説明

ナノフィルター濾材の製造方法及びその製造装置

【課題】従来のマイクロフィルター濾材を支持体とし、マイクロフィルター濾材上にボトムアップ方式でナノチューブまたはナノ繊維を直接合成・成長させることにより、従来のナノ繊維製造方法では製造できない直径のナノチューブまたはナノ繊維からなるナノフィルター濾材を製造する方法およびその装置を提供する。
【解決手段】反応器内に設けられたマイクロフィルター濾材を支持体として使用し、ナノ触媒粒子を反応器内に供給して支持体上に付着させ、ナノ触媒粒子上に原料ガス及び反応ガスを供給し、反応器を加熱装置で加熱して、反応器内のナノ触媒粒子からナノチューブまたはナノ繊維を合成・成長させることにより、マイクロフィルター濾材上にナノチューブまたはナノ繊維が合成・成長されたナノフィルター濾材を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は従来のマイクロフィルター濾材を支持体とし、前記支持体上にナノチューブまたはナノ繊維を直接的に合成して成長させることにより、前記ナノチューブまたはナノ繊維からなる多孔体が前記支持体上に形成されたナノフィルター濾材の製造方法およびその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマイクロフィルター濾材上にナノ繊維を付着させて製造されたナノフィルター濾材は、フィルターの透過率を大きく変化させることなく、濾過効率を向上できることが知られている。
すなわち、ナノ繊維をフィルター濾材の製造に適用する場合、従来のマイクロフィルターと同等な濾過効率を維持しながら、圧力の損失がより少ないフィルター濾材を製作することができる。
【0003】
また、ナノ繊維で製造されたフィルターは、超微細汚染粒子、すなわちナノ粒子の濾過特性が非常に優れていることが知られている。ナノ繊維でマイクロフィルター濾材の表面を被覆したフィルターの場合、微細汚染粒子がフィルター濾材の表面に集塵され、支持体であるマイクロフィルター領域まで深く侵透することができないため、集塵フィルターの脱塵性能も向上することが知られている。
その結果、フィルターの寿命延長も可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、電気紡糸技術を用いてナノ繊維を支持体であるマイクロ繊維フィルターの上に紡糸することによって、ナノ繊維で被覆されたナノフィルター濾材が製造されている。
しかし、前記電気紡糸技術は、毛細管の端部と支持体との間に電界を印加することによって、ポリマー溶液からナノ繊維を紡ぎ出すトップダウン方式の技術であるため、ナノ繊維の直径サイズを縮小させることに限界がある。
【0005】
本発明は、このような従来の問題を解決するべくなされたもので、その目的は、支持体であるマイクロフィルター濾材にボトムアップ方式でナノチューブまたはナノ繊維を直接的に合成して成長させることにより、従来のナノ繊維の製造方法では製造できない直径サイズのナノチューブまたはナノ繊維からなるナノフィルター濾材の製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、前記ナノチューブまたはナノ繊維からなる前記ナノフィルター濾材の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
反応器内に設けられたマイクロフィルター濾材を支持体として使用し、ナノ触媒粒子を前記反応器内に供給して前記支持体上に付着させる工程と、前記ナノ触媒粒子上に原料ガス及び反応ガスを供給する工程と、前記反応器を加熱装置によって加熱する工程と、前記反応器内の前記ナノ触媒粒子上でナノチューブまたはナノ繊維を合成して成長させる工程と、前記マイクロフィルター濾材上に前記ナノチューブまたはナノ繊維が合成され成長したナノフィルター濾材及びナノフィルター濾材を製造する工程とを含むナノフィルター濾材の製造方法を提供する。
【0008】
前記ナノ触媒粒子は、コバルト、ニッケル、鉄及び/またはこれらの合金からなることができる。
【0009】
前記支持体であるマイクロフィルター濾材は、繊維フィルター、不織布フィルター及び/またはメンブランフィルターからなることができる。
前記マイクロフィルター濾材の材質は、ポリマー、珪素酸化物、アルミナ、セラミックス及び/または金属酸化物などのすべての材質でなることができる。
【0010】
前記ナノ触媒粒子は、抵抗加熱法、プラズマ加熱法、誘導加熱法及び/またはレーザー加熱法などのような蒸発凝縮法(Inert Gas Condensation, IGC)、さらに抵抗コイル反応器、火炎反応器、レーザー反応器及び/またはプラズマ反応器を利用した気相化学反応法(Chemical Vapor Condensation, CVC)、その他、直接沈澱法、共浸法、冷凍乾燥法及び/または噴霧熱分解法による液状法によって製造することができる。
