説明

パターン形成方法及びパターン形成装置並びに複合型ヘッド

【課題】インクジェット方式を用いた微細パターンの形成におけるパターンのにじみが防止され、高速処理を可能とするパターン形成方法及びパターン形成装置並びにヘッド。
【解決手段】基板(10)のパターン形成面(10A)に形成されるパターン(12)を構成するドットが形成される処理対象の打滴位置(14)に対して改質エネルギーが照射され、当該処理対象の打滴位置に改質処理が施され、未処理の処理対象の打滴位置に改質処理が施されている間に、改質処理が施された直後(改質処理が終了してから0.1秒以内)の打滴位置に対してインクジェット方式により液滴が打滴される。改質エネルギーとして、光又はプラズマを適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパターン形成方法及びパターン形成装置並びに複合型ヘッドに係り、特に、インクジェット方式を用いた微細パターンの形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット方式の液体吐出ヘッドを用いて、基板上に電気配線パターンやマスクパターンなどの微細パターンを形成する技術が注目されている。例えば、金属を拡散させた液体をインクジェットヘッドから打滴してパターンを描画し、加熱等により該パターンを硬化させる手法が挙げられる。
【0003】
図20(a),(b)は、従来技術に係るインクジェット方式を用いた微細パターン形成方法の課題を説明する図であり、基板1のパターン形成面1Aが図示されている。図20(a)は、基板1のパターン形成面1Aに着弾した複数の液滴2が合一して1つの大きな液滴3となった状態(バルジが発生した状態)が図示されている。また、図20(b)は、基板1のパターン形成面1Aに着弾した液滴2に着弾位置のズレが生じ、ジャギーが発生した状態が図示されている。図20(a),(b)とも、本来形成されるべきパターンは符号4を付し破線により図示した形状である。
【0004】
すなわち、インクジェット方式を用いたパターンの描画における課題として、基板1上において、複数の液滴が合一することにより発生するバルジ(集まり)や、液滴の飛翔方向ズレにより生じるジャギーなどが挙げられる。かかる課題を解決するために様々な検討がなされている。
【0005】
特許文献1は、レーザー光により取り囲まれた領域に液滴が打滴されることで、所定の起動から外れた液滴を所定の軌道に戻すように構成された液体吐出装置を開示している。また、特許文献2は薄膜パターンの形成領域に応じたバンクが形成された基板に所定の処理ガスを吹き付けて表面処理を施し、バンク間に液滴を配置して微細パターンを形成する薄膜パターン形成方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3794406号公報
【特許文献2】特開2004−351397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された液体吐出装置は、液滴の飛翔方向の曲がりを回避することができるものの、基板上における液滴の合一を回避することが困難である。特許文献2に開示された薄膜パターン形成方法は、基板の表面処理に高いエネルギーが必要とされるために、表面処理に時間がかかってしまう。また、表面処理のためのプラズマ処理装置とパターンの描画のためのインクジェット装置を別々に具備し、表面処理がすべて終わった後にパターンの形成が行われるので、基板の表面処理とパターンの描画を並行して行うことができず、高速処理の実現が困難である。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、インクジェット方式を用いた微細パターンの形成におけるパターンのにじみが防止され、高速処理を可能とするパターン形成方法及びパターン形成装置並びに複合型ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るパターン形成方法は、基板のパターン形成面に形成されるパターンを構成するドットが形成される処理対象の打滴位置に対して改質エネルギーを照射して、当該処理対象の打滴位置に改質処理を施す改質処理工程と、前記改質処理工程において未処理の処理対象の打滴位置に改質処理が施されている間に、改質処理が施された直後の打滴位置に対してインクジェット方式により液滴が打滴される打滴工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面改質がされた打滴位置に液滴が打滴されることで、基板上における液滴の移動が抑制され、複数の液滴が合一することによるバルジの発生や、着弾位置の位置ズレによるジャギーの発生によるパターンのにじみが防止される。また、他の未処理の打滴位置に改質処理が施されている間に改質処理が施された直後の打滴位置に対して液滴が打滴されるので、表面処理がすべて終わった後に液滴の打滴が行われる従来方法に比べて全体の時間短縮が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るパターン形成方法の概念図
【図2】図1に示すパターン形成方法の具体例を説明する図
【図3】本発明の第1実施形態に係るパターン形成装置の概略構成図
【図4】図3に示す機能ヘッドの概略構成図
【図5】図4に示す機能ヘッドに適用されるMEMSデバイスの説明図
【図6】図4に示す機能ヘッドの他の構成例を説明する図。
【図7】図3に示す機能ヘッドのノズル配置を説明する平面図
【図8】図3に示すインクジェットヘッドの概略構成図
【図9】機能ヘッド及びインクジェットヘッドを一体構造とした複合ヘッドの概略構造図
【図10】図3に示すパターン形成装置の制御部の構成を示すブロック図
【図11】本発明の第2実施形態に係るパターン形成装置の概略構成図
【図12】本発明の第2実施形態に係るパターン形成装置の他の構成例を示す概略構成図
【図13】本発明の第3実施形態に係るパターン形成装置に適用される機能ヘッドの概略構成図
【図14】本発明に係るパターン形成装置の変形例を説明する概略構成図
【図15】図14に示す変形例に係るライン型ヘッドの概略構成を示す平面透視図
【図16】図15に示すライン型ヘッドのノズル配置を説明する図
【図17】本発明の変形例に係る機能ヘッドの概略構成図
【図18】本発明の変形例に係る機能ヘッドの他の構成例の概略構成図
【図19】本発明の機能ヘッドに適用されるMEMSデバイスの製造方法を説明する図
【図20】従来技術に係るインクジェット方式を用いたパターン描画の課題を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0013】
〔パターン形成方法の説明〕
図1(a),(b)は、本発明の実施形態に係るパターン形成方法の概念図であり、基板10のパターン形成面10Aに直線状のパターン12(破線により図示)を形成する方法が模式的に図示されている。図1(a)はパターン形成面10Aに改質処理が施された基板10が図示されている。パターン12を構成するドットが形成される打滴位置に対して、ドットと略同一形状(面積)を有する微小領域に改質処理が施されている。
【0014】
すなわち、図1(a)に符号14を付してドットハッチを用いて図示した領域は、改質処理が施された領域であり、パターン12のデータ(ドットの位置データ、ドットサイズのデータ)に基づいて改質処理の対象となる打滴位置及び処理面積(サイズ)が決められ、ドットが形成される打滴位置のみに選択的に、ドット形成の直前に、スポット状(点状)に改質処理が施される。
【0015】
図1(b)は、改質処理が施された直後の打滴位置14に対して液滴が打滴され、直線状のパターン12が形成された基板10が図示されている。改質処理が施された打滴位置は当該改質処理の直後に液滴が打滴される。ここで、「改質処理の直後」とは、改質処理が終了してから0.1秒以内である。その後、基板10のパターン形成面10Aに着弾した液滴(ドット)に対して、加熱やエネルギー照射による定着処理が施され、基板10のパターン形成面10Aにパターン12が形成される。
【0016】
本例に示すパターン形成方法では、パターン12を構成するドットが形成される打滴位置に対して順次改質処理が施され、改質処理がされた直後の打滴位置は、直ちに液滴が打滴されドットが形成される。あるタイミングにおいて、改質処理後の打滴位置に液滴が打滴されていると、他の未処理の打滴位置は改質処理が施されるというように、改質処理と液滴の打滴が同時並行して実行される。
【0017】
