説明

ナビゲーション装置、方法及びプログラム

【課題】ナビゲーションのルート探索において、凍結道路を効果的に回避しながら、データ量を抑制する。
【解決手段】季節判定手段52で冬季と判定された場合は、道路制限手段53が、ルート探索手段51によるルート探索に用いる道路として、前記第二の道路地図記憶手段に記憶されている凍結道路情報に該当する道路を除外し、かつ、前記第一の道路地図記憶手段に記憶されている道路のなかで主要道路だけを選択する。凍結道路情報により凍結しやすい道路を除外することと、冬季間は、主要道路以外の除雪作業が行われないような裏道などの細い道もすべて凍結道路として除外することにより、ルート探索において凍結道路を効果的に回避しながら、北国などでもデータ量を抑制することが可能となり、しかも、道幅一律優先と比べ経路の近さなど経路の合理性も維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理や通信における技術の普及発達に伴い、自動車等の車載用ナビゲーション装置が広く活用されている。従来の車載用ナビゲーション装置の概略構成を図3のブロック図に示す。車載用ナビゲーション装置は、GPS受信部1や、各種センサを用いる車速推定部2や方位推定部3からの情報をもとに、CPU50で現在の自車位置を推定し液晶ディスプレイなどの表示部7に自車位置を表示し、また、目的地を設定すればそこまでのルートを探索して案内する。
【0003】
このルート探索で用いる地図データは、図3に例示するように、各種の道路情報を含むもので、このうち道路形状情報は、道路の曲がり具合といった上空から見た道路の形状を示す。道路接続情報は、どの道とどの道がどこでつながっているかを示す。道路種別情報は、それぞれの道路がどのような種別(高速道路や国道や県道)であるかを示す。通行規制情報は、その道路が通行禁止か一方通行かといった規制を示す。道路幅情報は、道路の幅を表す。
【0004】
また、このような地図データに基くルート探索のフローチャートを図4に例示する。すなわち、このようなルート探索は、スタート地点と目的地点をユーザーが指定し探索開始指示を行うことで実行される。そして、まず最初に、スタート地点がどの道路に該当するかを抽出し、その道路を選択道路として記憶する(ステップS11)。次に、その選択道路と接続していて目的地方面に向かう道路を抽出し、注目道路として記憶する(ステップS12)。その後、注目道路は通行禁止あるいは一方通行の逆走にあたらないか検査する(ステップS13)。ここで、通行禁止など走行できない道路の場合は、注目道路の抽出をやり直すが(ステップS12)、このとき、今までに注目道路として選択したことのある道路は除外する。
【0005】
通行禁止道路に当たらない場合は(ステップS13)、選択道路を確定道路としてワークエリアなど所定の記憶領域に追加記憶して(ステップS14)、注目道路を選択道路に設定し目的地方面の道路を抽出する(ステップS12)という処理までの、以上の作業を繰り返す。この結果、目的地点に到達したら(ステップS15)探索終了となる。
【0006】
つまり、ルート探索では、地図データに含まれる道路規制情報を使用して、道路としては存在してもルート案内には使用できない通行禁止の道路を除外してルート探索を行う。なお、現在のカーナビゲーションでは地図データの道路規制情報以外の情報を用いて最短のルート優先や道幅の大きな道路優先などの選択基準もあるが、本発明には関係しないので省略する。
【特許文献1】特開2004−239739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、従来から、ルート探索には地図データに含まれるさまざまな道路情報が使われるが、このデータには通行禁止や一方通行といった道路自体の情報しか含まれていない。一方、道路状況は季節により変化し、冬季に雪が降ると道路は凍結しとても滑りやすい状態になる。特に、雪道に不慣れな運転者の場合なるべく凍結した道路は通りたくないと思うが、目的地に初めて行くようなときなどは道路の状態をあらかじめ知って自分で選択することができない。
【0008】
このような問題に対応して、外気温がある程度以上低いと最も道幅が広い経路を再検索する提案はあるが(特許文献1参照)、このような一律の道幅最優先では最短ルートでなくなるなど、探索されるルートの合理性が過度に犠牲になる可能性があり、一方、どの道路が凍結しやすいかの具体的なデータを用意する場合は、そのデータ量が北国などでは膨大となり、記憶容量や処理速度を圧迫する可能性があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するもので、その目的は、ナビゲーションのルート探索において、凍結道路を効果的に回避しながら、データ量を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的をふまえ、本発明の一態様は、目的地へのルート探索が可能なナビゲーション装置において、主要道路と細街路を含む道路地図データを記憶する第一の道路地図記憶手段と、目的地へのルート探索を行うルート探索手段と、どの道路が凍結するかを表す凍結道路情報を記憶する第二の道路地図記憶手段と、季節を判定し凍結を予想する季節判定手段と、前記季節判定手段で冬季と判定された場合に、前記ルート探索手段によるルート探索に用いる道路として、前記第二の道路地図記憶手段に記憶されている凍結道路情報に該当する道路を除外し、かつ、前記第一の道路地図記憶手段に記憶されている道路のなかで前記主要道路だけを選択する、道路制限手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
