説明

テクスチャ評価装置、テクスチャ評価方法

【課題】対象物の表面において多数の凹凸が繰り返し形成された領域全体についての評価が可能なテクスチャ評価装置、テクスチャ評価方法を提供する。
【解決手段】テクスチャ評価装置1は、3次元計測部2と、3次元計測部2から計測データを入力する入力部3と、距離画像の生成などを行う演算部4と、評価結果を表示する表示部6とを備えている。3次元計測部2は、対象物10表面までの距離を計測し、計測した距離値を計測データとして入力部3に出力する。演算部4は、3次元計測部2から入力部3に入力された距離値を用いて、距離値を画素値とする距離画像を生成する距離画像生成部41を有している。さらに、演算部4は、距離画像の全体についてのテクスチャの凹凸の形状を表す測度の分布を求め、当該分布の統計量を特徴量として算出する特徴量算出部42と、算出された特徴量に基づいてテクスチャの評価を行う評価部43とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面に形成された凹凸が成すテクスチャを評価するテクスチャ評価装置、テクスチャ評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成樹脂製の工業製品などにおいて、製品の装飾性や機能性の確保を目的として、発泡射出成形法などによって表面に比較的細かい凹凸が形成されることがよくある。発泡射出成形法は、発泡剤を用いて物体の表面に凹凸を形成する手法であり、低コストで実現可能である反面、出来上がる凹凸を必ずしも正確に制御することができないという問題がある。そこで、成形後の対象物表面の凹凸を評価し対象物を検査する技術が、生産工程へのフィードバックのためにも重要である。
【0003】
このような対象物の表面の凹凸を評価するに当たっては、表面粗さ(算術平均粗さRa,最大高さRyなど)を求める機能を有した3次元形状計測器が用いられることがある。ただし、表面粗さを求める方法は表面の凹凸の状態を評価できる簡単な方法ではあるが、凹凸がランダムに存在することを前提とした方法であり、製品の装飾を目的として人為的に形成された凹凸形状の評価には適さない。たとえば、凹凸の高さが均一で凹凸の間隔のみにばらつきがある凹凸形状や、凹凸の最大高さが均一で凹凸の尖り具合のみにばらつきがあるような凹凸形状を、表面粗さのみによって、凹凸の間隔や尖り具合も均一な凹凸形状と区別することは困難である。
【0004】
一方、凹凸形状の高さデータをマトリクス状に配置された測定点について測定し、これら高さデータから各測定点について凹凸形状の傾きを表す1次微分データ、凹凸形状のR度合いを表す2次微分データを計算する方法も提案されている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1記載の方法では、凹凸の尖り具合(R度合い)については評価可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−34362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載の発明は、一箇所(各測定点)の凹凸の形状に着目して評価を行うので、対象物の表面において多数の凹凸が繰り返し形成された領域全体についての評価(たとえば人に与える印象等の評価)に用いることはできない。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、対象物の表面において多数の凹凸が繰り返し形成された領域全体についての評価が可能なテクスチャ評価装置、テクスチャ評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のテクスチャ評価装置は、対象物の表面に形成された凹凸が成すテクスチャの評価を行うテクスチャ評価装置であって、前記対象物の前記表面までの距離を計測する3次元計測部と、前記3次元計測部にて形成された前記対象物の前記表面までの距離を画素値とした距離画像を生成する距離画像生成部と、前記距離画像の全体についての前記テクスチャの凹凸の形状を表す測度の分布を求め、当該分布の統計量を特徴量として算出する特徴量算出部と、前記特徴量に基づいて前記テクスチャの評価を行う評価部と、前記評価部での評価結果を出力する出力部とを備えることを特徴とする。