改質処理の一例として、ビーム状のLED光やレーザー光を照射して打滴位置の親液(親水)性を他の部分よりも高くする親液処理が挙げられる。例えば、InGaN(窒化インジウムガリウム)を用いた青色LED(波長450nm)を1マイクロ秒から100マイクロ秒間照射することで、当該LED光が照射された部分が親液性に改質され、ドットが形成される打滴位置を基板10の標準状態よりも親液性とすることができ、着弾した液滴の移動が抑制され、ドットの位置ズレが防止される。所定の打滴位置を親液性に改質処理すると、水系の溶媒を用いた液体が適用される場合に高い効果を発揮しうる。一方、撥液性に改質処理すると有機溶媒を用いた液体が適用される場合に高い効果を発揮しうる。
【0018】
本例に適用される液体の例として、金、銀、銅やこれらの合金などの粒子を所定の溶媒に分散させた配線インク(金属溶液)、又は、上記した金属を含む前駆体溶液、絶縁体(樹脂)、半導体、有機EL発光材などを所定の溶媒に分散させた電子材料インク、レジスト液などが挙げられる。
【0019】
また、基板10の材料例として、ガラス(石英、耐熱ガラス等のLCD用無鉛ガラス)、シリコンウエハ、フィルム(PEN、PET、PC,PESなど)が挙げられる。基板10は、バリア層や導電層が含まれるものでもよい。
【0020】
図2(a),(b)は、図1(a),(b)に図示したパターン形成方法の具体例を示す概略構成図である。図2(a),(b)に示すパターン形成方法では、基板10の幅方向(主走査方向)について改質処理及び打滴が行われ、同方向の全域についてドットが形成されると、基板10を幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量移動させて、次の幅方向についての改質処理及び打滴を行い、この動作を繰り返して基板10の全域にパターンを形成するシリアル方式が適用される。かかるシリアル方式には、基板の全幅に満たない長さを有する短尺のシリアル型ヘッドが適用される。
【0021】
図2(a)は、基板10を移動方向の上流側から下流側を見た図であり、紙面を貫く方向が基板10の移動方向(副走査方向)となっている。また、図2(b)は、基板10のパターン形成面10Aを上側から見た図である。なお、図中「M」を付した方向は主走査方向であり、「S」を付した方向は副走査方向である。
【0022】
図2(a),(b)に示す例は、機能ヘッド(chemical reactor(CR)ヘッド)20を用いて基板10のパターン形成面10Aに対して改質エネルギー24が付与され、インクジェットヘッド(IJヘッド)22を用いて改質処理直後の打滴位置に液滴26が打滴される。図2(a)に示すように、主走査方向Mについて、機能ヘッド20をインクジェットヘッド22に先行させ、機能ヘッド20及びインクジェットヘッド22を一体として走査させる。先行する機能ヘッド20により改質エネルギー24を付与して改質させた打滴位置14は、後続するインクジェットヘッド22により液滴が打滴され、ドット(パターン)12が形成される。
【0023】
図2(b)に示すように、本例に示す機能ヘッド20は、副走査方向Sについて4つのノズル50が並べられた構造を有し、インクジェットヘッド22は、副走査方向Sについて4つのノズル80が一列に並べられた構造を有しているので、主走査方向Mについて1回の走査で、副走査方向に沿って4ドット分改質処理を同時に施すことができ、副走査方向に沿って4ドットを同時に形成しうる。
【0024】
図2(a),(b)に示すパターン形成方法では、各打滴位置について改質処理が施される形状(面積)は、当該打滴位置に形成されるドット12の形状(面積)と略同一となっている。すなわち、各打滴位置の改質処理が施される部分の面積をS、当該打滴位置に形成されるドットの面積をSとすると、図示の例は、ドット12と1ノズルが改質エネルギーを付与する微小領域の中心は一致し、S=Sとなっている。もちろん、改質エネルギー24が付与される微小領域を適宜変更可能に構成することで、S<SやS>Sとすることも可能である。例えば、S<Sとすると、同一の打滴位置にドットを積み重ねるときに有利であり、S>Sとすると、ドットを薄く拡げるときに有利である。
【0025】
図2(a),(b)に示すパターン形成方法では、いわゆる、シリアルスキャン方式(ラスタースキャン方式)を例示したが、走査方式として、ベクトルスキャン方式を適用してもよい。また、繰り返し走査でも単発走査でもよい。但し、繰り返し走査の場合は、機能ヘッド20とインクジェットヘッド22との位置関係を入れ換えて、機能ヘッド20が常にインクジェットヘッド22に対して先行させるために、走査方向に応じて機能ヘッド20及びインクジェットヘッド22を180°回転させるように構成される。
【0026】
機能ヘッド20のノズル50と、対応するインクジェットヘッド22のノズル80との主走査方向におけるピッチをxとし、機能ヘッド20及びインクジェットヘッド22の主走査方向への走査速度をvとしたときに、次式(1)の関係を満たすように、機能ヘッド20のノズル50とインクジェットヘッド22のノズルのピッチx(機能ヘッド20及びインクジェットヘッド22の配置関係)が決められるとともに、機能ヘッド20及びインクジェットヘッド22の主走査方向への走査速度をvが決められている。
【0027】
x/v≦0.1(秒)…(1)
機能ヘッド20の処理周波数をインクジェットヘッド22の打滴周波数と同一とし、かつ、機能ヘッド20の処理周期とインクジェットヘッド22の打滴周期とを同期させると、機能ヘッド20による改質処理タイミングからインクジェットヘッド22の打滴タイミングまでの時間間隔を、処理周期(打滴周期)の一周期分の時間とする態様が可能である。例えば、処理周波数及び打滴周波数を10kHzとすると、1周期分の時間は0.1秒であり、かかる態様では、改質処理から打滴までの時間は上記式(1)の条件を満足する。なお、改質処理から打滴までの時間を処理周期(打滴周期)の整数倍としてもよい。
【0028】
〔第1実施形態〕
(パターン形成装置の全体構成)
次に、上述したパターン形成方法が適用されるパターン形成装置について説明する。図3は、パターン形成装置30の概略構成図である。同図に示すパターン形成装置30は、機能ヘッド20及びインクジェットヘッド22が搭載されたキャリッジ32を主走査方向Mに沿って移動させる走査機構34と、基板10を支持するステージ36を副走査方向Sに沿って移動させる搬送機構38と、を具備している。図3に示す走査機構34は、キャリッジ32の送り機構としてボールネジ39が適用され、キャリッジ32の支持部材としてガイド部材40が適用される。また、搬送機構38は、ステージ36の送り機構としてボールネジ42が適用される。なお、ボールねじに代わり、リニアスライダーなどのリニアアクチュエータを適用してもよいし、xyテーブルを適用してもよい。
【0029】
(機能ヘッドの説明)
図4(a)は、機能ヘッド20の内部構造を模式的に図示した構造図であり、図4(b)は、機能ヘッド20の上面から内部を見た透視図である。図4(a)における紙面を貫く方向、及び図4(b)の左右方向は、図2,3に示した主走査方向Mである。
【0030】
図4(a),(b)に示すように、機能ヘッド20は、複数のノズル50‐1,50‐2,50‐3,50‐4が形成されたノズルプレート52と、ノズル50‐1,50‐2,50‐3,50‐4のそれぞれに対応する複数の可動ミラー54‐1,54‐2,54‐13,54‐14と、光源(図4(a)中不図示、図4(b)に符号55を付して図示)から出された光を各可動ミラー54‐1,54‐2,54‐3,54‐4に導くための固定ミラー群56と、を具備している。
【0031】
なお、以下の説明では、複数のノズル50‐1,50‐2,50‐3,50‐4をまとめてノズル50と記載することがある。また、複数の可動ミラー54‐1,54‐2,54‐3,54‐4をまとめて可動ミラー54と記載することがある。
【0032】
光源55には、LED光源やレーザー光源が適用される。LED光源の適用例として、InGaN(窒化インジウムガリウム)を用いた青色LED(波長450nm)が挙げられる。これ以外にも、AlInM(窒化アルミニウムインジウム)、AlInGaN(窒化アルミニウムインジウムガリウム)などを用いた青色LEDを適用してもよい。すなわち、本例に適用される光は、基板10の表面を改質させるために必要なエネルギーを有するものであればよい。また、パターンを構成するドットの面積と略同一の面積を有する微小な領域について照射可能な程度の直進性や非拡散性を有していればよい。さらに、光量や照射強度、照射時間によって改質エネルギーを可変させることができるものであると好ましい。
【0033】
図4(b)に示すように、固定ミラー56‐1〜56‐4は、ノズル50‐1〜50‐4の配列に対応して、光源55の光軸方向に沿う方向に固定ミラー56‐1〜56‐4が一列に並べられた構造を有している。固定ミラー56‐1〜56‐4は、反射特性及び透過特性を有するハーフミラー(半透過鏡)であり、光源から出された光の一部は、固定ミラー56及び可動ミラー54によって光軸が曲げられてノズル50へ導かれ、光の一部は次段の固定ミラーへ導かれる。光源55から照射された光が最終段の固定ミラーへ到達し、かつ、当該最終段の固定ミラーに対応するノズルへ到達し、さらに、該ノズルから基板10へ照射されたときに、当該照射領域を改質させるのに十分な光量となるように、各固定ミラー56による光量の減衰を考慮して、光源55から照射される光の光量が決められている。