このように、凍結道路情報により凍結しやすい道路を除外することに加え、冬季間は、主要道路以外の除雪作業が行われないような裏道などの細い道をすべて凍結道路として除外することにより、凍結道路情報は主要道路のみでも足り、ルート探索において凍結道路を効果的に回避しながら北国などでもデータ量を抑制することが可能となる。
【0012】
本発明の他の態様では、さらに、前記第一の道路地図記憶手段と、前記第二の道路地図記憶手段を、一体に構成し、前記凍結道路情報は、前記道路地図データにおける道路区間ごとの属性として記憶することを特徴とする。
このように、凍結道路情報を前記道路地図データと一体化することにより、構成の単純化、データ量の抑制、処理手順の単純化が可能となる。
【0013】
本発明の他の態様では、さらに、外部と通信するための通信手段と、前記通信手段を介して外部の所定のサーバーシステムから新たな凍結道路情報をダウンロードすることにより、前記第二の道路地図記憶手段に記憶されている前記凍結道路情報を更新する凍結情報更新手段と、を有することを特徴とする。
このように、凍結道路情報を、外部から通信でダウンロードし最新内容に更新することにより、年や季節ごとに変遷したり判明する凍結道路を過不足なく回避可能となる。
【0014】
本発明の他の態様では、さらに、前記季節判定手段は、センサで計測する外気温と現在日時との組合せにより前記判定を行うことを特徴とする。
このように、日付上の冬季だけでなく、深夜早朝は凍結の可能性を高く扱ったり、外気温の高低を加味するなどの組合せにより、実情に即した柔軟な判定が可能となる。
【0015】
なお、以上各項については、方法及びプログラムについても同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の実施形態について、図に沿って説明する。本実施形態は、背景技術で説明した技術事項を前提として、以下の特徴を持つ。
【0017】
〔1.構成〕
本実施形態は、目的地へのルート探索が可能な車載用のナビゲーション装置(「本装置」と呼ぶ)であって、図1の構成図に示すように、GPS受信部1と、車速推定部2と、方位推定部3と、地図データ記憶手段4と、CPU5と、ユーザインターフェイス6と、表示部7と、を有する。
【0018】
このうち、地図データ記憶手段4は、主要道路と細街路を含む道路地図データを記憶する第一の道路地図記憶手段と、どの道路が凍結するかを表す凍結道路情報を記憶する第二の道路地図記憶手段と、を一体に構成したものである。このように、凍結道路情報を前記道路地図データと一体化することにより、構成の単純化、データ量の抑制、処理手順の単純化が可能となる。
【0019】
すなわち、地図データ記憶手段4に記憶されている地図データは、図3に示した道路情報(道路地図データ)に加え、新たに凍結道路情報を追加したものである(図1)。この凍結道路情報は、冬季に凍結しやすい道路の情報であり、例えば、地図データにおける道路区間ごとの属性として記憶する。凍結しやすい道路は毎年決まっているのであらかじめ調査してデータベース化することは可能である。
【0020】
また、CPU5は、予め格納した制御プログラムに従いメモリなどの記憶手段を用いながら、図1に示す下記のような各手段51〜53を実現する。
【0021】
〔2.作用効果〕
〔2−1.概略〕
上記のように構成された本装置では、ルート探索手段51が目的地へのルート探索(ルート探索処理)を行うが、それに先立って季節判定手段52が季節を判定し凍結を予想すると、ルート探索で凍結道路を除外する除外設定を行う(季節判定処理)。この除外設定は、ユーザーが手作業で設定することも可能である。
【0022】
季節判定手段52による季節判定処理は、どのように構成してもよいが、要は、季節の判定もしくは凍結可能性の予想により凍結道路の除外を行うか否かを判定することである。このような季節の判定や凍結を予想する基準も自由であるが、一例として、センサで計測する外気温と現在日時との組合せにより、日付上の冬季だけでなく、深夜早朝は凍結の可能性を高く扱ったり、外気温の高低を加味するなどの組合せにより、前記判定を行うことが考えられる。これにより、実情に即した柔軟な判定が可能となる。
【0023】
