パターンマッチング用画像作成方法、及びパターンマッチング用画像作成装置
【課題】本発明は、露光シミュレーション等を行うことなく、設計データに基づいてテンプレートを作成する装置であって、実パターンの大きさに沿った画像の形成が可能なパターンマッチング用画像作成装置の提供を目的とする。
【解決手段】上記目的を達成するための一態様として、マッチング用画像を形成するに当たり、設計データを目標パターンサイズに基づいて、縮小、或いは拡大し、当該縮小、或いは拡大が行われたパターンに基づいて、マッチング用の画像を形成するパターンマッチング用画像作成装置を提案する。
【解決手段】上記目的を達成するための一態様として、マッチング用画像を形成するに当たり、設計データを目標パターンサイズに基づいて、縮小、或いは拡大し、当該縮小、或いは拡大が行われたパターンに基づいて、マッチング用の画像を形成するパターンマッチング用画像作成装置を提案する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンマッチング用画像作成方法、及びパターンマッチング用画像作成装置に係り、特に試料の設計データに基づいて、パターンマッチング用の画像を形成する方法、及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)等を用いた試料の測定、或いは検査装置では、微小な測定,検査対象の位置を特定するために、参照画像(以下、テンプレートと称することもある)を用いたパターンマッチングが行われている。また、実際のSEM画像からテンプレートとなる領域を切り出す作成法では、実際にパターンが形成された後しかテンプレートを作成することができず、また相応の手間を要するため、半導体デバイスやフォトマスク等の設計データを用いてテンプレートを作成する手法が採用されるようになってきた。
【0003】
特許文献1には、テンプレートとなる設計データに平滑化処理を施し、パターン線分を太らせることで、実画像に近似する画像を形成する手法が説明されている。また、特許文献2,3には、設計データにシミュレーションを施すことで、テンプレートとなるパターンを実画像に近づける手法が説明されている。更に、特許文献4には設計データの各線分を調整することによって、実画像に近いホワイトバンドを有するテンプレートを形成する手法が説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−328015号公報(対応米国特許公報USP7,235,782)
【特許文献2】米国特許公報USP7,457,736
【特許文献3】特開2000−236007号公報
【特許文献4】特開2006−66478号公報(対応米国特許公開公報US2006/0045326)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,4に開示の手法によれば、設計データのパターン線分を、実画像に近い形状とすることが可能であるが、パターンの露光条件等によって、パターンの大きさが変化することに対して、十分に対応できるものではない。また、特許文献2,3に説明されているように、露光後のパターンのシミュレーションを行うことによって、実際に形成されるパターンの画像に近い画像を形成する手法では、シミュレーションの精度が高ければ、実パターンに近い画像を形成することができるものの、精度を高めようとすると、多くの条件設定を行う必要があり、シミュレーションを行うにも相当の経験と時間が必要となる。また、光学式露光装置の露光条件ごと、或いは異なる装置ごとにシミュレーションを行う必要があるため、テンプレートを作成するためには、相当の手間が必要となる。
【0006】
以下に、露光シミュレーション等を行うことなく、設計データに基づいてテンプレートを作成する方法、及び装置であって、実パターンの大きさに沿った画像の形成を目的とするパターンマッチング用画像作成方法、及びパターンマッチング用画像作成装置について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための一態様として、マッチング用画像を形成するに当たり、設計データを目標パターンサイズに基づいて、縮小、或いは拡大し、当該縮小、或いは拡大が行われたパターンに基づいて、マッチング用の画像を形成するパターンマッチング用画像作成方法、及びパターンマッチング用画像作成装置を提案する。
【0008】
また、目標パターンサイズに基づいて縮小、或いは拡大されたパターンについて、前記目標パターンサイズに基づいて、パターン角部の丸め処理を行うパターンマッチング用画像作成方法、及びパターンマッチング用画像作成装置について、提案する。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、露光シミュレーション等の手間を要することなく、実画像のパターンに近いマッチング画像を容易に作成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】走査電子顕微鏡の概略構成図。
【図2】目標パターンサイズと、設計データを用いてテンプレートを作成する工程を説明する図。
【図3】目標パターンサイズを用いてテンプレートを作成する工程を説明するフローチャート。
【図4】目標パターンサイズに基づいて、設計データを変形する例を説明する図。
【図5】目標パターンサイズと設計データとの差異に基づいて、テンプレートを作成する工程を説明するフローチャート。
【図6】目標パターンサイズに基づいて、パターンを変形する例を説明する図。
【図7】パターン側面の角度情報に基づいて、テンプレートを形成する工程を説明するフローチャート。
【図8】パターン側面の角度情報に基づいてテンプレートを形成する例を説明する図。
【図9】設計データに基づいて、テンプレートを作成する工程を説明するフローチャート。
【図10】設計データに基づいて、テンプレートを作成する例を説明する図。
【図11】設計データに基づいて、テンプレートを作成する例を説明する図。
【図12】荷電粒子線装置を含む測定,検査システムの一例を説明する図。
【図13】測定用レシピ設定部を含む演算装置と、レシピ設定に要するデータを蓄積したデータベースとの関連を説明する図。
【図14】テンプレート作成条件を入力するGUI画面の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
半導体計測装置の1つに、半導体ウェーハパターンの微小線幅を測長するSEM(Scanning Electron Microscope)がある。被探索画像の中から、極めて小さな測定対象にSEMの視野(Field Of View:FOV)を位置づけるための手法として、テンプレートマッチング技術が知られている。従来、テンプレートに用いられる画像は、実際にSEMにて取得したSEM画像を用いていたが、昨今、半導体デバイスの設計データから、テンプレートを作成する手法が用いられるようになってきた。このような設計データに基づくテンプレート作成手法は次の3種類が考えられる。1つ目は、加工していない設計データをそのまま利用する方法である。例えばコンタクトホールは、実画像では円形のものが多いが、設計データでは四角形となっている。2つ目はフォトマスク用の設計データであり、OPC(Optical Proximity Correction)パターンが施された設計データを利用する方法である。3つ目は設計データにリソグラフィシミュレーションを施した設計データを利用する方法である。シミュレーションによって、半導体ウェーハ上に形成されるパターンが予測できるため、比較的、実画像上のパターンに近いパターンを再現することができる。
【0012】
しかしながら、リソグラフィシミュレーションでは露光装置の条件や形成されるパターンの材料等、複雑な条件設定を行う必要があり、適切なシミュレーション結果を得るためには、相当の時間を要する。特に、リソグラフィシミュレーションに基づいて、パターンの輪郭線(Contour)を作成する場合、その条件設定には少なくとも10〜20種類程度の条件を設定する必要があり、その中から適切な組み合わせを見出すためには、相当のスキルが要求される。
【0013】
以下に設計データに基づいて、パターンマッチング用のテンプレートを作成する際に、露光条件等の設定等を行うことなく、実画像とのマッチングに適したパターンの変形法、及びその変形に用いられる装置、及びコンピューターによって実行されるコンピュータープログラム(或いはコンピュータープログラムを記憶する記憶媒体)について説明する。
【0014】
本実施例では、試料上に形成されるパターンの目標サイズに基づいて、設計データのパターン形状を変形する例を主に説明する。半導体パターンのデザインを行う設計者は、実際に形成されるパターンが目標パターンサイズとなるように、パターンのレイアウトデータ等の設計を行う。このような目標パターンサイズに基づいて、テンプレートを作成することができれば、シミュレーション等を行わずとも、簡単に実画像に近いテンプレートを作成することが可能となる。設計データの変形に際し、測長点に対する目標パターンサイズを利用することで、複雑な露光装置の条件設定や材料の種類などの変化等によらず、簡単に設計データの変形が可能になる。
【0015】
本実施例では、測長点の目標パターンサイズを用いた設計データの変形を行うに当たり、目標パターンサイズを基準としたパターンの頂角の丸め具合の調整、及びパターンエッジの太さの調整について主に説明する。
【0016】
