説明

デジタルフェーズロックドループ回路

【課題】安定した位相同期ループを構成できない。
【解決手段】本発明は、第1、第2のクロック信号をカウントする第1、第2のカウンタと、第1のクロック信号を遅延させた第1、第2の遅延クロック信号を生成する遅延クロック生成回路と、第1のクロック信号及び第1、第2の遅延クロック信号のそれぞれで第2のカウンタのカウント値をサンプリングするサンプル回路と、第1、第2のクロック信号を所定の数で分周した第3のクロック信号との位相差と、サンプリングしたカウント値に応じ、そのサンプリングしたカウント値のうち1つを選択する選択回路と、第1のカウンタ及び選択回路が選択したカウント値に応じて第1、第3のクロックとの位相差を演算する位相誤差演算回路と、位相誤差演算回路の演算結果に応じて第2のクロックを出力するデジタル制御発振器とを有するデジタルフェーズロックドループ回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルフェーズロックドループ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られているアナログフェーズロックドループ(以下、アナログPLLと称す)1は、図17に示すように、位相周波数比較器11と、チャージポンプ12と、アナログフィルタ13と、電圧制御発振器14と、N分周回路15とを有する。このような、アナログフィルタ13等のアナログ回路は、抵抗や容量といったアナログ素子により構成され、回路面積の増大が問題となる。このため、現在、半導体回路で主流であるCMOS技術の微細化の恩恵をアナログPLLは受けにくい。
【0003】
また、アナログPLLは、リファレンスクロック信号FREFの1周期毎にアナログ信号で、フィードバッククロック信号FDとの位相比較動作を行う。このため、周波数ジャンプによる出力クロック信号への入力クロック信号の漏れが発生する問題が起こる。更に素子バラツキ等による入出力間の位相オフセットの問題等が発生する。このため、アナログPLLを、全てデジタル回路構成に置き換えた、完全デジタルフェーズロックドループ(以下、AD(ALL Digital)PLLと称す)が開発されている。
【0004】
ADPLLは、回路面積の増大要因であるアナログ素子を必要としない。代わりに、デジタル信号処理を行うデジタル回路で構成される。デジタル回路は、CMOS技術の微細化により回路面積の縮小が可能である利点を有する。また、位相比較もデジタルデータで行うため、アナログPLLのような、周波数ジャンプによる出力クロック信号への入力クロック信号の漏れも発生しない。加えて、正確な小数点逓倍等も可能になる。このような、ADPLLの例としては、特許文献1のような技術がある。
【0005】
ここで、従来技術としてADPLL2のブロック構成図を図18に示す。ADPLL2は、図17のアナログPLL1をデジタル化したものを想定している。図18に示すように、ADPLL2は、カウンタ21、22と、TDC(Time-to-Digital Converter)回路23と、分周回路24と、加算器25と、位相誤差演算回路26と、デジタルフィルタ27と、DCO(Digitally-Controlled-Oscillator)回路28とを有する。
【0006】
アナログPLL1の位相周波数比較器11及びチャージポンプ12にかかる部分(図17のUNIT10)がADPLL2のカウンタ21、22及びTDC回路23及び加算器25及び位相誤差演算回路26にかかる部分(図18のUNIT20)に相当する。以下同様に、アナログフィルタ13が、デジタルフィルタ27に相当する。電圧制御発振器14が、DCO回路28に相当する。N分周回路15が、分周回路24に相当する。
【0007】
ADPLL2では、カウンタ21は、リファレンスクロック信号FREFをカウントし、デジタル信号PFRCとして出力する。分周回路24は、出力クロック信号FOUTをN分周してフィードバック信号FDを出力し、且つ、Nカウント以内のカウント値をデジタル信号PFDC2として出力する。カウンタ22は、フィードバック信号FDをカウントし、デジタル信号PFDCとして出力する。加算器25は、デジタル信号PFDC1とPFDC2の値の和をとり、デジタル信号PFDCを出力する。TDC回路23は、出力クロック信号FOUTの1クロック以内の位相差(小数点以下の値)をデジタルデータ化して、デジタル信号PTDCと、位相差の正負を示す極性信号PTDC_SIGNとを出力する。
【0008】
位相誤差演算回路26は、デジタル信号PFRC、PFDC、PTDCの値から、PFRC−(PFDC+PTDC)を演算する。その演算処理結果及びPTDC_SIGNからリファレンスクロック信号FREFとフィードバック信号FDの位相差分を、デジタル信号PERRとして出力する。デジタルフィルタ27は、デジタル信号PERRを平滑化し、デジタル信号DCONを出力する。DCO回路28は、デジタル信号DCONに応じた、周波数の出力クロック信号FOUTを出力する。ADPLL2は、(|PFRC−(PFDC+PTDC)|)の値が「0」となるように動作し、「0」となった時点でロック状態となる。
【0009】
ここで、図19〜図21のグラフを用いて、カウント値PFRCとPFDCの関係を説明する。但し、カウンタ21、22は、4ビットカウンタ(16進数カウンタ)であるとする。つまり、0〜15をカウントする。なお、図19〜図21の同符号で示す時刻は、同じ時刻を指すものとする。
【0010】
まず、リファレンスクロック信号FREFとカウント値PFRCの関係を図19に示す。図19に示すように、時刻t1、t3、t5、t7、t9にリファレンスクロック信号FREFが立ち上がる。よって、リファレンスクロック信号FREFの位相データであるカウント値PFRCも、時刻t1、t3、t5、t7、t9に出力される。
【0011】
次に、フィードバッククロック信号FDとカウント値PFDCの関係を図20に示す。図20に示すように、時刻t2、t4、t6、t8、t10にフィードバッククロック信号FDが立ち上がる。よって、フィードバッククロック信号FDの位相データであるカウント値PFDC1も、時刻t2、t4、t6、t8、t10に出力される。また、分周回路24は、出力クロック信号FOUTのカウント毎にカウント値PFDC2を出力する。よって、加算器25により、PFDC1とPFDC2を加算したカウント値PFDCが出力される。
【0012】
最後に、図19、図20のグラフに示したリファレンスクロック信号FREFの位相データであるカウント値PFRC、フィードバッククロック信号FDの位相データであるカウント値PFDCとの位相差分である(|PFRC−PFDC|)の値を図21の最下段のグラフに示す。このように、リファレンスクロック信号FREFとフィードバック信号FDの位相差である値「4」のデータは、出力クロック信号FOUTよりも遅い周期のリファレンスクロック信号FREFのクロックタイミングで算出される。
【0013】
なお、図19〜図21には、説明の簡略化のため、リファレンスクロック信号FREFとフィードバック信号FDの位相差が常に一定であり、且つ、出力クロック信号FOUTの1クロック以内の位相差もない(PTDC=0)場合を示した。しかし、本来は、上述したように(|PFRC−PFDC|)の値が「0」となるよう、ADPLL2が動作するため、時刻t3、t5、t7、t9で算出される(|PFRC−PFDC|)の値が減少することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−76886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ここで、カウンタ21、TDC回路23は、リファレンスクロック信号FREFのクロックタイミングで動作し、データ更新される。カウンタ22、位相誤差演算回路26等その他の回路は、出力クロック信号FOUT、及びその分周クロックタイミングで動作し、データ更新される。しかし、リファレンスクロック信号FREFとフィードバック信号FDは、非同期の関係である。よって、位相データである上述した各デジタルのカウント値PFRC、PFDCの値も、それぞれ異なるタイミングで遷移する。
【0016】