【0011】
前記ナノ触媒粒子は、遷移金属、遷移金属の金属硫化物、遷移金属の金属炭化物、遷移金属の金属酸化物、遷移金属の金属塩及び/または前記遷移金属を含有する有機化合物からなることができる。
【0012】
前記遷移金属からなるナノ触媒粒子は、支持体である前記マイクロフィルター濾材に担持される前記遷移金属の前駆体からなることができ、例えば還元、焼成、硫化、炭化反応により前記遷移金属相に転換されたものである。
【0013】
前記ナノ触媒粒子は、支持体である前記マイクロフィルター濾材上に、例えばペインティング法、浸漬法(dipping)、噴射法、蒸着法によって担持される。
【0014】
前記金属硫化物からなるナノ触媒粒子は、前記遷移金属の前記ナノ触媒粒子を硫化水素(HS)またはチオフェン(thiophen)で硫化させた金属硫化物を含むことができる。
また、前記金属硫化物からなるナノ触媒粒子は、前記遷移金属と硫黄が混合された固体粒子状の混合物からなるナノ粒子を含むことができる。
さらに、前記金属化合物でなるナノ触媒粒子は、前記遷移金属と硫黄をイオン状で含有している溶液からなる液滴状のナノ粒子を含むことができる。
前記有機化合物からなるナノ触媒粒子は、ナノ液滴状の触媒前駆体からなる液滴状のナノ粒子を含むことができる。
【0015】
また、前記ナノ触媒粒子は、単一種のナノ触媒粒子からなるものであってもよく、また複数種のナノ触媒粒子が互いに結合された凝集体からなるものであってもよい。
【0016】
前記原料ガスは、製造しようとする前記ナノチューブまたはナノ繊維の材質に従って、炭化水素ガスまたは水素化珪素(silane)ガスなどを含むことができる。
【0017】
前記反応ガスは、不活性ガス、水素ガス、酸素ガス及び/またはこれらの混合ガスなどからなることができ、必要に応じて、硫化水素(HS)またはチオフェン(thiophene)のような助触媒を追加できる。
【0018】
前記不活性ガスは、前記ナノ触媒粒子を運搬する、または前記反応ガスを希釈させるために供給されるヘリウム(He)ガス及び/またはアルゴン(Ar)ガスからなることができる。
【0019】
前記ナノ触媒粒子の加熱は、抵抗コイルで構成された抵抗発熱体により行うことができる。
または、マイクロウエーブの放射によって行うことができる。
または、電磁気誘導によって行うことができる。
または、レーザー加熱により行うことができる。
または、Radio Frequency(RF)加熱によっても行うことができる。
【0020】
前記ナノチューブまたはナノ繊維の材質は炭素または珪素あるいは珪素酸化物を含むことができる。例えば、炭素ナノチューブ、炭素ナノ繊維、珪素(Si)繊維や二酸化珪素(SiO)繊維である。
【0021】
前記ナノフィルター濾材は、従来のマイクロフィルターを支持体として使用し、前記支持体上にボトムアップ方式でナノチューブまたはナノ繊維を合成及び成長させたフィルター濾材から形成することができる。
また、前記ナノフィルター濾材は、集塵とガス吸着の機能を同時に行うフィルター濾材を含むことができる。
【0022】
前記ナノフィルター濾材は、前記ナノチューブまたはナノ繊維上に追加的にナノ金属粒子を固着させることによって、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds,VOC)の除去、空気殺菌、脱臭の機能を有する触媒フィルター、抗菌フィルター及び/または脱臭フィルターを含むことができる。
また、前記ナノフィルター濾材は、機械的強度の高い高強度フィルター濾材、高熱に耐えられる耐熱性フィルター濾材及び/または特定化学薬品に耐えられる耐薬品性フィルター濾材を含むことができる。
【0023】
前記触媒前駆体は、フェロセン(ferrocene)、鉄−ペンタカルボニル(iron−pentacarbonyl)、ジコバルト−オクタカルボニル(dicobalt−octacarbonyl)、またはニッケル−カルボニル(nickel−carbonyl)を含むことができる。
【0024】
また、前記課題を達成するために、本発明はさらに、ナノチューブまたはナノ繊維が合成されて成長する支持体であるマイクロフィルター濾材が設けられる反応器と、前記反応器に、前記ナノチューブまたはナノ繊維の合成及び成長のために供給されるナノ触媒粒子の発生供給部と、前記反応器に、前記ナノチューブまたはナノ繊維の合成及び成長のための原料ガス及び反応ガスを供給するガス供給部と、前記反応器を加熱するための加熱装置とを含むナノフィルター濾材の製造装置を提供する。
【0025】