本実施例によれば、エンジニアスキルによらない設計データを利用した高精度、且つ簡単な画像認識用テンプレートの作成が可能になる。また、発明者らの検討によれば、リソグラフィシミュレーションの実施にかかる時間と比較して、テンプレート作成時間を1/10程度に抑制できることが明らかになった。これによって、走査電子顕微鏡を動作させるためのレシピの作成時間を短縮することができ、半導体デバイスの生産性向上に寄与することが可能となる。以下、目標パターンサイズに基づいて、設計データを変形する手法について、図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、走査電子顕微鏡の概略構成図である。陰極101と第1陽極102に印加された一次電子線104は第2陽極103に印加される電圧Vaccにより加速されて後段のレンズ系に進行する。この一次電子線104はレンズ制御電源114で制御された集束レンズ105と対物レンズ106によりウェーハ(試料)107に微小スポットとして集束され、二段の偏向コイル108によってウェーハ(試料)107上を二次元的に走査される。偏向コイル108の走査信号は観察倍率に応じて偏向制御装置109によって制御される。ウェーハ(試料)107上を走査した一次電子線104により試料から発生した二次電子110は二次電子検出器111で検出される。二次電子検出器111で検出された二次電子情報は増幅器112で増幅されCRT113上に表示される。図1に例示する走査電子顕微鏡では、CRT113に表示された試料形状の情報を利用してパターンの自動計測を実施する。
【0018】
図12は、データ管理装置1203と、複数の測定装置がネットワークを経由して接続された計測システムの一例を説明する図である。計測装置はパターンの寸法を測定する測長用走査電子顕微鏡(Critical Dimension-Scanning Electron Microscope:CD−SEM)であり、図12の例では2台のCD−SEM1201,1202がネットワークに接続されている。
【0019】
各CD−SEM1201,1202にはそれぞれの制御装置が接続され、SEMに必要な制御が行われる。各SEMでは、電子源より放出される電子ビームが複数段のレンズにて集束されると共に、集束された電子ビームは走査偏向器によって、試料上を一次元的、或いは二次元的に走査される。
【0020】
電子ビームの走査によって試料より放出される二次電子(Secondary Electron:SE)或いは後方散乱電子(Backscattered Electron:BSE)は、検出器により検出され、前記走査偏向器の走査に同期して、フレームメモリ等の記憶媒体に記憶される。このフレームメモリに記憶されている画像信号は、制御装置内に搭載された演算装置によって積算される。また、走査偏向器による走査は任意の大きさ,位置、及び方向について可能である。
【0021】
電子ビームの走査の結果、得られた画像や信号は、ネットワークを介してデータ管理装置1203に送られる。なお、本例では、SEMを制御する制御装置と、SEMによって得られた信号に基づいて測定を行うデータ管理装置を別体のものとして、説明しているが、これに限られることはなく、データ管理装置にて装置の制御と測定処理を一括して行うようにしても良いし、各制御装置にて、SEMの制御と測定処理を併せて行うようにしても良い。
【0022】
また、上記データ管理装置或いは制御装置には、測定処理を実行するためのプログラムが記憶されており、当該プログラムに従って測定、或いは演算が行われる。更にデータ管理装置1203は、半導体製造工程に用いられるフォトマスク(以下単にマスクと称することもある)等の設計データを蓄積する設計データ用データベース1204からデータの読み出しが可能なように構成されている。この設計データは例えばGDSフォーマットやOASISフォーマットなどで表現されており、所定の形式にて記憶されている。なお、設計データは、設計データを表示するソフトウェアがそのフォーマット形式を表示でき、図形データとして取り扱うことができれば、その種類は問わない。
【0023】
また、データ管理装置1203は、SEMの動作を制御するプログラム(レシピ)を、半導体の設計データに基づいて作成する機能が備えられており、レシピ設定部として機能する。具体的には、設計データ,パターンの輪郭線データ、或いはシミュレーションが施された設計データ上で所望の測定点,オートフォーカス,オートスティグマ,アドレッシング点等のSEMにとって必要な処理を行うための位置等を設定し、当該設定に基づいて、SEMの試料ステージや偏向器等を自動制御するためのプログラムを作成する。なお、テンプレートと呼ばれる参照画像を用いたテンプレートマッチング法は、所望の個所を探索するためのサーチエリアの中で、テンプレートを移動させ、当該サーチエリアの中で、テンプレートとの一致度が最も高い、或いは一致度が所定値以上となった個所を特定する手法である。SEMに設けられた制御装置は、レシピの登録情報の1つであるテンプレートに基づくパターンマッチングを実行する。また、制御装置には、正規化相関法等を用いたマッチングを行うためのプログラムが記憶されており、制御装置は、当該プログラムを実行するコンピューターとして機能する。
【0024】
なお、データ管理装置1203に、設計データに基づいて、パターンの出来栄えをシミュレーションするシミュレーターを接続し、シミュレーターによって得られるシミュレーション画像をGDS化し、設計データの代わりに用いるようにしても良い。テンプレートデータベース1205には、指定条件に基づいて、テンプレートを自動生成するための情報が記憶されている。
【0025】
図13はデータ管理装置1203、設計データ用データベース1204、及びテンプレートデータベース1205の概略構成図である。データ管理装置1203は、測定レシピ設定部1301と、測定部1302を備えており、測定レシピ設定部1301は主に半導体デバイス等の設計データを用いたレシピの作成、測定部1302は、主に得られたSEM画像に基づいたデータ処理を実行するように構成されている。また、データ管理装置1203はその内部、或いは外部の記憶媒体に記憶された設計データにアクセス可能に構成されており、必要に応じたデータの読み出し、及び書き込みが可能な構成となっている。設計データ用データベース1204は、半導体パターンのレイアウト設計データ(CADデータ等)を記憶したレイアウトデータベース1304、レイアウトデータ等を基にOPC(Optical Proximity Correction)処理が施されたマスクパターンの設計データを記憶するOPCモデルデータベース1305、OPCシミュレーションを行うことによって得られるパターン形状を記憶するOPCシミュレーションデータベース1306、及びOPCシミュレーションにより特定したOPC危険部位の情報を記憶したOPC危険部位データベース1307を備えている。
【0026】
設計データ用データベース1204に格納された設計データの種類は、データ管理装置1701等で用いられている画像表示用のソフトウェアによって、当該設計データに基づく図形(例えばパターンの輪郭)を表示することができるフォーマット形式であれば良い。また、設計データは、回路設計データから変換されたもので回路設計データと関連性があり、パターンレイアウト上の特定の図形が回路設計データ上のどの信号伝送経路に対応するのかは予め特定されている。
【0027】
データ管理装置1203は、必要な情報を入力するための入力装置1308、後述するGUI画面や測定結果、SEM画像,設計データ,変形後の設計データ等を表示する表示装置1309を備えている。また、その他の外部機器とデータや信号を授受するための入出力インターフェイスや、半導体ウェーハの欠陥の検査・解析に関するプログラムや処理に必要な定数等を格納したROM,各種演算処理を行う演算部,演算結果や演算途中のデータ等を一時的に記憶するRAMと、各種データを記憶する記憶部等を備えている。
【0028】
OPCシミュレーションデータベース1306に記憶されるデータは、OPCモデルデータベース1305の記憶情報、及び使用する露光器や露光条件等を基にして露光後にウェーハ上に形成されるパターン形状をシミュレーションした情報である。更に、そのシミュレーション結果からパターンの予測形状と設計データとの形状の相違がしきい値を超える箇所に関する情報が、OPC危険部位データベース1307に記憶される。このようなシミュレーションは、外部のシミュレーターで行っても良いし、データ管理装置1203にて、所定のプログラムを実行することで行うようにしても良い。
【0029】
測定レシピ設定部1301では、外部接続されるSEMのSEM画像取得条件、或いは測定結果の取得条件が、入力装置1308等からの指定に基づき設定される。具体的には、取得画像の座標,画素サイズ,ビーム径,ビーム加速電圧,検出される二次電圧に対するしきい値等が設定され、所定の記憶媒体に記憶される。
【0030】
目標パターンサイズに関するデータは、予め設計データ用データベース1204に登録しておいても良いし、入力装置1308から入力を行うようにしても良い。
【0031】
テンプレート用データベース1205には、入力された目標パターンサイズに関するデータに基づいて、所定のルールに基づいてパターンを変形させるための情報が蓄積されている。
【0032】
