説明

バニラプラニフォリア抽出物及びその抽出工程、並びにそれを含有する化粧用組成物、若しくは皮膚科用組成物

【課題】老化及び/又は老化に関連する生理学的機序の変化、又はそれに類似した症状よりもたらされる皮膚の衰えの一連の原因に効果を発揮することが可能な多官能性活性物質を提供すること。
【解決手段】バニラプラニフォリア抽出物は1種類の脂溶性画分からなる。この画分は、気相クロマトグラフィーによって分離した全成分の合計に対する相対パーセントで、不飽和モノカルボニル化合物0.5〜10%、不飽和ジカルボニル化合物20〜80%、及び不飽和ピラノン1〜40%を含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種類の脂溶性画分からなる新規なバニラプラニフォリア抽出物及びその抽出工程、それを含有する化粧用組成物若しくは皮膚科用組成物、並びに、特に老化、老化に関連する生理学的機序、又はそれら機序に類似する症状によりもたらされる皮膚の劣化の予防及び/又は治療を目的とした、化粧用組成物若しくは皮膚科用組成物においての多官能性活性物質としてのその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は主に3つの層からなる。すなわち、最も表面に近いものから、表皮、真皮、皮下組織である。表皮は、皮膚の保護と栄養機能の維持に大いに寄与する。
【0003】
皮膚の老化及び光老化、及びそれに関連する衰えは様々な形で顕在化する。その例として、表皮及び/又は真皮レベルでの組織の損傷による張り及び弾力の低下、表皮レベルでの微小循環の減少及び細胞の再生速度の鈍化によるつやの低下、メラニンの合成異常(又はメラニン生成)に関連する色素斑の出現、角質層のバリア機能の低下及び表皮の再生速度の低下による皮膚の乾燥、などが挙げられる。
【0004】
したがって、老化及び/又は老化に関連する生理学的機序の変化、又はそれに類似した症状よりもたらされる皮膚の衰えの一連の原因に効果を発揮することが可能な多官能性活性物質を提供する必要性がある。
【0005】
フランス特許出願FR2837384号では、化粧用又は医薬用組成物の調製におけるバニラ(好ましくはバニラタヒテンシス)抽出物の利用が開示されている。該抽出物内に含まれるポリフェノールにより太陽光の照射又はフリーラジカルの生成から皮膚を保護する効果が得られる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、1種類の脂溶性画分からなるバニラプラニフォリア抽出物が、老化、老化に関連する生理学的機序、又は該生理学的機序に関連する表皮及び/又は真皮レベルの異常が原因の症状に対し、生理学的機序の促進又は抑制を通じて効果を示すことを発見した。意外にも、これらの効果は、抽出物中のポリフェノールの存在とは関連しない。
【0007】
第一の態様では、本発明は、1種類の脂溶性画分からなるバニラプラニフォリア抽出物に関する。上記画分には以下が含まれることが好ましい。不飽和モノカルボニル化合物:0.5〜10%、不飽和ジカルボニル化合物:20〜80%、不飽和ピラノン:1〜40%。上記含有率は、気相クロマトグラフィーによって分離した全成分の合計に対する相対パーセントで表したものである。
【0008】
「脂溶性画分」とは、溶媒を用いた抽出を行う際に、バニラの粉砕及び/又は浸漬の後で、その後、相を分離するため有機溶媒を用いたデカンテーションを行うか否かに関わらず、油相に溶解し、水相には溶解しない画分を指す。特に、25℃において1質量%以上水に溶解せず、25℃において、少なくとも極性指数が3.5未満の非極性溶媒に1質量%以上溶解する画分を指す。ここで使用する該非極性溶媒としては、特にヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ジクロロメタンが挙げられる。上記非極性溶媒は、極性指数が1未満であることが好ましく、すなわちシクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタンが好ましい。「気相クロマトグラフィーによって分離した全成分合計に対する相対パーセントで表した含有率」とは、クロマトグラフィー系で分離した各成分の、全成分の合計に対する含有率を指す。なお、試料の調製にあたって溶媒によって抽出された、インジェクター内で気化することができる組成物のみを対象とする。
【0009】
試料の調製は、フランス標準NF T 60−233(1977年5月)「脂肪酸メチルエステルの調整」(5.2節 酸性脂肪体と脂肪酸に適用可能な方法)に準拠して行うことが好ましい。クロマトグラフィーの条件は、フランス標準NF EN ISO 5508(1995年6月)に定められている。簡潔にいうと、この方法は、まず酸性のメタノール溶媒中で脂肪酸をエステル化し、該エステル化した脂肪酸をヘプタンで抽出し、その後該ヘプタン溶液を気相クロマトグラフィーに導入する。
【0010】
好ましくは、本発明のバニラプラニフォリア抽出物は、以下を含む画分によって構成される。不飽和モノカルボニル化合物:1〜5%、不飽和ジカルボニル化合物:35〜65%、不飽和ピラノン:3〜25%。上記含有率は、気相クロマトグラフィーによって分離した全成分の合計に対する相対パーセントで表したものである。