【0034】
図4(a)に示すように、可動ミラー54は、固定ミラー56よって曲げられた光軸に対する角度を変更可能に構成されている。図4(a)に示す例では、実線により図示した状態の可動ミラー54はノズル50へ光を導き、一方、破線により図示した状態の可動ミラー54はノズル50へ光を導かない。ノズル50へ導かれた光は、ノズル50の開口を介して基板10のパターン形成面10Aにおける所定の打滴位置(図2(a),(b)参照)へ照射される。
【0035】
すなわち、図4(a),(b)に示す機能ヘッド20は、内蔵される可動ミラー54の角度を適宜調整(変更)することで、対応するノズル50へ光を導くか否かを切り換えることでき、基板10上の打滴位置に対して、選択的に光を照射しうる。光源55を機能ヘッド20の外部に備え、光源55から出された光を機能ヘッド20内に導き、さらに、ノズル50を介して当該光を基板10に照射するように構成してもよい。
【0036】
図4(a),(b)に図示した可動ミラー54は、MEMS(micro electro mechanical system)デバイスが適用される。MEMSデバイスとは、半導体製造プロセスや犠牲層エッチングプロセスなどの微細加工技術を用いて作製された微細な機械要素部品である。可動ミラー54の角度を変更するために、可動ミラー54を移動(回転)させるアクチュエータにもMEMSデバイス(MEMSアクチュエータ)が適用される。図5(a),(b)は、MEMSアクチュエータの構成例として、片持ち梁構造を有するリボン状アクチュエータを示す。図5(a)に示すMEMSアクチュエータ60は、対向電極基板62上に対向電極64が形成され、さらに、対向電極64の上に片持ち梁66が形成される。片持ち梁66は、一方の端がシリコンの固定部材68によって固定され、他方の端に可動ミラー54が設けられた構造を有している。
【0037】
図5(b)は、MEMSアクチュエータ60の動作が模式的に図示されている。同図に符号66Aを付して実線により図示した状態は、対向電極64に電圧が印加されていない状態の片持ち梁66であり、先端部に形成された可動ミラー54は起き上がった状態となることで、光軸からずれた位置となる。
【0038】
一方、符号66Bを付して破線により図示した状態は、対向電極64に電圧が印加されている状態の片持ち梁66であり、先端部に形成された可動ミラー54は、光軸上に位置する。すなわち、MEMSアクチュエータ60の対向電極64に対して所定の駆動電圧を印加することで、片持ち梁66の他方の端に設けられた可動ミラー54の角度(姿勢)を変更して、光のオンオフが可能となる。
【0039】
なお、本発明に適用される可動ミラー54は、図5(a),(b)に図示した片持ち梁構造に限定されず、回転型光スイッチなどの他の形態を有するMEMSスイッチを適用することができる。
【0040】
図4(a),(b)に示す態様では、ノズルごとに光を導く可動ミラー54が具備される態様を例示したが、図6に示すように、光を走査させてノズル50ごとに光を導く態様も可能である。同図に示す構成では、光源70から出された光は、照射レンズ72を介して回折部74に照射される。回折部74により回折した回折光は、フィルター76を介して走査ミラー78へ到達する。ドットの位置情報、ドットのサイズ情報に基づき決められた走査シーケンスに基づいて走査ミラー78を走査させることで、所定のノズル50へ光が導かれる。
【0041】
図7(a)は、機能ヘッド20のノズル配置を示す機能ヘッド20のノズル面の平面図である。同図に示すように、機能ヘッド20は、副走査方向(図中上下方向)について、複数のノズル50が配置ピッチPで一列に並べられた構造を有している。ノズル50の配置ピッチを高密度化するために、図7(b)に示すように複数のノズル50を千鳥状に配置してもよいし、マトリクス状に配列してもよい(図16参照)。図7(b)に示す千鳥配置におけるノズル実質的な配置ピッチP’は、図7(a)に示すノズル50の配置ピッチPの1/2となっている。
【0042】
機能ヘッド20の1ノズルが処理する処理面積は、ノズル50の開口面積に依存する。理想的な平行光の場合は、ノズル50の開口面積と1ノズルが担う改質処理領域の面積とは同一となる。すなわち、ノズルの開口面積を大きくすると1ノズルが担う改質処理領域の面積は大きくなり、ノズルの開口面積を小さくすると1ノズルが担う改質処理領域の面積は小さくなる。機能ヘッド20のノズル50の直径は、1ノズルが担う改質処理領域の直径によって決められている。
【0043】
なお、光を絞ることで1ノズルが担う改質処理領域の面積を、当該ノズルの開口面積よりも小さくすることが可能である。また、ノズル50の近傍に拡大光学系又は縮小光学系(例えば、マイクロレンズアレイ)を具備することで、1ノズルが担う改質処理領域の面積を適宜縮小又は拡大することも可能である。上述したように、パターンの種類(ドットを積み重ねる構成又は薄く広げる構成)に対応して、光径を変えることで、改質処理が施される領域の面積(光が照射される面積)を定量的に調整可能である。
【0044】
光の強度を変更すると、処理時間を変更することができる。なお、光の強度を大きくすると機能ヘッド20内における発熱が大きくなるので、処理時間及びエネルギー損失の双方の観点から光の強度は設定される。
【0045】
なお、光源から照射される光が理想的な平行光でない場合は、光路の途中に適宜光学系(マイクロレンズアレイなどの集光レンズ(群))が具備されるので、ノズル50に到達する光は平行光とみなすことができる。
【0046】
(インクジェットヘッドの説明)
次に、インクジェットヘッド22について説明する。本例に示すインクジェットヘッド22の吐出方式には、圧電方式が適用される。図8は、記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル80に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図である。同図に示すように、本例のインクジェットヘッド22は、ノズル80が形成されたノズルプレート82と、圧力室84や共通流路86等の流路が形成された流路板88等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート82は、インクジェットヘッド22のノズル面82Aを構成し、各圧力室84にそれぞれ連通する複数のノズル80が副走査方向に沿って一列に形成されている。
【0047】
流路板88は、圧力室84の側壁部を構成するとともに、共通流路86から圧力室84にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口90を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図8では簡略的に図示しているが、流路板88は一枚又は複数の基板を積層した構造である。ノズルプレート82及び流路板88は、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
【0048】
共通流路86はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路86を介して各圧力室84に供給される。圧力室84の一部の面(図8における天面)を構成する振動板92には、上部電極(個別電極)94及び下部電極96を備え、上部電極94と下部電極96との間に圧電体98がはさまれた構造を有するピエゾアクチュエータ(圧電素子)100が接合されている。振動板92を金属薄膜や金属酸化膜により構成すると、ピエゾアクチュエータ100の下部電極96に相当する共通電極として機能する。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様では、振動板部材の表面に金属などの導電材料による下部電極層が形成される。
【0049】
上部電極94に駆動電圧を印加することによってピエゾアクチュエータ100が変形して圧力室84の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル80からインクが吐出される。インク吐出後、ピエゾアクチュエータ100が元の状態に戻る際、共通流路86から供給口90を通って新しいインクが圧力室84に再充填される。
【0050】
なお、本例に示すインクジェットヘッド22の吐出方式として、サーマル方式を適用してもよい。サーマル方式についての詳細な説明は省略するが、サーマル方式では、液室内に設けられたヒータに駆動信号が印加されると液室内の液体が加熱され、液室内の液体の膜沸騰現象を利用してノズルから所定量の液滴が吐出される。
