説明

ナビゲーション装置

【課題】過去の走行経路の情報を利用して目的地を推定し、推定した目的地までの過去の走行経路の情報を参照して、逆走した経路区間(道路リンク)がある場合に、逆走した経路区間を含む逆走警告情報を予め報知する。
【解決手段】目的地推定手段16は、車両走行開始時の出発地をもとに過去に記憶した走行経路の出発地点を比較して目的地を推定する。制御手段10は、走行経路記憶手段14に走行経路を記憶する際、リンクの属性情報に示された進行方向とは逆方向に車両が走行したか否かを判別し、逆方向に走行したことを検出した場合には、逆走情報を該当するリンクに付加して記憶し、走行経路判別手段15は、車両の走行開始時に、目的地推定手段16が抽出した走行経路を参照し、進行方向とは逆方向に走行した道路のリンクを抽出し、逆走した道路のリンクを示す情報とともに、過去に該リンクを逆走したことがある旨を示す逆走警告情報を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路案内によらず走行した走行軌跡を記憶しておき、記憶した走行経路の情報を利用することができるナビゲーション装置に関するものであり、特に、車両が経路案内を受けずに走行を開始する際に、過去の走行経路から目的地を推定し、記憶した走行経路の情報から該当する目的地まで走行した走行経路を抽出し、種々の有意な情報、例えば、過去の走行において進行方向が定められた道路(道路リンク)を逆走したことがある場合に、該当する道路(道路リンク)を抽出して利用者に警告情報を報知するようにしたナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等で道路を走行する場合に、出発地から目的地に至る最適経路を探索し、目的地に到着するまで車両の現在位置を求め、表示画面上に道路地図とともに現在位置を表示し、交差点の手前などでは音声または表示により進行方向(右左折や直進)を案内し、ユーザーが道に迷うことなく目的地に到達できるように誘導する車載用のナビゲーション装置が知られている。
【0003】
そのようなナビゲーション装置においては、現在位置を測定するために、GPS(Global Positioning System)システムが利用されている。これは、地球上空を周回している複数の人工衛星からの電波を受信し、受信データを演算処理することによって車両の現在位置を特定するものである。
【0004】
GPSによって特定された現在位置は、ナビゲーション装置の記憶手段等に記憶されている地図データと比較され、例えば現在位置から最も近い道路にマッチング処理を行い、この位置がマッチング処理された現在位置として表示画面に表示される。これにより、GPS測位に僅かな誤差があるような場合でも現在位置を道路上に修正し違和感のない表示を行うことが可能となる。
【0005】
車両にナビゲーション装置が備えられている場合であっても、地理的に熟知したエリア内を走行する場合や日常的に繰り返し訪れる地点を目的地にして走行する場合にはナビゲーション機能(経路探索、経路案内)を利用せず、単に走行するエリアの地図を表示して車両の現在位置を確認するだけで車両を走行する場合も多い。ナビゲーション機能を利用することなく走行した経路の情報を学習(記憶)しておき、学習した経路(走行経路の軌跡)の情報を後に利用するように構成された車載用のナビゲーション装置も提供されている。
【0006】
例えば、下記の特許文献1には、(特開2005−233647号公報)には、電源がONされた地点から次に電源がOFFされるまでに走行した道路を1区間分の走行道路(利用路)とし、その到着地点とともに記憶(学習)しておき、学習した利用路上を走行している時に、その経路上での渋滞や通行止めなどの交通事象の発生情報を受信した場合には、その報知を行うとともに、受信した交通情報から特定する道路(リンク)のコストを交通情報に応じて変更して走行経路の到着地点を仮の目的地として現在位置からの迂回路を探索し、迂回経路に車両を誘導するナビゲーション装置が開示されている。
【0007】
ところで、車両が走行する道路には、一方通行や高速道路など、車両の進行方向が定められている道路と、双方向に走行可能な道路とがあり、進行方向とは逆方向に走行(逆走)することは法令に違反することになり、また、事故発生につながる危険性がある。そこで、このような逆走を警告するようにしたナビゲーション装置も提案されている。例えば、下記の特許文献2(特開2008−26118号公報)には、車両が一方通行路に対して逆方向から進入したことを検出すると、その一方通行路からの最適な退出方法を地図データの道路地図に基づき検索し、その退出方法を表示装置やスピーカを介してドライバに案内するようにした車両用ナビゲーション装置が開示されている。
