説明

ハイブリッド車およびその制御方法

【課題】内燃機関の制御と電動機の制御とが別個の制御手段によるものであっても吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したタイミングに合わせて内燃機関と電動機とを協調して制御し内燃機関を迅速に停止させる。
【解決手段】エンジン用電子制御ユニットは、エンジン停止指令が送信されたとき(S100)、エンジンを自立運転させた状態でVVT変更処理を行い、処理が完了したときにハイブリッド用電子制御ユニットに完了通知を送信すると共にフューエルカットする。ハイブリッド用電子制御ユニットは、完了通知を受信したときに(S130でYES)、エンジンの回転を停止させるモータトルク指令Tm1*を設定し(S170)、モータECUに送信する(S210)。したがって、VVT変更処理が完了したタイミングに合わせて、エンジンとモータとを協調して制御しエンジンを迅速に停止させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転中に吸気バルブの開閉タイミングを変更可能な内燃機関と、該内燃機関を運転制御する機関用制御手段と、前記内燃機関の出力軸にトルクを入出力可能な電動機と、該電動機を駆動制御すると共に前記機関用制御手段と通信可能に接続されて該機関用制御手段に前記内燃機関の制御指令を送信可能な主制御手段とを備えるハイブリッド車およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車としては、可変動弁機構を有するエンジンと、エンジンの動力により駆動し可変動弁機構を作動させる油圧源と、駆動軸に動力を出力するモータとを備え、エンジンを停止させる前に可変動弁機構の吸気カムの位相位置を次回のエンジン始動に最適な遅角位置に移動させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−213383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、遊星歯車機構にエンジンと、発電機と、電動機とが接続された構成のハイブリッド車では、発電機を用いてエンジンの出力軸にトルクを出力できるから、エンジンの燃料カットに協調して発電機からのトルクを用いることによりエンジンをスムーズに停止させることができる。このようなハイブリッド車において、エンジンの制御と電動機の制御とに別個のコントローラを用いる場合、吸気バルブの開閉タイミングの変更には機械的な動作が伴うことから変更すべきタイミングが遠いほど長い時間を要し、発電機からのトルクを出力するタイミングによっては燃料カットの前に発電機からのトルクがエンジンの出力軸に作用しショックが生じる場合がある。吸気バルブの変更に要する最も遅い時間を発電機からのトルクを出力するタイミングに設定することも考えられるが、その分エンジンの燃料カットが遅れるから燃費が悪化してしまう。
【0004】
本発明のハイブリッド車およびハイブリッド車の制御方法は、内燃機関の制御と電動機の制御とが別個の制御手段によるものであっても吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したタイミングに合わせて内燃機関と電動機とを協調して制御し内燃機関を迅速に停止させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のハイブリッド車およびハイブリッド車の制御方法は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明のハイブリッド車は、
運転中に吸気バルブの開閉タイミングを変更可能な内燃機関と、該内燃機関を運転制御する機関用制御手段と、前記内燃機関の出力軸にトルクを入出力可能な電動機と、該電動機を駆動制御すると共に前記機関用制御手段と通信可能に接続されて該機関用制御手段に前記内燃機関の制御指令を送信可能な主制御手段と、を備えるハイブリッド車であって、
前記機関用制御手段は、前記主制御手段から前記内燃機関の停止指令を受信したとき、前記内燃機関が運転されている状態で前記吸気バルブの開閉タイミングが所定の停止時用開閉タイミングに変更されるよう前記内燃機関を制御すると共に該吸気バルブの作動状態に関する情報を前記主制御手段に送信し、前記吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したときに前記内燃機関への燃料供給が遮断されるよう該内燃機関を運転制御する手段であり、
前記主制御手段は、前記機関用制御手段から送信された前記吸気バルブの作動状態を受信すると共に該受信した吸気バルブの作動状態に基づいて該吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したか否かを判定し、該変更の完了を判定したときに前記出力軸に前記内燃機関の回転を停止させる方向のトルクが出力されるよう前記電動機を駆動制御する手段である
ことを要旨とする。
【0007】
この本発明のハイブリッド車では、機関用制御手段は、主制御手段から内燃機関の停止指令を受信したとき、内燃機関が運転されている状態で吸気バルブの開閉タイミングが所定の停止時用開閉タイミングに変更されるよう内燃機関を制御すると共に吸気バルブの作動状態に関する情報を主制御手段に送信し、吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したときに内燃機関への燃料供給が遮断されるよう内燃機関を運転制御する手段であり、主制御手段は、機関用制御手段から送信された吸気バルブの作動状態を受信すると共に受信した吸気バルブの作動状態に基づいて吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したか否かを判定し、変更の完了を判定したときに出力軸に内燃機関の回転を停止させる方向のトルクが出力されるよう電動機を駆動制御する。したがって、内燃機関の制御と電動機の制御とが別個の制御手段によるものであっても吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したタイミングに合わせて、機関用制御手段による内燃機関への燃料供給の遮断と主制御手段による内燃機関の回転を停止させる方向のトルクの出力とを行うことができる。この結果、内燃機関と電動機とを協調して制御し内燃機関を迅速に停止させることができる。