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、上記抽出物には以下が含まれる。ペンタコセン−16−オン−2、ヘプタコセン−18−オン−2、ノナコセン−20−オン−2から選択される不飽和モノカルボニル化合物及び/又はペンタコセン−16−ジオン−2,4、ヘプタコセン−18−ジオン−2,4、ノナコセン−20−ジオン−2,4、ヘントリアコンテン−22−ジオン−2,4から選択される不飽和ジカルボニル化合物及び/又はノナデセニル−2 ジヒドロ−2,3 メチル−6 ピラノン−4、ヘンイコセニル−2 ジヒドロ−2,3 メチル−6 ピラノン−4、トリコセニル−2 ジヒドロ−2,3 メチル−6 ピラノン−4から選択される不飽和ピラノン。
【0012】
加えて、上記の脂溶性画分は、特に、5〜50%、好ましくは10〜40%の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸を含む。上記含有率は、気相クロマトグラフィーによって分離した全成分の合計に対する相対パーセントで表したものである。
【0013】
更に、好ましい態様によれば、上記抽出物はコレステロール、カンペステロール、スチグマステロール、β−シトステロールから選択されるステロール化合物も含む。
【0014】
他の態様として、又は上記に追加して、(特にヒドロキシル化又はアルコキシル化)ベンズアルデヒド誘導体、特に4−ヒドロキシ−3−メトキシ−ベンズアルデヒド(バニリン)を好ましくは0.1〜10質量%含む。
【0015】
使用する原料の例としては、バニラプラニフォリア種のバニラの種子鞘が挙げられ、該種子鞘は周知の方法により粉砕又は破砕できる。
【0016】
上記粉砕物は、単独又は複数の溶媒による抽出の対象とすることができる。溶媒の例としては、C1〜C4アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、有機溶媒(プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等)、エチルアセテート、ヘキサン、シクロヘキサン又は当該技術において周知のすべての有機溶媒)が挙げられる。又、超臨界流体(好ましくは超臨界二酸化炭素)によっても抽出を行うことができる。溶媒はアルコール性のものが好ましい。
【0017】
抽出作業は一般的に、促進温度(例えば室温〜100℃)で30分〜12時間、上記溶媒のうち単独又は複数の溶媒中で、粉砕物を浸漬又はゆっくりと撹拌して行う。
【0018】
バニラに含まれる不溶性物質を除去するため、上記によって得られた溶液を濾過する。エタノール、メタノール、ヘキサン、シクロヘキサン、エチルアセテート等の揮発性溶媒を用いている場合には、必要に応じて、溶媒も除去する。
【0019】
抽出作業におけるこの処理は、植物抽出物の分野においては公知であり、当業者にあっては、通常の知識を基に反応パラメータを調製することが可能である。抽出作業におけるこの処理によって、バニラオレオレジンが得られる。
【0020】
本発明の好ましい態様では、該オレオレジンの精製を目的として、分別処理を行う。好ましくは、上記の溶媒のうち単独の溶媒又は複数種類を混合した溶媒、又は、好ましくは含水アルコール溶媒を用いる。超臨界流体(好ましくは超臨界二酸化炭素)による分別を行うこともできる。
【0021】
上述の通り、単独又は複数の揮発性溶媒を用いている場合には、次の処理に先立ち、溶媒も除去する。
【0022】
適切な抽出溶媒を用いた抽出により、又は、沈殿後、上記の分別作業により得られた脂溶性画分を回収する。
【0023】
上記脂溶性画分は、本発明のバニラプラニフォリア抽出物として用いることができる。更に、好ましい態様によれば、上記脂溶性画分に分子蒸留の処理を行う。
【0024】
短行程のワイパー式薄膜分子蒸留装置が好ましく用いられる。上記分子蒸留装置は、ローラーワイパーを備えた蒸留室を含み、蒸発面(熱面)に蒸留する物質を継続的に拡散させることができる。物質の蒸気は、蒸留室中央に配置される冷却器を通じて凝縮される。蒸留液と残滓は、重力流によって捕集される。この方法は、それぞれの成分の沸点の違いを利用して、複合混合物の成分を分離するものである。短行程のワイパー式薄膜分子蒸留は、高真空状態で蒸留を行うため、より低い温度で蒸留が可能であり、また、蒸留装置内で複合混合物がより早く分離するというメリットがある。材料の腐敗速度は、温度と暴露時間が原因で極めて速くなる。例えば、アランビック式の蒸留器では、混合物を高温で数時間にもわたり放置することがあるため、変性の原因となる。
【0025】
これまで、このような工程は、植物油の場合には不鹸化画分を分離する目的又は不鹸化画分を除去して該植物油を精製する目的、又、水溶性画分又は脂溶性画分の場合には抽出物の脱色又は脱臭の目的にしか用いられなかった。
【0026】
ところが、本発明者は、分子蒸留の技術を利用することにより、上述のような脂溶性画分から油性蒸留物を分離できることを発見した。好ましい態様によれば、本発明の多官能性活性物質として利用されるバニラプラニフォリア抽出物の抽出工程において、脂溶性画分の分子蒸留を加えて行う。この分子蒸留は、好ましくは以下の手順を含む。すなわち、上述した抽出により得られた脂溶性画分を、温度約100〜250℃、圧力約0.1〜0.001mbarで分子蒸留し、蒸留液を得る。