【0008】
また、下記の特許文献3(特開2007−139531号公報)には、自動車専用道路上の逆走禁止道路情報をもったデータベースを搭載し、逆走禁止道路の順方向とは逆方向から接近あるいは走行した場合、カーナビゲーションの案内として音声と画面表示により運転者へ警告を発することで逆走を防止するようにした車載用カーナビゲーションシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−233647号公報(段落[0026]、段落[0028]、段落[0034]〜段落[0036])
【特許文献2】特開2008−026118号公報(段落[0023]〜段落[0028])
【特許文献3】特開2007−139531号公報(段落[0014]〜段落[0016])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献2に開示された車両用ナビゲーション装置においては、進行方向が定められた道路に対し、車両が進行方向とは逆の方向から進入したことを検出した場合に、速やかに当該道路から退出できる交差点等を探索して案内するものであり、逆走が発生した時に、逆走を早期に解消できる退出方法を案内するものであって、逆走が発生しないように事前に警告することができないという問題点があった。
【0011】
また、上記特許文献3に開示されたナビゲーションシステムによれば、車両が、進行方向が定められた道路に逆方向から接近した時に逆走に関する警告を報知するものであるから、事前に逆走警告を報知し、逆走を防止できるが、このためには、ナビゲーション装置は、常に車両の現在位置を把握して地図データ(道路データ)と照合し、車両の進行方向と道路の方向を検証しなければならないという問題点が生ずる。また、交差点を右折すると右折した道路が一方通行の出口であるような場合、車両が直進するか右折するか不明であるから事前に警告することができないという問題点がある。
【0012】
本願の発明者は、上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、ナビゲーション装置に過去の走行経路データを蓄積することができる点に着目し、車両の走行開始時に過去の走行経路データを調べ、逆走した経路区間があれば、逆走した道路名や道路リンクを抽出し、逆走経路区間を含む逆走警告情報を報知するナビゲーション装置の発明を行い、特願2009−057956号として出願(以下、先願という)した。
【0013】
しかしながら、上記特許先願にかかる発明では、逆走した経路区間があれば、逆走した道路名や道路リンクを全て抽出し、逆走経路区間を含む逆走警告情報を報知することとなり、利用者が向かおうとしている目的地までの経路に関係しない逆走警告情報をも報知してしまう可能性が生じてしまうという問題があった。
【0014】
そこで、本願発明者は、上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、車両の起動時(走行開始時)に、現在位置および/または出発時刻などと、過去の走行経路の情報を照合して目的地を推定し、推定した目的地までの過去の走行経路の情報を参照して、逆走した経路区間があれば、逆走した道路名や道路リンクを抽出し、逆走経路区間を含む逆走警告情報を報知するようになせば上記の問題点を解消できることに想到して本発明を完成するに至ったものである。
【0015】
すなわち、本発明は、上記の問題点を解消することを課題とし、車両の走行開始時に、現在位置(出発地)に基づいて、過去の走行経路の情報を利用して目的地を推定し、推定した目的地までの過去の走行経路の情報を参照して、逆走した経路区間(道路リンク)がある場合に、逆走した経路区間を含む逆走警告情報を予め報知するようにしたナビゲーション装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
