説明

デジタル撮影装置およびデジタル撮影方法

【課題】 画像の色合いを画像全体に対して適切に補正する。
【解決手段】 デジタルカメラを用いて原画像データを取得し(ステップST11)、マルチバンドセンサからの出力に基づいて照明光の色度を求める(ステップST12)。そして、照明光の色度と参照光の色度とから色順応に基づく変換を原画像の各画素に対して行い、色合いの補正を行う(ステップST15,ST16)。これにより、画像全体に適切な補正が行われ、撮影対象を参照光にて照明した際の画像が補正済みの画像として得られる。また、例えば、参照光として昼光色の光を用いることにより、画像全体の適切な色再現を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、デジタルカメラやスキャナ等により取得される画像の色合いを補正する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、デジタルカメラやスキャナ等の画像入力装置によりデジタルデータとして取得される画像に対し、人間の視覚特性に合わせて画像の色合いを補正する画像処理が行われている。このような補正の代表的なものとして、白い物体が白く見えるようにする(すなわち、RGBのそれぞれの値の平均値を等しくする)ホワイトバランスに基づく補正がある。
【0003】ホワイトバランスに基づく色の補正では、専用のセンサ(いわゆる、ホワイトバランスセンサ)からの出力値を利用したり、CCDにより得られる画像から光源を特定するTTL(through the lens)方式が利用されたりする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、ホワイトバランスセンサを用いる方式では、黒体系の光源以外(例えば、蛍光灯)では補正の精度が悪いという問題があり、TTL方式の場合でも色かぶり等の影響を完全には除去できないという問題がある。このような問題の原因の1つとして画像の全画素に対して一律に同じ補正を行っているため、白い対象は白く補正されるが、他の色の部分は適切に補正されないということが挙げられる。
【0005】そこで、この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、デジタルカメラ等により得られる画像の色合いを画像全体に対して適切に補正することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、デジタル撮影装置であって、撮影対象を撮影することによりデジタルデータとして画像を取得する撮影手段と、撮影の際の照明光に相当する光の色度を第1の色度として取得する色度取得手段と、所定の照明光の色度を第2の色度として記憶する記憶手段と、前記画像の各画素の色情報に対して前記第1および第2の色度を用いる色順応に基づく変換を施すことにより、前記画像の色補正を行う補正手段とを備える。
【0007】請求項2の発明は、請求項1に記載のデジタル撮影装置であって、前記補正手段が、各画素の色情報を色順応に基づいて変換するためのテーブルを前記第1および第2の色度から作成する手段を有する。
【0008】請求項3の発明は、請求項1または2に記載のデジタル撮影装置であって、前記色度取得手段が、複数の波長帯の光強度を取得する手段を有する。
【0009】請求項4の発明は、請求項1または2に記載のデジタル撮影装置であって、前記撮影手段が、前記画像として複数のフィルタのそれぞれを介して撮影された複数の予備画像を取得し、前記色度取得手段が、前記複数の予備画像から前記第1の色度を求める。
【0010】請求項5の発明は、デジタル撮影方法であって、撮影対象を撮影することによりデジタルデータとして画像を取得する撮影工程と、撮影の際の照明光に相当する光の色度を第1の色度として取得する色度取得工程と、前記画像の各画素の色情報に対して前記第1の色度および所定の照明光の色度である第2の色度を用いる色順応に基づく変換を施すことにより、前記画像の色補正を行う補正工程とを有する。
【0011】請求項6の発明は、請求項5に記載のデジタル撮影方法であって、前記補正工程が、各画素の色情報を色順応に基づいて変換するためのテーブルを前記第1および第2の色度から作成する工程を有する。
【0012】請求項7の発明は、請求項5または6に記載のデジタル撮影方法であって、前記色度取得工程が、前記撮影対象からの光について複数の波長帯の光強度を取得する工程を有する。
【0013】請求項8の発明は、請求項5または6に記載のデジタル撮影方法であって、前記撮影工程において、複数のフィルタのそれぞれを介して撮影することにより複数の予備画像が前記画像として取得され、前記色度取得工程において、前記複数の予備画像から前記第1の色度が求められる。
【0014】
