説明

トナー搬送用ローラ、およびその製造方法。

【課題】電子画像形成装置に装備される帯電ローラや現像ローラ等のトナー汚れを除去するためのトナー搬送用ローラ、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】トナー搬送用ローラであって、直径d0 の軸部材の外周に形成された初期外径D1 を有し、且つ略球形状の多数のセルが全体に分布された素材硬度H1を有する発泡体で構成されているローラ部を、その外周面より所定の条件にて半径方向に均等に平均圧縮率ΔR10〜45%で圧縮、加熱し、該圧縮、加熱により少なくとも該ローラ部の外周部の部分圧縮率が0.35〜0.65とすることにより外周部に存在するセル形状を、前記略球形状のセル直径がローラ軸方向に対し伸びた略ラグビーボール状の扁平セル形状とされ、前記ローラ部の外周面がローラ軸方向に伸びた該扁平セルの多数の疑似楕円断面で覆われていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、FAX等トナーを使用する電子画像形成装置に装備される帯電ローラや現像ローラ等のトナー汚れを効率良く除去するための耐久性を有するトナー搬送用ローラ、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来電子複写機、プリンター、FAX装置等のいわゆる電子画像形成装置は、帯電装置により帯電されたOPC感光ドラムに画像情報に応じてトナーによる顕像化し、記録媒体にこれを転写して画像記録を得る。これらの装置では、感光ドラムにトナーを供給するためのトナー供給ローラや、転写後、OPC感光ドラムに残留したトナーを取り除くクリーニング装置の為のローラクリーナが設けられている。このうち残留トナーの除去方式には色々な方式のものが実用化されているが、その中でも回転ブラシによる除去方式は比較的安価で、取り扱いも容易で多く使用されている。また、その効率を上げるための多くの工夫もされている。(例えば、特許文献1参照)
近年、植毛された回転ブラシに替わり、スポンジ状材質たとえば軟質ポリウレタンフォーム材を使用したローラが主流となりつつあり、またトナーの清浄効率をあげると同時に該ローラにトナーが残留固着し転写精度を悪化させることを避けるための各種の方式が試みられている。(例えば、特許文献2、特許文献3参照)
【特許文献1】特開2002−287536号公報
【特許文献2】特開2002−296896号公報
【特許文献3】特開平11−38749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のように、ポリウレタンフォームは、発泡材質により母材自体が柔軟で、適度の弾性を有することと相まって、フォームに構成される無数の微細セルが、ドラム表面からの余剰トナーを除去するための極めて優れた清浄効果を有している。しかしながら、ポリウレタンフォームを使用したローラの最大の弱点は、使用時間によってはポリウレタンフォームの微細セル内にトナーが堆積し、熱による固化をすることにより、ローラ表面固化およびフィルミングを生じる可能性があることである。
【0004】
すなわち、近来当該装置に使用されるトナーは、微細で粒子分布が均一で転写効率が極めて高くなってきている。しかし、その一方で感光ドラムからの残留トナーの掻き取り性が悪くなり、その残留トナーに起因するゴースト現象を生じる等の問題が生じ易くなってきている。
そこで、前記特開2002−296896号(特願2001−100552号)等においては、トナーの掻き取り効果を向上させるために、トナー供給ローラの外周面上に軸方向に伸びた複数の条溝を周方向に一定のピッチで形成することがおこなわれている。
しかしながら、その製造方法は熱線によって溶融しながらロール外周面に所定の凹凸条溝を構成するものであり、溶融によりロール表面のセルの多孔度が低下し、掻き取り効果をマイナスさせる嫌いがある。また、金型にリング状に配列した熱線により溝部だけを溶融作成する方法も開示されているが、これとても溝部に加熱溶融により生じた分解性生成物が残り、この溶融面にトナーが付着し固化することによりフィルミング等の画像欠陥の原因となることがある。
【0005】
