説明

バイオフィルムの処理において使用するためのD−アミノ酸

D−アミノ酸を使って、バイオフィルムを治療(処理)または低減する方法、バイオフィルム関連障害を治療する方法、および、バイオフィルム形成を防止する方法が、記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、同時係属中の2010年1月8日出願米国仮出願第61/293、414号、および2010年4月30日出願米国特許仮出願第61/329、930号の優先権を主張する。
【0002】
この出願は、本出願と同日付出願の「バイオフィルム処理のための方法とコーティング組成物」の名称の同時係属中国際特許出願と関連している。
これらの出願の内容は、参照によって組み込まれる。
【0003】
米国政府の権利に関する記述
本発明は、国立衛生研究所認可CA24487、GM058213、GM082137、GM086258、およびGM18568に基づいて米国政府の支援により行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
バイオフィルムは、表面で定着および増殖し、細胞外ポリマー基質により覆われている細胞の共同体である。これらは、増殖が遅く、多くは増殖の定常期にある。これらは、全部ではないにしても、多くは病原体により形成されうる。CDCによれば、米国の全感染症中の65%が、共通の病原体により形成され得るバイオフィルムが原因である。また、バイオフィルムは、飲料水送水系等の工業環境中にも認められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】(なし)
【発明の概要】
【0006】
概要
本発明の態様は、細菌によるバイオフィルム形成を治療(処理)、低減、または阻害する方法を特徴とする。一部の実施形態では、この方法は、有効量のD−アミノ酸を含む組成物と表面を接触させ、それによりバイオフィルム形成を治療、低減、または阻害することを含む。一部の実施形態では、細菌は、グラム陰性またはグラム陽性細菌である。特定の実施形態では、細菌は、桿菌、ブドウ球菌、大腸菌、またはシュードモナス細菌である。
【0007】
他の態様では、本発明は、1つまたは複数のD−アミノ酸を含む工業、治療または、医薬組成物等の組成物を特徴とする。特定の実施形態では、組成物は、D−チロシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−トリプトファン、またはこれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、組成物は、D−チロシン、D−フェニルアラニン、D−プロリン、またはこれらの組み合わせを含む。さらなる実施形態では、組成物は、2つ以上のD−チロシン、D−ロイシン、D−フェニルアラニン、D−メチオニン、D−プロリン、およびD−トリプトファンを含み、またさらなる実施形態では、後者の組成物が、基本的にデタージェントおよび/またはLアミノ酸を含まない。他の実施形態では、組成物は、本明細書記載の、例えば、水処理または配管系等の工業バイオフィルムの治療に使用される。
【0008】
一部の実施形態では、組成物は、基本的にL−アミノ酸を含まない。例えば、組成物は、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%、0.05%、0.025%、0.01%、0.005%未満、0.0025%未満、0.001%未満、またはそれ未満のL−アミノ酸を含む。
【0009】
一部の実施形態では、組成物は、基本的にデタージェントを含まない。例えば、組成物は、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満、0.05%未満、0.025%未満、0.01%未満、0.005%未満、0.0025%未満、0.001%未満、またはそれ未満のデタージェントを含む。
【0010】
別の本開示態様は、治療を必要としている患者のバイオフィルム関連障害の治療方法に関し、この方法は、有効量のD−アミノ酸またはD−アミノ酸の組み合わせを含む組成物を患者に投与し、それによりバイオフィルム関連障害を治療することを含み、ここで、D−アミノ酸は、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、または、D−アミノ酸の組み合わせは、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−tyrosine.utamic acid、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の相乗的な組み合わせである。一部の実施形態では、組成物は、皮膚および粘膜表面およびそれらの組み合わせからなる群より選択される患者の表面に投与される。他の実施形態では、表面は、口腔表面、皮膚表面、尿路表面、腟管表面、または肺表面である。
【0011】
一部の実施形態では、組成物は、基本的に、対応するL−アミノ酸またはD−アミノ酸もしくはD−アミノ酸の組み合わせに関連するL−アミノ酸を含まない。
【0012】
一部の実施形態では、組成物は、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、経口、鼻、または局所的投与、およびこれらの組み合わせにより患者に投与される。
【0013】
一部の実施形態では、患者はヒトである。
【0014】
一部の実施形態では、バイオフィルムの形成が阻害される。他の実施形態では、以前に形成されたバイオフィルムが破壊される。
【0015】
一部の実施形態では、D−アミノ酸は、約0.1nM〜約100μMの濃度で、例えば、0.1nM〜100μMの濃度で投与される。
【0016】
さらなる実施形態では、バイオフィルム関連障害は、肺炎、嚢胞性繊維症、中耳炎、慢性閉塞性肺疾患、および尿路感染ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される。他の実施形態では、バイオフィルム関連障害は、医療機器関連感染症である。さらなる実施形態では、バイオフィルム関連障害は、歯周病、例えば、歯肉炎、歯周炎または口臭である。またさらなる実施形態では、バイオフィルム関連障害は、細菌が原因である。一部の実施形態では、細菌は、グラム陰性またはグラム陽性細菌である。さらに他の実施形態では、細菌は、アクチノバチルス、アシネトバクター、エロモナス、ボルデテラ、ブレビバシラス、ブルセラ、バクテロイデス、バークホルデリア、ボレリア、桿菌、カンピロバクター、キャプノサイトファーガ、カルジオバクテリウム、シトロバクター、クロストリジウム、クラミジア、エイケネラ、エンテロバクター、エシェリキア、エンテンバクタ(Entembacter)、フランシセラ、フソバクテリウム、フラボバクテリウム、ヘモフィルス、ヘリコバクター、キンゲラ、クレブシエラ、レジオネラ、リステリア、レプトスピラ、モラクセラ、モルガネラ、マイコプラズマ、マイコバクテリウム、ナイセリア、パスツレラ、プロテウス、プレボテラ、プレジオモナス、シュードモナス、プロビデンシア、リケッチア、ステノトロフォモナス、ブドウ球菌、連鎖球菌、ストレプトマイセス、サルモネラ、セラチア、赤痢菌、スピリルム、トレポネーマ、ベイヨネラ、ビブリオ、エルシニア、またはザントモナスの各属由来である。
本開示の別の態様は、生物学的関連表面上でのバイオフィルム形成細菌によるバイオフィルム形成を治療、低減、または阻害する方法に関し、この方法は、生物学的表面と有効量のD−アミノ酸またはD−アミノ酸の組み合わせを含む組成物とを接触させ、それによりバイオフィルム形成を治療、低減、または阻害することを含み、ここで、D−アミノ酸は、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、またはD−アミノ酸の組み合わせは、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の相乗的組み合わせである。
【0017】
一部の実施形態では、組成物は、基本的に、対応するL−アミノ酸またはD−アミノ酸もしくはD−アミノ酸の組み合わせに関連するL−アミノ酸を含まない。
【0018】
一部の実施形態では、細菌は、グラム陰性またはグラム陽性細菌である。一部の実施形態では、細菌は、アクチノバチルス、アシネトバクター、エロモナス、ボルデテラ、ブレビバシラス、ブルセラ、バクテロイデス、バークホルデリア、ボレリア、桿菌、カンピロバクター、キャプノサイトファーガ、カルジオバクテリウム、シトロバクター、クロストリジウム、クラミジア、エイケネラ、エンテロバクター、エシェリキア、エンテンバクタ、フランシセラ、フソバクテリウム、フラボバクテリウム、ヘモフィルス、ヘリコバクター、キンゲラ、クレブシエラ、レジオネラ、リステリア、レプトスピラ、モラクセラ、モルガネラ、マイコプラズマ、マイコバクテリウム、ナイセリア、パスツレラ、プロテウス、プレボテラ、プレジオモナス、シュードモナス、プロビデンシア、リケッチア、ステノトロフォモナス、ブドウ球菌、連鎖球菌、ストレプトマイセス、サルモネラ、セラチア、赤痢菌、スピリルム、トレポネーマ、ベイヨネラ、ビブリオ、エルシニア、またはザントモナスの各属由来である。
【0019】
一部の実施形態では、表面は、医療機器、創傷被覆材、コンタクトレンズ、または口腔内装置を含む。他の実施形態では、医療機器は、鉗子、ピンセット、ハサミ、皮膚単鉤、管、針、開創器、歯石除去器、ドリル、のみ、やすり、鋸、カテーテル、整形外科器具、人工心臓弁、人工関節、人工喉頭、ステント、分路、ペースメーカー、手術用ピン、人工呼吸器、ベンチレータ、および内視鏡ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0020】
前述の方法の一部の実施形態では、組成物は、D−チロシンを含む。一部の実施形態では、D−チロシンに加えて、組成物は、1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンをさらに含む。さらに他の実施形態では、D−チロシンに加えて、組成物は、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンをさらに含む。またさらなる実施形態では、D−チロシンに加えて、組成物は、1つまたは複数のD−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−tyrosine.utamic acid、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、およびD−トリプトファンをさらに含む。
【0021】
前述の方法のいずれかの内の一部の実施形態では、方法は、殺生物剤を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、殺生物剤は、抗生物質である。
【0022】
さらに他の実施形態では、組成物は、基本的に、デタージェントを含まない。
【0023】
さらに別の本発明の態様は、バイオフィルム形成を治療、低減、または阻害するのに有効な量のD−アミノ酸またはD−アミノ酸の混合物を含む組成物に関し、ここで、D−アミノ酸は、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、またはD−アミノ酸の組み合わせは、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−tyrosine.utamic acid、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の相乗的組み合わせである。
【0024】
一部の実施形態では、組成物は、基本的に、対応するL−アミノ酸またはD−アミノ酸もしくはD−アミノ酸の組み合わせに関連するL−アミノ酸を含まない。
【0025】
一部の実施形態では、D−アミノ酸は、D−チロシンである。他の実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンをさらに含む。さらなる他の実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンをさらに含む。さらなる実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−tyrosine.utamic acid、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、およびD−トリプトファンをさらに含む。
【0026】
一部の実施形態では、前述の組成物のいずれかが、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン、キシリトール、トリクロサン、または二酸化塩素を含んでもよい。他の実施形態では、前述の組成物のいずれかが、薬学的に許容可能なキャリアを含んでもよい。前述の組成物のいずれかのさらに他の実施形態では、有効量は、バイオフィルム関連障害を治療または防ぐのに有効な量である。一部の実施形態では、有効量は、表面上のバイオフィルムを治療(処理)または防ぐのに有効な量を含む。
【0027】
さらに別の前述の組成物のいずれかの実施形態では、バイオフィルム関連障害は、肺炎、嚢胞性繊維症、中耳炎、慢性閉塞性肺疾患、または尿路感染症である。一部の実施形態では、バイオフィルム関連障害は、医療機器関連感染症である。
【0028】
一部の前述の組成物のいずれかの実施形態では、組成物は、表面への適用に適した薬剤をさらに含む。他の前述の組成物のいずれかの実施形態では、組成物は、洗浄液、包帯、創傷ジェル、または人工組織として処方される。さらなる実施形態では、組成物は、錠剤、丸薬、トローチ、カプセル、エアロゾルスプレー、溶液、懸濁液、ゲル、ペースト、クリーム、またはフォームとして処方される。一部の実施形態では、組成物は、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所的)、経粘膜的、腟および直腸投与用に処方される。
【0029】
本開示の別の態様は、バイオフィルム耐性医療機器に関し、この機器は、体液に接触しやすい表面、および前記表面上にコートしたまたはその中に含浸されたD−アミノ酸またはD−アミノ酸の組み合わせを含み、ここで、D−アミノ酸は、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、またはD−アミノ酸の組み合わせは、バイオフィルム形成を治療、低減または阻害するのに有効な量であり、D−アミノ酸の組み合わせは、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−tyrosine.utamic acid、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の相乗的組み合わせである。
【0030】
一部の実施形態では、D−アミノ酸は、D−チロシンであり、またはD−アミノ酸の組み合わせは、Dチロシンを含む。他の実施形態では、組成物は、1つまたは複数のDプロリンおよびDフェニルアラニンをさらに含む。他の実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンをさらに含む。一部の実施形態では、組成物は、1つまたは複数のD−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−tyrosine.utamic acid、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、およびD−トリプトファンをさらに含む。
【0031】
一部の実施形態では、D−アミノ酸は、徐放製剤として処方される。一部の実施形態では、表面は、基本的に、L−アミノ酸を含まない。さらなる実施形態では、表面は、基本的に、デタージェントを含まない。
【0032】
一部の実施形態では、機器は、1つまたは複数の鉗子、ピンセット、ハサミ、皮膚単鉤、管、針、開創器、歯石除去器、ドリル、のみ、やすり、鋸、カテーテル、整形外科器具、人工心臓弁、人工関節、人工喉頭、ステント、分路、ペースメーカー、手術用ピン、人工呼吸器、ベンチレータおよび内視鏡から選択される。
【0033】
本開示のさらなる態様は、飲用液に関し、0.000001%〜0.1%の範囲の濃度のD−アミノ酸またはD−アミノ酸の組み合わせを含み、ここで、D−アミノ酸は、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、またはD−アミノ酸の組み合わせは、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−tyrosine.utamic acid、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の相乗的組み合わせである。
【0034】
本開示の別の態様は、バイオフィルム形成に耐性を示す組成物に関し、薬学的にまたは化粧用に適切な基剤、および基剤中に分散した有効量のD−アミノ酸またはD−アミノ酸の組み合わせを含み、それによりバイオフィルム形成の治療、低減または阻害を行い、ここで、D−アミノ酸は、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、またはD−アミノ酸の組み合わせは、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の相乗的組み合わせである。
【0035】
一部の実施形態では、基剤は、基本的に、対応するL−アミノ酸またはD−アミノ酸もしくはD−アミノ酸の組み合わせに関連するL−アミノ酸を含まない。
【0036】
一部の実施形態では、基剤は、液体、ゲル、ペースト、または粉末から選択される。さらなる実施形態では、組成物は、シャンプー、入浴剤、ヘアケア製品、石けん、ローション、クリーム、デオドラント剤、スキンケア製品、化粧品用パーソナルケア製品、インティメイト・ハイジーン製品、フットケア製品、光防護剤、日焼け剤、防虫剤、制汗剤、シェービング剤、脱毛剤、香料、デンタルケア、デンタルケア・口腔ケア製剤およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0037】
以下の図は、説明の目的のみで提示されるもであり、制限を加える意図はない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1A及び1Bは、枯草菌株NCIB3610の細胞を示す。この細胞は、12ウエルプレートを使って液体バイオフィルム誘導培地中、22 ℃で3日間(A)または8日間(B)成長させた。図1C及び1Dは、6〜8日間培養液(C)または3日間培養液(D)の馴化培地をC18 Sep Pakカラムに適用後、乾燥・再懸濁したメタノール溶出液(1:100v/v)を添加した培地中で3日間成長させた細胞を示す。ウエルに添加された最終濃度の濃縮因子は、元の馴化培地の容量ベースで1:4希釈であった。図1Eは、その因子がメタノールを使ったステップワイズ溶出によりC−18カラムでさらに精製されたことを除いて、図1Cと同じである。3μlの40%メタノール溶出液を添加した結果を示す。図1Fは、新しい培地への添加の前に、40%メタノール溶出液をプロテイナーゼKビーズと共に2時間インキュベートし、続いて、遠心分離によりビーズを除去したことを除いて、図1Cと同じである。
【図2】図2Aは、3日間のインキュベーション後に、バイオフィルム誘導培地中で新しく播種した培養液にD−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)、L−チロシン(7mM)、またはL−ロイシン(8.5mM)を添加した場合のペリクル形成に対する効果を示す。図2Bは、ペリクル形成の完全な阻害に必要なD−アミノ酸の最小バイオフィルム阻害濃度(Minimal Biofilm Inhibitory Concentration)(MBIC)を示す。図2Cは、アミノ酸無添加(未治療)、D−チロシン(3μM)の添加またはD−チロシン、D−トリプトファン、D−メチオニンおよびD−ロイシン(各2.5nM)の混合物添加に続いて、さらに8時間インキュベーションした3日間培養液を示す。図2Dは、野性型またはylmEおよびracXに対し二重変異体株(IKG55)の8日間培養液由来の馴化培地から得た濃縮Sep Pak C−18カラム溶出液の効果を示す。図2Eは、12ウエルポリスチレンプレートを用い、37℃のグルコース(0.5%)およびNaCl(3%)を含むTSB培地中で、24時間成長させた黄色ブドウ球菌(株SCO1)を示す。さらに、ウエルへのアミノ酸無添加(未治療)、D−チロシン(50μM)添加またはD−アミノ酸混合物(各15nM)添加の条件を付加した。未結合細胞を洗い流した後、ポリスチレンに結合した細胞をクリスタルバイオレットで染色して可視化した。
【図3】図3Aは、細胞壁への放射性のD−チロシンの組み込みを示す。細胞をバイオフィルム誘導培地中で成長させ、14C−D−チロシンまたは14C−L−プロリン(10μCi/ml)と共に37℃で2時間インキュベートした。結果を、細胞(L−プロリンに対しては360、000cpm/ml、D−チロシンに対しては46、000cpm/ml)への全体組み込みのパーセントとして示す。図3Bは、機能性tasA−mCherry翻訳融合体含有細胞(DR−30(Romero et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2010、近刊))からの全蛍光を示す。D−チロシン(6μM)が存在または非存在の場合について、バイオフィルム誘導培地中で定常期になるまで振盪を加えながら細胞を成長させた。図3Cは、蛍光顕微鏡によるTasA−mCherryの細胞会合を示す。表示されているように、D−チロシン(6μM)が存在または非存在(未治療)の場合について、野性型細胞およびtasA−mCherry融合体含有yqxM6(IKG51)変異体細胞をバイオフィルム誘導培地中で定常期(OD=1.5)になるまで振盪を加えながら細胞を成長させ、PBSで洗浄し、蛍光顕微鏡で可視化した。図3Dは、電子顕微鏡によるTasA線維の細胞会合を示す。D−チロシンのない場合(画像1と2)またはD−チロシン(0.1mM)添加の場合(画像3〜6)について、24時間培養液に対し、12時間追加してインキュベートした。実施例に記載のように、TasA繊維を抗TasA抗体を使って免疫金標識により染色し、透過型電子顕微鏡により可視化した。菌体外多糖の非存在によりTasA繊維の画像化が著しく改善されたので、細胞はepsオペロン(Δeps)に対し変異体であった。中実矢印は、繊維バンドルを示し;中空矢印は、個別の繊維を示す。スケールバーは、500nmである。拡大画像2、4および6のスケールバーは100nmである。画像1と2は、細胞に付着した繊維バンドル、画像3、4と6は、個別の繊維および細胞から離脱したバンドルを示し、画像3〜5は、ほとんどまたは全く繊維状物質のない細胞を示す。
【図4】図4Aは、D−チロシン含有または非含有の固体(上段画像)または液体(下段画像)バイオフィルム誘導培地で3日間成長させた細胞を示す。図4Bは、YqxMの簡略アミノ酸配列を示す。下線は、表示した配列変化中でyqxM2およびyqxM6フレームシフト変異が生じたコドンにより特定される残基である。