【0009】
このテクスチャ評価装置において、前記特徴量算出部は、凸部分の幅と、凹部分の幅と、凸部分の高さと、凹部分の高さとの少なくとも1つを前記測度として用いることが望ましい。
【0010】
このテクスチャ評価装置において、前記特徴量算出部は、前記距離画像を前記凸部分と前記凹部分とで異なる画素値となるように2値化した2値画像の各ラインごとに、画素のランレングスを求めることにより前記幅を導出することがより望ましい。
【0011】
このテクスチャ評価装置において、前記特徴量算出部は、前記2値画像の前記凸部分の画素のみを用いて前記幅を導出することがより望ましい。
【0012】
本発明のテクスチャ評価方法は、対象物の表面に形成された凹凸が成すテクスチャの評価を行うテクスチャ評価方法であって、3次元計測部にて計測された前記対象物の前記表面までの距離を画素値とした距離画像を取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得された前記距離画像の全体についての前記テクスチャの凹凸の形状を表す測度の分布を求め、当該分布の統計量を特徴量として算出する算出ステップと、前記算出ステップで算出された前記特徴量に基づいて前記テクスチャの評価を行う評価ステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、距離画像の全体についてのテクスチャの凹凸の形状を表す測度の分布を求め、当該分布の統計量である特徴量に基づいてテクスチャの評価を行うので、対象物の表面において多数の凹凸が繰り返し形成された領域全体について評価可能になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態のテクスチャ評価装置を示す概略図である。
【図2】同上の対象物の断面形状を示す概略図である。
【図3】同上の動作の説明図である。
【図4】同上の対象物の一例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図5】同上の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態のテクスチャ評価装置1は、図1に示すように、3次元計測部2と、3次元計測部2から計測データを入力する入力部3と、距離画像の生成などを行う演算部4と、計測データなどを記憶する記憶部5と、評価結果などを表示する表示部6とを備えている。
【0016】
3次元計測部2は、対象物10の表面までの距離を計測する距離センサからなり、計測した対象物10の距離値を計測データとして入力部3に出力する。この種の距離センサとしては、たとえば共焦点法、光切断法、位相シフト法など様々な原理による構成が知られている。
【0017】
演算部4は、3次元計測部2から入力部3に入力された距離値を用いて、距離値を画素値とする距離画像を生成する距離画像生成部41を有している。ここで、3次元計測部2に用いられる距離センサは、演算部4にて対象物10表面の3次元形状を示す距離画像が生成可能となる構成であればよく、特定の構成に限定されず適宜の構成が選択される。
【0018】
さらに、演算部4は、距離画像を用いて、対象物10の表面のテクスチャの特徴量を算出する特徴量算出部42と、算出された特徴量に基づいてテクスチャの評価を行う評価部43とを有している。演算部4の各部で行われる詳しい処理については後述する。ここでいうテクスチャは、対象物10の表面に発泡射出成形法などによって形成された比較的細かい凹凸の集合にて構成されている。
【0019】
記憶部5は、3次元計測部2が計測した距離値、演算部4で生成された距離画像、特徴量、評価結果などを記憶する。表示部6は、評価部43での評価結果を出力する出力部を構成し、評価結果他、演算部4にて生成された各種情報を表示する。なお、テクスチャ評価装置1には、演算部4に対するユーザからの指示を受け付ける操作部(図示せず)として、キーボード、マウスなどのユーザインタフェースも備わっている。
