説明

ナースコール装置

【課題】生体情報集合表示装置が無くても重症者の生体情報を測定および監視する生体情報監視装置が警報を発した時に誤報か否かをナースステーションで判れば便利であり、無駄な確認作業を省くことが出来き、また、何の警報が発生したか判れば、より迅速な処置が執れる。
【解決手段】ナースコール親機は生体情報監視装置からの警報信号を受けると、警報を発した生体情報監視装置に対して警報が発生した前後の生体情報を要求し、ナースコール親機の表示部または看護師が携帯する携帯端末に患者名などの患者情報と警報発生時刻と警報発生点と共に警報が出た生体情報を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や福祉介護施設で使用されるナースコール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院では重症者は血圧、体温、脈拍、呼吸、心電図波形などの生体情報を常時監視され、生体情報
や生体情報を監視する測定器に異常があるとアラーム音を発して看護師や医師に知らせている。
(特許文献1を参照)
また、自宅療養している患者の生体情報を医療機関にいる医師に伝送する提案が成されている。
(特許文献2を参照)
一方、病院や福祉介護施設では主に看護師(福祉介護施設では介護士など)と患者が通話する為の
ナースコール装置が設置されている。 このナースコール装置では、患者が呼び出しに使用するナ
ースコール子機が各ベッドに備えられ、ナースステーションにはナースコール親機が設置されてい
て、その間で通話できるようになっている。 ナースコール装置に生体情報を取り入れてナースコ
ール親機にて生体情報を表示したり、生体情報に異常が検知された時にナースコール装置に警報信
号を取り入れナースコール親機にて警報を報知する提案が成されている。 (特許文献3を参照)
【特許文献1】特開平11−276444号公報
【特許文献2】特開平11−89802号公報
【特許文献3】特開2002−281167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
重症者の生体情報を測定および監視する生体情報監視装置は、異常を検知すると病室内でアラーム音を発生する。 病室とナースステーションが遠い場合看護師がアラーム音を聞き逃したり、気付くのが遅れて処置が遅れてしまうことがある。 そのため生体情報監視装置のアラーム音を大きくしたり、病室にある生体情報監視装置に有線でナースステーション近くまで引き伸ばした副監視装置に警報を出力したり、生体情報監視装置に医療用テレメータを接続して無線に拠りナースステーションにある生体情報集合表示装置まで警報情報を伝送している。
また、近年では生体情報監視装置に有線伝送する機能を設け、ナースステーションで複数の病室の生体情報を監視できる生体情報集合表示装置が提供されている。
【0004】
副監視装置を有線で引き伸ばす事は、廊下に太いケーブルが引かれるため、歩行者がつまずいたり担架の搬送など通行に支障がある。 ナースステーションに生体情報集合表示装置を設置すればアラーム音を聞き逃すことが無くなるが、生体情報集合表示装置を用意していない病院もある。
生体情報集合表示装置を用意していない病院の中には、患者が看護師を呼び出す為に用意されているナースコール設備を利用して、生体情報監視装置からの警報(アラーム)を病室からナースステーションのナースコール親機へ送り看護師に伝えている。
【0005】
しかし、生体情報監視装置の警報は誤報が多い。 患者が体を動かしたり、生体電極が一時的に接触不良であったり、外乱ノイズで誤動作したりなどの原因で一時的に生体波形が乱れて誤報になることが多い。
【0006】
ナースコール親機から生体情報監視装置の警報を受けた看護師は、警報が誤報であっても病室まで行って初めて誤報と判る。 生体情報集合表示装置が無くても警報発生時に誤報か否かをナースステーションで判れば便利であり、無駄な確認作業を省くことが出来る。 また、何の警報が発生したか判れば、より迅速な処置が執れる。
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
生体情報監視装置が異常を判定するとナースコール子機に警報信号を出力する手段と、ナースコール子機はその警報信号をナースコール親機に送信し、ナースコール親機では鳴動音と表示に拠って看護師や医師に生体情報の異常を報知する手段を設ける。
【0008】
ナースコール親機では予め登録されている重症患者からの呼び出し(生体情報監視装置からの警報信号)であると判断すると、警報を発した生体情報監視装置に対して警報が発生した前後の生体情報を要求する手段を備える。 また、看護師のデータ要求があった場合でも警報の前後の生体情報を要求する手段を備える。 警報前後の生体情報の時間指定は、生体信号ごとに看護師や医師が予め設定出来る手段を備える。
【0009】
