説明

ドア開閉制御システム

【目的】本発明は、車両の人の乗降用のドアを開閉するドア開閉制御システムに関し、ICタグを所持した乗降客の位置を特定して状態表示し、ドア開閉をより安全かつ確実に行うことを目的とする。
【構成】 乗降する人に所持させたICタグから情報を読み取るために、車両の複数の位置に配置したICタグリーダと、複数のICタグリーダの電波強度を可変してICタグから情報が読み取れたときあるいは読み取れなくなったときのそれぞれの電波強度をもとにテーブルを参照してICタグまでの距離をそれぞれ算出し、これらの距離をもとに当該ICタグの位置を特定する手段と、特定したICタグの位置の移動軌跡をもとに状態を判定してその状態遷移を記憶する手段と、記憶した状態遷移表示を行う手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の人の乗降用のドアを開閉するドア開閉制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物などに装備する自動ドアは、光センサあるいは音波センサで人の近づいたことを感知してドアを自動的に開き、人が遠ざかって感知できなくなるとドアを自動的に閉めることが行われている。
【0003】
また、電車やバスなどの自動ドアは、乗降時に、車掌や運手者が目視あるいは複数台のTVカメラの画像を見て、各乗降口に人がいないことを確認すると共に扉を閉める合図(ブザーを鳴動)した後に、手動でドアを閉めるようにしている。
【0004】
また、乗車確認システム(特許文献1)では、乗客にICタグを所持させ、その識別情報を読み取って乗客が全員乗車しているかを確認することが行われている。
【特許文献1】特開2003−30707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した前者の技術では、電車やバスなどの移動する車両から人が乗降する場合には身体障害者などが車両のドアに乗降のために移動中であっても、ドアの近傍に居ないとドアを閉してしまい、使用できないという問題があった。
【0006】
また、上述した第2番目の技術では、人(車掌、運手者)が目視(鏡、TVカメラ)でドアの開閉部分に人が近づいていないか、身障者が乗車して席に座ったかなどを確認してからドアを手動で閉める必要があり、これら状況を自動検知して表示できないという問題があった。
【0007】
また、上述した第3番目の技術では、車両に乗車した乗客に貼付したICタグを読み取って当該乗車した人を検出することができるのみで、人が席を立って乗降口に近づいて降車したり、乗降口に近づいて乗車したりするなどの状況を検知して表示できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、これらの問題を解決するため、乗降客にICタグを所持させ、車両の出入口近傍に配置した複数のICタグリーダで当該ICタグを読み取ってその位置を特定し、当該位置の移動をもとに状態遷移を作成して乗降状態表示することを目的としている。
【0009】
従って、ICタグを所持した乗降客の位置を特定して状態表示し、ドア開閉をより安全かつ確実に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は、ICタグを所持した乗降客の位置を特定して状態表示し、ドア開閉をより安全かつ確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、乗降客にICタグを所持させ、車両の出入口近傍に配置した複数のICタグリーダでICタグを読み取ってその位置を特定し、位置の移動をもとに状態遷移を作成して乗降状態表示することを実現した。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明のシステム構成図を示す。
図1において、ICタグカード1は、ICタグを貼付したカード(例えば電車やバスの定期券)であって、車両に乗降する人が持参するものである。
【0013】
ICタグ2は、無線で情報の読み書きができるICタグであって、ここでは、後述する図4に示す情報(タグID,身体的ハンディ種別情報、身体的ハンディ重度情報、乗降情報(乗降できる駅/バス停区間、乗降有効期間など))を予め書き込んだものである。