【0020】
以下の説明では、図2に示すような対象物10表面の断面形状において、テクスチャを構成している凹凸の1つの山を形成する単位を「山」または「谷」と呼び、全ての山の集合を「凸部分」、全ての谷の集合を「凹部分」と呼ぶ。つまり、対象物10の表面の平均的な高さ位置を基準高さとして、基準高さから突出した部分が「山」、基準高さから対象物10内側に凹んだ部分が「谷」となり、それぞれの集合が「凸部分」、「凹部分」となる。ここでは、基準高さは概ね「山」の高さと「谷」の高さの中間に位置する。さらに、全ての山および谷の集合を「凹凸」と呼ぶ。ここで、「山」または「谷」は、人が対象物10の表面の断面形状を観測したときに一つの単位として認識する範囲を示す概念であり、厳密に形状によって決まる範囲を示す概念ではない。
【0021】
以下の(1)〜(12)に、本実施形態のテクスチャ評価装置1を用いたテクスチャ評価方法について、第1〜12のステップに分けて説明する。
【0022】
(1)第1のステップでは、テクスチャ評価装置1は対象物10の3次元形状を計測する。ここでは、3次元計測部2は、座標位置(x,y)の1画素に実空間における3次元の座標位置(X,Y,Z)の1点が対応した状態の画像を得る。したがって、入力部3には、実空間の3次元座標(X,Y,Z)を用いてtx,y=(X(x,y),Y(x,y),Z(x,y))で表される各画素の3次元座標データtx,yが入力されることになる。以下、3次元計測部2によって得られた全ての3次元座標データtx,yの集合を〔T〕とする。なお、本実施形態では説明の便宜上、実空間に設定される3次元座標系として3次元計測部2を構成する距離センサ(撮像装置)の光軸にZ軸を一致させた直交座標系を設定するが、実空間に設定される3次元座標系はこのような座標系に限らない。
【0023】
(2)第2のステップとして、テクスチャ評価装置1は、座標位置(x,y)の3次元座標データtx,yのZ軸方向の値(以下、「Z値」という)を、座標位置(x,y)の画素の画素値に変換して成る距離画像D0を距離画像生成部41にて生成する。ここでは、距離画像生成部41は、画素値で表現されるZ値の最大値Zmaxおよび最小値Zminを実際のZ値の最大値、最小値とするか、または任意に定め、距離画像D0の画素値の階調に応じて最大値Zmax、最小値Zminの間を等分割する。距離画像D0の画素値がnビットで表現される場合、Z軸方向の値Zに対する画素値Iは下記数1で表される。
【0024】
【数1】

【0025】
ここで、数1における[α]の表記は値αを超えない最大の整数を意味する。つまり、上記数1を言い換えれば、値Zが最大値Zmaxと最小値Zminとの間にある場合における画素値Iは、(Z−Zmin)2/(Zmax−Zmin)を四捨五入した整数値から1を引いた整数値に相当する。
【0026】
このようにして第2のステップで得られる距離画像D0は、対象物10の本来の3次元形状(以下、「基本形状」という)と、対象物10の表面上に形成されテクスチャを構成する比較的細かい凹凸の形状との両方が混合された3次元形状を反映した画像である。
【0027】
(3)第3のステップでは、距離画像生成部41は、上記第2のステップで得られた距離画像D0から、対象物10の基本形状の成分(以下、「ノイズ成分」という)を除去し、テクスチャを構成する凹凸の形状のみを抽出する。本実施形態においては、距離画像生成部41は、3次元座標データ〔T〕のZ値のみを調整することにより、上記凹凸の形状のみの3次元座標データを取得する。
【0028】
ここで、3次元計測部2の計測視野内の対象物10の基本形状が平面、二次曲面もしくは球面など定式化できる場合またはそれらの形状に近似できる場合と、それ以外の場合とについて異なる処理方法が適用される。
【0029】
