説明

パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びパワーモジュール用基板の製造方法

【課題】金属板とセラミックス基板とが確実に接合され、熱サイクル信頼性の高いパワーモジュール用基板、このパワーモジュール用基板を備えたパワーモジュール及びこのパワーモジュール用基板の製造方法を提供する。
【解決手段】AlN又はSiからなるセラミックス基板11の表面に純アルミニウムからなる金属板12、13が接合されたパワーモジュール用基板であって、金属板12、13とセラミックス基板11との接合界面には、Cu濃度が金属板12、13中のCu濃度の2倍以上とされたCu高濃度部32が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大電流、高電圧を制御する半導体装置に用いられるパワーモジュール用基板、このパワーモジュール用基板を備えたパワーモジュール及びこのパワーモジュール用基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の中でも電力供給のためのパワーモジュールは発熱量が比較的高いため、これを搭載する基板としては、例えば、AlN(窒化アルミ)又はSi(窒化ケイ素)からなるセラミックス基板上にAl(アルミニウム)の金属板がAl−Si系のろう材を介して接合されたパワーモジュール用基板が用いられる。
また、この金属板は回路層として形成され、その金属板の上には、はんだ材を介してパワー素子の半導体チップが搭載される。
なお、セラミックス基板の下面にも放熱のためにAl等の金属板が接合されて金属層とされ、この金属層を介して放熱板上にパワーモジュール用基板全体が接合されたものが提案されている。
【0003】
従来、前記回路層及び前記金属層としての金属板とセラミックス基板との良好な接合強度を得るため、例えば下記特許文献1に、セラミックス基板の表面粗さを0.5μm未満にしている技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−234045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属板をセラミックス基板に接合する場合、単にセラミックス基板の表面粗さを低減しても十分に高い接合強度が得られず、信頼性の向上が図れないという不都合があった。例えば、セラミックス基板の表面に対して、乾式でAl粒子によるホーニング処理を行い、表面粗さをRa=0.2μmにしても、剥離試験で界面剥離が生じてしまう場合があることが分かった。また、研磨法により表面粗さをRa=0.1μm以下にしても、やはり同様に界面剥離が生じてしまう場合があった。
また、熱サイクルが負荷された場合において、接合界面の剥離のみでなく、セラミックス基板に割れが発生することも知られている
【0006】
特に、最近では、パワーモジュールの小型化・薄肉化が進められるとともに、その使用環境も厳しくなってきており、電子部品からの発熱量が大きくなる傾向にあり、前述のように放熱板上にパワーモジュール用基板を配設する必要がある。この場合、パワーモジュール用基板が放熱板によって拘束されるために、熱サイクル負荷時に、金属板とセラミックス基板との接合界面に大きなせん断力が作用することになるため、さらなる接合強度の向上及び信頼性の向上が求められている。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、金属板とセラミックス基板とが確実に接合され、熱サイクル信頼性の高いパワーモジュール用基板、このパワーモジュール用基板を備えたパワーモジュール及びこのパワーモジュール用基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明のパワーモジュール用基板は、AlN又はSiからなるセラミックス基板の表面に純アルミニウムからなる金属板が接合されたパワーモジュール用基板であって、前記金属板と前記セラミックス基板との接合界面には、Cu濃度が前記金属板中のCu濃度の2倍以上とされたCu高濃度部が形成されていることを特徴としている。
【0009】
この構成のパワーモジュール用基板においては、AlN又はSiからなるセラミックス基板と純アルミニウムからなる金属板との接合界面に、Cu濃度が前記金属板中のCu濃度の2倍以上とされたCu高濃度部が形成されているので、界面近傍に存在するCu原子により、セラミックス基板と金属板との接合強度の向上を図ることが可能となる。
なお、金属板中のCu濃度とは、金属板のうち接合界面から一定距離(例えば、5nm)離れた部分におけるCu濃度である。
【0010】
ここで、前記Cu高濃度部においては、酸素濃度が、前記金属板中及び前記セラミックス基板中の酸素濃度よりも高くされていることが好ましい。
この場合、接合界面に酸素が介在することにより、AlN又はSiからなるセラミックス基板と純アルミニウムからなる金属板との接合強度のさらなる向上を図ることが可能となる。
また、接合界面に高濃度で存在する酸素は、セラミックス基板の表面に存在する酸素及び金属板の表面に形成された酸化膜から取り込まれたものであると考えられる。ここで、酸素濃度が接合界面において高濃度に存在するということは、これらの酸化膜等が確実に除去されるように十分に加熱されていることになり、セラミックス基板と金属板とを強固に接合することが可能となる。
【0011】
さらに、前記セラミックス基板がAlNで構成されており、前記Cu高濃度部を含む前記接合界面をエネルギー分散型X線分析法で分析したAl、Cu、O、Nの質量比が、Al:Cu:O:N=50〜90wt%:1〜10wt%:2〜20wt%:25wt%以下とされていることが好ましい。