【0008】
こうした本発明のハイブリッド車において、前記機関用制御手段は、前記吸気バルブの作動状態に関する情報として該吸気バルブの所定の停止時用開閉タイミングへの変更が完了したときの完了通知を前記主制御手段に送信する手段であり、前記主制御手段は、該完了通知を受信したときに前記吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したと判定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、吸気バルブの開閉タイミングの変更完了をより正確に把握することができる。
【0009】
また、本発明のハイブリッド車において、前記機関用制御手段は、前記吸気バルブの作動状態に関する情報として前記停止指令を受信したときの該吸気バルブの変更前開閉タイミングを前記主制御手段に送信する手段であり、前記主制御手段は、該受信した前記吸気バルブの変更前開閉タイミングに基づいて該吸気バルブの所定の停止時用開閉タイミングへの変更に要する時間を推定し該推定した時間を経過したときに該吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したと判定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、吸気バルブの開閉タイミングの変更完了をより正確に把握することができる。
【0010】
さらに、本発明のハイブリッド車において、前記機関用制御手段は、前記内燃機関の動力を用いて前記吸気バルブの開閉タイミングを変更するよう該内燃機関を運転制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関が運転されている状態で吸気バルブの開閉タイミングを変更する必要があるので、本発明を適用する意義が大きい。
【0011】
そして、本発明のハイブリッド車において、前記機関用制御手段は、前記所定の停止時用開閉タイミングとして前記吸気バルブの開閉タイミングを変更可能な範囲で最も遅くなる開閉タイミングとするよう前記内燃機関を運転制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、吸気バルブの開閉タイミングを次回の内燃機関の始動性を良好にすることができる開閉タイミングにしてから内燃機関を停止させることができる。なお、吸気バルブの開閉タイミングを最遅角させることにより、内燃機関の燃焼によって発生した排気ガスが吸気側に逆流するのを防止し燃焼を安定させることで内燃機関の始動性が向上する。
【0012】
また、本発明のハイブリッド車において、前記内燃機関の出力軸と前記電動機の回転軸と車軸に接続された駆動軸との3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な第2の電動機と、を備えるものとしてもよい。
【0013】
本発明のハイブリッド車の制御方法は、
運転中に吸気バルブの開閉タイミングを変更可能な内燃機関と、該内燃機関を運転制御する機関用制御手段と、前記内燃機関の出力軸にトルクを入出力可能な電動機と、該電動機を駆動制御すると共に前記機関用制御手段と通信可能に接続されて該機関用制御手段に前記内燃機関の制御指令を送信可能な主制御手段と、を備えるハイブリッド車の制御方法であって、
前記機関用制御手段により、前記主制御手段から前記内燃機関の停止指令を受信したとき、前記内燃機関が運転されている状態で前記吸気バルブの開閉タイミングが所定の停止時用開閉タイミングに変更されるよう前記内燃機関を制御すると共に該吸気バルブの作動状態に関する情報を前記主制御手段に送信し、前記吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したときに前記内燃機関への燃料供給が遮断されるよう該内燃機関を運転制御し、
前記主制御手段により、前記機関用制御手段から送信された前記吸気バルブの作動状態を受信すると共に該受信した吸気バルブの作動状態に基づいて該吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したか否かを判定し、該変更の完了を判定したときに前記出力軸に前記内燃機関の回転を停止させる方向のトルクが出力されるよう前記電動機を駆動制御する
ことを要旨とする。
【0014】
この本発明のハイブリッド車の制御方法では、機関用制御手段により、主制御手段から内燃機関の停止指令を受信したとき、内燃機関が運転されている状態で吸気バルブの開閉タイミングが所定の停止時用開閉タイミングに変更されるよう内燃機関を運転制御すると共に吸気バルブの作動状態に関する情報を主制御手段に送信し、吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したときに内燃機関への燃料供給が遮断されるよう内燃機関を運転制御し、主制御手段により、機関用制御手段から送信された吸気バルブの作動状態を受信すると共に受信した吸気バルブの作動状態に基づいて吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したか否かを判定し、変更の完了を判定したときに出力軸に内燃機関の回転を停止させる方向のトルクが出力されるよう電動機を駆動制御する。したがって、内燃機関の制御と電動機の制御とが別個の制御手段によるものであっても吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したタイミングに合わせて、機関用制御手段による内燃機関への燃料供給の遮断と主制御手段による内燃機関の回転を停止させる方向のトルクの出力とを行うことができる。この結果、内燃機関と電動機とを協調して制御し内燃機関を迅速に停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態であるハイブリッド車20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、エンジン22の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0017】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入する共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃料室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化装置(三元触媒)134を介して外気へ排出される。
