説明

トナー供給ローラとその製造方法

【課題】ローラの周方向及び長手方向に沿ってポリウレタンフォームに硬さのムラが少なく、長期使用でも良好な画像を得ることができるトナー供給ローラの提供を目的とする。
【解決手段】回転するシャフトの外周面に供給したポリウレタンフォーム原料から発泡した発泡体の表面が研磨加工されたポリウレタンフォームを有し、研磨加工されたポリウレタンフォーム21は、吸引ホース43の先端に設けた先端開口径5mmの吸引ノズル47をポリウレタンフォームの表面に圧接させてポリウレタンフォーム21の表面を2mm圧縮し、その状態で30L/minの流量でポリウレタンフォーム21の表面から空気を吸引した際の吸引ホース43の内圧が0.5〜4.0kPaの値であると共に、セル数が50〜110個/25mm、密度が0.1〜0.4g/cmであるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置、画像記録装置、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式画像形成装置において使用されるトナー供給ローラとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トナー供給ローラは、電子写真感光体からなる像担持体上に形成した静電潜像にトナーを搬送してその表面にトナー像として可視化する現像ローラにトナーを供給するためのローラであり、シャフトの外周に発泡体を設けたものが多用されている。
【0003】
前記シャフトの外周の発泡体としては、ポリウレタンフォーム、EPDMフォーム等が挙げられる。特にポリウレタンフォームは、低密度ながら適度な硬度があること、圧縮永久歪が小さいこと、密度が低いため低価格なローラが提供できることなど、利点が多い材質であるため、前記シャフトの外周の発泡体として主流となっている。
【0004】
ポリウレタンフォームをシャフトの外周に設けたトナー供給ローラとしては、(1)スラブポリウレタンフォームにシャフト挿通孔を形成し、次いでローラ1本分の大きさで切り出した後、シャフト挿通孔にシャフトを挿通し接着剤を介してシャフトとウレタンフォームを接着させた後、表面を研磨して円周面に加工したもの、(2)シャフトと一体にポリウレタンフォームを形成した後、ポリウレタンフォームの不要部分を研磨したもの、(3)シャフトを配置したローラ形状の発泡型内でポリウレタンフォームを発泡(型発泡)し、ポリウレタンフォームをシャフトと一体に形成したもの等がある。なお、スラブポリウレタンフォームは、混合撹拌したポリウレタンフォーム原料をベルトコンベア上に吐出し、コンベアベルトが移動する間に原料を常温、大気圧下で自然発泡させ、硬化させることで連続的に製造し、その後に乾燥炉内で硬化(キュア)させた後、所定サイズのブロック(通常は直方体形状)に裁断したものである。一方、型発泡ポリウレタンフォームは、混合撹拌したポリウレタンフォーム原料を発泡型に注入して型内で発泡させるあるいは気体混入法により泡を混入したポリウレタン原料を型内に注入し硬化させることにより得られるものである。
【0005】
前記(1)〜(3)の中でも(1)スラブポリウレタンフォームを用いるトナー供給ローラは、ローラ形状の発泡型を必要としないので型の管理・補修に伴う煩雑さがなく、型へのポリウレタンフォーム原料注入に伴う不良(例えばエアの巻き込みによるピンホールの発生、ポリウレタンフォーム原料の配合比変動に伴うポリウレタンフォームの特性変動等)のおそれがなく、かつ歪みや耐摩耗性などの機械物性に優れるスラブポリウレタンフォームが使用できるなどの利点がある。
【0006】
しかし、スラブポリウレタンフォームから表面が円周状のポリウレタンフォームを切り出す方法では、切り出す際の精度や、シャフト挿通孔の孔開け位置精度等から、余裕を見越した大きさで切り出す必要があり、切り出したポリウレタンフォームの50%以上を除去しないと所望のローラを得られず、材料ロス等の無駄あるいは研磨加工工数が多い問題がある。
【0007】
さらに、スラブポリウレタンフォームは、発泡方向(コンベアベルト上で発泡する際の上下方向)と、前記発泡方向に対して直交方向とでは、セル形状や硬さが異なっている。そのため、スラブポリウレタンフォームの発泡方向と直交する方向をローラの長手方向としてスラブポリウレタンフォームから角柱状に切り出し、その後に表面を円周状に加工したポリウレタンフォームを有するトナー供給ローラは、トナーの掻き取り性やトナーの供給性がローラの回転角度によって異なり、印刷面に数mmから数10mmの周期で画像濃度の不均一部分が現れることがある。それに加えて、ポリウレタンフォームの硬さやセル形状がローラの回転角度によって異なり、トナーの掻き取り性や現像ローラと当接する部分の変形の仕方が周期的に異なることから、出力画像にムラが周期的に現れることがある。一方、スラブポリウレタンフォームの発泡方向をローラの長手方向としてスラブポリウレタンフォームから角柱状に切り出し、その後に表面を円周状に加工したポリウレタンフォームを有するトナー供給ローラ(特許文献1、2参照)は、ローラの長手方向でポリウレタンフォームの硬さが異なるため、現像ローラへのトナー供給量が変化することで画像の濃淡を生じるおそれがある。
【0008】