本願発明は、上記状況に鑑み、ポリウレタンフォーム材のもつトナー掻き取り効果をより向上させ、且つローラ表面に生じるトナー堆積、固化による問題を軽減する優れたトナー搬送用ローラ、およびその製造方法を提供するところに、その目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るトナー搬送用ローラは、
1)トナー搬送用ローラであって、直径doの軸部材の外周に形成された初期外径Dlを有し、且つ、略球形状の多数のセルが全体に分布された発泡体で構成されている発泡体ローラを、その外周面より所定の条件にて半径方向に圧縮、加熱し、該圧縮、加熱により少なくとも該ローラの外周面に沿った所定の層内に存在するセル形状を、前記略球形状のセル直径がローラ軸方向に対し伸びた略ラグビーボール状の扁平セル形状とし、前記発泡体ローラの外周面がローラ軸方向に伸びた該扁平セルの多数の疑似楕円断面で覆われており、且つ所定の外周面硬度H2を有しているものである。
2)また、上述の1)において、前記所定の条件の圧縮が、半径方向の外周面均等圧縮であり、該圧縮の平均圧縮率△R=(Rl−R2)/Rl(ただし、Rl;圧縮処理前のローラ半径、R2;圧縮処理後のローラ半径)を10〜45%とし、且つ、少なくとも外周面より中心方向への所定の距離Tlの領域における部分的圧縮率△Rp(ただし、△Rp=(△Rl−△R2)/△Rl △Rl;圧縮処理前の半径方向部分的厚さ、△R2;該△Rl部分の圧縮処理後の厚さ)を0.35〜0.65としたものであり、
3)上述の1)または2)において、前記所定の距離Tlを、圧縮前の半径方向の層の厚さTOの10〜30%としたものであり、
4)上述の1)〜3)において、前記所定の距離Tlにおいて、少なくとも外周面層における硬度H2を、圧縮前の硬度との硬度比kが、少なくともk=1.5〜2.0となるようにしたものであり、
5)上述の1)〜4)において、前記発泡体の圧縮後の前記外周面に沿った所定の層における硬度を、アナログ硬さ計CS型(JI S K 6253対応 Cスケール)にて30〜60としたものである。
【0007】
また、本発明に係るトナー搬送用ローラは、
6)上述の1)〜5)において、前記圧縮処理後ローラ部の外周面に、更にローラ軸方向と平行な多数の細溝を配列したことものであり、
7)上述の6)において、前記細溝を、溝幅bが0.3〜1mm、深さが0.1〜0.3mmとしたものであり、
8)上述の1)〜7)において、前記発泡体を軟質ポリウレタンフォームとしたものである。
【0008】
また、本発明に係るトナー搬送用ローラの製造方法は、
9)発泡成形され、且つ予め硬度を測定され、該硬度により平均圧縮率が特定され求められた初期直径Dlを有する発泡体ローラー部を軸部材の外周面に密着して設ける第1工程と、該発泡体ローラ部を初期半径R1に対し相当量△=(Rl−r2)縮小された半径r2を有する筒状金型に圧挿し、外周面を所定条件にて圧縮、加熱処理をする第2工程と、
所定冷却温度に冷却後離型処理をする第3工程と、必要により、さらに外周面を加工処理をする第4工程よりなるものである。
10)さらに、上述の9)において、前記相当量△を、前記筒状金型への圧挿による圧縮比β=R2/Rl、および前記筒状金型より離型後のローラ部外径におけるスプリングバック量α=R2/r2 により特定される値であって、圧縮条件が外周直径方向の均等圧縮であり、且つ該圧縮の平均圧縮率△R=((Rl−R2)/Rl×100[%](ただし、R2は第3工程後のローラ半径)が20〜45%、好ましくは20〜40%であり、且つ、加熱処理温度tを150〜175℃としたものであり、
11)上述の9)または10)において、前記発泡体を、軟質ポリウレタンフォームとしたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、軟質ポリウレタンフォーム自体の物性的長所を減ずることなく、ローラ表面における微細セルの形状に対し、トナー掻き取り効果とセル内のトナー堆積の防止効果の相反する条件との関係を研究し、ローラ表面におけるセル断面形状を軸方向に扁平な疑似楕円断面形状とすることによってより広く浅い凹みとすることにより、断面円形のセルでは得られないトナー掻き取り効果および残留トナーの減少効果を与えるようにしたところに特徴がある。
さらに、平均圧縮率△Rを20〜45%、好ましくは20〜40%とすることにより、ローラ基材の初期発泡体素材としてセル直径が500μmのごとき極めて安価で一般的な素材を使用することを可能としたものである。
【0010】