【図5】図5は、D−トリプトファン(0.5mM)、D−メチオニン(2mM)、L−トリプトファン(5mM)またはL−メチオニン(5mM)を補充した後、株NCIB3610を播種し、3日間インキュベートしたMSgg培地含有ウエルを示す。
【図6】図6は、D−チロシン(3μM)またはD−ロイシン(8.5mM)を補充後、株NCIB3610を播種し、4日間インキュベートした固体MSgg培地を含むプレートを示す。
【図7】図7は、12ウエルプレート中で成長させ、5日間インキュベートしたNCIB3610(野性型)およびylmEおよびracX(IKG155)の二重欠失変異体を示す。
【図8】図8は、D−アミノ酸の細胞成長に与える効果を示す。細胞をD−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)または4つのD−アミノ酸混合物(各2.5nM)を含むMSgg培地中で振盪を加えながら成長させた。
【図9】図9Aは、株FC122(PyqxM−lacZを保持)によるPyqxM−lacZの発現を示し、図9Bは、D−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)または4つのD−アミノ酸混合物(各2.5nM)を含むMSgg培地中で振盪を加えながら成長させた株FC5(PepsA−lacZを保持)によるPepsA−lacZの発現を示す。
【図10】図10は、緑膿菌バイオフィルム形成のD−アミノ酸による阻害を示す。緑膿菌株P014を12ウエルポリスチレンプレートを用い、グリセリン(0.2%)およびカザアミノ酸(20μg/ml)含有M63培地中30℃で48時間成長させた。アミノ酸無添加(未治療)、D−チロシン添加またはD−アミノ酸混合物の条件をウエルに付加した。ポリスチレンに結合した細胞を、未結合細胞を洗い流した後、クリスタルバイオレットで染色して可視化した。ウエルを500μlの1.0%クリスタルバイオレット染料で染色し、2mlの再蒸留水で2回洗い流し、完全に乾燥した。
【図11】図11は、個別D−アミノ酸または4つの混合物と共にTSB培地中で24時間成長させたブドウ球菌バイオフィルムのクリスタルバイオレット染色を示す。
【図12】図12は、個別D−アミノ酸または4つの混合物と共にM63培地中で48時間成長させた緑膿菌のクリスタルバイオレット染色を示す。
【図13】図13は、個別D−アミノ酸または混合物と共にTSB培地中で24時間成長させたブドウ球菌バイオフィルムのクリスタルバイオレット染色を示す。
【図14】図14は、L−アミノ酸と共にTSB培地中で24時間成長させたブドウ球菌バイオフィルムのクリスタルバイオレット染色を示す。
【図15】図15は、浮遊細菌を除去後D−アミノ酸を適用したTSB培地中で形成されたブドウ球菌バイオフィルムの代表的画像である。
【図16】図16は、浮遊細菌を除去後L−アミノ酸を適用したTSB培地中で形成されたブドウ球菌バイオフィルムの代表的画像である。
【図17】図17は、浮遊細菌を除去後TSB培地中で形成されたブドウ球菌バイオフィルム内の細胞の定量化である。細胞をPBS中に再懸濁した。
【図18】図18は、表面上のブドウ球菌バイオフィルム形成に与えるD−aa混合物(1mM)の効果を示す。エポキシ表面をD/L−aa混合物中に浸漬した後、細菌と24時間インキュベートした。
【図19】図19は、表面上のブドウ球菌バイオフィルム形成に与えるD−aa混合物(1mM)の効果を示す。エポキシ表面をD/L−aa混合物中に浸漬した後、細菌と24時間インキュベートした。
【図20】図20は、M63固体培地上の緑膿菌中のバイオフィルム形成に与えるD−aaの効果を示す。コロニーは、室温で4日間成長させた。
【図21】図21は、バイオフィルム誘導条件下における、緑膿菌の6ウエルプレートのボタン中の単一付着細胞のSytox染色を示す。
【図22】図22は、LB培地中でD−アミノ酸(100μM)またはL−アミノ酸(100μM)混合物と共に48時間成長させたプロテウス・ミラビリスのクリスタルバイオレット染色を示す。
【図23】図23は、D−またはL−アミノ酸(1mM)を含む、ショ糖(0.5%)培地を添加したBHI培地で72時間成長させたストレプトコッカス・ミュータンスのクリスタルバイオレット染色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
特に他の定義がなければ、本明細書で使われる全ての技術科学用語は、本発明が属する分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価な方法および材料が、本発明の実施または試験に使用可能であるが、適切な方法および材料は、以下に記載される。本明細書で挙げた全ての出版物、特許出願、特許、および他の参照は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾が生じる場合は、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は、説明のみの目的であり、制限する意図はない。
【0040】
他の本発明の特徴および優位点は、以下の詳細記述、および請求項から明らかとなろう。当業者には明らかなように、本明細書記載の特定の特徴および実施形態は、他の特徴または実施形態のいずれかと組み合わせ可能である。
【0041】
定義
用語の「障害」、「疾患」、および「状態」は、本明細書では、患者状態に対し、同義に使用される。障害は、患者の身体の正常な機能に影響する妨害または撹乱である。疾患は、種々の原因、例えば、特定可能な一群の症状を特徴とする感染、遺伝的欠陥、または環境的ストレスから生じた器官、身体部位、またはシステムの病理学的状態である。障害または疾患は、バイオフィルムが樹立されている細菌の疾患関連増殖を特徴とするバイオフィルム関連障害を指してもよい。
【0042】
用語の「防ぐ(prevent)」「防止(preventing)」および「予防(prevention)」は、本明細書では、本明細書記載の組成物(例えば、予防もしくは治療組成物)の投与、もしくは治療薬の組み合わせ(例えば、予防もしくは治療組成物の組み合わせ)の投与の結果としての、バイオフィルムもしくはバイオフィルム関連障害の発生または発症の阻害またはバイオフィルムもしくは患者の表面または内部のバイオフィルム関連障害の1つまたは複数の徴候もしくは症状の再発、発症、もしくは発生の防止を指す。
【0043】
本明細書で使われる「治療する(treat)」、「治療(treating)」または「治療(treatment)」は、障害もしくはその症状を改善する、または障害もしくはその症状の進行を防ぐもしくは遅らせるのに有効な量、方式(例えば、投与スケジュール)、および/またはモード(例えば、投与経路)で、本明細書記載の組成物を投与することを指す。これは、例えば、バイオフィルムもしくはバイオフィルム関連障害関連パラメータまたはその徴候もしくは症状が、例えば、統計的に有意な程度にまたは当業者に検出可能な程度に、改善することにより証明できる。有効量、方式、またはモードは、表面、適用先、および/または患者に依存して変化し、表面、適用先、および/または患者に合わせることが可能である。バイオフィルムまたはバイオフィルム関連障害またはその徴候もしくは症状の進行を防ぐまたは遅らせることにより、治療により、罹患した表面または罹患したもしくは診断された患者の内部のバイオフィルムまたはバイオフィルム関連障害またはその徴候もしくは症状から生ずる悪化を防ぐまたは遅らせることができる。
【0044】
本発明は、少なくとも一部は、成熟バイオフィルム由来の馴化培地中に存在するD−アミノ酸がバイオフィルム形成を防ぎ、既存のバイオフィルム分解の引き金となるという発見に基づいている。標準的アミノ酸は、相互に鏡像関係にあるL−またはD−アミノ酸と呼ばれる2つの光学的異性体のどちらかの形で存在しうる。L−アミノ酸は、タンパク質中に見出される大部分のアミノ酸であるが、D−アミノ酸は細菌のペプチドグリカン細胞壁の成分である。
【0045】
本明細書記載のD−アミノ酸は、生存および非生存表面上のバイオフィルムに浸透でき、細菌の表面への付着およびバイオフィルムのさらなる発達を阻害でき、このようなバイオフィルムを剥離させることができおよび/または生物学的基質中のバイオフィルム形成微生物のさらなる増殖を阻害することができ、またはこのような微生物を消滅させることができる。D−アミノ酸は、当技術分野で既知であり、既知の技術を使って調製可能である。代表的方法には、例えば、米国特許公開第20090203091号に記載のものが含まれる。D−アミノ酸は、また、市販品として入手可能である(例えば、Sigma Chemicals、St.Louis、Mo.から)。
【0046】
本明細書記載の方法には、いずれのD−アミノ酸も使用可能であり、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、またはD−チロシンが、非制限的に含まれる。D−アミノ酸は、単独でまたは他のD−アミノ酸と組み合わせて使用可能である。代表的方法では、2、3、4、5、6、または7以上のD−アミノ酸が組み合わせて使用される。好ましくは、D−チロシン、D−ロイシン、D−メチオニン、またはD−トリプトファンが、単独または組み合わせて、本明細書記載の方法で使用される。他の好ましい実施形態では、D−チロシン、D−プロリンおよびD−フェニルアラニンが、単独または組み合わせて、本明細書記載の方法で使用される。
【0047】
D−アミノ酸は、0.1nM〜100μM、例えば、1nM〜10μM、5nM〜5μM、または10nM〜1μMの濃度で投与可能である。他の実施形態では、D−アミノ酸は、約0.1nM〜約100μM、例えば、約1nM〜約10μM、約5nM〜約5μM、または約10nM〜約1μMの濃度で投与可能である。
【0048】
バイオフィルム形成の阻害または治療に特に有効であると解った代表的D−アミノ酸組成物には、D−チロシンが含まれる。一部の実施形態では、D−チロシンは、単独で使用され、例えば、1mM未満、または100μM未満、または10μM未満の濃度として、または0.1nM〜100μM、例えば、1nM〜10μM、5nM〜5μM、または10nM〜1μMの濃度で使用できる。
【0049】
他の実施形態では、D−チロシンが1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンと組み合わせて使用される。一部の実施形態では、D−チロシンは、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンと組み合わせて使用される。D−チロシンの1つまたは複数のD−プロリン、D−フェニルアラニン、D−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンとの組み合わせは、相乗的となり得、10μM以下、例えば、約1nM〜約10μM、約5nM〜約5μM、または約10nM〜約1μMの全体D−アミノ酸濃度、または0.1nM〜100μM、例えば、1nM〜10μM、5nM〜5μM、または10nM〜1μMの濃度でバイオフィルム形成を阻害または治療するのに有効である可能性がある。
【0050】
一部の実施形態では、D−アミノ酸の組み合わせは、等モルである。他の実施形態では、D−アミノ酸の組み合わせは、等モルではない。
【0051】
一部の実施形態では、組成物は、基本的に、L−アミノ酸を含まない。例えば、組成物は、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、約0.025%未満、約0.01%未満、約0.005%未満、約0.0025%未満、約0.001%、またはそれ未満のL−アミノ酸を含む。他の実施形態では、組成物は、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満、0.05%未満、0.025%未満、0.01%未満、0.005%未満、0.0025%未満、0.001%未満のL−アミノ酸を含む。好ましい実施形態では、L−アミノ酸のパーセンテージは、対応するD−アミノ酸に対する割合である。例えば、L−アミノ酸およびD−アミノ酸のラセミ混合物は、50%L−アミノ酸を含む。
【0052】
一部の実施形態では、組成物は、基本的に、デタージェントを含まない。例えば、組成物は、約30重量%未満、約20重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約1重量%未満、約0.5重量%未満、約0.25重量%未満、約0.1重量%未満、約0.05重量%未満、約0.025重量%未満、約0.01重量%未満、約0.005重量%未満、約0.0025重量%未満、約0.001重量%未満、またはそれ未満のデタージェントを含む。他の実施形態では、組成物は、全体組成物に対して、約30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.25重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%未満、0.025重量%未満、0.01重量%未満、0.005重量%未満、0.0025重量%未満、0.001重量%未満のデタージェントを含む。デタージェント、例えば、界面活性剤含有製剤に置いて、界面活性剤が活性試薬、例えば、D−アミノ酸と相互作用し、往々にして、試薬の有効性に大きな影響を与える可能性がある。一部の実施形態では、特定の界面活性剤型の存在が有効性を変えるかどうかを判定するための選別として、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および双性イオン界面活性剤に対して試薬の有効性を選別する必要が生じうる。デタージェントの低減または除去が組成物の有効性を増加させおよび/または製剤の合併症を低減し得る。
【0053】
他の実施形態では、組成物は、基本的に、デタージェントおよびL−アミノ酸の両方を含まない。
【0054】
バイオフィルム
ほとんどの細菌は、バイオフィルムとして知られる複合体の基質含有多細胞の共同体を形成できる(O’Toole et al.、Annu.Rev.Microbiol.54:49(2000);Lopez et al.、FEMS Microbiol.Rev.33:152(2009);Karatan et al.、Microbiol.Mol.Biol.Rev.73:310(2009))。バイオフィルム関連細菌は、外界からの刺激、例えば、抗生物質から保護されている(Bryers、Biotechnol.Bioeng.100:1(2008))。しかし、バイオフィルムが熟成するにつれ、栄養素が限定的となり老廃物が蓄積して、バイオフィルム関連細菌は、浮遊実体に戻る方が都合がよくなる(Karatan et al.、Microbiol.Mol.Biol.Rev.73:310(2009))。従って、バイオフィルムは、有限の寿命を有し、最終的な分解を特徴とする。
【0055】
他の単細胞の生物に加えて、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌は、バイオフィルムを産生できる。細菌性バイオフィルムは、コロニーを形成している細胞により産生される細胞外の多糖基質内に包まれた細胞表面付着共同体である。バイオフィルム成長は、一連のプログラムされたステップにより発生し、このステップは、最初の表面への付着、3次元マイクロコロニー形成、およびその後の成熟バイオフィルムの成長を含む。バイオフィルム内の細胞の場所が深くなればなるほど(例えば、細胞がバイオフィルムが付着している固体表面に近いほど、大部分のバイオフィルム基質により遮蔽され、保護される)、細胞はさらに代謝不活性になる。この生理学的変化と勾配の結果、効率的システムが樹立され、それにより微生物が多様な機能的体質を有する細菌性共同体集団が作られる。また、バイオフィルムは、種々の、多様な非細胞性成分で作られ、これらに限定されないが、炭水化物(単体および複合体)、脂質、タンパク質(ポリペプチドを含む)、および糖類およびタンパク質の脂質複合体類(リポ多糖類およびリポタンパク質)を含んでもよい。バイオフィルムは、2つ以上の細菌種(多菌性バイオフィルム)の集積共同体、または1つの特異的バクテリアを優先的に含んでもよい。
【0056】
バイオフィルムは、適した成長条件が発生し、微生物に対し生存を保証する選択優位性を提供できるまで、一定時間の間休眠状態での細菌の存在を可能とする。しかし、この選択は、バイオフィルムがヒト細菌感染の約65%に関与すると認められている点で、ヒトの健康に重大な脅威を提起する可能性がある(Smith、Adv.Drug Deliv.Rev.57:1539−1550(2005);Hall−Stoodley et al.、Nat.Rev.Microbiol.2:95−108(2004))。
【0057】
本明細書記載のように、バイオフィルムは、多種多様の生物学的、医学的、商業的、工業的、およびプロセシング作用に影響を与える可能性もある。
【0058】
バイオフィルム形成細菌
本明細書記載の方法は、バイオフィルムの形成および/または脅威を防ぐ、または遅らせるために使用できる。代表的方法では、バイオフィルムは、バイオフィルム成形細菌により形成される。細菌は、グラム陰性菌種またはグラム陽性細菌性種であってもよい。このような細菌の非制限的例には、以下の属のメンバーが含まれる:アクチノバチルス属のメンバー(例えば、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス)、アシネトバクター属のメンバー(例えば、アシネトバクター・バウマンニ)、エロモナス属のメンバー、ボルデテラ属のメンバー(例えば、百日咳菌、ボルデテラ・ブロンキセプチカ、またはパラ百日咳菌)、ブレビバシラス属のメンバー、ブルセラ属のメンバー、バクテロイデス属のメンバー(例えば、バクテロイデス・フラジリス)、バークホルデリア属のメンバー(例えば、セパシア菌または類鼻疽菌)、ボレリア属のメンバー(例えば、ライム病ボレリア)、桿菌属のメンバー(例えば、炭疽菌または枯草菌)、カンピロバクター属のメンバー(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ)、キャプノサイトファーガ属のメンバー、カルジオバクテリウム属のメンバー(例えば、カーディオバクテリウム・ホミニス)、シトロバクター属のメンバー、クロストリジウム属のメンバー(例えば、破傷風菌またはクロストリジウム・ディフィシル)、クラミジア属のメンバー(例えば、トラコーマクラミジア、肺炎クラミジア、またはオウム病クラミジア)、エイケネラ属のメンバー(例えば、エイケネラ・コローデンス)、エンテロバクター属のメンバー、エシェリキア属のメンバー(例えば、大腸菌)、フランシセラ属のメンバー(例えば、野兎病菌)、フソバクテリウム属のメンバー、フラボバクテリウム属のメンバー、ヘモフィルス属のメンバー(例えば、軟性下疳菌またはインフルエンザ菌)、ヘリコバクター属のメンバー(例えば、ピロリ菌)、キンゲラ属のメンバー(例えば、キンゲラ・キンゲ)、クレブシエラ属のメンバー(例えば、肺炎桿菌)、レジオネラ属のメンバー(例えば、在郷軍人病菌)、リステリア属のメンバー(例えば、リステリア菌)、レプトスピラ属のメンバー、モラクセラ属のメンバー(例えば、カタル球菌)、モルガネラ属のメンバー、マイコプラズマ属のメンバー(例えば、マイコプラズマ・ホミニスまたは肺炎マイコプラズマ)、マイコバクテリウム属のメンバー(例えば、マイコバクテリウム結核またはらい菌)、ナイセリア属のメンバー(例えば、淋菌または髄膜炎菌)、パスツレラ属のメンバー(例えば、パスツレラ・マルトシダ)、プロテウス属のメンバー(例えば、プロテウス・ブルガリスまたはプロテウス・ミラビリス)、プレボテラ属のメンバー、プレジオモナス属のメンバー(例えば、プレジオモナス・シゲロイデス)、シュードモナス属のメンバー(例えば、緑膿菌)、プロビデンシア属のメンバー、リケッチア属のメンバー(例えば、リケッチア・リケッチイまたは発疹熱リケッチア)、ステノトロフォモナス属のメンバー(例えば、ステノトロホモナス・マルトフィリア)、ブドウ球菌属のメンバー(例えば、ブドウ球菌または表皮ブドウ球菌)、連鎖球菌属のメンバー(例えば、緑色連鎖球菌、化膿性連鎖球菌(グループA)、ストレプトコッカス・アガラクチア(グループB)、ストレプトコッカス・ボビス、または肺炎球菌)、ストレプトマイセス属のメンバー(例えば、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス)、サルモネラ属のメンバー(例えば、腸炎菌、チフス菌、またはネズミチフス菌)、セラチア属のメンバー(例えば、霊菌)、赤痢菌属のメンバー、スピリルム属のメンバー(例えば、鼡咬症スピリルム)、トレポネーマ属のメンバー(例えば、梅毒トレポネーマ)、ベイヨネラ属のメンバー、ビブリオ属のメンバー(例えば、コレラ菌、腸炎ビブリオ、またはビブリオ・バルニフィカス)、エルシニア属のメンバー(例えば、エンテロコリチカ菌、ペスト菌、または仮性結核菌)、およびザントモナス属のメンバー(例えば、ザントモナス・マルトフィリア)。
【0059】
枯草菌は、特異的に半固体表面上に複合共同体を構築し、静置培養液の空気/液体界面に厚いペリクルを形成する(Lopez et al.、FEMS Microbiol.Rev.33:152(2009);Aguilar et al.、Curr.Opin.Microbiol.10:638(2007);Vlamakis et al.、Genes Dev.22:945(2008);Branda et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:11621(2001))。枯草菌バイオフィルムは、菌体外多糖およびタンパク質TasAから成るアミロイド線維で構成される細胞外の基質により一緒に保持された長鎖細胞から成る(Branda et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:11621(2001);Branda et al.、Mol.Microbiol.59:1229(2006);Romero et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2010、近刊))。菌体外多糖は、epsA−Oオペロンによりコードされた酵素により産生され(「epsオペロン」)、TasAタンパク質は、yqxM−sipW−tasAオペロン(「yqxMオペロン」)のプロモーター遠位遺伝子によりコードされる(Chu et al.、Mol.Microbiol.59:1216(2006))。
【0060】
バイオフィルム産生細菌、例えば、本明細書記載の種は、本明細書記載のように、インビトロで、または表面上で、生存患者中に見出すことができる。
【0061】
適用/製剤