【0027】
上記工程を行う際の好ましい条件を、以下に述べる。脂溶性画分の蒸留に先立ち、蒸留を促進するため又は該脂溶性画分のカラム内での流れをスムーズにするため、該脂溶性画分に高粘度溶媒を添加することが好ましい。高粘度溶媒は鉱物油、植物油、ポリオール(好ましくはポリエチレングリコール)から選択される。
【0028】
脂溶性画分と高粘度溶媒の混合物は、一定流量に制御され、温度20〜120℃、好ましくは50〜100℃で、筒型の蒸発缶の熱内壁に送り出される。複数の輪状のローラーワイパーが擦過することにより、混合物の薄膜が、100〜250℃(好ましくは150〜220℃)に維持された加熱内壁の全面に形成される。
【0029】
蒸発缶中で極低圧(0.1〜0.001mbar)が優勢であることにより、内壁との接触時に揮発性成分は徐々に揮発し、揮発性の低い成分が内壁の下方へ伝い流れる。
【0030】
送り出された蒸気は、熱内壁と同心であり熱内壁と極めて近くに配置されている冷内壁において凝縮される。冷却内壁の温度は40〜120℃、好ましくは60〜100℃である。
【0031】
本工程において分離された各成分は、重力により、それぞれ熱内壁と冷内壁の下方へ伝い流れる。得られた蒸留液には、必要に応じて分離工程(例えば濾過又は遠心分離)を加えて行う。
【0032】
このようにして、本発明の多官能性活性物質として利用可能な油性蒸留物が得られる。好ましいことに、本発明により得られる抽出物(脂溶性画分又は油性蒸留物)は透明である。さらには、上記抽出物には、抽出工程で添加された溶媒やいかなる化学試料もほとんど、好ましくは一切、含まれない。
【0033】
同様に、エマルション状の化粧用組成物又は皮膚科用組成物において有効性を得るために、従来は抽出物の凝縮が必要となり、製剤上問題があったが、上記抽出物は凝縮度が高く、更に、従来の方法によって得られた植物抽出物のように、凝縮して濃い色になってしまうことがないため、上述のような問題を発生させることなく利用できる。
【0034】
このことから、本発明による抽出物は、化粧用組成物又は皮膚科用組成物の調製に直接用いることができる。同様に、本発明は上述の工程により得ることのできるバニラプラニフォリア抽出物、つまり、少なくとも一種類の溶媒を用いて破砕したバニラプラニフォリアから抽出を行い、脂溶性画分を回収し、続いて該脂溶性画分を分子蒸留し油性蒸留物を得るという手順で得られたバニラプラニフォリア抽出物にも関する。
【0035】
別の態様によれば、本発明は、化粧用組成物における上述のバニラプラニフォリア抽出物の、皮膚の衰えの改善剤及び/又は美白材及び/又は皮膚の微小循環の改善材及び/又は表皮再生剤及び/又はエモリエント剤としての利用に関する。
【0036】
本発明は同様に、上述のバニラプラニフォリア抽出物の皮膚脱色用組成物の調製における利用に関する。
【0037】
好ましいことに、本発明によるバニラプラニフォリア抽出物は、特に老化を原因とする皮膚の劣化を予防又は改善する生理学的機序に対する重要な機能を複数有していることが明らかになった。
【0038】
具体的には本発明は、本発明によるバニラプラニフォリア抽出物の、メラニン生成阻害剤、特にエンドセリン生成阻害剤としての利用化粧料における利用に関する。
【0039】
同様に、好ましいことに、本発明によるバニラプラニフォリア抽出物は、ケラチノサイトによる複数群の増殖因子の生成を活性化する機能があることが明らかになった。
【0040】
具体的には、上記の機能は以下の増殖因子に対して働きかける。FGF−b(Basic Fibroblast Growth Factor、線維芽細胞増殖因子)は、FGFB、b−FGF、FGF−2とも呼ばれ、細胞(特に線維芽細胞)の増殖、治癒又は老化に必須のケラチノサイトの移動(Ashcroft GS et al.,J. Anat,1997,190 (Pt 3):351−65)、及び血管形成(Bikfalvi et al., Endocrine review, 1997, Vol 18 No.1)、を促す機能を有することにより、又、紫外線照射に反応して(Kramer M et al., J.Biol.Chem.,1993, 268(9):6734−41)、多くの組織の維持と再生において重要な役割を果たす。
【0041】
分泌されたFGF−bは細胞外マトリックスに貯留され、組織の再生に用いられる。さらに、FGF−bは、メラノサイトの増殖と分化にも関わっている(Tada A et al. Cell, Growth Differ., 1998, 9 (7) : 575−84)。PDGF(Platelet−Derived Growth Factor、血小板由来増殖因子)は、特にマイトジェン活性を、間葉組織由来の大部分の細胞に適用し(Lepisto J et al, 1995, Biochem. Biophys. Res. Commun, 209 (2) :393−9)、該細胞によるコラーゲン及びコラゲナーゼの生成を促進することにより、組織の治癒及び修復等の生理学的過程に関わっている(Tan EM et al., Biochem. J. 1995, 310(Pt 2):585〜8)。