図2は、「設計データと目標パターンサイズに基づいて、パターン形状を変形させ、当該変形を施したパターン画像をテンプレートとして画像認識を行う工程を説明する図である。レイアウトデータ等の設計データは、図12,図13にて例示した設計データ用データベース1204や、外部のEDA(Electrical Design Automation)ツールから取得するようにする。まず、読み出された設計データ201を変形させるために、目標パターンサイズ203を後述するようなGUI(Graphical User Interface)画面から入力、或いは設計データ用データベース1204等から読み出す。入力、或いは読み出された目標パターンサイズに基づいて、設計データの変形を行う(202)。変形の具体的手法については後述する。次に、変形を施したパターンに基づいて、画像認識用テンプレートを作成(204)する。このような画像認識用テンプレートの作成は、測定レシピ設定部1301にて行われ、測定用のレシピとして登録される。図1に例示するようなSEMでは、作成されたレシピに基づいて、実際に取得された撮影画像(206)上での画像認識(205)を実行する。
【0033】
図3は、目標パターンサイズに基づいて、パターンの変形を行う工程を説明するフローチャートである。本フローチャートでは、パターンエンドを丸める処理を選択的に説明する。まず、設計データ(301)から、測定対象となるパターンを含む変形対象領域を切り出す(ステップ302)。当該変形対象領域が後にマッチング用のテンプレートとなる。次に、設定された計測点(測長点)の情報を取得(ステップ303)する。次に、計測点の目標サイズを取得する(ステップ304)。この場合、上述したように目標パターンサイズを入力するようにしても良いし、予め登録された情報を読み出すようにしても良い。次に、取得された目標パターンサイズに関する情報に基づいて、パターンエンドの角部の曲率を演算する(ステップ305)。
【0034】
図4は、設計データ401に測長部402を設定することで、設計データの変形を行う工程を説明する図である。本実施例では、測長点の目標パターンサイズに基づいて、パターンを変形する例について説明する。目標パターンサイズ“a”に対して、パターンの頂角が“a/2”の半径を有する円の一部である弧となるように、当該頂角部を変形する。すなわち、曲率が2aとなるように、パターン頂角を変形する。なお、本実施例では曲率が2aの例を説明しているが、これに限られることなく、他の曲率、或いは多次の方程式で表される曲線となるよう、変形を行うようにしても良い。このような目標パターンサイズとパターン頂角部の曲率等の関係式を、予めテンプレート用データベース1205に登録しておき、目標パターンサイズの設定に基づいて、上記演算を実施する。図4に例示するパターン403は、曲率2aとなるよう、パターン頂角を変形したものである。部分領域404は、パターン変形が施されるパターエンドの拡大図である。
【0035】
以上のように目標パターンサイズを基準として、パターン変形を行うようにすれば、半導体設計者の意に沿った形状のテンプレートを形成することができる。
【0036】
図4に例示するパターン403はパターンの角丸め重さをa/2にした場合の結果であり、ラインエンドの長さ自体は設計データと同じとしている。一方、実際に形成されるパターンのラインエンドが、設計データに比べて短くなることが、経験則で判っているような場合には、ラインの長手方向の曲率を選択的に大きくする、或いは設計データに比べて、所定量分,ラインエンドを短くするようなパターン変形を行うようにしても良い。図4に例示するパターン405は、ラインの長手方向の長さを短くした例を説明している。また、パターンの曲率は任意に調整可能であることが望ましい。本実施例では、テンプレート用データベース1205に、予め目標パターンサイズと、パターン変形の程度の関係を登録しておくことによって、露光シミュレーションの実施等、複雑な経緯を経ることなく、簡単にテンプレートに適したパターン変形を行うことができる。以上のような工程に基づいてパターン変形を実施(ステップ306)し、当該変形が施されたパターンをテンプレートとして登録することで、パターン変形処理を完了する(ステップ307)。
【0037】
図5は、目標パターンサイズと設計データが持つ設計サイズに基づいて、パターンの変形を行う工程を説明するフローチャートである。ステップ502,503は、図3のステップ302,303と同じである。図5に例示するフローチャートでは、目標パターンサイズの取得と共に、設計データ用データベース1204に登録されているレイアウトデータのパターンサイズをも併せて取得し、両者の差分を求め(ステップ506)、当該差分情報に基づいて、パターン全体のサイズを変化させる(ステップ507)。すなわち、目標パターンサイズという一次元的な情報設定に基づいて、パターン全体の輪郭形状を変形させるという二次元的な調整を行う。
【0038】
図6は、設計データ上のパターン601への測長部602の設定に基づいて、パターン全体の形状を変形させた例を説明する図である。図6中央の図は、目標パターンサイズと設計データとのサイズ差が、“b”であり、且つ実パターンが設計データに比べて、収縮する(目標パターンサイズが小さくなる)と考えられる場合の変形例を説明する図である。図6中央の図に例示するように、パターンの縦横方向共に、寸法“b”分、パターンを小さくしている。一方、図6の右側の図は、目標パターンサイズが設計データに対して大きくなる場合の、変形例を説明している。
【0039】
サイズ情報に基づいて、パターンの変形を行い得るような上記手法によれば、テンプレート画像を簡単に形成することが可能となる。特に、半導体生産工場では半導体製造装置の一種である投影露光装置の条件、またはエッチング装置の条件によって、パターンのサイズが大きく変化するため、各半導体製造プロセスごとに、それらの装置にて設定される目標パターンサイズにあわせたパターン変形が可能となる。
【0040】
また、現在のリソグラフィシミュレーションでは、エッチングプロセスを考慮したシミュレーションを行うことができず、設計データに基づくテンプレートを作成することが困難であるが、目標パターンサイズに基づくパターン変形法によれば、半導体生産工場でのプロセス装置の種類に影響なく最適なデザインテンプレートを作成することが可能になる。
【0041】
図7は、パターンエッジサイズの変形工程を説明するフローチャートである。設計データと異なり、実際に形成されるパターンの実画像では、パターンエッジが太く表現される。これは、実際に形成されるパターンのエッジが或る角度をもって形成されるためである。また、走査電子顕微鏡画像の場合、傾斜した部位にビームが入射することによって生じるエッジ効果のため、放出される二次電子の量が相対的に多くなり、結果としてエッジ部分が明るく表示される。図7のフローチャートは、このようなエッジ部を設計データに基づいて、簡易に再現する手法に関するものである。
【0042】
ステップ702は、図3のステップ302と同じである。図7に例示するフローチャートでは、対象パターンのエッジサイズの指定によって、エッジ部分の変形を可能とする。その1つ目として、対象パターンのエッジサイズの設定、或いは読み出し(ステップ703)に基づいて、エッジサイズを変更する(ステップ706)手法がある。また2つ目として、対象パターンの高さと側面角度情報の設定、或いは読み出し(ステップ704)に基づいて、パターンエッジ太さの計算を行い(ステップ705)、当該計算に基づいて、エッジサイズの変更を行う(ステップ706)手法がある。
【0043】
このようにパターンエッジに関する目標サイズの設定等に基づいて、エッジ部分を変形させることで、簡単にエッジ部分を再現したテンプレートを作成することが可能となる。
【0044】
図8は、パターンのエッジサイズの指定等に基づいて、エッジサイズを変形した例を説明する図である。特に図8の例では、設計データ上のパターン801への測長部802の設定に基づいて、当該測長部802の目標パターンサイズの読み出し、或いは目標パターンサイズの指定を行い、当該目標パターンサイズと関連して記憶されているエッジサイズの読み出し、或いは別途指定されるエッジサイズに基づいて、エッジ部を変形する例を説明している。対象パターンの高さとパターンの側面角度に基づいて、エッジ太さを求める場合には、エッジ太さcを、高さ(t)/tan(側面角度)にて求めるようにする。このようにして求められた値に基づいて、エッジ部の太さを変化させる。
【0045】
図8中央のパターン804は、パターン高さが相対的に低い、或いは側面傾斜角度が小さい場合、図8右図は、パターン高さが相対的に高い、或いは側面傾斜角度が大きい場合の、エッジ部変形例を説明する図である。パターンの高さ(t)が低く、パターンの側面の傾斜角度が大きい場合は、図8のパターン804のようにパターンのエッジ太さが狭くなるが、パターンの高さ(t)が高く、パターンの側面の傾斜角度が小さい場合は、図8のパターン805のようにパターンのエッジ太さが太くなる。また、パターンの高さと傾斜の角度の情報がない場合は、図7のステップ703のように直接パターンのエッジ太さを取得し、パターンのエッジ太さの変形を行うことも可能である。
【0046】
上述したように、設計データのパターンエッジ太さを変えることによって、設計データを利用した画像認識用テンプレートをより最適化することができる。
【0047】
図9は、設計データと、目標パターンサイズに関する情報に基づいて、パターンの頂角、及びエッジサイズの変更を経て、テンプレートを作成する工程を説明するフローチャートである。更に本実施例では、設計データの線分を分割し、座標の移動平均を行うことによってパターン変形を行う例についても併せて説明する。まず、設計データ(901)から、測定対象となるパターンを含む変形対象領域を切り出す(ステップ902)。図10は切り出されたパターンと、そのパターンの変形プロセスを例示している。切り出されたパターン1001上に、測長部1002を設定し、当該設定と目標パターンサイズの設定によって、パターンの変形を行う。この変形の際に、設定された計測点が設定された目標パターンサイズを満たすか否かの判断を行い、満たさない場合はパターンの変形を行う(ステップ903)。次に、パターン1004に例示するように、変形が施された設計データを一定間隔で分割する(ステップ904)。このように分割処理が施された設計データの頂角部について、曲率を変化させるように、形状を変化させる(ステップ905)。この際、座標の移動平均を利用した変形を行う。