前記ナノ触媒粒子の発生供給部は、ナノ触媒粒子発生器を含み、必要に応じて、ナノ粒子分級器またはナノ粒子濃度調節器をさらに含めて構成することができる。また、追加的に前記ナノ触媒粒子の前駆体を前記反応器に蒸気状で供給する蒸気状触媒前駆体供給部をさらに含めることができる。
【0026】
前記反応器は、前記マイクロフィルター濾材が設けられたフィルターホルダー及び/または石英チューブを含むことができる。
または、前記反応器は、前記マイクロフィルター濾材を連続的に移送するコンベヤーラインを含むことができる。
【0027】
前記加熱部は、前記反応器の周りに設けられた抵抗コイルで構成された抵抗発熱体に電流を供給する電源部をさらに含むことができる。
前記加熱部は、マイクロウエーブを発生させるマイクロウエーブ発生器および前記反応器に連結されて前記マイクロウエーブをガイドするマイクロウエーブガイドを含むことができる。
前記加熱部は、前記反応器の周りに設けられる高周波コイル(High Frequency Coil)および前記高周波コイルに高周波電流を印加する電源部を含むことができる。
前記加熱部は、前記反応器の周りに設けられるRadio Frequency(RF)発生器を含むことができる。
前記加熱部は、前記反応器の周りに設けられるレーザー発生器および前記レーザー発生器から発生するレーザー光を集束するレンズアセンブリーを含むことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、従来のマイクロフィルター濾材上にナノチューブまたはナノ繊維を合成して成長させることにより、従来のマイクロフィルターに比べて、濾過効率が格段に優れ、特に超微細粒子であるナノ粒子に対する濾過効率に優れた高効率のナノフィルター濾材を製造することができる。
【0029】
また、本発明によれば、圧力損失が少なく、濾過効率の低い従来のマイクロフィルター濾材を支持体として使用し、ナノチューブまたはナノ繊維を前記支持体上に合成し成長させることによって、従来のフィルター濾材に比べて、濾過効率に優れながらも圧力損失の少ない、すなわちフィルター性能指数(filter quality、FQ)の高いフィルター濾材を製造することができる。
【0030】
また、本発明によれば、ナノチューブまたはナノ繊維、例えば炭素材質の炭素ナノチューブ、または炭素ナノ繊維を合成及び成長させたナノフィルター濾材を製造して、粒子状物質を濾過するとともに汚染ガスを吸着して除去することができるケミカルフィルター濾材を製造することができる。
【0031】
また、本発明によれば、合成されたナノチューブまたはナノ繊維上にナノ金属粒子をさらに固着させることにより、揮発性有機化合物(VOC)の除去、空気殺菌、脱臭の機能を有する触媒フィルター、抗菌フィルター、脱臭フィルターの濾材を製造することができる。
【0032】
本発明によれば、ナノ触媒粒子を支持体であるマイクロフィルター濾材上に分散して付着させ、任意の加熱装置から合成反応を引き起こすのに必要な任意形態のエネルギーが供給される条件下で、原料ガス及び反応ガスにより、付着したナノ触媒粒子からナノチューブまたはナノ繊維を合成及び成長させるボトムアップ方式でナノフィルター濾材を製造することができる。
【0033】
また、ナノフィルター濾材上に合成され成長したナノチューブまたはナノ繊維の直径と充填密度(solidity)は、ナノ触媒粒子のサイズ及び付着濃度、かつそのほかの合成工程条件の制御によって調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な形態に変形することができ、本発明の範囲は後述する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当業界で通常の知識を有する者に本発明をより詳細に説明するために提供するものである。従って、図面における要素の形状などは本発明をよりはっきり例示するために誇張されている。なお、各図面において同一の符号は同一の要素を示す。
【0035】
図1は本発明の好適な実施形態による支持体であるマイクロフィルター濾材上にナノチューブまたはナノ繊維を合成し成長させたナノフィルター濾材の製造方法を説明するための工程のフローチャートである。
図2及び図3は本発明の好適な実施形態によるマイクロフィルター濾材の繊維またはメンブラン表面上にナノサイズの触媒粒子を適切な分散度で付着させた後、加熱する方法を説明するための概略図である。
図4及び図5は本発明の好適な実施形態によるマイクロフィルター濾材上におけるナノチューブまたはナノ繊維の合成及び成長を説明するための概略図である。
図6は本発明の好適な実施形態によるナノチューブまたはナノ繊維を合成し成長させたナノフィルター濾材の製造装置の一例の概略図である。