同様に、PDGFの誘導レベル及び細胞の複製能力は年齢と結びついていることが明らかになっている。老化した線維芽細胞のPDGF率は低下している(Karlsson C et al., J. Cell Physiol., 1994, 158(2):256〜62)。同様に、年齢によって組織の修復機能が異なることが、種々の増殖因子の量と種類によって説明できることが明らかになっている(Ashcroft GS et al., J. Anat, 190, 1997,(Pt 3):351〜65)。TGFβ(Transforming Growth Factor β、トランスフォーミング増殖因子β)は、細胞増殖の調節に介在するサイトカインで、ケラチノサイト増殖の調節(Yin L et al., J. Invest. Dermatol., 2003, 120(4):703〜5; Rittie L et al., Ageing Res. Rev., 2002, 1(4):705〜20)、及び細胞外マトリックスの生成(Reed MJ et al., J. Cell Physiol, 1994, 158(1):169〜79; Schiller M and al., J. Dermatol. Sci, 2004, 35(2):83〜92)に関わる。VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor、血管内皮細胞増殖因子)は、皮膚内で、皮膚血管形成に関わる主要因子である。表皮は重要なVEGF源である。VEGFは増殖中のケラチノサイトにより多量に分泌される。VEGFのARNmは、in situでも細胞培養でも通常のケラチノサイトによって発現される。VEGFは、高齢の被験者にあっても、内皮細胞の恒常性、及び、血管新生刺激に対して応答する該内皮細胞の能力を維持することが明らかになっている(Watanabe Y et al., 1997, Oncogene 14:2025〜2032)。他方で、紫外線への暴露後に、VEGFが減少することが観察されている(Mildner M et al., Photochem. Photobiol., 1999; 70 (4):674〜9)。HB−EGF(Heparin−Binding Epidermal Growth Factor、膜結合型増殖因子)は、ケラチノサイトの調節と分化(Iwamoto et al., Cytokine and Growth Factors Rewiews, 2000, 11:335〜344)、又、該因子に依存して増殖する幼若細胞の老化(JID Suppl.24:S46〜S50; Kanzaki Y et al., Exp. Cell. Res., 2002, 279(2):321〜329)において重要な役割を果たす。
【0042】
同様に、本発明は、少なくとも1つの細胞増殖因子のケラチノサイトによる生成を活性化する活性物質としての、特に、FGF−b、PDGF、TGFβ、VEGF、HB−EGFのうち少なくとも1つの細胞増殖因子の活性物質としての、本発明によるバニラプラニフォリア抽出物の利用に関する。
【0043】
同様に、本発明は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(matrix metalloproteinase、MMP)活性阻害剤としての、本発明によるバニラプラニフォリア抽出物の利用に関する。マトリックスメタロプロテイナーゼは、皮膚の生理的な再形成に寄与する細胞外マトリックスを分解する酵素であるが、加齢や紫外線への暴露により、MMP、特にMMP1、MMP3、MMP9の活性が促進される。これにより、細胞外マトリックスが高度に分解され、その結果、皮膚の組織が沈下し、しわが形成される(Rittie L et al., Ageing Res. Rev., 2002, 1(4):705〜20、Chung JH et al., J.Invest. Dermatol, 2001, 117(5)1218〜24)。同様に、本発明は、さらに別の態様によれば、上述のバニラプラニフォリア抽出物及び化粧料又は医薬品に使用できる賦形剤を含有する化粧用組成物又は皮膚科用組成物に関する。好ましくは、上記抽出物は、化粧用組成物又は皮膚科用組成物中に、組成物の総質量の0.001〜10%、特には0.01〜10%、好ましくは0.1〜10%含まれる。上記化粧用組成物又は皮膚科用組成物は、特に、局所用として用いることができる。
【0044】
好ましいことに、上記化粧用組成物又は皮膚科用組成物は、粉末、エマルション、マイクロエマルション、ナノエマルション、懸濁液、溶液、ローション、クリーム、水性ゲル又は水アルコールゲル、ムース、セラム、エアロゾル用溶液又は分散液、又は、脂質小胞の分散液の形で提供される。
【0045】
エマルションの場合、油中水滴エマルション又は水中油滴エマルションのいずれでもよい。
【0046】
本発明の化粧用組成物又は皮膚科用組成物には、様々な原料及び投与形に応じて選択される溶媒も含まれる。
【0047】
例として、水(好ましくは脱塩水)、エタノール等のアルコール、又は、エトキシジグリコール又はジエチレングリコールモノメチルエーテル等のジエチレングリコールエーテル、が挙げられる。
【0048】