また、トナー供給ローラは、電子写真方式画像形成装置内に現像ローラと平行に配設され、現像ローラと接触して回転するが、前記トナー供給ローラの回転方向は、現像ローラの回転方向と同一のカウンター方式と、逆のウィズ方式の2種類あり、最近ではトナーをより均一に現像ローラへ供給できるカウンター方式が主流となっている。しかし、カウンター方式の場合、トナー供給ローラと現像ローラは、ローラ同士の接触位置ではローラ表面が互いに反対向きに動いて擦れあうため、トナー供給ローラのポリウレタンフォーム内にトナーが入り込みやすくなる。そのため、特にカウンター方式の場合のトナー供給ローラは、長期間の使用によってポリウレタンフォームの表面にトナーが詰まったり、そのトナーの詰まりによってポリウレタンフォームの表面が硬くなったりして、トナー供給ローラの初期使用時と比べてトナー供給量が減少し、画像濃度が薄くなるという不具合が発生する問題がある。
【0009】
前記ポリウレタンフォーム内へのトナーの入り込みを少なくするため、使用するスラブポリウレタンフォームの独立気泡比率を高めることが考えられるが、その場合にはスラブポリウレタンフォームの発泡時にガス抜けが悪くなって、形成されるスラブポリウレタンフォームはセルが均一にならなくなり、トナー供給ローラに使用した場合、画像に濃淡を生じるようになる。また、発泡時のガス抜けを良好にするため、添加剤をスラブポリウレタンフォームに添加すると、前記添加剤がトナーに付着して最終的に電子写真方式画像形成装置における感光体ドラムを汚染させるおそれがある。
【0010】
また、他のローラとして、円柱又は円筒形状からなるローラ基材を回転させながら、その外周面に配置したアプリケータにより室温硬化型シリコーンゴムフォーム用液状原料をローラ基材の外周面に塗布して塗膜を形成した電子機器用のスポンジローラが提案されている(特許文献3参照)。しかし、前記シリコーンゴムフォームの塗膜を有するスポンジローラは、電子機器のクリーニングローラ及び紙送りローラとして好適なものであり、トナーを安定して、かつ均一に現像ローラへ供給することが要求されるトナー供給ローラとはフォームの特性が異なっている。
【0011】
さらに、他のローラとして、シャフトを回転させながら、該シャフトの外周面に気体混入法によって微細気泡を混入させた混合体を連続供給して硬化させたものが提案されている(特許文献4参照)。しかし、微細気泡を混入させた混合体は、泡立った状態でシャフト外周面に吐出されるため、吐出された部分で凸状に盛り上がり、シャフトの外周に均一な厚みで形成され難いことから、硬化後の表面が凹凸となり、その後に行う混合体表面の研磨に手間取る問題がある。
【0012】
【特許文献1】特開平8−334971号公報
【特許文献2】特開平8−332679号公報
【特許文献3】特開平7−76049号公報
【特許文献4】特開2000−198570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、ローラの周方向及び長手方向に沿ってポリウレタンフォームに硬さのムラが少なく、かつ長期使用によっても良好な電子写真方式画像を得ることができるトナー供給ローラとその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、シャフトと、前記シャフトを回転させながら前記シャフトの外周面に供給したポリウレタンフォーム原料から前記シャフトの外周面で発泡させて発泡後の表面を研磨加工したポリウレタンフォームと、よりなるトナー供給ローラであって、前記研磨加工されたポリウレタンフォームは、吸引ポンプに接続した吸引ホースの先端に設けた先端開口径5mmの吸引ノズルを前記ポリウレタンフォームの表面に圧接させて前記ポリウレタンフォームの表面を2mm圧縮し、その状態で前記吸引ポンプにより30L/minの流量で前記ポリウレタンフォームの表面から空気を吸引した際の前記吸引ホースの内圧が0.5〜4.0kPaの値となる吸引圧を有すると共に、セル数が50〜110個/25mm、密度が0.1〜0.4g/cmであることを特徴とする。
【0015】
請求項2の発明は、シャフトを回転させながら前記シャフトの外周面にポリウレタンフォーム原料を供給して前記シャフトの外周面で発泡させてポリウレタンフォームを形成し、その後に前記ポリウレタンフォームの表面を研磨加工するトナー供給ローラの製造方法であって、前記ポリウレタンフォーム原料は、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、発泡剤、整泡剤を含み、前記ポリオールは、粘度が400〜3000mPa・sec/25℃であり、前記触媒は泡化触媒と樹脂化触媒を含み、前記研磨後のポリウレタンフォームは、吸引ポンプに接続した吸引ホースの先端に設けた先端開口径5mmの吸引ノズルを前記ポリウレタンフォームの表面に圧接させて前記ポリウレタンフォームの表面を2mm圧縮し、その状態で前記吸引ポンプにより30L/minの流量で前記ポリウレタンフォームの表面から空気を吸引した際の前記吸引ホースの内圧が0.5〜4.0kPaの値となる吸引圧を有すると共に、セル数が50〜110個/25mm、密度が0.1〜0.4g/cmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明のトナー供給ローラは、シャフト外周面のポリウレタンフォームが、シャフトを回転させながらシャフトの外周面に供給したポリウレタンフォーム原料からシャフトの外周面で発泡させて発泡後の表面を研磨加工したものからなるため、ポリウレタンフォームの発泡方向がシャフトの径方向となり、ポリウレタンフォームの硬さがローラの周方向及び長手方向に沿ってムラの少ないものとなり、電子写真方式画像形成装置に組み付けて使用した場合に、良好な電子写真方式画像を得ることができる。