また、本発明は、ローラによるトナー掻き取り効果をより効率よく行うために、ローラ全体としての弾性を十分に維持し、相手面への接触順応性を保ったまま、且つ、被掻き取り面との接触表面層部を内部に比較して硬化し、且つ、適正セル形状を有するもの(以下、本願表面硬化層という)とすることにより、トナー掻き取りをより効果的にするところに第2の特徴がある。
すなわち、これを例えれば、焼き豆腐のごとく、内部のプリプり感と表面の歯触りの良い焼成硬化部分との相乗効果によって、焼き豆腐独特のうまみを与えるようなものである。
本出願人は、この本願表面硬化層の構成条件につき、多くの実験と経験により条件を特定したところに第3の特徴がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の、少なくとも該ローラの外周面に沿った所定の層内に存在するセル形状をローラ軸方向に伸ばされた疑似楕円断面形状を有する扁平セル(以下、楕円状セルという)とし、さらに表面層と内部層との好ましい構成を維持することにより、トナー掻き取り効果をより向上させ、且つ、ローラ表面に生じるトナー堆積、固化による問題を軽減する、優れたトナー搬送用ローラを安価に提供することができる。
また、外周よりの均等圧縮によるロール外周部における組織の緻密化、強度の向上により、従来外周面の研磨仕上げ時に屡々生じた表面のカエリ(ささくれ)の発生や、その千切れ片の脱落およびそれによるコピーへの不具合を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1におけるトナー搬送用ローラの製造工程を示す工程流れ図である。
図2は、本発明の実施の形態1におけるトナー搬送用ローラの説明図である。(a)は正面説明図、(b)は側面説明図である。
図3は、発泡ポリウレタンフォームのセル断面を示す説明図であり、(a)は発泡成形後の球状セル断面の模式図、(b)は一方向圧縮による楕円状セル断面の模式図、(c)は(b)のセル断面を拡大した説明図ある。
図4は、本発明の実施の形態1における発泡ポリウレタンフォームのセル断面を示す顕微鏡写真であり、(a)は圧縮処理前の球状セル、(b)は圧縮処理後の楕円状セルを示す。
図において、1はトナー搬送用ローラ、2は発泡ウレタンフォームローラ部、3はローラ軸、dはローラ軸直径、Dlは圧縮処理前のローラ部外径、D2は圧縮時ローラ部外径、D3は金型より離型後のローラ部外径、Lはローラ部の長さ、dlは略球形状セル、Eは疑似楕円状セル、a、bは楕円状セルの長径、短径である。
なお、図において、各部寸法は説明のため任意に誇張して表示されている。
【0013】
従来より発泡ウレタンフォームを圧縮することにより、セルが潰れ硬度が上がることは周知の技術である。しかしながら、従来は、圧縮方向における硬度差が生じている大きな母材から好ましい適度の硬度を有する均質部分を切り出して使用することが多く行なわれていた。従って、切り出し使用された以外の部分については使用されずにムダとなっていた。
また、本願出願人は、前記トナーの掻き取り作用は、「消しゴム」による字消し作用と類似の作用によるものと思料しており、「消しゴム」を字面に押しつけ、移動する際の適度な「消しゴム」本体部分の弾性と、字面と接する「消しゴム」の表面部分の条件により掻き取り効果が左右される。この本体部分と本願表面硬化層部分に要求される条件は相反する条件となる場合が多い。たとえば、掻き取り効果を上げるために硬度を増せば、弾性は低下する。さらに、トナーの掻き取り効果とトナーの堆積効果も相反する条件であって、掻き取り効果の良い表面は必ずしも堆積効果が少ないものではない。
【0014】
これらトナーの掻き取り効果と堆積効果をバランス良く満足する本願表面硬化層の構成条件を求め、且つ適度の弾性を有する本体部との組み合わせにより、より好ましいトナー搬送用ローラを提供することに本願発明の目的がある。
すなわち、本発明は、トナーの掻き取り効果及びセル内におけるトナーの堆積、固着現象がセル形状により大きく左右されるという知見に基づき、これらにより良い効果をもたらすセル形状、セル条件を多くの試験結果より求め、さらにこれらが、適度の弾性を有する本体部分(以下、内層部という)との組み合わせにおいて構成するところに本発明の第1の特徴がある。
