説明

パンタグラフ自動昇降装置

【課題】蓄電池搭載電車において、パンタグラフ、架線、及び道路設備建築物を破損してしまうこと及び充電が未了となることを防ぐ。
【解決手段】本発明に係るパンタグラフ自動昇降装置は、パンタグラフを上昇及び下降させるパンタグラフ駆動手段と、車両の位置を検出する位置検出手段と、パンタグラフの昇降状態を検出する昇降状態検出手段と、車両の停止を検出する停止検出手段と、前記パンタグラフ駆動手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記位置検出手段により車両が所定の位置にあることを検出され、前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの下降が検出され、前記停止検出手段により車両の停止が検出されたときに、パンタグラフを上昇するように前記パンタグラフ駆動手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンタグラフを介して給電されて電力を充電して、架線のない区間を走行可能な蓄電池搭載電車におけるパンタグラフの自動昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電気車両は、パンタグラフを介して、空中に敷設された架線から電力を受け、その電力でモータを駆動し、走行する。
【0003】
近年、架線がない区間(架線レス区間)を走行可能な電気車両(蓄電池搭載電車)も開発されている(特許文献1参照)。そのような蓄電池搭載電車は、内部にバッテリを備え、バッテリに蓄えた電力でモータを駆動し、走行する。バッテリは、架線レス区間に設けられた所定の充電所(例えば、駅)で停車中に充電される。その際、パンタグラフを上昇させ、架線に接触させて架線から電力を受ける。
【0004】
一方、架線レス区間を走行中は、パンタグラフが周囲の建物等と接触して破損しないように、パンタグラフを下げておく必要がある。つまり、架線レス区間を走行中はパンタグラフを下降させておき、充電所で停車中はパンタグラフを上昇させておく必要がある。すなわち、蓄電池搭載電車の運転手は、車両が充電所で停車中にはパンタグラフを上昇させ、出発時には、パンタグラフを下降させるという作業を行う必要がある。
【0005】
車両の運行の効率を高くするためには、停車時間を短くする必要がある。このため、短時間で充電を行う必要がある。つまり、蓄電池搭載電車の充電所(駅)への到着とともに迅速にパンタグラフを上昇させる必要がある。特に、電気車両の運転手は、乗客の乗降の監視、ドアの開閉作業等、多忙であるため、パンタグラフの昇降作業は非常に負担となる。例えば、蓄電池搭載電車の運転手によるパンタグラフの下降作業が遅れ、充電終了の時刻が遅れると、運行スケジュールに影響を与える。
【0006】
また、蓄電池搭載電車が、架線レス区間と架線区間(架線が設けられている区間)の双方を走行する場合もある。この場合、架線区間を走行中は架線から電力を受けるためパンタグラフを上昇させ、架線レス区間を走行中は、周辺の建築物等との干渉を防止するためパンタグラフを下降させておく必要がある。
【0007】
前述の問題は、架線レス区間と架線区間の双方を走行する蓄電池搭載電車においても、架線レス区間と架線区間の切り替わり時において発生し得る。
【0008】
以上の問題を解決するため、特許文献1では、線路に沿って設けられた電柱に設置される応答器に位置情報が記憶されており、これを読み取ることで架線有区間と架線無区間を正確に把握した上で電車のパンタグラフの上げ下げを行う、架線・バッテリハイブリッド車両のパンタグラフ誤作動防止装置が記載されている。また、特許文献2には、架線・バッテリハイブリッド型車両が非電化区間に進入したときに、パンタグラフを上げていると走行できなくすることで、パンタグラフを保護する鉄道車両パンタグラフ保護方法及び装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−295640公報
【特許文献2】特開2003−319509公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載のパンタグラフ誤作動防止装置では、線路に沿う電柱が設けられていなければ新たに線路沿いに電柱を設けた上で応答器を設置しなければならない。つまり、新たに膨大な設備を設けなければ、定時運行や安全運行を実現することがそもそも不可能であることが想定され得る。また、特許文献2に記載の鉄道車両パンタグラフ保護方法及び装置では、パンタグラフと建築物等との干渉が予想されるような状況が発生すれば鉄道車両を停止させることに主眼が置かれており、短時間での充電完了や鉄道の定時運行は発明の目的とされていない。鉄道車両の臨時の停止は、車両の運行スケジュールの狂いに繋がることが多い。更に、特許文献2に記載の鉄道車両パンタグラフ保護方法及び装置では、パンタグラフの実際の昇降は運転手の手作業により行われることが意図されている。つまり、特許文献2に記載の発明は運転手の作業の軽減には繋がらない。