【0014】
ICタグリーダ3は、車両の乗降口の近辺に複数配置したものであって、ICタグ2に電波強度を変えて送信し、ICタグ2から情報が読み取れたときあるいは読み取れ無くなったときの電波強度をもとに、予め電波強度と距離との関係を測定して登録したテーブルを参照して距離(ICタグリーダとICタグとの距離)を算出したり、ICタグから情報を読み取ったりなどするものである。
【0015】
処理装置4は、複数のICタグリーダ3を制御してICタグ2までの距離を算出し、これら算出した距離からICタグ2のレイアウト(地図)上の位置(座標(X,Y,Z)あるいは緯度・経度・高度)を特定したりなどするものであって、ここでは、ICタグ位置特定手段5、ICタグ位置移動軌跡記憶手段6、乗降意思判定手段7、緊急通報発信手段8、ドア開閉制御信号送出手段9、タイマ10、ICタグ位置情報テーブル11、レイアウト情報DB12、およびICタグ状態テーブル13などから構成されるものである。
【0016】
ICタグ位置特定手段5は、ICタグ2の位置を特定するものであって、車両の乗降口の近辺に配置した複数のICタグリーダ3から乗降客が所持するICタグカード1内のICタグ2に電波強度を可変して送信し、当該ICタグ2から情報が読み取れたときあるいは読み取れ無くなったときの電波強度をもとに、予め作成した電波強度と距離の関係を登録してテーブルを参照して距離を算出し、これら算出した複数の距離をもとに公知の3角測量の原理でICタグ2の位置(レイアウト(地図)上の位置(座標(X,Y,Z)あるいは緯度・経度・高度)を特定するものである(図2から図9を用いて後述する)。
【0017】
ICタグ位置移動軌跡記憶手段6は、ICタグ位置特定手段5で特定したICタグ2の位置の移動軌跡を記憶するものである(図2から図9を用いて後述する)。
【0018】
乗降意思判定手段7は、乗降客が所持するICタグカード1に貼付したICタグ2の位置の移動軌跡をもとに乗降意思を判定するものである(図2から図9を用いて後述する)。
【0019】
緊急通報発信手段8は、乗降客が所持するICタグカード1に貼付したICタグ2の位置の移動軌跡が緊急状態と判定されたときに、緊急通報を発信するものである(図2から図9を用いて後述する)。
【0020】
ドア開閉制御信号送出手段9は、図示外の車両に向けてドア開閉制御信号を送出するものである(図2から図9を用いて後述する)。
【0021】
タイマ10は、現時刻を計測するものである。
ICタグ位置情報テーブル11は、乗降客が所持するICタグカード1に貼付したICタグ2の特定した位置を時刻に対応づけて登録するテーブルである(図5など参照)。
【0022】
レイアウト情報DB12は、車両のレイアウト(地図)を予め作成して登録したものである。
【0023】
ICタグ状態テーブル13は、乗降客が所持するICタグカード1に添付したICタグ2の状態とその遷移を登録して管理するテーブルである(図8、図9など参照)。
【0024】
次に、図2のフローチャートの順番に従い、図1の構成の動作を詳細に説明する。
図2は、本発明の動作説明フローチャートを示す。
【0025】
図2の(a)は、ICタグ位置特定および移動軌跡の記憶フローチャートを示す。
図2の(a)において、S1は、複数のICタグリーダ3の制御によりICタグデータを読み込み、位置を特定する。これは、図1のICタグ位置特定手段5が複数のICタグリーダ3に指示し、乗降客が所持するICタグカード1に貼付したICタグ2に電波強度を可変して送信し、当該ICタグ2から情報が読み取れたときの電波強度あるいは読み取れ無くなったときの電波強度を測定し予め作成して電波強度と距離との対応づけを登録した図示外のテーブルを参照し、複数のICタグリーダ3とICタグ2との距離をそれぞれ算出し、当該算出した複数の距離と、予め登録したICタグリーダ3の位置とをもとに公知の3角測量の原理で当該ICタグ2の位置(レイアウト(地図)上の位置(座標(X,Y,Z)あるいは緯度・経度・高度)を特定する。これにより、乗降客が所持するICタグカード1に貼付したICタグ2の位置が車両の乗降口の近辺や車両内のいずれにあるかを特定することが可能となる。