【0036】
図1に示す本発明の実施形態によるナノフィルター濾材の製造方法は、図6に示すナノフィルター濾材製造装置を使用して実施することができる。図6に示すナノフィルター濾材製造装置は、本発明の実施形態において支持体であるマイクロフィルター濾材上に分散して付着されたナノサイズの触媒粒子によりナノチューブまたはナノ繊維を合成して成長させることによりナノフィルター濾材を製造する概念図として提示する。
【0037】
まず、図6とともに図2及び図3を参照すれば、本発明の実施形態によるナノフィルター濾材の製造装置は、遷移金属などからなるナノ触媒粒子120(図2)を、支持体110(図2)、111(図3)であるマイクロフィルター濾材の繊維表面またはメンブラン固体表面上に分散して付着させ、前記ナノ触媒粒子120が付着された支持体110、111であるマイクロフィルター濾材などを導入する反応器100(図6)を具備する。このような反応器100は、石英チューブ、フィルターホルダー、支持体移送用コンベヤーラインなどから構成される。
【0038】
前記の反応器100に導入されたナノ触媒粒子120と支持体110、111を同時に、またはナノ触媒粒子120のみを選択的に加熱する加熱装置200が設置される(図6)。前記加熱装置200は、例えば、マイクロウエーブ発生器210(図6)と、発生したマイクロウエーブを反応器100に導入するマイクロウエーブガイド220(図6)とを含んで構成される。
【0039】
また、前記反応器100の他に、ナノチューブまたはナノ繊維の合成に必要な原料ガス及び反応ガスを供給するガス供給部300(図6)と、ナノ触媒粒子120を反応器100に供給するためのナノ触媒粒子発生供給部400(図6)と、反応器100から排出されるガスを処理するための排出部500(図6)とがさらに備えられる。
【0040】
前記ガス供給部300は、原料ガスである炭化水素ガスまたは水素化珪素ガス、反応ガスである硫化水素ガス、チオフェンのような助触媒ガス、水素ガスのような還元性ガス、酸素のような酸化ガス、不活性ガスである運搬ガスなどを供給するために、ガスボンベと、このガスボンベと反応器100及びナノ触媒粒子発生供給部400との間の配管に設置されてガスの流量を調節する質量流量調節器(Mass Flow Controller, MFC)310(図6)と、開閉バルブ320(図6)とを含んで構成される。また、必要によって、このようなボンベ、質量流量調節器310、開閉バルブ320などは、複数のセットで構成され設置することができる。
【0041】
一方、ナノ触媒粒子120は、図2及び図3に示すように、支持体110、111に遷移金属、遷移金属前駆体、または遷移金属と硫黄のような助触媒成分が混合された形態で供給することができる。このために、ナノ触媒粒子発生供給部400は反応器100に連結して設置される。
前記ナノ触媒粒子発生供給部400は、固体状または液体状の触媒または触媒前駆体をエアロゾル状で供給できるすべての方法により構成することができる。
【0042】
また、ナノ触媒粒子発生供給部400は、ナノ触媒粒子発生器410(図6)と、必要に応じて、ナノ粒子分級器420(図6)またはナノ粒子濃度調節器430(図6)をさらに含んで構成することができる。
【0043】
このようなナノフィルター濾材製造装置を使用してナノフィルター濾材を製造する方法を、図1に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、ナノ触媒粒子120を発生させる(ステップ1000)。
ナノ触媒粒子発生方法は、従来知られているすべてのナノ粒子合成方法、または前記ナノ粒子合成方法の変形、または前記合成方法を組合せた方法などである。例えば、蒸発凝縮法(Inert Gas Condensation、IGC)、気相化学反応法(Chemical Vapor Condensation、CVC)またはエアロゾル噴霧法(aerosol spraying)などを挙げることができる。
【0044】
発生したナノ触媒粒子120は固体状または液体状であることができる。
また、発生したナノ触媒粒子120の物質は、純粋な遷移金属、遷移金属化合物、遷移金属前駆体、または遷移金属に硫黄が含有された化合物を含むことができる。
【0045】
図6に示した前記ナノ触媒粒子発生器410から発生したナノ触媒粒子120はそのまま反応器100に供給することができる。
また、図6のナノ触媒粒子発生器410から発生したナノ触媒粒子120は、必要に応じて、ナノ粒子分級器420によって所定の直径を有するナノ触媒粒子120に分級されて反応器100に供給することができる。