D−アミノ酸が患者に投与される場合には、本明細書記載のD−アミノ酸は、医薬組成物に組み込むことができる。D−アミノ酸は、薬学的に許容可能な塩、エステルまたはD−アミノ酸の誘導体として医薬組成物に組み込むことができる。典型的には、このような組成物には、D−アミノ酸および薬学的に許容可能なキャリアが含まれる。本明細書で使われる用語の「薬学的に許容可能なキャリア」は、本明細書記載のD−アミノ酸と一緒に患者に投与可能な、その薬理学的活性を破壊しないキャリアを意味する。薬学的に許容可能なキャリアには、例えば、医薬品投与と共生できる溶剤、結合剤、分散媒体、コーティング、防腐剤、着色剤、等張性および吸収遅延剤、等が含まれる。補助的活性化合物も組成物中に組込み可能である。
【0062】
用語の「薬学的に許容可能な塩」には、これらに限定されないが、水溶性および水不溶性の塩、例えば、アセタート、アムソナート(4、4−ジアミノスチルベン−2、2−ジスルホナート)、ベンゼンスルホナート、ベンゾアート、ビカルボナート、ビスルファート、ビタルトラート、ボラート、ブロミド、ブチラート、カルシウムエデタート、カンシラート、カルボナート、クロリド、シトラート、クラブラリアート、ジヒドロクロリド、エデタート、エジシラート、エストラート、エシラート、フマラート、グルセプタート、グルコナート、グルタマート、グリコリルアルサニラート、ヘキサフルオロホスファート、ヘキシルレソルシナート、ヒドラバミン、ヒドロブロミド、ヒドロクロリド、ヒドロキシナフトアート、ヨージド、イソチオナート、ラクタート、ラクトビオナート、ラウラート、マラート、マレアート、マンデラート、メシラート、メチルブロミド、メチルニトラート、メチルスルファート、ムカート、ナプシラート、ニトラート、Nメチルグルカミンアンモニウム塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトアート、オレアート、オキサラート、パルミタート、パモアート(1、1−メテン−ビス−2−ヒドロキシ−3−ナフトアート、エインボナート)、パントテナート、ホスファート/ジホスファート、ピクラート、ポリガラクツロナート、プロピオナート、p−トルエンスルホナート、サリチラート、ステアラート、スブアセタート、スクシナート、スルファート、スルホサリクラート、スラマート、タンナート、タルトラート、テオクラート、トシラート、トリトヨージド、およびバレラート塩が含まれる。
【0063】
また、D−アミノ酸は、エステルまたは誘導体の形であってもよい。適切なエステルの例には、ホルマート、アセタート、プロピオナート、ブチラート、イソブチラート、ペンタノアート、クロトナート、およびベンゾアートが含まれる。一部の薬学的に許容可能な誘導体には、水溶性を高める化学基が含まれる。
【0064】
使用可能な薬学的に許容可能なキャリアの非制限的例には、ポリ(エチレン−co−ビニルアセタート)、PVA、部分水解ポリ(エチレン−co−ビニルアセタート)、ポリ(エチレン−co−ビニルアセタート−co−ビニルアルコール)、架橋ポリ(エチレン−co−ビニルアセタート)、架橋部分水解ポリ(エチレン−co−ビニルアセタート)、架橋ポリ(エチレン−co−ビニルアセタート−co−ビニルアルコール)、ポリ−D、L−乳酸、ポリ−L−乳酸、ポリグリコール酸、PGA、乳酸とグリコール酸の共重合体(PLGA)、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(無水物)、ポリカプロラクトンとポリエチレングリコールの共重合体、ポリ乳酸とポリエチレングリコールの共重合体、ポリエチレングリコール;およびこれらの組み合わせおよび混合物が含まれる。
【0065】
他のキャリアには、例えば、水性ゼラチン、水性タンパク質、高分子キャリア、架橋剤、またはこれらの組み合わせが含まれる。他の例では、キャリアは、基質である。さらに別の例では、キャリアには、水、薬学的に許容可能な緩衝液塩、薬学的に許容可能な緩衝液、薬学的に許容可能な抗酸化剤、アスコルビン酸、1つまたは複数の薬学的に許容可能な低分子量ポリペプチド、約2〜約10アミノ酸残基含有ペプチド、1つまたは複数の薬学的に許容可能なタンパク質、1つまたは複数の薬学的に許容可能なアミノ酸、ヒト必須アミノ酸、1つまたは複数の薬学的に許容可能な炭水化物、1つまたは複数の薬学的に許容可能な炭水化物由来物質、非還元糖、グルコース、ショ糖、ソルビトール、トレハロース、マンニトール、マルトデキストリン、デキストリン、シクロデキストリン、薬学的に許容可能なキレート化剤、EDTA、DTPA、2価金属イオン用キレート化剤、三価の金属イオン用キレート化剤、グルタチオン、薬学的に許容可能な非特異的血清アルブミン、および/またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0066】
D−アミノ酸含有医薬組成物は、当業者には既知であるように、目的投与経路に適合するように処方可能である。投与経路の非制限的例には、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所的)、経粘膜的、腟および直腸投与が含まれる。非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液には、下記成分を含んでもよい:無菌希釈剤、例えば、注射剤用水、食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶剤;抗菌薬、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸またはナトリウムビスルフィット;キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば、アセタート、シトラートまたはホスファートおよび浸透圧調整剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムにより調整可能である。非経口の製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブル注射器または複数用量のバイアルに封入可能である。
【0067】
注射用途に適した医薬組成物には、無菌注射可能溶液または分散液の即時調製用の無菌水溶液(水溶性の場合は)または分散液および無菌の粉末が含まれる。静脈内投与用の適切なキャリアには、生理食塩水、静菌性水、クレモホールEL(登録商標)(BASF、Parsippany、N.J.)または燐酸塩緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。全てのケースで、組成物は、無菌で、容易に注射可能である程度に流動性が必要である。それは、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、微生物、例えば、細菌および真菌、の汚染作用に対し保護されなければならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール、等)を含む溶媒または分散媒、ならびに適切なこれらの混合物でありうる。例えば、レシチン等によるコーティングにより、分散の場合は必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、適した流動度を維持することができる。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール、等によって行うことができる。組成物中に、等張剤、例えば、糖類、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含むことが望ましい。注射可能組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることにより行うことができる(例えば、レミントン薬科学(第21版)(Remington:The Science and Practice of Pharmacy、21st edition)、Lippincott Williams & Wilkins、Gennaro、ed.(2006)参照)。
【0068】
無菌の注射可能溶液は、必要に応じ、上に列挙した成分の1つまたは組み合わせと一緒に、適切な溶媒中の必要量のD−アミノ酸を組み込み、続いて濾過滅菌することにより調製可能である。通常、分散液は、ベースになる分散媒および上記列挙したものからの必要な他の成分を含む無菌溶媒中に活性化合物を組み込むことにより調製できる。無菌注射可能溶液調製用の無菌粉末の場合は、調製方法には、非制限的例として、事前に除菌されたその溶液由来のいずれかの追加の所望成分を加えた有効成分の粉末が得られる真空乾燥および凍結乾燥が含まれる。
【0069】
経口組成物には、通常、不活性の希釈剤または食用キャリアが含まれる。経口治療投与の目的のため、D−アミノ酸は、賦形剤と共に組み入れられ、錠剤、丸薬、トローチ、またはカプセル剤、例えば、ゼラチンカプセル剤の形で使用できる。経口組成物は、また、うがい薬として使用するため液体キャリアを使って調製可能である。薬学的に適合する結合剤、および/またはアジュバント物質を、組成物の一部として含有できる。錠剤、丸薬、カプセル剤、トローチ、等は、次の成分、または類似の性質の化合物のいずれかを含んでもよい:結合剤、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンまたはラクトース、崩壊剤、例えば、アルギン酸、Primogel、またはコーンスターチ;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはSterote;滑剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味料、例えば、ショ糖またはサッカリン;または香味料、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ調味料。
【0070】
吸入による投与に対しては、D−アミノ酸は、適切な噴霧剤、例えば、二酸化炭素等のガスを含む加圧容器またはディスペンサー、または噴霧器からのエアロゾルスプレーの形で送達できる。
【0071】
また、全身性投与は、経粘膜的または経皮的方法により行うことができる。経粘膜または経皮投与に対しては、透過すべきバリアに対し適切な浸透剤が製剤中に含められる。このような浸透剤は、通常、当技術分野で既知であり、これらに限定されないが、例えば、経粘膜的投与に対しては、デタージェント、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、点鼻薬または坐剤の使用により行うことができる。経皮投与に対しては、活性化合物は、通常、当技術分野で知られているように、例えば、軟膏、塗り薬、ゲル、またはクリーム剤に処方される。
【0072】
急性または慢性創傷の治療に対しては、D−アミノ酸は、包帯、洗浄液、ゲル、または人工組織として処方できる。
【0073】
バイオフィルムは、口腔表面(例えば、歯、舌、のどの奥、等)上に形成可能である。これらのバイオフィルムは、このような環境中に存在する天然の微生物叢の日々の細菌活性に関連しうるが、また、口腔関連疾患、例えば、歯周病(例えば、歯肉炎または歯周炎)、口臭、または虫歯にも関係しうる。例えば、一般的歯周病である歯周炎は、歯根表面上にバイオフィルムとして存在する少群のグラム陰性細菌、特に、ジンジバリス菌、バクテロイデス・フォーサイスおよびアクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンスが原因であると考えられており、後者の細菌は、若年性歯周炎の症例で主に見つかっている。歯周病に関与すると考えられる他の細菌には、トレポネーマ・デンティコラ、トレポネマ・ソクランスキー、フソバクテリウム・ヌクレアタム、およびプレボテラ・インターメディア、シドフィルス菌、カゼイ菌、アクチノミセス・ビスコーサス、ストレプトコッカス・ソブリヌス、ストレプトコッカス・サングイス、緑色レンサ球菌、ならびにミュータンス菌が含まれる。このような口腔表面へのD−アミノ酸の適用により、細菌性バイオフィルム形成を阻害または防ぐことができる。通常、このような口腔表面への適用は、通常の使用方法では、全身性の投与の目的のように意図的に飲み込むことをしないで、全ての歯の表面および/または口腔組織に実質的に接触するのに充分な時間の間、口腔中に保持される製品経由でなされる。口腔表面で使用するD−アミノ酸は、ガム、ペースト(例えば、歯磨き粉)として処方でき、これは、その後、患者のこのような表面のバイオフィルムに直接適用できる。ペースト製剤は、研磨材をさらに含んでもよい。D−アミノ酸をゲル製剤または液体製剤中に存在させることも可能である。例えば、D−アミノ酸は、患者の口腔表面のバイオフィルムと直接接触できるうがい薬として処方できる。さらに、D−アミノ酸は、口腔状態の治療または予防のために、ポリマーフィルムまたは小平板として(例えば、徐放製剤として)処方可能である。一実施形態では、本発明のD−アミノ酸は、歯周炎用の補助抗菌療法として使用可能であり、チップの形で歯または歯の間に直接適用できる。本発明の口腔ケア組成物は、治療リンス、特に、口腔リンス;歯磨剤、例えば、練り歯磨き、歯磨ジェル、および歯磨き粉;摩耗防止ゲル;マウススプレー;ムース;フォーム;チューインガム、ロゼンジおよびブレスミント;飲料水添加物;歯科溶液および洗浄液;ならびに備品、例えば、糸ようじおよびテープ、を含む種々の形態であってよい。歯科備品は、歯科糸ようじまたはテープ、チップ、ストリップ、フィルムおよびポリマー繊維を含む含浸した繊維であってもよい。
【0074】
例えば、経口組成物は、組成物の全体重量ベースで、約0.01重量%〜約15重量%、例えば、0.01重量%〜15重量%の1つまたは複数のD−アミノ酸、および経口的に受容可能なアジュバントを含みうる。1つの経口組成物の非制限的例は、10重量%ソルビトール、10重量%グリセリン、15重量%エタノール、15重量%プロピレングリコール、0.5重量%ナトリウムラウリル硫酸塩、0.25重量%ナトリウムメチルコシルタウラート、0.25重量%ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体、0.10重量%ペパーミント香料、0.1〜0.5重量%の1つまたは複数のD−アミノ酸、および48.6重量%の水を含む。
【0075】
経口組成物は、例えば、ゲル、ペースト、クリームまたは水性の製剤(うがい薬)の形態であってもよい。また、経口組成物は、虫歯の形成に逆らう効力を有するフッ化物イオン、例えば、無機のフッ化物塩、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウムもしくはカルシウムフッ化物、または有機フッ化物塩、例えば、アミンフッ化物(OLAFLUORの商標で知られる)を放出する化合物を含むことができる。経口組成物は、当技術分野で「経口的に受容可能なキャリア」として知られる化合物をさらに含むことができる。これらは、本明細書で使用されるように、従来の口腔ケア組成物中の添加物を意味し、これらに限定されないが、下記のものを含む:フッ化物イオンソース、抗結石または抗歯石試薬、緩衝液、研磨剤、例えば、シリカ、漂白剤、例えば、過酸化物ソース、アルカリ金属重炭酸塩、肥厚物質、湿潤剤、水、界面活性剤、二酸化チタニウム、香料系、甘味料、キシリトール、着色料、およびこれらの混合物。このような物質は、当技術分野ではよく知られており、調製される組成物に対する所望の身体的、美容および性能特性に基づいて当業者により容易に選択される。これらのキャリアは、典型的には、経口組成物中の重量で約50%〜約99%、好ましくは約70%〜約98%、さらに好ましくは約90%〜約95%、のレベルで含んでもよい。使用されるキャリアの選択は、基本的に、組成物が口腔中に導入される方法により決定される。好ましい実施形態では、経口組成物は、歯磨剤、例えば、練り歯磨き、歯磨ジェルおよび歯磨き粉の形態である。このような練り歯磨きおよび歯磨ジェルの成分には、通常、1つまたは複数の歯科研磨材(約6%〜約50%)、界面活性剤(約0.5%〜約10%)、糊料(約0.1%〜約5%)、湿潤剤(約10%〜約55%)、香味料(約0.04%〜約2%)、甘味料(約0.1%〜約3%)、着色料(約0.01%〜約0.5%)および水(約2%〜約45%)が含まれる。このような練り歯磨きまたは歯磨ジェルは、また、1つまたは複数の虫歯予防剤(フッ化物イオンとして約0.05%〜約0.3%)および抗結石剤(約0.1%〜約13%)を含んでもよい。歯磨き粉は、実質的に全て非液体成分である。他の好ましい口腔ケア組成物は、うがい薬またはリンス、マウススプレー、歯科溶液および洗浄液を含む液体製品である。このようなうがい薬およびマウススプレーの成分には、典型的には、1つまたは複数の水(約45%〜約95%)、エタノール(約0%〜約25%)、湿潤剤(約0%〜約50%)、界面活性剤(約0.01%〜約7%)、香味料(約0.04%〜約2%)、甘味料(約0.1%〜約3%)、および着色料(約0.001%〜約0.5%)が含まれる。このようなうがい薬およびマウススプレーは、また、1つまたは複数の虫歯予防剤(フッ化物イオンとして約0.05%〜約0.3%)および抗結石剤(約0.1%〜約3%)を含んでもよい。歯科溶液の成分には、通常、1つまたは複数の水(約90%〜約99%)、防腐剤(約0.01%〜約0.5%)、糊料(0%〜約5%)、香味料(約0.04%〜約2%)、甘味料(約0.1%〜約3%)、および界面活性剤(0%〜約5%)が含まれる。
【0076】
また、D−アミノ酸含有医薬組成物は、坐剤(例えば、従来の坐剤基剤、例えば、ココアバターおよび他のグリセリド)または直腸への送達用の停留かん腸剤の形に調製可能である。
【0077】
一部の実施形態では、組成物は、基本的に、デタージェントを含まない。一部の例では、デタージェントは、組成物の毒性の一因となりうる。例えば、組成物は、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.25%未満、約0.1%未満、約0.05%未満、約0.025%未満、約0.01%未満、約0.005%未満、約0.0025%未満、約0.001%未満、またはそれ未満のデタージェント、例えば、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満、0.25%未満、約0.1%未満、0.05%未満、0.025%未満、0.01%未満、0.005%未満、約0.0025%未満、0.001%未満のデタージェントを含む。
【0078】
一部の医薬組成物は、身体からの急速除去に対しD−アミノ酸を保護するキャリア、例えば、インプラントおよびマイクロカプセル化したデリバリーシステムを含む徐放製剤、を加えて調製できる(Tan et al.、Pharm.Res.24:2297−2308、2007に記載のように)。生分解性、生体適合性高分子、例えば、エチレン酢酸ビニール、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用可能である。このような製剤の調製方法は、当業者には明らかである。また、材料は、市場から入手可能である(例えば、Alza Corp.、Mountain View、Calif.から)。リポソーム懸濁液(細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体を有する特定の細胞を標的とするリポソームを含む)も、また、薬学的に許容可能なキャリアとして使用可能である。これらは、例えば、米国特許第4、522、811号に記載のように、当業者に既知の方法に従って調製できる。
【0079】
投与の容易さおよび投与量の均一性のために、ユニット投与剤形で経口または非経口の組成物を処方することは好都合でありうる。本明細書で使われるユニット投与剤形は、治療される患者に対する単位投与量として適した物理的に離散性のユニットを指す;各ユニットは、必要な医薬品キャリアと協調して所望の治療効果を得るように計算された活性化合物の所定量を含む。
【0080】
このような化合物の毒性および治療の有効性は、細胞培養または実験動物を使った標準的医薬手順、例えば、LD50(集団の50%に対する致死用量)およびED50(集団の50%で治療的に有効な用量)測定手順、により決定できる。毒性と治療効果間の用量比率は、治療指数であり、比率LD50/ED50として表現できる。毒性副作用を示す化合物は、使用可能であるが、正常細胞に対し起こりうる損傷を最小にし、それにより、副作用を減らすために、このような化合物を罹患した組織の部位に標的化するデリバリーシステムを設計するように配慮しなければならない。
【0081】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得たデータは、ヒトでの使用に対する投与量の範囲を決めるために使用できる。このような化合物の投与量は、通常、毒性がほとんどまたは完全にないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、採用する剤形および使用する投与経路に応じて、この範囲内で変わりうる。本明細書記載の方法で使用されるいずれの化合物に対しても、治療有効量は、細胞培養アッセイから最初に推定可能である。細胞培養で測定したIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を達成するための用量を動物モデルで決定可能である。このような情報は、ヒトの有用な用量をさらに正確に決定するのに使用可能である。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーを使って測定できる。このような組成物を調製し、試験するための情報は、当技術分野で既知である(例えば、レミントン薬科学(第21版)(Remington:The Science and Practice of Pharmacy、21st edition)、Lippincott Williams & Wilkins、Gennaro、ed.(2006)参照)。
【0082】
一部の例では、約0.0005μM D−アミノ酸〜約50μM D−アミノ酸、例えば、約0.001μM D−アミノ酸〜約25μM D−アミノ酸、約0.002μM D−アミノ酸〜約10μM D−アミノ酸、約0.003μM D−アミノ酸〜約5μM D−アミノ酸、約0.004μM D−アミノ酸〜約1μM D−アミノ酸、約0.005μM D−アミノ酸〜約0.5μM D−アミノ酸、約0.01μM D−アミノ酸〜約0.1μM D−アミノ酸、または約0.02μM D−アミノ酸〜約0.1μMD−アミノ酸が投与される、例えば、0.0005μMD−アミノ酸〜50μM D−アミノ酸、0.001μM D−アミノ酸〜25μM D−アミノ酸、0.002μM D−アミノ酸〜10μM D−アミノ酸、0.003μM D−アミノ酸〜5μM D−アミノ酸、0.004μM D−アミノ酸〜1μM D−アミノ酸、0.005μM D−アミノ酸〜0.5μM D−アミノ酸、0.01μM D−アミノ酸〜0.1μM D−アミノ酸、または0.02μM D−アミノ酸〜0.1μM D−アミノ酸が投与される。好ましくは、D−アミノ酸がナノモル濃度で、例えば、約5nM、約10nMで、約15nMで、約20nMで、約25nMで、約30nM、約50nMで、またはそれ超で投与され、または好ましくは、5nMで、10nMで、15nMで、20nMで、25nMで、30nMで、または50nMで投与される。
【0083】