【0026】
S2は、ICタグデータ、位置情報を記録し、不存在ICタグ記録データを削除する。これは、S1でICタグ2から読み取った情報(ICタグデータ)および特定したその位置情報を、右側に記載したICタグ位置情報テーブル11に記録(図5参照)、および不存在(検出できなかった、即ち、降車してしてしまった乗降客)のICタグのICタグデータをICタグ位置情報テーブル11から削除する。
【0027】
S3は、システム停止指示か判別する。YESの場合には、終了する。NOの場合には、S1以降を繰り返す。
【0028】
以上によって、車両の乗降口近辺に配置した複数のICタグリーダ3から電波強度を可変して乗降客の所持するICタグカード1に貼付したICタグ2の情報を読み取れたときの電波強度あるいは読み取れ無くなったときの電波強度をもとにテーブルを参照して距離を算出し、これら算出した複数の距離をもとに公知の3角測量の原理でICタグ2の位置を特定し、当該位置をICタグ位置情報テーブル11にその特定した時刻と一緒に記憶、更に、読み取った情報を併せて記録することが可能となる。これにより、車両の乗降口近辺、車両内に居る乗降客が所持するICタグカード1に貼付したICタグ2につい全てその位置、情報、時刻を対応づけてICタグ位置情報テーブル11に所定時間毎に記憶することが可能となる(図5参照)。
【0029】
図2の(b)は、乗降意思の判定およびドア開閉制御のフローチャートを示す。
図2の(b)において、S11は、駅到着信号か判別する。これは、車両が駅に到着してドアを開閉してもよいとの信号であって、例えば
(1)車両に乗車した車掌がドア開閉スイッチをドア開の位置に押下したときのドア開信号、
(2)無人運転車両の場合には、運行システムより車両が所定位置に停止したときに送出される駅到着してドア開してもよいというドア開信号、あるいは
(3)駅の停車位置近傍にICタグ2を貼付しておき、これを車両に装備したICタグリーダ3が電波強度を変えて送信し、ICタグ2から情報が読み取れたときあるいは読み取れ無くなったときの電波強度をもとにテーブルを参照して距離を算出し、これら算出した距離をもとにICタグの位置を特定して当該位置が停車位置範囲内に入ったときに送出するドア開信号
などである。
【0030】
S12は、ドア開放信号を送出する。これは、S11のドア開信号をもとに、図示外の車両のドア開閉制御部にドア開放信号を送出し、ドアを開にさせる。
【0031】
S13は、ICタグ位置移動軌跡を分析し、ICタグ所持者の乗降意思を判定する。これは、ICタグ位置情報テーブル11に時刻毎に設定されているICタグ2の位置情報を参照し、ICタグ位置の移動状態をもとに乗降意思を判定する(図3から図9を用いて後述する)。
【0032】
S14は、緊急事態か判別する。これは、S13の判定の結果、ICタグ2の位置の移動状態が、例えば車両の床位置、かつ所定時間たっても移動しないという条件に合致したときに当該緊急事態と判別する。YESの場合には、S15で緊急通報を送出し、例えば運転者の運転パネルのレイアウト上に緊急通報メッセージおよびその発生した当該ICタグの位置を表示する。一方、S14のNOの場合には、S16に進む。
【0033】
S16は、ICタグ所持者が乗降完了か判別する。これは、S13の判定の結果、乗車を完了あるいは降車を完了した状態か判別、例えば後述する図7の(a)の降車時(ICタグ位置の状態遷移(状態番号)が1⇒2⇒4⇒6あるいは1⇒3⇒2⇒4⇒6と遷移したとき)あるいは図7の(b)の乗車時(ICタグ位置の状態遷移(状態番号)が6⇒2⇒4⇒1あるいは6⇒2⇒3⇒4⇒1と遷移したとき)である。YESの場合には、降車/乗車完了したので、S17に進む。NOの場合には、降車/乗車完了していないので、S13以降を繰り返す。
【0034】
S17は、駅発車信号か判別する。これは、車両が駅に到着して乗客の乗降が完了し、ドアを閉してもよいとの信号であって、例えば
(1)車両に乗車した車掌がドア開閉スイッチをドア閉の位置に押下したときのドア閉信号、
(2)無人運転車両の場合には、運行システムより車両が所定位置に停止して乗降客の乗降が終わりドアの閉まる位置に配置した光センサが所定時間以上人を感知しないで乗降完了と判定したときに発せられる、閉にしてもよいというドア閉信号、あるいは