【0048】
パターンの頂角を丸める工程では、座標の移動平均を行うことで実現した。すなわち、このときのパターン角の丸めの程度を表す指標は、座標の移動平均の重さ(a)になる。
【0049】
図10に例示するパターン1005は、座標の移動平均を利用したパターン角の丸め処理が施された後のパターン形状である。座標の移動平均を利用したパターン角の丸め処理の後、パターンの輪郭を構成する各座標をつなげることで、パターン1006を形成する。以上のようにして形成されたパターン1006を、パターン高さと側面の傾き情報、或いは入力情報に基づいてエッジサイズを変更し、パターン1007を生成する(ステップ906)。このようにして形成されたパターン1007をテンプレートとして登録する(ステップ907)。
【0050】
以上のような工程を経て、テンプレートを作成することによって、実画像に近いテンプレートを、目標パターンサイズの入力のような簡単な作業で作成することが可能となる。
【0051】
図11は、設計データを画像処理によってぼかすことにより、パターンを変形させる手法の一例を説明する図である。
【0052】
まず、設計データ中のパターンを示す閉図形内を画像処理にて塗り潰すことによって、パターン1101を形成する。プロファイル1102は、パターン1101の輝度の変化を示すコントラストプロファイルである。このように塗り潰し処理が施されたパターン1101に平滑化処理等の画像をぼかす処理を施すことによって、パターン1103を生成する。ぼかしの程度を調整することによって、丸めの程度の調整が可能となる。プロファイル1104は、ぼかし処理が施されたパターン1103のコントラストプロファイルである。
【0053】
図11の上図と下図に例示するように、ぼかしの程度を調整することによって、パターン頂角の丸め度合いを調整することが可能となる。更に、プロファイル1104の閾値を調整することにより、図11の上図と下図に例示するように、パターンの大きさをも調整することが可能となる。
【0054】
以上のようにして形成されたパターン1105,1106について、パターンエッジの太さ調整を行うことによって、パターン1107,1108のような撮影画像により近い画像認識用テンプレートを作成することが可能になる。
【0055】
図14は、設計データに基づいて、測長点やテンプレートの作成条件を設定するGUI画面の一例を説明する図である。操作者は、この画面上にて、パターンやパターンが存在する領域の名称(Pattern Name)や、パターンが存在するレイヤー(Layer)、パターンが存在する座標(Location)、及び実際に取得する画像の大きさ(Area Size)等を指定することによって、測定領域に関する情報を指定する。また測長部の指定は、Measurement Positionsの欄から入力する。
【0056】
テンプレートの目標パターンサイズは、“Desired Pattern Size”から入力する。また、パターン頂角部の丸め度合いや、エッジサイズはそれぞれ“Rounding”,“Edge Effect”の欄から入力する。このようなGUI画面から入力された情報に基づいて、図13に例示する測定レシピ設定部1301は、設計用データベース1204から、パターンデータを読み出すと共に、テンプレート用データベース1205に登録されたパターン変形条件に従って、パターンを変形する。なお、目標パターンサイズについては、任意の入力値であっても良いし、予め記憶されているものであるならば、その値を読み出して用いるようにしても良い。
【0057】
また、テンプレート用データベース1205には、目標パターンデータに基づいて、パターン形状を変形するための変形条件を登録した複数のデータベースが記憶されている。例えば、パターンテンプレートデータベース1301は、選択されたパターン全体を予め定められた条件に従って変形するためのプログラムが記憶されている。パターン部位テンプレートデータベース1311には、パターンの部位(例えば、パターンエンド,インナーコーナー,アウターコーナー等)ごとに、所定の条件に従って、パターン変形を行うためのプログラムが記憶されている。
【0058】
更に、OPCテンプレートデータベース1312には、OPCパターンが付加されることによって生じるパターン形状が登録されている。エッジサイズデータベース1313には、目標パターンサイズとエッジサイズとの関係が登録されている。
【0059】
上記各データベースに登録された情報は、設定される目標パターンサイズに応じて、その大きさ等の調整が可能なように、目標パターサイズに応じた形状、或いは大きさ調整のためのアルゴリズムを備えている。例えば、パターン部位テンプレートデータベース1311には、パターンエンドの形状情報が登録されているが、設定される目標パターンサイズに応じた大きさの調整を行うようプログラムされている。より具体的には、例えばラインエンドの形状が真円の一部からなる弧状形状である場合、設定される目標パターンサイズに応じて、径を変化することで、目標パターンサイズに基づいて形成されたライン部の幅に一致させる。このような調整が可能なプログラムを予め登録しておくことで、操作者は目標パターンサイズの設定だけで、テンプレートの作成が可能となる。また、部分的な微調整を可能とすることによって、目標パターンサイズに基づく形状を大きく損なうことなく、形状補正が可能となる。特に、光近接効果によりパターンが部分的に変形してしまう場合、目標パターンサイズを維持したまま、当該部分の補正を適正に行うことができれば、少ない作業量で半導体ウェーハに転写されるパターン形状に忠実な形状のテンプレートを再現することが可能となる。
【0060】
また、OPCテンプレートデータベース1312には、OPCパターンの存在によってもたらされる部分的な形状情報が予め登録されており、当該部分形状を目標パターンサイズに応じて、変形させることで、テンプレートの部分形状として設定する。更に、エッジサイズデータベース1313には、パターンサイズごとのエッジ情報が登録されており、目標パターンサイズの選択によって、そのサイズに応じたエッジ太さ情報が読み出されるように構成されている。
【0061】
以上のデータベースに登録された情報は、いずれも目標パターンサイズの設定に応じて、その大きさや形状の変形が可能であり、操作者は適切なデータベースを選択することによって、目標パターンサイズを基準としたパターンの変形を行うことが可能となる。また、目標パターンサイズごとに予め形状情報を登録するようにしても良い。
【符号の説明】
【0062】
101 電子銃陰極
102 第1陽極
103 第2陽極
104 一次電子線
105 集束レンズ
106 対物レンズ
107 ウェーハ(試料)
108 二段の偏向コイル
109 偏向制御装置
110 二次電子
111 二次電子検出器
112 増幅器
113 CRT
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンマッチング用画像作成方法、及びパターンマッチング用画像作成装置に係り、特に試料の設計データに基づいて、パターンマッチング用の画像を形成する方法、及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)等を用いた試料の測定、或いは検査装置では、微小な測定,検査対象の位置を特定するために、参照画像(以下、テンプレートと称することもある)を用いたパターンマッチングが行われている。また、実際のSEM画像からテンプレートとなる領域を切り出す作成法では、実際にパターンが形成された後しかテンプレートを作成することができず、また相応の手間を要するため、半導体デバイスやフォトマスク等の設計データを用いてテンプレートを作成する手法が採用されるようになってきた。
【0003】
特許文献1には、テンプレートとなる設計データに平滑化処理を施し、パターン線分を太らせることで、実画像に近似する画像を形成する手法が説明されている。また、特許文献2,3には、設計データにシミュレーションを施すことで、テンプレートとなるパターンを実画像に近づける手法が説明されている。更に、特許文献4には設計データの各線分を調整することによって、実画像に近いホワイトバンドを有するテンプレートを形成する手法が説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−328015号公報(対応米国特許公報USP7,235,782)
【特許文献2】米国特許公報USP7,457,736
【特許文献3】特開2000−236007号公報
【特許文献4】特開2006−66478号公報(対応米国特許公開公報US2006/0045326)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,4に開示の手法によれば、設計データのパターン線分を、実画像に近い形状とすることが可能であるが、パターンの露光条件等によって、パターンの大きさが変化することに対して、十分に対応できるものではない。また、特許文献2,3に説明されているように、露光後のパターンのシミュレーションを行うことによって、実際に形成されるパターンの画像に近い画像を形成する手法では、シミュレーションの精度が高ければ、実パターンに近い画像を形成することができるものの、精度を高めようとすると、多くの条件設定を行う必要があり、シミュレーションを行うにも相当の経験と時間が必要となる。また、光学式露光装置の露光条件ごと、或いは異なる装置ごとにシミュレーションを行う必要があるため、テンプレートを作成するためには、相当の手間が必要となる。