【0017】
また、請求項1の発明では、シャフト外周面に設けたポリウレタンフォームは、吸引ポンプに接続した吸引ホースの先端に設けた先端開口径5mmの吸引ノズルをポリウレタンフォームの表面に圧接させてポリウレタンフォームの表面を2mm圧縮し、その状態で前記吸引ポンプにより30L/minの流量でポリウレタンフォームの表面から空気を吸引した際の吸引ホースの内圧が0.5〜4.0kPaの値となる吸引圧を有すると共に、セル数が50〜110個/25mm、密度が0.1〜0.4g/cmであるため、請求項1の発明のトナー供給ローラを電子写真方式画像形成装置に組み付けて使用した場合に、長期使用によってもポリウレタンフォームの表面にトナーが詰まりにくく、良好な電子写真方式画像を得ることができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、シャフトの外周面に供給された直後のポリウレタンフォーム原料は、発泡開始前の低い粘度状態にあり、シャフトの回転によりポリウレタンフォーム原料の表面が平滑化され、その後、表面に凹凸の無い、あるいは凹凸のほとんどないポリウレタンフォームとなる。そのため、ポリウレタンフォームの研磨作業を簡単、かつ容易に行うことができる。
【0019】
さらに、請求項2の発明によれば、シャフトの外周面に形成した研磨後のポリウレタンフォームは、吸引ポンプに接続した吸引ホースの先端に設けた先端開口径5mmの吸引ノズルを前記ポリウレタンフォームの表面に圧接させて前記ポリウレタンフォームの表面を2mm圧縮し、その状態で前記吸引ポンプにより30L/minの流量で前記ポリウレタンフォームの表面から空気を吸引した際の前記吸引ホースの内圧が0.5〜4.0kPaの値となる吸引圧を有すると共に、セル数が50〜110個/25mm、密度が0.1〜0.4g/cmであるため、得られたトナー供給ローラを電子写真方式画像形成装置に組み付けて使用した場合に、長期使用によってもポリウレタンフォームの表面にトナーが詰まりにくく、良好な電子写真方式画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係るトナー供給ローラの断面図、図2はシャフト外周面へのポリウレタンフォーム原料の供給時を示す斜視図、図3は吸引圧測定方法を示す図、図4は吸引ノズルを示す図である。
【0021】
図1に示すトナー供給ローラ10は、複写装置、画像記録装置、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式画像形成装置に組み込まれて、同装置内の現像ローラにトナーを供給するものである。前記トナー供給ローラ10は、シャフト11と、前記シャフト11の外周面に設けられたポリウレタンフォーム21とよりなる。
【0022】
前記シャフト11は、トナー供給ローラ10の芯材であって、金属等の棒状体で構成され、前記トナー供給ローラ10の回転軸となる。前記シャフト11の寸法は、シャフト11が組み付けられる装置等に応じて適宜の径及び長さとされる。
【0023】
前記ポリウレタンフォーム21は、表面22にトナーを保持して現像ローラにトナーを供給するものである。前記ポリウレタンフォーム21は、図2に示すように、前記シャフト11を円周方向へ回転させながらシャフト11の外周面に供給したポリウレタンフォーム原料Pからシャフト11の外周面で発泡させたポリウレタンフォームの表面を研磨加工したものであり、円柱状あるいは円筒状からなる。前記ポリウレタンフォーム表面の研磨加工は、ポリウレタンフォームの発泡時に形成されるポリウレタンフォーム表面の薄膜を除去して、ポリウレタンフォーム表面でトナーを保持し易くするために行われる。符号22は研磨加後の表面である。前記ポリウレタンフォーム21は、長さが前記シャフト11の長さよりも所定寸法短くされ、厚みについては、通常3〜5mm程度とされる。
【0024】
前記表面22が研磨加工されたポリウレタンフォーム21は、図3に示すように、吸引ポンプ41に接続した吸引ホース43の先端に設けた先端開口径5mmのノズル47を前記ポリウレタンフォーム21の表面22に圧接させて前記ポリウレタンフォーム21の表面22を2mm圧縮した状態で、前記吸引ポンプ41により30L/minの流量で前記ポリウレタンフォーム21の表面22から空気を吸引した際における前記吸引ホース43の内圧が0.5〜4.0kPaの値となる吸引圧を有する。吸引圧が前記吸引圧の範囲0.5kPaより小さい値の範囲は、空気がフォーム中のセル内を透過しやすいフォーム特性を示し、ローラとして使用した場合、耐久後の画像特性が悪くなる。一方、吸引圧が4.0kPaより、高くなると、実施例に述べる保管歪の結果が悪くなる。前記吸引ホース43の途中には圧力計45が接続され、前記圧力計45によって吸引ホース43の内圧が測定される。
【0025】