【0018】
このエンジン22のクランクシャフト26の一端には、図3に示すように、カムシャフト用スプロケット160とオイルポンプ用スプロケット161とが軸心方向に並列に取り付けられ、クランクシャフト26と一体になって回転するようになっている。このカムシャフト用スプロケット160はカムシャフト側タイミングチェーン162を介して吸気カムシャフト125の一端に取り付けられた吸気カムスプロケット164及び排気カムシャフト127の一端に取り付けられた排気カムスプロケット166と連結している。したがって、クランクシャフト26の回転に伴いカムシャフト用スプロケット160が回転すると、その回転に伴って吸気カムスプロケット164及び排気カムスプロケット166が回転し、これにより吸気カムシャフト125及び排気カムシャフト127が回転して吸気バルブ128と排気バルブ129とがそれぞれ開閉する。また、オイルポンプ用スプロケット161は、オイルポンプ側タイミングチェーン170を介してオイルポンプ174に取り付けられたオイルポンプスプロケット172と連結している。したがって、クランクシャフト26の回転に伴いオイルポンプ用スプロケット161が回転すると、その回転に伴ってオイルポンプスプロケット172が回転してオイルポンプ174が駆動し、油圧を可変バルブタイミング機構150などに圧送する。このようにオイルポンプ174は、エンジン22の動力を用いて油圧を供給するものである。このため、オイルポンプ174から圧送される油圧はエンジン22のクランクシャフト26の回転に従って変動し、エンジン22の回転数が高いほど油圧が高圧側になり回転数が低いほど油圧が低圧側になる。
【0019】
また、エンジン22は、吸気バルブ128の開閉タイミングを連続的に変更可能な可変バルブタイミング機構150を備える。図4に、可変バルブタイミング機構150の外観構成を示す外観構成図を示し、図5に、可変バルブ開閉タイミング機構150の構成の概略を示す構成図を示す。可変バルブタイミング機構150は、図示するように、クランクシャフト26にカムシャフト側タイミングチェーン162を介して接続された吸気カムスプロケット164に固定されたハウジング部152aと吸気バルブ128を開閉する吸気カムシャフト125に固定されたベーン部152bとからなるベーン式のVVTコントローラ152と、VVTコントローラ152の進角室および遅角室に油圧を作用させるオイルコントロールバルブ156とを備え、オイルコントロールバルブ156を介してVVTコントローラ152の進角室および遅角室に作用させる油圧を調節することによりハウジング部152aに対してベーン部152bを相対的に回転させて吸気バルブ128の開閉タイミングにおける吸気カムシャフト125の角度を連続的に変更する。なお、進角室および遅角室に作用させる油圧は、オイルポンプ174により発生させる。吸気カムシャフト125の角度を進角させたときの吸気バルブ128の開閉タイミングおよび吸気カムシャフト125の角度を遅角させたときの吸気バルブ128の開閉タイミングの一例を図6に示す。実施例では、エンジン22から効率よく動力が出力される吸気バルブ128の開閉タイミングにおける吸気カムシャフト125の角度を基準角とし、吸気カムシャフト125の角度をその基準角よりも進角させることによりエンジン22から高トルクが出力可能な運転状態とすることができ、吸気カムシャフト125の角度を最遅角させることによりエンジン22の気筒内の圧力変動を小さくしてエンジン22の運転の停止や始動に適した運転状態とすることができるよう構成されている。
【0020】
また、VVTコントローラ152のベーン部152bには、ハウジング部152aとベーン部152bとの相対回転を固定するロックピン154が取り付けられている。図7にロックピン154の構成の概略を示す構成図を示す。ロックピン154は、図示するようにロックピン本体154aと、ロックピン本体154aがハウジング部152aの方向に付勢されるよう取り付けられたスプリング154bとを備え、吸気カムシャフト125の角度が最遅角に位置されたときにスプリング154bのスプリング力によりハウジング部152aに形成された溝158に嵌合しベーン部152bをハウジング部152aに固定する。また、ロックピン154は、油路159を介してスプリング154bのスプリング力に打ち勝つ油圧を作用させることにより溝158に嵌合されたロックピン本体154aを引き抜くことができるよう図示しない油圧式のアクチュエータが設けられている。
【0021】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号が図示しない入力ポートを介して入力されている。例えば、エンジンECU24には、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温,燃焼室へ吸気を行なう吸気バルブ128の吸気カムシャフト125や排気バルブを開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124の開度を検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,エンジン22の吸気系に取り付けられたエアフローメータ148からの吸入空気量などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号が図示しない出力ポートを介して出力されている。例えば、エンジンECU24からは、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。