また、図6のナノ触媒粒子発生器410で発生したナノ触媒粒子120は、必要に応じて、ナノ粒子濃度調節器430によって、原料ガスまたは反応ガスあるいは前記ガスの混合ガスをさらに混合及び排出することによって、ナノ触媒粒子120の濃度を制御した状態で反応器100に供給することができる。
【0046】
このように、図6のナノ触媒粒子発生供給部400から発生したナノ触媒粒子120を図6における反応器100内に供給し、反応器100の内部に予め設けられている支持体110、111であるマイクロフィルター濾材上に付着させる(ステップ1100)。
または、支持体110、111であるマイクロフィルター濾材上にナノ触媒粒子120を予め付着させた状態で反応器100に導入することもできる。
【0047】
また、ナノ触媒粒子発生器410から発生したナノ触媒粒子120は、ナノ粒子分級器420によって所定の直径を有するナノ触媒粒子120に分級されて、反応器100内の支持体110、111であるマイクロフィルター濾材上に分散させて付着させることもできる。
【0048】
また、ナノ触媒粒子発生器410から発生したナノ触媒粒子120、またはナノ粒子分級器420によって分級されたナノ触媒粒子120は、ナノ粒子濃度調節器430から流入する原料ガスまたは反応ガス或は前記ガスの混合ガスによって、ナノ触媒粒子120の数濃度が制御された状態で反応器100内に供給され、支持体110、111であるマイクロフィルター濾材上に分散させた状態で付着させることもできる。
【0049】
このように、ナノ触媒粒子120が一定の分散度で付着された、支持体110、111であるマイクロフィルター濾材が反応器100内に用意された後、前記反応器100内に原料ガスまたは反応ガスが供給される(ステップ1200)。
【0050】
前記原料ガスは、支持体110、111上に合成して成長させようとするナノチューブまたはナノ繊維130の材質によって決定されるが、例えば、炭素ナノチューブまたは炭素ナノ繊維を成長させるためには、アセチレンガス、メタンガス、プロパンガスまたはベンゼンなどのような炭化水素ガスを原料ガスとして選定することができる。
【0051】
前記反応ガスは、助触媒ガス、還元ガス、酸化ガス、運搬ガス及び/または前記ガスの混合ガスからなることができる。
【0052】
前記助触媒ガスは、ナノチューブまたはナノ繊維130(図4)のナノ触媒粒子120上での合成及び成長を促進させるために加えられる補助触媒であって、例えば、硫化水素(HS)ガスとチオフェン蒸気を使用することができる。前記硫化水素ガスと前記チオフェン蒸気は、一定の熱エネルギーが反応器100に供給される条件下で遷移金属のナノ触媒粒子120と反応し、ナノ触媒粒子120を遷移金属硫化物のナノ触媒粒子に転換させてナノ触媒粒子120の融点を低下させることができる。
その結果、融点の低い遷移金属硫化物のナノ触媒粒子を用いることで、ナノチューブまたはナノ繊維130の合成及び成長の要となる温度を低めることができ、支持体110、111の劣化による変形及び破損を抑制することができる。
【0053】
前記還元ガスは、一定の熱エネルギーが反応器100に供給される条件下で、既に酸化された可能性のある遷移金属のナノ触媒粒子120を還元させるガスであって、例えば水素ガスを使用することができる。
【0054】
前記酸化ガスは、必要に応じて、反応器100内における合成中または合成後の生成物または副産物の酸化に利用することができる。
【0055】
前記運搬ガスは、必要に応じて、反応器100内に供給する前記ガス等とともに供給されて、前記ガスの濃度を調節するかまたは反応器100内のガス流速を調整するためのガスであって、例えばヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガスのような不活性ガス、または窒素ガスを利用することができる。
【0056】
その次の工程で、反応器100内の支持体110、111またはナノ触媒粒子120または原料ガス及び反応ガスに熱エネルギーを供給して、図3及び図4に示すように、支持体110、111に付着しているナノ触媒粒子120上にナノチューブまたはナノ繊維130を合成して成長させる(ステップ1300)。
反応器100内の支持体110、111、ナノ触媒粒子120、または原料ガス及び反応ガスは、同時に加熱されることもでき、必要によっては、それぞれ選択的に加熱されることもできる。
【0057】
反応器100に熱エネルギーを供給するために使用される加熱装置200は、反応器100内の支持体110、111の材質に応じて、前記支持体110、111を熱から保護するか否かによって適宜選択することができる。
反応器100に熱エネルギーを供給するための加熱装置200としては、例えば、抵抗コイル加熱器、マイクロウエーブ放射加熱器、電磁気誘導加熱器、レーザー加熱器、Radio Frequency(RF)加熱器を利用することができる。