道路をノードとリンクで表現した道路データであって、各リンクには進行方向を示す属性情報を有する道路データを含む地図情報を蓄積した地図情報記憶手段と、車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、検出された前記現在位置と前記地図情報に基づき、車両が走行を開始した出発地点から走行を終了した目的地点までに走行した道路のノードおよびリンクを抽出し、抽出した該ノードおよびリンクと前記出発地点と前記目的地点を対応付けて走行経路の情報として走行経路記憶手段に記憶する制御手段と、を備えたナビゲーション装置において、前記ナビゲーション装置は、さらに、車両の走行開始時に、前記現在位置検出手段により検出される現在位置に該当する出発地点を有する走行経路を前記走行経路記憶手段から抽出し、抽出した該走行経路の目的地点を目的地として推定する目的地推定手段と、該目的地推定手段が抽出した走行経路に基づいて逆走の有無を判別する走行経路判別手段と、を備え、前記制御手段は、前記走行経路記憶手段に走行経路を記憶する際、前記リンクの属性情報に示された進行方向とは逆方向に車両が走行したか否かを判別し、逆方向に走行したことを検出した場合には、逆走情報を該当するリンクに付加して記憶し、前記走行経路判別手段は、前記目的地推定手段が抽出した走行経路を参照して進行方向とは逆方向に走行した道路のリンクを抽出し、抽出した該リンクに基づいて、逆走した道路のリンクを示す情報とともに、過去に該リンクを逆走したことがある旨を示す逆走警告情報を報知手段を介して報知することを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、前記目的地点推定手段は、前記現在位置と出発地点との距離が所定の範囲内である走行経路を抽出し、抽出した該走行経路の出発地点に対応する目的地点を目的地として推定することを特徴とする。
【0018】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項2にかかる発明において、前記走行経路には、出発地点の出発時刻が含まれ、前記目的地点推定手段は、車両が走行を開始した際の現在時刻と出発時刻が所定の範囲内である走行経路を抽出し、抽出した該走行経路の出発地点に対応する目的地点を目的地として推定する。
【0019】
更に、本願の請求項4にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、前記制御手段は、走行経路の出発地点と目的地点がそれぞれ所定の距離範囲内にある経路同士を類似の経路として分類し前記走行経路記憶手段に記憶し、前記目的地推定手段は、分類された複数の前記走行経路の出発地点に基づいて目的地を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1にかかる発明においては、制御手段は、前記走行経路記憶手段に走行経路を記憶する際、前記リンクの属性情報に示された進行方向とは逆方向に車両が走行したか否かを判別し、逆方向に走行したことを検出した場合には、逆走情報を該当するリンクに付加して記憶し、前記走行経路判別手段は、前記目的地推定手段が抽出した走行経路を参照して進行方向とは逆方向に走行した道路のリンクを抽出し、抽出した該リンクに基づいて、逆走した道路のリンクを示す情報とともに、過去に該リンクを逆走したことがある旨を示す逆走警告情報を報知手段を介して報知する。
【0021】
かかる構成によれば、車両の走行開始時に、車両の現在位置(出発地)に基づいて過去の走行経路の情報を利用して目的地を推定し、推定した目的地までの過去の走行経路の情報を参照して、逆走した経路区間(道路リンク)があれば、逆走した道路名や道路リンクを抽出し、逆走した道路リンクの位置などとともに過去にその道路リンクを逆走したことがある旨の警告情報を予め報知することが可能となる。
【0022】
請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかる発明において、目的地点推定手段は、前記現在位置と出発地点との距離が所定の範囲内である走行経路を抽出し、抽出した該走行経路の出発地点に対応する目的地点を目的地として推定する。
【0023】
かかる構成によれば、過去に走行した走行経路の出発地点が、車両の走行開始時の現在位置に対して所定の距離範囲にある走行経路の目的地点を目的地として推定することができ、目的地の推定範囲を広げることができる。
【0024】