【0011】
本発明は、パンタグラフ、架線、及び歩道橋等の道路設備建築物を破損してしまうことを防止して安全性を確保する蓄電池搭載電車を提供することを目的とする。本発明は更に、短時間で適切に充電を完了して定時運行性を保持する蓄電池搭載電車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の目的を達成するためになされたものである。本発明に係るパンタグラフ自動昇降装置は、
パンタグラフを上昇及び下降させるパンタグラフ駆動手段と、
車両の位置を検出する位置検出手段と、
パンタグラフの昇降状態を検出する昇降状態検出手段と、
車両の停止を検出する停止検出手段と、
前記パンタグラフ駆動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記位置検出手段により車両が所定の位置にあることを検出され、前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの下降が検出され、前記停止検出手段により車両の停止が検出されたときに、パンタグラフを上昇するように前記パンタグラフ駆動手段を制御する。
【0013】
また、本発明に係るパンタグラフ自動昇降装置は、
パンタグラフを上昇及び下降させるパンタグラフ駆動手段と、
車両の位置を検出する位置検出手段と、
パンタグラフの昇降状態を検出する昇降状態検出手段と、
車両の停止を検出する停止検出手段と、
前記パンタグラフ駆動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記位置検出手段により車両が所定の位置にあることを検出され、前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの上昇が検出され、前記停止検出手段により車両の停止が検出されたときに、パンタグラフを下降するように前記パンタグラフ駆動手段を制御する。
【0014】
更に、本発明に係るパンタグラフ自動昇降装置は、
パンタグラフを上昇及び下降させるパンタグラフ駆動手段と、
車両の第1の位置を検出する第1の位置検出手段と、
車両の第2の位置を検出する第2の位置検出手段と、
パンタグラフの昇降状態を検出する昇降状態検出手段と、
車両の停止を検出する停止検出手段と、
車両の扉の全てが閉状態であることを検知する全扉閉状態検知手段と、
充電が停止状態であることを検知する充電停止状態検知手段と、
前記パンタグラフ駆動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記第1の位置検出手段により車両が所定の第1の位置にあることを検出され、前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの下降が検出され、前記停止検出手段により車両の停止が検出されたときに、パンタグラフを上昇するように前記パンタグラフ駆動手段を制御し、
及び、
前記制御手段は、
前記第2の位置検出手段により車両が所定の第2の位置にあることを検出され、前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの上昇が検出され、前記停止検出手段により車両の停止が検出され、前記全扉閉状態検知手段により車両の扉の全てが閉状態であることが検知され、前記充電停止状態検知手段により充電が停止状態であることが検知されたときに、パンタグラフを下降するように前記パンタグラフ駆動手段を制御する。
【0015】
更に、本発明に係るパンタグラフ自動昇降装置は、
パンタグラフを上昇及び下降させるパンタグラフ駆動手段と、
パンタグラフの昇降状態を検出する昇降状態検出手段と、
車両の速度を検出する速度検出手段と、
架線電圧を計測する架線電圧計測手段と、
前記パンタグラフ駆動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの上昇が検出され、前記速度検出手段により所定速度より大きい車両の速度が検出され、前記架線電圧計測手段により架線電圧がゼロであることが計測されたときに、パンタグラフを下降するように前記パンタグラフ駆動手段を制御する。
【0016】
更に、本発明に係るパンタグラフ状態警告装置は、
警告通知手段と、
車両の位置を検出する位置検出手段と、
パンタグラフの昇降状態を検出する昇降状態検出手段と、
前記警告通知手段を制御する第2の制御手段とを備え、
前記第2の制御手段は、
前記位置検出手段により車両が所定の位置にあることを検出され、前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの上昇が検出されたときに、警告を発するように前記警告通知手段を制御する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パンタグラフを下降させなければならない架線レス区間と、パンタグラフを上昇させなければならない架線区間又は充電所との切り替わりにおいて、自動でパンタグラフの昇降がなされるため、パンタグラフの状態を確実に最適な状態に制御することができる。