上記化粧用組成物は、更に、当該技術において周知の添加剤を少なくとも1つ含むことができる。例えば、エモリエント剤又は保湿剤、ゲル化剤及び/又は増粘剤、界面活性物質、油、活性物質、着色剤、防腐剤、酸化防止剤、有機又は無機粉末、紫外線防止剤、香料、のうち少なくとも1つの化合物を含むことができる。
【0049】
特に、上記組成物は、以下を含むことができる。例えばグリセリン、グリコール、KF6011(信越化学工業社製)等の水溶性シリコーン、Resplanta jojoba(Res pharma社製)等の水溶性ホホバ油、から選択される1つ又は複数のエモリエント剤又は保湿剤。
【0050】
上記エモリエント剤又は保湿剤は、組成物の総質量の0〜30質量%、好ましくは2〜10質量%の割合で組成物に含まれることができる。例えばセルロース誘導体、植物由来の増粘剤(グアーガム、キャロブガム、アルギン酸塩、カラギーナン、ペクチン)、細菌由来の増粘剤(キサンタンガム)、粘土(ラポナイト)、アンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/VPコポリマー及びアクリロイルジメチルタウリンアンモニウムメタクリル酸ベヘネス−25クロスポリマー(例えば、Clariant社製Aristoflex AVC及びAristoflex HMB)、から選択される1つ又は複数の水相ゲル化剤又は水相増粘剤。上記ゲル化剤又は増粘剤は、組成物の総質量の0〜10質量%の割合で組成物に含まれることができる。1つ又は複数の界面活性物質、好ましくは非イオン系界面活性物質:組成物の総質量の0〜8質量%、好ましくは0.5〜3質量%。揮発性又は不揮発性油、炭化水素油又はシリコーン油、直鎖状油、環鎖状又は分岐鎖状油と総称される、室温の、1種類又は複数種類の液体油(例えば、イソドデカン、シクロペンタジメチルシロキサン、ジメチコン、イソノナノ酸イソノニル、テトラステアリン酸ペンタエリスリチル等):組成物の総質量の0〜約10質量%、好ましくは0.5〜5質量%。1種類又は複数種類の、自然由来、バイオ技術由来又は合成の、生物活性を有する活性物質(例えば、ビタミン、痕跡元素、アラントイン、植物性タンパク、植物抽出物等)。例えば、ポンソーのジナトリウム塩、アリザリングリーンのジナトリウム塩、キノリンイエロー、アマランスのトリナトリウム塩、タートラジンのジナトリウム塩、ローダミンのモノナトリウム塩、フクシンのジナトリウム塩、又はキサントフィル等の、1種類又は複数種類の水溶性着色剤:好ましくは組成物の総質量の0〜2質量%。
【0051】
化粧料に一般的に用いられるその他の添加剤、特に、当該技術において周知の、防腐剤、酸化防止剤、香料も、同様に本発明の組成物に含まれてよい。当業者は、上記組成物の性質を保持する限りにおいて、これら使用可能な一連の添加物から、上記組成物にいずれを添加し、その量を選択しうる。以下の実施例は、本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0052】
実施例1:本発明の抽出物の調製方法
(1)アルコール抽出法バニラプラニフォリアの種子鞘0.5kgをナイフミル(RETSCH社製)で粉砕し、還流装置を備える5Lのガラス製反応容器に入れる。上記反応容器に96.3%エタノール2.5Lを加え、1時間加熱する。その後、一晩冷浸する。翌朝、内容物を濾過し、反応容器を空にする。抽出物を含む溶媒は保管しておく。上記粉砕したバニラ種子鞘を再び96.3%エタノール2.5Lと共にガラス製反応容器に入れ、約80℃で4時間加熱還流する。内容物を濾過し、反応容器を空にする。得られた2つの濾液を混ぜ合わせる。その後、真空下で、溶媒を回転蒸発器によって蒸発させる。このようにして、0.155kgのバニラプラニフォリアのオレオレジンが得られる。収率:31%
【0053】
(2)含水アルコールによる分別96.3%エタノールと水を低温で混合(70/30 w/w)し、水性エタノールを調製する。上述の手順で得られたバニラオレオレジンを、溶解を促進するため、60℃で融解する。続いて、8kgの上記オレオレジンと2kgの水性エタノールを、完全に均一になるまでホモジナイザーで混合する。上記混合物を72時間デカンテーションした後、上相に脂溶性の浮遊物が形成される。下相を取り除いて上相を回収し、該上相中の溶媒を、真空下で回転蒸発器によって蒸発させる。このようにして、2.38kgのバニラプラニフォリアの脂溶性画分が得られる。収率:29.8%
【0054】
(3)分子蒸留上述の手順で得られたバニラプラニフォリアの脂溶性画分150gを、ポリエチレングリコール600(INCI名PEG12)50gと混合する。KDL4蒸留装置(UIC社)で、以下の条件において2回の蒸留を行った。
【0055】
【表1】

上記蒸留の収率は、1回目蒸留液:18.53%、2回目蒸留液:8.67%である。
【0056】
(4)遠心分離1回目蒸留液をデカンテーションした後、浮遊物を回収して、該回収した浮遊物を4000回転/分で10分間遠心分離にかけ、油分を含む上相を回収する。デカンテーションにより除去された残留物も遠心分離にかけ、油分を含む上相を回収する。得られた2つの油を混合して、1回目蒸留の最終蒸留液である油24.22gを得る。2回目蒸留液にはゴムが含まれないため、遠心分離の工程は行わない。全ての油性画分を合わせると、1回目蒸留の最終蒸留液24.22g+2回目蒸留液13g=37.22gとなる。上記分子蒸留及び遠心分離の収率は24.81%である。