前記加熱装置200は、前記ナノ触媒粒子120、前記支持体110、111、または前記原料ガス、及び反応ガスを必要に応じてそれぞれ選択的に加熱するか、または前記反応器100全体を加熱することができる。
【0058】
最後に、ナノ触媒粒子120のサイズ及び数濃度などのナノフィルター濾材の製造工程の条件を調節して、支持体110、111であるマイクロフィルター濾材上にナノチューブまたはナノ繊維130を所定の気孔特性を維持した状態で合成して成長させたナノフィルター濾材を製造する(ステップ1400)。
【0059】
ナノフィルター濾材上に合成されているナノチューブまたはナノ繊維130の直径は、ナノ触媒粒子120のサイズ調節によって制御することができる。
ナノフィルター濾材上のナノチューブまたはナノ繊維130の分布度、すなわち密度は、ナノ触媒粒子120の分布濃度、原料ガスの濃度、合成時間、合成温度などのような合成条件の調整によってその制御が可能である。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこの例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然本発明の技術的範囲に属するものと了解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】ナノフィルター濾材の製造方法を説明する工程の概略フローチャートである。
【図2】繊維または不織布のマイクロフィルター濾材上に付着されているナノ触媒粒子を加熱する方法を説明するための概略図である。
【図3】マイクロメンブランフィルター濾材上に付着されているナノ触媒粒子を加熱する方法を説明するための概略図である。
【図4】繊維または不織布のマイクロフィルター濾材上におけるナノチューブまたはナノ繊維の合成及び成長を説明するための概略図である。
【図5】マイクロメンブランフィルター濾材上におけるナノチューブまたはナノ繊維の合成及び成長を説明するための概略図である。
【図6】ナノフィルターまたはナノ繊維の合成及び成長によるナノフィルター濾材の製造装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0062】
100…反応器、110、111…支持体、120…ナノ触媒粒子、130…ナノチューブまたはナノ繊維、200…加熱装置、210…マイクロウエーブ発生器、220…マイクロウエーブガイド、300…ガス供給部、310…質量流量調節器、320…開閉バルブ、400…ナノ触媒粒子発生供、410…ナノ触媒粒子発生器、420…ナノ粒子分級器、430…ナノ粒子濃度調節器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内に設けられたマイクロフィルター濾材を支持体として使用し、ナノ触媒粒子を前記反応器内に供給して前記支持体上に付着させる工程と、
前記ナノ触媒粒子上に原料ガス及び反応ガスを供給する工程と、
前記反応器を加熱装置によって加熱する工程と、
前記反応器内の前記ナノ触媒粒子上でナノチューブまたはナノ繊維を合成して成長させる工程と、
前記マイクロフィルター濾材上に前記ナノチューブまたはナノ繊維が合成され成長したナノフィルター濾材及びナノフィルター濾材を製造する工程とを含むナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項2】
前記マイクロフィルター濾材が、繊維フィルター、不織布フィルター及び/またはメンブランフィルターからなることを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項3】
前記マイクロフィルター濾材の材質が、ポリマー、珪素酸化物、アルミナ、セラミックス及び/または金属酸化物からなることを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項4】
前記ナノ触媒粒子が、抵抗加熱法、プラズマ加熱法、誘導加熱法及び/またはレーザー加熱法を利用する蒸発凝縮法(IGC)、抵抗コイル反応器、火炎反応器、レーザー反応器及び/またはプラズマ反応器を利用する気相化学反応法(CVC)、または直接沈澱法、共浸法、冷凍乾燥法及び/または噴霧熱分解法を利用する液状法により製造されて供給されることを特徴とする請求項1に記載ナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項5】