【0022】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0023】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0024】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば,バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
【0025】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、計時指令に応じて計時処理を実行するタイマ78と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0026】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止するかアイドリング自立運転としてモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0027】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にエンジン22の運転を停止する際の動作について説明する。図8は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるエンジン停止時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、バッテリ50の残容量(SOC)が十分な状態で要求動力がエンジン停止用に設定されたエンジン停止動力未満になったときや図示しないモータ走行スイッチを運転者が操作したときなどに実行される。
【0028】
エンジン停止時駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、エンジンECU24にエンジン停止指令を送信する(ステップS100)。エンジン停止指令を受信したエンジンECU24は、図9に例示するエンジン停止制御ルーチンを実行する。ここで、エンジン停止時駆動制御ルーチンの説明を中断して、エンジン停止制御ルーチンについて説明する。
【0029】
エンジン停止制御ルーチンでは、エンジンECU24は、まず、アイドル回転数Nidl(例えば、800rpmや1000rpm)でエンジン22が自立運転するよう燃料噴射制御や点火制御を行い(ステップS200)、吸気バルブ128の開閉タイミングとしてのVVT位相角θvvtを最遅角のVVT位相角θretに変更するようVVTを制御するエンジン停止時用VVT変更処理を開始する(ステップS210)。エンジン停止時用VVT変更処理が開始されると、オイルコントロールバルブ156を駆動してVVTコントローラ152の遅角室に油圧を作用させる。吸気バルブ128の開閉タイミングの変更は、機械的な動作により行われるから、最遅角に遠い位置にあるほど長時間を要する。次に、吸気カムシャフト125のカム角θca,クランクシャフト26のクランク角θcrを入力し(ステップS220)、クランク角θcrに対するカム角θcaの偏差(θca−θcr)に基づいてVVT位相角θvvtを演算する(ステップS230)。ここで、カム角θcaは、吸気カムシャフト125の回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジションに基づいて計算されたものを入力し、クランク角θcrは、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいて計算されたものを入力するものとした。続いて、演算したVVT位相角θvvtが吸気バルブ128の開閉タイミングが最遅角となるときのVVT位相角θretと略一致するか否かを判定し(ステップS240)、略一致しなければステップS220に戻って処理を繰り返し、略一致していればエンジン停止時用VVT変更処理が完了しているのでハイブリッド用電子制御ユニット70にVVT変更完了信号を送信し(ステップS250)、エンジン22への燃料供給を遮断するフューエルカットを行って(ステップS260)、本ルーチンを終了する。
【0030】
図8のエンジン停止時駆動制御ルーチンに戻って、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、次に、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accやブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,エンジン22の回転数Ne,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する(ステップS110)。ここで、エンジン22の回転数Neはクランクシャフト26に取り付けられたクランクポジションセンサ140からの信号に基づいて計算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されるモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて計算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、温度センサ51により検出されたバッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0031】
データを入力すると、入力したアクセル開度AccやブレーキペダルポジションBP,車速Vに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定する(ステップS120)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度AccやブレーキペダルポジションBP,車速V,要求トルクTr*の関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度AccやブレーキペダルポジションBP,車速Vが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図10に要求トルク設定用マップの一例を示す。
