号の説明】
【0052】
S 真空処理装置
S1 成膜室(チャンバ)
LL1,LL2 ロードチャンバ
UL アンロードチャンバ
5,5L,5U,6L 基板カセット
48,58a,58b GV(ゲートバルブ)
10 基板搬送路
11 キャリア
12 スライダー
13 基板
14 ホルダ
15 基板支持爪
23L,23U ロボット
29,31 搬送チャンバ
41 ロボットチャンバ
42,52 サブチャンバ
42a,52a 基板投入部
42b,52b サブ搬送部
42c,52c 第2基板投入部
47a,59a,59b シール材
44,54 駆動機構部
44a 支柱
44b ベローズ
44c モータ
45,55a,55b シール部
47,56 基板カセットベース
57 第2カセットベース
61,63 真空ポンプ
62,64 ベント装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に所定の真空処理が行われる処理チャンバに向けて基板を供給し、又は前記真空処理後の基板が排出されるチャンバであって、
基板が装填される基板カセットが配置される移動可能なカセット保持部と、
所定位置に移動した前記カセット保持部に当接し、前記チャンバ内に気密な第1の空間を形成できるように前記チャンバの内壁に沿って設けられたシール部と、
前記チャンバに設けられ、開放することで前記第1の空間内の前記基板カセットに基板を投入又は排出可能な状態となるゲートバルブと、
前記第1の空間のみを真空排気できる真空排気装置と、
前記第1の空間のみにガス導入できるガス導入装置とを有することを特徴とするチャンバ。
【請求項2】
基板が装填される第2基板カセットが配置されるとともに、前記カセット保持部と同期して移動可能な第2カセット保持部と、
前記カセット保持部が前記所定位置とは異なる第2の所定位置に移動したときに当接し、前記チャンバ内に気密な第2の空間を形成できるように、前記チャンバの内壁に沿って設けられた第2シール部と、
前記チャンバに設けられ、開放することで前記第2の空間内の前記第2基板カセットに基板を投入又は排出可能な第2ゲートバルブと、
前記第2の空間のみを真空排気できる第2真空排気装置と、
前記第2の空間のみにガス導入できる第2ガス導入装置と、をさらに有し、
前記カセット保持部の前記第2シール部が当接する部分は、前記カセット保持部の移動方向に対して、前記カセット保持部の前記シール部が当接する部分の逆側であることを特徴とする請求項1に記載のチャンバ。
【請求項3】
前記第1の空間を内部に形成できるサブチャンバと、
前記サブチャンバに連結されるとともに、基板に所定の真空処理を行う処理チャンバとの間で基板を搬送する搬送装置に接続されるロボットチャンバと、
前記ロボットチャンバ内に配設され、前記サブチャンバ内の前記基板カセットと前記搬送装置との間で基板を移載するロボットとを備えていることを特徴とする請求項1に記載のチャンバ。
【請求項4】
前記第1の空間及び前記第2の空間を内部に形成できるサブチャンバと、
基板に所定の真空処理を行う処理チャンバとの間で基板を搬送する搬送装置に接続されるとともに、前記サブチャンバに連結されたロボットチャンバと、
前記ロボットチャンバ内に配設され、前記サブチャンバ内の前記基板カセット又は前記第2基板カセットと前記搬送装置との間で基板を移載するロボットとを備えていることを特徴とする請求項2に記載のチャンバ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載されたチャンバと、
基板に所定の真空処理を行う処理チャンバと、
前記チャンバと前記処理チャンバとの間で基板を搬送する搬送装置とを備えていることを特徴とする真空処理装置。
【請求項6】
請求項3に記載されたチャンバを用いた基板移載方法であって、
前記カセット保持部を前記所定位置に移動させるとともに前記ゲートバルブを開放して、前記カセット保持部に配置されている前記基板カセットに未処理基板を装填する基板投入工程と、
前記カセット保持部を前記所定位置に位置させた状態で前記ゲートバルブを閉じて前記第1の空間を形成するとともに前記第1の空間を真空排気し、前記ロボットチャンバ内と同等の真空度にする排気工程と、
前記カセット保持部を前記所定位置から移動させて、前記基板カセットを前記ロボットチャンバと連通する空間に移動するカセット保持部移動工程と、
前記基板カセットに配設された前記未処理基板を前記ロボットによって前記搬送装置に移載する基板移載工程とを有することを特徴とする基板移載方法。
【請求項7】
請求項4に記載されたチャンバを用いた基板移載方法であって、
前記カセット保持部が前記所定位置に移動するとともに前記ゲートバルブを開放して、前記カセット保持部に配置される前記基板カセットに未処理基板を装填する基板投入工程と、
前記カセット保持部を前記所定位置に位置させた状態で前記ゲートバルブを閉じて前記第1の空間を形成するとともに前記第1の空間を真空排気し、前記ロボットチャンバ内と同等の真空度にする排気工程と、
前記カセット保持部を前記第2の所定位置に移動させて、前記基板カセットを前記ロボットチャンバと連通する空間に移動する第2のカセット保持部移動工程と、
前記基板カセットに配設された前記未処理基板を前記ロボットによって前記搬送装置に移載する基板移載工程と、
前記基板移載工程と同時に行われ、前記第2ゲートバルブを開放するとともに前記第2カセット保持部に配置される前記第2基板カセットに未処理基板を装填する第2の基板投入工程と、
前記第2ゲートバルブを閉じて前記第2の空間を形成するとともに前記第2の空間を真空排気し、前記ロボットチャンバ内と同等の真空度にする第2排気工程と、
前記カセット保持部を前記所定位置に移動させて、前記第2基板カセットを前記ロボットチャンバと連通する空間に移動する第3のカセット保持部移動工程と、
前記第2基板カセットに配設された前記未処理基板を前記ロボットによって前記搬送装置に移載する第2基板移載工程とを有することを特徴とする基板移載方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−134370(P2012−134370A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286027(P2010−286027)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】