また、本発明においては、従来極めて限定された条件範囲において採用されていたローラ用のポリウレタンフォーム素材を、本発明のローラ製造方法により安価で比較的任意のポリウレタンフォーム素材の使用を可能とし、ムダの発生がないコスト的に有利なローラの提供が可能となった。
【0015】
以下、図を参照し説明する。
図2(a)、は、本実施の形態1における、トナー搬送用ローラ1の構成を示しており、軸部材3の外周面に密着して設けられたローラー状の発泡ポリウレタンフォーム2とよりなる。
予め発泡成形された軟質ポリウレタンフォーム素材の素材硬度を計測し、この値を基礎として最終ローラ時におけるセル形状、分布を想定し、圧縮加熱処理条件を設定する。すなわち比較的セル形状(直径)の大きな、硬度の低い軟質ポリウレタンフォーム素材の場合は、平均圧縮率どを大きく採り、圧縮加熱処理を行う。これにより、素材に対する採用条件は採用幅の自由度が増し、コスト的に極めて有利となる。 この場合、必要な圧縮率条件は、金型側でなく素材寸法側により選択し、金型内径の種類の多様化を避けることができる。
【0016】
本実施の形態1においては、圧縮処理を半径方向の外周面均等圧縮のみにより軸方向には圧縮しない圧縮処理とすることにより、少なくとも表面層部における球状セルをローラ軸方向に対し伸びた略ラグビーボール状の扁平セル形状とし、圧縮処理による円周方向の圧縮率βによって前記発泡体ローラの外周面がローラ軸方向に伸びた該扁平セルの多数の疑似楕円断面で覆われるようにしたところに特徴がある。
すなわち、本実施例1において、前記圧縮率βと疑似楕円断面における長径aと短径bによる離心率ε(ε=(a2 −b2 1/2 /a)とは略比例する。
【0017】
前述のごとく、本願表面硬化層の硬度、セル形状、厚さの構成と、内層部の適度の弾性とのバランスの良い組み合わにポイントがある。
本願表面硬化層の厚さに関しては、ローラ−全体としての平均圧縮率△Rによる圧縮圧力により決められる。平均圧縮率△Rは0.2〜0.45、好ましくは0.2〜0.4が望ましい。平均圧縮率△Rが0.2以下では、本願表面硬化層の領域が明確でなく、本願表面硬化層としての効果が期待出来ない。また0.45以上では本願表面硬化層の領域が内層部に大きく入り込み、内層部の適度の弾性とのバランスが悪くなりトナー掻き取り効果が思わしくない。 また、平均圧縮率△Rは0.2〜0.45により、内層部の初期硬度に対する硬度比は約1.1〜1.4の適度の値となる。
【0018】
本願表面硬化層の硬度、セル形状に関しては、主として本願表面硬化層領域における部分的圧縮率△Rpにより特定される。
すなわち、少なくとも外周面より中心方向への所定の厚さ位置Tlの領域としての本願表面硬化層における部分的圧縮率△Rp(ただし、△Rp=(△Rl−△R2)/△Rl △Rl;圧縮処理前の半径方向部分的厚さ、△R2;該△R1部分の圧縮処理後の厚さ)は0.35〜0.65とする。
本願表面硬化層の外周部における硬度比は約3〜3.5倍となる。
また、本願表面硬化層のセル形状に関しては、セル形状は離心率εが約0.75〜0.93の疑似楕円体となる。 図4(b)は、本実施の形態1における実施例の1例を示し、圧縮処理前図4(a)の状態のものを部分的圧縮率△Rp約0.65により圧縮処理した状態を示す。離心率εは約0.75〜0.9程度となっている。
離心率εが0.75以下では通常の球状セルとトナー掻き取り効果に大差なく、また、全てのセルが0.9以上ではセル幅bが薄くなり過ぎトナー掻き取り効果はよいがセル内に堆積されるトナーの排出効率は劣化する。
【0019】
図5はウレタンフォームを圧縮処理条件としての平均圧縮率ΔRを変えた場合の圧縮方向の厚みRの変化状態を計測した図表である。
平均圧縮率ΔRを10、20、30、40、50各%として圧縮した場合、圧縮方向に加えられる圧縮は部分により差が生じ、加圧端面に近い部分に圧縮率の大きな部分が生じ内方に向かって加圧による圧縮の影響が減少する。
平均圧縮率ΔRが20%の場合、表面部における部分的圧縮率△Rpは約50%、測定場所8においても約0.34(離心率約0.75に相当)が得られる。また平均圧縮率ΔRが40%の場合は、表面部における部分的圧縮率△Rpは約60%、この場合は測定場所4の位置までも約50%の部分的圧縮率△Rpが維持されている。それより内方では10%と急激に部分的圧縮率△Rpは低下する。すなわち、この場合表面硬化部分は測定場所4までであることがわかる。
なお、試験品の全厚さは30mmであり、各測定場所間の距離(厚さ)は3mmである。