【0032】
こうして要求トルクTr*を設定すると、エンジンECU24から送信されたVVT変更完了信号を受信したか否かを判定する(ステップS130)。エンジン停止指令を送信した直後などエンジンECU24からまだVVT変更完了信号が送信されてないときには、VVT変更完了信号を受信していないと判定し、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定する(ステップS140)。そして、要求トルクTr*を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したものをモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpとして次式(1)により設定し(ステップS150)、モータMG2のトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(2)および式(3)により計算すると共に(ステップS160)、設定した仮トルクTm2tmpを次式(4)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS200)。
【0033】
Tm2tmp=Tr*/Gr (1)
Tmin=Win/Nm2 (2)
Tmax=Wout/Nm2 (3)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (4)
【0034】
こうしてモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、設定したトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信し(ステップS210)、エンジン回転数Neが値0か否かを判定する(ステップS220)。VVT変更完了信号を受信するまではエンジン22は前述したエンジン停止処理ルーチンによりアイドル回転数Nidlで自立運転しているので、エンジン回転数Neは値0でないと判定され、ステップS110に戻って処理を繰り返す。トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行う。こうした制御により、エンジン22を自立運転させてエンジン停止時用VVT変更処理を行うと共にモータMG2からバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
【0035】
一方、エンジンECU24からVVT変更完了信号が送信されると、ステップS130でVVT変更完了信号を受信したと判定し、エンジン22の回転数Neに基づいてエンジン22の回転を停止させるためにモータMG1から出力すべきトルク指令Tm1*を設定する(ステップS170)。ここで、モータMG1のトルク指令Tm1*は、共振現象を生じさせるエンジン22の回転領域を素早く通過してエンジン22をスムーズに停止させるために出力されるものであり、図11にモータMG1のトルク指令Tm1*とエンジン22の回転数Neとの関係の一例を示す。図示するように、エンジン22の回転数Neが停止直前回転数Nstpに達するまでエンジン22の回転を抑制するトルクをトルク指令Tm1*に設定し、回転数Neが停止直前回転数Nstpに達したタイミング(時刻t1)でピストンを保持するトルクに切り替わるよう設定されている。そして、設定したトルク指令Tm1*と要求トルクTr*と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとに基づいて要求トルクTr*をリングギヤ軸32aに出力するためにモータMG2から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm2tmpを次式(5)により設定し(ステップS180)、モータMG2のトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(6)および式(7)により計算すると共に(ステップS190)、設定した仮トルクTm2tmpを上述の式(4)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS200)。
【0036】
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (5)
Tmin=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (6)
Tmax=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (7)
【0037】
こうしてモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、設定したトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信し(ステップS210)、エンジン回転数Neが値0か否かを判定する(ステップS220)。図12に、モータMG1からのトルクによりエンジン22の回転数Neを引き下げる際の動力分配統合機構30の共線図の一例を示す。図中、S軸はサンギヤ31の回転数を示し、C軸はキャリア34の回転数を示し、R軸はリングギヤ32(リングギヤ軸32a)の回転数Nrを示す。図示するように、モータMG1から図中S軸下向きのトルクを出力することによりエンジン22の回転数Neを引き下げ(図12A参照)、エンジン22が完全に運転停止すると(図12B参照)、ステップS220でエンジン回転数Neが値0と判定され、本ルーチンを終了する。こうした制御により、エンジン停止時用VVT変更処理が完了したときにエンジン22へのフューエルカットと協調してモータMG1からエンジン22の回転を停止するトルクを出力するからエンジン22を迅速に停止することができ、モータMG2からはバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でモータMG1から出力されるトルクによりリングギヤ軸32a側に作用する反力(=−Tm1*/ρ)をキャンセルするトルクを出力するからリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