請求項3にかかる発明においては、請求項2にかかる発明において、走行経路には、出発地点の出発時刻が含まれ、前記目的地点推定手段は、車両が走行を開始した際の現在時刻と出発時刻が所定の範囲内である走行経路を抽出し、抽出した該走行経路の出発地点に対応する目的地点を目的地として推定する。
【0025】
かかる構成によれば、車両の走行開始時の時間帯を考慮して目的地を推定することが可能になる。
【0026】
また、請求項4にかかる発明においては、請求項1にかかる発明において、制御手段は、走行経路の出発地点と目的地点がそれぞれ所定の距離範囲内にある経路同士を類似の経路として分類し前記走行経路記憶手段に記憶し、前記目的地推定手段は、分類された複数の前記走行経路の出発地点に基づいて目的地を推定する。
【0027】
かかる構成によれば、出発地点と目的地点がそれぞれ所定の距離範囲内の走行経路を類似経路として分類して記憶し、目的地推定手段は分類された複数の類似経路の出発地点に基づいて目的地を推定する複数の類似経路に対する目的地の推定手順を簡略化することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例におけるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例における走行軌跡を記憶するまでの動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例における走行軌跡記憶手段に記憶された逆方向の走行軌跡データの一例を示す図である。
【図4】本発明の実施例における目的地点を推定する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのナビゲーション装置を例示するものであって、本発明をこのナビゲーション装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のナビゲーション装置にも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0030】
図1は本発明の実施例1にかかるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置1は、自動車等の車両に搭載されることにより車載用として使用されるナビゲーション装置であってもよく、車両から取外されユーザーが携帯し使用できるタイプのものであってもよい。以下の説明においては、これらを総称してナビゲーション装置1という。
【0031】
ナビゲーション装置1は、制御手段10、現在位置検出手段11、時刻検出手段12、地図情報記憶手段13、走行経路記憶手段14、走行経路判別手段15、目的地推定手段16、表示手段17、音声出力手段18、入力手段19などを備えて構成されている。
【0032】
制御手段10は、図示しないCPU、RAM、ROMからなるプロセッサで構成され、RAM、ROMに記録された制御プログラムに従ってナビゲーション装置1の各部の動作を制御する。
【0033】
現在位置検出手段11は、例えばGPS受信機等で構成され、地球上空を周回している複数のGPS衛星からの時刻情報を含む電波を受信し、それをもとに現在位置情報を算出するものである。
【0034】
さらに、現在位置検出手段11は、操角センサ、加速度センサ、距離センサや方位センサなどからなる自立航法手段を併用するようにしてもよい。この場合、車両の走行距離と走行方位とをそれぞれ検出し、これらの値を基準位置に対して積算することによって現在位置を求める。この現在位置検出方法は、GPS受信と組み合わせることで、GPS電波を受信できないトンネル内や、誤差が生じやすい高層ビル街において効果を発揮する。
【0035】
制御手段10は経路探索機能を有しており、入力手段19の操作により出発地や目的地が指定されると、地図情報記憶手段13に記憶されている道路データを参照し、指定された出発地から目的地に至るまでの最適経路を探索し、案内経路データを作成する。最適経路の探索は、現在位置またはユーザーによって指定された出発地に対応する道路ノードからユーザーによって指定された目的地に対応する道路ノードまでに至るリンクとノードをダイクストラ法などの各種の手法によって探索し、リンク長(リンクコスト)や所要時間などを累積し、総リンク長または総所要時間などが最短となる経路を案内経路とし、当該経路に属する道路ノードやリンクを案内経路データとして提供するものである。制御手段10は、探索した案内経路を表示手段17に現在位置周辺の地図画像と共に表示して目的地までの経路案内を行う。また、経路案内にあたっては、音声出力手段18を介して経路上における進行方向などの音声案内を報知する。