この表面硬化部分は薄過ぎても厚過ぎても好ましくない。平均圧縮比20%〜45%、好ましくは20〜40%、により得られる厚さが、本願表面硬化層の領域と内層部の適度の弾性とのバランスが好ましいことがわかった。
【0020】
図6はメラミンスポンジを圧縮処理条件としての平均圧縮率ΔRを変えた場合の圧縮方向の厚みRの変化状態および部分硬度の変化を計測した図表である。
メラミンスポンジの場合は、ウレタンフォームの場合と異なり、平均圧縮率ΔRによる部分的圧縮率△Rpの変化は明確でない。しかし、表面硬化層の変化は明確に表れている。
従って、ウレタンフォームの場合に比し本願表面硬化層の領域と内層部の適度の弾性とのバランスを期待することは出来ない。
【実施例1】
【0021】
試験試料
トナー搬送用ウレタンフォームロール 単位:mm
完成ウレタンフォームロール寸法 ( D2×d×L1) 30φ×4φ×300
圧縮処理前硬度 10(C型アナログ硬さ計)
圧縮処理前平均セル径 約200μm
芯金 4φ×300 S45C材

平均圧縮率 ΔR =0(比較試料)、5、10、20、30、40、50、60%
各3試料
(金型により調製)
加熱条件 160℃ 30分(金型に挿入状態にて)
【0022】
予め硬度を計測したウレタンフォームロール素材試料24本を作成し、金型内径寸法は完成ウレタンフォーム外形寸法D2(一定)とし、各試料の素材外形D1は、D2/ΔRにより設定した。
各試料を縮処理用金型に挿入後に同一加熱条件により加熱処理をし、冷却後抜き出して各試料とした。
圧縮処理後のセル状態を顕微鏡(倍率×300)にて観測し、外周面における平均的なセル形状および離心率を算出した。
この試験ローラを用い市販複写機(KONIKA Sitios 7145型)により同一画像各1000枚の複写を行い、印刷画質と印刷後のウレタンフォームロール表面を顕微鏡により同一選択箇所の各20箇所を観測し、トナーの堆積、排出状態を非圧縮処理の比較試料と比較測定した。
【0023】
図7 実施例1におけるセル形状の変化とトナー掻取り効果および堆積トナー剥離効果を試験した結果を示す図表である。
試験結果から、比較試料(ΔR=0)の場合は、トナー掻取りに若干難があり、トナー残渣のローラ表面におけるフィルミングに因ると思われる画像のゴースト現象の痕跡がみられた。また、セル内にはトナーの多くの堆積が確認された。
これに較べ試料番号4(ΔR=30%)の場合は、ローラ表面における清浄度は良好で画像のゴースト現象等は認められない。また試験後におけるセル内のトナー堆積が少なく、堆積トナーの剥離が良好であることが認められた。
【0024】
平均圧縮率 ΔRの減少に比例してトナー掻取り効果は悪くなり、また、セル内のトナー堆積状態も進み、平均圧縮率 ΔR=5%の場合では比較試料に較べて殆ど変わらない。これは、平均圧縮率ΔRが少なくなると表面硬度が上がらず、また、表面硬化層が明確に現れ難く、表面硬化層の領域と内層部の適度の弾性とのバランスが期待され難くなり、「消しゴム作用」が良好でなくなるためと思われる。また、セル平常もその離心率εが小さく、楕円化による広い面積と底の浅い形状による堆積トナーの排出効果が落ちるためと思われる。
【0025】
逆に平均圧縮率 ΔR=50%以上になると、トナー掻き取り効果も堆積トナーの排出効果も若干悪くなる傾向を示す。これは、表面硬化層が厚くなり過ぎ内部弾性とのバランスがわるくなるのと、セルの楕円化変形が多すぎ、掻き取り方向の幅が狭くなりすぎることに起因しているもと考えられる。
従って、平均圧縮率ΔRは、適度の表面硬度、表面硬化層の厚さ、セル形状を得るように選ばれることが必要である。
平均圧縮率△Rは0.2〜0.45が好ましい。これによる内層部の初期硬度に対する硬度比は約1.1〜1.4(表面硬度差は約3.0〜3.5)の値となり、外周部セルの平均的離心率は約0.6〜0.85が得られる。
【0026】
なお、実施例1においては、発泡体の素材がウレタンフォームの場合について試験されているが、メラミンスポンジ等においても、程度の差はあるが概ね同様な効果が得られることが確認された。
【実施例2】
【0027】
図8は本実施例2におけるローラー外周面の軸長手方向に溝を形成した場合の、ロール外周面に付加される溝形状を示す図であり、(a)は外周溝部の状態を示す説明図、(b)溝形状の部分拡大説明図である。