(3)駅員から発せられたドア閉信号
などである。YESの場合には、S18でドア閉信号を送出し、S19に進む。NOの場合には、S13以降を繰り返す。
【0035】
S19は、システム停止指示か判別する。YESの場合には、終了する。NOの場合には、S11以降を繰り返す。
【0036】
以上によって、車両が停車位置にきたときにドアを開にし、乗降客の所持するICタグカード1に貼付したICタグ2の位置を所定時間毎に格納するICタグ位置情報テーブル11を参照し、ICタグ位置の状態遷移をもとに乗降客の緊急事態、乗降完了などを判定し、ドアを閉にすることが可能となる。以下順次詳細に説明する。
【0037】
図3は、本発明の動作説明フローチャート(乗降意思判定処理)を示す。
図3において、S21は、ICタグ位置情報を読み込む。これは、既述した図2の(a)のS2で乗降客が所持するICタグカード1に貼付したICタグ2の所定時間毎に特定した位置情報を、ICタグ位置情報テーブル11から読み込む。
【0038】
S22は、乗降フラグをOFF,緊急フラグをOFFに初期設定する。ここで、
・乗降フラグ
・ON :乗降客有り
・OFF:乗降客無し
・緊急フラグ
・ON :緊急事態
・OFF:平常
をそれぞれ表す。
【0039】
S23は、変数n=0を初期決定する。
S24は、検出したICタグ数が1以上か判別する。YESの場合には、S25に進む。NOの場合には、終了する。
【0040】
S25は、n=n+1する。これは、繰り返し毎に、変数nに1を加算する。
S26は、ICタグ(n)の位置変化(移動軌跡)および身体的ハンディ情報を分析する。これは、現在対象とするICタグ(n)(nは1,2,3、・・・)の位置の変化、および読み取った情報中の身体的ハンディ情報(身体的障害情報)を分析する。
【0041】
S27は、乗降意思有りか判別する。これは、S26の分析で、現在対象のICタグ2の位置の移動情報をもとに乗降意思有りか判別(例えば、後述する図6の状態2か判別)する。YESの場合には、S28で乗降フラグをONに設定し、S31に進む。一方、NOの場合には、S29に進む。
【0042】
S29は、緊急意思有りか判別する。これは、S26の分析で、現在対象のICタグ2の位置の移動情報および身体的ハンディ情報をもとに、緊急意思有りか判別(例えば、位置が車両の床近辺であり、かつ所定時間以上、移動していないという、緊急意思有りか判別)する。YESの場合には、S30で緊急フラグをONに設定し、S31に進む。NOの場合には、S31に進む。
【0043】
S31は、n=検出したICタグ数か判別する。YESの場合には、S25からS30の処理について、検出した全てのICタグについて繰り返したので、終了する。NOの場合には、S25でn=n+1し、次のICタグ2についてS26からS30を繰り返す。
【0044】
以上によって、乗降客が所持するICタグカード1に貼付したICタグ2の位置を所定時間毎に特定してICタグ位置情報テーブル11に記録し、当該ICタグ位置情報テーブル11を参照してICタグ2の位置の移動状態をもとに乗降意思有り、緊急事態を分析し、乗降フラグがON(乗降者が乗降中である旨)、緊急フラグがON(乗降客が床に倒れている異常状態である旨)をそれぞれ設定することが可能となる。
【0045】
図4は、本発明のICタグのデータ構造例を示す。これは、乗降客が所持するICタグカード1に貼付するICタグ2に予め書き込むデータ構造例であって、ここでは、図示の下記のデータを書き込む。
【0046】
・タグID:
・身体的ハンディ種別情報:
・身体的ハンディ重度情報:
・乗降情報:
・その他:
ここで、タグIDはICタグ2を一意に識別すると共に一意に無線の電波信号を送信して呼び出して情報を読み取るためのIDである。身体的ハンディ種別情報、身体的ハンディ重度情報は、ICタグ2を貼付したICタグカード1(例えば定期券)を所持する乗降客の身体的ハンディ種別情報(聴覚障害などの種別情報)および身体的ハンディ重度情報(その種別における重度(軽い、中程度、重いなどの重度))である。乗降情報は、所持する乗降者が乗降可能な駅(停留所)の区間、有効期間などの乗降情報である。