まず、対象物10の基本形状が平面、二次曲面もしくは球面など定式化できる場合またはそれらの形状に近似できる場合について説明する。この場合、距離画像生成部41は、対象物10の基本形状のZ値を表す数式モデルを用いて凹凸の形状のみを抽出する。具体的には、距離画像生成部41は、距離画像D0内の全ての画素または一部の画素に対応する3次元座標データtx,yのZ値と数式モデルで表されるZ=f(x,y)との差分の二乗和を最小とする最小二乗法によって、数式モデルのパラメータを求める。数式モデルのパラメータが求まると、距離画像生成部41は全ての3次元座標データtx,yのZ値から数式モデルで表されるZ値(f(x,y))を差し引くことによって、凹凸の形状のみの3次元座標データsx,yを得る。
【0030】
次に、計測視野内の対象物10の基本形状が定式化(数式モデル化)できず、且つ近似することもできない場合について説明する。この場合、距離画像生成部41は、テクスチャを構成する凹凸を十分に消去できる程度であって且つ対象物10の基本形状の成分(ノイズ成分)を抽出できる程度のサイズで、距離画像D0の平滑化を行うことにより、対象物10の基本形状を推定する。たとえば7×7画素のサイズで距離画像D0の画素値I(x,y)の平均値を求めて平滑化を行った場合、平滑化後の距離画像Dfの画素値I’(x,y)は、元の距離画像D0の画素値I(x,y)を用いて、下記数2の式で表される。
【0031】
【数2】

【0032】
距離画像生成部41は、上記数2の式で得られる平滑化後の距離画像Dfを3次元座標データtfx,yに変換し、平滑化後の3次元座標データ(の集合)〔Tf〕を求める。3次元座標データ〔Tf〕の各成分のうち、各点の座標位置(x,y)および実空間の座標位置(X,Y)の値については、平滑化前の3次元座標データ〔T〕の値と同一とする。したがって、平滑化後の3次元座標データ〔Tf〕の各点の成分は、tfx,y=(X(x,y),Y(x,y),Z’(x,y))と表すことができる。ここで、3次元座標データtfx,yのZ軸方向の値Z’は、平滑化後の距離画像Dfの座標位置(x,y)に対応する画素値I’を用いて、下記数3の式で求められる。
【0033】
【数3】

【0034】
このようにして求まるZ軸方向の値Z’を用いて、凹凸の形状のみの3次元座標データsx,yは、sx,y=(X(x,y),Y(x,y),Z(x,y)−Z’(x,y))で表される。
【0035】
(4)第4のステップでは、距離画像生成部41は、上記第3のステップで得られた凹凸の形状のみの3次元座標データsx,yを距離画像Dに変換する。このとき、距離画像生成部41は、実空間におけるZ=0を表す画素値が0を超え2−1を下回る非整数値pで表されるように、画素値で表されるZ値の最大値Zmaxおよび最小値Zminを選択する。望ましくは、値pは1以上の整数mを用いてm−0.5で表される値とする。この条件を満たす最大値Zmax、最小値Zmin、整数mの関係は下記数4の式で表される。
【0036】
【数4】

【0037】
簡単な例としては、たとえばZmin=−Zmaxとすれば、値pは2n−1−0.5となり、数4の条件を満たす。演算部4は、数4の条件を満たすZmax、Zminを決定し、上記数1の式によって凹凸の形状のみの距離画像Dを生成する。
【0038】
(5)第5のステップでは、テクスチャ評価装置1は、上記第4のステップで生成された距離画像Dに対して、特徴量算出部42にて上記値pを閾値に用いて2値化処理を施し、2値画像を生成する。距離画像Dの画素値をIdとすると、2値画像の画素値Ibは下記数5の通りとなる。
【0039】
【数5】

【0040】
ここでは、距離画像Dのうち画素値が閾値pを超える画素全ての集合を「凸部分」とし、画素値が閾値p未満の画素全ての集合を「凹部分」とする。つまり、対象物10の表面の平均的な高さ位置である基準高さの画素値が閾値pであり、基準高さから突出した「山」の集合である「凸部分」の画素値が「1」となり、基準高さから対象物10内側に凹んだ「谷」の集合である「凹部分」の画素値が「0」となる。これにより、2値画像は、凸部分の画素の画素値を「1」(白画素)とし、凹部分の画素の画素値を「0」(黒画素)とした画像になる。
【0041】
