説明

パターン計測装置及びパターン計測方法

【課題】フォトマスク及びウェハー上に形成された測定対象パターンの測定領域を設定し、測定領域の測定位置を自動的に特定し、パターン計測できるパターン計測装置及びパターン計測方法を提供することを目的とする。
【解決手段】計測機能を有する走査型電子顕微鏡(SEM)等のパターン観察・計測手段10と、パターン描画データより測定対象パターンの設計図形パターンを取り出す描画データ抽出・変換手段20と、測定対象パターンに設計図形パターンの形状を合わせ込むパターン形状合わせ込み手段30と、測定対象パターンの測定領域を設定する測定領域設定手段40と、測定対象パターンの前記測定領域内のパターン計測を行うパターン計測手段50と、計測データを処理して、最適のパターン計測値を判定する判定手段60と、装置全体の制御をつかさどる制御手段70と、から構成されているパターン計測装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビーム露光装置等を用いてパターン描画し、現像、エッチング等のパターニング処理を行って形成されたパターンを高精度に計測するパターン計測装置及びパターン計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体、メモリー等の高密度化、微細化に伴い、半導体製造リソグラフィーに用いられるフォトマスクも同様に微細化、高精度化へ対応を迫られている。
フォトマスクのパターン形状は、半導体回路のマスクレイアウト設計において設計図面通りのパターンが精度良くマスク上に再現されていることが望ましい。
【0003】
しかし、実際にはリソグラフィー技術を用いてガラス基板上の金属薄膜に微細なパターンを加工してフォトマスクを作製しているため、マスクパターンと設計パターンとは完全に同一形状ではなく、寸法差やコーナー部の丸みなど、微小な違いが発生する。
【0004】
マスクパターンと設計パターンとの微小な違いは、フォトマスク上では数十〜数百ナノメートル程度の大きさであることがほとんどであるが、近年の超LSIの微細化の進展によって、これが半導体回路の特性に影響を与えることが懸念され始めている。すなわち、微細なパターンであればあるほど、パターン自体に対して前記のパターン形状の違いが相対的に大きくなり、特性値に影響する。
【0005】
このことから、設計パターンとフォトマスクのパターン形状の寸法差を正確に測定する必要があり、パターン寸法を計測するための高精度な専用検査装置が開発され、走査型電子顕微鏡等を用いたパターン計測が行われている。
しかしながら、フォトマスク及びウェハーに微細なパターンを作製するとき、パターンのコーナー部を中心にして丸みを帯びる、コーナーラウンディングという現象が発生する。
【0006】
図9(b)は、パターニング処理後のコーナーラウンディングが発生したパターンのパターン形状の一例を示す。図9(a)のパターンDは、設計パターンのパターン形状を示す。
パターン計測を行う場合、図9(a)に示すパターンDでは、測定位置y1、測定位置y2、測定位置y3のどの箇所を測定しても同じx1という測定値を得ることができるが、図9(b)に示すパターンEでは、コーナーラウンディングが発生しているため、測定する測定位置y4、測定位置y5、測定位置y6によって、それぞれx4、x5、x6と測定値が異なってくる。
【0007】
上記のコーナーラウンディングが発生したパターンの走査型電子顕微鏡等を用いたパターン計測では、高倍率で表示されたモニター画面のパターン画像を見ながらパターンの測定位置は測定者が設定しているため、測定者が一定した測定場所を特定するのは難しく、測定値を一意的に決定することが難しいという問題を有している。
【0008】
高精度でエッジラフネスを定量化し、接続誤差の影響を除去できるパターンの評価方法、評価装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
これは、計測対象パターンの画像データを取得し(ステップS1)、この画像データに基づいて少なくとも一つの上記パターンエッジを認識し、上記パターンエッジの形状を構成するエッジ点列の各エッジ点の座標位置を算出し(ステップS3)、各エッジ点から下ろした垂線の長さの和が最小となる直線を求め(ステップS4)、上記直線が求められたと
きの上記垂線の長さεiを統計的に処理して上記パターンエッジのラフネスを定量的に表現する(ステップS5)というものである。
このパターンの評価方法では、パターンエッジのラフネスを定量的に表現しているため、測定精度は上がっているが、上記問題になっている測定場所を一意的に特定するまでに至っていない。