【0036】
なお、音声出力手段18は、各種の警告報知を行う場合の一手段にも利用される。
【0037】
時刻検出手段12は、ナビゲーション装置1の電源がONまたはOFFされた時点の時刻を検出する。なお、時刻の検出は、上記GPS衛星から送信される電波に含まれる時刻情報から検出できるほか、別途時計部を設けることで検出することもできる。
【0038】
地図情報記憶手段13には、各道路の交差点や分岐点などの結節点をノードとし、それぞれのノード間を結ぶ経路をリンクとした道路ノードデータと道路リンクデータを含む道路データが記憶されている。道路ノードデータには、道路ノードの番号、位置座標、接続リンク本数、交差点名称などが含まれる。また、道路リンクデータには起点および終点となる道路ノードの番号、道路種別、リンク長(リンクコスト)、所要時間、車線数、車道幅などが含まれる。道路リンクデータにはさらに、リンク属性として橋、トンネル、踏切、料金所などのデータが付与される。道路種別は、高速道路や有料道路の別および国道や都道府県道などの別を含む情報である。
【0039】
このように、道路データは、道路をノードとリンクで表現したデータであって、リンク属性には、リンクの進行方向を示す属性情報が含まれる。一般にナビゲーション装置における道路データのリンクは双方向(上りと下り)であり、上下線の車線分離がない道路ではリンク進行方向の属性情報は双方向になる。しかしながら、高速道路では走行方向が定められており、上り、下りの何れかの進行方向が属性情報として記憶されている。同様に、一方通行の道路は進行できる方向が規制されているから、上り、下り何れかの進行方向が属性情報として記憶されている。
【0040】
また、高速道路においてはそれぞれの高速道路に設けられたパーキングエリアやサービスエリアなどの特定エリアの位置情報、各特定エリアに該特定エリアへの進入路、該特定エリアからの脱出路の情報が含まれる。また、道路データは、高速道路、国道、県道、市区町村道などの道路種別や道路幅員、車線数などの属性情報も備えられる。
【0041】
地図情報記憶手段13は、さらに海岸線、湖沼、河川形状などの水系データ、行政境界データ、施設の位置、形状、名称を含む施設データからなる背景データを記憶している。
【0042】
また、地図情報記憶手段13には、道路データや背景データの他、地図画像を見やすく表示するためにベクター形式で記憶された地図画像データを含んでいてもよい。
【0043】
制御手段10は、ナビゲーション装置1を使用する際に、ナビゲーション装置1の現在位置を含む所定範囲の地図が地図情報記憶手段13から抽出し、現在位置を示す現在位置マークや案内経路の画像を重ね合わせて表示手段17に表示する。
【0044】
制御手段10は、ナビゲーション機能(経路探索および経路案内)を利用することなく、車両が走行する度に、出発地点から目的地点に至るまでに通過したノードとリンクを地図情報記憶手段13から抽出し、出発地点および目的地点と、時刻検出手段12で検出された出発時刻と共に、走行経路の情報として走行経路記憶手段14に記憶する。このとき、出発地点から目的地点までの所要時間および距離のデータも併せて記憶させておいてもよい。所要時間および距離は実際の走行データから得ることができる。
【0045】
なお、出発地点とは、ナビゲーション装置1の電源がON(一般的には車両のイグニッションがON)された時点で現在位置検出手段11により検出された地点、すなわち車両が走行を開始した地点であり、目的地点とは、ナビゲーション装置1の電源がOFF(車両のイグニッションがOFF)された時点で現在位置検出手段11により検出された地点である、すなわち、走行が終了した地点である。
【0046】
走行経路を記憶するにあたって、制御手段10は、通過リンクの属性情報として地図情報記憶手段13に記憶されているリンクに定められた進行方向と車両の現在の進行方向をチェックし、車両が道路のリンクに定められた進行方向とは逆方向に走行した場合には、逆走したことを示す逆走情報を該当するリンクのデータに付加して走行経路記憶手段14に記憶する。逆走情報は、例えば、通過リンクのリンク番号を記憶する際にフラグ情報(逆走でなければ「0」、逆走した場合「1」)として付加すればよい。