【0006】
以下に、露光シミュレーション等を行うことなく、設計データに基づいてテンプレートを作成する方法、及び装置であって、実パターンの大きさに沿った画像の形成を目的とするパターンマッチング用画像作成方法、及びパターンマッチング用画像作成装置について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための一態様として、マッチング用画像を形成するに当たり、設計データを目標パターンサイズに基づいて、縮小、或いは拡大し、当該縮小、或いは拡大が行われたパターンに基づいて、マッチング用の画像を形成するパターンマッチング用画像作成方法、及びパターンマッチング用画像作成装置を提案する。
【0008】
また、目標パターンサイズに基づいて縮小、或いは拡大されたパターンについて、前記目標パターンサイズに基づいて、パターン角部の丸め処理を行うパターンマッチング用画像作成方法、及びパターンマッチング用画像作成装置について、提案する。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、露光シミュレーション等の手間を要することなく、実画像のパターンに近いマッチング画像を容易に作成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】走査電子顕微鏡の概略構成図。
【図2】目標パターンサイズと、設計データを用いてテンプレートを作成する工程を説明する図。
【図3】目標パターンサイズを用いてテンプレートを作成する工程を説明するフローチャート。
【図4】目標パターンサイズに基づいて、設計データを変形する例を説明する図。
【図5】目標パターンサイズと設計データとの差異に基づいて、テンプレートを作成する工程を説明するフローチャート。
【図6】目標パターンサイズに基づいて、パターンを変形する例を説明する図。
【図7】パターン側面の角度情報に基づいて、テンプレートを形成する工程を説明するフローチャート。
【図8】パターン側面の角度情報に基づいてテンプレートを形成する例を説明する図。
【図9】設計データに基づいて、テンプレートを作成する工程を説明するフローチャート。
【図10】設計データに基づいて、テンプレートを作成する例を説明する図。
【図11】設計データに基づいて、テンプレートを作成する例を説明する図。
【図12】荷電粒子線装置を含む測定,検査システムの一例を説明する図。
【図13】測定用レシピ設定部を含む演算装置と、レシピ設定に要するデータを蓄積したデータベースとの関連を説明する図。
【図14】テンプレート作成条件を入力するGUI画面の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
半導体計測装置の1つに、半導体ウェーハパターンの微小線幅を測長するSEM(Scanning Electron Microscope)がある。被探索画像の中から、極めて小さな測定対象にSEMの視野(Field Of View:FOV)を位置づけるための手法として、テンプレートマッチング技術が知られている。従来、テンプレートに用いられる画像は、実際にSEMにて取得したSEM画像を用いていたが、昨今、半導体デバイスの設計データから、テンプレートを作成する手法が用いられるようになってきた。このような設計データに基づくテンプレート作成手法は次の3種類が考えられる。1つ目は、加工していない設計データをそのまま利用する方法である。例えばコンタクトホールは、実画像では円形のものが多いが、設計データでは四角形となっている。2つ目はフォトマスク用の設計データであり、OPC(Optical Proximity Correction)パターンが施された設計データを利用する方法である。3つ目は設計データにリソグラフィシミュレーションを施した設計データを利用する方法である。シミュレーションによって、半導体ウェーハ上に形成されるパターンが予測できるため、比較的、実画像上のパターンに近いパターンを再現することができる。
【0012】
しかしながら、リソグラフィシミュレーションでは露光装置の条件や形成されるパターンの材料等、複雑な条件設定を行う必要があり、適切なシミュレーション結果を得るためには、相当の時間を要する。特に、リソグラフィシミュレーションに基づいて、パターンの輪郭線(Contour)を作成する場合、その条件設定には少なくとも10〜20種類程度の条件を設定する必要があり、その中から適切な組み合わせを見出すためには、相当のスキルが要求される。
【0013】
以下に設計データに基づいて、パターンマッチング用のテンプレートを作成する際に、露光条件等の設定等を行うことなく、実画像とのマッチングに適したパターンの変形法、及びその変形に用いられる装置、及びコンピューターによって実行されるコンピュータープログラム(或いはコンピュータープログラムを記憶する記憶媒体)について説明する。
【0014】
本実施例では、試料上に形成されるパターンの目標サイズに基づいて、設計データのパターン形状を変形する例を主に説明する。半導体パターンのデザインを行う設計者は、実際に形成されるパターンが目標パターンサイズとなるように、パターンのレイアウトデータ等の設計を行う。このような目標パターンサイズに基づいて、テンプレートを作成することができれば、シミュレーション等を行わずとも、簡単に実画像に近いテンプレートを作成することが可能となる。設計データの変形に際し、測長点に対する目標パターンサイズを利用することで、複雑な露光装置の条件設定や材料の種類などの変化等によらず、簡単に設計データの変形が可能になる。
【0015】
本実施例では、測長点の目標パターンサイズを用いた設計データの変形を行うに当たり、目標パターンサイズを基準としたパターンの頂角の丸め具合の調整、及びパターンエッジの太さの調整について主に説明する。
【0016】
本実施例によれば、エンジニアスキルによらない設計データを利用した高精度、且つ簡単な画像認識用テンプレートの作成が可能になる。また、発明者らの検討によれば、リソグラフィシミュレーションの実施にかかる時間と比較して、テンプレート作成時間を1/10程度に抑制できることが明らかになった。これによって、走査電子顕微鏡を動作させるためのレシピの作成時間を短縮することができ、半導体デバイスの生産性向上に寄与することが可能となる。以下、目標パターンサイズに基づいて、設計データを変形する手法について、図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、走査電子顕微鏡の概略構成図である。陰極101と第1陽極102に印加された一次電子線104は第2陽極103に印加される電圧Vaccにより加速されて後段のレンズ系に進行する。この一次電子線104はレンズ制御電源114で制御された集束レンズ105と対物レンズ106によりウェーハ(試料)107に微小スポットとして集束され、二段の偏向コイル108によってウェーハ(試料)107上を二次元的に走査される。偏向コイル108の走査信号は観察倍率に応じて偏向制御装置109によって制御される。ウェーハ(試料)107上を走査した一次電子線104により試料から発生した二次電子110は二次電子検出器111で検出される。二次電子検出器111で検出された二次電子情報は増幅器112で増幅されCRT113上に表示される。図1に例示する走査電子顕微鏡では、CRT113に表示された試料形状の情報を利用してパターンの自動計測を実施する。
【0018】
図12は、データ管理装置1203と、複数の測定装置がネットワークを経由して接続された計測システムの一例を説明する図である。計測装置はパターンの寸法を測定する測長用走査電子顕微鏡(Critical Dimension-Scanning Electron Microscope:CD−SEM)であり、図12の例では2台のCD−SEM1201,1202がネットワークに接続されている。
【0019】
各CD−SEM1201,1202にはそれぞれの制御装置が接続され、SEMに必要な制御が行われる。各SEMでは、電子源より放出される電子ビームが複数段のレンズにて集束されると共に、集束された電子ビームは走査偏向器によって、試料上を一次元的、或いは二次元的に走査される。
【0020】
電子ビームの走査によって試料より放出される二次電子(Secondary Electron:SE)或いは後方散乱電子(Backscattered Electron:BSE)は、検出器により検出され、前記走査偏向器の走査に同期して、フレームメモリ等の記憶媒体に記憶される。このフレームメモリに記憶されている画像信号は、制御装置内に搭載された演算装置によって積算される。また、走査偏向器による走査は任意の大きさ,位置、及び方向について可能である。
【0021】
電子ビームの走査の結果、得られた画像や信号は、ネットワークを介してデータ管理装置1203に送られる。なお、本例では、SEMを制御する制御装置と、SEMによって得られた信号に基づいて測定を行うデータ管理装置を別体のものとして、説明しているが、これに限られることはなく、データ管理装置にて装置の制御と測定処理を一括して行うようにしても良いし、各制御装置にて、SEMの制御と測定処理を併せて行うようにしても良い。
【0022】