【0057】
実施例2:本発明のバニラプラニフォリア抽出物の成分分析
(1)実施例1の要領で得られたバニラプラニフォリア抽出物100mgを、1N塩酸メタノール溶液2ml中で可溶化する。上記溶液を撹拌後、80℃で10分間湯煎する。ヘプタン2mlで液液抽出した後、クロマトグラフィーに導入することにより、エステル化した試料を得る。クロマトグラフィーの条件は以下の通りである。気相クロマトグラフィー(Agilent 6890)250℃のインジェクター(スプリット又はスプリットレス)調製した試料0.5μLをスプリット比1:100で導入長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μmの、100%ポリジメチルシロキサンをコーティングしたキャピラリーカラム(Agilent DB−1)で分離キャリアガス:ヘリウム1ml/分カラムオーブンの初期温度:700℃温度勾配70℃〜250℃(2℃/分)、等温線250℃60分間合計時間:150分検出:炎イオン化検出器(補助ガス:窒素)
【0058】
以下の表2に示す割合は、クロマトグラフィー系で分離されたすべての成分の合計に対する相対パーセントで示される。この結果に含まれるのは、試料の調製の際ヘキサンにより抽出された成分と、インジェクター内で蒸発可能な成分のみである。成分の同定は、質量分析計で行った。結果を、以下の表2に示す。
【0059】
【表2】



【0060】
実施例3:増殖因子HB−EGFに対する本発明のバニラプラニフォリア抽出物の活性の研究検査の対象としたのは、実施例1の手順2の最後で得られたバニラプラニフォリア抽出物(以後「脂溶性画分」と呼ぶ)と、手順4の最後で得られたバニラプラニフォリア抽出物(以後「油性蒸留液」と呼ぶ)
(1)ケラチノサイト培養物の調製本手順は、生物活性に関するすべての検査において共通である。新生児包皮由来のケラチノサイト(Clonetics社、San Diego、USA)を6ウェルプレートに播種し、ケラチノサイト増殖用培地(Clonetics社製KBM)、特に、組換えヒトEGF、インスリン、ヒドロコルチゾン、ウシ下垂体抽出物、ゲンタマイシン、アンフォテリシンBを添加した改変培地で培養した。37℃の空気炉で24時間培養した後、凝集した細胞をPBS(Gibco社)で洗浄し、500μg/ml、10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/mlの各濃度で検査対象を含む専用の基本培地(Clonetics社製KBM)で24時間インキュベートした。抽出物の細胞毒性を検査後、活性を評価した。すべての検査において、すべての濃度について必ずしも検査していない。
【0061】
(2)HB−EGFのメッセンジャーRNA(mRNA)の発現定量検査原理:リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応増幅(Real Time Polymerase Chain Reaction)を利用して、処理前の試料中と処理後の試料中のHB−EGFのメッセンジャーRNAの発現を定量する。結果は、該試料中のハウスキーピング遺伝子の発現に対照させて標準化し、又、PCRの効率の差異を考慮して修正してある。
【0062】
結果は、処理後の試料中の対象となる遺伝子(HB−EGF)の発現の増加又は減少の回数で表され、転写の絶対数で表されるものではない。
【0063】
検査対象の遺伝子のcDNA/mRNA配列は、GenBankより入手した。対象遺伝子:HB−EGFハウスキーピング遺伝子:PBDG
【0064】
PCRの全てのプライマーは、Whitehead Institute for Biomedical ResarchのソフトウェアPRIMER3を使用して得た。
【0065】
検査方法
mRNAは、試薬Trizol(Invitrogen社)を製造者の推奨に従って用い、分離した。逆転写は、遺伝子キットAmp RNA PCR(Applied Biosystems社)を製造者の推奨に従って用い、行った。
【0066】
PCRのリアルタイム定量は、機材iCYCLER IQ(Biorad)を用いて、SYBR Green Iによる検出で行った。すべての検査において、cDNAは正規化されたプログラムを用いて増幅してある。各試料は、IQ SYBR Green I Supermix、水、プライマー(ストック)を加えて処理した。反応によるcDNAの最終的な量は、逆転写に使われたRNAの総量25ngに対応したものであった。
【0067】
PCRの特異性は、アガロースゲル電気泳動によってテストし、PCRプログラムに含まれる融点解析を用いて各試料について評価した。
【0068】
対象遺伝子の発現の相対的定量は、Pfaffl(Pfaffl、MW、Nucleic Acids Res.29(9)、p.E45、2001)の数学モデルを用いて行った。結果を以下の表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
