パターン転写装置,パターン転写方法および転写用原版の製造方法
【課題】
本発明はパターン転写装置,パターン転写方法および転写用原版の構造と製造方法に係り、特に線幅が10マイクロメーター以下の微細なパターンを転写する装置や方法に関する。
【解決手段】
被転写基板にパターンを転写する装置において、媒体を入れる液溜めと液溜め内部の圧力を高める圧力調整機構と液溜めに開口された第1のオリフィスと第1のオリフィスを一側面に有する気化室と気化室の一側面に開口された第2のオリフィスと被転写基板と被転写基板を二次元面内に移動させる駆動機構とを備え、気化した媒体が被転写基板上にパターンを描画するパターン転写装置によって達成される。
【効果】
表面張力の制約を受けずに微細なパターンを転写できるため、電子部品の製造を簡便にできる効果を得られる。
本発明はパターン転写装置,パターン転写方法および転写用原版の構造と製造方法に係り、特に線幅が10マイクロメーター以下の微細なパターンを転写する装置や方法に関する。
【解決手段】
被転写基板にパターンを転写する装置において、媒体を入れる液溜めと液溜め内部の圧力を高める圧力調整機構と液溜めに開口された第1のオリフィスと第1のオリフィスを一側面に有する気化室と気化室の一側面に開口された第2のオリフィスと被転写基板と被転写基板を二次元面内に移動させる駆動機構とを備え、気化した媒体が被転写基板上にパターンを描画するパターン転写装置によって達成される。
【効果】
表面張力の制約を受けずに微細なパターンを転写できるため、電子部品の製造を簡便にできる効果を得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパターン転写装置,パターン転写方法および転写用原版の製造方法に係り、特に線幅が10マイクロメーター以下の微細なパターンを転写する装置や方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来知られているパターンの転写技術の内、媒体をノズルから吐出させる技術に関しては例えば特開平11−347478号公報に開示されている。図2は特開平11−347478号公報に開示されている塗布装置の斜視図である。被塗布基板201はX−Y軸方向への移動と回転が可能な可動ステージ202の上に設置される。被転写基板201の上部には上下(Z軸)方向へ移動可能な転写部材203が設置されている。転写部材203は媒体204を内包し圧力調整機構206が接続されている円筒容器205を有している。圧力調整機構206によって加圧された媒体204はディスペンサーノズル207から吐出される。
【0003】
従来知られているパターンの転写技術の内、触媒を予め配列させてからめっきによってパターンを形成する技術に関しては特開昭56−157091号公報に開示されている。図3は特開昭56−157091号公報に開示されているインクジェットプリンタの模式図である。固定版306の上に可動ステージ302が配置され、被転写基板301は可動ステージ302の上に積載される。被転写基板301の上にはインクガン303が設置されており、ピエゾ素子制御装置304によってインクガン303から銀粉を含有したインクを被転写基板301へ滴下する。被転写基板301をNC制御装置305によって制御される可動ステージによって水平面内を移動させることによって被転写基板301上に銀粉含有インクのパターンを形成する。そして銀粉の活性化処理後、無電解銅めっきによって所定の銅配線を形成できる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−347478号公報
【特許文献2】特開昭56−157091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術の内、媒体をノズルから吐出させる技術は媒体を転写するディスペンサーノズルの詳細な構造が開示されていないが二次元的に閉じたラインパターンでは閉じたラインパターン内の原版材料が欠落してしまう問題がある。図4,図5,図6は原版が欠落してしまう状況を説明する図である。図4はラインパターンを形成する原版401の平面である。基体402にスリット403が開口されており、スリット403から媒体が供出される。図4中のA1−B1断面を図5に示す。媒体501はスリット403から供出される。図4に示したような単純なラインパターンは特開平11−347478号公報で開示されているように転写することは可能である。一方、図6は閉じたラインパターンを形成する原版601の平面である。基体402にスリット403が開口されており、スリット403から媒体が供出される。図6中のA2−B2断面を図7に示す。媒体501はスリット403から供出される。図7から分かるように閉じたラインパターンを形成すると基体602は本体の基体402から分離してしまうので欠落してしまう。基体602と基体402を梁などで結合することは考えられるが複雑な構造を有する原版601の作製はコストの上昇を招いてしまう。
【0006】
上記従来技術の内、触媒を予め配列させてからめっきによってパターンを形成する技術は滴下する液滴の大きさに制約がある。即ち、インクガンからインクを噴出させるにはインクの表面張力に打ち勝つ圧力をインクにかける必要がある。例えば直径Dセンチメートルのオリフィスから水滴を噴出させるには下記の式で記述される圧力が必要となる。
【0007】
P=2×72/D
ここで72(ダイン/センチメーター)は水の表面張力である。この式から導かれるように、圧力はオリフィスの直径に逆比例することが分かる。現在のインクジェットプリンタでは数十マイクロメーターのオリフィスから液滴を噴出させるのに数気圧の圧力をかけている。ここで線幅10マイクロメーターの配線を形成することを想定する。線幅の1/100の大きさの液滴で配線を形成すると考えると、必要なオリフィスの直径はおおよそ0.1マイクロメーターとなり非常な高圧をインクに加える必要がある。現在のインクジェットプリンタでは既に構成部品の破損、具体的には部材と部材を接着している箇所が剥がれてしまう問題が出ている。よってインクジェット法で線幅10マイクロメーター以下の配線を形成することは原理的に極めて困難であることが分かる。
【0008】
以上の技術課題に鑑み、本発明の目的をまとめると以下の通りとなる。
【0009】
本発明の目的は表面張力の制約を受けずに、微細なパターンを転写できる装置、その方法、および微細なパターンを触媒で転写した後、めっきによって配線パターンを形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的の内、表面張力の制約を受けずに微細なパターンを転写できる装置は、媒体を気化させて被転写基板上にパターンを描画することで達成される。
【0011】
上記目的の内、表面張力の制約を受けずに微細なパターン転写できる方法は、媒体を入れる液溜めと液溜め内部の圧力を高める圧力調整機構と液溜めに開口された第1のオリフィスと第1のオリフィスを一側面に有する気化室と気化室の一側面に開口された第2のオリフィスと被転写基板からなる転写装置において、圧力調整機構によって液溜め内部の圧力を高めて第1のオリフィスから媒体を気化室へ搬送する工程と、気化室の内部で気化した媒体が第2のオリフィスから噴出して被転写基板上に媒体を付着させる工程によって達成される。
【0012】
上記目的の内、表面張力の制約を受けずに微細な触媒パターン転写した後めっきによって配線パターンを形成する方法は、媒体に触媒原子が含有された触媒を使用し、媒体を入れる液溜めと液溜め内部の圧力を高める圧力調整機構と液溜めに開口された第1のオリフィスと第1のオリフィスを一側面に有する気化室と気化室の一側面に開口された第2のオリフィスと被転写基板からなる転写装置において、圧力調整機構によって液溜め内部の圧力を高めて第1のオリフィスから媒体を気化室へ搬送する工程と、気化室の内部で気化した媒体が第2のオリフィスから噴出して被転写基板上に媒体を付着させる工程と、被転写基板上の媒体を触媒としてめっきによって金属パターンを形成する工程によって達成される。
【0013】
また、二次元パターンを一括転写する装置は、二次元パターンを有するスリットが形成された原版と、スリットに転写用の媒体を供給する媒体溜めと、スリットに充填した媒体の圧力を調整する圧力調整機構と、被転写基板からなるパターン転写装置によって達成される。特に連続した二次元パターンに対してはスリットと媒体溜めとの間に媒体の供給管を少なくとも一個所、配置したパターン転写装置によって達成される。
【0014】
また、二次元パターンを一括転写する方法は、二次元パターンを有するスリットが形成された原版と、スリットに転写用の媒体を供給する媒体溜めと、スリットに充填した媒体の圧力を調整する圧力調整機構と、被転写基板からなるパターン転写装置において圧力調整機構によってスリット中の媒体をスリットから押し出す工程と、押し出した媒体を被転写基板に接触させる工程によって達成される。