図22、図23を用いて、このことによる問題点を説明する。まず、図22に、位相データの遷移タイミングに問題がない場合を示す。図22に示すように、リファレンスクロック信号FREFの立ち上がりエッジに応じて、位相誤差演算回路26にデジタルデータPFDCが取り込まれる。ここで、リファレンスクロック信号FREFの立ち上がりエッジのタイミングでは、デジタルデータPFDCの値が安定して「9」となっている。よって、位相誤差演算回路26が演算に用いる値も「9」で行える。なお、この例でのデジタルデータPFRCの値は「10」のため、位相差(|PFRC−PFDC|)の値が「1」生じていることになる。
【0017】
図23に、位相データの遷移タイミングに問題がある場合を示す。図23に示すように、図22同様、リファレンスクロック信号FREFの立ち上がりエッジに応じて、位相誤差演算回路26にデジタルデータPFDCが取り込まれる。しかし、図22の場合と異なり、リファレンスクロック信号FREFの立ち上がりエッジのタイミングでは、デジタルデータPFDCの値が「9」から「10」への遷移過程にある。この遷移過程のデジタルデータPFDCの値「X」は不定な値である。よって、この不定なデジタルデータPFDCの値「X」が、位相誤差演算回路26に取り込まれ、演算に用いられる。このため、演算結果が正確な値とならない問題が発生する。特に、この問題はリファレンスクロック信号FREFとフィードバック信号FDの立ち上がりエッジが同期しようとする、ロック状態の近傍で多く発生する。
【0018】
このように、ADPLL2が、確実にPLLとして動作するためには、所定の時刻にそれぞれ安定した正確な位相データPFRC、PFDCを比較する必要がある。しかし、上述したように、所定の時刻に位相データPFRC、PFDCを比較したとき、一方の位相データが遷移過程である場合、正確な位相データの比較が行えない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、第1のクロック信号をカウントする第1のカウンタと、第2のクロック信号をカウントする第2のカウンタと、第1のクロック信号を順次遅延させた第1、第2の遅延クロック信号を生成する遅延クロック生成回路と、前記第1のクロック信号及び第1、第2の遅延クロック信号のそれぞれで前記第2のカウンタのカウント値をサンプリングする第1のサンプル回路と、前記第1のクロック信号と、前記第2のクロック信号を所定の数で分周した第3のクロック信号との位相差、及び、前記第1のサンプル回路がサンプリングしたカウント値とに応じて、前記第1のサンプル回路がサンプリングしたカウント値のうち1つを選択する選択回路と、前記第1のカウンタのカウント値及び前記選択回路が選択したカウント値とに応じて前記第1のクロックと前記第3のクロックとの位相差を演算する位相誤差演算回路と、前記位相誤差演算回路の演算結果に応じて前記第2のクロックを出力するデジタル制御発振器と、を有するデジタルフェーズロックドループ回路である。
【0020】
本発明にかかるデジタルフェーズロックドループ回路は、第2のカウンタのカウント値を前記第1のクロック信号及び第1、第2の遅延クロック信号のそれぞれでサンプリングする。そして、選択回路は、第1、第3のクロック信号の位相差、及び、前記第1のサンプル回路がサンプリングしたカウント値に応じて、そのサンプリングしたカウント値のうち1つを選択する。このため、そのサンプリングしたカウント値のうちある1つが遷移過程でサンプリングした値が不定であっても、他のサンプリングしたカウント値と、第1、第3のクロック信号の位相差の関係から正確なカウント値を選択回路が選択することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかるデジタルフェーズロックドループ回路は、安定した位相同期ループを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態にかかるADPLL回路の構成である。
【図2】実施の形態にかかるTDC回路の構成である。
【図3】実施の形態にかかるTDC回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図4】実施の形態にかかるTDC回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図5】実施の形態にかかるTDC回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図6】実施の形態にかかるPDFサンプル回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図7】実施の形態にかかるPDFサンプル回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図8】実施の形態にかかるPDFサンプル回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図9】実施の形態にかかるPDFサンプル回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図10】実施の形態にかかるPDFサンプル回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図11】実施の形態にかかるPDFサンプル回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図12】実施の形態にかかるPDFサンプル回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図13】実施の形態にかかるPDF選択回路の動作原理を説明するための模式図である。
【図14】実施の形態にかかるPDF選択回路の動作原理を説明するための表である。
【図15】実施の形態にかかるPDF選択回路の動作結果をまとめた表である。
【図16】実施の形態にかかるADPLL回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図17】従来のアナログPLL回路の構成である。
【図18】従来のADPLL回路の構成である。
【図19】従来のADPLL回路の動作を説明する模式図である。
【図20】従来のADPLL回路の動作を説明する模式図である。
【図21】従来のADPLL回路の動作を説明する模式図である。
【図22】従来のADPLL回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図23】従来のADPLL回路の問題点を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の実施の形態
【0024】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1に本実施の形態にかかる完全デジタルフェーズロックドループ(以下、ADPLLと称す)回路100の構成の一例を示す。図1に示すように、ADPLL回路100は、カウンタ101、102と、TDC(Time-to-Digital Converter)回路103と、分周回路104と、加算回路105と、PFDサンプル回路106と、PFDS選択回路107と、サンプリング回路108と、位相誤差演算回路109と、デジタルフィルタ110と、DCO(Digitally-Controlled-Oscillator)回路111と、リファレンスクロック入力端子112と、出力クロック出力端子113とを有する。
【0025】
リファレンスクロック入力端子112はリファレンスクロック信号FREF(第1のクロック信号)を入力する。
【0026】
カウンタ101(第1のカウンタ)は、リファレンスクロック信号FREFが入力されるごとに逓倍設定値をカウントする。例えば、10逓倍の設定であれば、カウンタ101は、リファレンスクロック信号FREFの1クロックが入力される度に、10ずつカウントアップしていく。そして、そのカウント値PFRCをサンプリング回路108に出力する。なお、符号「PFRC」は、カウント値を示すと同時に、そのカウント値を格納するデジタルのカウント値信号名を示すものとする。
【0027】
カウンタ102(第3のカウンタ)は、分周回路104が出力するフィードバッククロック信号FDをカウントする。そして、そのカウント値PFDC1を加算回路105に出力する。
【0028】