【0047】
図5は、本発明の位置特定説明図を示す。
図5の(a)は、ICタグ位置情報テーブルのデータ構造例を示す。ICタグ位置情報テーブル11には、車両に乗降口近辺に装着した複数のICタグリーダ3から電波強度を可変してICタグ2から読み取れたときの電波強度あるいは読み取れ無くなったときの電波強度をもとに図示外の予め作成したテーブルを参照して距離を算出し、これら距離をもとに公知の3角測量の原理で求めたICタグ2の位置と、当該ICタグ2から読み取った情報を設定するテーブルであって、ここでは、図示の下記の情報を対応づけて登録するものである。
【0048】
・時刻:
・タグID:
・身体的ハンディ種別:
・身体的ハンディ重度:
・車両番号:
・位置情報:
・その他:
ここで、時刻は乗降客が所持するICタグカード1に貼付したICタグ2の位置を特定した時刻である。タグID、身体的ハンディ種別、身体的ハンディ重度はICタグ2から読み取ったタグID、身体的ハンディ種別、身体的ハンディ重度である。車両番号はICタグ2の位置を特定した車両番号である。位置情報はICタグ2の特定した位置情報である。その他は、ICタグ2から読み取った他の情報(例えば上述した乗降情報など)を登録したものである。
【0049】
図5の(b)は、レイアウト例を示す。図示のレイアウトは、レイアウト情報DB12に予め作成して登録したものを読み出し、表示装置上に表示したものであって、ここでは、車両(電車内)のレイアウトおよびその乗降口(ドア1,2,3)を表示し、更に、ある乗降客が所持するICタグカード1に貼付したある特定のICタグ2の位置の移動軌跡(移動遷移)を求めて図示の太線のように表示した例を示す。これら移動軌跡(移動遷移)を図5の(a)のICタグ位置情報テーブル11中の同じICタグ2の位置をもとに時刻の経過に従い、その位置を太線で表すことで乗降客の移動状況をわかり易く提示することが可能となる。ここでは、通常は、多数の乗降客が乗降するので、各ICタグ2の位置の移動軌跡を表示したのでは、重複して見えなくなってしまうので、後述する図9の状態表示画面例に示すように、状態として、当該状態1,2,3,4,5,6(図6から図9参照)に応じた色で表示するようにしている。以下順次詳細に説明する。
【0050】
図6は、本発明の乗降意思の決定論理例を示す。ここで、上段の項目情報として、
・ドアオープン後のICタグ位置変化:
・ICタグの移動方向:
・身体的ハンディ情報:
・推定される状況:
・最新時刻における乗降意思の判定:
・状態番号(状態遷移番号):
・その他:
を設定した。ここで、「ドアオープン後のICタグ位置変化」は車両のドアを開(オープン)にした後のICタグの位置の変化であって、既述した図4の(a)のICタグ位置情報テーブル11に記録された時刻をもとに同一ICタグの位置の変化に着目し、図示の下段に示すように類別したものである。「ICタグの移動方向」はICタグがドアの方向に移動、方向特定できずなどをもとに下段に示すように類別したものである。「身体的ハンディ情報」はICタグ2から読み取った身体的ハンディ情報を下段に示すように該等欄に設定したものである。「推定される状況」はICタグ2の位置、移動方向などをもとに下段に示すように、推定される状況を類別したものである。「最新時刻における乗降意思の決定」は以上の項目情報の類別をもとに最新時刻における乗降意思を決定した類別を下段に図示したように示したものである。「状態番号(状態遷移番号)」は乗降意思に付与した番号である(図7の(c)参照)。
【0051】
以上のように、上段の項目情報に対するそれぞれの類別を設定して最新時刻における乗降意思を決定すると共にその乗降意思に一意に状態番号(1,2,3,4,5,6)を付与することにより、乗降客が所持するICタグカード1に貼付したICタグ2の特定した位置をICタグ位置情報テーブル11に時刻に対応づけて記録し、ICタグ位置情報テーブル11中の時刻をもとにICタグ2の位置の移動遷移を追跡しその乗降意思を決定して状態番号(1から6のいずれか)で順次移動状態(移動遷移)を表示することが可能となる(図7から図9を用いて後述する)。
【0052】