そして、季節判定手段52による判定にしたがって、道路制限手段53が、ルート探索手段51によるルート探索に用いる道路として、前記第二の道路地図記憶手段に記憶されている凍結道路情報に該当する道路を除外し、かつ、前記第一の道路地図記憶手段に記憶されている道路のなかで主要道路だけを選択する(道路制限処理)。
【0024】
このように、凍結道路情報により凍結しやすい道路を除外することと、冬季等は、主要道路以外のすなわち除雪作業が行われないような裏道などの細い道もすべて凍結道路として除外することにより、ルート探索において凍結道路を効果的に回避しながら、北国などでもデータ量を抑制することが可能となり、しかも、道幅一律優先と比べ経路の近さなど経路の合理性も維持される。
【0025】
〔2−2.フローチャートの例〕
上記のように処理の動作手順を図2のフローチャートに例示する。すなわち、ルート探索を開始すると、まず、スタート地点の道路(実際には道路区間ごとの道路リンク。以下同じ)を地図データから抽出し、その道路を現在の選択道路(仮に選択した道路)として設定する(ステップS1)。
【0026】
そして、その選択道路と接続している各道路から、目的地点に向かって走行する道路を注目道路(仮選択の候補)として順次選択(設定)していく(ステップS2)。この注目道路が通行禁止や一方通行の逆送の場合と(ステップS3)、ユーザー等による凍結道路の除外設定があって(ステップS4)注目道路が凍結道路情報に該当するか又は主要道路以外の細街路の場合(ステップS5)、別の注目道路を選択し直す(ステップS2)。
【0027】
このように、凍結道路情報で凍結道路に該当する道路を外しながら、他の道路を検索することにより、なるべく凍結していない道路を選択して目的地点に行けるようなルートが作成される。
【0028】
一方、注目道路が通行禁止や一方通行の逆送でない場合であって(ステップS3)、凍結道路除外設定が無いか(ステップS4)、注目道路が凍結道路情報に含まれない場合は(ステップS5)、選択道路を確定道路として追加記憶し、注目道路を選択道路として設定する(ステップS8)ことで、確定した経路を延ばしてゆく。
【0029】
また、注目道路が凍結道路情報に該当するが(ステップS5)、選択道路に接続している全ての道路についてこれら一連のチェックが完了していて他に注目道路の候補が無い場合は(ステップS6)、選択道路に接続している一番大きな(幅広な)道路を注目道路に設定のうえ(ステップS7)、選択道路を確定道路として追加記憶し、注目道路を選択道路として設定する(ステップS8)。
【0030】
すなわち、場所によっては、その道路区間と接続しているすべての道路が凍結道路となる可能性が大きくなるが、そのような場合でも上記のように、接続されている道路で一番大きな道路を選択すれば、大きな道路は除雪作業が通常行われるため、最大限走りやすい経路となることが期待できる。
【0031】
〔3.その他の作用効果〕
また、例えば、地図データに追加した凍結道路情報は北国ではとても大きなデータとなる可能性があるが、凍結道路情報データの容量を抑えるために、凍結道路情報はある程度大きな道である主要道路のみにすることも可能である。すなわち、裏道などの細い道(細街路)は除雪作業が行われないため、ルート探索時に細い道はすべて凍結道路とみなして除外処理することによりデータ量を減らしても、以上と同様に凍結道路回避の効果を得ることができる。なお、主要道路と細街路の判別基準は自由で、予めそのような属性を設定してもよいし、道路データの道路幅情報が所定値以上かで判断してもよい。
【0032】
また、上記の例では、凍結道路情報は地図データの情報の一部として説明したが、現在のカーナビゲーションは通信機能を有しているものもあるので、インターネットからリアルタイムで凍結道路情報を取得し第二の道路地図記憶手段を更新することもできる。
【0033】
この場合は、外部と通信するための携帯電話等の通信手段と、この通信手段を介して外部の所定のサーバーシステムから新たな凍結道路情報をダウンロードすることにより、第二の道路地図記憶手段に記憶されている前記凍結道路情報を更新する凍結情報更新手段と、を本装置に設ける。このように、凍結道路情報を、外部から通信でダウンロードし最新内容に更新することにより、年や季節ごとに変遷したり判明する凍結道路を過不足なく回避可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態におけるナビゲーション装置の構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態におけるルート探索とこれに関連する処理の手順を示すフローチャート。
【図3】従来のナビゲーション装置の構成を示す図。
【図4】従来のナビゲーション装置におけるルート探索の動作手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0035】
1…GPS受信部
2…車速推定部
3…通信手段