【0015】
また、所定の二次元パターンを転写できる原版は、原版の表面から順に第1の層と第2の層の少なくとも二つの層を形成し、第2の層の一部を除去した空洞領域に転写用の媒体を充填することで達成される。
【0016】
また、所定の二次元パターンを一括転写できる原版の製造方法は、基板上に少なくとも異なる種類の第1の層と第2の層を形成する工程と、第1の層に転写するパターンと同じパターンを有するスリットを形成する工程と、形成した第1の層のスリットからエッチング液を第2の層に接触させることで第2の層の一部を除去する工程によって達成される。
【0017】
また、所定の二次元パターンを一括転写できる原版に媒体を供給する構造は、基板上にパターンを有するスリットが形成された原版とスリットに転写用の媒体を供給する媒体溜めとスリットに充填した媒体の圧力を調整する圧力調整機構と被転写基板からなる転写装置において、原版に表面から順に第1の層と第2の層の少なくとも二つの層を形成し、第2の層の一部を除去した空洞領域に媒体溜めから毛細管現象によって媒体を供給することで達成される。特に連続した二次元パターンへ媒体の供給は、スリットと媒体溜めとの間に媒体の供給管を少なくとも一個所、配置することで達成される。
【0018】
また、所定の二次元パターンを一括転写できる原版に媒体を供給する他の構造は、基板上にパターンを有するスリットが形成された原版とスリットに転写用の媒体を供給する媒体溜めとスリットに充填した媒体の圧力を調整する圧力調整機構と被転写基板からなる転写装置において、スリットが原版表面側の第1のスリットと第1のスリットの底面に第1のスリットよりも幅の狭い第2のスリットを少なくとも一種類、設けることで第2のスリットの内部に毛細管現象によって媒体を供給してスリット全体に媒体を輸送することで達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、二次元面内に所定の配線パターンを有する原版から転写媒体を滲み出させることで被転写基板へ配線パターンを一括転写できる装置や方法を得られるため、電子部品の製造を簡便にできる効果を得られる。特に粘度の高い媒体も使用できるので媒体中の金属粒子濃度を高められる効果も得られる。
【0020】
本発明では、連続した二次元パターンに対して媒体の供給管を少なくとも一つはスリットに接続することで閉じたラインパターンや連続したパターンを簡便に転写できる効果を得られる。
【0021】
本発明では、原版の表面から順に第1の層と第2の層の少なくとも二つの層を形成し、第2の層の一部を除去した空洞領域に転写用の媒体を毛細管現象によって輸送できるようになるため、二次元面内に形成されたスリット全体に媒体を輸送できる効果を得られる。また、被転写基板へ媒体を滲み出させるスリットの底面に幅の狭いスリットを形成しておくことで幅の狭いスリット内に毛細管現象によって媒体を輸送できるようになるため、二次元面内に形成されたスリット全体に媒体を輸送できる効果を得られる。
【0022】
本発明では、閉じたラインパターンや連続した二次元パターンを構成するスリットに少なくとも一つの媒体の供給管を接続することで毛細管現象によってパターン全体に媒体を容易に供給できる効果を得られる。
【0023】
本発明では、基板上に少なくとも二種類の第1の層と第2の層を形成しておき、表面側の第1の層にスリットを形成後、第2の層のエッチング液に原版を浸漬することで第1の層に形成したスリットからエッチング液を第2の層に接触させる。この方法によって自己整合的に第1の層と同じレイアウトで第2の層を除去できる効果を得られる。また、第2の層のエッチング時間を長くすることで第1の層に形成したスリットにオーバーハング領域を形成できる効果を得られる。
【0024】
本発明では、媒体を気化させた後に媒体を被転写基板へ輸送するため、微小液滴の形成が不要となり、微細なオリフィスから媒体を噴出させることが可能となる。その結果、微細なパターンを描画できる効果を得られる。
【0025】
本発明では、触媒を含有する媒体を気化させた後、微細なオリフィスから触媒を噴出させることで微細な触媒パターンを基板上に描画できるので、めっき工程によって描画した触媒に金属をめっきすることができる。よって、めっき処理によって微細な金属パターンを形成できる効果を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(実施例1)
以下、本発明の一実施例を説明する。本実施例では本発明におけるパターン転写の原理,転写装置の構成,転写工程を説明する。
【0027】
図1は使用したパターン転写装置の斜視図である。一辺1mのガラス基板102を可動ステージ101の上に設置した。可動ステージ101はガラス基板102を水平面内方向にステッピングモータで移動することができる。媒体溜め104と一体化した転写用の原版103はZ軸可動機構106で固定されており、Z軸可動機構106は支持アーム105によって固定台107に連結された構造となっている。原版103は一辺140mmの正方形である。Z軸可動機構106は原版103と媒体溜め104をZ軸方向に移動できる構造になっている。
【0028】
図8は原版103の断面形状である。なお、分かりやすくするために縦方向の寸法を拡大している。シリコン基板801の下には厚さ1.5 マイクロメーターの酸化膜802が存在し、酸化膜802の下に厚さ1.0マイクロメーターのシリコン膜803が形成されている。シリコン膜803に形成したスリット804の幅は10マイクロメーターである。スリット804とシリコン基板801の間の酸化膜802には幅30マイクロメーターの隙間806が形成されている。
【0029】
原版103には図1で示すように媒体溜め104が原版103の上に接続されている。図9は原版103と媒体溜め104の接続状況を説明する断面図である。媒体容器903の内部に媒体902が内包されており、媒体902は供給管901を通って原版103内部の媒体805と繋がっている。そして媒体902は隙間806やスリット804に媒体を充填する構造になっている。酸化膜802とスリット804には転写用の媒体805が充填されている。媒体はトルエンで希釈した銅微粒子である。銅微粒子の粒径は平均50ナノメーター、銅の濃度は約10質量%である。媒体溜め104にはヒーター904が設置されておりヒーター904に通電することでヒーター近傍の媒体902が体積膨張して媒体容器903内部の圧力が上昇する構造になっている。
【0030】
次に閉じたラインパターンを有する原版の構造を説明する。図30は閉じたラインパターンを有する原版103の平面図である。シリコン膜803に開口されたスリット804は閉じたラインパターンを形成している。図31は図30におけるA3−B3の断面である。媒体805は一本の供給管901によってスリット804へ充填される。媒体805は酸化膜802が除去された領域を通じてスリット804の全体に供給される。
【0031】
次に印刷工程について説明する。図10から図17は配線パターンをガラス基板102上に形成した時の工程説明図である。図10は媒体805をガラス基板102へ転写する前の状態である。ガラス基板102はシリコン膜803から100マイクロメーター離れた位置に設置されている。媒体溜め104と一体化した原版103はZ軸可動機構106によってガラス基板102の方へ移動し、図11に示すようにガラス基板102と原版103との距離が10マイクロメーターまで接近する。なお、Z軸駆動機構106はピエゾ素子への電圧印加によって駆動される構造となっている。この駆動機構は原子間力顕微鏡において短針を試料表面に接近させる既知の技術を原版103の三個所の隅に適用することでガラス基板102に対して平行に原版103を接近させることを容易に実現できた。次に図12に示すヒーター904に100ミリ秒間だけ通電することで媒体容器903内部の圧力を上昇させることでスリット804から媒体805を滲み出させた。媒体805はガラス基板102と接触することで媒体805の一部はガラス基板102に転写される。
【0032】
次に図13に示すようにZ軸可動機構106によって原版103をガラス基板102から100マイクロメーターの距離まで離した。媒体容器903の内部圧力は媒体902の冷却に伴い自然に低下し、図14に示したように媒体805はスリット804の内部に引っ込んだ形状になった。図15は媒体805がガラス基板102の上に転写されたラインパターンの一部の斜視図である。次に媒体805を転写したガラス基板102を窒素ガス90%,酸素ガス10%の雰囲気中で300℃,5分間、熱処理し、さらに窒素ガス80%,水素ガス20%の雰囲気中で300℃,2分間、熱処理した。図16は熱処理後のラインパターンの一部の斜視図である。線幅8マイクロメーター,厚さ0.5マイクロメーターの銅配線を形成できた。図17は1メートル角のガラス基板102上に先に記述した媒体805の転写工程と可動ステージ101の駆動によるガラス基板102の移動とを組み合わせたステップアンドリピートによって配線パターン1701を49個、形成した例を示している。配線パターン1701は一辺140ミリメーターである。