【発明の実施の形態】<1. 第1の実施の形態>図1はこの発明の第1の実施の形態に係るデジタルカメラ1の全体を示す斜視図である。デジタルカメラ1は、撮影を行うレンズユニット11、および、レンズユニット11にてデジタルデータとして取得された画像を処理する本体部12とを有する。
【0015】レンズユニット11は、複数のレンズを有するレンズ系111、および、レンズ系111を介して撮影対象の像を取得するCCD112を有する。そして、CCD112から出力される画像信号は本体部12へと送られる。また、レンズユニット11には、操作者が撮影対象を捉えるためのファインダ113、および、後述する画像処理に利用されるマルチバンドセンサ114が設けられる。
【0016】なお、マルチバンドセンサ114が設けられる窓内には測距センサ等の他のセンサも配置される。
【0017】本体部12には、フラッシュ121およびシャッタボタン122が設けられ、操作者がファインダ113を介して撮影対象を捉え、シャッタボタン122を操作することにより、CCD112にて電気的に画像が取得される。このとき、必要に応じてフラッシュ121が発光する。
【0018】CCD112からの画像信号は本体部12内部にて後述する処理が行われ、必要に応じて本体部12に装着されている外部メモリ123(いわゆる、メモリカード)に記憶される。外部メモリ123は本体部12下面の蓋を開けて取出ボタン124を操作することにより本体部12から取り出される。記録媒体である外部メモリ123に記憶されたデータは別途設けられたコンピュータ等を用いて他の装置に渡すことができる。逆に、他の装置にて外部メモリ123に記憶されたデータをデジタルカメラ1が読み出すことも可能である。
【0019】また、本体部12の背面には液晶のディスプレイ、操作ボタン等が設けられ、操作者が画面を見ながらボタンを操作することにより所望の入力操作が行われる。
【0020】図2は、デジタルカメラ1の構成のうち、主としてこの発明に係る処理を実行するための構成を模式的に示すブロック図である。
【0021】図2に示す構成のうち、レンズ系111、CCD112、A/D変換部115、シャッタボタン122、CPU21、ROM22およびRAM23は画像を取得する機能を実現する。すなわち、レンズ系111により撮影対象の像がCCD112上に結像され、シャッタボタン122が押されるとCCD112からの画像信号がA/D変換部115によりデジタル変換される。A/D変換部115にて変換されたデジタル画像信号は本体部12のRAM23に画像データ(以下、後述する補正後の画像データと区別するために「原画像データ」という。)231として記憶される。なお、これらの処理の制御はCPU21がROM22内に記憶されているプログラム221に従って動作することにより行われる。
【0022】また、本体部12に設けられるCPU21、ROM22およびRAM23が画像を処理する機能を実現する。具体的には、ROM22に記憶されているプログラム221に従って、RAM23を作業領域として利用しながらCPU21が取得された画像に色合いの補正処理を施す。このとき、マルチバンドセンサ114からの情報が利用される。
【0023】RAM23に記憶(すなわち、保存)される照明色度データ232は、マルチバンドセンサ114の出力から生成されるものである。また、参照光色度データ233は照明色度データ232とともに後述する画像の色の補正の際に用いられるデータであり、補正の際にはこれらのデータからルックアップテーブル(LUT)234が生成される。補正済画像データ235は原画像データ231をLUT234を用いて補正することにより生成される画像データであり、必要に応じて外部メモリ123に保存される。
【0024】また、ディスプレイ24は、画像の表示や操作者への情報の表示を行う手段であり、操作ボタン25は、操作者からの入力操作を受け付ける手段となっている。
【0025】図3は、主としてCPU21、ROM22およびRAM23により実現される機能の構成を他の構成とともに示すブロック図であり、図4は画像処理の流れを示す流れ図である。図3に示す構成のうち、照明色度データ生成部201、LUT作成部202および色補正部203が、CPU21、ROM22、RAM23等により実現される機能である。以下、図3および図4を参照しながらデジタルカメラ1の動作について説明する。
【0026】まず、既述の撮影動作によりCCD112にて取得された画像(正確には、画像信号)がA/D変換部115からRAM23へと送られ、原画像データ231として記憶される(ステップST11)。
【0027】次に、マルチバンドセンサ114からの出力が照明色度データ生成部201に入力される。マルチバンドセンサ114は、入射する光について複数の波長帯における強度を取得するセンサとなっている。マルチバンドセンサ114により得られた複数の波長帯の強度は照明色度データ生成部201により合成されて照明光に相当する光の分光分布を示すデータとされる(ステップST12)。