あるいは、前記セラミックス基板がSiで構成されており、前記Cu高濃度部を含む前記接合界面をエネルギー分散型X線分析法で分析したAl、Si、Cu、O、Nの質量比が、Al:Si:Cu:O:N=15〜45wt%:15〜45wt%:1〜10wt%:2〜20wt%:25wt%以下とされていることが好ましい。
【0012】
接合界面に存在するCu原子の質量比が10wt%を超えると、AlとCuとの反応物が過剰に生成されることになり、この反応物が接合を阻害するおそれがある。また、この反応物によって金属板の接合界面近傍が必要以上に強化されることになり、熱サイクル負荷時にセラミックス基板に応力が作用し、セラミックス基板が割れてしまうおそれがある。一方、Cu原子の質量比が1wt%未満であると、Cu原子による接合強度の向上を充分に図ることができなくなるおそれがある。よって、接合界面におけるCu原子の質量比は、1〜10wt%の範囲内とすることが好ましい。
また、前記Cu高濃度部を含む接合界面に存在する酸素原子の質量比が20wt%を超えると、酸素濃度の高い部分が厚く存在することになり、熱サイクルを負荷した際に、この高濃度部においてクラックが発生してしまい接合信頼性が低下するおそれがある。このため、酸素濃度は2〜20wt%とすることが好ましい。
【0013】
ここで、エネルギー分散型X線分析法による分析を行う際のスポット径は極めて小さいため、前記接合界面の複数点(例えば、10〜100点)で測定し、その平均値を算出することになる。また、測定する際には、金属板の結晶粒界とセラミックス基板との接合界面は測定対象とせず、結晶粒とセラミックス基板との接合界面のみを測定対象とする。
なお、本明細書中におけるエネルギー分散型X線分析法による分析値は、日本電子製の電子顕微鏡JEM−2010Fに搭載したサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のエネルギー分散型蛍光X線元素分析装置NORAN System7を用いて加速電圧200kVで行った。
【0014】
本発明のパワーモジュールは、前述のパワーモジュール用基板と、このパワーモジュール用基板上に搭載された電子部品と、を備えることを特徴としている。
この構成のパワーモジュールによれば、セラミックス基板と金属板との接合強度が高く、使用環境が厳しい場合であっても、その信頼性を飛躍的に向上させることができる。
【0015】
また、本発明のパワーモジュール用基板の製造方法は、AlNからなるセラミックス基板の表面に純アルミニウムからなる金属板が接合されたパワーモジュール用基板を製造する方法であって、前記セラミックス基板と前記金属板とを、厚さ0.15μm以上3μm以下のCu層を介して積層する積層工程と、積層された前記セラミックス基板及び前記金属板を積層方向に加圧するとともに加熱し、前記セラミックス基板及び前記金属板の界面に溶融アルミニウム層を形成する溶融工程と、冷却によって前記溶融アルミニウム層を凝固させる凝固工程と、を有し、前記溶融工程及び前記凝固工程において、前記セラミックス基板と前記金属板との接合界面に、Cu濃度が前記金属板中のCu濃度の2倍以上とされたCu高濃度部を形成することを特徴としている
【0016】
この構成のパワーモジュール用基板の製造方法によれば、セラミックス基板及び金属板を、Cu層を介して積層し、積層された前記セラミックス基板及び前記金属板を積層方向に加圧するとともに加熱するので、Cu層のCuと金属板のAlとが共晶反応することによって接合界面近傍の融点が降下し、比較的低温でもセラミックス基板及び金属板の界面に溶融アルミニウム層を形成することが可能となり、セラミックス基板と金属板とを接合することができる。すなわち、Al−Si合金等からなるろう材を使用することなく、セラミックス基板と金属板とを接合することができるのである。
また、Cu層の厚さが0.15μm未満であると、セラミックス基板及び金属板の界面に溶融アルミニウム層を十分に形成することができないおそれがある。また、Cu層の厚さが3μmを超えると、CuとAlとの反応物が接合界面に過剰に発生し、金属板の接合界面近傍が必要以上に強化されることになり、熱サイクル負荷時にAlNからなるセラミックス基板に割れが発生するおそれがある。このため、AlNからなるセラミックス基板の場合、Cu層の厚さは、0.15μm以上3μm以下とすることが好ましい。
【0017】
また、本発明のパワーモジュール用基板の製造方法は、Siからなるセラミックス基板の表面に純アルミニウムからなる金属板が接合されたパワーモジュール用基板を製造する方法であって、前記セラミックス基板と前記金属板とを、厚さ0.15μm以上3μm以下のCu層を介して積層する積層工程と、積層された前記セラミックス基板及び前記金属板を積層方向に加圧するとともに加熱し、前記セラミックス基板及び前記金属板の界面に溶融アルミニウム層を形成する溶融工程と、冷却によって前記溶融アルミニウム層を凝固させる凝固工程と、を有し、前記溶融工程及び前記凝固工程において、前記セラミックス基板と前記金属板との接合界面に、Cu濃度が前記金属板中のCu濃度の2倍以上とされたCu高濃度部を形成することを特徴としている。
【0018】
この構成のパワーモジュール用基板の製造方法によれば、セラミックス基板及び金属板を、Cu層を介して積層し、積層された前記セラミックス基板及び前記金属板を積層方向に加圧するとともに加熱するので、Cu層のCuと金属板のAlとが共晶反応することによって接合界面近傍の融点が降下し、比較的低温でもセラミックス基板及び金属板の界面に溶融アルミニウム層を形成することが可能となり、セラミックス基板と金属板とを接合することができる。すなわち、Al−Si合金等からなるろう材を使用することなく、セラミックス基板と金属板とを接合することができるのである。