【0033】
本実施例では銅配線の形成に関して述べたが媒体に含まれる金属の種類を変えることで例えばモリブデン,クロム,金,銀,ニッケル,チタン,タンタル,コバルト,インジウム,錫,亜鉛を含む金属配線を形成できる。なお、実施例5で述べるが媒体にめっき処理時の触媒作用のあるパラジウムを用いることで触媒を配列させることもできる。また、熱処理時に酸素ガスを多く含む雰囲気ガスにすることで酸化物,窒素ガスやアンモニアガスを含ませることで窒化物を形成できる。さらには媒体の成分をシリコンやゲルマニウムを含む有機物やアルミナやシリカなどの絶縁物にすることで半導体膜や絶縁膜を所定の形状に形成することもできる。さらにインジウム錫酸化物,インジウム亜鉛酸化物,インジウムゲルマニウム酸化物を形成することもできる。
【0034】
(実施例2)
以下、本発明の他の一実施例を説明する。本実施例では図21に示す原版の作製方法について説明する。図18は原版103に使用したSOI(Silicon on Insulator)基板1801の断面図である。SOI基板1801は第1の層となる厚さ1.0マイクロメーターのシリコン膜803と第2の層となる厚さ1.5マイクロメーターの酸化膜802と厚さ550マイクロメーターの単結晶のシリコン基板801から成る。SOI基板1801の直径は100ミリメーターである。次にLSI加工で一般的なフォトリソグラフィ技術によってシリコン膜803にスリット804を形成して図19に示す構造を得た。スリットの幅は10マイクロメーターである。シリコン膜803の除去にはドライエッチング法を用いた。次に純水で希釈した弗化水素水中に原版103を浸漬し、酸化膜802をエッチングすることで図20に示すようにオーバーハングしたシリコン膜803の下に空隙2001を形成した。空隙2001の幅は8マイクロメーターである。以上の製造方法で原版103は完成した。
【0035】
図20から分かるように原版は基板1801上に異なる種類の第1の層であるシリコン膜803と第2の層である酸化膜802において第1の層に形成したスリットからエッチング液を第2の層に接触させることで第2の層の一部を除去する工程で製造できることが分かる。また、第2の層のエッチング時間を長くすることで第2の層のスリットの幅を第1の層のスリットの幅よりも大きくできることも容易に分かる。
【0036】
図21は原版103に媒体805を充填した時の断面図である。媒体805は毛細管現象によって隙間2001に流れ込む。隙間2001に媒体805が流れ込むことで配線パターンが形成されたスリット804に媒体が充填されることになる。
【0037】
なお、シリコンを酸化処理すると酸化物表面は親水性になる。逆にシリコンを弗化水素水で処理するとシリコン表面は疎水性になる。よって毛細管現象をより効果的に得るために図20に示す構造体を酸化雰囲気中で熱処理することでシリコン材料を酸化して隙間2001に媒体が進入しやすくすることもできる。
【0038】
(実施例3)
以下、本発明の他の一実施例を説明する。本実施例では図24に示す原版103の作製方法について説明する。図22は原版103に使用した基板2201の断面図である。基板2201は厚さ550マイクロメーターの単結晶のシリコン基板801の上に厚さ1.5マイクロメーターの酸化膜802が形成された構造になっている。酸化膜802は熱酸化法によって形成した。基板2201の直径は100ミリメーターである。次にLSI加工で一般的なフォトリソグラフィ技術によって酸化膜802に第1のスリット2301を形成して図23に示す構造を得た。第1のスリット2301の幅は10マイクロメーターである。酸化膜802の除去には純水で希釈した弗化水素水によるウエットエッチング法を用いた。次にフォトリソグラフィ技術とシリコンドライエッチング法によって幅1マイクロメーター,深さ3マイクロメーターの第2のスリット2401を形成した。以上の製造方法で図24に示す原版103は完成した。
【0039】
図25は原版103に媒体805を充填した時の断面図である。媒体805は毛細管現象によって第2のスリット2401に流れ込む。第2のスリット2401に媒体805が流れ込むことで配線パターンが形成された第1のスリット2301に媒体が充填されることになる。
【0040】
なお、本実施例では第1のスリット2301に一つの第2のスリット2401を形成したが2つ以上の第2のスリットを形成することで媒体の輸送量を増加できることは明らかである。
【0041】
さらに、シリコンを酸化処理すると酸化物表面は親水性になる。逆にシリコンを弗化水素水で処理するとシリコン表面は疎水性になる。よって毛細管現象をより効果的に得るために図24に示す構造体を酸化雰囲気中で熱処理することでシリコン材料を酸化し、第2のスリット2401に媒体が進入しやすくすることもできる。さらに第1のスリット2301や第2のスリット2401の側面を荒らすことで媒体の濡れ性を向上できる。
【0042】
(実施例4)
以下、本発明の他の一実施例を説明する。本実施例では原版へ媒体を供給する構造や方法、および原版内部での媒体の輸送機構に関して説明する。図20や図24に示した原版103に媒体805を連続的に供給する機構は隙間2001や第2のスリット2401の中を媒体805が流れる毛細管現象である。本発明では媒体805を連続的に原版103に供給するために媒体溜め104を考案した。媒体溜め104は図9に示したように原版103に密着している。媒体溜め104と原版103は供給管901で接続されている。媒体805が転写工程時に消費されるに伴い供給管901を通って媒体容器903中の媒体902が補給される構造になっている。供給管901は14ミリメートル角の原版103に100個所設置した。設置密度は原版103の面内でのパターンに疎密があり、パターンが密集して媒体の消費が激しい領域には多くの供給管901を設置した。供給管901のレイアウトの一例を図27で説明する。
【0043】
図27は試作した薄膜トランジスタ駆動液晶表示装置2701の回路レイアウトである。薄膜トランジスタ駆動液晶表示装置2701を透明基板2702の表面に形成した。表示部2703には薄膜トランジスタが画素毎にレイアウトされるためゲート電極などの配線密度は高くなる。また、ドレイン半導体集積回路2704やゲート半導体集積回路2705のパターン密度も高い。しかし映像信号用バスライン2706や走査信号用バスライン2707のパターン密度は低い。パターン密度の疎密によって転写される媒体の量は増減するため本実施例では表示部2703には合計60個、ドレイン半導体集積回路2704とゲート半導体集積回路2705には合計30個、映像信号用バスライン2706と走査信号用バスライン2707には合計10個の供給管901を配置した。
【0044】
次に薄膜トランジスタ駆動液晶表示装置2701に現れる連続した二次元パターンを転写した時の媒体の供給方法について説明する。図32は連続した二次元パターンを有する原版103の平面図である。シリコン膜803に開口されたスリット804は連続したラインパターンを形成している。図33は図30におけるA4−B4の断面である。一本の供給管901を酸化膜802が除去された領域へ接続することで毛細管現象によって媒体805はスリット804の全体に供給された。
【0045】
次に、媒体溜め104への媒体の補給方法と構造に関して図26によって説明する。媒体溜め104への媒体902の補給は外部に設置された補給タンク2601を使用した。補給タンク2601と媒体溜め104は補給管2602で接続され、媒体溜め104中の媒体902が不足することのないように補給管2602を通して補給タンク2601内部の媒体を供給する機構になっている。補給タンク2601の容量は1リットルである。補給タンク2601の内部圧力は加圧機構2603によって常に大気圧より0.1 気圧だけ高い状態に保持した。加圧機構2603は圧力タンク2604,圧力調整弁2605,遮断バルブ2606,金属パイプ2607で構成されている。なお、遮断バルブ2606は常時オープン状態であるが補給タンク2601へ媒体を補充する時や緊急時に媒体の補給を遮断するために設置した。
【0046】
(実施例5)
以下、本発明の他の一実施例を説明する。本実施例では触媒を配列し、めっき処理することで配線を形成する装置と方法に関して説明する。図28は使用したパターン転写装置の斜視図である。一辺1mのガラス基板102を可動ステージ101の上に設置した。可動ステージ101はガラス基板102を水平面内方向にステッピングモータで移動することができる。噴射機構2801はZ軸可動機構106で固定されており、Z軸可動機構106は支持アーム105によって固定台107に連結された構造となっている。Z軸可動機構106は噴射機構2801をZ軸方向に移動できる構造になっている。