図において2はロール、21は溝、22は外周面(ランド)、D4は溝付きロールの外周面直径、pは溝幅、tは溝深さである。
【0028】
トナー搬送用ウレタンフォームロール 単位:mm
完成ウレタンフォームロール寸法 ( D2×d×L1) 30φ×4φ×300
圧縮処理前硬度 10(C型アナログ硬さ計)
圧縮処理前平均セル径 約200μm
芯金 4φ×300 S45C材
平均圧縮率 ΔR =10%
溝形状 p×t : 1.0×0.2(等分割溝)
(金型内面に凹凸形成)
加熱条件 160℃ 30分(金型に挿入状態にて)
【0029】
実施例1と同一の工程により成形したトナー搬送用ウレタンフォームロールにより、実施例1と同様の実機による複写試験を行った。
試験結果、実施例1試料番号2のトナー掻き取り効果およびトナー排出効果ははいずれも評価基準Δ(若干落ちる)は評価基準○(良い)に良好化した。
これにより適度の溝形成はロールにおけるトナー掻取り効果およびトナ排除効果を向上させるに効果的であることがわかった。
ただし、試験後の溝形状は、深さt0.15mmに変形されていた。
【0030】
本発明のトナー搬送用ロールは、外周よりの均等圧縮によるロール外周部における組織の緻密化、強度の向上により、従来外周面の研磨仕上げ時に屡々生じた表面のカエリ(ささくれ)の発生や、その千切れ片の脱落、およびそれによるコピーへの不具合が十分防止されることが確認された。
すなわち、従来、該ささくれの脱落片は、ローラーが、トナー供給ローラーであれば、トナーに混ざって感光体まで行ってしまい、また、クリーニングローラーであれば、帯電ローラー経由で感光体に行ってしまう不具合があった。これは異物(残存トナーを含む)を取り除くために、種々のクリーニング機構を設けているのに対して逆効果となってしまう嫌いがあった。
本発明のローラーは、外周よりの均等圧縮によりこのささくれ発生が防止され、その効果が極めて大きなメリットをもたらすものであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本願実施例においては、主としてウレタンフォームによる複写器用のトナー搬送用ロールについて述べたが、他のトナーによる画像形成を伴う機器への転用も可能であり、また、ロール材料もウレタンフォーム以外の発泡体材料によるロール類に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1におけるトナー搬送用ローラの製造工程を示す工程流れ図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるトナー搬送用ローラの説明図である。(a)は正面説明図、(b)は側面説明図である。
【図3】発泡ポリウレタンフォームのセル断面を示す説明図であり、(a)は発泡成形後の球状セル断面の模式図、(b)は一方向圧縮による楕円状セル断面の模式図、(c)は(b)のセル断面を拡大した説明図ある。
【図4】本発明の実施の形態1における発泡ポリウレタンフォームのセル断面を示す顕微鏡写真であり、(a)は圧縮処理前の球状セル、(b)は圧縮処理後の楕円状セルを示す。
【図5】ウレタンフォームを圧縮処理条件として平均圧縮率ΔRを変えた場合の圧縮方向の厚みRの変化状態を計測した図表である。
【図6】メラミンスポンジを圧縮処理条件としての平均圧縮率ΔRを変えた場合の圧縮方向の厚みRの変化状態および部分硬度の変化を計測した図表である。
【図7】実施例1におけるセル形状の変化とトナー掻取り効果および堆積トナー剥離効果を試験した結果を示す図表である。
【図8】ロール外周面に付加される溝形状を示す図であり、(a)は外周溝部の状態を示す説明図、(b)溝形状の部分拡大説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 トナー搬送用ローラ、
2 発泡ウレタンフォームローラ部、
3 ローラ軸、
d ローラ軸直径、
Dl 圧縮処理前のローラ部外径、
D2 圧縮時ローラ部外径、
D3 金型より離型後のローラ部外径、
D4 溝付きロールの外周面直径
L ローラ部の長さ、
dl 略球形状セル、
E 疑似楕円状セル、
a 楕円状セルの長径、
b 楕円状セルの短径、
21 溝、
22 外周面(ランド)、
p 溝幅、