【0018】
よって、蓄電池搭載電車がパンタグラフ、架線、及び歩道橋等の道路設備建築物を破損してしまうことを防止して安全性を高めることができる。更に、蓄電池搭載電車が短時間で適切に充電を完了するので定時運行性を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る蓄電池搭載電車におけるパンタグラフの自動動作及び状態確認のための機構の概略のブロック図である。
【図2】車上子の搭載位置を示す概略図である。
【図3】蓄電池搭載電車が、(1)架線区間でパンタグラフを上昇させて走行するとき(パンタグラフ上昇時)の大まかな給電状態、(2)架線レス区間でパンタグラフを下降させて走行するとき(パンタグラフ下降時)の大まかな給電状態、及び(3)充電所で充電するとき(充電時)の大まかな給電状態を、夫々示す模式図である。
【図4】蓄電池搭載電車が走行する架線レス区間と架線区間との、線路及び地上子の配置の実施例の概略平面図である。
【図5】本発明の好適な実施形態に係る蓄電池搭載電車におけるパンタグラフ自動昇降装置の制御部のフローチャートである。
【図6】本発明の好適な実施形態に係る蓄電池搭載電車におけるパンタグラフ自動昇降装置の制御部のフローチャートであり、図5に示される機能とは異なる機能を示すものである。
【図7】充電所でパンタグラフを自動上昇する場合の、蓄電池搭載電車全体の概略の動きを示す図である。
【図8】充電所から出発時にパンタグラフを自動下降する場合の、蓄電池搭載電車全体の概略の動きを示す図である。
【図9】架線レス区間から架線区間への乗り入れ時にパンタグラフを自動上昇する場合の、蓄電池搭載電車全体の概略の動きを示す図である。
【図10】架線区間から架線レス区間への乗り入れ時にパンタグラフを自動下降する場合の、蓄電池搭載電車全体の概略の動きを示す図である。
【図11】パンタグラフが誤って上昇状態にあるときに強制的に自動下降する場合の、蓄電池搭載電車全体の概略の動きを示す図である。
【図12】架線レス区間から架線区間への乗り入れ又は横断の直前にパンタグラフの状態を自動確認する場合の、蓄電池搭載電車全体の概略の動きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態を説明する。
【0021】
[パンタグラフ自動昇降装置の構成]
図1は、本発明の好適な実施形態に係る蓄電池搭載電車4におけるパンタグラフ自動昇降装置の概略ブロック図である。蓄電池搭載電車4におけるパンタグラフ自動昇降装置は、概略、データ処理やコマンド生成発行を行う制御部18、速度計20、トランスポンダ車上装置12、トランスポンダ地上装置8、上昇検知器24、下降検知器22、架線電圧計25、パンタグラフ作動部26、及び警告点灯部27を含む。
【0022】
これらのうち、制御部18、速度計20、トランスポンダ車上装置12、上昇検知器24、下降検知器22、架線電圧計25、パンタグラフ作動部26、及び警告点灯部27は、蓄電池搭載電車4内に設けられる。トランスポンダ地上装置8は、後で詳しく説明するように、地上に設けられる。
【0023】
周知のように、トランスポンダ車上装置12とトランスポンダ地上装置8はトランスポンダ装置を構成する。トランスポンダ車上装置12は、アンテナの役割をする車上子14と、車上送受信器16とを含む。トランスポンダ地上装置8は、やはりアンテナの役割を果たす地上子10を含む。トランスポンダ車上装置12とトランスポンダ地上装置8は、車上子14と地上子10との間で非接触の情報伝達を行う。トランスポンダ車上装置12の車上送受信器16は、車上子14が地上子10からの送信により得た電文を受信して、制御部18に伝える。
【0024】
図2に示すように、車上子14は蓄電池搭載電車4の両端に設けられている。図2における左方向に蓄電池搭載電車4が進行する時には運転手は蓄電池搭載電車4の左端に設けられている運転席にて運転を行うが、このとき図2の左端の車上子14−(2)のみが、トランスポンダ車上装置12の車上子とされる(即ち、右端の車上子14−(1)が利用されない)。逆に、図2における右方向に蓄電池搭載電車4が進行する時には運転手は蓄電池搭載電車4の右端に設けられている運転席にて運転を行うが、このとき図2の右端の車上子14−(1)のみが、トランスポンダ車上装置12の車上子とされる(即ち、左端の車上子14−(2)が利用されない)。つまり、運転手の運転席の略真下に設けられている車上子のみが利用されることになる。車上子14−(1)と車上子14−(2)の夫々は、例えば、地上子10−αと地上子10−βの夫々と、非接触の情報伝達を行う。
【0025】
地上子10は、蓄電池搭載電車4が走行する線路の略中央の、地中の浅い部分若しくは略地表面に設けられる。地上子10と車上子14とは双方向で情報伝達を行うから、地上子10と車上子14との距離が所定値以下になり、電文強度が所定値以上になると、車上送受信器16は、車上子14から送られてくるそのときの地上子10の識別子等のデータを制御部18に送る。制御部18は、車上送受信器18からの地上子10の識別子等のデータにより、最近傍の地上子10を把握し延いては蓄電池搭載電車4自身の地表面上の位置を把握することになる。