【0028】一般に、白色光にて照明された撮影対象の画像では色の平均がグレーになることから、このデジタルカメラ1では、およそ撮影対象からデジタルカメラ1へと入射する光の分光分布を照明光の分光分布として扱っている。
【0029】マルチバンドセンサ114としては、複数の光強度検出器のそれぞれに各波長帯の光のみを透過するフィルタを設けたものを利用することができる。例えば、可視領域の波長帯を複数の波長帯に分け、それぞれの波長帯の光のみを透過するフィルタが各光強度検出器に設けられる。複数の波長帯としては4以上が好ましいが、3つ(例えば、RGBの3色のフィルタ)であってもデジタルカメラ1に入射する光のおおよその分光分布を推定することは可能である。なお、この場合には、CCD112がマルチバンドセンサ114の役割を兼ねることができる。
【0030】また、小型で高分解能のマルチバンドセンサ114としては、川越宣和、他2名による「分光測色計CM−100」、Minolta Techno Report No.5 1988(97〜105頁)に記載されているように、SPD(シリコンフォトダイオード)上に階段状に厚みが異なる金属膜干渉フィルタを設けたものも知られている。このマルチバンドセンサでは、SPDのエリアごとに金属膜干渉フィルタの厚みが変えられており、SPDのエリアごとに所定の波長帯の光の強度を得ることが実現されている。
【0031】照明色度データ生成部201により照明光の分光分布が求められると、さらに、照明光の色度が求められてRAM23に照明色度データ232として保存される(ステップST13)。具体的には、まず、波長をλ、照明光の分光分布をE(λ)、RGBの各色に対応する等色関数をそれぞれr(λ),g(λ),b(λ)として、3刺激値X,Y,Zを数1にて示す式にて求める。ただし、kは適宜設定される係数である。
【0032】
【数1】


【0033】そして、3刺激値X,Y,Zを用いて数2にて示す演算により、照明光の色度xe,yeが求められる。
【0034】
【数2】


【0035】照明光の色度が求められると、次に、参照光の選択が行われる(ステップST14)。参照光とは補正された画像における照明光と想定される光であり、例えば、参照光として昼光色の光を選択すると以下の補正処理により日中の太陽光により照明された撮影対象の画像となる。操作者による参照光の選択は操作ボタン25を介してデジタルカメラ1が受け付け、これにより、予めRAM23に記憶されている複数種類の参照光の色度から1つの参照光の色度が決定される。なお、RAM23には複数の参照光に関するデータが参照光色度データ233として記憶されているが、以下の説明では、選択された参照光の色度に関するデータを単に参照光色度データ233と呼ぶこととする。
【0036】参照光が決定されると、LUT作成部202により照明色度データ232および参照光色度データ233を用いて原画像の色情報である画素値を変換するためのLUT234が生成され、RAM23に保存される(ステップST15)。
【0037】LUT234は、色順応に基づいて画像中の各画素の画素値の変換を迅速に行うために参照される変換テーブルであり、この変換は、元の画像の照明光の色度をxe,ye、参照光の色度をxr,yr、RGBそれぞれの元の画素値をR1,G1,B1、RGBそれぞれの変換後の画素値をR2,G2,B2として、数3(CIE(国際照明学会)の予測式をもとに簡略化された式)にて示される。
【0038】
【数3】


【0039】なおPr,Pb,Pgは数4により求められる。
【0040】
【数4】


【0041】また、ξ1,η1,ζ1は、数5により求められ、ξ2,η2,ζ2は数6により求められる。
【0042】
【数5】


【0043】
【数6】


【0044】ここで、LUT234としてRGBそれぞれの画素値が取り得る全ての値についての変換テーブルが作成されるのではなく、適宜間引いた状態でLUT234が作成される。すなわち、原画像の画素値がRGBのそれぞれについて0〜255までの256の値(すなわち、70万色)を取り得る場合において、LUT234に格納すべき変換後の値をRGBそれぞれについて256求めるのではなく、例えば、1つおきに変換後の値を求めることによりLUT234に格納すべき値がRGBそれぞれについて128に削減され、3つおきに変換後の値を求めることにより64に削減される。
【0045】LUT234が作成されると、次に、LUT234を用いて色補正部203が原画像の各画素の画素値を変換して画像の補正を行う。LUT234はRGBそれぞれの取り得る値を間引いて作成されているので、実際の変換の際にはLUT234に格納されている値を原画像の画素の画素値に合わせて線形補間を行った値が変換後の画素値とされる。原画像の全ての画素の画素値の変換が完了すると、これらの画素の色情報が補正済画像データ235としてRAM23に保存される(ステップST16)。