【0047】
そして、次に車両が走行する場合、電源(イグニッション)がONされて車両が走行を開始する際、走行経路判別手段15は、走行経路記憶手段14に記憶された走行経路を参照し、進行方向とは逆方向に走行した道路のリンクを抽出する。逆走したリンクの抽出は、逆走情報を参照することで、すなわち、フラグ情報が「1」(逆走)のリンクを抽出することで容易に行うことができる。そして、逆走した道路のリンクを抽出すると、表示手段17や音声報知手段18などの報知手段を用いて利用者に警告情報を報知する。警告情報は逆走した地点や経路区間とともに報知することが好ましい。
【0048】
図2は、前述のようにして逆走情報を付加して走行経路を記憶する制御手段10の動作手順を示すフローチャートである。
【0049】
車両のイグニッションがONされ、ナビゲーション装置1が起動(電源ON)されると(ステップS201)、現在位置検出手段11により現在位置が検出され(ステップS202)、検出された現在位置を出発地点としてRAM(不図示)に一時記憶する(ステップS203)。車両が走行を開始すると、現在位置検出手段11により時々刻々検出される現在位置に対応したノードとリンクを走行経路のデータとしてRAMに順次、一時記憶していく(ステップS204)。
【0050】
走行経路のデータを記憶する際、通過リンクの属性情報として記憶されているリンクに定められた進行方向と車両の現在の進行方向をチェックし、車両がリンクに定められた進行方向とは逆方向に走行したか否かを判別し、逆走した道路のリンクがある場合(ステップS205のYES)には、逆走したことを示す逆走情報(例えば、フラグ情報)を該当リンクのデータに付加して記憶する(ステップS206)。逆走したリンクがなければ処理はステップS207に進む。
【0051】
ステップS207の処理では、車両が目的地点に到着したか否かを判別する。車両が目的地点に到着した場合(電源OFF)には(ステップS207のYES)、該電源OFF時点に現在位置検出手段11により検出された現在位置を目的地点としてRAMに一時記憶する(ステップS208)、次いで、出発地点から目的地点までの一連の一時記憶データを走行経路として走行経路記憶手段14に記憶する。その際、出発地点を出発した時刻や目的地点に到着した時刻などを走行経路のデータとして記憶しておけば、走行経路を利用した時間帯を判別することができるようになる。
【0052】
図3は、上記の手順により走行経路記憶手段14に記憶された逆走情報を含む走行経路のデータ構成の一例を示す図である。図3には経路1〜経路nまで、出発地点から目的地点に至るまでに通過したノードおよびリンクが順に走行軌跡として記憶されている。出発地点は電源ONされた時の位置、目的地点は電源OFFされた時の位置であるが、最初に通過したノードを出発地点、最後に通過したノードを目的地点とすることもできる。
【0053】
各リンクには逆走の有無を示すフラグ情報(逆走情報)が記憶されている。フラグ「1」は逆走があったことを示し、フラグ「0」は逆走でないことを示す。図3では、経路2においてリンク2fに当該リンクを逆走したことを示す逆走情報(フラグ情報「1」)が記憶されている。
【0054】
図3のような走行軌跡データに基づいて、逆走の警告を報知する走行経路判別手段15の動作手順について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0055】
なお、図2の処理と図4の処理は、いずれも車両が経路案内を受けずに走行する場合の処理であるから並行して行われる。図2の処理は制御手段10により実行され、図4の処理は目的地推定手段16と走行経路判別手段15によって実行される処理である。
【0056】
車両のイグニッションがONされ、ナビゲーション装置が起動(電源ON)されると(ステップS401)、現在位置検出手段11は車両の現在位置を検出する(ステップS402)。次いで、時刻検出手段12は、現在時刻(出発時刻)を検出する(ステップS403)。制御手段10は、現在位置および現在時刻をRAMに一時記憶する(ステップS404)。なお、図2におけるステップS202、ステップS203の処理と、図4におけるステップS402及びステップS404における現在位置の一時記憶処理は、同じ処理である。
【0057】