【0038】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジンECU24は、エンジン22の停止指令を受信したとき、エンジン22を自立運転させた状態で吸気バルブ128のエンジン停止時用VVT変更処理を行い、エンジン停止時用VVT変更処理が完了したときにハイブリッド用電子制御ユニット70に完了通知を送信すると共にフューエルカットを行う。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、送信された完了通知に基づいてエンジン停止時用VVT変更処理の完了を判定し、エンジン22の回転を停止させるトルクが出力されるようモータMG1のトルク指令Tm1*を設定しモータECU40に送信する。したがって、エンジン22の制御とモータMG1の制御とが別個の電子制御ユニットによるものであってもエンジン停止時用VVT変更処理が完了したタイミングに合わせて、エンジンECU24によるエンジン22へのフューエルカットとハイブリッド用電子制御ユニット70とモータECU40とによるエンジン22の回転を停止させる方向のトルクの出力とを行うことができる。この結果、エンジン22とモータMG1とを協調して制御しエンジン22を迅速に停止させることができる。
【0039】
実施例のハイブリッド自動車20では、ハイブリッド用電子制御ユニット70がエンジンECU24から送信される完了通知に基づいてエンジン停止時用VVT変更処理の完了を判定したが、エンジンECU24から送信されるVVT位相角θvvtに基づいてエンジン停止時用VVT変更処理の完了を予想してもよい。この場合のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるエンジン停止時駆動制御ルーチンの一例を図13に示し、ハイブリッド用電子制御ユニット70からのエンジン停止指令を受信したエンジンECU24により実行されるエンジン停止制御ルーチンを図14に示す。まず、図14のエンジン停止制御ルーチンについて説明する。図14のエンジン停止制御ルーチンでは、エンジンECU24は、まず、カム角θca,クランク角θcrを入力し(ステップS300)、クランク角θcrに対するカム角θcaの偏差(θca−θcr)に基づいて変更前VVT位相角θvvtを演算し(ステップS310)、演算した変更前VVT位相角θvvtをハイブリッド用電子制御ユニット70に送信する(ステップS320)。次に、アイドル回転数Nidlでエンジン22が自立運転するよう燃料噴射制御や点火制御を行い(ステップS330)、吸気バルブ128の開閉タイミングとしてのVVT位相角θvvtを最遅角のVVT位相角θretに変更するようVVTを制御するエンジン停止時用VVT変更処理を開始する(ステップS340)。続いて、カム角θca,クランク角θcrを入力し(ステップS350)、偏差(θca−θcr)に基づいてVVT位相角θvvtを演算し(ステップS360)、演算したVVT位相角θvvtが最遅角のVVT位相角θretと略一致するか否かを判定し(ステップS370)、略一致しなければステップS350に戻って処理を繰り返し、略一致していればフューエルカットを行って(ステップS380)、本ルーチンを終了する。次に、図13のエンジン停止時駆動制御ルーチンについて説明する。図13のエンジン停止時駆動制御ルーチンでは、前述した図8のエンジン停止時駆動制御ルーチンと同じ処理は同じステップ番号を付しその説明を省略する。ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、エンジンECU24から受信した変更前VVT位相角θvvtやVVTコントローラ152に作用させるオイルポンプ174からの油圧Poilを入力する(ステップS102)。ここで、油圧Poilはエンジン回転数Neに基づいて演算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。次に、入力した変更前VVT位相角θvvtや油圧Poilに基づいてエンジン停止時用VVT変更処理の完了に必要と予想される所要時間tを設定する(ステップS104)。所要時間tは、実施例では、油圧Poilに応じた変更前VVT位相角θvvtと所要時間tの関係を予め定めて所要時間設定用マップとしてROM74に記憶しておき、変更前VVT位相角θvvtと油圧Poilが与えられると記憶したマップから対応する所要時間tを導出して設定するものとした。図15に所要時間設定用マップの一例を示す。図示するように変更前VVT位相角θvvtが進角側となるほど所要時間tは長くなり、遅角側となるほど所要時間tは短くなる。また、油圧Poilが所定の閾値Pref以上の高圧のときには高圧用設定ラインに基づいて設定し、油圧Poilが所定の閾値Pref未満の低圧のときには低圧用設定ラインに基づいて設定する。即ち、油圧Poilが低いほど所要時間tは長くなり、圧力が高いほど所要時間tは短くなる。なお、閾値Prefも予め定めて設定するものとする。続いて、タイマ78による時間計測を開始し(ステップS106)、ステップS110〜S120の処理を行ってから、タイマ78の計時値Tが所要時間tを超えたか否かを判定し(ステップS130a)、超えていなければステップS140以降の処理を実行し、超えていればステップS170以降の処理を実行する。この変形例によっても、実施例と同様に、エンジン22の制御とモータMG1の制御とが別個の電子制御ユニットによるものであってもエンジン22とモータMG1とを協調して制御してエンジン22を迅速に停止させることができる。なお、油圧Poilはエンジン回転数Neに基づいて演算されたものを用いるものとしたが、油路159に油圧センサを設けて直接検出した油圧を用いるものとしてもよい。また、高圧用と低圧用の2つの設定ラインを設けたが、圧力段階に応じてさらに複数の設定ラインを設けるものとしてもよい。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、カム角θcaとクランク角θcrとに基づいてVVT位相角θvvtを演算するものとしたが、VVT位相角θvvtを演算することができるものであれば他の如何なるものを用いてもよい。