【0046】その後、補正済画像データ235に基づいてディスプレイ24に補正後の画像が表示される(ステップST17)。また、必要に応じて操作者の入力操作により補正済画像データ235が外部メモリ123に保存される。
【0047】以上、この発明の第1の実施の形態に係るデジタルカメラ1について説明してきたが、このデジタルカメラ1では、撮影対象への照明光の色度および参照光の色度を用いて、原画像の全ての画素について色順応に基づく色の補正を行う。したがって、画像全体に操作者の意図を反映した適切な色合いの補正を行うことができる。
【0048】また、従来のホワイトバランスに基づく色合いの補正では、全画素に一律に同様の変換を施すために画像全体としては適切に補正ができなかったが、この発明に係るデジタルカメラ1では、例えば、参照光として昼光色(D65)の光を用いることにより、人間の視覚に合った(すなわち、撮影対象を観察した人間の記憶に残された色となるように人間の色順応を考慮した)色再現を画像全体に適切に行うことができる。
【0049】また、画素値の変換の際には予めLUT234を作成するので、画像処理に要する処理の量も低く抑えられる。さらに、LUT234として、間引かれた変換テーブルを準備することで、RAM23の記憶容量も抑えることが実現される。
【0050】また、照明色度データ232をマルチバンドセンサ114からの出力を用いて簡易に求めることができるようにもされている。
【0051】<2. 第2の実施の形態>図5はこの発明の第2の実施の形態に係るデジタル撮影システム3の構成を示す図である。デジタル撮影システム3は、撮影対象の画像を取得するモノクロデジタルカメラ31、複数のフィルタを有する回転式フィルタ32、および、デジタルカメラ31にて得られた画像を処理するコンピュータ33を有する。回転式フィルタ32は、所定の波長帯の光のみを透過するフィルタを複数有し、デジタルカメラ31に入射する光を特定の波長帯に制限する。
【0052】図6は、デジタル撮影システム3の主な構成を示すブロック図である。第1の実施の形態に係るデジタルカメラ1では、図2に示したように、マルチバンドセンサ114を用いて照明色度データ232を求め、デジタルカメラ1内部にて画像の処理が行われるようになっているが、第2の実施の形態に係るデジタル撮影システム3では、照明色度データ432がデジタルカメラ31にて撮影された複数の画像から求められ、また、画像の処理をコンピュータ33において行うという点で第1の実施の形態と異なっている。
【0053】図6に示すように、デジタルカメラ31はレンズ系311、CCD312およびA/D変換部313を有し、撮影対象の画像をデジタルデータとして取得する機能を有する。
【0054】コンピュータ33は、デジタルカメラ31にて取得された画像を処理する機能を有し、CPU41、ROM42、RAM43およびディスクドライブ44を有する。ROM42には、画像を処理するためのプログラム421が記憶されており、RAM43は、予備画像データ431、照明色度データ432、参照光色度データ433、および、補正後の補正済画像データ435が記憶されたり、画像処理の作業が行われる領域となっている。
【0055】RAM43は、固定ディスク、携帯可能な磁気ディスク、光磁気ディスク等の記録媒体とデータの受け渡しが可能とされており、第1の実施の形態と同様に、補正済画像データ435が必要に応じて記録媒体に保存できるようにされている。なお、図5および図6では、記録媒体としてディスクドライブ44を介してRAM43等とデータの転送が行われる記録媒体9を例示している。
【0056】また、記録媒体9に画像処理のプログラムを記憶させ、このプログラムをRAM43に読み込ませ、RAM43内のプログラムにより、あるいは、ROM42内のプログラムとRAM43内のプログラムとによりコンピュータ33が画像処理装置として機能するようになっていてもよい。
【0057】コンピュータ33には、さらに、画像を表示したり操作者への情報の表示を行うディスプレイ45、および、操作者からの入力を受け付けるキーボード、マウス等の入力部46が設けられている。
【0058】デジタルカメラ31およびコンピュータ33による構成は、以上のように第1の実施の形態に係るデジタルカメラ1の構成と類似しているが、このデジタル撮影システム3では、回転式フィルタ32を用いて照明色度データ432を求めるようになっている点で第1の実施の形態と相違している。