前記吸引ノズル47は、図4に示すように、平面視形状が一辺iの正方形の立体からなり、前記ポリウレタンフォーム21の表面22と当接して押圧する押圧面48が半径rの円弧形状に湾曲すると共に、前記押圧面48の中央で開口した貫通孔49が内部を貫通して形成されている。前記貫通孔49は、前記押圧面48での先端開口径d1が5mm、吸引ホース43との接続側の開口径d2が本実施例では5mmとなっている。また、前記吸引ノズル47における各部の寸法は、本実施例では前記平面視形状の一辺iが12mm、高さkが3mm、前記押圧面48の頂部を通る高さ(すなわち貫通孔49部分の高さ)jが1mm、前記押圧面48の半径rが10mmである。
【0026】
前記吸引ノズル47は、図3に示すように、治具51に取り付けられる。前記治具51は、下面が開口した角筒状からなり、前記治具51の上面52の内側に前記吸引ノズル47が下向きに取り付けられる。前記治具51の上面52には、前記吸引ノズル47の貫通孔49と連通する接続孔53が形成されており、前記接続孔53を介して前記吸引ホース43と前記吸引ノズル47の貫通孔49が接続される。また、前記治具51は、トナー供給ローラ支持体55上に載置されたトナー供給ローラ10に上方から被さるようにセットされ、その状態で前記吸引ノズル47の押圧面48が、前記トナー供給ローラ10のポリウレタンフォーム21の表面22に圧接して前記表面22を2mm圧縮するようになっている。前記トナー供給ローラ支持体55は、前記トナー供給ローラ10において前記ポリウレタンフォーム21が設けられていないシャフト11の両端部を下側から受けることができる受け部を上部に有し、前記受け部56でトナー供給ローラ10のシャフト11を受けることにより、前記トナー供給ローラ10のポリウレタンフォーム21の表面22が前記吸引ノズル47の押圧面48で2mm圧縮される位置となるように、前記シャフト11の支持高さが設定されている。
【0027】
前記ウレタンフォーム21は、前記吸引圧を有すると共に、セル数が50〜110個/25mm、密度が0.1〜0.4g/cmのものからなる。セル数は、JIS K 6400−1に基づいて測定した値、密度はJIS K6400に基づき測定した値である。また、前記ウレタンフォーム21の平均セル径は230〜500μmであるのが、より好ましい。前記平均セル径は、前記ポリウレタンフォーム21において任意に選択した15個のセルに対してセル直径を測定し、測定した15個の内、セル直径が最大のものから5個と、最小のものから5個を取り除き、残りの5個のセルについてセル直径の平均値を求めることにより得た値である。なお、セル直径が1000μm以上の大きなセルは、ピンホールと見なして、平均セル径を求める際の15個のセルから除外する。
【0028】
前記トナー供給ローラの製造方法について説明する。前記トナー供給ローラの製造に際し、まず、前記シャフト11を回転装置(図示せず)にセットして、図2のように、所定回転速度でシャフト11を一方の周方向へ回転させる。そして、前記シャフト11の上方に配置した原料供給ノズルNを、前記シャフト11の長さ方向に沿って一方向へ所定速度で移動させながら、ポリウレタンフォーム原料Pを、回転中のシャフト11の外周面に前記原料供給ノズルNから供給する。
【0029】
前記シャフト11の回転数は、60〜240rpmが好ましい。前記シャフト11の回転数が60rpmよりも小さいと、前記シャフト11の外周面に供給したポリウレタンフォーム原料がシャフト11から垂れ落ちやすくなり、一方、240rpmよりも大きいと前記シャフト11の外周面に供給したポリウレタンフォーム原料から形成されるポリウレタンフォームの表面が凹凸になりやすい。前記シャフト11の回転数は、より好ましくは120〜180rpmである。
【0030】
また、前記シャフト11の長さ方向に沿う前記原料供給ノズルNの移動速度は、5〜20mm/s、前記原料供給ノズルNからの前記シャフト11の外周面に対するポリウレタンフォーム原料Pの供給量は15〜60g/minが好ましい。
【0031】
前記ポリウレタンフォーム原料Pは、前記シャフト11の外周面に供給された直後の粘度の低い流動性を有する状態から、反応の進行により粘度が上昇してクリーム状となるまでの流動性を有する間に、前記シャフト11の回転によって、表面が平滑化(セルフレベリング)され、最終的に凹凸のない、あるいはほとんど凹凸のない平滑な表面を有する円柱状あるいは円筒状のポリウレタンフォームになる。
【0032】
前記ポリウレタンフォーム原料Pは、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、発泡剤、整泡剤を含むものである。
前記ポリオールとしては、ポリウレタン発泡体に用いられる公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールの何れか一つが単独で又は二以上が混合して用いられる。
【0033】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール、またはその多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。また、ポリエステルポリオールとしては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。ポリエーテルエステルポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したもの、あるいは1分子内にポリエーテルとポリエステルの両セグメントを有するものを挙げることができる。