【0047】
図29は噴射機構2801の断面図である。噴射機構2801は媒体溜め2901と気化器2902から成る。媒体溜め2901は媒体2903を内包した媒体容器2904と第1のヒーター2906から成る。媒体容器2904は直径0.5ミリメートルの第1のオリフィス2905が開口されている。気化器2902は気化容器2907と気化容器2907を加熱する第2のヒーター2909から成る。気化容器2907には直径50ナノメートルの第2のオリフィス2908が開口されている。第1のヒーター2906に通電することで媒体容器2904内部の圧力が上がり、第1のオリフィス2905から媒体2903は気化室2910へ供給され、気化室2910内で気化し、第2のオリフィス2908から噴出する機構となっている。
【0048】
媒体容器2904への媒体2903の補給は図28に示したように外部に設置された補給タンク2601を使用する。補給タンク2601と媒体容器2904は補給管2602で接続され、媒体容器2904中の媒体2903が不足することがないように補給管2602を通して補給タンク2601内部の媒体を供給する機構になっている。補給タンク2601の容量は1リットルである。補給タンク2601の内部圧力は加圧機構2603によって常に大気圧より0.1気圧だけ高い状態に保持されている。加圧機構2603は圧力タンク2604,圧力調整弁2605,遮断バルブ2606,金属パイプ2607で構成されている。なお、遮断バルブ2606は常時オープン状態であるが補給タンク2601へ媒体を補充する時や緊急時に媒体の補給を遮断するために設置した。
【0049】
次に、銅配線を形成した方法について図28と図29を用いて説明する。始めに図28に示すようにガラス基板102を可動ステージ101の上に設置した。ガラス基板102の大きさは1メートル角である。ガラス基板102設置後のガラス基板102と噴射機構2801との距離は100マイクロメーターである。加圧機構2603によって補給タンク2601の内部圧力を大気圧から0.1気圧だけ高くし、媒体容器2904に媒体2903を充填しておいた。なお、本実施例ではイニシエーターとしてパラジウムを含有した媒体を使用した。
【0050】
また、予め、第2のヒーター2909に通電した状態でアルミ製の気化容器2907を約150℃に保持した状態にしておいた。次に、Z軸可動機構106によって噴射機構2801をガラス基板102の方へ移動させ、ガラス基板102と原版103との距離が10マイクロメーターになるまで接近させた。なお、Z軸駆動機構106はピエゾ素子への電圧印加によって駆動される構造となっている。次にアルミ製の媒体容器2904内の第1のヒーター2906に通電した。第1のヒーター2906に通電した状態で可動ステージ101を駆動して所定のラインパターンをガラス基板102の上に転写した。ラインパターンの描画が終了した後、第1のヒーター2906への通電を中止した。そして噴射機構2801の第2のオリフィス2908が次のラインパターンの始点位置へ来るように稼動ステージ101を駆動した。そして再び同様の工程で所定のラインパターンをガラス基板102の上に転写した。以上の転写工程を繰り返すことで全ての配線パターンを転写した。転写終了後、ガラス基板102に無電解銅めっき処理を施して線幅80ナノメーターの銅配線パターンを形成した。
【0051】
本実施例では銅配線を形成したが触媒とめっき液を変えることでニッケル,コバルト,パラジウム,金,銀,白金,錫も形成できることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】パターン転写装置の斜視図。
【図2】従来技術を説明するための塗布装置の斜視図。
【図3】従来技術を説明するためのインクジェットプリンタの模式図。
【図4】従来技術では原版が欠落してしまう状況を説明する図。
【図5】従来技術では原版が欠落してしまう状況を説明する図。
【図6】従来技術では原版が欠落してしまう状況を説明する図。
【図7】従来技術では原版が欠落してしまう状況を説明する図。
【図8】原版の断面形状。
【図9】原版と媒体溜めの接続状況を説明する断面図。
【図10】配線パターンを形成するための工程説明図。
【図11】配線パターンを形成するための工程説明図。
【図12】配線パターンを形成するための工程説明図。
【図13】配線パターンを形成するための工程説明図。
【図14】配線パターンを形成するための工程説明図。
【図15】転写されたラインパターンの一部の斜視図。
【図16】転写されたラインパターンの一部の斜視図。
【図17】ステップアンドリピートによって形成した配線パターンの説明図。
【図18】原版に使用したSOI(Silicon on Insulator)基板の断面図。
【図19】原版の製造方法を説明するための原版の断面図。
【図20】原版の製造方法を説明するための原版の断面図。
【図21】原版に媒体を充填した時の原版の断面形状。
【図22】原版に使用した基板の断面図。
【図23】原版の製造方法を説明するための原版の断面図。
【図24】原版の製造方法を説明するための原版の断面図。
【図25】原版に媒体を充填した時の原版の断面形状。
【図26】媒体溜めへの媒体の補給方法と構造を説明するためのパターン転写装置の斜視図。
【図27】試作した薄膜トランジスタ駆動液晶表示装置の回路レイアウト図。
【図28】使用した転写装置の斜視図。
【図29】噴射機構の断面図。
【図30】閉じたラインパターンを有する原版の平面図。
【図31】閉じたラインパターンを有する原版の断面図。
【図32】連続したラインパターンを有する原版の平面図。
【図33】連続したラインパターンを有する原版の断面図。
【符号の説明】
【0053】
101,202,302…可動ステージ、102…ガラス基板、103,401,601…原版、104…媒体溜め、105…支持アーム、106…Z軸可動機構、107…固定台、201…被塗布基板、203…転写部材、204,501,805,902,2903…媒体、205…円筒容器、206…圧力調整機構、207…ディスペンサーノズル、301…被転写基板、303…インクガン、304…ピエゾ素子制御装置、402,602…基体、403,804…スリット、801…シリコン基板、802…酸化膜、803…シリコン膜、806…隙間、901…供給管、903,2904…媒体容器、904…ヒーター、1701…配線パターン、1801…SOI基板、2201…基板、2301…第1のスリット、2401…第2のスリット、2601…補給タンク、2602…補給管、2603…加圧機構、2604…圧力タンク、2605…圧力調整弁、2606…遮断バルブ、2607…金属パイプ、2701…薄膜トランジスタ駆動液晶表示装置、2702…透明基板、2703…表示部、2704…ドレイン半導体集積回路、2705…ゲート半導体集積回路、2706…映像信号用バスライン、2707…走査信号用バスライン、2801…噴射機構、2901…媒体溜め、2902…気化器、2905…第1のオリフィス、2906…第1のヒーター、2907…気化容器、2908…第2のオリフィス、2909…第2のヒーター、2910…気化室。
【技術分野】
【0001】
本発明はパターン転写装置,パターン転写方法および転写用原版の製造方法に係り、特に線幅が10マイクロメーター以下の微細なパターンを転写する装置や方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来知られているパターンの転写技術の内、媒体をノズルから吐出させる技術に関しては例えば特開平11−347478号公報に開示されている。図2は特開平11−347478号公報に開示されている塗布装置の斜視図である。被塗布基板201はX−Y軸方向への移動と回転が可能な可動ステージ202の上に設置される。被転写基板201の上部には上下(Z軸)方向へ移動可能な転写部材203が設置されている。転写部材203は媒体204を内包し圧力調整機構206が接続されている円筒容器205を有している。圧力調整機構206によって加圧された媒体204はディスペンサーノズル207から吐出される。
【0003】
従来知られているパターンの転写技術の内、触媒を予め配列させてからめっきによってパターンを形成する技術に関しては特開昭56−157091号公報に開示されている。図3は特開昭56−157091号公報に開示されているインクジェットプリンタの模式図である。固定版306の上に可動ステージ302が配置され、被転写基板301は可動ステージ302の上に積載される。被転写基板301の上にはインクガン303が設置されており、ピエゾ素子制御装置304によってインクガン303から銀粉を含有したインクを被転写基板301へ滴下する。被転写基板301をNC制御装置305によって制御される可動ステージによって水平面内を移動させることによって被転写基板301上に銀粉含有インクのパターンを形成する。そして銀粉の活性化処理後、無電解銅めっきによって所定の銅配線を形成できる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−347478号公報