【0041】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン停止時用VVT変更処理として吸気バルブ128の開閉タイミングを最遅角にするものとしたが、最遅角に限定されるものではなく吸気バルブ128の開閉タイミングを予め設定された所定の遅角にするものとしてもよい。
【0042】
実施例のハイブリッド自動車20では、吸気バルブ128に可変バルブタイミング機構150を備えるものとしたが、排気バルブにも可変バルブタイミング機構を備えるものとしてもよい。ここで、排気バルブのエンジン停止時用VVT変更処理としては、排気バルブの開閉タイミングを最進角あるいは予め設定された所定の進角にするものとすることができる。
【0043】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図16の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図16における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
【0044】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図17の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
【0045】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、吸気バルブ128の開閉タイミングを変更可能なエンジン22が「内燃機関」に相当し、図9のエンジン停止制御ルーチン実行するエンジンECU24が「機関用制御手段」に相当し、エンジン22を停止させるトルクを出力するモータMG1が「電動機」に相当し、図8のエンジン停止時駆動制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70とモータMG1を制御するモータECU40とが「主制御手段」に相当する。また、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当し、モータMG2が「第2の電動機」に相当する。
【0046】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンとするなど、吸気バルブの開閉開閉タイミングを変更可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、内燃機関の出力軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「主制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0047】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、自動車産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】エンジン22のクランクシャフト26とカムシャフト125,127とオイルポンプ174との関係を説明する説明図である。
【図4】可変バルブ開閉タイミング機構150の外観構成を示す外観構成図である。
【図5】可変バルブ開閉タイミング機構150の構成の概略を示す構成図である。
【図6】吸気カムシャフト125の角度を進角させたときの吸気バルブ128の開閉タイミングおよび吸気カムシャフト125の角度を遅角させたときの吸気バルブ128の開閉タイミングの一例を示す説明図である。
【図7】ロックピン154の構成の概略を示す構成図である。
【図8】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるエンジン停止時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図9】実施例のエンジンECU24により実行されるエンジン停止制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図10】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図11】エンジン22を運転停止する際のモータMG1のトルク指令Tm1*とエンジン22の回転数Neとの関係の一例を示す説明図である。
【図12】モータMG1からのトルクによりエンジン22の回転を停止させる際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図13】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるエンジン停止時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図14】実施例のエンジンECU24により実行されるエンジン停止制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図15】所要時間設定用マップの一例を示す説明図である。
【図16】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図17】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0050】