生体情報監視装置は、ナースコール親機からデータ要求を受けると、警報を発した前後の生体情報を指定された時間分だけ記憶部から読み出してナースコール親機へ送信する手段を備える。
【0010】
ナースコール親機は送信されてきた生体情報をナースコール親機の記憶部へ保存する手段と、看護師や医師から表示要求の操作が実施された場合、ナースコール親機の表示部または看護師が携帯する携帯端末に警報が出た生体情報を患者名などの患者情報と警報発生時刻と警報発生点と共に表示する手段を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、生体情報監視装置で警報が発生した場合、ナースステーションに生体情報集合表示装置の設備が無くても看護師はナースコール親機または携帯端末で生体波形を確認できるため、誤報か否かが判り、病室へ行って確認する無駄な確認作業を省くことが出来る。 また、何の警報が発生したかが判るため、より迅速な処置が執れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、生体情報を取り込んだナースコール装置の全体構成を示した図である。
ナースコール親機(1)は、ナースコール専用通信線(10)と廊下灯(3)を介してナースコール子機(2)と接続しており、親機と子機間で呼び出しおよび通話が出来る。 ナースコール親機(1)はナースステーションに設置され、ナースコール子機(2)から呼び出しがあると鳴動音と患者名などの呼び出し表示を行い、看護師に報知する。 看護師が呼び出しに応答すると親機と子機間で通話路が形成されて通話することが出来る。
【0013】
廊下灯(3)は病室の出入り口近傍に設置され、病室内の複数のナースコール子機(2)の呼び出し表示を行い、廊下を通行中の看護師に知らせる。 図1には図示していないが、ナースコール親機(1)から構内電話交換機を経由して看護師が携帯するPHS(Personal Handyphone System)と接続して、ナースコール子機(2)とPHSの間でも通話することが出来る。
【0014】
生体情報監視装置(4)は、重症患者の生体情報を常に測定および監視して、 生体情報および生体情報を測定する測定器および人工呼吸器などの生体維持装置に異常が発生したときに警報を発する。 生体情報の異常を示す警報信号(11)をナースコール子機(2)が受信すると、ナースコール親機(1)を呼び出して報知する。 ナースコール親機(1)では鳴動音と表示に拠って看護師や医師に生体情報の異常を報知する。 また、ナースコール親機(1)は無線LAN(ローカルエリアネットワーク) (9)と無線固定局(6)を介して看護師が所有する携帯端末(7)へも生体情報の異常を報知する。
【0015】
ナースコール親機(1)は予め登録されている重症患者からの呼び出し、 つまり生体情報監視装置(11)からの警報信号であると判断すると、警報を発した生体情報監視装置(11)に対して警報が発生した時刻の前後の生体情報を、時間幅を指定して要求する。 要求の経路は、ナースコール親機(1)からLAN(8) 、ナースコールサーバー(5) 、LAN(8) 、生体情報監視装置(11)の順に要求される。
【0016】
ナースコール親機(1)は、一般的には1つの病棟に1台設置される。 LAN(8)には複数のナースコール親機(1)が接続されていて、 ナースコールサーバー(5)が各ナースコール親機(1)のデータを一元管理する。 そのため、LAN(8)でのデータ送受信はナースコールサーバー(5)を介して行われる。
【0017】
生体情報の要求を受けた生体情報監視装置(11)は、 データを要求された経路とは逆の経路で生体情報を送信する。 送信する生体情報は、警報が出た信号の警報発生時点の指定された前および指定された後の時間分のデータと発生時刻を送信する。
【0018】
ナースコール親機(1)は要求した生体情報を受け取ると、自身の記憶部(15)に保存する。
図2は、ナースコール親機の内部構成を示した図である。
看護師または医師がナースコール親機(1)の鳴動音と表示に拠って、または携帯端末(7)からの鳴動音と表示に拠って生体情報の異常を知ると、ナースコール親機(1)の表示部(13)または操作部(14)を利用して、または携帯端末(7)を利用して異常が発生した生体情報の表示を要求する。
【0019】
ナースコール親機(1)は、生体情報の表示要求をナースコール制御部(12)で判別して該当する生体情報を記憶部(15)から読み出して要求先の表示部(13) または携帯端末(7)へ送る。 携帯端末(7)へのデータ送信は、記憶部(15)から読み出したデータを無線LAN接続部(19) 、無線LAN(9) 、 無線固定局(6) 、携帯端末(7)の経路で送られる。
【0020】
図3は、警報が発生した生体情報の表示例である。
表示内容は、患者の識別番号(患者ID:Identification) 、患者名、 室番号・ベッド番号、 警報発生日時、 信号名、 表示開始時刻、表示終了時刻、 信号のデータ(図3の場合は心電図波形データ)、 警報が発生した時点を示すマーク(図3においては矢印マーク(20)で示す)などである。