【特許文献2】特開昭56−157091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術の内、媒体をノズルから吐出させる技術は媒体を転写するディスペンサーノズルの詳細な構造が開示されていないが二次元的に閉じたラインパターンでは閉じたラインパターン内の原版材料が欠落してしまう問題がある。図4,図5,図6は原版が欠落してしまう状況を説明する図である。図4はラインパターンを形成する原版401の平面である。基体402にスリット403が開口されており、スリット403から媒体が供出される。図4中のA1−B1断面を図5に示す。媒体501はスリット403から供出される。図4に示したような単純なラインパターンは特開平11−347478号公報で開示されているように転写することは可能である。一方、図6は閉じたラインパターンを形成する原版601の平面である。基体402にスリット403が開口されており、スリット403から媒体が供出される。図6中のA2−B2断面を図7に示す。媒体501はスリット403から供出される。図7から分かるように閉じたラインパターンを形成すると基体602は本体の基体402から分離してしまうので欠落してしまう。基体602と基体402を梁などで結合することは考えられるが複雑な構造を有する原版601の作製はコストの上昇を招いてしまう。
【0006】
上記従来技術の内、触媒を予め配列させてからめっきによってパターンを形成する技術は滴下する液滴の大きさに制約がある。即ち、インクガンからインクを噴出させるにはインクの表面張力に打ち勝つ圧力をインクにかける必要がある。例えば直径Dセンチメートルのオリフィスから水滴を噴出させるには下記の式で記述される圧力が必要となる。
【0007】
P=2×72/D
ここで72(ダイン/センチメーター)は水の表面張力である。この式から導かれるように、圧力はオリフィスの直径に逆比例することが分かる。現在のインクジェットプリンタでは数十マイクロメーターのオリフィスから液滴を噴出させるのに数気圧の圧力をかけている。ここで線幅10マイクロメーターの配線を形成することを想定する。線幅の1/100の大きさの液滴で配線を形成すると考えると、必要なオリフィスの直径はおおよそ0.1マイクロメーターとなり非常な高圧をインクに加える必要がある。現在のインクジェットプリンタでは既に構成部品の破損、具体的には部材と部材を接着している箇所が剥がれてしまう問題が出ている。よってインクジェット法で線幅10マイクロメーター以下の配線を形成することは原理的に極めて困難であることが分かる。
【0008】
以上の技術課題に鑑み、本発明の目的をまとめると以下の通りとなる。
【0009】
本発明の目的は表面張力の制約を受けずに、微細なパターンを転写できる装置、その方法、および微細なパターンを触媒で転写した後、めっきによって配線パターンを形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的の内、表面張力の制約を受けずに微細なパターンを転写できる装置は、媒体を気化させて被転写基板上にパターンを描画することで達成される。
【0011】
上記目的の内、表面張力の制約を受けずに微細なパターン転写できる方法は、媒体を入れる液溜めと液溜め内部の圧力を高める圧力調整機構と液溜めに開口された第1のオリフィスと第1のオリフィスを一側面に有する気化室と気化室の一側面に開口された第2のオリフィスと被転写基板からなる転写装置において、圧力調整機構によって液溜め内部の圧力を高めて第1のオリフィスから媒体を気化室へ搬送する工程と、気化室の内部で気化した媒体が第2のオリフィスから噴出して被転写基板上に媒体を付着させる工程によって達成される。
【0012】
上記目的の内、表面張力の制約を受けずに微細な触媒パターン転写した後めっきによって配線パターンを形成する方法は、媒体に触媒原子が含有された触媒を使用し、媒体を入れる液溜めと液溜め内部の圧力を高める圧力調整機構と液溜めに開口された第1のオリフィスと第1のオリフィスを一側面に有する気化室と気化室の一側面に開口された第2のオリフィスと被転写基板からなる転写装置において、圧力調整機構によって液溜め内部の圧力を高めて第1のオリフィスから媒体を気化室へ搬送する工程と、気化室の内部で気化した媒体が第2のオリフィスから噴出して被転写基板上に媒体を付着させる工程と、被転写基板上の媒体を触媒としてめっきによって金属パターンを形成する工程によって達成される。
【0013】
また、二次元パターンを一括転写する装置は、二次元パターンを有するスリットが形成された原版と、スリットに転写用の媒体を供給する媒体溜めと、スリットに充填した媒体の圧力を調整する圧力調整機構と、被転写基板からなるパターン転写装置によって達成される。特に連続した二次元パターンに対してはスリットと媒体溜めとの間に媒体の供給管を少なくとも一個所、配置したパターン転写装置によって達成される。
【0014】
また、二次元パターンを一括転写する方法は、二次元パターンを有するスリットが形成された原版と、スリットに転写用の媒体を供給する媒体溜めと、スリットに充填した媒体の圧力を調整する圧力調整機構と、被転写基板からなるパターン転写装置において圧力調整機構によってスリット中の媒体をスリットから押し出す工程と、押し出した媒体を被転写基板に接触させる工程によって達成される。
【0015】
また、所定の二次元パターンを転写できる原版は、原版の表面から順に第1の層と第2の層の少なくとも二つの層を形成し、第2の層の一部を除去した空洞領域に転写用の媒体を充填することで達成される。
【0016】
また、所定の二次元パターンを一括転写できる原版の製造方法は、基板上に少なくとも異なる種類の第1の層と第2の層を形成する工程と、第1の層に転写するパターンと同じパターンを有するスリットを形成する工程と、形成した第1の層のスリットからエッチング液を第2の層に接触させることで第2の層の一部を除去する工程によって達成される。
【0017】
また、所定の二次元パターンを一括転写できる原版に媒体を供給する構造は、基板上にパターンを有するスリットが形成された原版とスリットに転写用の媒体を供給する媒体溜めとスリットに充填した媒体の圧力を調整する圧力調整機構と被転写基板からなる転写装置において、原版に表面から順に第1の層と第2の層の少なくとも二つの層を形成し、第2の層の一部を除去した空洞領域に媒体溜めから毛細管現象によって媒体を供給することで達成される。特に連続した二次元パターンへ媒体の供給は、スリットと媒体溜めとの間に媒体の供給管を少なくとも一個所、配置することで達成される。
【0018】
また、所定の二次元パターンを一括転写できる原版に媒体を供給する他の構造は、基板上にパターンを有するスリットが形成された原版とスリットに転写用の媒体を供給する媒体溜めとスリットに充填した媒体の圧力を調整する圧力調整機構と被転写基板からなる転写装置において、スリットが原版表面側の第1のスリットと第1のスリットの底面に第1のスリットよりも幅の狭い第2のスリットを少なくとも一種類、設けることで第2のスリットの内部に毛細管現象によって媒体を供給してスリット全体に媒体を輸送することで達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、二次元面内に所定の配線パターンを有する原版から転写媒体を滲み出させることで被転写基板へ配線パターンを一括転写できる装置や方法を得られるため、電子部品の製造を簡便にできる効果を得られる。特に粘度の高い媒体も使用できるので媒体中の金属粒子濃度を高められる効果も得られる。
【0020】
本発明では、連続した二次元パターンに対して媒体の供給管を少なくとも一つはスリットに接続することで閉じたラインパターンや連続したパターンを簡便に転写できる効果を得られる。
【0021】
本発明では、原版の表面から順に第1の層と第2の層の少なくとも二つの層を形成し、第2の層の一部を除去した空洞領域に転写用の媒体を毛細管現象によって輸送できるようになるため、二次元面内に形成されたスリット全体に媒体を輸送できる効果を得られる。また、被転写基板へ媒体を滲み出させるスリットの底面に幅の狭いスリットを形成しておくことで幅の狭いスリット内に毛細管現象によって媒体を輸送できるようになるため、二次元面内に形成されたスリット全体に媒体を輸送できる効果を得られる。
【0022】
本発明では、閉じたラインパターンや連続した二次元パターンを構成するスリットに少なくとも一つの媒体の供給管を接続することで毛細管現象によってパターン全体に媒体を容易に供給できる効果を得られる。