分周回路104は、DCO回路111が出力する出力クロック信号FOUTを上記逓倍設定値と等しい値で分周し出力する。その所定の値に分周されたクロックをフィードバッククロック信号FDとする。例えば、分周回路104が入力クロック信号を1/10に分周する機能を有する場合、100MHzの出力クロック信号FOUTが入力されると、クロック周波数が10MHzのフィードバッククロック信号FDを出力する。更に、分周回路104は、上述したフィードバッククロック信号FDの1周期以内の出力クロック信号FOUTのクロックをカウントする。そして、そのカウント値PFDC2を加算回路105に出力する。
【0029】
ここで例えば、分周回路104が入力クロック信号を1/10に分周する機能を有する場合を考える。この場合、カウンタ102は、出力クロック信号FOUTのクロック数が10毎で1カウントし、そのカウント値をPFDC1として出力する。そして、分周回路104は、フィードバッククロック信号FDの1周期以内の出力クロック信号FOUTのクロックカウント値0〜9をカウント値PFDC2として出力する。つまり、10分周設定である本例では、カウンタ102は、出力クロック信号FOUTのクロック数の10の桁、分周回路104は、1の桁をカウントしていることになる。
【0030】
加算回路105は、カウンタ102からのカウント値PFDC1と、分周回路104からのカウント値PFDC2とを加算してカウント値PFDCとして、PFDサンプル回路106に出力する。符号「PFDC」は、カウント値を示すと同時に、そのカウント値を格納するデジタルのカウント値信号名を示すものとする。なお、上述したカウント値PFRC、PFDC1、PFDC2、PFDCの関係は、図19〜図21で説明したものと同様の関係となる。なお、カウンタ102、分周回路104、加算回路105で第2のカウンタを構成する。
【0031】
TDC回路103(位相差検出器)は、上記カウンタ101、102では測定できないリファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDとの、出力クロックFOUT、1クロック以内の位相差を測定する。そして、その測定結果の値を、出力クロック信号FOUTの1周期のデジタルデータの値で正規化する。この正規化の結果をデジタルデータの位相差検出信号PTDCとして出力する。また、正規化の結果、PTDCの値が所定の値以上であるか否かの判定値をデジタルデータの位相差検出信号PTDCに付加する。また、リファレンスクロック信号FREFの位相に対するフィードバッククロック信号FDの位相の進み遅れを位相極性信号PTDC_SIGN(極性値)として出力する。さらに、リファレンスクロック信号FREFを所定の期間、順次遅延させた遅延クロック信号FR1、FR2を出力する。
【0032】
図2にTDC回路103の回路構成の一例を示す。図2に示すように、TDC回路103は、複数のフリップフロップ回路と、複数の遅延素子と、複数のインバータと、複数のAND回路と、比較選択回路201と、バイナリ化エンコーダ202と、正規化回路203とを有する。
【0033】
TDC回路103は、遅延素子を2n+2個(n:正の整数)有する。この複数の遅延素子のうち、フィードバッククロック信号FDを順次遅延させる遅延素子はn+1個ある。この遅延素子をそれぞれBP1〜BPn+1とする。この遅延素子BP1〜BPn+1が、順次遅延させていくフィードバッククロック信号FDをそれぞれFD1〜FDn+1とする。また、複数の遅延素子のうち、リファレンスクロック信号FREFを順次遅延させる遅延素子はn+1個ある。この遅延素子をそれぞれBN1〜BNn+1とする。この遅延素子BN1〜BNn+1(遅延クロック生成回路)が、順次遅延させていくクロック信号FREFをそれぞれクロック信号FR1〜FRn+1とする。この遅延素子BN1〜BNn+1の遅延期間は、出力クロック信号FOUTの1/2周期以内であり、且つ、カウント値PFDCの値が変化する遷移時間以上となるものとする。なお、遅延素子BP1〜BPn+1、BN1〜BNn+1は入力信号に対して同様の遅延を生じさせるものとする。以下、フィードバッククロック信号FDを遅延させたクロック信号FD1〜FDn+1、リファレンスクロック信号FREFを遅延させたクロック信号FR1〜FRn+1を遅延クロック信号と称す。TDC回路103は、これら遅延クロック信号FR1〜FRn+1のうち、FR1、FR2をPFDサンプル回路106に出力する。
【0034】
更に、TDC回路103は、フリップフロップ回路を2n+3個有する。この複数のフリップフロップ回路のうち、遅延クロック信号FD1〜FDn+1を入力データ端子に入力し、リファレンスクロック信号をクロック端子に入力するフリップフロップ回路をそれぞれFFP1〜FFPn+1とする。また、複数のフリップフロップ回路のうち、フィードバッククロック信号FDを入力データ端子に入力し、遅延クロック信号FR1〜FRn+1をクロック端子に入力するフリップフロップ回路をそれぞれFFN1〜FFNn+1とする。また、遅延しないフィードバッククロック信号FDを入力データ端子に、遅延しないリファレンスクロック信号をクロック端子に入力するフリップフロップ回路をFF0とする。
【0035】
フリップフロップ回路FFN1〜FFNn+1の出力データ端子から出力される信号をそれぞれPDN1〜PDNn+1、フリップフロップ回路FF0の出力データ端子から出力される信号をPD0、フリップフロップ回路FFP1〜FFPn+1の出力データ端子から出力される信号をそれぞれPDP1〜PDPn+1とする。以下、これらの信号PDN1〜PDNn+1、PDP1〜PDPn+1をサンプリング信号と称す。
【0036】
TDC回路103は、インバータ素子を2n+2個有する。この複数のインバータ素子のうち、サンプリング信号PDN1〜PDNnが入力されるインバータ素子をそれぞれIVN1〜IVNnとする。そして、インバータ素子IVN1〜IVNnが出力する信号をそれぞれPDNB1〜PDNBnとする。また、複数のインバータ素子のうち、サンプリング信号PDP1〜PDPn+1が入力されるインバータ素子をそれぞれIVP1〜IVPn+1とする。そして、インバータ素子IVP1〜IVPnが出力する信号をそれぞれPDNB1〜PDNBnとする。更に、信号PD0が入力されるインバータ素子をIV0とし、インバータ素子IV0が出力する信号をPDB0とする。
【0037】
TDC回路103は、AND回路を2n+2個有する。各AND回路は2つの入力の積を演算し、演算結果を出力する。この複数のAND回路のうち、n+1個をANDN1〜ANDNn+1、更に残りのn+1個をANDP1〜ANDPn+1とする。
【0038】
AND回路ANDN1は、サンプリング信号PDN1と信号PDB0を入力し、演算結果を信号NEG[n]として出力する。AND回路ANDN2は、サンプリング信号PDN2と信号PDNB1を入力し、演算結果を信号NEG[n−1]として出力する。AND回路ANDN3は、サンプリング信号PDN3と信号PDNB2を入力し、演算結果を信号NEG[n−2]として出力する。以下、同様な構成を繰り返し、最終的にAND回路ANDNn+1は、サンプリング信号PDNn+1と信号PDNBnを入力し、演算結果を信号NEG[0]として出力する。
【0039】
一方、AND回路ANDP1は、サンプリング信号PD0と信号PDPB1を入力し、演算結果を信号POS[n]として出力する。AND回路ANDP2は、サンプリング信号PDP1と信号PDPB2を入力し、演算結果を信号POS[n−1]として出力する。AND回路ANDP3は、サンプリング信号PDP2と信号PDPB3を入力し、演算結果を信号POS[n−2]として出力する。以下、同様な構成を繰り返し、最終的にAND回路ANDPn+1は、サンプリング信号PDPnと信号PDPBn+1を入力し、演算結果を信号POS[0]として出力する。以下、信号NEG[n]〜NEG[0]、POS[n]〜POS[0]をエッジ抽出信号と称す。
【0040】