【0059】回転式フィルタ32は、円盤状の回転体に特定の波長帯の光のみを透過するフィルタを複数設けた構成となっており、回転体が回転することによりデジタルカメラ31には異なる波長帯の光のみが切り替えられながら入射する。各フィルタは可視光の波長帯を複数に分割した各波長帯に対応している。
【0060】デジタルカメラ31のレンズ系311の前に、いずれの種類のフィルタが位置するかは回転式フィルタ32に設けられたエンコーダからの信号により、コンピュータ33が認識できるようにされている。
【0061】図7は、CPU41、ROM42、RAM43等により実現される機能構成およびその他の構成を示すブロック図であり、照明色度データ生成部401および色補正部403は、図6中に示すCPU41、ROM42およびRAM43の作業領域により実現される機能に相当する。なお、デジタル撮影システム3では、第1の実施の形態と異なり、LUTを用いずに色の補正が行われる。
【0062】図8および図9はデジタル撮影システム3の動作の流れを示す流れ図である。以下、図7ないし図9を参照しながら、デジタル撮影システム3の動作について説明する。
【0063】まず、所定のフィルタがデジタルカメラ31のレンズ系311の前方に配置され(ステップST21)、コンピュータ33の制御により撮影を行う。これにより、フィルタが透過する波長帯の光のみがデジタルカメラ31に入射し、デジタルカメラ31のA/D変換部313から1つの予備画像に相当する予備画像データ431がコンピュータ33に転送されてRAM43に記憶される(ステップST22)。
【0064】次に、回転式フィルタ32を回転させ、別の波長帯の光のみを透過するフィルタがレンズ系311の前方に配置され、撮影を行う(ステップST21,ST22)。これにより、もう1つの予備画像に相当する予備画像データ431がRAM43に記憶される。
【0065】その後、フィルタの変更および撮影を繰り返すことにより(ステップST23)、各フィルタに対応する予備画像データ431がRAM43に記憶される。なお、予備画像データ431には回転式フィルタ32からのフィルタに関する情報が付与される。また、複数の予備画像を撮影することは撮影対象のカラー画像(すなわち、原画像)を撮影することに相当する。
【0066】複数の予備画像に相当する予備画像データ431がRAM43に記憶されると、次に、照明色度データ生成部401により予備画像データ431から照明光に相当する光の分光分布が求められる(ステップST24)。すなわち、CPU41がROM42内のプログラム421に従って以下に説明する演算処理を行う。
【0067】複数の予備画像から照明光の分光分布を求める手法としては適切なデータが生成されるのであればどのような手法が用いられてもよい。例えば、富永昌治、「色恒常性を実現するカメラ系とアルゴリズム」、信学技報 PRU95-11(1995-05)(77〜84頁)に記載された手法が採用されてもよい。この手法では照明光の分光分布および撮影対象の分光反射率を次のようにして求めている。
【0068】まず、撮影対象上の位置(以下、「対象位置」という。)から入射する光の分光分布C(λ)は、波長をλ、対象位置における分光反射率をS(λ)、照明光の分光分布をE(λ)として、
【0069】
【数7】


【0070】として表される。ここで、α,βはスケールファクタであり、αS(λ)E(λ)は拡散反射成分、βE(λ)は正反射成分に相当する。
【0071】また、k番目のフィルタにより撮影された画像中の対象位置に対応する画素の画素値(すなわち、CCD312の出力値)ρkは、フィルタの波長帯域に対応するCCD312の分光感度をRk(λ)として、
【0072】
【数8】


【0073】として表される。
【0074】ここで、照明光の分光分布E(λ)と対象位置の分光反射率S(λ)について複数の基底関数の加重和として表現する有次元線形モデルを用いることにより、最終的に、
【0075】
【数9】


【0076】と変形される。ここで、ρは画素値ρkを要素とするベクトル、Λは対象位置の分光反射率S(λ)の有次元線形モデルの基底関数に対するセンサの応答を表す行列、σは分光反射率S(λ)の有次元線形モデルの加重係数のベクトル、Hは照明光の分光分布E(λ)の有次元線形モデルの基底関数に対するセンサの応答を表す行列、εは分光分布E(λ)の有次元線形モデルの加重係数のベクトルである。
【0077】そして、同一照明下では複数の対象位置についてベクトルHεの方向が一定であるという法則を利用しつつ、適宜簡略化した演算手法を採用することにより上記式からσとεとが求められる。これにより、2つの有次元線形モデルの係数が求められ、照明光の分光分布E(λ)および対象位置の分光反射率S(λ)が求められる。なお、この発明で利用されるのは照明光の分光分布E(λ)のみである。
