説明

ハイブリッド車の運転モード表示装置

【課題】ハイブリッド車の運転モード表示装置において、簡単な構造で、運転者に運転モードを一目でわかるようにする。
【解決手段】電池の残量を表示する電池残量計13を備え、この電池残量計13の近傍にEVモードとHEVモードとのどちらであるかを区別して表示する表示手段17を設け、この表示手段17は、文字列「HEV」から構成され、EVモード時には文字列「HEV」のうち「EV」文字のみ表示させ、HEVモード時には文字列「HEV」を表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド車の運転モード表示装置に係り、特に運転モードを表示するハイブリッド車の運転モード表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、駆動源として、エンジンとこのエンジン以外に発電機とを備えた、いわゆるハイブリッド車がある。このエンジンと発電機とを備えたハイブリッド車の動力利用の方式としては、シリーズ型(エンジンは発電機を回すためのみに用いられ、駆動は全てモータで行う方式:直列方式)やパラレル型(エンジンと発電機とが並列に配置され、エンジンとモータの動力が駆動に用いられる方式:並列方式)がある。
シリーズ型ハイブリッド車において、プラグイン式にあっては、外部から電池(バッテリ)に充電した電力で走行するEV(電気車)モードと、エンジンと発電機とにより発電した電力を使い、電池残量をある制御目標値(SOC−HEV)に制御しながらモータで走行するHEV(ハイブリッド車)モードとの、2種の運転モードに大別されている。
さらに、HEVモードは、車速が零(0)若しくは低車速のときにエンジンを停止するアイドルストップ付きのHEVモード1と、電池残量が目標範囲よりも低くなり、規定値(SOC−HEV12)を下回った場合に、制御目標値(SOC−HEV)に回復するまでアイドルストップをせず、エンジンを運転し続けるHEVモード2とに、分けられる。
【0003】
即ち、図8に示すように、
SOC−HEV:HEVモード1で維持する電池残量値
SOC−HE:HEVモード1からEVモードに変わる電池残量値
SOC−EH1:EVモードからHEVモード1に変わる電池残量値
SOC−H21:HEVモード2からHEVモード1に変わる電池残量値
SOC−H12:HEVモード1からHEVモード2に変わる電池残量値
として、SOC−HEVとSOC−EH1とSOC−H21とを同じ値にした場合において、図8の矢印Pで示すように、HEVモード1では、SOC−HEVを中心にSOC(State of Charge:満充電を100%、完全放電を0%とした場合に、その中のどれだけの幅で電池を実際に使用できるかという状態の値)を維持している。
そして、図9に示すように、十分に高い充電量から走行したSOCの変化例にあっては、EVモードでは、電池の電力を消費しながら走行する(この場合、モータからの回生がある)。また、SOC−HEVでは、HEVモード1となり、そのSOCを維持する。
しかし、SOC−H12以下になると、HEVモード2となり、エンジンによる発電が継続する。また、SOC−HEV(SOC−H21)になると、HEVモード1に変わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−230446号公報
【0005】
特許文献1に係るハイブリッド電気自動車用表示装置は、電動機の作動状態を蓄電池からの電力により駆動力を発生させる電力消費状態と蓄電池へ充電させる充電状態とに区別して表示する第1表示器と、蓄電池の蓄電状態を表示する第2表示器と、エンジンの作動状態を表示する第3表示器とを備えたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図10に示すように、電池残量計101の代表例を挙げると、「F(満)」と「E(空)」間で円弧状の残量目盛部102と、回動軸103を中心に回動して「F」と「E」間の残量目盛部102を指す指針部104とからなり、通常、満充電時に「F」位置を指し、SOC−HEVまで残量が減ったら「E」位置を指すようにするものがある(SOC−H12を「E」位置にしてもかまわない)。