【0051】
先に説明したように、インクジェットヘッド22のノズル配置は、機能ヘッド20のノズル配置と同一になっている。かかる構造により、改質処理が施された打滴位置に対して液滴を打滴しうる。例えば、図9(a)に示すように、機能ヘッド20のノズル50と、インクジェットヘッド22のノズル80とを一枚のノズルプレート120に形成し、マイクロマシニング技術を用いて、機能ヘッド20の構造体とインクジェットヘッド22の構造体とを別々に作製し、これらの構造体を合体させて、さらに、2つの構造体を合体させた複合構造体にノズルプレート120を接合して、図9(b)に示すように、機能ヘッド20とインクジェットヘッド22とを一体構造とした複合型ヘッド(ハイブリッド型ヘッド)とすることができる。
【0052】
かかるハイブリッド型ヘッドは、機能ヘッド20のノズルプレート52とインクジェットヘッド22のノズルプレート82とを別々に作製するよりも、機能ヘッド20のノズル50と機能ヘッド20のノズル80との位置合わせ精度が向上し、ノズルプレート120の生産性を上げることが可能である。
【0053】
(制御系の説明)
図10は、パターン形成装置30の制御系の概略構成を示すブロック図である。パターン形成装置30は、通信インターフェース140、システム制御部142、搬送制御部144、画像処理部146、インクジェットヘッド駆動部(IJヘッド駆動部)148、機能ヘッド駆動部(CRヘッド駆動部)149を備えるとともに、画像メモリ150、ROM152を備えている。
【0054】
通信インターフェース140は、ホストコンピュータ154から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース140は、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースを適用してもよいし、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用してもよい。通信インターフェース140は、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0055】
システム制御部142は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってパターン形成装置30の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能し、さらに、画像メモリ150及びROM152のメモリコントローラとして機能する。すなわち、システム制御部142は、通信インターフェース140、搬送制御部144等の各部を制御し、ホストコンピュータ154との間の通信制御、画像メモリ150及びROM152の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
【0056】
ホストコンピュータ154から送出された画像データは通信インターフェース140を介してパターン形成装置30に取り込まれ、画像処理部146によって所定の画像処理が施される。
【0057】
画像処理部146は、画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号(画像)処理機能を有し、生成した印字データをインクジェットヘッド駆動部148、及び機能ヘッド駆動部149に供給する制御部である。画像処理部146において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、インクジェットヘッド駆動部148を介してインクジェットヘッド22の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図10に示すインクジェットヘッド駆動部148には、インクジェットヘッド22の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0058】
機能ヘッド駆動部149は、画像処理部146によって生成された印字データに基づいて改質処理のための制御信号が生成される。該制御信号は、ドットのサイズの情報やパターンの種類の情報(ドットを積み重ねるか又は薄く広げるか)に応じて生成される、光源から照射される光の照射面積を調整するための信号と、画像データに基づいて生成されるノズルの選択信号(各打滴位置についてドットを形成するか否かの情報)が含まれる。光源の調整信号によって光の照射面積が決められ、ノズルの選択信号によって可動ミラー54(図4参照)の動作が制御される。
【0059】
機能ヘッド20のノズルの選択信号の具体例として、インクジェットヘッド22のノズル選択信号に対して位相を進ませる態様が挙げられる。すなわち、機能ヘッド20のノズル50とインクジェットヘッド22のノズル80は一対一で対応しているので、機能ヘッド20のノズル50とインクジェットヘッド22のノズルとの主走査方向における間隔xを、機能ヘッド20及びインクジェットヘッド22の走査速度vで除算した(x/v)が、機能ヘッド20の制御信号とインクジェットヘッド22の制御信号との位相差となる。なお、実際には、印字データに基づいて機能ヘッド20のノズ選択信号が生成され、機能ヘッド20のノズ選択信号に対して上記した(x/v)で求められる遅延時間が付加されたインクジェットヘッド22のノズル選択信号が生成される。
【0060】
搬送制御部144は、画像処理部146により生成された印字制御用の信号に基づいて基板10(図2参照)の搬送タイミング及び搬送速度を制御する。図10における搬送駆動部156は、図3のボールネジ39,42を駆動するモータが含まれる。すなわち、搬送制御部144は上記のモータのドライバーとして機能している。
【0061】
画像メモリ(一次記憶メモリ)150は、通信インターフェース140を介して入力された画像データを一旦格納する一次記憶手段としての機能や、ROM152に記憶されている各種プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域(例えば、画像処理部146の作業領域)としての機能を有している。画像メモリ150には、逐次読み書きが可能な揮発性メモリ(RAM)が用いられる。
【0062】
ROM152は、システム制御部142のCPUが実行するプログラムや、装置各部の制御に必要な各種データ、制御パラメータなどが格納されており、システム制御部142を通じてデータの読み書きが行われる。ROM152は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。また、外部インターフェースを備え、着脱可能な記憶媒体を用いてもよい。
【0063】
本例に示すパターン形成装置30は、ユーザインターフェース170を具備し、該ユーザインターフェース170は、オペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置172と、表示部(ディスプレイ)174を含んで構成される。入力装置172には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置172を操作することにより、印刷条件の入力、画質モードの選択、付属情報の入力・編集、情報の検索などを行うことができ、入力内容や検索結果など等の各種情報は表示部174の表示を通じて確認することができる。この表示部174はエラーメッセージなどの警告を表示する手段としても機能する。なお、図10の表示部174は、異常を知らせる報知手段としてのディスプレイに適用することができる。
【0064】
パラメータ記憶部180は、パターン形成装置30の動作に必要な各種制御パラメータが記憶されている。システム制御部142は、制御に必要なパラメータを適宜読み出すとともに、必要に応じて各種パラメータの更新(書換)を実行する。
【0065】
プログラム格納部184は、パターン形成装置30を動作させるための制御プログラムが格納されている記憶手段である。
【0066】
上記の如く構成されたパターン形成方法によれば、基板10の現実にドットが形成される打滴位置に対して改質処理が施され、改質処理が施された直後の打滴位置に液滴が打滴されるので、ジャギーやバルジの発生が防止され、パターンのにじみレス化が可能となる。また、打滴位置を中心とし、ドットの被覆面積と略同一面積を有する微小領域に対して、オンデマンドによる改質処理が実行されるので、より少ないエネルギーを用いた効率のよい改質処理となる。さらに、改質処理と打滴が連続的に実行されるので、パターン形成が全体として高速化される。
【0067】