また、上記データ管理装置或いは制御装置には、測定処理を実行するためのプログラムが記憶されており、当該プログラムに従って測定、或いは演算が行われる。更にデータ管理装置1203は、半導体製造工程に用いられるフォトマスク(以下単にマスクと称することもある)等の設計データを蓄積する設計データ用データベース1204からデータの読み出しが可能なように構成されている。この設計データは例えばGDSフォーマットやOASISフォーマットなどで表現されており、所定の形式にて記憶されている。なお、設計データは、設計データを表示するソフトウェアがそのフォーマット形式を表示でき、図形データとして取り扱うことができれば、その種類は問わない。
【0023】
また、データ管理装置1203は、SEMの動作を制御するプログラム(レシピ)を、半導体の設計データに基づいて作成する機能が備えられており、レシピ設定部として機能する。具体的には、設計データ,パターンの輪郭線データ、或いはシミュレーションが施された設計データ上で所望の測定点,オートフォーカス,オートスティグマ,アドレッシング点等のSEMにとって必要な処理を行うための位置等を設定し、当該設定に基づいて、SEMの試料ステージや偏向器等を自動制御するためのプログラムを作成する。なお、テンプレートと呼ばれる参照画像を用いたテンプレートマッチング法は、所望の個所を探索するためのサーチエリアの中で、テンプレートを移動させ、当該サーチエリアの中で、テンプレートとの一致度が最も高い、或いは一致度が所定値以上となった個所を特定する手法である。SEMに設けられた制御装置は、レシピの登録情報の1つであるテンプレートに基づくパターンマッチングを実行する。また、制御装置には、正規化相関法等を用いたマッチングを行うためのプログラムが記憶されており、制御装置は、当該プログラムを実行するコンピューターとして機能する。
【0024】
なお、データ管理装置1203に、設計データに基づいて、パターンの出来栄えをシミュレーションするシミュレーターを接続し、シミュレーターによって得られるシミュレーション画像をGDS化し、設計データの代わりに用いるようにしても良い。テンプレートデータベース1205には、指定条件に基づいて、テンプレートを自動生成するための情報が記憶されている。
【0025】
図13はデータ管理装置1203、設計データ用データベース1204、及びテンプレートデータベース1205の概略構成図である。データ管理装置1203は、測定レシピ設定部1301と、測定部1302を備えており、測定レシピ設定部1301は主に半導体デバイス等の設計データを用いたレシピの作成、測定部1302は、主に得られたSEM画像に基づいたデータ処理を実行するように構成されている。また、データ管理装置1203はその内部、或いは外部の記憶媒体に記憶された設計データにアクセス可能に構成されており、必要に応じたデータの読み出し、及び書き込みが可能な構成となっている。設計データ用データベース1204は、半導体パターンのレイアウト設計データ(CADデータ等)を記憶したレイアウトデータベース1304、レイアウトデータ等を基にOPC(Optical Proximity Correction)処理が施されたマスクパターンの設計データを記憶するOPCモデルデータベース1305、OPCシミュレーションを行うことによって得られるパターン形状を記憶するOPCシミュレーションデータベース1306、及びOPCシミュレーションにより特定したOPC危険部位の情報を記憶したOPC危険部位データベース1307を備えている。
【0026】
設計データ用データベース1204に格納された設計データの種類は、データ管理装置1701等で用いられている画像表示用のソフトウェアによって、当該設計データに基づく図形(例えばパターンの輪郭)を表示することができるフォーマット形式であれば良い。また、設計データは、回路設計データから変換されたもので回路設計データと関連性があり、パターンレイアウト上の特定の図形が回路設計データ上のどの信号伝送経路に対応するのかは予め特定されている。
【0027】
データ管理装置1203は、必要な情報を入力するための入力装置1308、後述するGUI画面や測定結果、SEM画像,設計データ,変形後の設計データ等を表示する表示装置1309を備えている。また、その他の外部機器とデータや信号を授受するための入出力インターフェイスや、半導体ウェーハの欠陥の検査・解析に関するプログラムや処理に必要な定数等を格納したROM,各種演算処理を行う演算部,演算結果や演算途中のデータ等を一時的に記憶するRAMと、各種データを記憶する記憶部等を備えている。
【0028】
OPCシミュレーションデータベース1306に記憶されるデータは、OPCモデルデータベース1305の記憶情報、及び使用する露光器や露光条件等を基にして露光後にウェーハ上に形成されるパターン形状をシミュレーションした情報である。更に、そのシミュレーション結果からパターンの予測形状と設計データとの形状の相違がしきい値を超える箇所に関する情報が、OPC危険部位データベース1307に記憶される。このようなシミュレーションは、外部のシミュレーターで行っても良いし、データ管理装置1203にて、所定のプログラムを実行することで行うようにしても良い。
【0029】
測定レシピ設定部1301では、外部接続されるSEMのSEM画像取得条件、或いは測定結果の取得条件が、入力装置1308等からの指定に基づき設定される。具体的には、取得画像の座標,画素サイズ,ビーム径,ビーム加速電圧,検出される二次電圧に対するしきい値等が設定され、所定の記憶媒体に記憶される。
【0030】
目標パターンサイズに関するデータは、予め設計データ用データベース1204に登録しておいても良いし、入力装置1308から入力を行うようにしても良い。
【0031】
テンプレート用データベース1205には、入力された目標パターンサイズに関するデータに基づいて、所定のルールに基づいてパターンを変形させるための情報が蓄積されている。
【0032】
図2は、「設計データと目標パターンサイズに基づいて、パターン形状を変形させ、当該変形を施したパターン画像をテンプレートとして画像認識を行う工程を説明する図である。レイアウトデータ等の設計データは、図12,図13にて例示した設計データ用データベース1204や、外部のEDA(Electrical Design Automation)ツールから取得するようにする。まず、読み出された設計データ201を変形させるために、目標パターンサイズ203を後述するようなGUI(Graphical User Interface)画面から入力、或いは設計データ用データベース1204等から読み出す。入力、或いは読み出された目標パターンサイズに基づいて、設計データの変形を行う(202)。変形の具体的手法については後述する。次に、変形を施したパターンに基づいて、画像認識用テンプレートを作成(204)する。このような画像認識用テンプレートの作成は、測定レシピ設定部1301にて行われ、測定用のレシピとして登録される。図1に例示するようなSEMでは、作成されたレシピに基づいて、実際に取得された撮影画像(206)上での画像認識(205)を実行する。
【0033】
図3は、目標パターンサイズに基づいて、パターンの変形を行う工程を説明するフローチャートである。本フローチャートでは、パターンエンドを丸める処理を選択的に説明する。まず、設計データ(301)から、測定対象となるパターンを含む変形対象領域を切り出す(ステップ302)。当該変形対象領域が後にマッチング用のテンプレートとなる。次に、設定された計測点(測長点)の情報を取得(ステップ303)する。次に、計測点の目標サイズを取得する(ステップ304)。この場合、上述したように目標パターンサイズを入力するようにしても良いし、予め登録された情報を読み出すようにしても良い。次に、取得された目標パターンサイズに関する情報に基づいて、パターンエンドの角部の曲率を演算する(ステップ305)。
【0034】
図4は、設計データ401に測長部402を設定することで、設計データの変形を行う工程を説明する図である。本実施例では、測長点の目標パターンサイズに基づいて、パターンを変形する例について説明する。目標パターンサイズ“a”に対して、パターンの頂角が“a/2”の半径を有する円の一部である弧となるように、当該頂角部を変形する。すなわち、曲率が2aとなるように、パターン頂角を変形する。なお、本実施例では曲率が2aの例を説明しているが、これに限られることなく、他の曲率、或いは多次の方程式で表される曲線となるよう、変形を行うようにしても良い。このような目標パターンサイズとパターン頂角部の曲率等の関係式を、予めテンプレート用データベース1205に登録しておき、目標パターンサイズの設定に基づいて、上記演算を実施する。図4に例示するパターン403は、曲率2aとなるよう、パターン頂角を変形したものである。部分領域404は、パターン変形が施されるパターエンドの拡大図である。
【0035】
以上のように目標パターンサイズを基準として、パターン変形を行うようにすれば、半導体設計者の意に沿った形状のテンプレートを形成することができる。
【0036】
図4に例示するパターン403はパターンの角丸め重さをa/2にした場合の結果であり、ラインエンドの長さ自体は設計データと同じとしている。一方、実際に形成されるパターンのラインエンドが、設計データに比べて短くなることが、経験則で判っているような場合には、ラインの長手方向の曲率を選択的に大きくする、或いは設計データに比べて、所定量分,ラインエンドを短くするようなパターン変形を行うようにしても良い。図4に例示するパターン405は、ラインの長手方向の長さを短くした例を説明している。また、パターンの曲率は任意に調整可能であることが望ましい。本実施例では、テンプレート用データベース1205に、予め目標パターンサイズと、パターン変形の程度の関係を登録しておくことによって、露光シミュレーションの実施等、複雑な経緯を経ることなく、簡単にテンプレートに適したパターン変形を行うことができる。以上のような工程に基づいてパターン変形を実施(ステップ306)し、当該変形が施されたパターンをテンプレートとして登録することで、パターン変形処理を完了する(ステップ307)。