【0021】
生体情報によっては、表示形式は波形データではなくグラフや数字表示となる。 例えば、血圧データの表示は、横軸を経過時間にとり縦軸に血圧値をとったグラフ形式で表示し、警報が出た血圧値は数字で表示する。
【0022】
複数の生体情報が同時刻に警報を発した場合は、看護師または医師が操作部(14)等を利用して表示する生体情報を選択できる。 または、数種類の生体情報を同一画面に表示できるが、表示する種類が多くなると判りにくくなり、発明の主旨からすると2種類程度がよい。
【0023】
上述では生体情報に警報が発生した時に表示要求をしているが、拡張機能として警報が発生していない時でも表示することは可能である。 しかし、警報が出たときのみ表示する手段は、警報の前後の指定時間だけの表示のためデータ量が少なくて済む、従ってデータの送信量が少なく表示が速い、誤報か否かの判断が容易にしやすい、急変なのかゆっくりした変化なのか見ることが出来るので処置の緊急度合を判断できる・・・などの長所がある。
【0024】
図1の構成図では生体情報の送受信にLANを利用しているが、専用の通信線(無線や有線を問わず)であっても、ナースコールの専用通信線であっても構わない。
しかし、LANを利用すると多量のデータを高速で送信できること、配線工事が容易であること、
LANの既設備を利用したり他の設備と共用できること、汎用性が高いこと、病棟間のデータの送受信が容易であること等からLANを利用することが有利である。
【0025】
警報が出た生体情報の送信と表示は、警報発生時点の指定された前および指定された後の時間分のデータであるが、その時間指定は操作部(14)で予め設定される。 看護師または医師が生体情報ごとに警報の前の時間指定、警報の後の時間指定を行う。 設定が行われない場合は、システム導入時の標準時間を使う。 設定された時間は、記憶部(15)に保存されそれ以降の時間指定に利用する。

【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】生体情報を取り込んだナースコール装置の全体構成
【図2】ナースコール親機の内部構成
【図3】生体情報の表示例
【符号の説明】
【0027】
1.
ナースコール親機
2.
ナースコール子機
3.
廊下灯
4.
生体情報監視装置
5.
ナースコールサーバー
6.
無線固定局
7.
携帯端末
8.
ローカルエリアネットワーク(LAN)
9.
無線LAN(ローカルエリアネットワーク)
10.
ナースコール専用通信線
11.
生体情報の異常を示す警報信号
12.
ナースコール制御部
13.
表示部
14.
操作部
15.
記憶部
16.
ナースコール子機通信部
17.
ナースコール通話部・表示部
18.
LAN接続部
19.
無線LAN接続部
20.
生体情報の異常発生時刻を示す矢印マーク
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の生体情報を測定および監視する生体情報監視装置と、 生体情報の異常および生体情報を測定する測定器の異常を検出した前記生体情報監視装置が異常を知らせる警報信号を送出するナースコール子機と、 前記ナースコール子機が廊下灯を介して前記警報信号を送信するナースコール親機と、 前記ナースコール親機と無線通信設備を介して接続した携帯端末と、 で構成され、
前記ナースコール親機が前記警報信号を受け取ると鳴動音と表示により医療従事者に報知すると共に警報を発した前記生体情報監視装置に対して警報が発生した時点から前後の指定した時間分の警報に該当する生体情報を要求し、前記生体情報監視装置から前記ナースコール親機が要求した生体情報を受け取ると、前記ナースコール親機の記憶部に保存し、医療従事者から警報に該当する生体情報の表示を要求された場合に前記ナースコール親機の表示部または表示要求がある前記携帯端末に生体情報の時間的変化値を表示することを特徴とするナースコール装置。
【請求項2】
医療従事者から警報に該当する生体情報の表示を要求された場合に前記ナースコール親機の表示部または表示要求がある前記携帯端末に生体情報の時間的変化値と共に、該当する患者情報、警報発生時刻、生体情報の時間的変化値上に警報発生点を示すマーク・ポイント・カーソルまたは文字表示、 のいずれか1つ以上を表示することを特徴とする請求項1記載のナースコール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−228982(P2007−228982A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50486(P2006−50486)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(591253593)株式会社ケアコム (493)
【Fターム(参考)】