比較選択回路201は、上記エッジ抽出信号NEG[n]〜NEG[0]をバス化し、そのバスにより送信されるエッジ抽出信号NEG[n:0]と、上記エッジ抽出信号POS[n]〜POS[0]をバス化し、そのバスにより送信されるエッジ抽出信号POS[n:0]とを入力する。比較選択回路201は、エッジ抽出信号NEG[n:0]と、POS[n:0]とを比較する。後述する図3〜図5で説明するが、信号NEG[n:0]とPOS[n:0]は、リファレンスクロック信号FREFの立ち上がりエッジを基準としたフィードバッククロック信号FDの立ち上がりエッジの位相差情報を有している。この信号NEG[n:0]と、POS[n:0]とを比較することで、リファレンスクロック信号FREFに対して、フィードバッククロック信号FDの位相の進み遅れを判定することができる。エッジ抽出信号NEG[n:0]とPOS[n:0]のどちらかの信号に「1」の値があるかを判定し、例えばPOS[n:0]に「1」がある場合、ハイレベルの位相極性信号PTDC_SIGNを出力し、且つエッジ抽出信号POS[n:0]を信号TDC[n:0]として出力する。反対にエッジ抽出信号NEG[n:0]側に「1」の値がある場合、ロウレベルの信号PTDC_SIGNを出力し、且つエッジ抽出信号NEG[n:0]を信号TDC[n:0]として出力する。
【0041】
バイナリ化エンコーダ202は、比較選択回路201からの信号TDC[n:0]に応じて、デジタルデータを生成する。正規化回路203は、出力クロック信号FOUTから、出力クロック信号FOUTの1周期をデジタルデータとして生成し、そのデータ値でバイナリ化エンコーダ202が生成したデジタルデータの値を正規化する。そして、正規化した値をデジタルデータの位相差検出信号PTDCとして出力する。なお、出力クロック信号FOUTの1周期のデジタルデータは、遅延素子BP1〜BPn+1と同様の遅延を発生させる遅延素子の段数として、正規化回路203が生成する。この位相差検出信号PTDCの値は、リファレンスクロック信号FREFに対して、フィードバッククロック信号FDの位相の進み遅れが、出力クロック信号FOUTの1周期以下なら、0以上1以下の少数値のデジタルデータとして出力される。また、正規化回路203は、正規化した結果の値(PTDCの値)が、0.5より小さければデジタルデータの位相差検出信号PTDCのMSB(most significant bit)は「0」となり、0.5以上ならばMSBは「1」となる。
【0042】
例えば、正規化回路203が生成した出力クロック信号FOUTの1周期のデジタルデータの値が「10」、バイナリ化エンコーダ202のデジタルデータの値が「2」である場合、正規化後のデジタルデータの値は「0.2」となる。よって、デジタルデータの位相差検出信号PTDCは、MSBが「0」で、値が「0.2」となる。同様に、正規化回路203が生成した出力クロック信号FOUTの1周期のデジタルデータの値を「10」とし、バイナリ化エンコーダ202のデジタルデータの値が「7」ならば、正規化後のデジタルデータの値が「0.7」となる。よって、デジタルデータの位相差検出信号PTDCは、MSBが「1」で、値が「0.7」となる。
【0043】
以上、TDC回路103は、出力クロック信号FOUTの1周期以下の誤差を小数点以下の値のデジタルデータを格納する位相差検出信号PTDCとして出力できる。また、位相差検出信号PTDCのMSBの値により、リファレンスクロック信号FREFに対して、フィードバッククロック信号FDの位相の位相差が、出力クロック信号FOUTの1/2周期より大きいか小さいかが判定できる。また、位相極性信号PTDC_SIGNにより、リファレンスクロック信号FREFに対して、フィードバッククロック信号FDの位相の遅れ、進みが判定できる。但し、図2のTDC回路103の構成は一例であり、同一機能を有するなら、他の回路構成で実現してもよい。
【0044】
以下、上述したTDC回路103の動作について簡単に説明する。図3〜図5にTDC回路103の動作を説明するタイミングチャートを示す。図3では、フィードバッククロック信号FDの位相が、リファレンスクロック信号FREFの位相に対して期間T1遅れている。図3に示すように、リファレンスクロック信号FREFが時刻t1にハイレベルに立ち上がるが、この立ち上がりエッジに対して、フィードバッククロック信号FDの立ち上がりエッジが期間T1遅れている。このため、時刻t1にリファレンスクロック信号FREF、時刻t2に遅延クロック信号FR1がハイレベルに立ち上がってもフリップフロップFFN1〜FFNn+1、FF0、FFP1〜FFPn+1が出力する全てのサンプリング信号PDN1〜PNPn+1、PD0、PDP1〜PDPn+1は、ロウレベルとなる。
【0045】
時刻t3にフィードバッククロック信号FDがハイレベルに立ち上がる。このフィードバッククロック信号FDの位相は、遅延クロック信号FR2より進んでいるため、時刻t4の遅延クロック信号FR2の立ち上がりエッジに応じてサンプリング信号PDN2がハイレベルに立ち上がる。以降、遅延クロック信号FR3〜FRn+1の立ち上がりエッジに応じて信号PDN3〜PDNn+1がハイレベルに立ち上がる。
【0046】
このことからエッジ抽出信号NEG[n−1]のみが、時刻t4にハイレベルに立ち上がる、つまりAND回路ANDN2の出力値が「1」となる。更に、比較選択回路201は、NEG[n−1]が「1」の値を有するため、ロウレベルの位相極性信号PTDC_SIGNと、NEG[n:0]を信号TDC[n:0]として出力する。バイナリ化エンコーダ202は、この信号TDC[n:0]に応じて、リファレンスクロック信号FREFの位相に対して、フィードバッククロック信号FDの位相が遅延素子で3段分遅延を有していると判断し、「3」の値を出力する。正規化回路203は、この値を正規化し、位相差検出信号PTDCとして出力する。なお、位相差検出信号PTDCのMSBは、出力クロック信号FOUTの1周期分の値に応じて決まる。例えば、出力クロック信号FOUTの1周期分のデジタル値が「10」ならば、正規化後の値が、「0.3」となるため、位相差検出信号PTDCは「0」となる。出力クロック信号FOUTの1周期分のデジタル値が「5」ならば、正規化後の値が、「0.6」となるため、位相差検出信号PTDCのMSBの値は「1」となる。以下、位相差検出信号PTDCのMSBの値については、図4、図5の説明でも同様とする。
【0047】
図4では、リファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDの立ち上がりエッジが時刻t1でほぼ同時にハイレベルに立ち上がっている。この場合、時刻t1にサンプリング信号PD0がハイレベルに立ち上がる。以降、遅延クロック信号FR1〜FRn+1の立ち上がりエッジに応じて信号PDN1〜PDNn+1がハイレベルに立ち上がる。一方、サンプリング信号PDP1〜PDPn+1は、全てロウレベルとなる。
【0048】
このことからエッジ抽出信号POS[n]のみが、時刻t1にハイレベルに立ち上がる。つまりAND回路ANDP1の出力値が「1」となる。更に、比較選択回路201は、POS[n]が「1」の値を有するため、ハイレベルの位相極性信号PTDC_SIGNと、POS[n:0]を信号TDC[n:0]として出力する。バイナリ化エンコーダ202は、この信号TDC[n:0]に応じて、リファレンスクロック信号FREFの位相に対して、フィードバッククロック信号FDの位相が遅延を有していないと判断し、「1」の値を生成する。正規化回路203は、この値を正規化し、位相差検出信号PTDCとして出力する。
【0049】
図5では、リファレンスクロック信号FREFの位相がフィードバッククロック信号FDの位相に対して期間T2遅れている。このため、時刻t1にフィードバッククロック信号FD、時刻t2に遅延クロック信号FD1がハイレベルに立ち上がってもフリップフロップFFN1〜FFNn+1、FF0、FFP1〜FFPn+1からのサンプリング信号PDN1、PD0、PDP1〜PDPn+1は、全てロウレベルとなる。時刻t3にリファレンスクロック信号FREFがハイレベルに立ち上がる。このため、時刻t3に、フリップフロップFF0、FFP1が出力するそれぞれのサンプリング信号PD0、PDP1がハイレベルとなる。以降、遅延クロック信号FR1〜FRn+1の立ち上がりエッジに応じて信号PDN1〜PDNn+1がハイレベルに立ち上がる。
【0050】
このことからエッジ抽出信号POS[n−1]のみが、時刻t3にハイレベルに立ち上がる。つまりAND回路ANDP2の出力値が「1」となる。更に、比較選択回路201は、POS[n−1]が「1」の値を有するため、ハイレベルの位相極性信号PTDC_SIGNと、POS[n:0]を信号TDC[n:0]として出力する。バイナリ化エンコーダ202は、この信号TDC[n:0]に応じて、リファレンスクロック信号FREFの位相に対して、フィードバッククロック信号FDの位相が遅延素子で2段分進んでいると判断し、「2」の値を生成する。正規化回路203は、この値を正規化し、位相差検出信号PTDCとして出力する。