また、Cu層の厚さが0.15μm未満であると、セラミックス基板及び金属板の界面に溶融アルミニウム層を十分に形成することができないおそれがある。また、Cu層の厚さが3μmを超えると、CuとAlとの反応物が接合界面に過剰に発生し、接合を阻害するおそれがある。このため、Siからなるセラミックス基板の場合、Cu層の厚さは、0.15μm以上3μm以下とすることが好ましい。
【0019】
前記Cu層が、積層工程において前記セラミックス基板及び前記金属板の間に銅箔を介装することによって形成されていることが好ましい。
あるいは、前記Cu層が、前記積層工程の前に、前記セラミックス基板及び前記金属板の接合面のうち少なくとも一方にCuを固着させるCu固着工程によって形成されていることが好ましい。
これらの手段によれば、セラミックス基板と金属板との間に、所望の厚さのCu層を形成することが可能となり、確実にセラミックス基板と金属板とを接合することができる。
【0020】
ここで、前記Cu固着工程では、CuとともにAlを固着させる構成とすることが好ましい。
この場合、CuとともにAlを固着させているので、形成されるCu層がAlを含有することになり、加熱工程において、このCu層が優先的に溶融して溶融金属領域を確実に形成することが可能となり、セラミックス基板と金属板とを強固に接合することができる。なお、CuとともにAlを固着させるには、CuとAlとを同時に蒸着してもよいし、CuとAlの合金をターゲットとしてスパッタリングしてもよい。
【0021】
さらに、前記Cu固着工程は、蒸着、CVD、スパッタリング、めっき又はCuペーストの塗布のいずれかから選択される手段により、前記セラミックス基板及び前記金属板の接合面のうち少なくとも一方にCuを固着させることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、金属板とセラミックス基板とが確実に接合され、熱サイクル信頼性の高いパワーモジュール用基板、このパワーモジュール用基板を備えたパワーモジュール及びこのパワーモジュール用基板の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板を用いたパワーモジュールの概略説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板の回路層及び金属層(金属板)とセラミック基板との接合界面の模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板の製造方法を示す説明図である。
【図4】図3における金属板とセラミックス基板との接合界面近傍を示す説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態であるパワーモジュール用基板を用いたパワーモジュールの概略説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態であるパワーモジュール用基板の回路層及び金属層(金属板)とセラミック基板との接合界面の模式図である。
【図7】本発明の第2の実施形態であるパワーモジュール用基板の製造方法を示す説明図である。
【図8】図7における金属板とセラミックス基板との接合界面近傍を示す説明図である。
【図9】実施例1におけるセラミックス基板の割れの評価結果を示す図である。
【図10】実施例1における接合信頼性の評価結果を示す図である。
【図11】実施例2におけるセラミックス基板の割れの評価結果を示す図である。
【図12】実施例2における接合信頼性の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。図1に本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板10及びパワーモジュール1を示す。
このパワーモジュール1は、回路層12が配設されたパワーモジュール用基板10と、回路層12の表面にはんだ層2を介して接合された半導体チップ3と、ヒートシンク4とを備えている。ここで、はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材とされている。なお、本実施形態では、回路層12とはんだ層2との間にNiメッキ層(図示なし)が設けられている。
【0025】
パワーモジュール用基板10は、セラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面(図1において上面)に配設された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面(図1において下面)に配設された金属層13とを備えている。
セラミックス基板11は、回路層12と金属層13との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いAlN(窒化アルミ)で構成されている。また、セラミックス基板11の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
【0026】
回路層12は、セラミックス基板11の一方の面に導電性を有する金属板22が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、回路層12は、純度が99.99%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなる金属板22がセラミックス基板11に接合されることにより形成されている。
【0027】
金属層13は、セラミックス基板11の他方の面に金属板23が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、金属層13は、回路層12と同様に、純度が99.99%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなる金属板23がセラミックス基板11に接合されることで形成されている。