他の例では、D−アミノ酸の治療有効量または投与量は、約0.001mg/kg体重〜約100mg/kg体重、例えば、約0.01mg/kg体重〜約50mg/kg体重、約0.025mg/kg体重〜約25mg/kg体重、約0.1mg/kg体重〜約20mg/kg体重、約0.25mg/kg体重〜約20mg/kg体重、約0.5mg/kg体重〜約20mg/kg体重、約0.5mg/kg体重〜約10mg/kg体重、約1mg/kg体重〜約10mg/kg体重、または約5mg/kg体重、または好ましくは、0.001mg/kg体重〜100mg/kg体重、例えば、0.01mg/kg体重〜50mg/kg体重、0.025mg/kg体重〜25mg/kg体重、0.1mg/kg体重〜20mg/kg体重、0.25mg/kg体重〜20mg/kg体重、0.5mg/kg体重〜20mg/kg体重、0.5mg/kg体重〜10mg/kg体重、1mg/kg体重〜10mg/kg体重、または5mg/kg体重の範囲でありうる。
【0084】
医師は、特定の因子が、患者を効果的に治療するのに必要な投与量に影響する可能性があることを理解している。これらに限定されないが、この因子には、疾患または障害の重症度、前治療、総体的な健康および/または患者の年齢、および他の現在の疾患が含まれる。さらに、D−アミノ酸の治療有効量での患者の治療は、単回治療または一連の治療を含んでもよい。一例では、患者は、約0.06mg〜約120mgの範囲で、約1〜10週の間、あるいは2〜8週の間、約3〜7週の間、または約4、5、もしくは6週の間、毎週1回、または好ましくは0.06mg〜120mgの範囲で、1〜10の週の間、あるいは2〜8週の間、3〜7週の間、または4、5、もしくは6週の間、毎週1回D−アミノ酸で治療される。また、治療に使用されるD−アミノ酸の効果的投与量は、特定の治療コースの間で、増加または減少可能であることも理解されよう。
【0085】
医薬組成物は、投与インストラクションと一緒に、容器、パック、またはディスペンサー中に入れることができる。当業者なら、本明細書記載の医薬組成物は単回用量バイアルとして処方できることを理解するであろう。
【0086】
本明細書記載の治療有効量のD−アミノ酸含有医薬組成物での患者の治療は、単回治療、継続的治療、または複数の用量に分けた一連の治療であってもよい。治療には、単回投与、継続投与、または1つまたは複数の年次にわたる定期的投与を含むことができる。一部の症例で、常習的な長期投与が必要な場合がある。通常、各製剤は、本明細書記載のバイオフィルム関連障害または状態の有害作用または症状の阻害または低減または除去に充分な量を投与される。
【0087】
D−アミノ酸は、パーソナルケア製品、例えば、シャンプー、入浴剤、ヘアケア製品、液体および固体石けん(合成界面活性剤および飽和および/または不飽和脂肪酸の塩ベースの)、ローションおよびクリーム剤、デオドラント剤、その他の水性のまたはアルコール溶液、例えば、皮膚用クレンジング溶液、モイストクリーニングクロス、オイルまたは粉末に入れる抗バイオフィルム活性物質として適する。挫瘡中で発生する支配的微生物であるアクネ菌は、バイオフィルム中に居住可能である。従って、D−アミノ酸は、挫瘡管理に使うパーソナルケア組成物として特に適切である。従って、本発明は、また、1つまたは複数の本明細書記載のD−アミノ酸および化粧用として許容できるキャリアまたはアジュバントを含むパーソナルケア製品に関する。
【0088】
また、本明細書記載のD−アミノ酸は、各種のパーソナルケアに使われる製品に抗バイオフィルム特性を付与するのに適する。パーソナルケア製品は、製品全体重量ベースで約0.01%〜約15重量%、例えば、約0.1重量%〜約10重量%、または0.01重量%〜15重量%、例えば、0.1重量%〜10重量%の1つまたは複数のD−アミノ酸、および化粧品として許容できるアジュバントを含んでもよい。パーソナルケア製品の形態に応じて、このような製品は、1つまたは複数のD−アミノ酸に加えて、さらなる成分、例えば、金属イオン封鎖剤、着色剤、香油、肥厚または凝固剤(稠度調節剤)、皮膚軟化薬、UV吸収剤、皮膚保護剤、抗酸化剤、機械的性質を改善する添加物、例えば、ジカルボン酸および/またはC14〜C22脂肪酸のアルミニウム、亜鉛、カルシウムまたはマグネシウム塩、および、任意選択の防腐剤を含んでもよい。
【0089】
一実施形態では、D−アミノ酸含有抗挫瘡組成物は、少なくとも1つの抗菌剤を更に含むことができる。好ましくは、抗菌剤は抗生物質である。抗生物質は、トブラマイシン、クリンダマイシン、シプロフロキサシン、テトラサイクリン、リファンピン、トリクロサン、オキスフロキサシン、マクロライド、ペニシリン、セファロスポリン、アモキシシリン/clavulante、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、アモキシシリン/スルバクタム、メトロニダゾール、フルオロキノロン、キノロン、ケトライド、またはアミノグリコシドからなる群より選択できる。本発明は、挫瘡を管理する方法を提供し、挫瘡に苦しんでいる患者に有効量の1つまたは複数のD−アミノ酸含有抗挫瘡組成物を投与することを含み、抗挫瘡組成物中のD−アミノ酸は、バイオフィルムの防止、低減、阻害または除去に充分な量が含まれる。
【0090】
パーソナルケア製品は、油中水型または水中油型乳剤、アルコールまたはアルコール含有製品、イオン性または非イオン性両親媒性脂質の小胞性分散液、ゲル、固体スティックまたはエアロゾル製品の形であってもよい。油中水型または水中油型乳剤として、化粧用として許容可能なアジュバントは、好ましくは、約5%〜約50%のオイル相、約5%〜約20%の乳化剤および約30%〜90%の水、または5%〜50%のオイル相、5%〜20%の乳化剤および30%〜90%の水を含む。オイル相は、化粧品に適した任意のオイル、例えば、1つまたは複数の炭化水素オイル、ろう、天然オイル、シリコーンオイル、脂肪酸エステルまたは脂肪酸アルコールを含んでもよい。好ましいモノまたはポリオールは、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリンおよびソルビトールである。
【0091】
本明細書記載の化粧品処方は、種々の分野で使用できる。このような製品には、例えば、非制限的に、下記が含まれる:
−スキンケア製品、例えば、錠剤型または液体石けんの形の皮膚洗浄およびクレンジング剤、合成デタージェントまたは洗浄ペースト、
−入浴剤、例えば、液体(泡沫浴、乳剤、シャワー剤)または固体浴剤、例えば、入浴用固形香料およびバスソルト;
−スキンケア製品、例えば、皮膚乳剤、マルチエマルジョンまたはスキンオイル;
−化粧用パーソナルケア製品、例えば、デイクリームまたは粉末クリーム、フェースパウダー(ルーズまたは圧密)、ほお紅またはクリーム化粧品、アイケア製品、例えば、アイシャドウ製品、マスカラ、アイライナー、アイクリームまたはアイフィックスクリーム;リップケア製品、例えば、口紅、リップグロス、リップペンシル、ネイルケア製品、例えば、マニキュア、ネイルリムーバー、ネイルハードナーまたはキューティクルリムーバーの形のフェイシャル化粧品;
−インティメイト・ハイジーン製品、例えば、インティメイトウオッシングローションまたはインティメイトスプレー;
−フットケア製品、例えば、フットバス、フットパウダー、フットクリームまたはフットケアバルサム、特殊デオドラント剤および制汗剤または角質除去剤;
−光防御剤、例えば、サンミルク、ローション、クリームまたはオイル、サンブロックまたはトロピカル日焼け防止剤、日焼け前製剤または日焼け後製剤;
−日焼け剤、例えば、セルフタンニングクリーム;
−脱色剤、例えば、皮膚漂白剤または皮膚美白剤;
−防虫剤、例えば、防虫オイル、ローション、スプレーまたはスティック;
−デオドラント剤、例えば、デオドラントスプレー、ポンプ式スプレー、デオドラントゲル、スティックまたはロールオン;
−制汗剤、例えば、制汗剤スティック、クリームまたはロールオン;
−ブレミッシュドスキンのクレンジングおよびケア用製品、例えば、合成デタージェント(固体または液体)、ピーリングもしくはこすり落とし剤またはピーリングマスク剤;
−化学的脱毛剤(脱毛術)、例えば、脱毛パウダー、液体脱毛剤、クリームまたはペーストタイプ脱毛剤、ゲル型またはエアロゾルフォーム型脱毛剤;
−シェービング剤、例えば、シェービングソープ、発泡シェービングクリーム、非発泡シェービングクリーム、フォームおよびゲル、ドライシェービング用プレシェイブ用品、アフターシェイブズまたはアフターシェイブローション;
−香料剤、例えば、フレグランス(オーデコロン、オードトワレ、オードパフューム、パルファン・ド・トワレ、パフューム)、香油またはパフュームクリーム;
−デンタルケア、入れ歯ケアおよび口腔ケア製品、例えば、練り歯磨き、ゲル練り歯磨き、歯磨き粉、うがい薬濃縮剤、抗プラークうがい薬、入れ歯洗浄剤または入れ歯固定剤;
−化粧用ヘアトリートメント製品、例えば、シャンプーおよびコンディショナーの形の洗髪剤、ヘアケア製品、例えば、プレトリートメント製品、ヘアトニック、スタイリングクリーム、スタイリングジェル、ポマード、ヘアリンス、トリートメントパック、ヘアーインテンシブトリートメント、髪型固定剤、例えば、パーマ用毛髪ウエーブ剤(ホットパーマ、マイルドパーマ、コールドパーマ)、縮毛矯正剤、液体セッティング剤、ヘアフォーム、ヘアスプレー、漂白剤、例えば、過酸化水素溶液、ライトニングシャンプー、漂白クリーム、漂白パウダー、漂白ペーストまたはオイル、自己酸化染料、または天然ヘア着色剤、例えば、シコウカまたはカモミール含有、一時的、半永久的または永久的ヘア着色剤。
【0092】
下記は、調製可能な種々の、1つまたは複数のD−アミノ酸含有製剤の非制限的例を示す。1つまたは複数のD−アミノ酸を種々の濃度で容易に組み込むことが可能な多種多様な類似の製品が当技術分野で既知である。
【0093】
代表的石けんは、例えば、下記の組成を有する:0.01〜5重量%の1つまたは複数のD−アミノ酸、0.3〜1重量%の二酸化チタン、1〜10重量%のステアリン酸、例えば、獣脂脂肪酸またはココナッツ脂肪酸、またはグリセリンのナトリウム塩の石けん基剤添加物100重量%。
【0094】
代表的シャンプーは、例えば、下記の組成を有する:0.01〜5重量%の1つまたは複数のD−アミノ酸、12.0重量%のラウレス−2硫酸ナトリウム、4.0重量%コカミドプロピルベタイン、3.0重量%のNaClおよび水の添加物100重量%。
【0095】
代表的デオドラントは、例えば、下記の組成を有する:0.01〜5重量%の1つまたは複数のD−アミノ酸、60重量%のエタノール、0.3重量%の香油、および水添加物100重量%。
【0096】
一部の例では、D−アミノ酸医薬組成物を投与して、生物学的関連表面または基質上のバイオフィルム形成を防ぐまたは低減させる。非限定的例として、これらの表面には、気道、肺、口腔、消化管および腟管、耳の内部または目の表面および尿路の上皮または粘膜表面が含まれる。例えば、バイオフィルムは、肺(例えば、肺炎、嚢胞性繊維症、またはCOPD患者の肺)の表面、例えば、肺の上皮細胞の表面に悪影響を与える。
【0097】
特定の実施形態では、表面は、生物学的関連表面であり、体液、例えば、患者の液体成分、例えば、血液、血清、痰、涙腺分泌物、精液、尿、腟分泌物等に接触しがちな表面、および組織試料、等である。生物学的関連表面は、医療機器、装置、またはインプラントの構成要素であってもよい。非制限的例には、クランプ、鉗子、ハサミ、皮膚単鉤、管(例えば、気管内または消化器系チューブ)、ニードル、開創器、歯石除去器、ドリル、のみ、やすり、鋸、留置カテーテルを含むカテーテル(例えば、泌尿器カテーテル、血管カテーテル、腹膜透析カテーテル、中心静脈カテーテル)、カテーテル部品(例えば、ニードル、ルアーロックコネクター、無針コネクタ)、矯正装置、人工心臓弁、人工関節、人工喉頭、ステント、シャント、ペースメーカー、手術用ピン、人工呼吸器、ベンチレータ、および内視鏡が含まれる。本発明は、長期移植に適合した医療機器の表面上のバイオフィルム蓄積のリスクを実質的に減らす目的に特に適しており、医療機器が約30日〜約12ヶ月以上の比較的長期間のあいだ、また、このようなバイオフィルムの痂皮形成および閉塞に起因する装置の早期故障の可能性に対し、移植したまま保持することが意図されている。しかし、このような痂皮形成は、例えば、30日以下のより短期間後の医療機器で発生する可能性があり、しかも、長期移植装置でも同様であると考えられている。例えば、特定の実施形態では、長期間利用される医療機器は、24時間以上の長期間、例えば、1週間、移植されている可能性がある。
【0098】
特定の例では、患者は、医療機器、カテーテル、ステント、人工器官、等の移植/挿入、または創傷被覆材の適用の前、その間、またはその後に、D−アミノ酸の投与を受けることができる。一部の例では、創傷被覆材には、抗菌剤、例えば、銀が含まれる。移植前またはその後の治療は、移植の直前もしくは直後または移植の数時間前もしくは後に行ってもよく、また、熟練した医師が適切と見なす回数で、1回でも複数回行ってもよい。
【0099】
D−アミノ酸は、任意の既知の手段により、例えば、治療的量のD−アミノ酸を、表面に被覆する、コーティングする、接触させる、近づける、充填する、または負荷することにより、表面に適用できる。具体的な例では、D−アミノ酸は、表面にポリマー/D−アミノ酸フィルムをスプレーすることにより、表面をポリマー/D−アミノ酸溶液に浸漬することにより、または他の共有結合または非共有結合手法により直接表面に貼り付けられる。他の例では、表面は、D−アミノ酸を吸収する物質(例えば、ヒドロゲル)で被覆される。
【0100】
組成物は、コーティングまたはフィルムであってもよい。フィルムまたはコーティングの一部として適用する場合は、本明細書記載の1つまたは複数のD−アミノ酸は、結合剤をも含む組成物の一部としてもよい。結合剤は、本抗バイオフィルムと適合する任意のポリマーまたはオリゴマーであってよい。結合剤は、抗バイオフィルム組成物調製の前のポリマーまたはオリゴマーの形であってもよく、または、基質への適用後を含む調製の間または後の重合により形成されてもよい。特定の適用、例えば、特定のコーティング適用では、適用後の抗バイオフィルム組成物オリゴマーまたはポリマーを架橋させることが望ましいであろう。本明細書で使われる用語の「結合剤」には、材料、例えば、医薬品およびパーソナルケア産業で商業的に使用されているグリコール、オイル、ろうおよび界面活性剤が含まれる。一般に安全と認められる(Generally Regarded as Safe(G.R.A.S.))材料が好ましい。
【0101】
組成物が、例えば、カレンダー仕上げまたは共押し出しを含む接着剤の使用または溶融塗布により表面に適用される熱可塑性フィルムの場合は、結合剤は、フィルム調製に使用される熱可塑性ポリマー基質である。組成物がコーティングの場合には、組成物は、液体溶液または懸濁液、ペースト、ゲル、オイルとして適用でき、またはコーティング組成物は、固体、例えば、粉末コーティングでもよく、これは、その後、熱、UV光他の方法により硬化される。
【0102】
本発明の組成物は、コーティングまたはフィルムでもよいので、結合剤は、コーティング調製またはフィルム調製に使用される任意のポリマーを含むことができる。例えば、結合剤は、熱硬化、熱可塑、エラストマー、元々架橋しているまたは架橋させたポリマーである。熱硬化、熱可塑、エラストマー、元々架橋しているまたは架橋させたポリマーには、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリラート、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアセタート、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ハロゲン化ビニルポリマー、例えば、PVC、天然および合成ゴム、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、不飽和ポリアミド、ポリイミド、シリコン含有およびカルバマートポリマー、フッ素化ポリマー、置換アクリルエステル由来、例えば、エポキシアクリラート、ウレタンアクリラートまたはポリエステルアクリラート由来架橋性アクリル樹脂が含まれる。また、ポリマーは、前出材料の混合物でも、共重合体でもよい。
【0103】
生体適合性コーティングポリマー、例えば、ポリ[−アルコキシアルカノアート−co−3−ヒドロキシアルケノアート](PHAE)ポリエステル(Geiger et.al.Polymer Bulletin 52、65−70(2004))もまた、本発明の結合剤として使用可能である。アルキド樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン含有ポリマー、ポリアクリラート、ポリアクリルアミド、フッ素化ポリマーおよびビニルアセタートポリマー、ビニルアルコールおよびビニルアミンは、本発明に有用な通常のコーティング結合剤の非制限的例である。他の既知のコーティング結合剤は、本開示の一部である。
【0104】
コーティングは、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、イソシアナート、イソシアヌラート、ポリイソシアナート、エポキシ樹脂、無水物、ポリ酸およびアミンで架橋可能であり、アクセラレータを加えても加えなくてもよい。本明細書記載の組成物は、生物蓄積に好適な条件に暴露される表面に適用される、例えば、コーティングであってもよい。前記コーティング中の本明細書記載の1つまたは複数のD−アミノ酸の存在が、表面への生物の付着を防ぐ。
【0105】
コーティングは溶媒ベースでも水性でもよい。水性コーティングは、通常、より環境に優しいと考えられる。一部の例では、コーティングは、本明細書記載の1つまたは複数のD−アミノ酸、および結合剤または水ベースコーティングもしくはペンキの水性分散液であってもよい。例えば、コーティングは、1つまたは複数のD−アミノ酸およびアクリル、メタクリル酸またはアクリルアミドポリマーもしくはコポリマーまたはポリ[−アルコキシアルカノアート−co−3−ヒドロキシアルケノアート]ポリエステルの水性分散液を含んでもよい。
【0106】
一部の例では、コーティング組成物は、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、へら引き、または刷毛、ローラーまたは他の塗布器を含む任意の従来の手段により表面に塗装できる。乾燥または硬化時間を考慮して適用してもよい。
【0107】
コーティングまたはフィルムの厚さは、用途に応じて変わり得るが、当業者ならわずかな試験の後に容易に決定できる。
【0108】
一部の例では、本明細書記載の組成物は、保護用のラミネートフィルムの形であってもよい。このようなフィルムは、熱硬化、熱可塑、エラストマー、または架橋ポリマーを含んでもよい。これらに限定されないが、このようなポリマーの例には、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリラート、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアセタート、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ハロゲン化ビニルポリマー、例えば、PVC、天然および合成ゴム、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和のポリエステル、不飽和のポリアミド、ポリイミド、フッ素化ポリマー、シリコン含有およびカルバマートポリマーが含まれる。ポリマーは、また、前述の材料の混合物および共重合体であってもよい。
【0109】
本明細書記載の組成物がプリフォームフィルムである場合は、例えば、接着剤の使用、または表面上への共押し出しにより表面に適用可能である。また、本発明のエステルを採用するのが好都合でもあり得るシーラントまたはコーキングの使用が必要と思われる締め具を介して機械的に貼り付けることもできる。プラスチックフィルムは、また、カレンダー仕上げ、溶融塗布およびシュリンクラップを含む熱を使った適用が可能である。
【0110】
本明細書記載のD−アミノ酸の広範囲の適用を考えると、D−アミノ酸含有組成物は、他の添加物、例えば、抗酸化剤、UV吸収剤、ヒンダードアミン、ホスフィットまたはホスホニット、ベンゾフラン−2−オン、チオ相乗剤、ポリアミド安定剤、金属ステアラート、核形成剤、充填剤、強化剤、潤滑剤、乳化剤、染料、顔料、分散剤、他の光学的光沢剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、等、例えば、下記に列挙した材料、またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0111】
プラスチックから調製される医療機器は、成形中に、例えば、成形プロセスの間にD−アミノ酸を組み入れることができる。本方法により利益を得るプラスチックベース医療機器には、これらに限定されないが、医薬の分野で使われるプラスチック製品、例えば、包帯材料、注射器、カテーテル、等、いわゆる「医療機器」、手袋およびマットレスが含まれる。このようなプラスチックスの代表例は、ポリプロピレン、ポリエチレン、PVC、POM、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリルおよびメタクリル酸、ポリブタジエン、熱可塑性ポリオレフィン、アイオノマー、不飽和ポリエステルならびにABS、SANおよびPC/ABSを含むポリマー樹脂の混合物である。
【0112】
D−アミノ酸、特に低濃度のものは、摂取の可能性のある用途、例えば、バイオフィルム発生の可能性のある再利用可能水ボトルまたは飲用容器であっても安全に使用可能である。このような水輸送機器の表面は、1つまたは複数の本明細書記載のD−アミノ酸を含む製剤で洗浄可能であり、または低レベルの1つまたは複数のD−アミノ酸を、導管を通過する水の中に導入可能である。例えば、約0.0001重量%未満または約1重量%までの、典型的には、約0.1重量%未満の1つまたは複数のD−アミノ酸をこのような水中に導入できる。本D−アミノ酸の高活性を考慮すると、非常に少ない量で多くの環境中で有効であり、約0.000001%〜約0.1%、例えば、約0.000001%〜約0.01%、または約0.000001%〜約0.001%、または0.000001%〜0.1%、0.000001%〜0.01%、または0.000001%〜0.001%の濃度が、このような用途に使用可能である。
【0113】
コーティングまたはフィルムで使用される場合は、少量の1つまたは複数のD−アミノ酸が、短期の使用、例えば、単回使用、季節的または廃棄用品、特にスプリント、カテーテル、管、歯科設備等、ヒトとの接触の可能性のある用途に提示可能である。一般的に、重量ベースで、約0.001%未満から約5%まで、例えば、約3%までもしくは約2%まで、または好ましくは0.001%未満から5%まで、3%までもしくは2%までの1つまたは複数のアミノ酸をこのようなコーティングまたはフィルムに使用可能である。本D−アミノ酸の高活性を考慮すると、非常に少ない量で多くの環境中で有効であり、重量ベースで、約0.0001%〜約1%、例えば、約0.0001%〜約0.5%、または約0.0001%〜約0.01%、または好ましくは、0.0001%〜1%、0.0001%〜0.5%、もしくは0.0001%〜0.01%の濃度の1つまたは複数のD−アミノ酸がコーティング用途で使用可能である。