【0034】
特に、本発明では、前記回転中のシャフト11の外周面に供給されたポリウレタンフォーム原料Pの平滑化(セルフレベリング)を高めるために、前記ポリオールは、粘度が400〜3000mPa・sec/25℃のものが好ましく、より好ましくは800〜1600mPa・sec/25℃のものである。さらに、前記ポリウレタンフォーム21を前記吸引圧及び密度とするためには、ポリオールは、官能基数が2〜4、分子量が400〜6000のものが好ましい。
【0035】
ポリイソシアネートとしては、芳香族系、脂環式、脂肪族系の何れでもよく、また、1分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能のイソシアネートであっても、あるいは1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する3官能以上のポリイソシアネートであってもよく、それらを単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。
【0036】
例えば、2官能のポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネートなどの芳香族系のもの、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環式のもの、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネートなどの脂肪族系のものを挙げることができる。
【0037】
また、3官能以上のポリイソシアネートとしては、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン−4,6,4’−トリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ポリメリックMDI等を挙げることができる。なお、その他ウレタンプレポリマーも使用することができる。また、ポリイソシアネートは、それぞれ一種類に限られず一種類以上であってもよい。例えば、脂肪族系イソシアネートの一種類と芳香族系イソシアネートの二種類を併用してもよい。
【0038】
なお、前記ポリイソシアネートのイソシアネートインデックスは、90〜120が好ましい。イソシアネートインデックスは、ポリウレタンの分野で使用される指数であって、原料中の活性水素基(例えばポリオールの水酸基及び発泡剤としての水等の活性水素基等に含まれる活性水素基)に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比を百分率で表した数値である。
【0039】
発泡剤としては水、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、炭酸ガス等が用いられるが、特に水は好適である。発泡剤が水の場合、添加量は目的とする密度や良好な発泡状態が得られる範囲に決定されるが、前記ポリウレタンフォーム21を前記の吸引圧、平均セル径、密度とするには、ポリオール100質量部に対して0.3〜2.0質量部が好ましい。なお、水と他の発泡剤を併用してもよい。
【0040】
触媒としては、本発明では、泡化触媒と樹脂化触媒が併用される。泡化触媒は、ポリイソシアネートと水の反応を促進して炭酸ガスを発生させるアミン系触媒であり、ポリウレタンフォームの反応時における流動性に影響を与える。前記泡化触媒は限定されるものではなく、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチル−エタノールアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル等を挙げることができる。
【0041】
樹脂化触媒は、ポリオールとポリイソシアネートとのウレタン化反応(樹脂化反応)を促進させるアミン系触媒である。前記樹脂化触媒は限定されるものではなく、例えば、1,2−ジメチルイミダゾール、N・(N’,N’−ジメチルアミノエチル)−モルホリン、テトラメチルグアニジン、ジメチルアミノエタノール、トリエチレンジアミン、N−メチル−N’−(2ヒドロキシエチル)−ピペラジン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパン1,3−ジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレン−トリアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、エチレングリコールビス(3−ジメチル)−アミノプロピルエーテル、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチル−N’−(2ジメチルアミノ)エチルピペラジン等を挙げることができる。
【0042】
前記泡化触媒と樹脂化触媒の割合は、前記回転中のシャフト11の外周面に供給されたポリウレタンフォーム原料が、表面の平滑性を良好に実現できるように設定するのが好ましい。すなわち、前記回転中のシャフト11の外周面に供給されたポリウレタンフォーム原料が、表面を平滑にした後に泡化反応を始め、泡化反応終了後に樹脂化反応が始まるように、前記泡化触媒と樹脂化触媒の割合を設定するのが最も好ましい。具体的には、前記泡化触媒と樹脂化触媒の量比は、1/20〜1/3が好ましく、より好ましくは1/10〜1/6である。