前記ナノ触媒粒子が、遷移金属、遷移金属の金属硫化物、遷移金属の金属炭化物、遷移金属の金属酸化物、遷移金属の金属塩及び/または前記遷移金属を含む有機化合物からなることを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項6】
前記ナノ触媒粒子が固体状または液体状であることを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項7】
前記ナノ触媒粒子が、前記反応器内に設けられた支持体である前記マイクロフィルター濾材に供給されて分散して付着することを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項8】
前記ナノ触媒粒子が、支持体である前記マイクロフィルター濾材上に、ペインティング法、浸漬法、噴射法及び/または蒸着法によって担持された後、前記反応器内に供給されることを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項9】
前記ナノ触媒粒子が、ナノ粒子分級器によって所定の直径を有するナノ触媒粒子に分級されて前記反応器内に供給されることを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項10】
前記ナノ触媒粒子が、ナノ粒子濃度調節器によって、特定の数濃度に調節されて前記反応器内に供給されることを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項11】
前記ナノ触媒粒子が、単一種のナノ触媒粒子からなることを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項12】
前記ナノ触媒粒子が、複数種のナノ触媒粒子が互いに結合された凝集体からなることを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項13】
前記原料ガスが、炭化水素ガスを含む炭素原料ガスからなることを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項14】
前記原料ガスが、水素化珪素(シラン)ガスを含む珪素原料ガスからなることを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項15】
前記反応ガスが、助触媒ガス、還元ガス、酸化ガス、不活性ガス及び/または前記ガスの混合ガスからなることを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項16】
前記反応器が、前記マイクロフィルター濾材が設けられたフィルターホルダーを含むことを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項17】
前記反応器が、前記マイクロフィルター濾材が設けられた石英チューブを含むことを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項18】
前記反応器が、前記マイクロフィルター濾材を連続的に移送するコンベヤーラインを含むことを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項19】
前記加熱装置が、抵抗コイル加熱器、マイクロウエーブ放射加熱器、電磁気誘導加熱器、レーザー加熱器及び/またはRadio Frequency(RF)加熱器からなることを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項20】
前記加熱装置が、前記ナノ触媒粒子、前記支持体、前記原料ガス及び/または前記反応ガスを必要によりそれぞれ選択的に加熱するか、あるいは前記反応器全体を加熱することを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項21】
前記ナノチューブが、炭素ナノチューブを含むことを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項22】
前記ナノ繊維が、炭素ナノ繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項23】
前記ナノ繊維が、珪素(Si)繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項24】
前記ナノ繊維が、二酸化珪素(SiO)繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項25】
前記ナノフィルター濾材が、前記マイクロフィルター濾材上に炭素ナノチューブがボトムアップ方式で合成されて成長したフィルター濾材からなることを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項26】