【0114】
成形プラスチック製品への組込みに対しては、約0.00001%〜約10%の1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能で、例えば、重量ベースで、約0.0001%〜約3%、例えば、約0.001%から約1%までの1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能であり、または好ましくは、0.00001%〜10%、0.0001%〜3%、0.001%から1%までの1つまたは複数のD−アミノ酸が使用可能である。すでに成形済みの製品または線維の表面中にD−アミノ酸が含浸された状況では、表面に存在するD−アミノ酸の実際の量は、基質材料、含浸組成物の配合、および含浸ステップの間に使われた時間と温度に依存すると思われる。本D−アミノ酸の高活性を考慮すると、非常に少ない量で多くの環境中で有効であり、重量ベースで、約0.0001%〜約1%、例えば、約0.0001%〜約0.1%、もしくは約0.0001%〜約0.01%の濃度がプラスチックスに使用可能であり、または好ましくは、0.0001%〜1%、0.0001%〜0.1%、もしくは、0.0001%〜0.01%の1つまたは複数のアミノ酸が使用可能である。
【0115】
D−アミノ酸を使った治療によるバイオフィルムの阻害または減少は、当技術分野で充分に確立された技術を使って測定できる。これらの技術は、吸着生物の発色を測定し、顕微鏡法を使ってインビボで微生物を観察することにより細菌の付着を評価すること、または毒性試薬に応答したバイオフィルム中の細胞死をモニターすることを可能にする。治療後、バイオフィルムは、バイオフィルムに覆われている表面積、厚さ、および一貫性(例えば、バイオフィルムの健全性)を減らすことができる。バイオフィルムアッセイの非制限的例には、マイクロタイタープレートバイオフィルムアッセイ、蛍光ベースバイオフィルムアッセイ、Walker et al.、Infect.Immun.73:3693-3701(2005)による静的バイオフィルムアッセイ、空気液体界面アッセイ、コロニーバイオフィルムアッセイ、およびKadouri Drip−Fedバイオフィルムアッセイ(Merritt et al.、(2005)微生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Microbiology)1.B.1.1−1.B.1.17)が含まれる。このようなアッセイは、バイオフィルム形成の破壊または阻害に対するD−アミノ酸の活性の測定に使用できる(Lew et al.、(2000)Curr.Med.Chem.7(6):663−72;Werner et al.、(2006)Brief Funct.Genomic Proteomic 5(1):32−6)。
【0116】
他の例では、治療は、細菌の増殖を測定することによりアッセイ可能であり、および/または生物試料中のバイオフィルム形成細菌の密度を測定することにより定量可能である。生物試料の非制限的例には、血液、血清、痰、涙腺分泌物、精液、尿、腟分泌物、および組織試料が含まれる。細菌の増殖の減少は、また、胸部X線または肺の機能試験(PFT)(例えば、肺活量測定または強制呼気量(FEV1))により測定可能である。
【0117】
他の状況では、バイオフィルム産生細菌の存在または増殖は、例えば、上述の生物試料中のバイオフィルム産生細菌の抗原の存在を検出することにより測定可能である。例えば、肺炎球菌成分に対する抗体は、例えば、生物試料中の連鎖球菌抗原の存在をアッセイすることにより、バイオフィルム関連状態または障害に苦しんでいる患者のコロニー形成/感染をアッセイするために使用できる。このような抗体は、当技術分野で充分に確立された方法に従って産生することができ、または、市販品として入手することができる(例えば、Abcam、Cambridge、MA;Cell Sciences Canton、MA;Novus Biologicals、Littleton、CO;またはGeneTex、San Antonio、TX、から)。
【0118】
D−アミノ酸によるバイオフィルム関連障害の治療のための適切な治療薬は、当技術分野で充分に確立された技術を使って決定できる。例えば、哺乳動物を使った動物モデルを使用して、D−アミノ酸を使った治療の有効性を評価可能である。非制限的例には、ポリマービーズ、例えば、D−アミノ酸を加えたポリメチルメタクリラート(PMMA)ビーズをラットに移植し、バイオフィルムを防ぐ能力を評価することが含まれる。ラット中のポリメチルメタクリラート(PMMA)ビーズおよびウサギ中のカテーテルは、黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成のための動物モデルとして使用されている。Anguita−Alonzo et al.、抗微生物剤および化学療法(ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY)、July 2007、p.2594-2596、およびBeenken et al.JOURNAL OF BACTERIOLOGY、July 2004、p.4665-4684を参照。これらの文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0119】
併用療法
ごく一般的には、バイオフィルムは、生存または非生存微生物、特に、細菌の集合体であり、細胞外高分子物質(EPS基質)、例えば、多糖類の形のそれらの代謝物と一緒に、生存および非生存表面に付着している、と理解されている。通常、浮遊細胞に対して顕著な増殖阻害または致死作用を示す抗バイオフィルム物質の活性は、例えば、生物学的基質中への活性物質の不十分な浸透のために、バイオフィルム中に組み込まれた微生物に関しては大きく低減する可能性がある。
【0120】
一部の例では、D−アミノ酸は、単独でまたは第2の試薬、例えば、殺生物剤、抗生物質、または抗菌剤と組み合わせて投与し、バイオフィルムを治療する、またはバイオフィルムの形成を防ぐことができる。抗生物質は、D−アミノ酸と順次に、または同時に投与してもよい。例えば、いずれかの本明細書記載の組成物は、1つまたは複数のD−アミノ酸および1つまたは複数の第2の試薬を含むように処方できる。
【0121】
抗生物質は、細菌の増殖を阻害する、または細菌を死滅させ得る当業者に既知の任意の化合物でよい。有用な抗生物質の非制限的例には、リンコサミド(クリンダマイシン);クロラムフェニコール;テトラサイクリン(例えば、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン);アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、アミカシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ネオマイシン);ベータ−ラクタム(例えば、ペニシリン、セファロスポリン、イミペネム、アズトレオナム);糖ペプチド抗生物質(例えば、バンコマイシン);ポリペプチド抗生物質(例えば、バシトラシン);マクロライド(エリスロマイシン)、アンフォテリシン;スルホンアミド(例えば、スルファニルアミド、スルファメトキサゾール、スルファセタミド、スルファジアジン、スルフイソキサゾール、スルファシチン、スルファドキシン、マフェナイド、p‐アミノ安息香酸、トリメトプリム−スルファメトキサゾール);メテナミン;ニトロフラントイン;フェナゾピリジン;トリメトプリム;リファンピシン;メトロニダゾール;セファゾリン;リンコマイシン;スペクチノマイシン;ムピロシン;キノロン(例えば、ナリジクス酸、シノキサシン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、ペルフロキサシン、オフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、レボフロキサシン);ノボビオシン;ポリミキシン;グラミシジン;および抗シュードモナス(例えば、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、ピペラシリン)またはそれらのいずれかの塩もしくは変異体が含まれる。このような抗生物質は、市販品として、例えば、Daiichi Sankyo、Inc.(Parsipanny、NJ)、Merck(Whitehouse Station、NJ)、Pfizer(New York、NY)、Glaxo Smith Kline(Research Triangle Park、NC)、Johnson & Johnson(New Brunswick、NJ)、AstraZeneca(Wilmington、DE)、Novartis(East Hanover、NJ)、およびSanofi−Aventis(Bridgewater、NJ)から入手可能である。使用される抗生物質は、細菌感染のタイプに依存する。
【0122】
追加の既知の殺生物剤には、ビグアナイド、クロルヘキシジン、トリクロサン、二酸化塩素、等が含まれる。
【0123】
抗菌剤の有用な例には、これらに限定されないが、次のものが含まれる:ピリチオン、特に、亜鉛錯体(ZPT);Octopirox(登録商標);ジメチルジメチロールヒダントイン(Glydant(登録商標));メチルクロロイソチアゾリノン/メチルイソチアゾリノン(Kathon CG(登録商標));ナトリウムスルフィット;ナトリウムビスルフィット;イミダゾリジニル尿素(Germall 115(登録商標))、ジアゾリジニル尿素(Germaill II(登録商標));ベンジルアルコール;2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1、3−ジオール(Bronopol(登録商標));ホルマリン(ホルムアルデヒド);ヨードプロペニルブチルカルバマート(Polyphase P100(登録商標));クロルアセトアミド;メタンアミン;メチルジブロモニトリルグルタロニトリル(1、2−ジブロモ−2、4−ジシアノブタンまたはTektamer(登録商標));グルタルアルデヒド;5−ブロモ−5−ニトロ−1、3−ジオキサン(Bronidox(登録商標));フェネチルアルコール;o−フェニルフェノール/ナトリウムo−フェニルフェノール;ナトリウムヒドロキシメチルグリシナート(Suttocide A(登録商標));ポリメトキシ二環式オキサゾリジン(NuoseptC(登録商標));ジメトキサン;チメロサール;ジクロロベンジルアルコール;カプタン;クロルフェネシン;ジクロロフェン;クロロブタノール;グリセリルラウラート;ハロゲン化ジフェニルエーテル;2、4、4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル(トリクロサン(登録商標)またはTCS);2、2’−ジヒドロキシ−5、5’−ジブロモ−ジフェニルエーテル;フェノール性化合物;フェノール;2−メチルフェノール;3−メチルフェノール;4−メチルフェノール;4−エチルフェノール;2、4−ジメチルフェノール;2、5−ジメチルフェノール;3、4−ジメチルフェノール;2、6−ジメチルフェノール;4−n−プロピルフェノール;4−n−ブチルフェノール;4−n−アミルフェノール;4−tert−アミルフェノール;4−n−ヘキシルフェノール;4−n−ヘプチルフェノール;モノおよびポリアルキルおよび芳香族ハロフェノール;p−クロロフェノール;メチルp−クロロフェノール;エチルp−クロロフェノール;n−プロピルp−クロロフェノール;n−ブチルp−クロロフェノール;n−アミルp−クロロフェノール;sec−アミルp−クロロフェノール;シクロヘキシルp−クロロフェノール;n−ヘプチルp−クロロフェノール;n−オクチルp−クロロフェノール;o−クロロフェノール;メチルo−クロロフェノール;エチルo−クロロフェノール;n−プロピルo−クロロフェノール;n−ブチルo−クロロフェノール;n−アミルo−クロロフェノール;tert−アミルo−クロロフェノール;n−ヘキシルo−クロロフェノール;n−ヘプチルo−クロロフェノール;o−ベンジルp−クロロフェノール;o−ベンジル−m−メチルp−クロロフェノール;o−ベンジル−m;m−ジメチルp−クロロフェノール;o−フェニルエチルp−クロロフェノール;o−フェニルエチル−m−メチルp−クロロフェノール;3−メチルp−クロロフェノール;3、5−ジメチルp−クロロフェノール;6−エチル−3−メチルp−クロロフェノール;6−n−プロピル−3−メチルp−クロロフェノール;6−イソ−プロピル−3−メチルp−クロロフェノール;2−エチル−3、5−ジメチルp−クロロフェノール;6−sec−ブチル−3−メチルp−クロロフェノール;2−イソ−プロピル−3、5−ジメチルp−クロロフェノール;6−ジエチルメチル−3−メチルp−クロロフェノール;6−イソ−プロピル−2−エチル−3−メチルp−クロロフェノール;2−sec−アミル−3、5−ジメチルp−クロロフェノール;2−ジエチルメチル−3、5−ジメチルp−クロロフェノール;6−sec−オクチル−3−メチルp−クロロフェノール;p−クロロ−m−クレゾール:p−ブロモフェノール;メチルp−ブロモフェノール;エチルp−ブロモフェノール;n−プロピルp−ブロモフェノール;n−ブチルp−ブロモフェノール;n−アミルp−ブロモフェノール;sec−アミルp−ブロモフェノール;n−ヘキシルp−ブロモフェノール;シクロヘキシルp−ブロモフェノール;o−ブロモフェノール;tert−アミルo−ブロモフェノール;n−ヘキシルo−ブロモフェノール;n−プロピル−m、m−ジメチルo−ブロモフェノール;2−フェニルフェノール;4−クロロ−2−メチルフェノール;4−クロロ−3−メチルフェノール;4−クロロ−3、5−ジメチルフェノール;2、4−ジクロロ−3、5−ジメチルフェノール;3、4、5、6−テラブロモ−2−メチルフェノール;5−メチル−2−ペンチルフェノール;4−イソプロピル−3−メチルフェノール;パラ−クロロ−メタ−キシレノール(PCMX);クロロチモール;フェノキシエタノール;フェノキシイソプロパノール;5−クロロ−2−ヒドロキシジフェニルメタン;レゾルシノールおよびその誘導体;レゾルシノール;メチルレゾルシノール;エチルレゾルシノール;n−プロピルレゾルシノール;n−ブチルレゾルシノール;n−アミルレゾルシノール;n−ヘキシルレゾルシノール;n−ヘプチルレゾルシノール;n−オクチルレゾルシノール;n−ノニルレゾルシノール;フェニルレゾルシノール;ベンジルレゾルシノール;フェニルエチルレゾルシノール;フェニルプロピルレゾルシノール;p−クロロベンジルレゾルシノール;5−クロロ2、4−ジヒドロキシジフェニルメタン;4’−クロロ2、4−ジヒドロキシジフェニルメタン;5−ブロモ2、4−ジヒドロキシジフェニルメタン;4’−ブロモ2、4−ジヒドロキシジフェニルメタン;ビスフェノール酸化合物;2、2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール);2、2’−メチレンビス−(3、4、6−トリクロロフェノール);2、2’−メチレンビス(4−クロロ−6−ブロモフェノール);ビス(2−ヒドロキシ−3、5−ジクロロフェニル)スルフィド;ビス(2−ヒドロキシ−5−クロロベンジル)スルフィド;安息香酸エステル(パラベン);メチルパラベン;プロピルパラベン;ブチルパラベン;エチルパラベン;イソプロピルパラベン;イソブチルパラベン;ベンジルパラベン;ナトリウムメチルパラベン;ナトリウムプロピルパラベン;ハロゲン化カルバニリド;3、4、4’−トリクロロカルバニリド(トリクロカーバン(登録商標)またはTCC);3−トリフルオロメチル−4、4’−ジクロロカルバニリド;3、3’、4−トリクロロカルバニリド;クロルヘキシジンおよびそのジグルコナート;ジアセタートおよびジヒドロクロリド;ウンデセン酸;チアベンダゾール、ヘキセチジン;ポリ(ヘキサメチルエネビグアニド)塩酸塩(Cosmocil(登録商標));銀化合物、例えば、有機銀塩またはJM Acticare(登録商標)および微粒子化した銀粒子等のそれらの製剤を含む無機銀塩、銀塩化物。
【0124】
バイオフィルム関連障害
D−アミノ酸を使った方法および治療は、生物体の増殖を阻害することもなく、またはことさら阻害することなく、バイオフィルムの形成の阻害または防止することを含み、また、一旦形成されたバイオフィルムの破壊を含む。
【0125】
D−アミノ酸は、患者のバイオフィルム形成を減らす有効量のD−アミノ酸を患者に投与することにより、患者のバイオフィルム関連障害を治療するために使用できる。細菌増殖の減少は、患者のバイオフィルム産生の減少または阻害を表す。
【0126】
一部の例では、D−アミノ酸は、バイオフィルム成形細菌の表面への付着を減少させることにより、または細菌の死滅を増やすことにより、バイオフィルム形成を阻害または低減することができる。この治療手法は、バイオフィルム関連障害もしくは状態、または微生物のバイオフィルム形成に関連した医療機器関連感染症の治療のために使用可能である。
【0127】
バイオフィルム関連障害の非制限的例には、中耳炎、前立腺炎、膀胱炎、気管支拡張症、細菌性心内膜炎、骨髄炎、虫歯、歯周病、感染性腎結石、挫瘡、レジオネラ症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、および嚢胞性繊維症が含まれる。一具体的例では、嚢胞性繊維症患者は、肺と消化管中にバイオフィルムの蓄積が認められる。COPD、例えば、肺気腫および慢性気管支炎に罹患している患者は、気道の特徴的炎症を示し、この気道を通り、その後、肺から出ていく気流が慢性的に妨害される。
【0128】
バイオフィルム関連障害は、また、移植/挿入機器由来の感染である医療機器関連感染症、例えば、胆汁ステント由来の感染、整形外科インプラント感染、およびカテーテル関連感染(腎臓、血管、腹膜)を包含してもよい。また、感染は、皮膚および/または軟組織の健全性が損なわれている部位から始まる可能性がある。非制限的例には、皮膚炎、末梢血管疾患由来潰瘍、火傷、および外傷が含まれる。例えば、グラム陽性菌、例えば、肺炎球菌は、このような組織の日和見感染の原因になりうる。肺炎球菌の火傷部位に感染する能力は、例えば、皮膚の破損、火傷関連免疫不全、および抗生物質選択により強化される。
【0129】
一部の例では、患者は治療される。患者は、霊長類(例えば、サル、例えば、カニクイザル、チンパンジー、およびヒト)を含む哺乳動物であってもよい(これらに限定されない)。患者は、非ヒト動物、例えば、トリ(例えば、ウズラ、ニワトリ、もしくはシチメンチョウ)、家畜(例えば、雌ウシ、ヤギ、ウマ、ブタ、もしくはヒツジ)、ペット(例えば、ネコ、イヌ、もしくはモルモット、ラット、もしくはマウス)、または実験動物(例えば、障害用動物モデル)であってもよい。非制限的な代表的患者は、ヒト乳児、思春期前小児、青年、成人、または中年/高齢成人であってもよい。
【0130】
一部の例では、治療を必要としている患者は、1つまたは複数の本明細書記載の感染または障害に罹患している患者でありうる。一部の例では、患者は、生物学的関連表面でバイオフィルムを発生する危険に曝されている、または既にこのようなバイオフィルムを発生させている。このような危険に曝されている患者は、D−アミノ酸による治療の候補であり、これにより、バイオフィルム産生関連障害/状態の発生または発症を阻害する、またはバイオフィルム関連障害または状態の1つまたは複数の症状の再発、発症、もしくは進行を防ぐことができる。このような患者は、当業者には臨床的に明らか、または検出可能であるが、まだ完全には形成されていない未成熟バイオフィルムを宿している可能性がある。留置装置、例えば、医療機器の移植が予定されている患者もまた、バイオフィルム発生の危険のある患者である。また、バイオフィルム発生の危険は、バイオフィルム関連疾患(例えば、嚢胞性繊維症に関連するチャネルトランスポーター変異の存在)の発生の傾向に起因する可能性がある。このようなバイオフィルム関連障害の患者は、初期段階、例えば、細菌感染および/またはバイオフィルム形成がまだ検出されない段階にある可能性がある。
【0131】
特定の例では、本明細書記載の方法は、嚢胞性繊維症患者の気道中のバイオフィルム形成を防ぐために使用可能である。このような患者は、気道の細菌感染のない間に、または細菌感染の検出時に治療できる。
【0132】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、これは、請求項に記載の本発明の範囲を制限するものではない。室温は、20〜25℃の範囲の温度を示す。
【実施例】
【0133】
材料と方法
株と培地。 Luria−Bertani(LB)培地中、37℃またはMSgg培地(Branda et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:11621(2001))中、23℃で枯草菌NCIB 3610およびその誘導体を成長させた。固形培地には、1.5%Bacto agarを添加した。必要な場合は、枯草菌の増殖用に抗生物質を次の濃度で添加した:テトラサイクリン10μg/ml、およびエリスロマイシン5μg/ml、スペクチノマイシン500μg/ml。
【0134】
本実験で使った株:
全枯草菌株は、強固なバイオフィルムを形成する野生株のNCIB3610の誘導体である(Branda et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:11621(2001)) ;
株FC5(PepsA−lacZ cat)(Chu et al.、Mol.Microbiol.59:1216(2006)) ;
株FC122(PyqxM−lacZ spec)(Chu et al.、Mol.Microbiol.59:1216(2006)) ;
株IKG55(ΔracX::spec ΔylmE::tetR) ;
株DR−30(tasA−mCherry cat);
株IKG40(yqxM2);
株IKG44(yqxM6);
株IKG50(yqxM2 tasA−mCherry);
株IKG51(yqxM6 tasA−mCherry);
ブドウ球菌SC01(Kolter labコレクション由来)。
【0135】
株構築。標準的手法を使って株を構築した(J.Sambrook、D.W.Russell、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning.A Laboratory Manual.)(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、USA、2001)。ロングフランキングPCR変異誘発を使ってΔracX::specおよびΔylmE::tetRを生成した(Wach、Yeast 12:259(1996))。DNAを、コンピテント細胞のDNA媒介形質転換により、株PY79誘導体中に導入した(Gryczan et al.、J.Bacteriol.134:318(1978))。SPP1ファージ媒介形質導入を使って、抗生物質耐性結合変異をPY79誘導体からNCIB 3610中に導入した(Yasbin et al.、J.Virol.14:1343(1974))。