次いで、目的地推定手段17は、走行経路記憶手段14に過去に走行した走行経路が記憶されているかを判別する(ステップS405)。走行経路が記憶されていなければ(ステップS405のNO)、過去の走行経路に基づいて今回の走行の目的地を推定することができないから処理を終了する。走行経路が記憶されていれば(ステップS405のYES)、ステップS406の処理に進み、目的地推定手段17は、走行経路記憶手段14に記憶されている走行経路の情報から今回の走行の目的地を推定する。推定の方法は以下のようにして行う。すなわち、目的地推定手段17は、車両の現在位置を各走行経路の出発地点の情報と照合(図2の経路1〜経路n参照)し、現在位置と一致する出発地点を持つ走行経路を抽出し、一致する走行経路があれば、その走行経路の目的地点を目的地として推定する。一致する走行経路が複数あれば、それぞれの走行経路を抽出し、目的地点を目的地として推定する。
【0058】
なお、上記の方法は、現在位置と出発地点とが一致する走行経路を抽出するものであったが、これに限らず、現在位置と走行経路の出発地点とが所定の距離範囲内にある時に、その走行経路を抽出し、該走行経路の目的地点を目的地として推定するように構成してもよい。
【0059】
次いで、走行経路判別手段15は、推定された目的地に関連する走行経路の情報、すなわち、目的地推定手段17が抽出した走行経路のリンク情報を調べ、逆走情報が記憶されているリンクがあるか否かを判別する。逆走情報が記憶されたリンクがなければ(ステップS407のNO)、警告の必要はないので処理を終了する。逆走情報が記憶されたリンクがあれば(ステップS407のYES)、該当する道路のリンクを抽出し、これに基づいて逆走した地点や経路区間を含む逆走警告を生成し、音声報知手段18または表示手段17により警告報知を行う(ステップS408)。警告報知の内容は、例えば、「過去に、SS目的地に向かった際、ZZ通りのXX交差点をYY方向に逆走したことがあります、注意して下さい」、「過去に、SS目的地に向かった際、ZZ通りXX丁目付近をYY方向に逆走したことがあります、注意して下さい」のようなものにするとよい。
【0060】
また、警告報知された逆走情報のうち、次回以降、逆走の警告報知を不要とする逆走情報があるか否かを利用者に判断させるために、例えば、表示手段17に逆走情報を削除するか否かを問い合わせする選択項目を表示する(ステップS409)。そして、ステップS410で、利用者により不要なものはないと判断された場合(ステップS410のNO)、処理を終了する。
【0061】
利用者により、不要な逆走情報が選択された場合(ステップS410のYES)、ステップS411において、走行経路判別手段15は、該当するリンクに付加された逆走情報(フラグ情報「1」)を削除(「0」にクリア)する。図3の例の場合、経路2のリンク2fに付加されたフラグ情報をクリアする。逆走リンクが複数ある場合には、一覧を表示して選択させるようにする。
【0062】
なお、削除機能を設けない場合は、ステップS409〜S411の処理を省略すればよい。また、図4の処理(逆走警告)は、車両が走行開始する都度、毎回自動的に行ってもよく、また、機能選択ボタン等を設けて利用者が所望する時だけこの処理を行うように構成することもできる。
【0063】
また、走行経路の出発地点とともに出発時刻を考慮し、今回の走行開始時点における現在位置と現在時刻をもとに、走行経路の出発地点、出発時刻を比較し、現在位置と出発地点が所定の距離範囲内にあり、且つ、現在時刻と出発時刻とが所定の時間範囲内にある走行経路を抽出し、その走行経路の目的地点を目的地として推定するように構成することもできる。このように時刻の条件を加味して目的地を推定すれば、記憶した走行経路が時間帯に依存する場合、例えば、夕方のショピングにおける走行経路などの場合、適切な目的地の推定ができるようになる。
【0064】
このようにすれば、目的地を推定した際に抽出した走行経路の逆走情報のみを調べて警告することができるので、走行経路記憶手段14に記憶されたすべてのリンク情報を調べる必要がなく、また、目的地を推定するので、走行する見込みが少ない過去の走行経路の逆走が警告されることはなく利用者が警告を煩わしく感ずることがなくなる。
【0065】