改質処理として親液処理が適用されると、基板10と液滴の密着力(接合力)が向上する。特に、水系の溶媒を用いた液体が適用される場合や、フレキシブル基板などの柔軟性を有する基板が用いられる場合は、パターンの剥離が防止された好ましいパターン形成が可能となる。さらに、機能ヘッド20を用いたオンデマンド処理によって、改質処理のマスクレス化が可能となる。
【0068】
本例では、機能ヘッド20がインクジェットヘッド22と同一のノズル配置を有する態様を例示したが、基板上の各打滴位置に対して選択的に改質処理を施すことが可能であれば(機能ヘッド20に各打滴位置に対応するノズル50が存在すれば)、機能ヘッド20のノズル配置をインクジェットヘッド22のノズル配置と異ならせてもよい。
【0069】
また、本例では、機能ヘッド20とインクジェットヘッド22とを同一のキャリッジ32に搭載して、一体的に走査させる態様を例示したが、機能ヘッド20とインクジェットヘッド22とを独立に走査させてもよい。かかる態様では、改質処理が施された直後の打滴位置に対して液滴が打滴されるように、機能ヘッド20及びインクジェットヘッド22が配置されるとともに、それぞれの走査が制御される。
【0070】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係るパターン形成装置について説明する。以下に説明する第2実施形態において、先に説明した第1実施形態と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0071】
図11は、第2実施形態に係るパターン形成装置200の概略構成図である。同図に示すパターン形成装置200は、反応ガス雰囲気202において基板10に対する改質処理が施される。例えば酸素を含む反応ガス雰囲気202において、光と反応ガスが反応して活性酸素が生成され、この活性酸素によって光が照射された打滴位置が親液性に改質される。なお、機能ヘッド20は、上述した第1実施形態と同様の構成を適用することができる。一方、反応ガスとしてフッ素系ガスを用いると、改質処理領域を撥液(撥水)性とすることができる。パターン形成に用いられる液体が有機溶媒を用いたものである場合は、基板10の表面を撥液性とすることで、打滴された液滴の定着性が向上する。
【0072】
詳細な図示は省略するが、機能ヘッド20と基板10との空間に反応ガスを充填させる構成の一例として、機能ヘッド20と基板10との間に反応ガスを放出させるための放出口と、該放出口と連通される反応ガス流路と、反応ガス流路を介して放出口と接続される反応ガスタンクと、を具備する態様が挙げられる。
【0073】
また、図12に示すように、機能ヘッド20やインクジェットヘッド22、機能ヘッド20及びインクジェットヘッド22の走査機構(不図示)、基板10の搬送機構38を内蔵するチャンバー204を具備し、チャンバー204内を反応ガス雰囲気として、改質処理及び打滴を行う態様も可能である。図12では図示を省略するが、チャンバー204の基板搬入口及び基板排出口には、加熱工程等の前処理工程及び定着工程等の後処理工程との間で基板10の受け渡しを行う搬送部が配設されている。
【0074】
本例に適用される反応ガスの一例として、酸素、窒素、フッ化メタン(CF)などが挙げられる。図12に示す態様では、チャンバー204内に反応ガスを充填するための供給口、及びチャンバー204内の反応ガスを排出させるための排出口が具備される。かかる構成によって、チャンバー204内の反応ガスを基板10の種類や、改質処理の内容、機能ヘッド20から照射される光の種類に対応して、反応ガスを適宜切り換えることが可能となる。
【0075】
上記の如く構成されたパターン形成装置によれば、反応ガスと光が反応して活性酸素となり、との組み合わせにより基板に対して改質処理が施されるので、第1実施形態に係る大気中における改質処理と比較して、効率よく改質処理を行うことが可能となる。
【0076】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本例では、機能ヘッドから発生させたプラズマ(ラジカル)を基板に照射させて改質処理が施されるように構成されている。
【0077】
図13は、本例に適用される機能ヘッド320の概略構成図である。同図に示す機能ヘッド320は、プラズマ源321が内蔵されるとともに、複数のノズル350のそれぞれに対応して、シャッター(ノズル開閉機構)354が内部に設けられている。シャッターは、先に説明したMEMSデバイスが適用される。
【0078】
すなわち、本例に示す機能ヘッド320は、図4(a),(b)に図示した機能ヘッド20の光源55に代わりプラズマ源(高電圧プラズマ源)321が具備され、可動ミラー54に代わりシャッター354が具備され、パターンを形成するドットの位置データ及びサイズのデータに基づいて改質処理の制御信号が生成され、該制御信号により各シャッター354の動作(ノズル350の開閉)が制御され、パターンを構成するドットが形成される打滴位置に対してプラズマが照射される。
【0079】
本例に適用される改質処理では、プラズマ源321と機能ヘッド320内に充填された反応ガス302を用いて、機能ヘッド320内にプラズマ放電を発生させ、ノズル350を介してプラズマ放電電子を基板10のパターン形成面10Aに照射することにより、パターン形成面10Aに親水性極性基を生成し、濡れ正・接着性・印刷性・コーティング特性等の機能が付与される。なお、空気(エアー)を用い大気中でプラズマ放電を発生させてもよい。
【0080】
上記の如く構成された第3実施形態によれば、基板10のパターン形成面10Aにおける打滴位置に対して、プラズマを用いた改質処理が施されることで、現実にドットが形成される打滴位置を中心とした所定領域が親液性となり、ジャギーやバルジの防止によるにじみレス化、少ないエネルギーを用いた効率のよい改質処理、パターン形成全体の高速化といった、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
〔変形例〕
次に、上述した第1〜3実施形態の変形例について説明する。
【0082】
(全体構成)
図14は、本発明の変形例に係るパターン形成装置30’の概略構成図である。同図に示すパターン形成装置30’は、フルライン型の機能ヘッド20’を具備するとともに、フルライン型のインクジェットヘッド22’を具備している。フルライン型の機能ヘッド20’とは、基板10の主走査方向Mにおける全長に対応する長さにわたって、ノズル50が並べられた構造を有し、機能ヘッド20’と基板10とを副走査方向Sについて1回だけ相対的に移動させることで、基板10の全域にわたって改質処理を行うことができる。
【0083】
図14に示すパターン形成装置30’は、副走査方向の前段(基板10の搬送方向上流側)に機能ヘッド20’が配置されるとともに、機能ヘッド20’の後段(基板10の搬送方向下流側)にインクジェットヘッド22’が配置されている。また、機能ヘッド20’とインクジェットヘッド22’とは近接して配置されている。機能ヘッド20’のノズル50(図14中不図示)と、機能ヘッド20’のノズル50に対応するインクジェットヘッド22’のノズル80(図14中不図示)との副走査方向における間隔y(機能ヘッド20’とインクジェットヘッド22’との配置間隔)は、基板10の搬送速度をvとしたときに、y≦0.1×vとなっている。つまり、改質処理が施された打滴位置は、改質処理から0.1秒以内に液滴が打滴される。
【0084】
基板10の先頭側から順次機能ヘッド20’の処理領域に進むと、現実にドットが形成される打滴位置に改質処理が施され、改質処理が施された直後の打滴位置には、機能ヘッド20’の後段に位置するインクジェットヘッド22’から液滴が打滴される。
【0085】
(ノズル配置の説明)
図15は、フルライン型インクジェットヘッド22’の構成例を示す平面透視図(インクジェットヘッド22’から基板10を見た図)であり、図16は、図15に示すインクジェットヘッド22’のノズル配置を説明する図である。なお、先に説明したように、機能ヘッド20’とインクジェットヘッド22’はノズル配置が同一とされるので、ここではインクジェットヘッド22’について説明する。
【0086】
図15に示すインクジェットヘッド22’は、n個のヘッドモジュール22A‐i(iは1からnの整数)をインクジェットヘッド22’の長手方向に沿って一列につなぎ合わせてマルチヘッドを構成している。また、各ヘッドモジュール22A‐iは、インクジェットヘッド22’の短手方向の両側からヘッドカバー22B,22Cによって支持されている。なお、ヘッドモジュール22Aを千鳥状に配置してマルチヘッドを構成することも可能である。かかる構造を有するインクジェットヘッド22’と記録媒体とを相対的に一回だけ走査させてパターン形成を行う、いわゆるシングルパス方式により、基板10の全面にわたってパターンを形成し得る。
【0087】