(6)第6のステップでは、特徴量算出部42は凸部分の幅(以下、単に「幅」という)を求める。幅は、2値画像における各ラインごとの白画素(画素値が「1」の画素)のランレングスの算出により求められる。ここでいうランレングスとは、画像中の1つの直線上(たとえば、画像のx軸に平行でy=0を満たす1つの直線上)の画素の列からなるライン上を1画素ずつ順番に走査し、同一の画素値が何回連続したかを、画素値が変化するごとにそれぞれ記録した値である。たとえば、着目している画素の列(ライン)の画素値が「00111110001001」という並びになっていた場合、ランレングスの集合は{2,5,3,1,2,1}となる。特徴量算出部42は、画像全体について同一方向に各ラインごとに走査を行うことにより、画像全体のランレングスを得る。
【0042】
この第6のステップでは、特徴量算出部42は、白画素(画素値が「1」の画素)に対応するランレングス(上記例の場合では{5,1,1})のみに着目し、その値の分布を求める。たとえば、図3に示すように5×5画素のサイズの画像の場合、白画素のランレングスの分布は{4,2,1,2,1,2,1}となる。なお、図3では斜線部が黒画素(画素値が「0」の画素)を表している。
【0043】
このようにして求まる分布は、距離画像Dの全体についてのテクスチャの凹凸の形状を表す測度の分布に相当する。ここでいう測度は、テクスチャを構成する「山」および「谷」の個々の寸法あるいは形状を表す値であって、第6のステップにおいては凸部分の幅がこれに当たる。つまり、特徴量算出部42は、白画素のランレングスの分布を、凹凸の形状を表す測度の分布として求める。
【0044】
特徴量算出部42は、この分布を元に算出される統計量、たとえば平均値、中央値、分散、標準偏差、歪度、尖度あるいは山または谷の個数などを算出し、これらの統計量を幅の特徴量とする。平均値や中央値は凹凸が成すテクスチャの凸部分の平均的な太さそのものを表し、分散や標準偏差は凸部分の幅の均一性をそれぞれ表す。また、歪度は凸部分のうち太い凸部分の成分と細い凸部分の成分との比の偏り具合を表し、尖度は凸部分の基本的なパターンと例外的なパターンとの存在比などを表す。
【0045】
また、上記処理によって得られる特徴量は、走査するラインの延長方向によって変化する。たとえば図4に示すように、X軸方向(図中「X」の方向)には凹凸が繰り返し形成され、Y軸方向(図中「Y」の方向)には平坦な表面形状についてランレングスを求める場合、走査するラインの延長方向がX軸方向とY軸方向とでは特徴量は全く異なる。つまり、X軸方向に走査した場合には、図5(a)に示すように凹凸を繰り返す対象物10の表面形状がランレングスに反映されるのに対し、Y軸方向に走査した場合、図5(b)に示すように平坦な対象物10の表面形状がランレングスに反映されることになる。このため、特徴量算出部42では、予め定めた複数の異なる方向についてランレングスを求めるか、あるいはランダムに走査方向を変えながらランレングスを求めることによって、対象物10の表面全体について特徴量の安定化を図ることが望ましい。
【0046】
(7)第7のステップでは、特徴量算出部42は凹部分の幅(以下、「間隔」という)の分布を測度の分布として距離画像Dの全体について求める。間隔は、2値画像における黒画素(画素値が「0」の画素)のランレングスの算出により求められる。つまり、上記第6のステップでは白画素に着目していたのに対し、第7のステップでは黒画素に着目するのであって、ランレングスの算出方法および算出される特徴量は第7のステップでも第6のステップと同様である。
【0047】
(8)第8のステップでは、特徴量算出部42は凸部分の高さ(以下、単に「高さ」という)の分布を測度の分布として距離画像Dの全体について求める。高さは、距離画像Dにおける凸部分の画素値で表されている。具体的には、特徴量算出部42は凸部分の画素値の分布を元に算出される統計量、たとえば平均値、中央値、分散、標準偏差、歪度、尖度などを特徴量として算出する。
【0048】