【0023】
本発明では、基板上に少なくとも二種類の第1の層と第2の層を形成しておき、表面側の第1の層にスリットを形成後、第2の層のエッチング液に原版を浸漬することで第1の層に形成したスリットからエッチング液を第2の層に接触させる。この方法によって自己整合的に第1の層と同じレイアウトで第2の層を除去できる効果を得られる。また、第2の層のエッチング時間を長くすることで第1の層に形成したスリットにオーバーハング領域を形成できる効果を得られる。
【0024】
本発明では、媒体を気化させた後に媒体を被転写基板へ輸送するため、微小液滴の形成が不要となり、微細なオリフィスから媒体を噴出させることが可能となる。その結果、微細なパターンを描画できる効果を得られる。
【0025】
本発明では、触媒を含有する媒体を気化させた後、微細なオリフィスから触媒を噴出させることで微細な触媒パターンを基板上に描画できるので、めっき工程によって描画した触媒に金属をめっきすることができる。よって、めっき処理によって微細な金属パターンを形成できる効果を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(実施例1)
以下、本発明の一実施例を説明する。本実施例では本発明におけるパターン転写の原理,転写装置の構成,転写工程を説明する。
【0027】
図1は使用したパターン転写装置の斜視図である。一辺1mのガラス基板102を可動ステージ101の上に設置した。可動ステージ101はガラス基板102を水平面内方向にステッピングモータで移動することができる。媒体溜め104と一体化した転写用の原版103はZ軸可動機構106で固定されており、Z軸可動機構106は支持アーム105によって固定台107に連結された構造となっている。原版103は一辺140mmの正方形である。Z軸可動機構106は原版103と媒体溜め104をZ軸方向に移動できる構造になっている。
【0028】
図8は原版103の断面形状である。なお、分かりやすくするために縦方向の寸法を拡大している。シリコン基板801の下には厚さ1.5 マイクロメーターの酸化膜802が存在し、酸化膜802の下に厚さ1.0マイクロメーターのシリコン膜803が形成されている。シリコン膜803に形成したスリット804の幅は10マイクロメーターである。スリット804とシリコン基板801の間の酸化膜802には幅30マイクロメーターの隙間806が形成されている。
【0029】
原版103には図1で示すように媒体溜め104が原版103の上に接続されている。図9は原版103と媒体溜め104の接続状況を説明する断面図である。媒体容器903の内部に媒体902が内包されており、媒体902は供給管901を通って原版103内部の媒体805と繋がっている。そして媒体902は隙間806やスリット804に媒体を充填する構造になっている。酸化膜802とスリット804には転写用の媒体805が充填されている。媒体はトルエンで希釈した銅微粒子である。銅微粒子の粒径は平均50ナノメーター、銅の濃度は約10質量%である。媒体溜め104にはヒーター904が設置されておりヒーター904に通電することでヒーター近傍の媒体902が体積膨張して媒体容器903内部の圧力が上昇する構造になっている。
【0030】
次に閉じたラインパターンを有する原版の構造を説明する。図30は閉じたラインパターンを有する原版103の平面図である。シリコン膜803に開口されたスリット804は閉じたラインパターンを形成している。図31は図30におけるA3−B3の断面である。媒体805は一本の供給管901によってスリット804へ充填される。媒体805は酸化膜802が除去された領域を通じてスリット804の全体に供給される。
【0031】
次に印刷工程について説明する。図10から図17は配線パターンをガラス基板102上に形成した時の工程説明図である。図10は媒体805をガラス基板102へ転写する前の状態である。ガラス基板102はシリコン膜803から100マイクロメーター離れた位置に設置されている。媒体溜め104と一体化した原版103はZ軸可動機構106によってガラス基板102の方へ移動し、図11に示すようにガラス基板102と原版103との距離が10マイクロメーターまで接近する。なお、Z軸駆動機構106はピエゾ素子への電圧印加によって駆動される構造となっている。この駆動機構は原子間力顕微鏡において短針を試料表面に接近させる既知の技術を原版103の三個所の隅に適用することでガラス基板102に対して平行に原版103を接近させることを容易に実現できた。次に図12に示すヒーター904に100ミリ秒間だけ通電することで媒体容器903内部の圧力を上昇させることでスリット804から媒体805を滲み出させた。媒体805はガラス基板102と接触することで媒体805の一部はガラス基板102に転写される。
【0032】
次に図13に示すようにZ軸可動機構106によって原版103をガラス基板102から100マイクロメーターの距離まで離した。媒体容器903の内部圧力は媒体902の冷却に伴い自然に低下し、図14に示したように媒体805はスリット804の内部に引っ込んだ形状になった。図15は媒体805がガラス基板102の上に転写されたラインパターンの一部の斜視図である。次に媒体805を転写したガラス基板102を窒素ガス90%,酸素ガス10%の雰囲気中で300℃,5分間、熱処理し、さらに窒素ガス80%,水素ガス20%の雰囲気中で300℃,2分間、熱処理した。図16は熱処理後のラインパターンの一部の斜視図である。線幅8マイクロメーター,厚さ0.5マイクロメーターの銅配線を形成できた。図17は1メートル角のガラス基板102上に先に記述した媒体805の転写工程と可動ステージ101の駆動によるガラス基板102の移動とを組み合わせたステップアンドリピートによって配線パターン1701を49個、形成した例を示している。配線パターン1701は一辺140ミリメーターである。
【0033】
本実施例では銅配線の形成に関して述べたが媒体に含まれる金属の種類を変えることで例えばモリブデン,クロム,金,銀,ニッケル,チタン,タンタル,コバルト,インジウム,錫,亜鉛を含む金属配線を形成できる。なお、実施例5で述べるが媒体にめっき処理時の触媒作用のあるパラジウムを用いることで触媒を配列させることもできる。また、熱処理時に酸素ガスを多く含む雰囲気ガスにすることで酸化物,窒素ガスやアンモニアガスを含ませることで窒化物を形成できる。さらには媒体の成分をシリコンやゲルマニウムを含む有機物やアルミナやシリカなどの絶縁物にすることで半導体膜や絶縁膜を所定の形状に形成することもできる。さらにインジウム錫酸化物,インジウム亜鉛酸化物,インジウムゲルマニウム酸化物を形成することもできる。
【0034】
(実施例2)
以下、本発明の他の一実施例を説明する。本実施例では図21に示す原版の作製方法について説明する。図18は原版103に使用したSOI(Silicon on Insulator)基板1801の断面図である。SOI基板1801は第1の層となる厚さ1.0マイクロメーターのシリコン膜803と第2の層となる厚さ1.5マイクロメーターの酸化膜802と厚さ550マイクロメーターの単結晶のシリコン基板801から成る。SOI基板1801の直径は100ミリメーターである。次にLSI加工で一般的なフォトリソグラフィ技術によってシリコン膜803にスリット804を形成して図19に示す構造を得た。スリットの幅は10マイクロメーターである。シリコン膜803の除去にはドライエッチング法を用いた。次に純水で希釈した弗化水素水中に原版103を浸漬し、酸化膜802をエッチングすることで図20に示すようにオーバーハングしたシリコン膜803の下に空隙2001を形成した。空隙2001の幅は8マイクロメーターである。以上の製造方法で原版103は完成した。
【0035】
図20から分かるように原版は基板1801上に異なる種類の第1の層であるシリコン膜803と第2の層である酸化膜802において第1の層に形成したスリットからエッチング液を第2の層に接触させることで第2の層の一部を除去する工程で製造できることが分かる。また、第2の層のエッチング時間を長くすることで第2の層のスリットの幅を第1の層のスリットの幅よりも大きくできることも容易に分かる。
【0036】
図21は原版103に媒体805を充填した時の断面図である。媒体805は毛細管現象によって隙間2001に流れ込む。隙間2001に媒体805が流れ込むことで配線パターンが形成されたスリット804に媒体が充填されることになる。
【0037】
なお、シリコンを酸化処理すると酸化物表面は親水性になる。逆にシリコンを弗化水素水で処理するとシリコン表面は疎水性になる。よって毛細管現象をより効果的に得るために図20に示す構造体を酸化雰囲気中で熱処理することでシリコン材料を酸化して隙間2001に媒体が進入しやすくすることもできる。