【0051】
なお、上述したNEG[n:0]、POS[n:0]を第1の比較結果、第2の比較結果とする。このように、TDC回路103は、クロック信号としてリファレンスクロック信号、データ信号としてフィードバッククロック信号FDを用い、それぞれの信号を遅延させる回路を持たせている。そして、それぞれ遅延させたリファレンスクロック信号とフィードバッククロック信号FDを比較し、その第1の比較結果と第2の比較結果に応じて、リファレンスクロック信号に対するフィードバッククロック信号FDの位相差、および、位相の遅れ進みを測定する。また、その位相差を出力クロック信号FOUTの1周期分で正規化する。
【0052】
PFDサンプル回路106は、加算回路105からのカウント値PFDCの値を、リファレンスクロック信号FREF、遅延クロック信号FR1、FR2の立ち上がりエッジのタイミングで取り込む。そして、それぞれのタイミングで取り込んだ、カウント値を位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2として、PFD選択回路107へ出力する。リファレンスクロック信号FREFの立ち上がりエッジのタイミングで、取り込んだカウント値PFDCの値を位相データ信号PFDS0、遅延クロック信号FR1の立ち上がりエッジのタイミングで取り込んだカウント値PFDCの値を位相データ信号PFDS1、遅延クロック信号FR2の立ち上がりエッジのタイミングで取り込んだカウント値PFDCの値を位相データ信号PFDS2とする。
【0053】
ここで、フィードバッククロック信号FDとリファレンスクロック信号FREFの立ち上がりエッジのタイミングの違いで、PFDサンプル回路106から出力される位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2の値も異なる。フィードバッククロック信号FDの立ち上がりタイミングとリファレンスクロック信号FREFの立ち上がりエッジのタイミングの違いに応じた、位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2の値の関係を図6〜図12に示す。
【0054】
ここで、図6にリファレンスクロック信号FREFから遅延クロック信号FR1の遅延量をtdFR、リファレンスクロック信号FREFから遅延クロック信号FR2の遅延量を2×tdFRとして示す。ここで、PFDサンプル回路106がリファレンスクロック信号FREF、遅延クロック信号FR1、FR2により、取り込むカウント値PFDCの値が全て不確定な値となることを避けるため、遅延量tdFRをフィードバッククロック信号FDが入力されてからPFDC値が確定するまでの遅延時間tdFD以上の遅延量とする必要がある。更に、出力クロック信号FOUTの2周期以上にわたって、位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2を取り込むことを避けるため、2×tdFRは出力クロック信号FOUTの1周期(以後、tFOとする)の半分以内の遅延量であるものとする。このように、2×tdFRをtFOの半分以内の遅延量とする理由は、後述する位相データ判定時に上述した位相差検出信号PTDCを使用するためである。理想的には、tdFD<<tdFR<2×tdFR<<tFO(以後、条件式1と称す)を満たす必要がある。これにより、位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2として捕獲されるデータは、確定した隣り合うデータ値かその遷移途中の不定値の3つの状態しかとりえないこととなる。但し、実際には、tdFDの遅延を小さくするには限界があり、さらに出力クロック信号FOUTが高速となる場合、前述した条件式を常に満たすことが困難となり、tdFDとtdFRが限りなく等しくなる場合が存在する。本実施例には、そのような場合でも以下に説明するように正しいデータを得る処理を行なうことでこの問題を解決している。なお、上述した説明は図6を元に行ったが、図7〜図12の場合でも同様である。
【0055】
まず、図6では、時刻t1でリファレンスクロック信号FREFがハイレベルに立ち上がる。この時刻t1時点でのカウント値PFDCの値PFDCnを、位相データ信号PFDS0として出力する。時刻t2で遅延クロック信号FR1がハイレベルに立ち上がる。この時刻t2でのカウント値PFDCの値PFDCnを、位相データ信号PFDS1として出力する。時刻t3で遅延クロック信号FR2がハイレベルに立ち上がる。この時刻t3でのカウント値PFDCの値PFDCnを、位相データ信号PFDS2として出力する。その後、フィードバッククロック信号FDが立ち上がり、時刻t4において、カウント値PFDCの値がPFDCnからPFDCn+1となる。しかし、この時刻t4以前にカウント値PFDCが取り込まれており、位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2の全ての値が同じ値のPFDCnとなっている。このため、PFDS0=PFDS1=PFDS2となる。なお、符号「PFDS0」「PFDS1」「PFDS2」は、それぞれ位相データ信号名を示すと同時に、その信号が格納するカウント値を示すものとする。
【0056】
図7では、時刻t1でリファレンスクロック信号FREFがハイレベルに立ち上がる。この時刻t1時点でのカウント値PFDCの値PFDCnを、位相データ信号PFDS0として出力する。時刻t2で遅延クロック信号FR1がハイレベルに立ち上がる。この時刻t2でのカウント値PFDCの値PFDCnを、位相データ信号PFDS1として出力する。その後、フィードバッククロック信号FDが立ち上がり、時刻t3において、カウント値PFDCの値がPFDCnからPFDCn+1となる。この時刻t3に遅延クロック信号FR2がハイレベルに立ち上がる。このため、位相データ信号PFDS2として、出力されるカウント値PFDCの値は、遷移状態の値であり不定な値として出力される。
【0057】
図8では、時刻t1でリファレンスクロック信号FREFがハイレベルに立ち上がる。この時刻t1時点でのカウント値PFDCの値PFDCnを、位相データ信号PFDS0として出力する。時刻t2で遅延クロック信号FR1がハイレベルに立ち上がる。この時刻t2でのカウント値PFDCの値PFDCnを、位相データ信号PFDS1として出力する。その後、フィードバッククロック信号FDが立ち上がり、時刻t3において、カウント値PFDCの値がPFDCnからPFDCn+1に遷移する。時刻t4で、遅延クロック信号FR2がハイレベルに立ち上がる。この時刻t4時点でのカウント値PFDCの値PFDCn+1を、位相データ信号PFDS2として出力する。
【0058】
ここで、図7、図8のパターンでは、位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2の値が、PFDS0=PFDS1≠PFDS2となっている。
【0059】
図9では、時刻t1でリファレンスクロック信号FREFがハイレベルに立ち上がる。この時刻t1時点でのカウント値PFDCの値PFDCnを、位相データ信号PFDS0として出力する。その後、フィードバッククロック信号FDが立ち上がり、時刻t2においてカウント値PFDCの値がPFDCnからPFDCn+1へ遷移する。この時刻t2において遅延クロック信号FR1がハイレベルに立ち上がる。このため、位相データ信号PFDS1として、出力されるカウント値PFDCの値は、遷移状態の値であり不定な値として出力される。時刻t3で遅延クロック信号FR2がハイレベルに立ち上がる。この時刻t3時点でのカウント値PFDCの値PFDCn+1を、位相データ信号PFDS2として出力する。このため、位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2の値は、全て異なる値となる。よって、PFDS0≠PFDS1≠PFDS2となる。
【0060】