(9)第9のステップでは、特徴量算出部42は凹部分の高さ(以下、「深さ」という)の分布を測度の分布として距離画像Dの全体について求める。深さは、距離画像Dにおける凹部分の画素値で表されている。具体的には、特徴量算出部42は凹部分の画素値の分布を元に算出される統計量、たとえば平均値、中央値、分散、標準偏差、歪度、尖度などを特徴量として算出する。
【0049】
(10)第10のステップでは、評価部43は具体的な問題に応じてテクスチャの評価に使用する特徴量を選択し、あるいは組み合わせる。ここでいう評価には、凹凸によって形成されるテクスチャの良品・不良品の分類などを含む。一例として、評価部43にて良品のテクスチャAと不良品のテクスチャBとを分類(識別)する場合について説明する。この場合、評価部43はテクスチャA,Bのそれぞれについて上記第6〜9のステップで求まる特徴量を算出し、これら特徴量の中で最も識別力の高い一の特徴量を選択する。または、評価部43は識別力の高い順に複数の特徴量を選択してもよい。演算部4のリソースや演算時間に余裕があるのであれば、評価部43は全ての特徴量を用いてもよい。
【0050】
別の方法として、評価部43は上記第6〜9のステップで求まる特徴量を用いて主成分分析などの手法により、2以上の特徴量を組み合わせて新たな特徴量を生成し、この新たな特徴量を評価に使用する特徴量としてもよい。
【0051】
(11)第11のステップでは、評価部43は上記第10のステップで選択された特徴量を用いてテクスチャの評価を行う。たとえば、上述のようにテクスチャA,Bを識別する場合、評価部43はテクスチャA,Bそれぞれについて、いくつかの対象物(サンプル)10の3次元座標データを用いて特徴量を算出し、サポートベクタマシンのような学習手法によって判別関数を作成する。それから、評価部43は新たなサンプルから算出した特徴量を上記判別関数によって評価し、対象物10の良品(テクスチャA)・不良品(テクスチャB)の判定を行う。
【0052】
(12)第12のステップでは、テクスチャ評価装置1は上記第11のステップで求めたテクスチャの評価結果を表示部6に表示する。また、表示部6には、評価結果だけでなく、評価に使用した特徴量や、距離画像も併せて表示されてもよい。さらに、表示部6は、今回求めた評価結果や特徴量だけでなく、過去に求めて記憶部5に記憶された評価結果や特徴量も表示し、両者を比較できるようにしてもよい。
【0053】
なお、上記第1〜4のステップは距離画像を取得する取得ステップとなり、上記第5〜9のステップは特徴量を算出する算出ステップとなり、上記第10〜11のステップはテクスチャの評価を行う評価ステップとなる。
【0054】
以上説明した本実施形態のテクスチャ評価装置1によれば、評価部43が、特徴量算出部42にて算出された特徴量に基づいてテクスチャを評価するので、対象物10の表面において多数の凹凸が繰り返し形成された領域全体(テクスチャ全体)の評価が可能になる。すなわち、特徴量算出部42では、距離画像の全体についてのテクスチャの凹凸の形状を表す測度(凸部分・凹部分の幅、凸部分・凹部分の高さ)の分布を求め、この分布の統計量を特徴量としている。そのため、評価部43では、計測範囲内に存在する全ての山および谷の情報を用いることによって、テクスチャ全体について評価することができる。したがって、テクスチャ評価装置1では、対象物10の表面において多数の凹凸が繰り返し形成された領域(3次元計測部2の計測範囲)全体についての評価(たとえば人に与える印象等の評価)が可能になる。
【0055】
また、本実施形態では、特徴量算出部42は、3次元計測部2の計測範囲全体に存在する全ての山および谷について、それぞれの幅および高さの分布を求め、この分布から算出される統計量を特徴量としている。そのため、評価部43は、山または谷の幅の分布から算出される統計量によって、凹凸全体の2次元的な粗さに関する評価をすることができ、山または谷の高さの分布から算出される統計量によって、3次元的な粗さ(凹凸感)に関する評価をすることができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、特徴量算出部42は、2値画像の各ラインごとに画素のランレングスを求めることにより幅を導出するので、比較的簡単な処理で山または谷の幅の分布を求めることができる。ここで、特徴量算出部42は、複数の異なる方向についてランレングスを求めることによって、対象物10の表面形状に方向性がある場合でも、評価部43では対象物10の表面全体について安定した評価が可能となる。