【特許文献1】特開2002−162216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み考案されたもので、フォトマスク及びウェハー上に形成された測定対象パターンの測定領域を設定し、測定領域の測定位置を自動的に特定し、パターン計測できるパターン計測装置及びパターン計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に於いて上記問題を解決するために、まず請求項1では、フォトマスク及びウェハー上に形成された微細パターンを高精度に計測するパターン計測装置であって、
少なくとも、計測機能を有する走査型電子顕微鏡(SEM)等のパターン観察・計測手段10と、
パターン描画データより測定対象パターンの設計図形パターンを取り出す描画データ抽出・変換手段20と、
測定対象パターンに設計図形パターンの形状を合わせ込むパターン形状合わせ込み手段30と、
測定対象パターンの測定領域を設定する測定領域設定手段40と、
測定対象パターンの前記測定領域内のパターン計測を行うパターン計測手段50と、
計測データを処理して、最適のパターン計測値を判定する判定手段60と、
装置全体の制御をつかさどる制御手段70と、から構成されていることを特徴とするパターン計測装置としたものである。
【0011】
また、請求項2では、フォトマスク及びウェハー上に形成された微細パターンを高精度に計測するパターン計測方法であって、
(a)パターン描画データより測定対象パターンの設計図形パターンを取り出す描画データ抽出・変換工程と、
(b)前記測定対象パターンに前記設計図形パターンの形状を合わせ込む工程と、
(c)前記測定対象パターンの測定領域を設定する工程と、
(d)前記測定対象パターンの前記測定領域内のパターン計測を行う工程と、
(e)前記計測データを処理して、最適のパターン計測値を判定する工程と、を具備していることを特徴とするパターン計測方法としたものである。
【0012】
さらにまた、請求項3では、前記測定対象パターンと前記設計パターンとの形状を合わせ込む工程が、X軸方向、Y軸方向それぞれの両側にある測定対象パターンの端部に発生する2次電子信号強度波形と、前記設計パターンの各辺とを合わせ込むようにしたことを特徴とする請求項2に記載のパターン計測方法としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のパターン計測装置及びパターン計測方法を用いてパターン計測することにより、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いた高倍率撮像パターン計測においても、測定対象パターンの測定領域が自動的に設定できるため、測定対象パターンの再現性のある高精度測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態につき説明する。
図1は、請求項1に係る本発明のパターン計測装置の一実施例を示す模式構成図である。本発明のパターン計測装置は、計測機能を有する走査型電子顕微鏡(SEM)等のパターン観察・計測手段10と、マスク描画データより測定対象パターンの図形、設計値、測定個所等の設計パターン情報を取り出す描画データ抽出・変換手段20と、測定対象パターンと設計パターンとの形状を合わせ込むパターン形状合わせ込み手段30と、測定対象パターンの測定領域を設定する測定領域設定手段40と、測定対象パターンの前記測定領域内を計測するパターン計測手段50と、計測データを処理して、最適のパターン計測値を判定する判定手段60と、装置全体の制御をつかさどる制御手段70と、から構成されている。
【0015】
計測機能を有する走査型電子顕微鏡(SEM)等のパターン観察・計測手段10は、対象パターンの座標へ移動し、測定対象パターンを拡大して観察し、パターン観察と計測機能とを有するもので、パターン計測機能を有し、拡大観察できるものであればあらゆる装置が使用できる。
【0016】
描画データ抽出・変換手段20は、パターン描画データより測定対象パターンの図形、設計値、測定個所を抽出するようにしたもので、コンピュータとソフトで構成されており、パターン描画データのCADデータより測定対象パターンの設計図形パターンデータを抽出し、メモリーに保存する。
CADデータの他にもマスクデータ方式(GDSII)、描画可変成型ビーム用データ方式(VSB方式)外観検査機データ方式などがあり、これらのデータは、図形、寸法の情報を持つため、描画データと同等に使用可能である。
【0017】
パターン形状合わせ込み手段30は、コンピュータ、ディスプレイ等から構成されており、パターン観察・計測手段10のディスプレイに表示された測定対象パターンと、上記描画データ抽出・変換手段20にて抽出された設計パターンとを合わせ込む作業を行う。