図10では、時刻t1でリファレンスクロック信号FREFがハイレベルに立ち上がる。この時刻t1時点でのカウント値PFDCの値PFDCnを、位相データ信号PFDS0として出力する。その後、フィードバッククロック信号FDが立ち上がり、時刻t2において、カウント値PFDCの値がPFDCnからPFDCn+1へ遷移する。時刻t3で遅延クロック信号FR1がハイレベルに立ち上がる。この時刻t3でのカウント値PFDCの値PFDCn+1を、位相データ信号PFDS1として出力する。時刻t4で、遅延クロック信号FR2がハイレベルに立ち上がる。この時刻t4時点でのカウント値PFDCの値PFDCn+1を、位相データ信号PFDS2として出力する。
【0061】
図11では、フィードバッククロック信号FDの立ち上がり、時刻t1において、カウント値PFDCの値がPFDCnからPFDCn+1へ遷移する。この時刻t1においてリファレンスクロック信号FREFがハイレベルに立ち上がる。このため、位相データ信号PFDS0として、出力されるカウント値PFDCの値は、遷移状態の値であり不定な値として出力される。時刻t2で遅延クロック信号FR1がハイレベルに立ち上がる。この時刻t2時点でのカウント値PFDCの値PFDCn+1を、位相データ信号PFDS1として出力する。時刻t3で遅延クロック信号FR2がハイレベルに立ち上がる。この時刻t3時点でのカウント値PFDCの値PFDCn+1を、位相データ信号PFDS2として出力する。
【0062】
ここで、図10、図11のパターンでは、位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2の値が、PFDS0≠PFDS1=PFDS2となっている。
【0063】
図12では、フィードバッククロック信号FDの立ち上がり、時刻t1において、カウント値PFDCの値がPFDCnからPFDCn+1へ遷移する。時刻t2でリファレンスクロック信号FREFがハイレベルに立ち上がる。この時刻t2時点でのカウント値PFDCの値PFDCn+1を、位相データ信号PFDS0として出力する。時刻t3で遅延クロック信号FR1がハイレベルに立ち上がる。この時刻t3時点でのカウント値PFDCの値PFDCn+1を、位相データ信号PFDS1として出力する。時刻t4で遅延クロック信号FR2がハイレベルに立ち上がる。この時刻t4時点でのカウント値PFDCの値PFDCn+1を、位相データ信号PFDS2として出力する。本パターンでは、位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2の全ての値が同じ値のPFDCn+1となっている。このため、PFDS0=PFDS1=PFDS2となる。
【0064】
以上のように、フィードバッククロック信号FDの立ち上がりタイミングとリファレンスクロック信号FREFの立ち上がりタイミングの違いで、上述した7つのパターンが存在する。
【0065】
PFD選択回路107は、TDC回路103が出力する位相極性信号PTDC_SIGNと、位相差検出信号PTDCと、位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2の値とに応じて、選択位相データ信号PFD_ONEを出力する。
【0066】
PFD選択回路107の動作理論を下記に説明する。まず、上述したが、TDC回路103が出力する位相差検出信号PTDCは、カウンタ101、102では測定できないリファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDとの、出力クロックFOUTの1周期以内の位相差情報を有している。位相差検出信号PTDCには、リファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDの位相差を出力クロックFOUTの1周期以内で正規化したデジタルデータの値と、その位相差が出力クロックFOUTの1/2周期以上か否かを示す値がMSBに格納されている。また、位相極性信号PTDC_SIGNは、リファレンスクロック信号FREFに対して、フィードバッククロック信号FDの位相の進み遅れを示す判定信号である。例えば、位相極性信号PTDC_SIGNは、リファレンスクロック信号FREFに対してフィードバッククロック信号FDが遅れている場合は、ロウレベル、つまり値が「0」として出力される。リファレンスクロック信号FREFに対してフィードバッククロック信号FDが進んでいる場合は、ハイレベル、つまり値が「1」として出力される。
【0067】
このため、PFD選択回路107は、TDC回路103が出力する位相極性信号PTDC_SIGNと、位相差検出信号PTDCにより、リファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDとの位相の関係が、図13に示す4パターンのうちどれであるかが判定できる。
【0068】
まず、パターンAは、リファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDとの位相差が出力クロックFOUTの1/2周期以下、且つリファレンスクロック信号FREFの位相がフィードバッククロック信号FDの位相より進んでいる場合を示している。
【0069】
パターンBは、リファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDとの位相差が出力クロックFOUTの1/2周期以上、且つリファレンスクロック信号FREFの位相がフィードバッククロック信号FDの位相より遅れている場合を示している。
【0070】
パターンCは、リファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDとの位相差が出力クロックFOUTの1/2周期以下、且つリファレンスクロック信号FREFの位相がフィードバッククロック信号FDの位相より遅れている場合を示している。
【0071】
パターンDは、リファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDとの位相差が出力クロックFOUTの1/2周期以上、且つリファレンスクロック信号FREFの位相がフィードバッククロック信号FDの位相より進んでいる場合を示している。
【0072】
ここで、図14に、図13に示したパターンA〜Dと、位相極性信号PTDC_SIGNと位相差検出信号PTDCのMSBの関係をまとめた表を示す。このように、位相極性信号PTDC_SIGNと位相差検出信号PTDCのMSBの値により、リファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDとの位相の関係を判断することができる。
【0073】
ここで、図6〜図12に示した位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2と、パターンA〜Dとの関係を考える。まず、図6で示したリファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDのパターンは、リファレンスクロック信号FREFと、遅延クロック信号FR1、FR2の遅延関係から、パターンAもしくは、パターンDに該当することがわかる。また、図12で示したリファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDのパターンは、パターンBもしくはCに該当することがわかる。この図6、図12の両パターンとも、位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2のデジタルデータ値が同じ値である(PFDS0=PFDS1=PFDS2)。つまり、パターンDもしくは、パターンBであれば、リファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDの位相差が出力クロックFOUTの1/2周期以上あり、パターンAもしくは、パターンCであっても、フィードバッククロック信号FDのデータ遷移時間(tdFD)以上の位相差が存在していることが想定できる。よって、この場合は、位相データ信号PFDS0〜PFDS2のどの値を選択してもよく、その選択した位相データ信号を選択位相データ信号PFD_ONEとしてPFD選択回路107が出力する。
【0074】