【0038】
(実施例3)
以下、本発明の他の一実施例を説明する。本実施例では図24に示す原版103の作製方法について説明する。図22は原版103に使用した基板2201の断面図である。基板2201は厚さ550マイクロメーターの単結晶のシリコン基板801の上に厚さ1.5マイクロメーターの酸化膜802が形成された構造になっている。酸化膜802は熱酸化法によって形成した。基板2201の直径は100ミリメーターである。次にLSI加工で一般的なフォトリソグラフィ技術によって酸化膜802に第1のスリット2301を形成して図23に示す構造を得た。第1のスリット2301の幅は10マイクロメーターである。酸化膜802の除去には純水で希釈した弗化水素水によるウエットエッチング法を用いた。次にフォトリソグラフィ技術とシリコンドライエッチング法によって幅1マイクロメーター,深さ3マイクロメーターの第2のスリット2401を形成した。以上の製造方法で図24に示す原版103は完成した。
【0039】
図25は原版103に媒体805を充填した時の断面図である。媒体805は毛細管現象によって第2のスリット2401に流れ込む。第2のスリット2401に媒体805が流れ込むことで配線パターンが形成された第1のスリット2301に媒体が充填されることになる。
【0040】
なお、本実施例では第1のスリット2301に一つの第2のスリット2401を形成したが2つ以上の第2のスリットを形成することで媒体の輸送量を増加できることは明らかである。
【0041】
さらに、シリコンを酸化処理すると酸化物表面は親水性になる。逆にシリコンを弗化水素水で処理するとシリコン表面は疎水性になる。よって毛細管現象をより効果的に得るために図24に示す構造体を酸化雰囲気中で熱処理することでシリコン材料を酸化し、第2のスリット2401に媒体が進入しやすくすることもできる。さらに第1のスリット2301や第2のスリット2401の側面を荒らすことで媒体の濡れ性を向上できる。
【0042】
(実施例4)
以下、本発明の他の一実施例を説明する。本実施例では原版へ媒体を供給する構造や方法、および原版内部での媒体の輸送機構に関して説明する。図20や図24に示した原版103に媒体805を連続的に供給する機構は隙間2001や第2のスリット2401の中を媒体805が流れる毛細管現象である。本発明では媒体805を連続的に原版103に供給するために媒体溜め104を考案した。媒体溜め104は図9に示したように原版103に密着している。媒体溜め104と原版103は供給管901で接続されている。媒体805が転写工程時に消費されるに伴い供給管901を通って媒体容器903中の媒体902が補給される構造になっている。供給管901は14ミリメートル角の原版103に100個所設置した。設置密度は原版103の面内でのパターンに疎密があり、パターンが密集して媒体の消費が激しい領域には多くの供給管901を設置した。供給管901のレイアウトの一例を図27で説明する。
【0043】
図27は試作した薄膜トランジスタ駆動液晶表示装置2701の回路レイアウトである。薄膜トランジスタ駆動液晶表示装置2701を透明基板2702の表面に形成した。表示部2703には薄膜トランジスタが画素毎にレイアウトされるためゲート電極などの配線密度は高くなる。また、ドレイン半導体集積回路2704やゲート半導体集積回路2705のパターン密度も高い。しかし映像信号用バスライン2706や走査信号用バスライン2707のパターン密度は低い。パターン密度の疎密によって転写される媒体の量は増減するため本実施例では表示部2703には合計60個、ドレイン半導体集積回路2704とゲート半導体集積回路2705には合計30個、映像信号用バスライン2706と走査信号用バスライン2707には合計10個の供給管901を配置した。
【0044】
次に薄膜トランジスタ駆動液晶表示装置2701に現れる連続した二次元パターンを転写した時の媒体の供給方法について説明する。図32は連続した二次元パターンを有する原版103の平面図である。シリコン膜803に開口されたスリット804は連続したラインパターンを形成している。図33は図30におけるA4−B4の断面である。一本の供給管901を酸化膜802が除去された領域へ接続することで毛細管現象によって媒体805はスリット804の全体に供給された。
【0045】
次に、媒体溜め104への媒体の補給方法と構造に関して図26によって説明する。媒体溜め104への媒体902の補給は外部に設置された補給タンク2601を使用した。補給タンク2601と媒体溜め104は補給管2602で接続され、媒体溜め104中の媒体902が不足することのないように補給管2602を通して補給タンク2601内部の媒体を供給する機構になっている。補給タンク2601の容量は1リットルである。補給タンク2601の内部圧力は加圧機構2603によって常に大気圧より0.1 気圧だけ高い状態に保持した。加圧機構2603は圧力タンク2604,圧力調整弁2605,遮断バルブ2606,金属パイプ2607で構成されている。なお、遮断バルブ2606は常時オープン状態であるが補給タンク2601へ媒体を補充する時や緊急時に媒体の補給を遮断するために設置した。
【0046】
(実施例5)
以下、本発明の他の一実施例を説明する。本実施例では触媒を配列し、めっき処理することで配線を形成する装置と方法に関して説明する。図28は使用したパターン転写装置の斜視図である。一辺1mのガラス基板102を可動ステージ101の上に設置した。可動ステージ101はガラス基板102を水平面内方向にステッピングモータで移動することができる。噴射機構2801はZ軸可動機構106で固定されており、Z軸可動機構106は支持アーム105によって固定台107に連結された構造となっている。Z軸可動機構106は噴射機構2801をZ軸方向に移動できる構造になっている。
【0047】
図29は噴射機構2801の断面図である。噴射機構2801は媒体溜め2901と気化器2902から成る。媒体溜め2901は媒体2903を内包した媒体容器2904と第1のヒーター2906から成る。媒体容器2904は直径0.5ミリメートルの第1のオリフィス2905が開口されている。気化器2902は気化容器2907と気化容器2907を加熱する第2のヒーター2909から成る。気化容器2907には直径50ナノメートルの第2のオリフィス2908が開口されている。第1のヒーター2906に通電することで媒体容器2904内部の圧力が上がり、第1のオリフィス2905から媒体2903は気化室2910へ供給され、気化室2910内で気化し、第2のオリフィス2908から噴出する機構となっている。
【0048】
媒体容器2904への媒体2903の補給は図28に示したように外部に設置された補給タンク2601を使用する。補給タンク2601と媒体容器2904は補給管2602で接続され、媒体容器2904中の媒体2903が不足することがないように補給管2602を通して補給タンク2601内部の媒体を供給する機構になっている。補給タンク2601の容量は1リットルである。補給タンク2601の内部圧力は加圧機構2603によって常に大気圧より0.1気圧だけ高い状態に保持されている。加圧機構2603は圧力タンク2604,圧力調整弁2605,遮断バルブ2606,金属パイプ2607で構成されている。なお、遮断バルブ2606は常時オープン状態であるが補給タンク2601へ媒体を補充する時や緊急時に媒体の補給を遮断するために設置した。
【0049】
次に、銅配線を形成した方法について図28と図29を用いて説明する。始めに図28に示すようにガラス基板102を可動ステージ101の上に設置した。ガラス基板102の大きさは1メートル角である。ガラス基板102設置後のガラス基板102と噴射機構2801との距離は100マイクロメーターである。加圧機構2603によって補給タンク2601の内部圧力を大気圧から0.1気圧だけ高くし、媒体容器2904に媒体2903を充填しておいた。なお、本実施例ではイニシエーターとしてパラジウムを含有した媒体を使用した。
【0050】
また、予め、第2のヒーター2909に通電した状態でアルミ製の気化容器2907を約150℃に保持した状態にしておいた。次に、Z軸可動機構106によって噴射機構2801をガラス基板102の方へ移動させ、ガラス基板102と原版103との距離が10マイクロメーターになるまで接近させた。なお、Z軸駆動機構106はピエゾ素子への電圧印加によって駆動される構造となっている。次にアルミ製の媒体容器2904内の第1のヒーター2906に通電した。第1のヒーター2906に通電した状態で可動ステージ101を駆動して所定のラインパターンをガラス基板102の上に転写した。ラインパターンの描画が終了した後、第1のヒーター2906への通電を中止した。そして噴射機構2801の第2のオリフィス2908が次のラインパターンの始点位置へ来るように稼動ステージ101を駆動した。そして再び同様の工程で所定のラインパターンをガラス基板102の上に転写した。以上の転写工程を繰り返すことで全ての配線パターンを転写した。転写終了後、ガラス基板102に無電解銅めっき処理を施して線幅80ナノメーターの銅配線パターンを形成した。