【0043】
前記触媒の比率よりも樹脂化触媒量が少ないと、回転中のシャフト11の外周面に供給されたポリウレタンフォーム原料は、泡化が早く行われるようになって表面の平滑化が悪くなり、ポリウレタンフォームの表面が平滑化されずに凹凸になる。また、樹脂化が遅れることにより、前記シャフト11の外周面に供給されたポリウレタンフォーム原料が、前記シャフト11の回転数によってはシャフト11から垂れたり、形成されるポリウレタンフォームが変形した状態となったりする。
【0044】
一方、前記触媒の比率よりも樹脂化触媒量が多いと、回転中のシャフト11の外周面に供給されたポリウレタンフォーム原料は、泡化が遅くなって充分な発泡層を得る前に樹脂化が進むことになるため、ポリウレタンフォームの密度が高くなりすぎたり、前記平滑化が悪い状態で樹脂化が進んでポリウレタンフォームの表面が平滑化されずに凹凸になったりする。
【0045】
前記泡化触媒と樹脂化触媒を含む触媒の量は、前記ポリオール100質量部に対して 0.1〜3.0質量部が好ましい。前記の範囲よりも触媒量が少ないと、前記シャフト11の外周面に供給されたポリウレタンフォーム原料の反応が遅くなりすぎて、前記シャフト11の回転数によってはシャフト11からポリウレタンフォーム原料が垂れるようになり、また、生産性も悪化する。一方、前記の範囲よりも触媒量が多いと、前記シャフト11の外周面に供給されたポリウレタンフォーム原料の反応が速くなりすぎて、前記平滑化が良好に行われなくなる。
【0046】
整泡剤としては、ポリウレタンフォームの製造に用いられる公知のものを使用することができる。例えば、シリコーン化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等を挙げることができる。整泡剤の量は、ポリオール100質量部当たり0.3〜3.0質量部が好ましい。前記範囲よりも整泡剤量が少ない場合、整泡作用を充分に発揮できず、良好なポリウレタン発泡体を得難くなる。また、通気性が高くなり、吸引圧が低くなって、トナーがロール上に詰まりやすくなり、画像特性が悪くなる。一方、前記範囲よりも整泡剤量が多い場合、整泡作用が強くなりすぎて通気性が低下(前記吸引圧が増大)する。5質量部よりも多いと、フォームがシュリンクする。)
【0047】
その他、前記ポリウレタンフォーム原料には、架橋剤やその他の添加剤が適宜含まれる。架橋剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリレン−2,4,6−トリアミン、エチレンジアミン、アミノエタノール、トリエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ヒドラジントリエタノールアミン、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸、ニトリロトリ酢酸、クエン酸、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)等が挙げられる。これらの中でも、グリセリンやトリメチロールプロパンが広く使用されていることから好ましい。架橋剤の量は、ポリオール100質量部に対して0.3〜5.0質量部である。
【0048】
前記シャフト11の外周面に供給されたポリウレタンフォーム原料が発泡してポリウレタンフォームとなった後に、前記ポリウレタンフォームの外周表面を研磨加工して、研磨加工後の円周面からなる前記表面22を有するポリウレタンフォーム21をシャフト11の外周面に形成し、前記トナー供給ローラ10を得る。なお、前記ポリウレタンフォームの外周表面を研磨加工することにより、前記ポリウレタンフォームは表面の薄膜が除去されてポリウレタンフォーム表面で気孔が開口するため、前記ポリウレタンフォーム21の表面22にトナーを効率よく保持することができるようになる。
【実施例】
【0049】
直径6mm、長さ270mmの金属製シャフトを一方の周方向へ回転数140rpmで回転させ、シャフトの上方4mmの位置に配置した原料供給ノズルから表1の配合のポリウレタンフォーム原料を45g/minの供給量でシャフトの外周面に供給しながら、原料供給ノズルを15mm/minの移動速度で前記シャフトの一端側から他端側へ向けて移動させることにより、シャフトの外周面にポリウレタンフォーム原料を供給した。その際、シャフトの両端からそれぞれ、15mmの部分にはポリウレタンフォーム原料を供給せず、シャフトの外周面が露出した状態とした。シャフトの外周面に供給したポリウレタンフォーム原料の発泡により形成されたポリウレタンフォームは、表面が平滑化されており、凹凸のないものであった。その後、ポリウレタンフォームの表面を研磨装置(品番:LG−70、水口製作所製)により研磨加工して実施例1〜5のトナー供給ローラを得た。
【0050】
【表1】

【0051】