【0028】
ヒートシンク4は、前述のパワーモジュール用基板10を冷却するためのものであり、パワーモジュール用基板10と接合される天板部5と冷却媒体(例えば冷却水)を流通するための流路6とを備えている。ヒートシンク4(天板部5)は、熱伝導性が良好な材質で構成されることが望ましく、本実施形態においては、A6063(アルミニウム合金)で構成されている。
また、本実施形態においては、ヒートシンク4の天板部5と金属層13との間には、アルミニウム又はアルミニウム合金若しくはアルミニウムを含む複合材(例えばAlSiC等)からなる緩衝層15が設けられている。
【0029】
そして、セラミックス基板11と回路層12(金属板22)及び金属層13(金属板23)との接合界面30を透過電子顕微鏡において観察した場合には、図2に示すように、接合界面30に、Cuが濃縮したCu高濃度部32が形成されている。このCu高濃度部32においては、Cu濃度が、回路層12(金属板22)及び金属層13(金属板23)中のCu濃度よりも高くなっており、具体的には、接合界面30におけるCu濃度が、回路層12及び金属層13中のCu濃度の2倍以上とされている。ここで、本実施形態では、Cu高濃度部32の厚さHは4nm以下とされている。
さらに、このCu高濃度部32においては、酸素濃度が、回路層12及び金属層13(中の酸素濃度よりも高く設定されている。
【0030】
なお、ここで観察する接合界面30は、図2に示すように、回路層12(金属板22)及び金属層13(金属板23)の格子像の界面側端部とセラミックス基板11の格子像の界面側端部との間の中央を基準面Sとする。
また、回路層12(金属板22)及び金属層13(金属板23)中のCu濃度及び酸素濃度とは、回路層12(金属板22)及び金属層13(金属板23)のうち接合界面30から一定距離(本実施形態では、5nm)離れた部分におけるCu濃度及び酸素濃度である。
【0031】
また、この接合界面30をエネルギー分散型X線分析法(EDS)で分析した際のAl、Cu、O、Nの質量比が、Al:Cu:O:N=50〜90wt%:1〜10wt%:2〜20wt%:25wt%以下の範囲内に設定されている。なお、EDSによる分析を行う際のスポット径は1〜4nmとされており、接合界面30を複数点(例えば、本実施形態では100点)で測定し、その平均値を算出している。また、回路層12及び金属層13を構成する金属板22、23の結晶粒界とセラミックス基板11との接合界面30は測定対象とせず、回路層12及び金属層13を構成する金属板22、23の結晶粒とセラミックス基板11との接合界面30のみを測定対象としている。
【0032】
このようなパワーモジュール用基板10は、以下のようにして製造される。図3に示すように、AlNからなるセラミックス基板11の一方の面に回路層12となる金属板22(4Nアルミニウムの圧延板)が、厚さ0.15μm以上3μm以下(本実施形態では3μm)の銅箔24を介して積層され、セラミックス基板11の他方の面に金属層13となる金属板23(4Nアルミニウムの圧延板)が厚さ0.15μm以上3μm以下(本実施形態では3μm)の銅箔25を介して積層される。
【0033】
このようにして形成された積層体20をその積層方向に加圧(圧力1〜5kg/cm)した状態で真空炉内に装入して加熱する(加圧・加熱工程)。ここで真空炉内の真空度は、10−3Pa〜10−5Paとされ、加熱温度は610℃〜650℃とされている。この加圧・加熱工程によって、図4に示すように、回路層12及び金属層13となる金属板22、23の表層と銅箔24、25とが溶融し、セラミックス基板11の表面に溶融アルミニウム層26、27が形成される。
【0034】
次に、積層体20を冷却することによって溶融アルミニウム層26、27を凝固させる(凝固工程)。この加圧・加熱工程と凝固工程によって、接合界面30に、Cu濃度及び酸素濃度が、回路層12及び金属層13を構成する金属板22、23中のCu濃度及び酸素濃度よりも高くされたCu高濃度部32が生成される。
このようにして本実施形態であるパワーモジュール用基板10が製造される。
【0035】
以上のような構成とされた本実施形態であるパワーモジュール用基板10及び付パワーモジュール1においては、回路層12及び金属層13とセラミックス基板11との接合界面30に、Cu濃度が、回路層12及び金属層13中のCu濃度の2倍以上とされたCu高濃度部32が形成されており、さらにCu高濃度部32において、酸素濃度が、回路層12及び金属層13中の酸素濃度よりも高く設定されているので、接合界面30に酸素原子とCu原子が介在することにより、AlNからなるセラミックス基板11と回路層12、金属層13との接合強度の向上を図ることが可能となる。
【0036】
さらに、本実施形態では、接合界面30をエネルギー分散型X線分析法で分析したAl、Cu、O、Nの質量比が、Al:Cu:O:N=50〜90wt%:1〜10wt%:2〜20wt%:25wt%以下とされているので、接合界面30に、AlとCuとの反応物が過剰に生成して接合を阻害することを防止できるとともに、Cu原子による接合強度の向上効果を充分に奏功せしめることができる。また、接合界面30に酸素濃度の高い部分が厚く存在することが防止され、熱サイクルを負荷した際のクラックの発生を抑制することができる。
【0037】