【0051】
本実施例では銅配線を形成したが触媒とめっき液を変えることでニッケル,コバルト,パラジウム,金,銀,白金,錫も形成できることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】パターン転写装置の斜視図。
【図2】従来技術を説明するための塗布装置の斜視図。
【図3】従来技術を説明するためのインクジェットプリンタの模式図。
【図4】従来技術では原版が欠落してしまう状況を説明する図。
【図5】従来技術では原版が欠落してしまう状況を説明する図。
【図6】従来技術では原版が欠落してしまう状況を説明する図。
【図7】従来技術では原版が欠落してしまう状況を説明する図。
【図8】原版の断面形状。
【図9】原版と媒体溜めの接続状況を説明する断面図。
【図10】配線パターンを形成するための工程説明図。
【図11】配線パターンを形成するための工程説明図。
【図12】配線パターンを形成するための工程説明図。
【図13】配線パターンを形成するための工程説明図。
【図14】配線パターンを形成するための工程説明図。
【図15】転写されたラインパターンの一部の斜視図。
【図16】転写されたラインパターンの一部の斜視図。
【図17】ステップアンドリピートによって形成した配線パターンの説明図。
【図18】原版に使用したSOI(Silicon on Insulator)基板の断面図。
【図19】原版の製造方法を説明するための原版の断面図。
【図20】原版の製造方法を説明するための原版の断面図。
【図21】原版に媒体を充填した時の原版の断面形状。
【図22】原版に使用した基板の断面図。
【図23】原版の製造方法を説明するための原版の断面図。
【図24】原版の製造方法を説明するための原版の断面図。
【図25】原版に媒体を充填した時の原版の断面形状。
【図26】媒体溜めへの媒体の補給方法と構造を説明するためのパターン転写装置の斜視図。
【図27】試作した薄膜トランジスタ駆動液晶表示装置の回路レイアウト図。
【図28】使用した転写装置の斜視図。
【図29】噴射機構の断面図。
【図30】閉じたラインパターンを有する原版の平面図。
【図31】閉じたラインパターンを有する原版の断面図。
【図32】連続したラインパターンを有する原版の平面図。
【図33】連続したラインパターンを有する原版の断面図。
【符号の説明】
【0053】
101,202,302…可動ステージ、102…ガラス基板、103,401,601…原版、104…媒体溜め、105…支持アーム、106…Z軸可動機構、107…固定台、201…被塗布基板、203…転写部材、204,501,805,902,2903…媒体、205…円筒容器、206…圧力調整機構、207…ディスペンサーノズル、301…被転写基板、303…インクガン、304…ピエゾ素子制御装置、402,602…基体、403,804…スリット、801…シリコン基板、802…酸化膜、803…シリコン膜、806…隙間、901…供給管、903,2904…媒体容器、904…ヒーター、1701…配線パターン、1801…SOI基板、2201…基板、2301…第1のスリット、2401…第2のスリット、2601…補給タンク、2602…補給管、2603…加圧機構、2604…圧力タンク、2605…圧力調整弁、2606…遮断バルブ、2607…金属パイプ、2701…薄膜トランジスタ駆動液晶表示装置、2702…透明基板、2703…表示部、2704…ドレイン半導体集積回路、2705…ゲート半導体集積回路、2706…映像信号用バスライン、2707…走査信号用バスライン、2801…噴射機構、2901…媒体溜め、2902…気化器、2905…第1のオリフィス、2906…第1のヒーター、2907…気化容器、2908…第2のオリフィス、2909…第2のヒーター、2910…気化室。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写基板にパターンを転写する装置において、媒体を入れる液溜めと液溜め内部の圧力を高める圧力調整機構と液溜めに開口された第1のオリフィスと第1のオリフィスを一側面に有する気化室と気化室の一側面に開口された第2のオリフィスと被転写基板と被転写基板を二次元面内に移動させる駆動機構とを備え、
気化した媒体が被転写基板上にパターンを描画することを特徴とするパターン転写装置。
【請求項2】
請求項1において、描画する媒体中にめっきのイニシエータとなりうる物質が含まれていることを特徴とするパターン転写装置。
【請求項3】
請求項2において、イニシエータがパラジウムであることを特徴とするパターン転写装置。
【請求項4】
媒体を入れる液溜めと液溜め内部の圧力を高める圧力調整機構と液溜めに開口された第1のオリフィスと第1のオリフィスを一側面に有する気化室と気化室の一側面に開口された第2のオリフィスと被転写基板と被転写基板を二次元面内に移動させる駆動機構からなる転写装置を用いたパターン転写方法において、
圧力調整機構によって液溜め内部の圧力を高めて第1のオリフィスから媒体を気化室へ搬送する工程と、気化室の内部で気化した媒体が第2のオリフィスから噴出して被転写基板上に媒体を付着させる工程と、被転写基板を二次元面内で移動させる工程を特徴とするパターン転写方法。
【請求項5】
請求項4において、媒体に触媒原子が含有された触媒を使用し、触媒を被転写基板に転写し、めっきによって金属パターンを形成することを特徴とするパターン転写方法。
【請求項1】
被転写基板にパターンを転写する装置において、媒体を入れる液溜めと液溜め内部の圧力を高める圧力調整機構と液溜めに開口された第1のオリフィスと第1のオリフィスを一側面に有する気化室と気化室の一側面に開口された第2のオリフィスと被転写基板と被転写基板を二次元面内に移動させる駆動機構とを備え、
気化した媒体が被転写基板上にパターンを描画することを特徴とするパターン転写装置。
【請求項2】
請求項1において、描画する媒体中にめっきのイニシエータとなりうる物質が含まれていることを特徴とするパターン転写装置。
【請求項3】
請求項2において、イニシエータがパラジウムであることを特徴とするパターン転写装置。
【請求項4】
媒体を入れる液溜めと液溜め内部の圧力を高める圧力調整機構と液溜めに開口された第1のオリフィスと第1のオリフィスを一側面に有する気化室と気化室の一側面に開口された第2のオリフィスと被転写基板と被転写基板を二次元面内に移動させる駆動機構からなる転写装置を用いたパターン転写方法において、
圧力調整機構によって液溜め内部の圧力を高めて第1のオリフィスから媒体を気化室へ搬送する工程と、気化室の内部で気化した媒体が第2のオリフィスから噴出して被転写基板上に媒体を付着させる工程と、被転写基板を二次元面内で移動させる工程を特徴とするパターン転写方法。
【請求項5】
請求項4において、媒体に触媒原子が含有された触媒を使用し、触媒を被転写基板に転写し、めっきによって金属パターンを形成することを特徴とするパターン転写方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
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【図5】
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【図9】
【図10】
【図11】
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【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2008−114219(P2008−114219A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257035(P2007−257035)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【分割の表示】特願2001−22679(P2001−22679)の分割
【原出願日】平成13年1月31日(2001.1.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【分割の表示】特願2001−22679(P2001−22679)の分割
【原出願日】平成13年1月31日(2001.1.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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