【0057】
また、特徴量算出部42は、2値画像の凸部分の画素のみを用いてランレングスにより幅を導出してもよい。これにより、凸部分と凹部分との両方について幅が導出される場合に比べて、演算部4での計算量を削減することができる。しかも、テクスチャが人に与える印象には凹部分よりも凸部分の方が強く影響するので、凹部分よりも凸部分についての特徴量を評価部43での評価に用いる方が、人に与える印象に近い評価が可能となる。この場合、谷の幅(山同士の間隔)を表す測度は算出されなくなるが、山の幅の平均値および山の個数等から同様の測度は推定可能である。特徴量算出部42は、谷の高さ(深さ)についても算出を省略でき、この場合でも、基準高さに対する高さの平均値が凸部分と凹部分とで略同値になることを利用して、凸部分の高さの平均値から凹部分の高さの平均値を推定可能である。
【0058】
なお、テクスチャ評価装置1は、Z値の最大値Zmaxおよび最小値Zminや閾値p、評価に用いる特徴量等の選択が演算部4によって自動的に行われる構成に限らず、操作部に対して人が行う操作入力に応じてこれらの選択が行われる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 テクスチャ評価装置
2 3次元計測部
3 入力部
4 演算部
6 表示部(出力部)
10 対象物
41 距離画像生成部
42 特徴量算出部
43 評価部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面に形成された凹凸が成すテクスチャの評価を行うテクスチャ評価装置であって、
前記対象物の前記表面までの距離を計測する3次元計測部と、前記3次元計測部にて形成された前記対象物の前記表面までの距離を画素値とした距離画像を生成する距離画像生成部と、前記距離画像の全体についての前記テクスチャの凹凸の形状を表す測度の分布を求め、当該分布の統計量を特徴量として算出する特徴量算出部と、前記特徴量に基づいて前記テクスチャの評価を行う評価部と、前記評価部での評価結果を出力する出力部とを備えることを特徴とするテクスチャ評価装置。
【請求項2】
前記特徴量算出部は、凸部分の幅と、凹部分の幅と、凸部分の高さと、凹部分の高さとの少なくとも1つを前記測度として用いることを特徴とする請求項1に記載のテクスチャ評価装置。
【請求項3】
前記特徴量算出部は、前記距離画像を前記凸部分と前記凹部分とで異なる画素値となるように2値化した2値画像の各ラインごとに、画素のランレングスを求めることにより前記幅を導出することを特徴とする請求項2に記載のテクスチャ評価装置。
【請求項4】
前記特徴量算出部は、前記2値画像の前記凸部分の画素のみを用いて前記幅を導出することを特徴とする請求項3に記載のテクスチャ評価装置。
【請求項5】
対象物の表面に形成された凹凸が成すテクスチャの評価を行うテクスチャ評価方法であって、
3次元計測部にて計測された前記対象物の前記表面までの距離を画素値とした距離画像を取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得された前記距離画像の全体についての前記テクスチャの凹凸の形状を表す測度の分布を求め、当該分布の統計量を特徴量として算出する算出ステップと、前記算出ステップで算出された前記特徴量に基づいて前記テクスチャの評価を行う評価ステップとを備えることを特徴とするテクスチャ評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−132754(P2012−132754A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284246(P2010−284246)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】