インクジェットヘッド22’を構成するヘッドモジュール22A‐iは、略平行四辺形の平面形状を有し、隣接するサブヘッド間にオーバーラップ部が設けられている。オーバーラップ部とは、サブヘッドのつなぎ部分であり、ヘッドモジュール22A‐iの並び方向について、隣接するドットが異なるサブヘッドに属するノズルによって形成される。
【0088】
図16に示すように、各ヘッドモジュール22A‐iは、ノズル80が二次元状に並べられた構造を有し、かかるヘッドモジュール22A‐iを備えたヘッドは、いわゆるマトリクスヘッドと呼ばれるものである。図16に図示したヘッドモジュール22A‐iは、副走査方向Sに対して角度αをなす列方向W、及び主走査方向Mに対して角度βをなす行方向Vに沿って多数のノズル80が並べられた構造を有し、主走査方向Mの実質的なノズル配置密度が高密度化されている。図3では、行方向Vに沿って並べられたノズル群(ノズル行)は符号80Aを付し、列方向Wに沿って並べられたノズル群(ノズル列)は符号80Bを付して図示されている。
【0089】
なお、ノズル80のマトリクス配置の他の例として、主走査方向Mに沿う行方向、及び主走査方向Mに対して斜め方向の列方向に沿って複数のノズル80を配置する構成が挙げられる。
【0090】
機能ヘッド20’の内部構造は図4(a),(b)に図示した光照射型の構造を適用してもよいし、図13に図示したプラズマ照射型の構造を適用してもよい。また、インクジェットヘッド22’の内部構造は図8に図示したピエゾアクチュエータ型を適用してもよいし、図示しないサーマル型を適用してもよい。
【0091】
さらに、図9(b)に示すように、機能ヘッド20’とインクジェットヘッド22’とを一体構造とし、一枚のノズルプレートに機能ヘッド20’のノズルとインクジェットヘッド22’のノズルとを形成してもよい。
【0092】
図17(a),(b)は、図4(a),(b)に図示した光照射型ヘッドの構造をマトリクスヘッドに適用した場合の構造例を示す図である。なお、図17(a),(b)中、図4(a),(b)と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0093】
以下に説明するマトリクスヘッドのノズル配列は、主走査方向に沿う行方向、及び主走査方向に対して斜め方向の列方向に沿って複数のノズル50(50‐11,50‐12,…,50‐32,…,)が並べられているものとして説明する。
【0094】
図17(a)は、機能ヘッド20’の立体構造を示す図であり、図17(b)は、機能ヘッド20’を上面から見た図である。図17(a)における左右方向は機能ヘッド20’の長手方向(主走査方向M)であり、紙面を貫く方向は基板10の搬送方向(副走査方向S)である。図17(a)には、主走査方向Mに沿って配置された多数のノズルのうち、3つのノズル50‐11,50‐12,50‐13のみが図示されている。図17(a)に図示された3つのノズル50‐11,50‐12,50‐13のうち、ノズル50‐11,50‐13は基板10へ光を照射するオン状態のノズルであり、ノズル50‐12は、基板10へ光を照射しないオフ状態のノズルである。
【0095】
図17(b)に示すように、固定ミラー群56は、複数の固定ミラー56‐1,56‐2,56‐3,…、が副走査方向Sに沿って一列に並べられており、固定ミラー56の配置ピッチは、ノズル50の副走査方向Sの実質的な配置ピッチに対応している。すなわち、主走査方向に沿って並べられた複数のノズルの一群に対して1つの固定ミラー56が具備されている。
【0096】
固定ミラー56は、反射特性及び透過特性を有するハーフミラー(半透過鏡)が適用される。すなわち、光源55から照射された光は、最初の固定ミラー56‐3によって一部が反射してノズル50‐31,50‐32,…,ごとに設けられた可動ミラー54‐31,54‐32,…,へ導かれ、一部が透過して次段の固定ミラー56‐2へ導かれる。次段の固定ミラー56‐2導かれた光は、一部が反射して可動ミラー54‐21,54‐22,…,へ照射され、一部は透過して次段の固定ミラー56‐1へ到達する。
【0097】
なお、主走査方向Mに沿って並べられた可動ミラー54の一群(例えば、可動ミラー54‐11,‐12,54‐13,…,)は、固定ミラー56側から順にオンをなるように動作が制御される。例えば、ノズル50‐11,50‐13がオン、ノズル50‐12がオフとなる場合は、先ず、ノズル50‐11がオンとなり、ノズル50‐11から所定時間光が照射されオフとなった後に、ノズル50‐13がオンとなる。このようにして、主走査方向に沿って並べられたノズル50の一群はタイミングをずらして順次オンとされる。
【0098】
例えば、1つのノズル50(可動ミラー54)のオン時間を1マイクロ秒とすると、1マイクロ秒間隔で固定ミラー56に近い側の可動ミラー54から順にオンとされ、主走査方向について最終段の固定ミラー56がオンになると、主走査方向についての一回分の走査が終了する。主走査方向における一回の走査に要するる時間に応じて、基板10の搬送速度が決められる。
【0099】
なお、通過する固定ミラー56の数が多くなるほど(光源55から離れるほど)オン時間を長くして、固定ミラーによる光量の損失を補償するとよい。例えば、ノズル50‐31を含む一群(透過する固定ミラーの数はゼロ)よりも、ノズル50‐21を含む一群(透過する固定ミラーの数1)は、固定ミラー56の透過率に応じてオン時間を長くするとよい。
【0100】
また、主走査方向におけるノズル50の一群ごとに光源55が具備され、固定ミラー群56が省略される態様や、光ファイバー等を用いてノズルごとに点光源が具備される態様も可能である。
【0101】
図18は、図13に図示したプラズマ照射型の機能ヘッドの構造をマトリクスヘッドに適用した場合の構造例を示す図である。なお、図18中、図13と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。図18に示す機能ヘッド320’は、ノズル350‐1及びノズル350‐3に対応するシャッター354‐1,354‐3が開かれた状態であり、ノズル350‐1,350‐3がオンとなっている。一方、ノズル350‐2に対応するシャッター354‐2が閉じられた状態であり、ノズル350‐2がオフとなっている。このように、各ノズル350に対応するシャッター354を適宜オンオフさせることで、各ノズル350から選択的にプラズマを照射させることが可能となっている。かかる態様では、複数のノズル350から同時にプラズマを照射することが可能であり、また、ノズルごとに照射されるエネルギー量が異なるといった問題もない。
【0102】
〔可動ミラー(MEMSデバイス)の製造方法〕
次に、機能ヘッド20(20’,320)に適用される可動ミラー54(MEMSデバイス)の製造方法について工程順に沿って説明する。図19(a)〜(e)は、MEMSデバイスの製造工程を説明する図である。まず、シリコン基板300を1050℃で加熱して、シリコン基板300の表面にシリコン酸化膜(SiO)302,304が形成される(図19(a):酸化膜生成工程)。なお、シリコン基板300の面方位は(100)であり、厚みが0.5μm〜4μm程度の中間層(SiO)306が設けられている。
【0103】
次に、ドライエッチング(反応性イオンエッチング(RIE))により、マスクとなるシリコン酸化膜302,304がパターンニングされる(図19(b):マスクパターンニング工程)。かかる工程では、反応ガスとしてCFやHが用いられる。さらに、パターンニングされたシリコン酸化膜302,304をマスクとし、中間層306をストップ層として、ドライエッチングによりシリコン酸化膜302により被覆されていない領域がパターンニングされる(図19(c):パターンニング工程)。かかる工程では、反応ガスとしてSFやCが用いられる。
【0104】
その後、中間層306が除去され(図19(d):中間層除去工程)、ミラーとなる部分にメッキ処理が施され、金やプラチナなどのミラーとなる金属薄膜308が形成される(図19(e):メッキ処理工程)。
【0105】
同様の工程により、可動ミラー54を動作させるMEMSアクチュエータ(図5参照)が作製される。MEMSアクチュエータを作製する際は、対向電極(図5参照)を形成する工程(対向電極となる金属薄膜を形成する工程、該金属薄膜をパターンニングする工程)が含まれる。
【0106】
かかるMEMSデバイスは、高精度に微細加工された機械要素及び機械要素と電気要素とを融合させた微細デバイスであり、ミクロンオーダーやナノオーダーの精度が要求される機能ヘッド20を構成する微細デバイスの作製に好適である。
【0107】
図19(a)〜(e)に示す各工程を経て、機能ヘッド20の内部構造が作製されると、この内部構造体や、光源などが機能ヘッド20のフレーム内に設置され、ノズルプレート52(図4参照)が可動ミラー54と位置合わせされて接合され、機能ヘッド20が完成する。