表1における原料は以下の通りである。ポリオールはエーテル系ポリオール、官能基数3、分子量5000、水酸基価33.66mgKOH/g、粘度930mPa・sec/25℃、品番:No.38、三洋化成工業(株)製、架橋剤はグリセリン、(株)旭電化製、触媒1(樹脂化触媒)はトリエチレンジアミン、品番:33LV、中京油脂(株)製、触媒2(泡化触媒)はビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル/ジプロピレングリコール=70/30の混合物、品番:NIAX−1、UCC社製、触媒3(樹脂化触媒)はN,N−ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、品番:カオーライザーNo.23NP、花王(株)製、触媒4(泡化触媒)はN,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、品番:カオーライザーNo.26、花王(株)製、整泡剤はシリコーン系、品番:SF−2961、東レ・ダウコーニング(株)製、ポリイソシアネートはウレタンプレポリマー(ジフェニルメタンジイソシアネートの変性物)、NCO=25.9%、品番:0379、SBU社製である。
【0052】
比較のため、スラブポリウレタンフォームに発泡方向と直交する方向にシャフト挿通孔を形成し、次いでローラ1本分の大きさで切り出した後、シャフト挿通孔にシャフトを挿通し、表面を研磨して円周面に加工したポリウレタンフォームをシャフトの外周面に設けた比較例1〜3のトナー供給ローラを製造した。比較例1〜3のシャフトは実施例1〜5のシャフトと同一材質、同一寸法からなり、また比較例1〜3においてシャフトの外周面に設けたポリウレタンフォームの寸法は実施例1〜5におけるポリウレタンフォームと同一である。なお、比較例1のスラブポリウレタンフォームは、品番:EP−70、(株)イノアックコーポレーション製、比較例2のスラブポリウレタンフォームは、品番:ERG−H、(株)イノアックコーポレーション製、比較例3のスラブポリウレタンフォームは、品番:ESH、(株)イノアックコーポレーション製である。
【0053】
実施例1〜5及び比較例1〜3に対して、平均CLD硬度(gf)、密度(g/cm)、平均セル径(μm)、セル数(個/25mm)、吸引圧(kPa)を測定した。平均CLD硬度は、ローラを構成するポリウレタンフォームの中央位置の外周表面を、周方向に45度毎に、すなわちローラを構成するポリウレタンフォームの中央における8方向の表面を直径50mmの円盤で1mm圧縮した時の圧縮時荷重(CLD硬度)を測定し、8方向の測定値の平均を計算した値である。また、前記8方向のCLD硬度に対して、最大値と最小値及びσを求めた。密度はJIS K6400に基づき測定した。平均セル径は(株)KEYENCE製のマイクロスコープ VH−8000を用いてポリウレタンフォームの表面を100倍に拡大し、前記のように任意の15個のセルについてセル直径を測定し、15個の内最大のものから5個と、最小のものから5個をそれぞれ除き、残りの5個のセルの直径の平均を計算で求めた。その際、セル直径が1000μm以上の大きなセルは、ピンホールと見なして、平均セル径を求める際の15個のセルから除外した。また、セル数はJIS K 6400−1に基づき測定した。吸引圧は、図3に示した前記方法で測定した吸引ホースの内圧である。吸引圧の測定に用いた吸引ポンプは、品番:MP−Σ100H、柴田科学(株)製、圧力計は品番:AP−C30、(株)KEYENCE製、吸引ホースは、材質シリコーン、外径7mm、内径5mm、長さ900mmであり、吸引ノズルは図4で説明した寸法からなる樹脂製のものである。
【0054】
前記45度毎のCLD硬度測定結果を表2に示す。表2の測定結果から、実施例1〜5のローラは、8方向において圧縮加重の変化、すなわち硬さの変化が少ないものであることがわかる。また、実施例1〜5のローラをトナー供給ローラとして、レーザープリンター(品番:FLB801、Panasonic製)に取り付け、10000枚の通紙後にプリント画像を判断したところ、プリント画像に不具合は見られなかった。
【0055】
【表2】

【0056】
前記平均CLD硬度(gf)、密度(g/cm)、平均セル径(μm)、セル数(個/25mm)、吸引圧(kPa)の測定結果を表3に示す。なお、表3において吸引圧特性の評価は、前記吸引圧(吸引ホースの内圧)が0.5kPa以上であって、かつ2.0kPa未満の場合に「○」、2.0kPa以上であって、かつ4.0kPa以下の場合には「◎」とした。
【0057】
【表3】

【0058】
また、実施例1〜5及び比較例1〜3のトナー供給ローラに対して耐久後の画像評価試験と保管歪の試験を行った。
耐久後の画像評価試験は、実施例1〜5及び比較例1〜3のトナー供給ローラをそれぞれレーザープリンター(品番:FLB801、Panasonic製)に取り付けて、黒色の5%印字を1万枚行った後に全面黒色の画像を印刷して印刷画像について、黒ベタ、ピッチムラ及び縦スジの3項目を目視で判断した。黒ベタは画像の黒さが濃いものは「○」、薄いものは「×」とし、ピッチムラはピッチ毎のムラが無かった場合は「○」、少し有る場合は「△」、目立つ場合は「×」とした。また、縦スジは縦スジが無い場合は「○」、有る場合は「×」とした。
【0059】
保管歪の試験は、実施例1〜5及び比較例1〜3のトナー供給ローラをレーザープリンター(品番:FLB801、Panasonic製)に取り付けて、50℃の環境で現像ローラにトナー供給ローラを5日間当接させ、その後に常温環境に移して1時間経過後に全面黒色の画像を印刷し、その印刷画像を目視で判断し、初期画像と同等の場合には「○」、ローラピッチで画像が薄くなっている筋が発生した場合には「×」とした。トナー供給ローラは、現像ローラと当接させた部分の回復が悪い場合、トナーを充分供給することができないため、回復が悪い部分のみ画像が白く抜けた状態となる。耐久後の画像評価と保管歪の結果を表3の下部に示す。