【0078】以上に例示した手法を用いて、照明色度データ生成部401は照明光の分光分布E(λ)を求める。なお、以上の説明では、スケールファクタα,βが予め適宜設定されているものとして説明しているが、処理を簡潔に行うためにスケールファクタβを0として演算を行ってもよい。
【0079】照明色度データ生成部401により照明光の分光分布が求められると、続いて照明光の色度が、第1の実施の形態と同様に、数1および数2に示した演算により求められる(ステップST25)。求められた照明光の色度は照明色度データ432としてRAM43に保存される。
【0080】照明色度データ432が保存されると、次に、第1の実施の形態と同様に参照光の選択が行われる(ステップST26)。すなわち、コンピュータ33の入力部46が操作者からの入力を受け付けることにより、予めRAM43に記憶されている複数の参照光の色度から1つの参照光の色度を決定する。なお、以下の説明においては、選択された参照光の色度に関するデータを単に参照光色度データ433と呼ぶこととする。
【0081】次に、色補正部403が複数の予備画像の色を合成してRGBそれぞれの画素値により表現される原画像を生成するとともに、原画像の画素値を予備的に変換して予備補正を行う(ステップST27)。原画像はフィルタを通して得られたものであり、回転式フィルタ32およびデジタルカメラ31により構成される撮影手段のRGBそれぞれに関する感度は等色関数を利用する数1に完全には適合しない。そこで、予め原画像のRGBそれぞれの画素値を3×3行列を用いて変換を行うことにより、撮影手段の分光感度が擬似的に等色関数に近づけられる。
【0082】なお、3×3行列は色票を撮影して得られる画像の色と測色計で測定した色票の色との色差が最小になるように求められる。
【0083】原画像の予備補正が完了すると、ステップST25にて求められた照明色度データ432および選択された参照光色度データ433とを用いて色順応に基づく補正が原画像に施される(ステップST28)。すなわち、数3ないし数6に示した演算を各画素の画素値に施すことにより、原画像の各画素の画素値が変換される。変換により補正が完了した画像のデータは補正済画像データ435としてRAM43に保存される。
【0084】その後、補正済画像データ435に基づいて補正済みの画像がディスプレイ45に表示される(ステップST29)。また、必要に応じて入力部46からの操作者の指示入力に従って補正済画像データ435が記録媒体9に保存される。
【0085】以上、この発明の第2の実施の形態に係るデジタル撮影システム3について説明してきたが、このデジタル撮影システム3では、撮影対象への照明光の色度および参照光の色度を用いて、原画像の全ての画素についてに色順応に基づく色の変換を施すので、第1の実施の形態と同様に、画像全体の色合いを適切に補正する事ができる。これにより、例えば、参照光として昼光色(D65)の光を用いることにより、人間の視覚に合った(すなわち、色順応を考慮した)色再現を画像全体に行うことができる。
【0086】なお、この実施の形態では、間引きされたLUTを作成することなく演算を行うために処理量が多くなるが、より適切な補正が実現される。
【0087】<3. 変形例>以上、この発明に係る実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0088】例えば、上記第1の実施の形態では間引きされたLUTの作成を利用するようになっており、第2の実施の形態では原画像を予備的に補正するようになっているが、これらの処理は必要に応じて行われるのみでよい。また、LUTとして間引きされていないLUTを準備してももちろんよい。
【0089】また、上記第2の実施の形態では、デジタルカメラ31の前方に回転式フィルタ32を配置するようにしているが、複数のフィルタを切り替える機構をデジタルカメラ31内部に設けてもよい。また、フィルタの切り替え機構を設けずにデジタルカメラ31として複数(好ましくは4以上)の入力バンドを有するものを用い、これにより複数の波長帯のそれぞれについて画像を取得するようになっていてもよい。
【0090】また、デジタルカメラ31や回転式フィルタ32とコンピュータ33とは伝送線で接続されている必要はなく、記録媒体を介して予備画像データ431等がコンピュータ33に取り込まれるようになっていてもよい。
【0091】さらに、この発明はデジタルカメラを用いて画像を得る場合に限定されるものではなく、スキャナ等の他の画像入力装置にて得られる画像についても利用することができる。
【0092】
【発明の効果】請求項1ないし8に記載の発明では、画像の各画素の色情報に対して第1および第2の色度を用いる色順応に基づく変換を施すので、画像全体に対して適切な色補正を行うことができる。
【0093】また、請求項2および6に記載の発明では、テーブルを利用することにより演算量の低減を図ることができる。