また、AlNからなるセラミックス基板11の一方の面に回路層12となる金属板22、厚さ0.15μm以上3μm以下(本実施形態では3μm)の銅箔24を介して積層するとともに、セラミックス基板11の他方の面に金属層13となる金属板23(4Nアルミニウムの圧延板)が厚さ0.15μm以上3μm以下(本実施形態では3μm)の銅箔25を介して積層し、この積層体を加圧・加熱しているので、銅箔24、25のCuと金属板22、23のAlとが共晶反応することにより、銅箔24、25部分と金属板22、23の表層部分の融点が低下することになり、比較的低温(610℃〜650℃)でもセラミックス基板11及び金属板22、23の界面に溶融アルミニウム層26、27を形成することが可能となり、セラミックス基板11と金属板22、23とを接合することができる。
【0038】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図5に本発明の第2の実施形態であるパワーモジュール用基板110及びパワーモジュール101を示す。なお、第1の実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0039】
パワーモジュール用基板110は、セラミックス基板111と、このセラミックス基板111の一方の面(図5において上面)に配設された回路層112と、セラミックス基板111の他方の面(図5において下面)に配設された金属層113とを備えている。
セラミックス基板111は、回路層112と金属層113との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いSi(窒化ケイ素)で構成されている。また、セラミックス基板111の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.32mmに設定されている。
【0040】
回路層112は、セラミックス基板111の一方の面に導電性を有する金属板122が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、回路層112は、純度が99.99%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなる金属板22がセラミックス基板111に接合されることにより形成されている。
【0041】
金属層113は、セラミックス基板111の他方の面に金属板123が接合されることにより形成されている。本実施形態においては、金属層113は、回路層112と同様に、純度が99.99%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなる金属板123がセラミックス基板111に接合されることで形成されている。
【0042】
そして、セラミックス基板111と回路層112(金属板122)及び金属層113(金属板123)との接合界面130を透過電子顕微鏡において観察した場合には、図6に示すように、接合界面130に、Cuが濃縮したCu高濃度部132が形成されている。このCu高濃度部132においては、Cu濃度が、回路層112(金属板122)及び金属層113(金属板123)中のCu濃度よりも高くなっており、具体的には、接合界面130におけるCu濃度が、回路層112及び金属層113中のCu濃度の2倍以上とされている。ここで、本実施形態では、Cu高濃度部132の厚さHは4nm以下とされている。
さらに、このCu高濃度部132においては、酸素濃度が、回路層112及び金属層113中の酸素濃度よりも高く設定されている。
【0043】
なお、ここで観察する接合界面130は、図6に示すように、回路層112(金属板122)及び金属層113(金属板123)の格子像の界面側端部とセラミックス基板111の格子像の界面側端部との間の中央を基準面Sとする。
また、回路層112及び金属層113中のCu濃度及び酸素濃度とは、回路層112及び金属層13のうち接合界面130から一定距離(本実施形態では、5nm)離れた部分におけるCu濃度及び酸素濃度である。
【0044】
また、この接合界面130をエネルギー分散型X線分析法(EDS)で分析した際のAl、Si、Cu、O、Nの質量比が、Al:Si:Cu:O:N=15〜45wt%:15〜45wt%:1〜10wt%:2〜20wt%:25wt%以下の範囲内に設定されている。なお、EDSによる分析を行う際のスポット径は1〜4nmとされており、接合界面130を複数点(例えば、本実施形態では100点)で測定し、その平均値を算出している。また、回路層112及び金属層113を構成する金属板122、123の結晶粒界とセラミックス基板111との接合界面130は測定対象とせず、回路層112及び金属層113を構成する金属板122、123の結晶粒とセラミックス基板111との接合界面130のみを測定対象としている。
【0045】
このようなパワーモジュール用基板110は、以下のようにして製造される。図7に示すように、Siからなるセラミックス基板111の両面に、真空蒸着によってCu固着し、厚さ0.15μm〜3μmのCu固着層124、125を形成する。(Cu固着工程)。Cu固着層124、125が形成されたセラミックス基板111の一方の面に回路層112となる金属板122(4Nアルミニウムの圧延板)が積層され、セラミックス基板111の他方の面に金属層113となる金属板123(4Nアルミニウムの圧延板)が積層される(積層工程)。
【0046】
このようにして形成された積層体120をその積層方向に加圧(圧力1〜5kg/cm)した状態で真空炉内に装入して加熱する(加圧・加熱工程)。ここで真空炉内の真空度は、10−3Pa〜10−5Paとされ、加熱温度は610℃〜650℃とされている。この加圧・加熱工程によって、図8に示すように、回路層112及び金属層113となる金属板122、123の表層及びCu固着層124、125が溶融し、セラミックス基板111の表面に溶融アルミニウム層126、127が形成される。
【0047】