【0108】
本例では、基板上の配線パターンやマスクパターンなどのパターン描画を行う方法及び装置を例示したが、本発明は、紙などの記録媒体上に画像を形成するグラフィック印刷や、有機ELパネルなどの薄型パネルの作製にも適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0109】
以上、本発明に係るパターン形成方法及びパターン形成装置並びに複合型ヘッドについて詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよい。
【0110】
<付記>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0111】
(発明1):基板のパターン形成面に形成されるパターンを構成するドットが形成される処理対象の打滴位置に対して改質エネルギーを照射して、当該処理対象の打滴位置に改質処理を施す改質処理工程と、前記改質処理工程において未処理の処理対象の打滴位置に改質処理が施されている間に、改質処理が施された直後の打滴位置に対してインクジェット方式により液滴が打滴される打滴工程と、を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0112】
本発明によれば、表面改質がされた打滴位置に液滴が打滴されることで、基板上における液滴の移動が抑制され、複数の液滴が合一することによるバルジの発生や、着弾位置の位置ズレによるジャギーの発生によるパターンのにじみが防止される。また、他の未処理の打滴位置に改質処理が施されている間に改質処理が施された直後の打滴位置に対して液滴が打滴されるので、表面処理がすべて終わった後に液滴の打滴が行われる従来方法に比べて全体の時間短縮が見込まれる。
【0113】
本発明の改質処理としては、基板のパターン形成面に親水性極性基生成して親液性に改質させる親液処理が挙げられる。
【0114】
(発明2):発明1に記載のパターン形成方法において、前記打滴工程は、改質処理が施された打滴位置に対して、改質処理が終了してから0.1秒以内に液滴が打滴されることを特徴とする。
【0115】
かかる態様によれば、パターン形成の全体の処理時間が短縮化される。
【0116】
(発明3):発明1又は2に記載のパターン形成方法において、前記改質処理工程は、所定の改質処理周期に基づいて改質処理を施し、前記打滴工程は、打滴周期を前記改質処理周期と同一とし、かつ、前記打滴周期と前記改質処理周期を同期させたときに、改質処理が施された打滴位置に対して、改質処理が終了してから改質処理周期の整数倍の時間経過後に液滴が打滴されることを特徴とする。
【0117】
かかる態様において、改質処理周波数(改質処理周期の逆数)及び打滴周波数(打滴周期の逆数)を10kHzとし、改質処理が終了してから改質処理周期の一周期後に当該打滴位置に液滴が打滴されるように打滴制御がされると、改質処理が施された打滴位置に対して0.1秒後に液滴が打滴される。
【0118】
(発明4):発明1乃至3のいずれかに記載のパターン形成方法において、前記改質処理工程は、各打滴位置の改質処理面積をS、各打滴位置に打滴される液滴により形成されるドットの面積をSとしたときに、S<Sを満たすように改質処理が実行され、前記打滴工程は、同一の打滴位置に複数の液滴が積層されるように液滴を打滴することを特徴とする。
【0119】
かかる態様によれば、複数のドットが積層された好ましいパターンが形成される。
【0120】
(発明5):発明1乃至3のいずれかに記載のパターン形成方法において、前記改質処理工程は、各打滴位置の改質処理面積をS、各打滴位置に打滴される液滴の基板上における面積をSとしたときに、S>Sを満たすように改質処理が実行され、前記打滴工程は、同一の打滴位置に1つの液滴を打滴することを特徴とする。
【0121】
かかる態様によれば、薄く広げられたドットにより構成される好ましいパターンが形成される。
【0122】
(発明6):発明1乃至5のいずれかに記載のパターン形成方法において、前記改質処理工程は、前記基板のパターン形成面に反応ガスを供給する反応ガス供給工程を含むことを特徴とする。
【0123】
かかる態様によれば、効率のよい改質処理が実行される。
【0124】
かかる態様における反応ガスとして、酸素(大気)、チッ化ガス、フッ化ガスなどが挙げられる。
【0125】
(発明7):発明1乃至6のいずれかに記載のパターン形成方法において、前記改質処理工程は、前記基板のパターン形成面に対して光又はプラズマを照射することを特徴とする。
【0126】
かかる態様における光として、LED光、レーザー光などが挙げられる。
【0127】
(発明8):基板のパターン形成面に形成されるパターンを構成するドットが形成される処理対象の打滴位置に対して改質エネルギーを照射して、当該処理対象の打滴位置に改質処理を施す機能ヘッドと、前記機能ヘッドにより改質処理が施された打滴位置に対して液滴を打滴するインクジェットヘッドと、前記機能ヘッドにより未処理の打滴位置に改質処理が施されている間に、改質処理が施された直後の打滴位置に対して液滴を打滴するように前記インクジェットヘッドによる打滴を制御する打滴制御手段と、を備えたことを特徴とするパターン形成装置。
【0128】
本発明における機能ヘッドの一態様として、改質エネルギーを照射するノズル(開口)を具備する態様が挙げられる。機能ヘッドのノズルは、インクジェットヘッドのノズル配置に対応して、インクジェットヘッドの打滴位置に対して改質エネルギーを照射しうる配置とされる。
【0129】
本発明に適用される機能ヘッド及びインクジェットヘッドは、シリアル型ヘッドでもよいし、フルライン型ヘッドでもよい。
【0130】
(発明9):発明8に記載のパターン形成装置において、前記インクジェットヘッドが前記機能ヘッドに後続するように、前記基板と前記機能ヘッド及び前記インクジェットヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段を備えたことを特徴とする。
【0131】
かかる態様において、シリアル方式を適用してもよいし、フルライン型ヘッドを用いたシングルパス方式を適用してもよい。
【0132】
(発明10):発明8又は9に記載のパターン形成装置において、前記パターン形成面に形成されるパターンの描画データに基づいて、前記機能ヘッドによる改質エネルギーの照射を制御する機能ヘッド制御信号を生成するとともに、前記機能ヘッドへ前記機能ヘッド制御信号を供給する機能ヘッド制御手段を備え、前記打滴制御手段は、前記機能ヘッド制御信号に所定の遅延時間が付加されたインクジェットヘッド制御信号を前記インクジェットヘッドへ供給することを特徴とする。
【0133】
かかる態様によれば、複雑な制御を行うことなく、機能ヘッドとインクジェットヘッドとを同期させて動作させることができる。
【0134】
(発明11):発明8乃至10のいずれかに記載のパターン形成装置において、前記インクジェットヘッドは、複数のノズルが所定の配置ピッチで配置された構造を有し、前記機能ヘッドは、前記インクジェットヘッドと同一の配置ピッチで複数のノズルが配置された構造を有し、前記複数のノズルを介して改質エネルギーを前記基板に対して照射する構造を有することを特徴とする。
【0135】
かかる態様によれば、機能ヘッドのノズルの配置ピッチと、インクジェットヘッドのノズル配置の配置ピッチとを同一とすることで、インクジェットヘッドの打滴位置に対して改質処理を実行しうる。
【0136】
(発明12):発明11に記載のパターン形成装置において、前記機能ヘッドは、前記基板に照射される光を発する光源と、前記光源から発した光を前記ノズルに導くMEMSミラーと、前記MEMSミラーを動作させるMEMSアクチュエータと、を具備することを特徴とする。
【0137】
かかる態様における「MEMSミラー」とは、微細加工工程によって形成されたミラーである。また、「MEMSアクチュエータ」とは、微細加工工程によって形成されたアクチュエータである。
【0138】
(発明13):発明11に記載のパターン形成装置において、前記機能ヘッドは、前記基板に照射されるプラズマを発生させるプラズマ源と、前記プラズマ源から発生させたプラズマを前記ノズルに導くMEMS素子と、前記MEMS素子を動作させるMEMSアクチュエータと、を具備することを特徴とする。
【0139】
かかる態様における、MEMS素子としてシャッターが挙げられる。
【0140】
(発明14):発明8乃至13のいずれかに記載のパターン形成装置において、前記機能ヘッド及び前記インクジェットヘッドは一体に構成された構造を有することを特徴とする。
【0141】
かかる態様によれば、機能ヘッドとインクジェットヘッドとを一体構造とすることで、装置の小型化、簡素化が可能となる。
【0142】