図7は、本発明のICタグ所持者の状態遷移例を示す。これは、既述したように、ICタグ2を貼付したICタグカード1を所持した所持者(乗降客)が車両に乗降するときに当該ICタグ2の位置を所定時間毎に特定してICタグ位置情報テーブル11に記録し、ICタグ位置情報テーブル11中の時刻をもとにICタグ毎の位置の移動を追跡して図6でその乗降意思を決定して状態番号を求め、当該状態番号(乗降意思)の移動遷移の例を示したものである。
【0053】
図7の(a)は、降車時の状態遷移例を示す。
図7の(a−1)は、通常動作の降車時の状態遷移例を示す。通常動作時の降車時の状態遷移は、図示の下記のようになる。
【0054】
・表示色: 青 赤 黄 青点滅後消去
・状態番号: 1 2 4 6
ここで、状態番号1,2,3,4,5,6とその表示色は、図7の(c)に示す通りである。
【0055】
以上のように、降車の通常動作時の動作および表示は下記の通りである。
・最初は状態番号「1」(乗降意思無し)(図6、図7の(c)の状態番号1参照)で青を表示する。
【0056】
・次に、状態番号「2」(乗降意思有り(乗降中))(図6、図7の(c)の状態番号2参照)で赤を表示する。
【0057】
・次に、状態番号「4」(乗降意思無し(乗降完了)(図6、図7の(c)の状態番号4参照)で黄を表示する。
【0058】
・次に、状態番号「6」(検知範囲外)(図6に記載されていない、検知範囲外の状態番号6)で青点滅後消去するという表示を行う。そして、当該青点滅後消去したときに、車両の乗降口からの乗降客の降車が完了したことを自動検知することが可能となる。
【0059】
図7の(a−2)は、障害者の動作の降車時の状態遷移例を示す。障害者の動作の降車時の状態遷移は、図示の下記のようになる。
【0060】
・表示色: 青 赤点滅 赤 黄 青点滅後消去
・状態番号: 1 3 2 4 6
ここで、状態番号1,2,3,4,5,6とその表示色は、図7の(c)に示す通りである。
【0061】
以上のように、降車時の障害者(更に、障害者でない通常者であっても泥酔した者など)の動作および表示は下記の通りである。
【0062】
・最初は状態番号「1」(乗降意思無し)(図6、図7の(c)の状態番号1参照)で青を表示する。
【0063】
・次に、状態番号「3」(判定保留)(図7の状態番号3参照)で赤点滅を表示する。そして、最初の状態(状態番号「1」に戻ったり、あるいは次の状態番号「2」に進んだりする。
【0064】
・次に、状態番号「2」(乗降意思有り(乗降中))(図6、図7の(c)の状態番号2参照)で赤を表示する。
【0065】
・次に、状態番号「4」(乗降意思無し(乗降完了)(図6、図7の(c)の状態番号4参照)で黄を表示する。
【0066】
・次に、状態番号「6」(検知範囲外)(図6に記載されていない、検知範囲外の状態番号6)で青点滅後消去するという表示を行う。そして、当該青点滅後消去したときに、車両の乗降口からの乗降客の降車が完了したことを自動検知することが可能となる。
【0067】
図7の(b)は、乗車時の状態遷移例を示す。
図7の(b−1)は、通常動作の乗車時の状態遷移例を示す。通常動作の乗車時の状態遷移は、図示の下記のようになる。
【0068】
・表示色: 無表示 赤 黄 青
・状態番号: 6 2 4 1
ここで、状態番号1,2,3,4,5,6とその表示色は、図7の(c)に示す通りである。
【0069】
以上のように、乗車の通常動作時の動作および表示は下記の通りである。
・最初は状態番号「6」(検知範囲外)で無表示である。
【0070】
・次に、状態番号「2」(乗降意思有り(乗降中))(図6、図7の(c)の状態番号2参照)で赤を表示する。
【0071】
・次に、状態番号「4」(乗降意思無し(乗降完了))(図6、図7の(c)の状態番号4参照)で黄を表示する。
【0072】
・次に、状態番号「1」(乗降意思無し)(図6、図7の(c)の状態番号1参照)で青を表示する。そして、当該青を表示したときに、車両の乗降口からの乗降客の乗車が完了したことを自動検知することが可能となる。
【0073】
図7の(a−2)は、障害者の動作の乗車時の状態遷移例を示す。障害者の動作の乗車時の状態遷移は、図示の下記のようになる。