【0037】
図5は、目標パターンサイズと設計データが持つ設計サイズに基づいて、パターンの変形を行う工程を説明するフローチャートである。ステップ502,503は、図3のステップ302,303と同じである。図5に例示するフローチャートでは、目標パターンサイズの取得と共に、設計データ用データベース1204に登録されているレイアウトデータのパターンサイズをも併せて取得し、両者の差分を求め(ステップ506)、当該差分情報に基づいて、パターン全体のサイズを変化させる(ステップ507)。すなわち、目標パターンサイズという一次元的な情報設定に基づいて、パターン全体の輪郭形状を変形させるという二次元的な調整を行う。
【0038】
図6は、設計データ上のパターン601への測長部602の設定に基づいて、パターン全体の形状を変形させた例を説明する図である。図6中央の図は、目標パターンサイズと設計データとのサイズ差が、“b”であり、且つ実パターンが設計データに比べて、収縮する(目標パターンサイズが小さくなる)と考えられる場合の変形例を説明する図である。図6中央の図に例示するように、パターンの縦横方向共に、寸法“b”分、パターンを小さくしている。一方、図6の右側の図は、目標パターンサイズが設計データに対して大きくなる場合の、変形例を説明している。
【0039】
サイズ情報に基づいて、パターンの変形を行い得るような上記手法によれば、テンプレート画像を簡単に形成することが可能となる。特に、半導体生産工場では半導体製造装置の一種である投影露光装置の条件、またはエッチング装置の条件によって、パターンのサイズが大きく変化するため、各半導体製造プロセスごとに、それらの装置にて設定される目標パターンサイズにあわせたパターン変形が可能となる。
【0040】
また、現在のリソグラフィシミュレーションでは、エッチングプロセスを考慮したシミュレーションを行うことができず、設計データに基づくテンプレートを作成することが困難であるが、目標パターンサイズに基づくパターン変形法によれば、半導体生産工場でのプロセス装置の種類に影響なく最適なデザインテンプレートを作成することが可能になる。
【0041】
図7は、パターンエッジサイズの変形工程を説明するフローチャートである。設計データと異なり、実際に形成されるパターンの実画像では、パターンエッジが太く表現される。これは、実際に形成されるパターンのエッジが或る角度をもって形成されるためである。また、走査電子顕微鏡画像の場合、傾斜した部位にビームが入射することによって生じるエッジ効果のため、放出される二次電子の量が相対的に多くなり、結果としてエッジ部分が明るく表示される。図7のフローチャートは、このようなエッジ部を設計データに基づいて、簡易に再現する手法に関するものである。
【0042】
ステップ702は、図3のステップ302と同じである。図7に例示するフローチャートでは、対象パターンのエッジサイズの指定によって、エッジ部分の変形を可能とする。その1つ目として、対象パターンのエッジサイズの設定、或いは読み出し(ステップ703)に基づいて、エッジサイズを変更する(ステップ706)手法がある。また2つ目として、対象パターンの高さと側面角度情報の設定、或いは読み出し(ステップ704)に基づいて、パターンエッジ太さの計算を行い(ステップ705)、当該計算に基づいて、エッジサイズの変更を行う(ステップ706)手法がある。
【0043】
このようにパターンエッジに関する目標サイズの設定等に基づいて、エッジ部分を変形させることで、簡単にエッジ部分を再現したテンプレートを作成することが可能となる。
【0044】
図8は、パターンのエッジサイズの指定等に基づいて、エッジサイズを変形した例を説明する図である。特に図8の例では、設計データ上のパターン801への測長部802の設定に基づいて、当該測長部802の目標パターンサイズの読み出し、或いは目標パターンサイズの指定を行い、当該目標パターンサイズと関連して記憶されているエッジサイズの読み出し、或いは別途指定されるエッジサイズに基づいて、エッジ部を変形する例を説明している。対象パターンの高さとパターンの側面角度に基づいて、エッジ太さを求める場合には、エッジ太さcを、高さ(t)/tan(側面角度)にて求めるようにする。このようにして求められた値に基づいて、エッジ部の太さを変化させる。
【0045】
図8中央のパターン804は、パターン高さが相対的に低い、或いは側面傾斜角度が小さい場合、図8右図は、パターン高さが相対的に高い、或いは側面傾斜角度が大きい場合の、エッジ部変形例を説明する図である。パターンの高さ(t)が低く、パターンの側面の傾斜角度が大きい場合は、図8のパターン804のようにパターンのエッジ太さが狭くなるが、パターンの高さ(t)が高く、パターンの側面の傾斜角度が小さい場合は、図8のパターン805のようにパターンのエッジ太さが太くなる。また、パターンの高さと傾斜の角度の情報がない場合は、図7のステップ703のように直接パターンのエッジ太さを取得し、パターンのエッジ太さの変形を行うことも可能である。
【0046】
上述したように、設計データのパターンエッジ太さを変えることによって、設計データを利用した画像認識用テンプレートをより最適化することができる。
【0047】
図9は、設計データと、目標パターンサイズに関する情報に基づいて、パターンの頂角、及びエッジサイズの変更を経て、テンプレートを作成する工程を説明するフローチャートである。更に本実施例では、設計データの線分を分割し、座標の移動平均を行うことによってパターン変形を行う例についても併せて説明する。まず、設計データ(901)から、測定対象となるパターンを含む変形対象領域を切り出す(ステップ902)。図10は切り出されたパターンと、そのパターンの変形プロセスを例示している。切り出されたパターン1001上に、測長部1002を設定し、当該設定と目標パターンサイズの設定によって、パターンの変形を行う。この変形の際に、設定された計測点が設定された目標パターンサイズを満たすか否かの判断を行い、満たさない場合はパターンの変形を行う(ステップ903)。次に、パターン1004に例示するように、変形が施された設計データを一定間隔で分割する(ステップ904)。このように分割処理が施された設計データの頂角部について、曲率を変化させるように、形状を変化させる(ステップ905)。この際、座標の移動平均を利用した変形を行う。
【0048】
パターンの頂角を丸める工程では、座標の移動平均を行うことで実現した。すなわち、このときのパターン角の丸めの程度を表す指標は、座標の移動平均の重さ(a)になる。
【0049】
図10に例示するパターン1005は、座標の移動平均を利用したパターン角の丸め処理が施された後のパターン形状である。座標の移動平均を利用したパターン角の丸め処理の後、パターンの輪郭を構成する各座標をつなげることで、パターン1006を形成する。以上のようにして形成されたパターン1006を、パターン高さと側面の傾き情報、或いは入力情報に基づいてエッジサイズを変更し、パターン1007を生成する(ステップ906)。このようにして形成されたパターン1007をテンプレートとして登録する(ステップ907)。
【0050】
以上のような工程を経て、テンプレートを作成することによって、実画像に近いテンプレートを、目標パターンサイズの入力のような簡単な作業で作成することが可能となる。
【0051】
図11は、設計データを画像処理によってぼかすことにより、パターンを変形させる手法の一例を説明する図である。
【0052】
まず、設計データ中のパターンを示す閉図形内を画像処理にて塗り潰すことによって、パターン1101を形成する。プロファイル1102は、パターン1101の輝度の変化を示すコントラストプロファイルである。このように塗り潰し処理が施されたパターン1101に平滑化処理等の画像をぼかす処理を施すことによって、パターン1103を生成する。ぼかしの程度を調整することによって、丸めの程度の調整が可能となる。プロファイル1104は、ぼかし処理が施されたパターン1103のコントラストプロファイルである。
【0053】
図11の上図と下図に例示するように、ぼかしの程度を調整することによって、パターン頂角の丸め度合いを調整することが可能となる。更に、プロファイル1104の閾値を調整することにより、図11の上図と下図に例示するように、パターンの大きさをも調整することが可能となる。
【0054】
以上のようにして形成されたパターン1105,1106について、パターンエッジの太さ調整を行うことによって、パターン1107,1108のような撮影画像により近い画像認識用テンプレートを作成することが可能になる。
【0055】
図14は、設計データに基づいて、測長点やテンプレートの作成条件を設定するGUI画面の一例を説明する図である。操作者は、この画面上にて、パターンやパターンが存在する領域の名称(Pattern Name)や、パターンが存在するレイヤー(Layer)、パターンが存在する座標(Location)、及び実際に取得する画像の大きさ(Area Size)等を指定することによって、測定領域に関する情報を指定する。また測長部の指定は、Measurement Positionsの欄から入力する。