【0136】
試薬。 アミノ酸をSigma−Aldrich(St.Louis、MO)から入手した。14C−D−チロシンおよび14C−L−プロリンをAmerican Radiolabeled Chemicals、Inc(St.Louis、MO)から入手した。
【0137】
コロニーおよびペリクル形成。固形培地上へのコロニー形成形成のために、細胞を最初にLB培地中で指数増殖期迄増殖し、3μlの培養液を1.5%Bacto agar含有固形MSgg培地上に配置した。プレートを23℃でインキュベートした。液体培地中のペリクル形成のために、細胞を指数増殖期迄成長させ、12ウエルプレート(VWR)中で、6μlの培養液を6mlの培地と混合した。プレートを23℃でインキュベートした。コロニーとペリクルの画像をSPOTカメラ(Diagnostic Instruments、USA)で撮影した。
【0138】
馴化培地の調製。LB培地中で細胞を指数増殖期まで成長させた。0.1mlの培養液を100mlのMSgg培地に添加し、500mlビーカー中、23℃で振盪を加えずに成長させた。次に、遠心分離を使って8、000rpm、15分間ペリクルおよび馴化培地を集めた。馴化培地(上清液)を取りだし、0.22μmフィルターを通して濾過した。濾液を24℃で貯蔵した。さらなる精製のために、C−18 Sep Pakカートリッジを使って、5%毎のステップの0%〜100%メタノールによる段階的溶出により、バイオフィルム阻害活性を分別した。
【0139】
馴化培地中のD−アミノ酸の特定および定量化。(A)アミノ酸の定量化。Tyr、Leu、Met、およびTrpの標準溶液を種々の濃度(0.001〜0.2mM)で調製した。これらの溶液を0%〜60%から100%CH3CN(0.1%ギ酸含有)のステップ勾配溶媒系(Thermo Scientific Hypercarb 4.6mm×100mm、5μm)の(0−12−20分)の条件でLC/MSで分析し、イオンカウント積分により各アミノ酸濃度の検量線を得た。馴化培地試料を、全4つのキラルアミノ酸の全体濃度測定と同じ方法でLC/MSを使って分析した。(B)D−アミノ酸の特定。試料をSpeedVac中で乾燥し、100μLの1N NaHCO3に溶解した。10mg/mLのL−FDAA(N−(2、4−ジニトロ−5−フルオロ−フェニル)−L−アラニンアミド)溶液をアセトン中で調製し、50μLのアセトン溶液を1N NaHCO3中の試料に添加した。反応混合物を80℃で5分間インキュベートし、50μLの2N HClを添加して反応を停止させた。誘導体を、10%〜100%CH3CN(0.1%ギ酸含有)の勾配溶媒系を使って30分間にわたりLC/MS(Agilent 1200シリーズHPLC/6130シリーズMS、Phenomenex Luna C18、4.6mm×100mm、5μm)を使って分析した。L−FDAA−アミノ酸の保持時間をL−FDAA真性標準アミノ酸と比較した。
【0140】
クリスタルバイオレット染色。細胞を6ウエルプレートで成長させたこと以外は、以前記載したのと同様にクリスタルバイオレット染色を行った(O’Toole et al.、Mol.Microbiol.30:295(1998))。ウエルを500μlの1.0%クリスタルバイオレット染料で染色し、2mlの再蒸留水で2回洗浄し、完全に乾燥した。
【0141】
蛍光顕微鏡観察。蛍光顕微鏡分析用として、1mlの培養液を採取した。細胞をPBS緩衝液で洗浄し、50μlのPBS緩衝液中に懸濁した。カバースライドをポリL−リシン(Sigma)で前処理した。試料をOlympusワークステーションBX61顕微鏡を使って調査した。自動化ソフトウェアプログラムSimplePCIを使って画像を取り込み、MetaMorphプログラム(Universal Imaging Corporation)を使って解析した。
【0142】
透過型電子顕微鏡観察および免疫標識。試料を蒸留水で希釈し、炭素またはホルムバール/炭素被覆グリッド上に吸着させた。真空エバポレーター中でグロー放電で使用する前にグリッド表面を親水性にした。試料がフィルム表面上に吸着されるとすぐに、過剰試料を濾紙(Whatman#1)で拭き取り、グリッドを5μlの染色溶液(1〜2%水性ウラニルアセタート)上に数分間浮かべた後、拭き取った。試料を乾燥し、Tecnai(登録商標)G2SpiritBioTWIN顕微鏡を使い、加速電圧80KVで調査した。AMT 2k CCDカメラで画像を撮影した。
【0143】
TasAの免疫局在性のために、ニッケルグリッド上の希釈試料を0.1%ツイーン20含有PBS中の1%脱脂粉ミルクから成るブロッキング緩衝液上に30分間浮かべ、ブロッキング緩衝液で1:150に希釈した抗TasA一次抗体と共に2時間インキュベートした後、PBSTで洗浄し、ヤギ抗ウサギ20nm金二次抗体(Ted Pella、Inc.、Redding、CA)に1時間暴露し洗浄した。全てのグリッドをウラニルアセタートおよび鉛シトラートで染色した後、上述のように観察した。
【0144】
β−ガラクトシダーゼ活性のアッセイ。細胞をMSgg培地中、37℃でウォーターバスを使って浸透を加えながら培養した。1mlの培養液を各時点で採取した。β−ガラクトシダーゼ活性を以前に記載の方法と同様に測定した(Chai et al.、Mol.Microbiol.67:254(2008))。
【0145】
アミノ酸の細胞壁への組込み。増殖の指数増殖期の中間点で50mlの培養液中の細胞を遠心分離により採取し、0.05Mのリン酸塩緩衝液(pH7)で洗浄し、5mlの同じ緩衝液中に再懸濁した。細胞を、10μCi/mlの14C−D−チロシンまたは14C−L−プロリンで治療し、37℃で2時間、さらにインキュベートした。全細胞および細胞壁画分の放射能をモニターし、間隔を置いて試料を取り出した。全細胞中への取り込みの測定用として、0.1mlの試料を採取した。細胞壁への取り込みの測定用として、0.5mlの試料を採取した。細胞を遠心分離により採取し、0.1mg/mlリゾチーム含有SM緩衝液[0.5Mショ糖、20mM MgCl2、および10mMカリウムホスファート、pH(6.8)]中に再懸濁した。次に、細胞を37℃で10分間インキュベートした。その後、得られたプロトプラストを5000rpmで10分間の遠心分離により取り出し、細胞壁物質を上清液中に残した。細胞壁画分はタンパク質を含まないことが、抗シグマA抗体を使った免疫ブロット法分析により確認された。最後に、10mlの5%トリクロロ酢酸を全細胞試料および細胞壁物質に添加し、氷上で少なくとも30分間維持した。TCA不溶性物質をMilliporeフィルター(0.22μm孔径、Millipore)上に採取し、5%TCAで洗浄した。フィルターを風乾し、シンチレーションバイアル中に置き、シンチレーションカウンターを使って、TCA不溶性物のカウント/分を測定した。
【0146】
実施例1.枯草菌により形成されたバイオフィルム中のD−アミノ酸の選別
枯草菌は、バイオフィルムを誘導培地中での3日間のインキュベーション後の静置培養空気/液体界面に分厚いペリクルを形成する(図1A)。しかし、追加の3から5日のインキュベーションにより、ペリクルは、その構造的健全性を失う(図1−B)。成熟バイオフィルムが、バイオフィルム分解の引き金を引く因子を産生するのかどうかを調べるために、馴化培地の濃縮および部分精製抽出物の新しい培地に添加した場合のペリクル形成に与える効果をアッセイした。この目的のために、8日間培養液由来の馴化培地をC18 Sep Pakカラムに負荷した。次に、そのカラムからの濃縮した溶出液を、新しく播種した培養液に添加した。等容量の馴化培地由来の物質の25%に相等する濃縮溶出液の量が、ペリクル形成を防ぐのに充分であった(図1C)。対照としての、3日間培養液由来の馴化培地を使って調製した追加の濃縮溶出液は、ペリクル形成に対しほとんどまたは全く効果を示さないことが観察された(図1D)。さらなる因子の精製は、メタノールの濃度増加と共にカートリッジを段階的に溶出することにより達成された。40%メタノールでの溶出により、ペリクル形成の阻害に対し高度に活性な画分が得られた(図1E)。しかも、この物質は、細胞成長にはほとんどまたは全く影響を与えなかった。バイオフィルム阻害活性は、100℃で2時間の加熱およびプロテイナーゼK処理に耐性を示した(図1F)。
【0147】
D−チロシン、D−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンが、液体および固形培地の両方で、枯草菌によるバイオフィルム形成を阻害するものとして選別された(図2A、5、6)。図2Aは、バイオフィルムを誘導する培地中の新しく播種した培養液中へのD−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)、L−チロシン(7mM)、またはL−ロイシン(8.5mM)の添加の、3日間のインキュベーション後のペリクル形成に対する効果を示す。D−チロシンおよびD−ロイシンの両方が、対応するL−アミノ酸に比較して、バイオフィルム成長に対する有意な阻害を示した。同様に、図5は、D−トリプトファン(0.5mM)、D−メチオニン(2mM)、L−トリプトファン(5mM)またはL−メチオニン(5mM)を補充したMSgg培地を含み、株NCIB3610を播種し、3日間インキュベートしたウエルを示す。D−アミノ酸のみが、バイオフィルム形成の阻害に対し活性であった。
【0148】
図6は、D−チロシン(3μM)またはD−ロイシン(8.5mM)を補充した固形MSgg培地を含み、株NCIB3610を播種し、4日間インキュベートしたプレートを示す。D−チロシンおよびD−ロイシンの両方がバイオフィルム形成を阻害した。
【0149】
D−メチオニン、D−トリプトファン、D−チロシンおよびD−ロイシンは、対応するL−アミノ酸に比較して、バイオフィルム成長に対する有意な阻害を示した。対照的に対応するL−異性体および他のアミノ酸のD−異性体、例えば、D−アラニンおよびD−フェニルアラニンは、枯草菌に対するバイオフィルム阻害アッセイで有効ではなかった。
【0150】
次に、バイオフィルム形成を防ぐのに必要な最小濃度(MIC:最小阻害濃度(Minimal inhibitory concentration))を測定した。図2Bに示すように、それぞれのD−アミノ酸は、活性が変わり、D−チロシンが最も有効であった。D−メチオニン、D−トリプトファン、およびD−ロイシンは、約1mMのMICであり、一方、D−チロシンは、約100nMのMICである。著しいのは、全ての4つのD−アミノ酸の混合物(等モル量の)は、特に強力で、10nM未満のMBICであった。従って、D−アミノ酸は、相乗的に作用する。D−アミノ酸は、バイオフィルム形成を阻害するのみでなく、既存バイオフィルムを破壊した。図2Cは、3日間培養液を示し、これに対し、どのアミノ酸も添加されない(未治療)、またはD−チロシン(3μM)が添加された、またはD−チロシン、D−トリプトファン、D−メチオニンおよびD−ロイシン(各2.5nM)の混合物が添加されたものに対し、続いて、さらに8時間インキュベーションを行った。D−チロシンまたは4つのD−アミノ酸の混合物の追加により、8時間の間に、ペリクルの顕著な崩壊が起こった。
【0151】
D−アミノ酸は、これらのアミノ酸のα−炭素立体中心をL−型からD−型へ変換する酵素であるアミノ酸ラセマーゼにより生成される(Yoshimura et al.、J.Biosci.Bioeng.96:103(2003))。バイオフィルム阻害因子はD−アミノ酸であるという考えと一致する遺伝的証拠は、ylmEおよびracX、遺伝子の変異体を使って得られ、その予測された産物は、既知のラセマーゼに類似の配列を示した。ylmEまたはracX単独に対する株変異体は、ペリクル分解の中程度の遅延を示した(データは示さず)。図7は、12ウエルプレート中で成長させ、5日間インキュベートした、NCIB3610(WT)ならびにylmEおよびracX(IKG155)に対し2重に欠失した株変異体示す。想定上のラセマーゼである二重変異体細胞により形成されたペリクルの分解が有意に遅延し、ラセマーゼ活性が特異的に低減した株もまた、低減した抗バイオフィルム阻害を示すことを示唆している。また、二重変異体由来馴化培地は、野性型由来の馴化培地とは対照的に、バイオフィルム形成阻害に関し無力であった。図2Dは、野性型または二重変異体が有意なバイオフィルム成長を示すylmEおよびracXの二重株変異体(IKG55)の8日間培養液由来の馴化培地の濃縮Sep Pak C−18カラム溶出液の効果を示す。
【0152】
次いで、D−アミノ酸がバイオフィルム成熟の間に産生されるのかどうか、また、成熟バイオフィルムの分解を説明するのに充分な存在量で産生されるのかどうかを測定した。従って、LC/MSを行い、続いて、ペリクル形成の初期および後期に採取した馴化培地に対し、Nα−(2、4−ジニトロ−5−フルオロフェニル)−L−アラニンアミド(L−FDAA)による誘導体化を使ってD−アミノ酸を特定した。D−チロシン(6μM)、D−ロイシン(23μM)、およびD−メチオニン(5μM)は、6日目までにバイオフィルム形成を阻害するのに必要な、またはそれ超の濃度で存在したが、3日目には、10nM未満の濃度で、例えば、バイオフィルム形成を阻害するのに十分ではないレベルで存在したという結果であった。
【0153】
馴化培地と同様に、D−アミノ酸は、細胞成長を阻害せず、基質オペロンepsおよびyqxMの発現も阻害しなかった(図8〜9)。図8は、D−アミノ酸の細胞成長に与える影響を示す。細胞を、D−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)または4つのD−アミノ酸混合物(各2.5nM)含有MSgg培地中で振盪を加えながら成長させた。D−アミノ酸治療培養液中の細胞成長は、実質的に未治療試料と同じであった。図9Aは、株FC122(PyqxM−lacZ保有)によるPyqxM−lacZの発現を示し、図9Bは、D−チロシン(3μM)、D−ロイシン(8.5mM)または4つのD−アミノ酸混合物(各2.5nM)含有MSgg培地中で振盪を加えながら成長させた株FC5(PepsA−lacZ保有)によるPepsA−lacZの発現を示す。この場合も、D−アミノ酸治療試料にたいするyqxMおよびeps発現は、実質的に未治療試料と同じであった。
【0154】
D−アミノ酸は、細胞壁のペプチドグリカン成分のペプチド架橋中に組み込まれることを以前報告した。確認のため、細胞をバイオフィルム誘導培地中で成長させ、14C−D−チロシンまたは14C−L−プロリン(10μCi/ml)と共に37℃で2時間インキュベートした。図3Aは、放射性D−チロシンの細胞壁への組込みを示す。14C−D−チロシンを使って、D−チロシン(14C−L−プロリンではそうではないが)は、細胞壁に組み込まれたことが示された。結果を細胞中への合計組込み(L−プロリンに対しては360、000cpm/ml、D−チロシンに対しては46、000cpm/ml)のパーセントで表す。
【0155】
細胞壁中に組み込まれたD−アミノ酸が、TasA繊維を細胞への固定から離脱させることが可能かどうかを調べるために、TasAと蛍光のレポーターmCherryの機能性融合体の局在化を調べた。図3Bは、機能性tasA−mCherry翻訳融合体を含む細胞由来の合計蛍光を示す。細胞を、D−チロシン(6μM)の存在または非存在下のバイオフィルム誘導培地中で振盪を加えながら定常期まで成長させた。図3Bに示すように、D−チロシンによる治療は、TasA−mCherryの合計蓄積に対しほとんどまたは全く効果がなかった。細胞を遠心分離で洗浄し、再懸濁した後、蛍光顕微鏡で調べたが、未治療細胞(凝集していることが多い)は、TasA−mCherryで強力に装飾されていることが認められた。対照的に、D−チロシン治療細胞(ほとんど非凝集)は、低レベルの蛍光を示すに過ぎなかった。D−ロイシンおよび4つのD−アミノ酸等モル混合物でも、同様の結果が得られた。非修飾TasAタンパク質の局在化もまた、金標識抗TasA抗体を使って透過電子顕微鏡で解析された。図3Dは、電子顕微鏡によるTasA繊維の細胞会合を示す。24時間培養液を、D−チロシン無し(画像1と2)またはD−チロシン(0.1mM)添加あり(画像3〜6)の場合で、追加の12時間のインキュベートを行った。TasA繊維を、抗TasA抗体を使って免疫金標識により染色し、実施例に記載のように透過電子顕微鏡により可視化した。外多糖の非存在によりTasA繊維の画像処理が著しく改善されたので、細胞は、菌体epsオペロン(Δeps)の変異であった。中実矢印は、繊維バンドルを示し、中空矢印はそれぞれの繊維を示す。スケールバーは、500nmである。拡大画像2、4および6のスケールバーは、100nmである。画像1と2は、細胞に付着した繊維バンドルを示し、画像3、4および6は、細胞から離脱した個別繊維およびバンドルを示し、画像3〜5は、繊維物質がほとんど無いか全く無い細胞を示す。TasA繊維は、未治療ペリクルの細胞に固定されているように見えた(図3D、画像1と2)。対照的に、D−チロシンで12時間治療した細胞は、TasA繊維ではほとんど装飾されていない細胞の混合物および細胞に固定されていない遊離TasA繊維または繊維凝集体で構成されていた(図3D、画像3〜6)。理論に拘泥する意図はないが、D−チロシンがバイオフィルムを治療する1つの機序は、細胞による繊維の脱落の導入である可能性がある。
【0156】
D−アミノ酸が、TasA繊維の細胞への固定を破壊することにより作用することの遺伝的証拠をD−チロシン耐性変異体の単離から入手した。図4Aは、D−チロシン非含有または含有固形(上段画像)または液体(下段画像)バイオフィルム誘導培地で3日間成長させた細胞を示す。D−チロシン(図4A)またはD−ロイシン(データを示さず)含有固形培地上で成長の間に形成された平坦コロニー上に、しわの寄った乳頭状突起が自然に現れた。重要なことは、全ての4つの活性D−アミノ酸を含むプレート上には、このような乳頭状突起は出現しなかったことである。精製される場合、これらの自然の変異体は、D−チロシンまたはD−ロイシンの存在下、しわの寄ったコロニーやペリクルを生じた。いくつかのこのような変異体が単離されたが、大抵は、yqxMオペロンまたはその近くに変異を含んでいた。2つの変異が詳細に調査され、759塩基対長yqxM遺伝子の3’末端近傍のフレームシフト変異であることがわかった。yqxM2は、yqxM読み取り枠中の塩基対728の位置のG:Cの挿入であり、yqxM6は、塩基対568の位置のA:Tの欠失であった(図4B)。図4Bは、YqxMの簡略アミノ酸配列を示す。下線は、yqxM2およびyqxM6フレームシフト変異により図に示された配列変化を生じ、コドンから特定された残基である。
【0157】
図3Cは、蛍光顕微鏡によるTasA−mCherry細胞会合を示す。tasA−mCherry融合体含有の野性型細胞およびyqxM6(IKG51)変異体細胞を、バイオフィルム誘導培地中で、図中で示したようにD−チロシン(6μM)の存在またはD−チロシン非存在(未治療)下で振盪を加えながら定常期(OD=1.5)まで成長させ、PBSで洗浄し、蛍光顕微鏡で可視化した。蛍光顕微鏡結果は、yqxM2およびyqxM6の存在が、凝集およびD−チロシン治療細胞に対するTasA−mCherryによる細胞装飾を復活させたことを示す(図3C)。以前に行った仕事では、TasAと細胞の結合のためにYqxMが必要であることが示された(Branda et al.、Mol.Microbiol.59:1229(2006))。理論に拘泥する意図はないが、D−アミノ酸のバイオフィルム阻害効果が、YqxM変異体によって打ち負かされ得るというこの発見は、D−アミノ酸の細胞壁への組込みの効果が、TasA繊維の細胞への固定を傷害することであるという考えを補強するものである。YqxMのC末端近傍ドメインは、細胞壁中のD−チロシンまたはD−ロイシンの存在に呼応してTasA放出の引き金になる可能性がある。
【0158】
実施例2.黄色ブドウ球菌および緑膿菌によるバイオフィルム形成におけるアミノ酸の選別
他の細菌に関し、バイオフィルム形成に対するD−アミノ酸の効果について調査した。病原菌ブドウ球菌は、プラスチック表面上にバイオフィルムを形成する(Otto、Curr.Top.Microbiol.Immunol.322:207(2008))。これは、非結合細胞を洗い流し、結合細胞をクリスタルバイオレットで染色することによって検出できる。図2Eは、12ウエルポリスチレンプレートを用い、グルコース(0.5%)とNaCl(3%)含有TSB培地中で37℃、24時間成長させた黄色ブドウ球菌(株SCO1)を示す。さらに、アミノ酸添加無し(未治療)、D−チロシン(50μM)またはD−アミノ酸混合物(各15nM)添加の条件をウエルに付加した。非結合細胞を洗い流し、クリスタルバイオレットで染色することによりポリスチレン結合細胞を可視化した。図2Eは、50μM濃度のD−チロシンおよび50nM濃度のD−アミノ酸混合物(D−チロシン、D−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニン;各50nM)が病原菌によるバイオフィルム形成の阻害に対し極めて効果的であることを示す。
【0159】
さらに、図10は、10μMのD−チロシンが緑膿菌によるバイオフィルム形成の阻害に対し効果的であったことを示し、また、D−チロシン、D−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンの1μMの等モル混合物が有効であったことを示す。図10は、D−アミノ酸による緑膿菌バイオフィルム形成の阻害を示す。緑膿菌株P014を、12ウエルポリスチレンプレートを用い、グリセリン(0.2%)およびカザアミノ酸(20μg/ml)含有M63培地中で、30℃、48時間成長させた。さらに、アミノ酸添加無し(未治療)、D−チロシンまたはD−アミノ酸等モル混合物添加の条件をウエルに付加した。非結合細胞を洗い流し、クリスタルバイオレットで染色することによりポリスチレン結合細胞を可視化した。ウエルを500μlの1.0%クリスタルバイオレット染料で染色し、2mlの再蒸留水で2回洗浄後、完全に乾燥した。
【0160】
実施例3.ブドウ球菌および緑膿菌バイオフィルム阻害に対し活性なD−アミノ酸混合物
2つの異なる混合物は、ブドウ球菌バイオフィルムの形成の阻害に対し極めて活性である。1つは、D−チロシン、D−メチオニン、D−ロイシンおよびD−トリプトファンの等モル混合物である。枯草菌、ブドウ球菌(図11)、および緑膿菌(図12)の全試験細菌株で、D−trp、D−met、D−tyrおよびD−leuのD−aa混合物は、個別のアミノ酸よりも極めて低い濃度で活性であった。表1の実験に対しては、生物体/株はS.a.Harvard SCO1、培地はTSB、細胞播種は2x109cfuとした。表2の実験に対しては、生物体/株はS.a.Harvard PA14、培地はM63、細胞播種は1.5x109cfuとした。バイオフィルムをクリスタルバイオレット法を使って可視化した。データを下表1と2に示す:
【表1】