次に、図7、図8で示したリファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDのパターンは、位相データ信号PFDS0、PFDS1が同じ値であるが、PFDS2はそれとは異なる値となっている(PFDS0=PFDS1≠PFDS2)。この場合、フィードバッククロック信号FDの立ち上がりエッジが、リファレンスクロック信号FREFの立ち上がりエッジ近傍にあることが予測される。更に、フィードバッククロック信号FDの立ち上がりエッジが、遅延クロック信号FR1、FR2の立ち上がりエッジ近傍にあることが予測される。
【0075】
ここで、リファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDの位相の関係は、大半がパターンAの状態となっていることが想定される。よって、位相極性信号PTDC_SIGNの値が「0」であれば、PFD選択回路107は、位相データ信号PFDS0を選択し、選択位相データ信号PFD_ONEとして出力する。但し、前述したような条件式1を十分満たすことが困難な場合は、想定とは異なり、TDC回路103が位相極性信号PTDC_SIGNの値として「1」を出力する場合も考えられる。この場合は、リファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDの位相の関係は、パターンCの状態となっていることが想定される。よって、位相極性信号PTDC_SIGNの値が「1」であれば、PFD選択回路107は、位相データ信号PFDS0の値に「1」を加えた値(PFDS0+1)のデジタルデータを選択位相データ信号PFD_ONEとして出力する。これにより、TDC回路103で測定した位相関係に合わせた正確な位相データを選択できることとなる。以降に示すその他の状態においても、位相極性信号PTDC_SIGNの状態を用いてデータ選択を行なう。
【0076】
次に、図9で示したリファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDのパターンは、位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2が全て異なる値となっている(PFDS0≠PFDS1≠PFDS2)。この場合、フィードバッククロック信号FDの立ち上がりエッジが、リファレンスクロック信号FREFの立ち上がりエッジ近傍にあることが予測される。ここで、リファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDの位相の関係は、パターンAもしくは、パターンCの状態となっていることが想定される。PFD選択回路107は、位相極性信号PTDC_SIGNの値が「0」であれば、パターンAであると判断して、位相データ信号PFDS0を選択し、選択位相データ信号PFD_ONEとして出力する。または、PFD選択回路107は、位相極性信号PTDC_SIGNの値が「1」であれば、パターンCであると判断して、位相データ信号PFDS2を選択し、選択位相データ信号PFD_ONEとして出力する。
【0077】
次に、図10、図11で示したリファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDのパターンは、位相データ信号PFDS1、PFDS2が同じ値であるが、PFDS0はそれとは異なる値となっている(PFDS0≠PFDS1=PFDS2)。この場合、フィードバッククロック信号FDの立ち上がりエッジが、リファレンスクロック信号FREFの立ち上がりエッジ近傍にあることが予測される。更に、この場合、図7、図8で示した場合とは逆の関係となっており、フィードバッククロック信号FDの立ち上がりエッジが、リファレンスクロック信号FREFの立ち上がりエッジより進んでいることが予測される。
【0078】
ここで、リファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDの位相の関係は、大半がパターンCの状態となっていることが想定される。よって、位相極性信号PTDC_SIGNの値が「1」であれば、PFD選択回路107は、位相データ信号PFDS2を選択し、選択位相データ信号PFD_ONEとして出力する。但し、位相極性信号PTDC_SIGNの値が「0」であれば、リファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDの位相の関係は、パターンAの状態となっていることが想定される。よって、位相極性信号PTDC_SIGNの値が「0」であれば、PFD選択回路107は、位相データ信号PFDS2の値から「1」を引いた値(PFDS2−1)のデジタルデータを選択位相データ信号PFD_ONEとして出力する。
【0079】
以上がPFD選択回路107の動作理論の説明である。PFD選択回路107が上記動作により、出力する選択位相データ信号PFD_ONEのパターンをまとめた表を図15に示す。図15に示すように、PFD選択回路107は、位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2の値及び位相極性信号PTDC_SIGNの値に応じて、選択位相データ信号PFD_ONEを生成し、出力する。
【0080】
サンプリング回路108は、遅延クロック信号FRn+1の立ち上がりエッジ後、つまり各位相情報のデータの確定後、出力クロックFOUTのクロックタイミングで各位相情報を取り込む。そして、取り込んだ位相情報に応じたデジタル値を有する信号を位相誤差演算回路109に出力する。ここで言う各位相情報とは、位相差検出信号PTDC、カウント値信号PFRC、選択位相データ信号PFD_ONE、位相極性信号PTDC_SIGNであるとする。また、サンプリング回路108が出力するデジタル値を有する信号をPFR、PTD、DERR_PTDC_SIGN、PFDとする。なお、便宜上、符号「PFR」「PTD」「PFD」「DERR_PTDC_SIGN」は、デジタル信号名を示すと同時に、そのデジタル信号が格納する値を示すものとする。また、デジタル信号PFRは信号PFRCに対応し、デジタル信号PTDは位相差検出信号PTDCに対応し、デジタル信号DERR_PTDC_SIGNは位相極性信号PTDC_SIGNに対応し、デジタル信号PFDは選択位相データ信号PFD_ONEに対応する。
【0081】
図16に、ADPLL回路100の特徴部分であるPFDサンプル回路106、PFD選択回路107の動作を説明するためのタイミングチャートを示す。図1と図16で示される符号のうち同じ符号のものは、同一の信号を指すものとする。また、本例では、リファレンスクロック信号FREFの位相が、フィードバッククロック信号FDより遅れており、且つ、フィードバッククロック信号FDの立ち上がりエッジが、リファレンスクロック信号FREFの立ち上がりエッジ近傍にある場合を想定する。つまり、図13のパターンCに該等する。
【0082】
図16に示すように、時刻t1にフィードバッククロック信号FDが立ち上がる。そのフィードバッククロック信号FDの立ち上がりエッジに対応して、時刻t2に加算回路105からのカウント値PFDCが「9」から「10」へ遷移する。時刻t2とほぼ同時刻にリファレンスクロック信号FREFも立ち上がる。このリファレンスクロック信号FREFの立ち上がりエッジに応じて、PFDサンプル回路106がカウント値PFDCを取り込む。しかし、時刻t2では、カウント値PFDCが「9」から「10」へ遷移途中である。このため、PFDサンプル回路106が取り込んだカウント値PFDCは、不定な値(図中の「X」)となる。この値は、位相データ信号PFDS0としてPFDサンプル回路106から出力される。
【0083】
次に、時刻t3に遅延クロック信号FR1が立ち上がる。この遅延クロック信号FR1の立ち上がりエッジに応じて、PFDサンプル回路106がカウント値PFDCを取り込む。このときのカウント値PFDCは、既に遷移が終わっており、値が「10」に確定している。このため、この値が「10」のカウント値PFDCが位相データ信号PFDS1としてPFDサンプル回路106から出力される。
【0084】
次に、時刻t4に遅延クロック信号FR2が立ち上がる。この遅延クロック信号FR2の立ち上がりエッジに応じて、PFDサンプル回路106がカウント値PFDC(値が「10」)を取り込む。この値が「10」のカウント値PFDCが位相データ信号PFDS2としてPFDサンプル回路106から出力される。これらのことから、位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2の値は、PFDS0≠PFDS1=PFDS2となる。