次に、積層体120を冷却することによって溶融アルミニウム層126、127を凝固させる(凝固工程)。この加圧・加熱工程と凝固工程によって、接合界面130に、Cu濃度及び酸素濃度が、回路層112及び金属層113を構成する金属板122、123中のCu濃度及び酸素濃度よりも高くされたCu高濃度部132が生成される。
このようにして本実施形態であるパワーモジュール用基板110が製造される。
【0048】
以上のような構成とされた本実施形態であるパワーモジュール用基板110においては、回路層112及び金属層113とセラミックス基板111との接合界面130に、Cu濃度が、回路層112及び金属層113中のCu濃度の2倍以上とされたCu高濃度部132が形成されており、さらにCu高濃度部132において、酸素濃度が、回路層112及び金属層113中の酸素濃度よりも高く設定されているので、接合界面130に酸素原子とCu原子が介在することにより、Siからなるセラミックス基板111と回路層112、金属層113との接合強度の向上を図ることが可能となる。
【0049】
さらに、本実施形態では、接合界面130をエネルギー分散型X線分析法(EDS)で分析した際のAl、Si、Cu、O、Nの質量比が、Al:Si:Cu:O:N=15〜45wt%:15〜45wt%:1〜10wt%:2〜20wt%:25wt%以下の範囲内に設定されているので、接合界面130に、AlとCuとの反応物が過剰に生成して接合を阻害することを防止できるとともに、Cu原子による接合強度の向上効果を充分に奏功せしめることができる。また、接合界面130に酸素濃度の高い部分が厚く存在することが防止され、熱サイクルを負荷した際のクラックの発生を抑制することができる。
【0050】
また、Siからなるセラミックス基板111の両面に、真空蒸着によってCuを固着し、Cu固着層124、125が形成されたセラミックス基板111の一方の面に回路層112となる金属板122(4Nアルミニウムの圧延板)を積層し、セラミックス基板111の他方の面に金属層113となる金属板123(4Nアルミニウムの圧延板)を積層し、この積層体を加圧・加熱しているので、Cu固着層124、125のCuと金属板122、123のAlとが共晶反応することによって金属板122、123の表層部分の融点が低下し、比較的低温(610℃〜650℃)でもセラミックス基板111及び金属板122、123の界面に溶融アルミニウム層126、127を形成することが可能となり、セラミックス基板111と金属板122、123とを接合することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、回路層及び金属層を構成する金属板を純度99.99%の純アルミニウムの圧延板としたものとして説明したが、これに限定されることはなく、純度99%のアルミニウム(2Nアルミニウム)であってもよい。
【0052】
また、第2の実施形態において、Cuの固着をセラミックス基板の両面に行うものとして説明したが、これに限定されることはなく、金属板の接合面にCuを固着してもよいし、金属板及びセラミックス基板と両方にCuを固着させてもよい。
さらに、真空蒸着によってCuを固着するものとして説明したが、これに限定されることはなく、スパッタリング、CVD、めっき、銅ペーストの塗布等の手段によって、Cuを固着させてもよい。
【0053】
また、セラミックス基板と金属板との接合を、真空加熱炉を用いて行うものとして説明したが、これに限定されることはなく、N雰囲気、Ar雰囲気及びHe雰囲気等でセラミックス基板と金属板との接合を行ってもよい。
【0054】
また、ヒートシンクの天板部と金属層との間に、アルミニウム又はアルミニウム合金若しくはアルミニウムを含む複合材(例えばAlSiC等)からなる緩衝層を設けたものとして説明したが、この緩衝層がなくてもよい。
さらに、ヒートシンクをアルミニウムで構成したものとして説明したが、アルミニウム合金、銅や銅合金で構成されていてもよい。さらに、ヒートシンクとして冷却媒体の流路を有するもので説明したが、ヒートシンクの構造に特に限定はない。
【実施例1】
【0055】
本発明の有効性を確認するために行った確認実験について説明する。
40mm角で厚さ0.635mmのAlNからなるセラミックス基板の両面に、真空蒸着によってCuを固着させ、このセラミックス基板の両面に、厚さ0.6mmの4Nアルミニウムからなる金属板をそれぞれ積層し、積層方向に圧力1〜5kg/cmで加圧した状態で真空炉(真空度10−3Pa〜10−5Pa)で加熱し、セラミックス基板と回路層及び金属層とを備えたパワーモジュール用基板を製出した。
同様に、厚さ0.6mmの4Nアルミニウムからなる金属板の片面に、真空蒸着によってCuを固着させ、この金属板を40mm角で厚さ0.635mmのAlNからなるセラミックス基板の両面に、両方の金属板の蒸着側をAlN側になるようにそれぞれ積層し、積層方向に圧力1〜5kg/cmで加圧した状態で真空炉(真空度10−3Pa〜10−5Pa)で加熱し、セラミックス基板と回路層及び金属層とを備えたパワーモジュール用基板を製出した。
ここで、真空蒸着によるCuの固着量(Cu厚さ)を、0.1μm、0.5μm、1.0μm、2.0μm、3.0μmの5水準とし、加熱温度を610℃、630℃、650℃の3水準とし、計30種類のパワーモジュール用基板を成形した。
【0056】
このようにして成形されたパワーモジュール用基板の金属層側に、4Nアルミニウムからなり、厚さ0.9mmの緩衝層を介して、ヒートシンクの天板に相当する50mm×60mm、厚さ5mmのアルミニウム板(A6063)を接合した。
この試験片を、−40℃−105℃の熱サイクルを3000回負荷し、セラミックス基板の割れの有無を確認した。なお、同一水準のパワーモジュール用基板をそれぞれ2個ずつ試験に供した。この結果を図9に示す。なお、図9において、全ての試験片でセラミックス基板の割れが発生しなかったものを○、セラミックス基板の割れが一つでも認められたものを△、全ての試験片でセラミックス基板の割れが発生したものを×とした。