前記ナノフィルター濾材が、集塵およびガス吸着の機能を同時に行うフィルター濾材を含むことを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項27】
前記ナノフィルター濾材が、前記ナノチューブまたはナノ繊維上にさらにナノ金属粒子を固着させることにより、揮発性有機化合物(VOC)除去、空気殺菌、脱臭の機能を有する触媒フィルター濾材、抗菌フィルター濾材及び/または脱臭フィルター濾材を含むことを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項28】
前記ナノフィルター濾材が、機械的強度の高い高強度フィルター濾材を含むことを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項29】
前記ナノフィルター濾材が、高熱に耐えられる耐熱性フィルター濾材を含むことを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項30】
前記ナノフィルター濾材が、特定の化学薬品に耐えられる耐薬品性フィルター濾材を含むことを特徴とする請求項1に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項31】
前記遷移金属からなるナノ触媒粒子は、前記遷移金属の前駆体が支持体である前記マイクロフィルター濾材に担持された後、還元、塑性、硫化または炭化反応によって前記遷移金属相に転換された遷移金属を含むことを特徴とする請求項5に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項32】
前記金属硫化物からなるナノ触媒粒子が、前記遷移金属の前記ナノ触媒粒子を硫化水素(HS)またはチオフェンで硫化させた金属硫化物を含むことを特徴とする請求項5に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項33】
前記金属硫化物からなるナノ触媒粒子が、前記遷移金属と硫黄が混合した固体粒子状の混合物からなるナノ粒子を含むことを特徴とする請求項5に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項34】
前記金属硫化物からなるナノ触媒粒子が、前記遷移金属と硫黄がイオン状で含有されている溶液からなる液滴状のナノ粒子を含むことを特徴とする請求項5に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項35】
前記有機化合物からなるナノ触媒粒子が、ナノ液滴状の触媒前駆体からなる液滴状ナノ粒子を含むことを特徴とする請求項5に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項36】
前記助触媒ガスが、硫化水素(HS)ガスまたはチオフェン蒸気を含むことを特徴とする請求項15に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項37】
前記不活性ガスは、前記ナノ触媒粒子を運搬するかまたは前記反応ガスを希薄させるために供給されるヘリウム(He)ガス及び/またはアルゴン(Ar)ガスを含むことを特徴とする請求項15に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項38】
前記触媒前駆体が、フェロセン、鉄−ペンタカルボニル、ジコバルト−オクタカルボニル及び/またはニッケル−カルボニルを含むことを特徴とする請求項35に記載のナノフィルター濾材の製造方法。
【請求項39】
ナノチューブまたはナノ繊維が合成されて成長する支持体であるマイクロフィルター濾材が設けられる反応器と、
前記反応器に前記ナノチューブまたはナノ繊維の合成及び成長のために供給されるナノ触媒粒子の発生供給部と、
前記反応器に前記ナノチューブまたはナノ繊維の合成及び成長のために供給される原料ガス及び反応ガスの供給部と、
前記反応器を加熱するための加熱装置と、
を含むことを特徴とするナノフィルター濾材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−136878(P2006−136878A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317988(P2005−317988)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(502291252)韓国エネルギー技術研究院 (16)
【Fターム(参考)】