【0074】
・表示色: 無表示 赤 赤点滅 黄 青
・状態番号: 6 2 3 4 1
ここで、状態番号1,2,3,4,5,6とその表示色は、図7の(c)に示す通りである。
【0075】
以上のように、乗車時の障害者(更に、障害者でない通常者であっても泥酔した者など)の動作および表示は下記の通りである。
【0076】
・最初は状態番号「6」(検知範囲外)で無表示である。
・次に、状態番号「2」(乗降意思有り(乗降中))(図6、図7の(c)の状態番号2参照)で赤を表示する。
【0077】
・次に、状態番号「3」(判定保留)(図6、図7の(c)の状態番号3参照)で赤点滅を表示する。そして、前の状態(状態番号「2」に戻ったり、あるいは次の状態番号「4」に進んだりする。
【0078】
・次に、状態番号「4」(乗降意思無し(乗降完了))(図6、図7の(c)の状態番号4参照)で黄を表示する。
【0079】
・次に、状態番号「1」(乗降意思無し)(図6、図7の(c)の状態番号1参照)で青を表示する。そして、当該青を表示したときに、車両の乗降口からの乗降客の乗車が完了したことを自動検知することが可能となる。
【0080】
図7の(c)は、状態番号と表示色の対応例を示す。図示のテーブルは、状態番号1から6に対応づけてそのときの状態と説明(図6参照)、更に、表示色をそれぞれ設定したものである。
【0081】
図8は、本発明の状態表示処理フローチャートを示す。
図8において、S41は、対応するICタグ2の状態を記録する。これは、既述したICタグ位置情報テーブル11を参照し、ICタグ2の時間に伴う当該ICタグ2に位置の移動をもとに、既述した図6の判定論理により最新時刻における乗降意思の判定を逐次行って当該乗降意思に対応する状態番号を取得して既述した図7の(a),(b)の該当する状態遷移のいずれかを特定し、最新時刻(現在)の状態をICタグ状態テーブル13に記録する。
【0082】
S42は、全てのICタグの状態を記録したか判別する。YESの場合には、S44で表示画面に全てのICタグ2の状態を表示、例えば右側に記載したように、タグIDに対応づけて車両番号、状態番号(1,2,3,4,5,6のいずれかの番号)を表示する。一方、S42のNOの場合には、S43で次のICタグへポインタを進め、S41以降を繰り返す。
【0083】
以上によって、既述したICタグ位置情報テーブル11を参照し、ICタグ2の位置の移動をもとに状態(1,2,3,4,5,6)およびその遷移を記録し、ICタグ状態テーブル13に設定し、後述する図9に示すように、画面上に乗降客の乗降の状態「1,2,3,4,5,6)のいずれかをリアルタイムに表示することが可能となる。
【0084】
図9は、本発明の状態表示画面例を示す。図示の状態表示画面例は、既述した図8のフローチャートで記録したICタグ状態テーブル13の内容を判り易く画面上に表示した例を示す。ここでは、図示の下記のように対応づけて表示する。
【0085】
・乗客ID(タグID):
・車両番号:
・状態:
・その他:
ここで、乗客ID(タグID)は車両に乗降した乗降客が所持するICタグカード1に貼付したICタグ2から読み取ったID(乗客ID,タグID)である。車両番号はICタグの特定された位置の車両番号である。状態はICタグ2の位置の遷移をもとに判定した状態遷移(図7の(a),(b)、(c)参照)のうちのいずれの状態かを表すものである。
【0086】
以上のように、乗客ID(タグID)に対応づけて車両番号、状態(状態番号1,2,3,4,5,6に対応する色)で表示することにより、車両の運転者はいずれの車両で乗降客がいずれの状態、即ち、
・青:状態番号1で乗降意思なし
・赤:状態番号2で乗降意思有り(乗降中)
・赤点滅(ゆっくり):状態番号3で判定保留
・黄:状態番号4で乗降意思なし(乗降完了)
・赤点滅(速く):状態番号5で乗降客に緊急事態発生
・青点滅後消去又は無表示:状態番号6で乗降客が検知範囲外
の状態を色(図7の(c)参照)でリアルタイムかつ簡易かつ全車両について認識することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、ICタグを所持した乗降客の位置を特定して状態表示し、ドア開閉をより安全かつ確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明のシステム構成図である。