【0018】
測定領域設定手段40は、コンピュータ、ディスプレイ等から構成されており、測定対象パターンと、設計パターンとを合わせ込んだ後マスク描画データから抜き出した測定領域情報を元に測定対象パターンの測定領域を設定する。
【0019】
パターン計測手段50はコンピュータ、ディスプレイ等から構成されており、測定領域設定手段40にて設定された測定対象パターンの測定領域に対して、測定位置、測定方法等を設定して、パターン観察・計測手段10に信号を伝達して、測定領域内のパターン計測を行い、計測データはパターン計測手段50のメモリーに保存する。
【0020】
判定手段60は、コンピュータ、ディスプレイ、印刷装置等から構成されており、パターン計測手段50のメモリーに保存された計測データを呼び出し、極大、極小、相加平均、相乗平均等のデータ処理を行い、最適のパターン測定値を判定し、一意的にディスプレイ等に表示したり、結果を印刷することができる。
【0021】
制御手段70は、コンピュータ、ディスプレイ等から構成されており、パターン計測装置の各手段の制御を行うと同時に、パターン計測プログラムの指示、制御を行うことにより、測定対象パターンの測定領域内のパターン計測を自動的に行うことができる。
【0022】
以下、上記パターン計測装置を用いたパターン計測方法について説明する。
図2(a)〜(f)は、請求項2に係るパターン計測方法の一実施例を示す工程フロー図である。
まず、計測機能を有する走査型電子顕微鏡(SEM)等のパターン観察・計測手段10のディスプレイ上に、フォトマスク及びウェハー上に形成された測定対象パターンを表示する(図2(a)参照)。
図3に、測定対象パターンAの表示の一例をしめす。
ここで、測定対象パターンAは、リソグラフィー技術を用いてパターニング処理しているため、パターンのコーナー部にコーナーラウンディングが発生した事例である。
【0023】
次に、描画データ抽出・変換手段20にて、マスク描画データより図形、設計値、測定個所の情報を抽出して得られた測定対象パターンAの設計図形パターンBを示す(図4参照)。
ここで、設計図形パターンBの測定位置は予め設定されている。
【0024】
次に、測定対象パターンAに設計図形パターンBの形状を合わせ込むことで、測定対象パターンAの測定位置の測定領域を設定するための基準線を明確にする。
【0025】
ここで、請求項3に係る測定対象パターンAに設計図形パターンBの形状を合わせ込む工程について説明する。
まず、例えば本発明のパターン計測装置おいて、走査型電子顕微鏡を用いて測定対象パターンAを撮像すると測定対象パターンAの端部に2次電子信号強度波形が発生するので、測定対象パターンAのX軸、Y軸方向の端部に発生する2次電子信号強度波形P1、P2、P3、P4を確認する(図5(a)参照)。
【0026】
次に、測定対象パターンAに対して設計図形パターンBのX軸方向の位置だしをするために、測定対象パターンAのX軸方向の端部に発生している設計図形パターンBの2次電子信号強度波形P1に設計図形パターンBの左辺を合わせ込む(図5(b)参照)。
さらに、測定対象パターンAのX軸方向の端部に発生している設計図形パターンBの2次電子信号強度波形P2に設計図形パターンBの右辺を合わせ込む(図5(c)参照)。
これにより、測定対象パターンAに対して設計図形パターンBのX軸方向の合わせ込みが完了する。
【0027】
次に、測定対象パターンAに対して設計図形パターンBのY軸方向の位置だしをするために、測定対象パターンAのY軸方向の端部に発生している設計図形パターンBの2次電子信号強度波形P3に設計図形パターンBの下辺を合わせ込む(図6(d)参照)。
さらに、測定対象パターンAのY軸方向の端部に発生している設計図形パターンBの2次電子の信号強度波形P4に設計図形パターンBの上辺を合わせ込む(図6(e)参照)。
これにより、測定対象パターンAに対して設計図形パターンBのX軸、Y軸方向の合わせ込みが完了する。
【0028】
次に、測定領域設定手段40にて、測定対象パターンAの測定領域Cを設定する(図7参照)。
ここでは、X軸方向のパターン開口幅が最大となる部分を含む領域を選択させる。
【0029】
次に、パターン計測手段50にて、測定対象パターンAの測定領域C内のパターン計測を行う(図8参照)。
測定対象パターンAの測定領域Cを6個所の測定ポイントでパターン計測を行い、パターン計測値はパターン計測手段50のコンピュータ内に保存される。
測定ポイントの測定数は、ここでは6箇所の事例をあげたが、測定ポイントの測定数は、パターン大きさ、形状等により任意に設定できる。