【0057】
また、前述の熱サイクルを3000回数負荷し、その際の接合面積比率を求めた。この結果を図10に示す。なお、図10においては、熱サイクルを3000回負荷後の接合面積比率が85%以上のものを○、熱サイクルを3000回負荷後の接合面積比率が70%以上85%未満のものを△、熱サイクルを3000回負荷後の接合面積比率が70%未満のものを×とした。
なお、接合面積比率は、以下の式で算出した。ここで、初期接合面積とは、接合前における接合すべき面積のこととした。
接合面積比率 = (初期接合面積−剥離面積)/初期接合面積
【0058】
図9に示すように、Cu固着工程において形成されるCu厚さが厚くなると、AlNからなるセラミックス基板の割れが発生しやすい傾向が確認される。また、Cu厚さが2μmの試験片においては、加熱温度が高いほどセラミックスの割れが抑制される傾向が確認される。
一方、図10に示すように、加熱温度が高いほど接合信頼性が向上する傾向が認められる。また、Cu厚さが2μm程度の場合には、加熱温度が低温でも接合信頼性が向上していることが確認される。
これらの試験結果から、AlNからなるセラミックス基板においては、接合時に金属板とセラミックス基板との界面に存在するCu厚さを2.5μm以下とすることが好ましいことが確認された。
【実施例2】
【0059】
40mm角で厚さ0.32mmのSiからなるセラミックス基板の両面に、真空蒸着によってCuを固着させ、このセラミックス基板の両面に、厚さ0.6mmの4Nアルミニウムからなる金属板をそれぞれ積層し、積層方向に圧力1〜5kg/cmで加圧した状態で真空炉(真空度10−3Pa〜10−5Pa)で加熱し、セラミックス基板と回路層及び金属層とを備えたパワーモジュール用基板を製出した。
同様に、厚さ0.6mmの4Nアルミニウムからなる金属板の片面に、真空蒸着によってCuを固着させ、この金属板を40mm角で厚さ0.32mmのSiからなるセラミックス基板の両面に、両方の金属板の蒸着側をSi側になるようにそれぞれ積層し、積層方向に圧力1〜5kg/cmで加圧した状態で真空炉(真空度10−3Pa〜10−5Pa)で加熱し、セラミックス基板と回路層及び金属層とを備えたパワーモジュール用基板を製出した。
ここで、真空蒸着によるCuの固着量(Cu厚さ)を、0.1μm、0.5μm、1.0μm、2.0μm、3.0μmの5水準とし、加熱温度を610℃、630℃、650℃の3水準とし、計30種類のパワーモジュール用基板を成形した。
【0060】
このようにして成形されたパワーモジュール用基板の金属層側に、4Nアルミニウムからなり、厚さ0.9mmの緩衝層を介して、ヒートシンクの天板に相当する50mm×60mm、厚さ5mmのアルミニウム板(A6063)を接合した。
この試験片を、−40℃−105℃の熱サイクルを3000回負荷し、セラミックス基板の割れの有無を確認した。なお、同一水準のパワーモジュール用基板をそれぞれ 2個ずつ試験に供した。この結果を図11に示す。なお、図11において、全ての試験片でセラミックス基板の割れが発生しなかったものを○、セラミックス基板の割れが一つでも認められたものを△、全ての試験片でセラミックス基板の割れが発生したものを×とした。
【0061】
また、前述の熱サイクルを3000回数負荷し、その際の接合面積比率を求めた。この結果を図12に示す。なお、図12においては、熱サイクルを3000回負荷後の接合面積比率が85%以上のものを○、熱サイクルを3000回負荷後の接合面積比率が70%以上85%未満のものを△、熱サイクルを3000回負荷後の接合面積比率が70%未満のものを×とした。
なお、接合面積比率は、以下の式で算出した。ここで、初期接合面積とは、接合前における接合すべき面積のこととした。
接合面積比率 = (初期接合面積−剥離面積)/初期接合面積
【0062】
図11に示すように、Siからなるセラミックス基板においては、本実験条件下では、セラミックス基板の割れは確認されなかった。
また、図12に示すように、加熱温度が高いほど接合信頼性が向上する傾向が認められる。また、Cu厚さが2μm程度の場合には、加熱温度が低温でも接合信頼性が向上していることが確認される。
これらの試験結果から、Siからなるセラミックス基板においては、接合時に金属板とセラミックス基板との界面に存在するCu厚さを0.15μm以上3μm以下とすることが好ましいことが確認された。
【実施例3】
【0063】
次に、図10、図12において、熱サイクルを3000回負荷後の接合面積比率が70%未満であった試験片(Cu厚さ0.1μm、接合温度650℃)を比較例1−4とし、熱サイクルを3000回負荷後の接合面積比率が85%以上であった試験片(Cu厚さ1.0μm、接合温度650℃)を本発明例1−4とし、これら比較例1−4及び本発明例1−4について、熱サイクル負荷前の状態で接合界面を透過電子顕微鏡(日本電子製:JEM−2010F)を用いて観察した。この接合界面のCu濃度(Cu質量比)を、エネルギー分散型X線分析法(EDS)で分析した。また、金属板のうち接合界面から5nm離間した位置のCu濃度(Cu質量比)を、エネルギー分散型X線分析法(EDS)で分析した。なお、エネルギー分散型X線分析法による分析値は、日本電子製の電子顕微鏡JEM−2010Fに搭載したサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のエネルギー分散型蛍光X線元素分析装置NORAN System7を用いて加速電圧200kVで行った。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
比較例1−4においては、接合界面におけるCu濃度(Cu質量比)が、金属板中のCu濃度(Cu質量比)の2倍未満とされており、Cu原子による接合強度の向上が不十分であることが確認された。