プラグイン式のシリーズ型ハイブリッド車における電池残量計は、通常、EV(電気車)で走行できる電力残量を示すのが通常である。また、このようなハイブリッド車は、EV走行を伸ばすことも主眼のひとつであるため、SOC−HEVは、例えば、30%程度と比較的低いSOC(実際に使用できる電池状態の値)を使い、一方、SOC−H12は、電池をSOC−10とか20%以下にすることが電池に影響を及ぼすため、例えば、25%に設定する等、SOC−HEVとSOC−H12とは、比較的近い数値となる。よって、ユーザ(運転者)は、このような車種を運転するに当たって、運転モード(EVモード、HEVモード等)を意識する必要はない。
しかし、ユーザによっては、満充電「F」からEV走行した距離、HEVモードになった後の距離や燃費、現在の運転しているモードがどうなのか、HEV(ハイブリッド車)走行以後のアイドルストップの有無等を知りたい等の要求があると考えられる。
しかし、電池残量計でSOCを読み取ることは困難なだけではなく、図9から明らかなように、どの運転モードであるのかをSOCの情報では読み取れなかった(例えば、SOC−HEVとSOC−H12間では、HEVモード1とHEVモード2との両方の可能性がある)。
以上のことから、運転モードを示す手段は有効であるが、運転モードが運転に必須の機能ではないことから、簡素で分かりやすく、コストをかけずに情報提供することが望まれていた。
【0007】
そこで、この発明の目的は、簡単な構造で、運転者に運転モードを一目でわかるようにできるハイブリッド車の運転モード表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、発電することなく電池に充電された電力を使用して走行するEVモードと、エンジンにより駆動される発電機により発電された電気によって電池残量を目標値に制御しながら走行するHEVモードとの2つの運転モードを有するハイブリッド車の運転モード表示装置において、前記電池の残量を表示する電池残量計を備え、この電池残量計の近傍に前記EVモードと前記HEVモードとのどちらであるかを区別して表示する表示手段を設け、この表示手段は、文字列「HEV」から構成され、前記EVモード時には前記文字列「HEV」のうち「EV」文字のみ表示させ、前記HEVモード時には前記文字列「HEV」を表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明のハイブリッド車の運転モード表示装置は、簡単な構造で、運転者に運転モードを一目でわかるようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は運転モード表示制御のフローチャートである。(実施例)
【図2】図2はハイブリッド車の概略平面図である。(実施例)
【図3】図3は電池残量計及び表示手段の構成図である。(実施例)
【図4】図4は運転モード表示装置の制御ブロック図である。(実施例)
【図5】図5(A)はEVモードとHEVモードとを区別するために、印刷された「EV」文字とLED等の文字現出手段で現出する「H」文字とからなる表示手段であって、EVモードのときを説明する図である。図5(B)はその表示手段においてHEVモードのときを説明する図である。(実施例)
【図6】図6(A)はEVモードとHEVモード1とHEVモード2とを区別するために、印刷された「EV」文字とLED等の文字現出手段で現出する「H」文字とからなる表示手段であって、EVモードのときを説明する図である。図6(B)はその表示手段においてHEVモード1のときを説明する図である。図6(C)はその表示手段において「H」文字を点滅したHEVモード2のときを説明する図である。(実施例)
【図7】図7(A)はEVモードとHEVモード1とHEVモード2とを区別するために、印刷された「EV」文字とLED等の文字現出手段で現出する「H」文字とからなる表示手段であって、EVモードのときを説明する図である。図7(B)はその表示手段において「H」文字を所定の色で現出したHEVモード1のときを説明する図である。図7(C)はその表示手段においてHEVモード1のときの色とは異なる色の「H」文字を現出したHEVモード2のときを説明する図である。(実施例)
【図8】図8は各モード時の電池残量値を説明する図である。(従来例)
【図9】図9は十分に高い充電量から走行したSOCの変化状態を示すタイムチャートである。(従来例)
【図10】図10は電池残量計の構成図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明は、簡単な構造で、運転者に運転モードを一目でわかるようにする目的を、現在の運転モードを知らしめ、若しくは運転モードの変遷/変化を知らしめて実現するものである。