3…方位推定部
4…地図データ記憶手段
5…CPU
6…ユーザインターフェイス
7…表示部
51…ルート探索手段
52…季節判定手段
53…道路制限手段
S1〜…手順の各ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地へのルート探索が可能なナビゲーション装置において、
主要道路と細街路を含む道路地図データを記憶する第一の道路地図記憶手段と、
目的地へのルート探索を行うルート探索手段と、
どの道路が凍結するかを表す凍結道路情報を記憶する第二の道路地図記憶手段と、
季節を判定し凍結を予想する季節判定手段と、
前記季節判定手段で冬季と判定された場合に、前記ルート探索手段によるルート探索に用いる道路として、前記第二の道路地図記憶手段に記憶されている凍結道路情報に該当する道路を除外し、かつ、前記第一の道路地図記憶手段に記憶されている道路のなかで前記主要道路だけを選択する、道路制限手段と、
を有することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記第一の道路地図記憶手段と、前記第二の道路地図記憶手段を、一体に構成し、
前記凍結道路情報は、前記道路地図データにおける道路区間ごとの属性として記憶する
ことを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
外部と通信するための通信手段と、
前記通信手段を介して外部の所定のサーバーシステムから新たな凍結道路情報をダウンロードすることにより、前記第二の道路地図記憶手段に記憶されている前記凍結道路情報を更新する凍結情報更新手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記季節判定手段は、センサで計測する外気温と現在日時との組合せにより前記判定を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
主要道路と細街路を含む道路地図データを記憶する第一の道路地図記憶手段と、どの道路が凍結するかを表す凍結道路情報を記憶する第二の道路地図記憶手段と、を有し、目的地へのルート探索が可能なナビゲーション装置を用いたナビゲーション方法であって、
目的地へのルート探索を行うルート探索処理と、
季節を判定し凍結を予想する季節判定処理と、
前記季節判定処理で冬季と判定された場合に、前記ルート探索処理によるルート探索に用いる道路として、前記第二の道路地図記憶手段に記憶されている凍結道路情報に該当する道路を除外し、かつ、前記第一の道路地図記憶手段に記憶されている道路のなかで前記主要道路だけを選択する、道路制限処理と、
を含むことを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項6】
前記第一の道路地図記憶手段と、前記第二の道路地図記憶手段を、一体に構成して利用し、
前記凍結道路情報は、前記道路地図データにおける道路区間ごとの属性として記憶する
ことを特徴とする請求項5記載のナビゲーション方法。
【請求項7】
外部と通信するための所定の通信手段を介して、外部の所定のサーバーシステムから新たな凍結道路情報をダウンロードすることにより、前記第二の道路地図記憶手段に記憶されている前記凍結道路情報を更新する凍結情報更新処理を有することを特徴とする請求項5又は6記載のナビゲーション方法。
【請求項8】
前記季節判定処理は、センサで計測する外気温と現在日時との組合せにより前記判定を行うことを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載のナビゲーション方法。
【請求項9】
主要道路と細街路を含む道路地図データを記憶する第一の道路地図記憶手段と、どの道路が凍結するかを表す凍結道路情報を記憶する第二の道路地図記憶手段と、コンピュータの演算制御部と、を有し、目的地へのルート探索が可能なナビゲーション装置を制御するナビゲーションプログラムであって、
そのプログラムは前記演算制御部を制御することにより、
目的地へのルート探索を行わせ、
季節の判定もしくは凍結可能性の予想により凍結道路の除外を行うか否かを判定させ、
前記凍結道路の除外を行うと判定された場合に、前記ルート探索に用いる道路として、前記第二の道路地図記憶手段に記憶されている凍結道路情報に該当する道路を除外させ、かつ、前記第一の道路地図記憶手段に記憶されている道路のなかで前記主要道路だけを選択させる
ことを特徴とするナビゲーションプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−263604(P2007−263604A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85802(P2006−85802)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】