t 溝深さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー搬送用ローラであって、直径d0 の軸部材の外周に形成された初期外径D1 を有し、且つ略球形状の多数のセルが全体に分布された素材硬度H1を有する発泡体で構成されているローラ部を、その外周面より所定の条件にて半径方向に圧縮、加熱し、該圧縮、加熱により少なくとも該ローラ部の外周面に沿った所定の層内に存在するセル形状を、前記略球形状のセル直径がローラ軸方向に対し伸びた略ラグビーボール状の扁平セル形状とされ、前記ローラ部の外周面がローラ軸方向に伸びた該扁平セルの多数の疑似楕円断面で覆われていることを特徴とするトナー搬送用ローラ。
【請求項2】
前記所定の条件の圧縮が、半径方向の外周面均等圧縮であり、該圧縮の平均圧縮率ΔR=(R1 −R2 )/R1 (ただし、R1;圧縮処理前のローラ半径、R2 ;圧縮処理後のローラ半径)が10〜45%であり、且つ少なくとも外周面より中心方向への外周面よりの所定の層位置T1の領域における部分的圧縮率ΔRp(ただし、ΔRp=(ΔR1−ΔR2)/ΔR1(ΔR1;圧縮処理前の半径方向部分的厚さ、ΔR2;該ΔR1部分の圧縮処理後の厚さ))が0.35〜0.65であることを特徴とする請求項1に記載のトナー搬送用ローラ。
【請求項3】
前記外周面よりの所定の層位置T1を、圧縮前の半径方向のローラ層の厚さT0(=R1)の10〜30%としたことを特徴とする請求項1または2に記載のトナー搬送用ローラ。
【請求項4】
前記所定の距離T1において、少なくとも外周面層における硬度H2は、圧縮前の硬度との硬度比kが、少なくともk=1.5〜2.0であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトナー搬送用ローラ。
【請求項5】
前記発泡体の圧縮後の前記外周面における硬度が、アナログ硬さ計CS型(JIS K 6253対応 Cスケール)にて30〜60であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトナー搬送用ローラ。
【請求項6】
前記圧縮処理後ローラ部の外周面に、更にローラ軸方向と平行な多数の細溝を配列したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のトナー搬送用ローラ。
【請求項7】
前記細溝が溝幅bが0.3〜1mm、深さ0.1〜0.3mmを有することを特徴とする請求項6に記載のトナー搬送用ローラ。
【請求項8】
前記発泡体が軟質ポリウレタンフォームであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトナー搬送用ローラ。
【請求項9】
発泡成形され、且つ予め硬度を測定され、該硬度により平均圧縮率が特定され求められた初期直径D1 を有する発泡体ローラー部を軸部材の外周面に密着して設ける第1工程と、該発泡体ローラ部を初期半径R1 に対し相当量Δ=(R1 −r2 )縮小された半径r2 を有する筒状金型に圧挿し、外周面を所定条件にて圧縮、加熱処理をする第2工程と、所定冷却温度に冷却後離型処理をする第3工程と、必要により、さらに外周面を加工処理をする第4工程よりなるトナー搬送用ローラの製造方法。
【請求項10】
前記相当量Δが、前記筒状金型への圧挿による圧縮比β=R2 /R1 、および前記筒状金型より離型後のローラ部外径におけるスプリングバック量α=R2 /r2 により特定される値であって、圧縮条件が外周直径方向の均等圧縮であり、且つ該圧縮の平均圧縮率ΔR={(R1 −R2 )/R1 }×100[%](ただし、R2 は第3工程後のローラ半径)が20〜45%、好ましくは20〜40%であり、加熱処理温度tが150〜175℃であることを特徴とする請求項9に記載のトナー搬送用ローラの製造方法。
【請求項11】
前記発泡体が軟質ポリウレタンフォームであることを特徴とする請求項9または10に記載のトナー搬送用ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−216670(P2008−216670A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54444(P2007−54444)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(507071682)理研精密株式会社 (1)
【Fターム(参考)】