【実施例】
【0012】
図1〜図7は、この発明の実施例を示すものである。
図2において、1はプラグイン式のシリーズ型ハイブリッド車(以下「ハイブリッド車」という)、2は駆動車軸、3・3は駆動輪である。
このハイブリッド車1は、エンジン4と、このエンジン4に連結した発電機(発電モータ)5と、この発電機5にインバータ6を介して連絡した電池(バッテリ)7と、インバータ6に連絡するとともに駆動車軸2に連結した駆動用のモータ8とを備え、エンジン4の駆動力(機械的駆動力)で発電機5を駆動し、そして、発電機5若しくは電池7からの電力でモータ8を駆動し、このモータ8の駆動力(機械駆動力)によって駆動輪3・3を駆動するものである。
なお、電池7には、充電時に、外部からの充電を可能とする充電器9が取り付けられる。この充電器9には、外部の充電ケーブル10が接続する。
また、ハイブリッド車1には、車室内でメータパネル11が設けられるとともに、運転モード表示装置12が搭載される。
更に、ハイブリッド車1は、電池7の残量を表示する電池残量計13をメータパネル11に備えている。この電池残量計13は、図3に示すように、「F(満)」と「E(空)」間で円弧状の残量目盛部14と、回動軸15を中心に回動して「F」と「E」間の残量目盛部14を指す指針部16とからなる。
【0013】
また、ハイブリッド車1は、電池残量計13の近傍に、EVモードとHEVモードとのどちらであるかを区別して表示する表示手段17を備え、発電することなく電池7に充電された電力を使用して走行するEV(電気車)モードと、エンジン4により駆動される発電機5により発電された電力によって電池残量を目標値に制御しながら走行するHEV(ハイブリッド車)モードとの2つの運転モードを有する。
また、運転モード表示装置12は、図4に示すように、制御手段18を備えている。この制御手段18には、入力側で、電池残量計13と車速を検出する車速検出手段19とが連絡するとともに、出力側で、表示手段17での所定の文字を現出させるLED等の文字現出手段20が接続している。
【0014】
表示手段17は、文字列「HEV」から構成され、例えば、図5に示すように、EVモードとHEVモードとを区別するために、印刷された「EV」文字と文字現出手段20で現出する「H」文字とを備える。この場合、「EV」文字は、残量目盛部14の範囲内に配置され、「H」文字は、その範囲から外れた位置に配置される。これにより、ユーザー(運転者)は、EVモードで電池7の電力でハイブリッド車1が動作するという感覚を把握することが可能となる。
そして、この表示手段17においては、EVモードのときには、図5(A)に示すように、文字列「HEV」のうち「EV」文字のみ表示させる一方、HEVモードのときには、図5(B)に示すように、文字現出手段20で「H」文字を現出させて文字列「HEV」を表示させる。
これにより、簡素な構造で、運転者に運転モードを一目でわかるように示すことができる。
【0015】
また、図6に示すように、ハイブリッド車1は、HEVモードにおいて、車速が予め設定された車速よりも低い時にはエンジン4を停止する第1のHEVモード(以下「HEVモード1」という)と、電池残量が予め設定された値より小さくなった時に車速に関係なくエンジン4を運転し続ける第2のHEVモード(以下「HEVモード2」という)とを有し、HEVモード1とHEVモード2とで「H」文字の点灯と点滅とを切り換える。
これにより、簡素な構造で、運転者にアイドルストップの有無を含めた運転モードを一目でわかるように示すことができる。
【0016】
この図6における運転モードの表示制御は、図1のフローチャートに基づいて行われる。
図1に示すように、制御手段18のプログラムがスタートし(ステップA01)、文字「H」が不灯となってEVモードであり(ステップA02)(図6(A)参照)、先ず、SOC(実際に使用できる電池状態の値)<SOC−HEV(HEVモード1で維持する電池残量値)か否かを判断し(ステップA03)、このステップA03がNOの場合には、前記ステップA02に戻す。
このステップA03がYESの場合には、文字「H」を点灯させてHEVモード1とし(ステップA04)(図6(B)参照)、そして、SOC<SOC−HE12(HEVモード1からHEVモード2に変わる電池残量値)か否かを判断する(ステップA05)。