【図2】本発明の動作説明フローチャートである。
【図3】本発明の動作説明フローチャート(乗降意思判定処理)である。
【図4】本発明のICタグのデータ構造例である。
【図5】本発明の位置特定説明図である。
【図6】本発明の乗降意思の判定論理例である。
【図7】本発明のICタグ所持者の状態遷移例である。
【図8】本発明の状態表示処理フローチャートである。
【図9】本発明の状態表示画面例である。
【符号の説明】
【0089】
1:ICタグカード
2:ICタグ
3:ICタグリーダ
4:処理装置
5:ICタグ位置特定手段
6:ICタグ位置移動軌跡記憶手段
7:乗降意思判定手段
8:緊急通報発信手段
9:ドア開閉制御信号送出手段
10:タイマ
11:ICタグ位置情報テーブル
12:レイアウト情報DB
13:ICタグ状態テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の人の乗降用のドアを開閉するドア開閉制御システムにおいて、
乗降する人に所持させたICタグから情報を読み取るために、車両の複数の位置に配置したICタグリーダと、
前記複数のICタグリーダの電波強度を可変して前記ICタグから情報が読み取れたときあるいは読み取れなくなったときのそれぞれの電波強度をもとにテーブルを参照してICタグまでの距離をそれぞれ算出し、これらの距離をもとに当該ICタグの位置を特定する手段と、
前記特定したICタグの位置の移動軌跡をもとに状態を判定してその状態遷移を記憶する手段と、
前記記憶した状態遷移表示を行う手段と
を備えたことを特徴とするドア開閉制御システム。
【請求項2】
前記状態遷移表示は、少なくとも乗降意思無し、乗降意思有り、乗降完了を区別して表示することを特徴とする請求項1記載のドア開閉制御システム。
【請求項3】
前記状態遷移表示が少なくとも、乗降意思無し、乗降意思有り、乗降完了と順に遷移した後にドアを自動的に閉にすることを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載のドア開閉制御システム。
【請求項4】
前記状態遷移表示が少なくとも、乗降意思無し、乗降意思有り、乗降完了と順に遷移した後まで、たとえ以前にドアの閉信号が受信されてもドアの閉を抑止することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のドア開閉制御システム。
【請求項5】
前記ICタグに身体障害情報を予め書き込んでおき、前記位置特定時に併せてICタグから当該身体障害情報が読み出されたときに、前記状態遷移表示に併せて身体障害の乗降客の乗降と表示してドア開閉の注意を促すことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のドア開閉制御システム。
【請求項6】
前記ICタグの位置が、一定時間移動しなく、かつ車両の床位置に存在した場合に、当該ICタグを所持する乗降客の異常と判定して警報を発することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のドア開閉制御システム。
【請求項7】
前記ICタグリーダが車両の停車位置あるいはその近傍に予め貼付されているICタグから停車位置情報を読み取って停車位置範囲内に停止したと検出したときに、ドアを自動的に開にすることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のドア開閉制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−132233(P2006−132233A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323888(P2004−323888)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(598057291)富士通サポートアンドサービス株式会社 (147)
【Fターム(参考)】