これらの結果から、本発明のバニラプラニフォリア抽出物は増殖因子HB−EGFの合成促進活性を有することが明らかになった。
【0071】
実施例4:増殖因子TGF−β1に対する本発明のバニラプラニフォリア抽出物の活性の研究
細胞培養に際しての活性化された増殖因子TGF−β1の濃度について、イムノアッセイキットQuantikine(登録商標)(No.DB100、R&D Systems)を用い、ELISA法で定量的評価を行った。ケラチノサイトの培養条件及び検査対象の試料は、実施例3と同一である。結果を以下の表4に示す。
【0072】
【表4】

【0073】
これらの結果から、本発明のバニラプラニフォリア抽出物は増殖因子TGF−β1の合成促進活性を有することが明らかになった。
【0074】
実施例5:増殖因子VEGFに対する本発明のバニラプラニフォリア抽出物の活性の研究細胞培養に際しての増殖因子VEGFの濃度について、イムノアッセイキットQuantikine(登録商標)(No.DVE00、R&D Systems)を用い、ELISA法で定量的評価を行った。ケラチノサイトの培養条件及び検査対象の試料は、実施例3と同一である。結果を以下の表5に示す。
【0075】
【表5】

【0076】
これらの結果から、本発明のバニラプラニフォリア抽出物は増殖因子VEGFの合成促進活性を有することが明らかになった。
【0077】
実施例6:増殖因子PDGF−AAに対する本発明のバニラプラニフォリア抽出物の活性の研究細胞培養に際しての増殖因子ヒトPDGF−AAの濃度について、イムノアッセイキットQuantikine(登録商標)(No.DAA00、R&D Systems)を用い、ELISA法で定量的評価を行った。ケラチノサイトの培養条件及び検査対象の試料は、実施例3と同一である。結果を以下の表6に示す。
【0078】
【表6】

【0079】
これらの結果から、本発明のバニラプラニフォリア抽出物は増殖因子PDGF−AAの合成促進活性を有することが明らかになった。
【0080】
実施例7:増殖因子FGF−bに対する本発明のバニラプラニフォリア抽出物の活性の研究細胞培養に際しての増殖因子ヒトFGF−bの濃度について、イムノアッセイキットQuantikine(登録商標)(No.DFB50、R&D Systems)を用い、ELISA法で定量的評価を行った。ケラチノサイトの培養条件及び検査対象の試料は、実施例3と同一である。結果を以下の表7に示す。
【0081】
【表7】

【0082】
これらの結果から、本発明のバニラプラニフォリア抽出物は増殖因子FGF−bの合成促進活性を有することが明らかになった。
【0083】
実施例8:エンドセリン−1に対する本発明のバニラプラニフォリア抽出物の活性の研究細胞培養に際してのヒトエンドセリン−1の濃度について、イムノアッセイキットQuantikine(登録商標)(No.BBE5、R&D Systems)を用い、ELISA法で定量的評価を行った。ケラチノサイトの培養条件及び検査対象の試料は、実施例3と同一である。結果を以下の表8に示す。
【0084】
【表8】

【0085】
これらの結果から、本発明のバニラプラニフォリア抽出物はエンドセリン−1の合成阻害活性を有することが明らかになった。
【0086】
実施例9:マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)に対する本発明のバニラプラニフォリア抽出物の活性の研究
検査原理検査する物質を、活性化されたMMPと共にインキュベートする。各MMPに特異の蛍光性酵素基質を添加することにより、酵素活性を制御する。
【0087】
検査方法プロMMP−1、プロMMP−2、又はプロMMP−9を、室温のAPMA(p−アミノフェニル酢酸第二水銀)溶液と共にプレート内に入れ、1時間軽く撹拌しインキュベートする。
【0088】
阻害作用を持ち得る様々な物質を、様々な濃度で加える。続いて、該混合物を室温で軽く撹拌しインキュベートする。ジメチルスルホキシド中に可溶化された蛍光性基質を加え、酵素反応を誘発する。
【0089】
蛍光分光光度計を用いて該酵素反応を1時間追跡する。MMP1の場合は励起波長360nm、放射波長460nmで蛍光発光を測定する。MMP2及びMMP9の場合は励起波長320nm、放射波長405nmで蛍光発光を測定する。結果は、相対蛍光単位(RFU)で示す。RFUは加水分解された基質の量(毎分)を表す。
【0090】
蛍光分光光度計Microwin 2000で吸光量の変化Δを算出する。これは、酵素反応の初期速度(Vi)を表す。各検査において、阻害作用を持ち得る物質の各濃度について得られた3つのVi値の平均を算出する。10回の検査の結果を±SDで表し、更に残効性をパーセンテージで表す。結果を以下の表9〜11に示す。
【0091】
【表9】

【0092】
これらの結果から、本発明のバニラプラニフォリア抽出物はMMP1の阻害活性を有することが明らかになった。
【0093】
【表10】

【0094】
これらの結果から、本発明のバニラプラニフォリア抽出物はMMP2の阻害活性を有することが明らかになった。
【0095】
【表11】

【0096】
これらの結果から、本発明のバニラプラニフォリア抽出物はMMP9の阻害活性を有することが明らかになった。
【0097】