【表2】

【0161】
D−チロシン、D−フェニルアラニン、D−プロリンの等モル混合物は、上記混合物よりもさらに効果的である。また、その混合物は、個々のアミノ酸それぞれよりも混合物として活性が大きい(図13と14)。表3と4の実験に対しては、生物体/株はS.a.Harvard SCO1、培地はTSB、細胞播種は2x109cfuとした。バイオフィルムをクリスタルバイオレット法を使って可視化した。データを表3と4に示す:
【表3】


【表4】

【0162】
実施例4.黄色ブドウ球菌バイオフィルム形成の代替定量方法
浮遊細胞をGilsonピペットで完全に除去し、次いで、ペーパータオル越しに液体を排出した。次に、バイオフィルムプレートの画像を黒を背景に注意深く撮影した(図15と16)。表5と6の実験に対しては、生物体/株はS.a.Harvard SCO1、培地はTSB、細胞播種は2x109cfuとした。バイオフィルムを黒を背景として視覚に訴える方法で可視化した。データを表5と6に示す:
【表5】


【表6】

【0163】
バイオフィルム細胞をPBS中に再懸濁することにより上記表5と6のプレートから除去し、これらのOD600を分光光度計を使って測定した(図17)。表7の実験では、生物体/株はS.a.Harvard SCO1、培地はTSB、細胞播種は2x109cfuとした。バイオフィルムを吸収された細菌のOD600を測定することにより可視化した。データを表7示す:
【表7】

【0164】
実施例5.エポキシ表面上のブドウ球菌バイオフィルム形成に対するD−アミノ酸の効果
異なる表面からのD−アミノ酸の徐放方法開発の可能性を試験する目的で、エポキシ表面をD−アミノ酸混合物中で24時間インキュベートした。これを完全に乾燥し、黄色ブドウ球菌を播種した新しいTSB培地中でインキュベートした。表8と9の実験では、生物体/株はS.a.Harvard SCO1、培地はTSB、細胞播種は2x109cfuとした。バイオフィルムを黒を背景として視覚に訴える方法で可視化した。図18と19に示すように、D−aa混合物(上述のような)は、浸漬状態の基質上のブドウ球菌バイオフィルム形成を劇的に低減させた。データを表8と9に示す:
【表8】


【表9】

【0165】
さらに、Norland光学接着剤61表面をD−チロシン、D−プロリン、D−フェニルアラニンと共に24時間インキュベートした。これを完全に乾燥し、黄色ブドウ球菌を播種した新しいTSB培地中でインキュベートした。D−aa混合物(L−混合物ではそうではないが)は、ブドウ球菌バイオフィルム形成を劇的に低減した。
【0166】
この実施例では、ポリマー基質は、UVO−114(Epoxy Technology)およびNorland光学接着剤61(Norland Products)UV−硬化型ポリマーを使って、ポリジメチルシロキサン(SYLGARD184、Dow Corning)中で成形した。
【0167】
実施例6.緑膿菌バイオフィルム形成に対するD−アミノ酸の効果を観察する別の方法
枯草菌と同様に、緑膿菌は、複合体構造を特定の培地に形成する。これらの複合体構造には、細胞外基質の適切な形成と構築が必要である。D−チロシン(500μM)またはD−トリプトファン(500μM)の追加により、特定培地の緑膿菌バイオフィルム形成が阻害され(図20)、一方、L−チロシン(500μM)およびL−トリプトファンの追加では、そうならなかった。同様の結果が枯草菌でも得られた。これらの実験では、生物体/株はP.a.Harvard PA14、培地はM63、細胞播種は1.5x109cfuとした。
【0168】
D−アミノ酸のある場合と無い場合について、Syto−9染色を使って6ウエルプレート上でバイオフィルム形成を観察する別の方法は、以下の通りである:緑膿菌バイオフィルムをPBSで2回洗浄した後、PBS中の5%グルタルアルデヒドで少なくとも1時固定した。次に、固定バイオフィルムを、PBSで再度1回洗浄し、PBS中の0.1%v/vトリトンX−100(PBST)中に15分間浸漬した。溶液を冷PBST中の0.1nM SYTOX green(Invitrogen)と入れ替え、暗所で少なくとも15分間緩やかに揺らした。バイオフィルムの蛍光像をXeランプおよびK3ライカフィルターキューブを使ってライカDMRX複式顕微鏡で取り込んだ。図21に示すように、D−チロシンの存在下で、バイオフィルムプレートの底に付着した細胞の数が激減した。単一細胞付着量をimageJを使って定量化した。D−aaに浸漬したエポキシ表面に付着した細胞の量の減少は、L−aa対照に比較して相当多かった。
【表10】

【0169】
実施例7.グラム陰性病原菌に与えるD−アミノ酸の効果の評価
広範囲の抗バイオフィルム活性の可能性を評価するために、効果のあるD−チロシン、D−フェニルアラニン、およびD−プロリンの等モルカルテットをグラム陰性病原菌プロテウス・ミラビリスに対して試験した。図22に示すように、D−aa混合物はプロテウス・ミラビリスに対して活性であった。表11のバイオフィルムは、クリスタルバイオレット法により可視化した。データを表11に示す:
【表11】