かかる態様において、機能ヘッドのノズルとインクジェットヘッドのノズルとを一枚のノズルプレートに形成する態様が好ましい。
【0143】
(発明15):基板上に形成されるパターンを構成するドットが形成される打滴位置に対して改質エネルギーを照射する機能ヘッド部と、前記機能ヘッド部と一体の構造を有し、前記機能ヘッドにより改質エネルギーが照射された前記基板上の打滴位置に液滴を打滴するインクジェットヘッド部と、前記インクジェットヘッドのノズル開口が形成されるとともに、前記インクジェットヘッドのノズル開口と同一の配置を有する、前記機能ヘッドの改質エネルギーの照射開口が形成され、機能ヘッド部及びインクジェットヘッド部を合体させた構造体に接合されるノズルプレートと、を備えたことを特徴とする複合型ヘッド。
【0144】
本発明に係る複合型ヘッドの製造方法として、マイクロマシニング技術を用いて機能ヘッド部を作製する工程と、マイクロマシニング技術を用いてインクジェットヘッド部を作製する工程と、機能ヘッド部に対応するノズル開口及びインクジェットヘッド部に対応するノズル開口が形成されるノズルプレートを作製する工程と、機能ヘッド部とインクジェットヘッド部とを合体させる工程と、機能ヘッド部とインクジェットヘッド部とを合体させた構造体にノズルプレートを接合する工程と、を含む構成が挙げられる。
【符号の説明】
【0145】
10…基板、20,20’,320…機能ヘッド、22,22’…インクジェットヘッド、30,30’,200…パターン形成装置、34…走査機構、36…ステージ、38…搬送機構、50,80,350…ノズル、52,82,120,352…ノズルプレート、54…可動ミラー、142…システム制御部、144…搬送制御部、146…画像処理部、148…インクジェットヘッド駆動部、149…機能ヘッド駆動部、シャッター…354

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のパターン形成面に形成されるパターンを構成するドットが形成される処理対象の打滴位置に対して改質エネルギーを照射して、当該処理対象の打滴位置に改質処理を施す改質処理工程と、
前記改質処理工程において未処理の処理対象の打滴位置に改質処理が施されている間に、改質処理が施された直後の打滴位置に対してインクジェット方式により液滴が打滴される打滴工程と、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成方法において、
前記打滴工程は、改質処理が施された打滴位置に対して、改質処理が終了してから0.1秒以内に液滴が打滴されることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパターン形成方法において、
前記改質処理工程は、所定の改質処理周期に基づいて改質処理を施し、
前記打滴工程は、打滴周期を前記改質処理周期と同一とし、かつ、前記打滴周期と前記改質処理周期を同期させたときに、改質処理が施された打滴位置に対して、改質処理が終了してから改質処理周期の整数倍の時間経過後に液滴が打滴されることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のパターン形成方法において、
前記改質処理工程は、各打滴位置の改質処理面積をS、各打滴位置に打滴される液滴により形成されるドットの面積をSとしたときに、S<Sを満たすように改質処理が実行され、
前記打滴工程は、同一の打滴位置に複数の液滴が積層されるように液滴を打滴することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載のパターン形成方法において、
前記改質処理工程は、各打滴位置の改質処理面積をS、各打滴位置に打滴される液滴の基板上における面積をSとしたときに、S>Sを満たすように改質処理が実行され、
前記打滴工程は、同一の打滴位置に1つの液滴を打滴することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のパターン形成方法において、
前記改質処理工程は、前記基板のパターン形成面に反応ガスを供給する反応ガス供給工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のパターン形成方法において、
前記改質処理工程は、前記基板のパターン形成面に対して光又はプラズマを照射することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
基板のパターン形成面に形成されるパターンを構成するドットが形成される処理対象の打滴位置に対して改質エネルギーを照射して、当該処理対象の打滴位置に改質処理を施す機能ヘッドと、
前記機能ヘッドにより改質処理が施された打滴位置に対して液滴を打滴するインクジェットヘッドと、
前記機能ヘッドにより未処理の打滴位置に改質処理が施されている間に、改質処理が施された直後の打滴位置に対して液滴を打滴するように前記インクジェットヘッドによる打滴を制御する打滴制御手段と、
を備えたことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項9】
請求項8に記載のパターン形成装置において、
前記インクジェットヘッドが前記機能ヘッドに後続するように、前記基板と前記機能ヘッド及び前記インクジェットヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段を備えたことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のパターン形成装置において、
前記パターン形成面に形成されるパターンの描画データに基づいて、前記機能ヘッドによる改質エネルギーの照射を制御する機能ヘッド制御信号を生成するとともに、前記機能ヘッドへ前記機能ヘッド制御信号を供給する機能ヘッド制御手段を備え、
前記打滴制御手段は、前記機能ヘッド制御信号に所定の遅延時間が付加されたインクジェットヘッド制御信号を前記インクジェットヘッドへ供給することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれかに記載のパターン形成装置において、
前記インクジェットヘッドは、複数のノズルが所定の配置ピッチで配置された構造を有し、
前記機能ヘッドは、前記インクジェットヘッドと同一の配置ピッチで複数のノズルが配置された構造を有し、前記複数のノズルを介して改質エネルギーを前記基板に対して照射する構造を有することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項12】
請求項11に記載のパターン形成装置において、
前記機能ヘッドは、前記基板に照射される光を発する光源と、
前記光源から発した光を前記ノズルに導くMEMSミラーと、
前記MEMSミラーを動作させるMEMSアクチュエータと、
を具備することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項13】
請求項11に記載のパターン形成装置において、
前記機能ヘッドは、前記基板に照射されるプラズマを発生させるプラズマ源と、
前記プラズマ源から発生させたプラズマを前記ノズルに導くMEMS素子と、
前記MEMS素子を動作させるMEMSアクチュエータと、
を具備することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項14】
請求項8乃至13のいずれかに記載のパターン形成装置において、
前記機能ヘッド及び前記インクジェットヘッドは一体に構成された構造を有することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項15】
基板上に形成されるパターンを構成するドットが形成される打滴位置に対して改質エネルギーを照射する機能ヘッド部と、
前記機能ヘッド部と一体の構造を有し、前記機能ヘッドにより改質エネルギーが照射された前記基板上の打滴位置に液滴を打滴するインクジェットヘッド部と、
前記インクジェットヘッドのノズル開口が形成されるとともに、前記インクジェットヘッドのノズル開口と同一の配置を有する、前記機能ヘッドの改質エネルギーの照射開口が形成され、機能ヘッド部及びインクジェットヘッド部を合体させた構造体に接合されるノズルプレートと、
を備えたことを特徴とする複合型ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−49476(P2012−49476A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192776(P2010−192776)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】