なお、本実施例に示す例においては、逆走警告にあたり、車両の現在位置(出発地)に基づいて、走行経路記憶手段14に記憶された全ての走行経路について、その各々の出発地点を対比して目的地を推定するものであったが、本発明はこれに限られるものではなく、走行経路を記憶する際に、出発地点、目的地点がそれぞれ所定の距離範囲内にある経路同士は、共通の出発地点、目的地点まで走行した類似経路としてグループ(分類)分けして記憶しておき、目的地推定手段17は、グループ分けされた類似経路をひとまとめにして目的地を推定するように構成することができる。
【0066】
そのような構成にすれば、目的地の推定を効率的に行うことができるようになる。あるグループに分類された複数の類似経路から目的地を推定するには、逆走警告時に、類似経路の各々の出発地点、目的地点から、その中央値や最頻値を求めて、車両の現在位置(出発地)がそれと一致するか、または、所定の距離範囲内にあれば、算出した目的地点の中央値や最頻値を目的地として推定すればよい。また、その場合にも本実施例に示す例と同様に時刻条件を加味して類似経路を分類し、目的地推定にも時刻条件を加味するように構成できる。
【符号の説明】
【0067】
1 :ナビゲーション装置
10 :制御手段
11 :現在位置検出手段
12 :時刻検出手段
13 :地図情報記憶手段
14 :走行経路記憶手段
15 :走行経路判別手段
16 :目的地推定手段
17 :表示手段
18 :音声出力手段
19 :入力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路をノードとリンクで表現した道路データであって、各リンクには進行方向を示す属性情報を有する道路データを含む地図情報を蓄積した地図情報記憶手段と、車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、前記現在位置と前記道路データに基づき、車両が走行を開始した出発地点から走行を終了した目的地点までに走行した道路のノードおよびリンクを抽出し、抽出した該ノードおよびリンクと前記出発地点と前記目的地点を対応付けて走行経路の情報として走行経路記憶手段に記憶する制御手段と、を備えたナビゲーション装置において、
前記ナビゲーション装置は、さらに、車両の走行開始時に前記現在位置検出手段により検出される現在位置に該当する出発地点を有する走行経路を前記走行経路記憶手段から抽出し、抽出した該走行経路の目的地点を目的地として推定する目的地推定手段と、該目的地推定手段が抽出した走行経路に基づいて逆走の有無を判別する走行経路判別手段と、を備え、
前記制御手段は、前記走行経路記憶手段に走行経路を記憶する際、前記リンクの属性情報に示された進行方向とは逆方向に車両が走行したか否かを判別し、逆方向に走行したことを検出した場合には、逆走情報を該当するリンクに付加して記憶し、前記走行経路判別手段は、前記目的地推定手段が抽出した走行経路を参照して進行方向とは逆方向に走行した道路のリンクを抽出し、抽出した該リンクに基づいて、逆走した道路のリンクを示す情報とともに、過去に該リンクを逆走したことがある旨を示す逆走警告情報を報知手段を介して報知することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記目的地点推定手段は、前記現在位置と出発地点との距離が所定の範囲内である走行経路を抽出し、抽出した該走行経路の出発地点に対応する目的地点を目的地として推定することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記走行経路には、出発地点の出発時刻が含まれ、前記目的地点推定手段は、車両が走行を開始した際の現在時刻と出発時刻が所定の範囲内である走行経路を抽出し、抽出した該走行経路の出発地点に対応する目的地点を目的地として推定することを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記制御手段は、走行経路の出発地点と目的地点がそれぞれ所定の距離範囲内にある経路同士を類似の経路として分類し前記走行経路記憶手段に記憶し、前記目的地推定手段は、分類された複数の前記走行経路の出発地点に基づいて目的地を推定することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−217014(P2010−217014A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64532(P2009−64532)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】