【0094】また、請求項3および7に記載の発明では、第1の色度を簡易に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るデジタルカメラの全体を示す斜視図である。
【図2】図1に示すデジタルカメラにおいてこの発明に係る処理を実行するための構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示す構成を機能に分けて示すブロック図である。
【図4】図1に示すデジタルカメラにおいて画像の色合いを補正する際の動作の流れを示す流れ図である。
【図5】この発明に係るデジタル撮影システムの構成を示す図である。
【図6】図5に示すデジタル撮影システムにおいてこの発明に係る処理を実行するための構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示す構成を機能に分けて示すブロック図である。
【図8】図5に示すデジタル撮影システムにおいて画像の色合いを補正する際の動作の流れを示す流れ図である。
【図9】図5に示すデジタル撮影システムにおいて画像の色合いを補正する際の動作の流れを示す流れ図である。
【符号の説明】
1 デジタルカメラ
3 デジタル撮影システム
11 レンズユニット
21,41 CPU
22,42 ROM
23,43 RAM
31 デジタルカメラ
32 回転式フィルタ
33 コンピュータ
114 マルチバンドセンサ
201,401 照明色度データ生成部
202 LUT作成部
203,403 色補正部
231 原画像データ
232,432 照明色度データ
233,433 参照光色度データ
234 LUT
431 予備画像データ
ST11〜ST13,ST15,ST16,ST21〜ST25,ST28ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 デジタル撮影装置であって、撮影対象を撮影することによりデジタルデータとして画像を取得する撮影手段と、撮影の際の照明光に相当する光の色度を第1の色度として取得する色度取得手段と、所定の照明光の色度を第2の色度として記憶する記憶手段と、前記画像の各画素の色情報に対して前記第1および第2の色度を用いる色順応に基づく変換を施すことにより、前記画像の色補正を行う補正手段と、を備えることを特徴とするデジタル撮影装置。
【請求項2】 請求項1に記載のデジタル撮影装置であって、前記補正手段が、各画素の色情報を色順応に基づいて変換するためのテーブルを前記第1および第2の色度から作成する手段、を有することを特徴とするデジタル撮影装置。
【請求項3】 請求項1または2に記載のデジタル撮影装置であって、前記色度取得手段が、複数の波長帯の光強度を取得する手段、を有することを特徴とするデジタル撮影装置。
【請求項4】 請求項1または2に記載のデジタル撮影装置であって、前記撮影手段が、前記画像として複数のフィルタのそれぞれを介して撮影された複数の予備画像を取得し、前記色度取得手段が、前記複数の予備画像から前記第1の色度を求めることを特徴とするデジタル撮影装置。
【請求項5】 デジタル撮影方法であって、撮影対象を撮影することによりデジタルデータとして画像を取得する撮影工程と、撮影の際の照明光に相当する光の色度を第1の色度として取得する色度取得工程と、前記画像の各画素の色情報に対して前記第1の色度および所定の照明光の色度である第2の色度を用いる色順応に基づく変換を施すことにより、前記画像の色補正を行う補正工程と、を有することを特徴とするデジタル撮影方法。
【請求項6】 請求項5に記載のデジタル撮影方法であって、前記補正工程が、各画素の色情報を色順応に基づいて変換するためのテーブルを前記第1および第2の色度から作成する工程、を有することを特徴とするデジタル撮影方法。
【請求項7】 請求項5または6に記載のデジタル撮影方法であって、前記色度取得工程が、前記撮影対象からの光について複数の波長帯の光強度を取得する工程、を有することを特徴とするデジタル撮影方法。
【請求項8】 請求項5または6に記載のデジタル撮影方法であって、前記撮影工程において、複数のフィルタのそれぞれを介して撮影することにより複数の予備画像が前記画像として取得され、前記色度取得工程において、前記複数の予備画像から前記第1の色度が求められることを特徴とするデジタル撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2001−16607(P2001−16607A)
【公開日】平成13年1月19日(2001.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−183702
【出願日】平成11年6月29日(1999.6.29)
【出願人】(000006079)ミノルタ株式会社 (155)
【Fターム(参考)】