【0060】
表3から理解されるように、実施例1〜5のトナー供給ローラは耐久後の画像評価が黒ベタ、ピッチムラ及び縦スジの測定結果が何れも「○」であり、かつ保管歪の結果が「○」であり、良好な画像が得られるものであった。それに対して、比較例1〜3は、耐久後の画像評価において、黒ベタ、ピッチムラ及び縦スジの測定結果が、少なくとも一つにおいて「△」または「×」となった。また、吸引圧が本発明の吸引圧の範囲より高い比較例3について、保管歪の結果が悪かった。
【0061】
比較例における耐久後の画像評価について詳述する。黒ベタの項目については、トナー詰まりのある比較例1、2は、耐久後のトナー供給量が減少し、黒ベタ画像が薄くなって「×」となり、比較例3はトナー詰まりが無いため黒ベタ画像が初期と変わらず濃いままであり、「○」となった。なお、トナー詰まりについては、吸引圧特性「×」のものはトナー詰まりがあり、一方、吸引圧特性が「○」または「◎」のものはトナー詰まりがほとんどない、あるいは無いものである。ピッチムラの項目については、比較例1はトナー詰まりがあるものの、表2に示すように硬さの周ムラにおいて(MAX−MIN)/平均値が、他の比較例よりも小さく、周ムラが比較的少ないため、ピッチムラが「△」となった。また、比較例2は周ムラが大きいためピッチムラが「×」となり、一方、比較例3は周ムラが大きいもののトナー詰まりがないのでピッチムラが「△」となった。また、縦スジは、トナー詰まりによりローラが硬くなることでトナー劣化を生じ、それが凝集してブレードに固着することで発生するものであるため、トナー詰まりがある比較例1及び2で「×」となり、トナー詰まりの無い比較例3で「○」となった。
【0062】
このように、本発明の実施例で製造したトナー供給ローラは、ローラのセルの全てが同じローラ半径(芯)方向に成長したものになるので、セルの形状が周方向によって異方性を生じない。従って、トナーの供給力と剥ぎ取り力が均一になり、また、トナー供給ローラの周方向全域において、現像スリーブに対する当接圧を等しくできて、ピッチムラ等の画像欠陥を解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係るトナー供給ローラの断面図である。
【図2】シャフト外周面へのポリウレタンフォーム原料の供給時を示す模式的な斜視図である。
【図3】吸引圧測定方法を示す図である。
【図4】吸引ノズルを示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10 トナー供給ローラ
11 シャフト
21 ポリウレタンフォーム
41 吸引ポンプ
43 吸引ホース
45 圧力計
47 吸引ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、前記シャフトを回転させながら前記シャフトの外周面に供給したポリウレタンフォーム原料から前記シャフトの外周面で発泡させて発泡後の表面を研磨加工したポリウレタンフォームと、よりなるトナー供給ローラであって、
前記研磨加工されたポリウレタンフォームは、吸引ポンプに接続した吸引ホースの先端に設けた先端開口径5mmの吸引ノズルを前記ポリウレタンフォームの表面に圧接させて前記ポリウレタンフォームの表面を2mm圧縮し、その状態で前記吸引ポンプにより30L/minの流量で前記ポリウレタンフォームの表面から空気を吸引した際の前記吸引ホースの内圧が0.5〜4.0kPaの値となる吸引圧を有すると共に、セル数が50〜110個/25mm、密度が0.1〜0.4g/cmであることを特徴とするトナー供給ローラ。
【請求項2】
シャフトを回転させながら前記シャフトの外周面にポリウレタンフォーム原料を供給して前記シャフトの外周面で発泡させてポリウレタンフォームを形成し、その後に前記ポリウレタンフォームの表面を研磨加工するトナー供給ローラの製造方法であって、
前記ポリウレタンフォーム原料は、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、発泡剤、整泡剤を含み、
前記ポリオールは、粘度が400〜3000mPa・sec/25℃であり、
前記触媒は泡化触媒と樹脂化触媒を含み、
前記研磨後のポリウレタンフォームは、吸引ポンプに接続した吸引ホースの先端に設けた先端開口径5mmの吸引ノズルを前記ポリウレタンフォームの表面に圧接させて前記ポリウレタンフォームの表面を2mm圧縮し、その状態で前記吸引ポンプにより30L/minの流量で前記ポリウレタンフォームの表面から空気を吸引した際の前記吸引ホースの内圧が0.5〜4.0kPaの値となる吸引圧を有すると共に、セル数が50〜110個/25mm、密度が0.1〜0.4g/cmであることを特徴とするトナー供給ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−96965(P2010−96965A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267316(P2008−267316)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】