【0056】
テンプレートの目標パターンサイズは、“Desired Pattern Size”から入力する。また、パターン頂角部の丸め度合いや、エッジサイズはそれぞれ“Rounding”,“Edge Effect”の欄から入力する。このようなGUI画面から入力された情報に基づいて、図13に例示する測定レシピ設定部1301は、設計用データベース1204から、パターンデータを読み出すと共に、テンプレート用データベース1205に登録されたパターン変形条件に従って、パターンを変形する。なお、目標パターンサイズについては、任意の入力値であっても良いし、予め記憶されているものであるならば、その値を読み出して用いるようにしても良い。
【0057】
また、テンプレート用データベース1205には、目標パターンデータに基づいて、パターン形状を変形するための変形条件を登録した複数のデータベースが記憶されている。例えば、パターンテンプレートデータベース1301は、選択されたパターン全体を予め定められた条件に従って変形するためのプログラムが記憶されている。パターン部位テンプレートデータベース1311には、パターンの部位(例えば、パターンエンド,インナーコーナー,アウターコーナー等)ごとに、所定の条件に従って、パターン変形を行うためのプログラムが記憶されている。
【0058】
更に、OPCテンプレートデータベース1312には、OPCパターンが付加されることによって生じるパターン形状が登録されている。エッジサイズデータベース1313には、目標パターンサイズとエッジサイズとの関係が登録されている。
【0059】
上記各データベースに登録された情報は、設定される目標パターンサイズに応じて、その大きさ等の調整が可能なように、目標パターサイズに応じた形状、或いは大きさ調整のためのアルゴリズムを備えている。例えば、パターン部位テンプレートデータベース1311には、パターンエンドの形状情報が登録されているが、設定される目標パターンサイズに応じた大きさの調整を行うようプログラムされている。より具体的には、例えばラインエンドの形状が真円の一部からなる弧状形状である場合、設定される目標パターンサイズに応じて、径を変化することで、目標パターンサイズに基づいて形成されたライン部の幅に一致させる。このような調整が可能なプログラムを予め登録しておくことで、操作者は目標パターンサイズの設定だけで、テンプレートの作成が可能となる。また、部分的な微調整を可能とすることによって、目標パターンサイズに基づく形状を大きく損なうことなく、形状補正が可能となる。特に、光近接効果によりパターンが部分的に変形してしまう場合、目標パターンサイズを維持したまま、当該部分の補正を適正に行うことができれば、少ない作業量で半導体ウェーハに転写されるパターン形状に忠実な形状のテンプレートを再現することが可能となる。
【0060】
また、OPCテンプレートデータベース1312には、OPCパターンの存在によってもたらされる部分的な形状情報が予め登録されており、当該部分形状を目標パターンサイズに応じて、変形させることで、テンプレートの部分形状として設定する。更に、エッジサイズデータベース1313には、パターンサイズごとのエッジ情報が登録されており、目標パターンサイズの選択によって、そのサイズに応じたエッジ太さ情報が読み出されるように構成されている。
【0061】
以上のデータベースに登録された情報は、いずれも目標パターンサイズの設定に応じて、その大きさや形状の変形が可能であり、操作者は適切なデータベースを選択することによって、目標パターンサイズを基準としたパターンの変形を行うことが可能となる。また、目標パターンサイズごとに予め形状情報を登録するようにしても良い。
【符号の説明】
【0062】
101 電子銃陰極
102 第1陽極
103 第2陽極
104 一次電子線
105 集束レンズ
106 対物レンズ
107 ウェーハ(試料)
108 二段の偏向コイル
109 偏向制御装置
110 二次電子
111 二次電子検出器
112 増幅器
113 CRT
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の被探索画像に対するパターンマッチングを行うためのテンプレートを、前記試料の設計データに基づいて作成する演算装置を備えたパターンマッチング用画像作成装置において、
前記演算装置は、前記試料の設計データを目標パターンサイズに基づいて、縮小或いは拡大し、当該縮小或いは拡大が行われたパターンの部分形状を、前記目標パターンサイズに応じて変形し、当該変形が施されたパターンを前記テンプレートとして保存することを特徴とするターンマッチング用画像作成装置。
【請求項2】
請求項1において
前記演算装置は、前記設計データのサイズと、前記目標パターンサイズとの差異に応じて、当該設計データを縮小、或いは拡大することを特徴とするパターンマッチング用画像作成装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記演算装置は、前記拡大、或いは縮小が行われたパターンに、所定の太さを有するエッジを付加することを特徴とするパターンマッチング用画像作成装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記演算装置は、前記テンプレートとなるパターンの部分領域ごとにパターンの変形を実行することを特徴とするパターンマッチング用画像作成装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記演算装置は、前記パターンの一次元的な目標パターンサイズに応じて、前記パターンを二次元的に縮小或いは拡大することを特徴とするパターンマッチング用画像作成装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記演算装置は、前記パターンのパターンエンドの頂角部を、前記目標パターンサイズの大きさに応じた曲率となるように変形することを特徴とするパターンマッチング用画像作成装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記演算装置は、パターンのエッジサイズ情報に基づいて、前記縮小、或いは拡大されたパターンに、エッジを付加することを特徴とするパターンマッチング用画像作成装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記演算装置は、前記パターンの高さ情報と、側面角度情報に基づいて、前記パターンのエッジサイズを演算することを特徴とするパターンマッチング用画像作成装置。
【請求項1】
試料の被探索画像に対するパターンマッチングを行うためのテンプレートを、前記試料の設計データに基づいて作成する演算装置を備えたパターンマッチング用画像作成装置において、
前記演算装置は、前記試料の設計データを目標パターンサイズに基づいて、縮小或いは拡大し、当該縮小或いは拡大が行われたパターンの部分形状を、前記目標パターンサイズに応じて変形し、当該変形が施されたパターンを前記テンプレートとして保存することを特徴とするターンマッチング用画像作成装置。
【請求項2】
請求項1において
前記演算装置は、前記設計データのサイズと、前記目標パターンサイズとの差異に応じて、当該設計データを縮小、或いは拡大することを特徴とするパターンマッチング用画像作成装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記演算装置は、前記拡大、或いは縮小が行われたパターンに、所定の太さを有するエッジを付加することを特徴とするパターンマッチング用画像作成装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記演算装置は、前記テンプレートとなるパターンの部分領域ごとにパターンの変形を実行することを特徴とするパターンマッチング用画像作成装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記演算装置は、前記パターンの一次元的な目標パターンサイズに応じて、前記パターンを二次元的に縮小或いは拡大することを特徴とするパターンマッチング用画像作成装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記演算装置は、前記パターンのパターンエンドの頂角部を、前記目標パターンサイズの大きさに応じた曲率となるように変形することを特徴とするパターンマッチング用画像作成装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記演算装置は、パターンのエッジサイズ情報に基づいて、前記縮小、或いは拡大されたパターンに、エッジを付加することを特徴とするパターンマッチング用画像作成装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記演算装置は、前記パターンの高さ情報と、側面角度情報に基づいて、前記パターンのエッジサイズを演算することを特徴とするパターンマッチング用画像作成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−154223(P2011−154223A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16159(P2010−16159)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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