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、78 タイマ、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、125 吸気カムシャフト、126 燃料噴射弁、127 排気カムシャフト、128 吸気バルブ、129 排気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、136,スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、143 圧力センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、152 VVTコントローラ、152a ハウジング部、152b ベーン部、154 ロックピン、154a ロックピン本体、154b スプリング、156 オイルコントロールバルブ、158 溝、159 油路、160 カムシャフト用スプロケット、161 オイルポンプ用スプロケット、162 カムシャフト側タイミングチェーン、164 吸気カムスプロケット、166 排気カムスプロケット、170 オイルポンプ側タイミングチェーン、172 オイルポンプスプロケット、174 オイルポンプ、176 オイルパン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転中に吸気バルブの開閉タイミングを変更可能な内燃機関と、該内燃機関を運転制御する機関用制御手段と、前記内燃機関の出力軸にトルクを入出力可能な電動機と、該電動機を駆動制御すると共に前記機関用制御手段と通信可能に接続されて該機関用制御手段に前記内燃機関の制御指令を送信可能な主制御手段と、を備えるハイブリッド車であって、
前記機関用制御手段は、前記主制御手段から前記内燃機関の停止指令を受信したとき、前記内燃機関が運転されている状態で前記吸気バルブの開閉タイミングが所定の停止時用開閉タイミングに変更されるよう前記内燃機関を制御すると共に該吸気バルブの作動状態に関する情報を前記主制御手段に送信し、前記吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したときに前記内燃機関への燃料供給が遮断されるよう該内燃機関を運転制御する手段であり、
前記主制御手段は、前記機関用制御手段から送信された前記吸気バルブの作動状態を受信すると共に該受信した吸気バルブの作動状態に基づいて該吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したか否かを判定し、該変更の完了を判定したときに前記出力軸に前記内燃機関の回転を停止させる方向のトルクが出力されるよう前記電動機を駆動制御する手段である
ハイブリッド車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車であって、
前記機関用制御手段は、前記吸気バルブの作動状態に関する情報として該吸気バルブの所定の停止時用開閉タイミングへの変更が完了したときの完了通知を前記主制御手段に送信する手段であり、
前記主制御手段は、該完了通知を受信したときに前記吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したと判定する手段である
ハイブリッド車。
【請求項3】
請求項1記載のハイブリッド車であって、
前記機関用制御手段は、前記吸気バルブの作動状態に関する情報として前記停止指令を受信したときの該吸気バルブの変更前開閉タイミングを前記主制御手段に送信する手段であり、
前記主制御手段は、該受信した前記吸気バルブの変更前開閉タイミングに基づいて該吸気バルブの所定の停止時用開閉タイミングへの変更に要する時間を推定し該推定した時間を経過したときに該吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したと判定する手段である
ハイブリッド車。
【請求項4】
前記機関用制御手段は、前記内燃機関の動力により圧送される流体の流体圧を用いて前記吸気バルブの開閉タイミングを変更するよう該内燃機関を運転制御する手段である請求項1ないし3いずれか1項に記載のハイブリッド車。
【請求項5】
前記機関用制御手段は、前記所定の停止時用開閉タイミングとして前記吸気バルブの開閉タイミングを変更可能な範囲で最も遅くなる開閉タイミングとするよう前記内燃機関を運転制御する手段である請求項1ないし4いずれか1項に記載のハイブリッド車。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか1項に記載のハイブリッド車であって、
前記内燃機関の出力軸と前記電動機の回転軸と車軸に接続された駆動軸との3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、
前記駆動軸に動力を入出力可能な第2の電動機と、
を備えるハイブリッド車。
【請求項7】
運転中に吸気バルブの開閉タイミングを変更可能な内燃機関と、該内燃機関を運転制御する機関用制御手段と、前記内燃機関の出力軸にトルクを入出力可能な電動機と、該電動機を駆動制御すると共に前記機関用制御手段と通信可能に接続されて該機関用制御手段に前記内燃機関の制御指令を送信可能な主制御手段と、を備えるハイブリッド車の制御方法であって、
前記機関用制御手段により、前記主制御手段から前記内燃機関の停止指令を受信したとき、前記内燃機関が運転されている状態で前記吸気バルブの開閉タイミングが所定の停止時用開閉タイミングに変更されるよう前記内燃機関を制御すると共に該吸気バルブの作動状態に関する情報を前記主制御手段に送信し、前記吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したときに前記内燃機関への燃料供給が遮断されるよう該内燃機関を運転制御し、
前記主制御手段により、前記機関用制御手段から送信された前記吸気バルブの作動状態を受信すると共に該受信した吸気バルブの作動状態に基づいて該吸気バルブの開閉タイミングの変更が完了したか否かを判定し、該変更の完了を判定したときに前記出力軸に前記内燃機関の回転を停止させる方向のトルクが出力されるよう前記電動機を駆動制御する
ハイブリッド車の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−144564(P2009−144564A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321088(P2007−321088)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】