このステップA05がYESの場合には、文字「H」を点滅させてHEVモード2とし(ステップA06)(図6(C)参照)、そして、SOC>SOC−HEV(SOC−H21:HEVモード2からHEVモード1に変わる電池残量値)か否かを判断し(ステップA07)、このステップA07がNOの場合には、前記ステップA06に戻すが、このステップA07がYESの場合には、前記ステップA04に戻す。
一方、前記ステップA05がNOの場合には、SOC>SOC−HE(HEVモード1からEVモードに変わる電池残量値)か否かを判断し(ステップA08)、ステップA08がNOの場合には、前記ステップA04に戻すが、このステップA08がYESの場合には、前記ステップA02に戻す。
【0017】
さらに、図7に示すように、ハイブリッド車1は、上記のHEVモード1とHEVモード2とで、「H」文字の点灯色を切り換える。つまり、HEVモード1では、図7(B)に示すように、「H」文字を所定の色で現出させる一方、HEVモード2では、図7(C)に示すように、「H」文字をHEVモード1のときとは異なる色に切り換える。
これにより、簡素な構造で、運転者にアイドルストップの有無を含めた運転モードを一目でわかるように示すことができる。
【0018】
この結果、この実施例では、ユーザー(運転者)に対し、現在の運転モードを知らしめ、若しくは運転モードの変遷/変化を知らしめることで、運転モードの確認や運転の楽しみ、また、EV(電気車)走行距離、HEV(ハイブリッド車)走行燃費等の有効な計算への情報提供を行うことが可能となる。
【0019】
なお、この発明において、「EV」文字は、印刷でなくても、「H」文字と同様に消灯可能なものであってもよい。また、「H」文字と「EV」文字とは、同色であっても、異なった色でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明の運転モード表示装置を、各種車両に適用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 ハイブリッド車
4 エンジン
5 発電機(発電モータ)
7 電池(バッテリ)
11 メータパネル
12 運転モード表示装置
13 電池残量計
17 表示手段
18 制御手段
19 車速検出手段
20 文字現出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電することなく電池に充電された電力を使用して走行するEVモードと、エンジンにより駆動される発電機により発電された電気によって電池残量を目標値に制御しながら走行するHEVモードとの2つの運転モードを有するハイブリッド車の運転モード表示装置において、前記電池の残量を表示する電池残量計を備え、この電池残量計の近傍に前記EVモードと前記HEVモードとのどちらであるかを区別して表示する表示手段を設け、この表示手段は、文字列「HEV」から構成され、前記EVモード時には前記文字列「HEV」のうち「EV」文字のみ表示させ、前記HEVモード時には前記文字列「HEV」を表示させることを特徴とするハイブリッド車の運転モード表示装置。
【請求項2】
前記ハイブリッド車両は、車速が予め設定された車速よりも低い時に前記エンジンを停止する第1のHEVモードと、電池残量が予め設定された値より小さくなった時には車速に関係なく前記エンジンを運転し続ける第2のHEVモードとを有し、前記第1のHEVモードと前記第2のHEVモードとで「H」文字の点灯と点滅とを切り換えることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車の運転モード表示装置。
【請求項3】
前記ハイブリッド車両は、車速が予め設定された車速よりも低い時に前記エンジンを停止する第1のHEVモードと、電池残量が予め設定された値より小さくなった時には車速に関係なく前記エンジンを運転し続ける第2のHEVモードとを有し、前記第1のHEVモードと前記第2のHEVモードとで「H」文字の点灯色を切り換えることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車の運転モード表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−66621(P2012−66621A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210965(P2010−210965)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】