実施例10:水中油滴(O/W)エマルション以下の組成物は当業者において周知の方法で調製することができる。以下に示す分量は質量%で表示している。
エマルションAセテアリルアルコール+セテアリルグルコシド:4.00%ベヘネス−25:2.00%バニラプラニフォリアの脂溶性画分*:1.00%カンゾウ抽出物:0.10%皮膚軟化剤:35.00%酢酸トコフェロール:0.50%ジメチコン:2.00%EDTA:0.05%グリセリン:5.00%ゲル化剤:2.00%pH調整剤:十分量保存料:十分量水:合計が100.00%となる十分量*実施例1の方法で調製
【0098】
エマルションBベヘネス−25:2.00%バニラプラニフォリアの油性蒸留液:0.10%*ツボクサ抽出物:0.20%張り向上剤:5.00%エモリエント剤:15.00%紫外線防止剤:0.50%酢酸トコフェロール:0.50%シクロメチコン:5.00%EDTA:0.05%グリセリン:5.00%ゲル化剤:2.00%pH調整剤:十分量水:合計が100.00%となる十分量*実施例1の方法で調製

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類の脂溶性画分で構成されているバニラプラニフォリア抽出物。
【請求項2】
前記脂溶性画分が、気相クロマトグラフィーで分離した全成分の合計に対する相対パーセントで表した場合に、不飽和モノカルボニル化合物0.5〜10%、不飽和ジカルボニル化合物20〜80%、不飽和ピラノン1〜40%を含む請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
前記脂溶性画分が、気相クロマトグラフィーで分離した全成分の合計に対する相対パーセントで表した場合に、不飽和モノカルボニル化合物1〜5%、不飽和ジカルボニル化合物35〜65%、不飽和ピラノン3〜25%を含む請求項1又は2に記載の抽出物。
【請求項4】
ペンタコセン−16−オン−2、ヘプタコセン−18−オン−2、及びノナコセン−20−オン−2から選択される不飽和モノカルボニル化合物を含む請求項1乃至3のいずれか記載の抽出物。
【請求項5】
ペンタコセン−16−ジオン−2,4、ヘプタコセン−18−ジオン−2,4、ノナコセン−20−ジオン−2,4、及びヘントリアコンテン−22−ジオン−2,4から選択される不飽和ジカルボニル化合物を含む請求項1乃至4のいずれか記載の抽出物。
【請求項6】
ノナデセニル−2 ジヒドロ−2,3 メチル−6 ピラノン−4、ヘンイコセニル−2 ジヒドロ−2,3 メチル−6 ピラノン−4、及びトリコセニル−2 ジヒドロ−2,3 メチル−6 ピラノン−4から選択される不飽和ピラノンを含む請求項1乃至5のいずれか記載の抽出物。
【請求項7】
前記画分が、気相クロマトグラフィーで分離した全成分の合計に対する相対パーセントで表した場合に、飽和又は不飽和脂肪酸5〜50%を更に含む請求項1乃至6のいずれか記載の抽出物。
【請求項8】
コレステロール、カンペステロール、スチグマステロール、及びβ−シトステロールから選択されるステロール化合物を含む請求項1乃至7のいずれか記載の抽出物。
【請求項9】
少なくとも1種類の溶媒を用いてバニラプラニフォリア粉砕物からの抽出を行い、その脂溶性画分を回収する工程により、場合によっては更に前記脂溶性画分を分子蒸留することにより油性蒸留液を得るという手順で得られるバニラプラニフォリア抽出物。
【請求項10】
老化、老化に関連する生理学的機序、又は該生理学的機序に類似した症状、による皮膚の衰えの予防用及び/又は治療用の化粧用組成物又は皮膚科用組成物における多官能性活性物質としての、請求項1乃至9のいずれか記載のバニラプラニフォリア抽出物の使用。
【請求項11】
化粧用組成物における、皮膚の衰えの改善剤及び/又は美白剤及び/又は皮膚の微小循環の改善材及び/又は表皮再生剤及び/又はエモリエント剤としての、請求項1乃至9のいずれか記載のバニラプラニフォリア抽出物の使用。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか記載のバニラプラニフォリア抽出物の、皮膚脱色用組成物の調製における使用。
【請求項13】
請求項1乃至9のいずれか記載のバニラプラニフォリア抽出物と、化粧料又は医薬品に使用できる賦形剤と、を含む化粧用又は皮膚科用組成物。
【請求項14】
局所用である請求項13に記載の化粧用又は皮膚科用組成物。

【公表番号】特表2009−508914(P2009−508914A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531728(P2008−531728)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001312
【国際公開番号】WO2007/034042
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(506273087)シャネル パルファン ボーテ (20)
【氏名又は名称原語表記】CHANEL PARFUMS BEAUTE
【住所又は居所原語表記】135,avenue Charles de Gaulle,F−92200 Neuilly sur Seine,France
【Fターム(参考)】