【0085】
ここで、リファレンスクロック信号FREFとフィードバッククロック信号FDの立ち上がりの位相差は、ほぼ時刻t1〜t2の期間であり、出力クロックFOUTの1/2周期以下である。このため、TDC回路103から出力される位相差検出信号PTDCのMSBは「0」となっている。また、リファレンスクロック信号FREFの位相が、フィードバッククロック信号FDより遅れているため、TDC回路103から出力される位相極性信号PTDC_SIGNの値は「1」となっている。また、上述のように、位相データ信号PFDS0、PFDS1、PFDS2の値は、PFDS0≠PFDS1=PFDS2となっている。このため、PFD選択回路107は、図15からもわかるように、位相データ信号PFDS2の値を選択し、選択位相データ信号PFD_ONEとして出力する。
【0086】
サンプリング回路108は、TDC回路103から出力される遅延クロック信号FRn+1の立ち上がりエッジを検出すると、時刻t5に出力クロックFOUTのクロックタイミングで値が「10」のカウント値PFDCと、値が「10」の選択位相データ信号PFD_ONEを取り込む。
【0087】
位相誤差演算回路109は、サンプリング回路108からのデジタル信号PFR、PTD、DERR_PTDC_SIGN、PFDを入力する。位相誤差演算回路109は、上記信号の各値に応じて(PFR−(PFD+PTD))を演算する。そして、この演算結果に応じてリファレンスクロック信号FREFに対するフィードバッククロック信号FDの位相誤差データを得る。また、PTDの正負はDERR_PTDC_SIGNの値によって決まる。この演算により、位相誤差演算回路109は、出力クロック信号FOUTの1周期以内の位相差を導くことができる。位相誤差演算回路109は、その位相誤差データの値をデジタルデータの位相誤差信号PERRとして出力する。
【0088】
デジタルフィルタ110は、入力した位相誤差信号PERRを任意の帯域でフィルタリングして、そのフィルタリングデータに応じてデジタル制御発振回路111の制御コードDCONを出力する。
【0089】
デジタル制御発振(DCO)回路111(デジタル制御発振器)は、入力した制御コードDCONに応じた発振周波数で出力クロック信号FOUTを生成し、出力する。出力クロック出力端子113は、DCO回路111からの出力クロック信号FOUTを外部回路(不図示)へ出力する端子である。
【0090】
ここで、従来のADPLL回路2では、図23に示したように、フィードバッククロック信号FDと非同期関係にあるリファレンスクロック信号FREFの立ち上がりのタイミングで遷移過程にあるデジタルデータPFDCの値を位相誤差演算回路26が読み取る場合があった。この場合、遷移過程にある不定なデジタルデータPFDCの値を用いて、位相誤差演算回路26がフィードバッククロック信号FDとリファレンスクロック信号FREFの位相誤差を演算してしまっていた。この現象は、リファレンスクロック信号FREFとフィードバック信号FDの立ち上がりが同期しようとするロック状態の近傍で、多く発生する。このため、ADPLL回路2では、安定した位相同期ループを形成することができなかった。
【0091】
本実施の形態のADPLL回路100では、フィードバッククロック信号FDと非同期関係にあるリファレンスクロック信号FREFと、そのリファレンスクロック信号FREFを順次遅延させた遅延クロック信号FR1、FR2を用いて、PFDサンプル回路106でカウント値PFDCの値を取り込む。そして、PFDサンプル回路106が取り込んだ、その3つのカウント値PFDCから最も適切な値をPFD選択回路107が選択する。その選択には、TDC回路103からのデータを利用する。そして、PFD選択回路107が選択した適切な値を位相誤差の演算に用いる。このことにより、遷移過程にある不定なデジタルデータを位相誤差の演算に用いることを防ぐことが可能になり、正しい位相誤差データを算出することで安定した位相同期ループを形成することが可能となる。
【0092】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものでなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
100 ADPLL回路
101、102 カウンタ
103 TDC回路
104 分周回路
105 加算回路
106 PFDサンプル回路
107 PFD選択回路
108 サンプリング回路
109 位相誤差演算回路
110 デジタルフィルタ
111 DCO回路
112 入力端子
113 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のクロック信号をカウントする第1のカウンタと、
第2のクロック信号をカウントする第2のカウンタと、
第1のクロック信号を順次遅延させた第1、第2の遅延クロック信号を生成する遅延クロック生成回路と、
前記第1のクロック信号及び第1、第2の遅延クロック信号のそれぞれで前記第2のカウンタのカウント値をサンプリングするサンプル回路と、
前記第1のクロック信号と、前記第2のクロック信号を所定の数で分周した第3のクロック信号との位相差、及び、前記第1のサンプル回路がサンプリングしたカウント値とに応じて、前記第1のサンプル回路がサンプリングしたカウント値のうち1つを選択する選択回路と、
前記第1のカウンタのカウント値及び前記選択回路が選択したカウント値とに応じて前記第1のクロックと前記第3のクロックとの位相差を演算する位相誤差演算回路と、
前記位相誤差演算回路の演算結果に応じて前記第2のクロックを出力するデジタル制御発振器と、
を有するデジタルフェーズロックドループ回路。
【請求項2】
前記第2のカウンタは、
前記第2のクロック信号を所定の数で分周した前記第3のクロック信号を生成する分周回路と、
前記第3のクロック信号をカウントする第3のカウンタと、を有する
請求項1に記載のデジタルフェーズロックドループ回路。
【請求項3】
前記第1のクロック信号と前記第3のクロック信号との、前記第2のクロック信号の1周期以内の位相差を検出する位相差検出器を有する
請求項2に記載のデジタルフェーズロックドループ回路。
【請求項4】
前記位相検出器は、
前記第1のクロック信号に対して前記第3のクロック信号の位相の遅れ進みを示す極性値と、
前記第1のクロック信号と前記第3のクロック信号との位相差が前記第2のクロック信号の半周期以内であるか否かの判定値と、を生成する
請求項3に記載のデジタルフェーズロックドループ回路。
【請求項5】
前記選択回路は、
前記極性値と、前記判定値と、前記第1のサンプル回路がサンプリングしたカウント値と、に応じて、前記第1のサンプル回路がサンプリングしたカウント値のうち1つを選択する
請求項4に記載のデジタルフェーズロックドループ回路。
【請求項6】
前記位相検出器は、
前記第3のクロック信号を順次遅延させ、その順次遅延させたクロック信号と前記第1のクロック信号を比較した第1の比較結果と、前記第1のクロック信号を順次遅延させ、その順次遅延させたクロック信号と前記第3のクロックを比較した第2の比較結果と、に応じて前記第1のクロック信号と前記第3のクロック信号の相対的な位相差を検出する
請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載のデジタルフェーズロックドループ回路。
【請求項7】
前記位相検出器は、前記遅延クロック生成回路を含み、
前記第1、第2の遅延クロック信号は、前記位相検出器が前記第1のクロック信号を順次遅延させたクロック信号から用いられる
請求項6に記載のデジタルフェーズロックドループ回路。
【請求項8】
前記位相検出器が前記第1のクロック信号を順次遅延させる遅延量は、前記第2のクロック信号の半周期以内、且つ、前記第2のカウンタのカウント値が次の値に遷移する遷移期間以上である
請求項7に記載のデジタルフェーズロックドループ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−273185(P2010−273185A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124157(P2009−124157)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】