【0170】
実施例8:グラム陽性の病原菌に対するD−アミノ酸の効果の評価
広範囲の抗バイオフィルム活性の可能性を評価するために、効果のあるD−チロシン、D−フェニルアラニン、およびD−プロリンの等モルカルテットをグラム陽性の病原菌ストレプトコッカス・ミュータンスに対して試験した。図23に示すように、D−aa混合物は、ストレプトコッカス・ミュータンスに対し活性であった。表12のバイオフィルムをクリスタルバイオレット法により可視化した。データを表12に示す:
【表12】

【0171】
医療機器に使用可能なコーティング関連の実施例
実施例9:D−チロシン含有コーティング
樹脂固形分の重量ベースで、0.5%のD−チロシンを市販ポリエステルポリオールおよび市販イソシアヌラートベースの2成分ポリエステルウレタンコーティング中に組み込む。コーティング系は、全体樹脂固形分ベースで0.015%のジブチルスズジラウラートにより触媒される。
【0172】
コーティング製剤をへら引きにより透明ガラススライド約4”x6”上に塗布して約2ミル(0.002”)のフィルム厚さにする。
【0173】
これらのフィルムを120°F(49℃)のオーブン中で硬化する。
【0174】
実施例10:D−アミノ酸混合物含有ポリマー
液体シリコーンゴムシートを米国特許第5、973、030号に記載のようにして調製する。製剤中に、D−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のDアミノ酸混合物をさらに0.01〜1重量パーセント添加する。
【0175】
実施例11:D−アミノ酸混合物含有水ベースコーティング
D−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のDアミノ酸混合物を1重量パーセント含む水ベース透明アクリル産業コーティング製剤を2ミル厚さでガラススライドにコートする。
【0176】
実施例12:D−アミノ酸混合物含有溶媒ベースコーティング
D−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のDアミノ酸混合物を1重量パーセント含む溶媒べースポリウレタンコーティングを調製する。このコーティングを2ミル厚さでガラススライドに塗布する。
【0177】
実施例13:D−アミノ酸混合物含有UV硬化型水ベースコーティング
透明UV硬化型水性産業コーティングを高速スターラーで各成分(下表参照)の混合により配合した。
【表13】

【0178】
調合製剤に、D−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のD−アミノ酸混合物を添加し、高せん断速度(2000rpm)下、室温で30分間攪拌する。比較の目的のため、D−アミノ酸不含の対照製剤を同じ方法で調製する。
【0179】
コーティングを50μmスリットコーターで白塗装アルミニウムパネルに塗布し、60℃で10分間乾燥した後、2つの中圧水銀ランプ(2x80W/cm)を用いて5m/minで硬化する。
【0180】
実施例14:D−アミノ酸混合物含有溶媒ベースコーティング
2液型溶媒使用ポリウレタンコーティングを下記の手順で調製する:
【0181】
D−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のD−アミノ酸混合物を、ミルベース配合として結合剤および溶媒に添加し、高せん断速度で10分間、5μm未満の粒径になるまで攪拌する。
【0182】
ミルベース配合
【表14】

【0183】
コーティング製剤は、成分Aの材料を混合し、最終段階で塗布の前に成分Bを添加して調製する(下表参照)。全体製剤中のD−アミノ酸混合物の含量は、0.1重量%である。
【表15】

【0184】
それぞれのコーティング製剤を白塗装アルミニウムパネル上にスプレーし(乾燥被覆厚さ:40μm)、80℃で30分乾燥する。
【0185】
美容/パーソナルケア配合関連実施例
実施例15:油中水型(W/O)代表的配合
以下のD−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のD−アミノ酸混合物0.1wt/wt%含有W/O乳剤を調製する。
W/O乳剤:
部分A
流動パラフィン 7.5部
イソヘキサデカン 6.0
PEG−7水素化ヒマシ油 4.1
イソプロピルパルミタート 2.0
Cera microcristallina 0.5
ラノリンアルコール 0.6
部分B
水 全体配合で100部に希釈
硫酸マグネシウム 1.0
グリシン 3.20
部分C
D−アミノ酸混合物 0.5%wt/wt水溶液の20部
【0186】
実施例16:水中油型(O/W)代表的配合
以下のD−チロシン:D−ロイシン:D−メチオニン:D−トリプトファンの1:1:1:1の比率のD−アミノ酸混合物0.1wt/wt%含有O/W乳剤を調製する。
O/W乳剤:
部分A
ステアレス−2 2.2部
ステアレス−21 1.0
PEG−15 ステアリルエーテル 6.0
ジカプリリルエーテル 6.0
部分B
水 全体配合で100部に希釈
ナトリウムポリアクリラート 0.2
部分C
D−アミノ酸混合物 0.5%wt/wt水溶液の20部
【0187】
実施例17:黄色ブドウ球菌バイオフィルム形成のインビボ阻害
Anguita−Alonso et al.、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、51:2594(2007)に記載のように、D−アミノ酸または2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせのインビボ試験を行う。
【0188】
実施例18:黄色ブドウ球菌バイオフィルム形成の別のインビボ阻害
Beenken et al.、J.Bacteriology、186:4665(2004)に記載のように、D−アミノ酸または2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせのインビボ試験を行う。
【0189】
実施例19:D−Tyr、D−Leu、D−TypおよびD−Metの安定水性混合物の調製
アミノ酸D−MetおよびD−Leuを、室温で5mg/mLの濃度で脱イオン水に別々に溶解する。通常、各アミノ酸に対し、10mLの溶液が調製される。D−トリプトファンは、脱イオン水に5mg/mLの濃度で溶解するが、40〜50℃、5〜10分の少しの加熱が必要である。D−チロシンは、5mg/mLの濃度で0.05M HClに溶解するが、40〜50℃、5〜10分の加熱が必要である。加熱超音波処理浴を使って、アミノ酸の溶解を促進することができる。全ての溶液は組み合わされ、室温で細菌濾過を行って約40mLの保存液が得られる。
【0190】
実施例20:D−Tyr、D−Pro、およびD−Pheの安定な水性混合物の調製
実施例19に記載されたように水溶液を調製する。
【0191】
実施例21:D−Tyr、D−Asp、およびD−Gluの安定な水性混合物の調製
実施例19に記載されたように水溶液を調製する。
【0192】
実施例22:D−Tyr、D−Arg、D−His、およびD−Lysの安定な水性混合物の調製
実施例19に記載されたように水溶液を調製する。
【0193】
実施例23:D−Tyr、D−Ile、D−Val、およびD−Asnの安定な水性混合物の調製
実施例19に記載されたように水溶液を調製する。
【0194】
実施例24:D−Tyr、D−Cys、D−Ser、D−Thr、およびD−Glnの安定な水性混合物の調製
実施例19に記載されたように水溶液を調製する。
【0195】
等価物
本発明をその詳細説明と関連付けて説明してきたが、前述の記載は説明の目的のためのものであって本発明の範囲を制限する意図はなく、これは添付の請求項の範囲によって定められることは理解されるべきである。他の態様、優位性、および変更は以下の請求項の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療の必要な患者のバイオフィルム関連障害を治療する方法であって、
有効量のD−アミノ酸、または薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはその誘導体を含む組成物を患者に投与し、それによってバイオフィルム関連障害を治療することを含み、前記組成物が基本的に対応するL−アミノ酸を含まず、
D−アミノ酸が、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、D−アスパラギンおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される方法。
【請求項2】
治療の必要な患者のバイオフィルム関連障害を治療する方法であって、
有効量の2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせ、または薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはそれらの誘導体を含む組成物を患者に投与し、それによってバイオフィルム関連障害を治療することを含む方法。
【請求項3】
D−アミノ酸の組み合わせが、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−アスパラギン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
組成物が、皮膚および粘膜表面ならびにこれらの組み合わせから成る群より選択される患者の表面に投与される請求項1、2または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
表面が、口腔表面、皮膚表面、尿路表面、腟管表面、または肺表面である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
組成物が、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、経口、鼻、または局所投与、およびこれらの組み合わせを介して患者に投与される請求項1、2または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
患者がヒトである請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
バイオフィルムの形成が阻害される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前に形成されたバイオフィルムが破壊される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
D−アミノ酸が、0.1nM〜100μMの濃度で投与される請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
バイオフィルム関連障害が、肺炎、嚢胞性繊維症、中耳炎、慢性閉塞性肺疾患、および尿路感染ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1、2または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
バイオフィルム関連障害が、医療機器関連感染症である請求項1、2または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
バイオフィルム関連障害が、細菌により引き起こされる請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
生物学的関連表面上の細菌によるバイオフィルム形成の治療(処理)、低減、または阻害方法であって、
有効量のD−アミノ酸、または薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはそれらの誘導体を含む組成物を生物学的表面に接触させ、それによってバイオフィルム形成の治療(処理)、低減または阻害することを含み、前記組成物が基本的に対応するL−アミノ酸を含まず、
D−アミノ酸が、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、D−アスパラギンおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される方法。
【請求項15】
生物学的関連表面上の細菌によるバイオフィルム形成の治療(処理)、低減、または阻害方法であって、
2つ以上のD−アミノ酸の有効量の組み合わせ、または薬学的に許容可能な塩、エステル、もしくはその誘導体を含む組成物と生物学的表面を接触させ、バイオフィルムの形成を低減または阻害することを含む方法。
【請求項16】
D−アミノ酸の組み合わせが、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−アスパラギン、およびD−チロシンから成る群から選択される2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
表面が、医療機器、創傷被覆材、コンタクトレンズ、または口腔内装置を含む請求項14または15に記載の方法。
【請求項18】
医療機器が、鉗子、ピンセット、ハサミ、皮膚単鉤、管、針、開創器、歯石除去器、ドリル、のみ、やすり、鋸、カテーテル、整形外科器具、人工心臓弁、人工関節、人工喉頭、ステント、分路、ペースメーカー、手術用ピン、人工呼吸器、ベンチレータ、および内視鏡ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
細菌が、グラム陰性またはグラム陽性細菌である請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
細菌が、アクチノバチルス、アシネトバクター、エロモナス、ボルデテラ、ブレビバシラス、ブルセラ、バクテロイデス、バークホルデリア、ボレリア、桿菌、カンピロバクター、キャプノサイトファーガ、カルジオバクテリウム、シトロバクター、クロストリジウム、クラミジア、エイケネラ、エンテロバクター、エシェリキア、エンテンバクタ、フランシセラ、フソバクテリウム、フラボバクテリウム、ヘモフィルス、ヘリコバクター、キンゲラ、クレブシエラ、レジオネラ、リステリア、レプトスピラ、モラクセラ、モルガネラ、マイコプラズマ、マイコバクテリウム、ナイセリア、パスツレラ、プロテウス、プレボテラ、プレジオモナス、シュードモナス、プロビデンシア、リケッチア、ステノトロフォモナス、ブドウ球菌、連鎖球菌、ストレプトマイセス、サルモネラ、セラチア、赤痢菌、スピリルム、トレポネーマ、ベイヨネラ、ビブリオ、エルシニア、またはザントモナスの各属由来である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
組成物が、D−チロシンを含む請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
組成物が、1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンをさらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
組成物が、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンをさらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項24】
組成物が、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−アスパラギンからなる群より選択される1つまたは複数のD−アミノ酸をさらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項25】
組成物が、D−チロシン、D−プロリンおよびD−フェニルアラニンを含む請求項21に記載の方法。
【請求項26】
組成物が、D−チロシン、D−ロイシン、D−トリプトファンおよびD−メチオニンを含む請求項21に記載の方法。
【請求項27】
殺生物剤を投与することをさらに含む請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
殺生物剤が、抗生物質である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
組成物が、基本的にデタージェントを含まない請求項1〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
バイオフィルム形成を治療(処理)、低減、または阻害するのに有効な量のD−アミノ酸を含む組成物であって、
前記組成物が基本的に対応するL−アミノ酸を含まず、
D−アミノ酸が、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、D−アスパラギンおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される組成物。
【請求項31】
バイオフィルム形成を治療(処理)、低減、または阻害するのに有効な量の2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせを含む組成物。
【請求項32】
D−アミノ酸の組み合わせが、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−アスパラギン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせである請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
D−アミノ酸がD−チロシンである請求項30、31または32に記載の組成物。
【請求項34】
組成物が、1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンをさらに含む請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
組成物が、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンをさらに含む請求項33に記載の組成物。
【請求項36】
組成物が、1つまたは複数のD−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−tyrosine.utamic acid、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、およびD−トリプトファンをさらに含む請求項33に記載の組成物。
【請求項37】
組成物が、D−チロシン、D−プロリンおよびD−フェニルアラニンを含む請求項33に記載の組成物。
【請求項38】
組成物が、D−チロシン、D−ロイシン、D−トリプトファンおよびD−メチオニンを含む請求項33に記載の組成物。
【請求項39】
組成物が、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン、キシリトール、トリクロサン、または二酸化塩素を含む請求項30〜38のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項40】
薬学的に許容可能なキャリアをさらに含む請求項30〜38のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項41】
有効量が、バイオフィルム関連障害を治療または防ぐのに有効な量である請求項30〜40のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項42】
バイオフィルム関連障害が、肺炎、嚢胞性繊維症、中耳炎、慢性閉塞性肺疾患、または尿路感染である請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
バイオフィルム関連障害が、医療機器関連感染症である請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
有効量が、表面上のバイオフィルムを治療または防ぐのに有効な量を含む請求項30〜40のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項45】
組成物が、表面への適用に適合した試薬をさらに含む請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
組成物が、洗浄液、包帯、創傷ゲル、または人工組織として処方されている請求項30〜45のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項47】
組成物が、錠剤、丸薬、トローチ、カプセル剤、エアロゾルスプレー、溶液、懸濁液、ゲル、ペースト、クリーム、またはフォームとして処方されている請求項30〜45のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項48】
組成物が、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所的)、経粘膜、腟および直腸投与用として処方されている請求項30〜45のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項49】
バイオフィルム耐性医療機器であって、
体液に接触しがちな表面;および前記表面上にコートまたは前記表面中に含浸されたD−アミノ酸を含み、
D−アミノ酸が、バイオフィルム形成を治療(処理)、低減、または阻害するのに有効な量であり、前記コーティングが、基本的に対応するL−アミノ酸を含まず、
D−アミノ酸が、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、D−アスパラギンおよびこれらの組み合わせからなる群より選択されるバイオフィルム耐性医療機器。
【請求項50】
体液に接触しがちな表面、および前記表面上にコートまたは前記表面中に含浸されたD−アミノ酸の組み合わせを含み、D−アミノ酸の組み合わせが、バイオフィルム形成を治療、低減、または阻害するのに有効な量であるバイオフィルム耐性医療機器。
【請求項51】
D−アミノ酸の組み合わせが、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−アスパラギン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせである請求項50に記載の機器。
【請求項52】
コーティングがD−チロシンを含む請求項49、50または51のいずれか1項に記載の機器。
【請求項53】
コーティングが、1つまたは複数のD−プロリンおよびD−フェニルアラニンをさらに含む請求項52に記載の機器。
【請求項54】
コーティングが、1つまたは複数のD−ロイシン、D−トリプトファン、およびD−メチオニンをさらに含む請求項52に記載の機器。
【請求項55】
コーティングが、1つまたは複数のD−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−アスパラギンをさらに含む請求項52に記載の機器。
【請求項56】
D−アミノ酸が、徐放製剤として処方される請求項49〜55のいずれか1項に記載の機器。
【請求項57】
表面が、基本的にデタージェントを含まない請求項49〜56のいずれか1項に記載の機器。
【請求項58】
機器が、1つまたは複数の鉗子、ピンセット、ハサミ、皮膚単鉤、管、針、開創器、歯石除去器、ドリル、のみ、やすり、鋸、カテーテル、整形外科器具、人工心臓弁、人工関節、人工喉頭、ステント、分路、ペースメーカー、手術用ピン、人工呼吸器、ベンチレータおよび内視鏡から選択される請求項49〜57のいずれか1項に記載の機器。
【請求項59】
D−アミノ酸を0.000001%〜0.5%の範囲の濃度で含む飲用液体であって、
D−アミノ酸が、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−チロシン、D−アスパラギンおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される飲用液体。
【請求項60】
D−アミノ酸の組み合わせを0.000001%〜0.5%の範囲の濃度で含む飲用液体であって、
D−アミノ酸の組み合わせが、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−アスパラギン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせである飲用液体。
【請求項61】
バイオフィルム形成に耐性のある組成物であって、
薬学的にまたは化粧品として適切な基剤;および
その基剤中に分散された有効量のD−アミノ酸を含み、それにより、バイオフィルムの形成を治療(処理)、低減、または阻害し、
D−アミノ酸が、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−アスパラギン、およびD−チロシン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択され、
基剤が基本的に対応するL−アミノ酸を含まない、組成物。
【請求項62】
バイオフィルム形成に耐性のある組成物であって、
薬学的にまたは化粧品として適切な基剤;および
その基剤中に分散された有効量のD−アミノ酸の組み合わせを含み、それにより、バイオフィルムの形成を治療(処理)、低減、または阻害し、
D−アミノ酸の組み合わせが、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせである、組成物。
【請求項63】
基剤が、液体、ゲル、ペースト、または粉末から選択される請求項61または62に記載の組成物。
【請求項64】
組成物が、シャンプー、入浴剤、ヘアケア製剤、石けん、ローション、クリーム、デオドラント剤、スキンケア製剤、化粧品用パーソナルケア製剤、インティメイト・ハイジーン製剤、フットケア製剤、光防護製剤、日焼け剤、防虫剤、制汗剤、シェービング剤、脱毛剤、香料製剤、デンタルケア、入れ歯ケア・口腔ケア製剤およびこれらの組み合わせからなる群より選択される請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
経口組成物であって、
経口的に受容可能なキャリア;および
有効量のD−アミノ酸を含み、それにより、バイオフィルム形成を治療(処理)、低減または阻害し、
D−アミノ酸が、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、D−アスパラギン、およびD−チロシン、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択され、
組成物が基本的に対応するL−アミノ酸を含まない、経口組成物。
【請求項66】
経口組成物であって、
経口的に受容可能なキャリア;および
有効量のD−アミノ酸の組み合わせを含み、それにより、バイオフィルム形成を治療(処理)、低減または阻害し、
D−アミノ酸の組み合わせが、D−アラニン、D−システイン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−フェニルアラニン、D−ヒスチジン、D−イソロイシン、D−リシン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−アスパラギン、D−プロリン、D−グルタミン、D−アルギニン、D−セリン、D−トレオニン、D−バリン、D−トリプトファン、およびD−チロシンからなる群より選択される2つ以上のD−アミノ酸の組み合わせである経口組成物。
【請求項67】
経口組成物が、練り歯磨き、歯磨ジェル、または歯磨き粉の形態である請求項65または66に記載の経口組成物。
【請求項68】
経口組成物が、うがい薬、マウスリンス、マウススプレー、歯科溶液、または洗浄液の形態である請求項65または66に記載の経口組成物。

【公表番号】特表2013−516492(P2013−516492A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548213(P2012−548213)
【出願日】平成23年1月10日(2011.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2011/020705
【国際公開番号】WO2011/085326
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】