一方、本発明例1−4においては、接合界面におけるCu濃度(Cu質量比)が、金属板中のCu濃度(Cu質量比)の2倍以上とされており、このCu原子によって接合強度の向上が図られていることが確認された。
【符号の説明】
【0066】
1 パワーモジュール
3 半導体チップ(電子部品)
10、110 パワーモジュール用基板
11、111 セラミックス基板
12、112 回路層
13、113 金属層
22、23、122、123 金属板
24、25 銅箔(Cu層)
26、27 溶融アルミニウム層
30、130 接合界面
32、132 Cu高濃度部
124、125 Cu固着層(Cu層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlN又はSiからなるセラミックス基板の表面に純アルミニウムからなる金属板が接合されたパワーモジュール用基板であって、
前記金属板と前記セラミックス基板との接合界面には、Cu濃度が前記金属板中のCu濃度の2倍以上とされたCu高濃度部が形成されていることを特徴とするパワーモジュール用基板。
【請求項2】
前記Cu高濃度部においては、酸素濃度が、前記金属板中及び前記セラミックス基板中の酸素濃度よりも高くされていることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール用基板。
【請求項3】
前記セラミックス基板がAlNで構成されており、
前記Cu高濃度部を含む前記接合界面をエネルギー分散型X線分析法で分析したAl、Cu、O、Nの質量比が、Al:Cu:O:N=50〜90wt%:1〜10wt%:
2〜20wt%:25wt%以下とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパワーモジュール用基板。
【請求項4】
前記セラミックス基板がSiで構成されており、
前記Cu高濃度部を含む前記接合界面をエネルギー分散型X線分析法で分析したAl、Si、Cu、O、Nの質量比が、Al:Si:Cu:O:N=15〜45wt%:15〜45wt%:1〜10wt%:2〜20wt%:25wt%以下とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパワーモジュール用基板。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板と、このパワーモジュール用基板上に搭載される電子部品と、を備えたことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項6】
AlNからなるセラミックス基板の表面に純アルミニウムからなる金属板が接合されたパワーモジュール用基板を製造する方法であって、
前記セラミックス基板と前記金属板とを、厚さ0.15μm以上3μm以下のCu層を介して積層する積層工程と、積層された前記セラミックス基板及び前記金属板を積層方向に加圧するとともに加熱し、前記セラミックス基板及び前記金属板の界面に溶融アルミニウム層を形成する溶融工程と、冷却によって前記溶融アルミニウム層を凝固させる凝固工程と、を有し、
前記溶融工程及び前記凝固工程において、前記セラミックス基板と前記金属板との接合界面に、Cu濃度が前記金属板中のCu濃度の2倍以上とされたCu高濃度部を形成することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項7】
Siからなるセラミックス基板の表面に純アルミニウムからなる金属板が接合されたパワーモジュール用基板を製造する方法であって、
前記セラミックス基板と前記金属板とを、厚さ0.15μm以上3μm以下のCu層を介して積層する積層工程と、積層された前記セラミックス基板及び前記金属板を積層方向に加圧するとともに加熱し、前記セラミックス基板及び前記金属板の界面に溶融アルミニウム層を形成する溶融工程と、冷却によって前記溶融アルミニウム層を凝固させる凝固工程と、を有し、
前記溶融工程及び前記凝固工程において、前記セラミックス基板と前記金属板との接合界面に、Cu濃度が前記金属板中のCu濃度の2倍以上とされたCu高濃度部を形成することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項8】
前記Cu層が、前記積層工程において前記セラミックス基板及び前記金属板の間に銅箔を介装することによって形成されていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項9】
前記Cu層が、前記積層工程の前に、前記セラミックス基板及び前記金属板の接合面のうち少なくとも一方にCuを固着させるCu固着工程によって形成されていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項10】
前記Cu固着工程では、CuとともにAlを固着させることを特徴とする請求項9に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項11】
前記Cu固着工程は、蒸着、CVD、スパッタリング、めっき又はCuペーストの塗布のいずれかから選択される手段により、前記セラミックス基板及び前記金属板の接合面のうち少なくとも一方にCuを固着させることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−66384(P2011−66384A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55962(P2010−55962)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】