パターン計測値の一例を表1に示す。
【0030】
【表1】

次に、判定手段60にて、測定領域C内の最適のパターン計測値を判定する。
ここでは、表1のパターン計測値と設計図形パターンの設計値との差分をとり、結果を表2に示す。
【0031】
【表2】

表2の結果より、パターン計測値と設計図形パターンの設計値との差分を最適のパターン計測値と判定している。
この最適のパターン計測値の判定は、一例であって、パターン形状等により、パターン計測値と設計図形パターンの設計値との差分の極大値、極小値、またはパターン計測値の相加平均、相乗平均等の統計処理からも導き出すことができる。
【0032】
上記したように、本発明のパターン計測装置を用いてパターン計測することにより、測定対象パターンの測定領域を自動的に設定し、パターン計測を行い、最適のパターン計測値を判定するので、測定対象パターンの再現性のある高精度測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のパターン計測装置の一実施例を示す模式構成図である。
【図2】本発明のパターン計測方法の一実施例を示す工程フロー図である。
【図3】測定対象パターンの一例を示す模式図である。
【図4】設計図形パターンの一例を示す模式図である。
【図5】(a)〜(c)は、測定対象パターンAに設計図形パターンBの形状を合わせ込む工程の一部を示す説明図である。
【図6】(d)〜(e)は、測定対象パターンAに設計図形パターンBの形状を合わせ込む工程の一部を示す説明図である。
【図7】測定対象パターンAに測定領域Cを設定した状態を示す説明図である。
【図8】測定対象パターンAの測定領域Cをパターン測定している状態を示す説明図である。
【図9】(a)設計パターンDのパターン形状の一例を示す説明図である。
【0034】
(b)コーナーラウンディングの発生したパターンEのパターン形状の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
10……パターン観察・計測手段
20……描画データ抽出・変換手段
30……形状合わせ込み手段
40……測定領域設定手段
50……パターン計測手段
60……判定手段
70……制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスク及びウェハー上に形成された微細パターンを高精度に計測するパターン計測装置であって、
少なくとも、計測機能を有する走査型電子顕微鏡(SEM)等のパターン観察・計測手段(10)と、
マスク描画データより測定対象パターンの設計図形パターンを取り出す描画データ抽出・変換手段(20)と、
測定対象パターンに設計パターンの形状を合わせ込むパターン形状合わせ込み手段(30)と、
測定対象パターンの測定領域を設定する測定領域設定手段(40)と、
測定対象パターンの前記測定領域内のパターン計測を行うパターン計測手段(50)と、計測データを処理して、最適のパターン計測値を判定する判定手段(60)と、
装置全体の制御をつかさどる制御手段(70)と、から構成されていることを特徴とするパターン計測装置。
【請求項2】
フォトマスク及びウェハー上に形成された微細パターンを高精度に計測するパターン計測方法であって、
(a)計測機能を有する走査型電子顕微鏡(SEM)等のパターン観察・計測手段(10)のディスプレイにフォトマスク及びウェハー上に形成された測定対象パターンを表示する工程と、
(b)パターン描画データより測定対象パターンの設計図形パターンを取り出す描画データ抽出・変換工程と、
(c)前記測定対象パターンに設計図形パターンの形状を合わせ込む工程と、
(d)前記測定対象パターンの測定領域を設定する工程と、
(e)前記測定対象パターンの前記測定領域内のパターン計測を行う工程と、
(f)前記測定対象パターンの計測データを処理して、最適のパターン計測値を判定する工程と、を具備していることを特徴とするパターン計測方法。
【請求項3】
前記測定対象パターンと前記設計パターンとの形状を合わせ込む工程が、X軸方向、Y軸方向それぞれの両側にある測定対象パターンの端部に発生する2次電子信号強度波形と、前記設計パターンの各辺とを合わせ込むようにしたことを特徴とする請求項2に記載のパターン計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−36703(P2009−36703A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202781(P2007−202781)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】