【0026】
このようなトランスポンダ車上装置12とトランスポンダ地上装置8を含むトランスポンダ装置は、従来の蓄電池搭載電車に係る設備に通常備わるものである。つまり、本発明を導入するに当たって新たに設置しなければならないものではない。
【0027】
本発明の好適な実施の形態に係るパンタグラフ自動昇降装置では、蓄電池搭載電車の位置を検出する機構として、上述のようにトランスポンダ車上装置12とトランスポンダ地上装置8を含むトランスポンダ装置を利用しているが、蓄電池搭載電車の位置を検出する機構はこれに限定されるものではない。例えば、GPS(グローバル・ポシショニング・システム)などを利用して、蓄電池搭載電車の地表面上の位置を検出してもよい。
【0028】
速度計20は蓄電池搭載電車4の速度を示す計器であり、制御部18に蓄電池搭載電車4の速度データをリアルタイムで伝える。
【0029】
上昇検知器24及び下降検知器22は、パンタグラフの上昇状態及び下降状態を夫々検知して、パンタグラフが上昇状態にあること及びパンタグラフが下降状態にあることを夫々データ化して制御部18に伝える。ここで、パンタグラフの上昇状態とは、蓄電池搭載電車4が架線から給電を受けるためにパンタグラフが上昇して架線に接触した状態である。パンタグラフの下降状態とは、電車関連設備や道路設備建築物の破損を回避するためにパンタグラフが所定の高さ以下に下降した状態である。上昇検知器24と下降検知器22が、夫々、パンタグラフの上昇状態とパンタグラフの下降状態を検知する構成はどのようなものでもよく、例えば、リミッタスイッチを利用する構成であってもよい。
【0030】
架線電圧計25は、パンタグラフからの架線電圧を示す計器であり、制御部18に架線電圧値データをリアルタイムで伝える。
【0031】
なお、制御部18には、蓄電池搭載電車4の扉の全てが閉状態であることを示す全扉閉信号と、搭載蓄電池への充電が停止状態であることを示す充電停止信号が、夫々発生と同時に伝えられるようになっている。
【0032】
パンタグラフ作動部26は、パンタグラフ28を動かす部位であり、例えば、下降状態にあるパンタグラフ28を上昇状態にすること(上昇動作)や、上昇状態にあるパンタグラフ28を下降状態にすること(下降動作)を行う。パンタグラフ作動部26は、制御部18から上昇下降指示信号を受けて、上昇動作や下降動作を行う。制御部18は、後で詳しく説明するように、速度計20、トランスポンダ車上装置12(車上送受信器16)、上昇検知器24、及び下降検知器22等からの入力データ、並びに、全扉閉信号及び充電停止信号等に基づいて演算を行い、適宜、上昇下降指示信号を作成してパンタグラフ作動部26に送信する。
【0033】
警告点灯部27は、電車関連設備や道路設備建築物の破損のおそれが差し迫っていることを点灯により運転手に警告する部位である。警告点灯部27は、制御部18から警告データを受けて、警告の点灯を行う。制御部18は、後で詳しく説明するように、速度計20、トランスポンダ車上装置12(車上送受信器16)、上昇検知器24、架線電圧計25等からの入力データに基づいて演算を行い、適宜、警告データを作成して警告点灯部27に送信する。
【0034】
[蓄電池搭載電車における給電状態とパンタグラフ上昇下降状態]
図3は、蓄電池搭載電車4が、(1)架線区間でパンタグラフ28を上昇させて走行するとき(パンタグラフ上昇時)の大まかな給電状態、(2)架線レス区間でパンタグラフ28を下降させて走行するとき(パンタグラフ下降時)の大まかな給電状態、及び(3)充電所で充電するとき(充電時)の大まかな給電状態を、夫々示す模式図である。なお、(1)パンタグラフ上昇時、及び(2)パンタグラフ下降時においては、更に、(a)ブレーキ時(回生)、(b)加速時、及び(c)停車時に分けて、給電状態を示している。
【0035】
例えば、(1)架線区間でパンタグラフ28を上昇させて走行するときにおいて、(a)ブレーキ時(回生)には、駆動用モータ56からの回生電力が主として蓄電池52に充電されることが、太い矢印により示されている。(b)加速時(力行)には、架線50からパンタグラフ28を介して駆動用モータ56に主として給電されることが太い矢印により示され、架線電圧が低下した場合若しくは蓄電池52が満充電に近い場合には蓄電池52から駆動用モータ56や補機54にバックアップ給電されることが細い矢印により示されている。更に、(c)停車中には、架線50からパンタグラフ28を介して、蓄電池52に充電され補機54に給電されることが太い矢印により示されている。
また、(2)架線レス区間でパンタグラフを下降させて走行するときにおいては、(a)ブレーキ時(回生)には、駆動用モータ56からの回生電力が主として蓄電池52に充電されることが、太い矢印により示されている。(b)加速時(力行)には、蓄電池52のみから駆動用モータ56や補機54に給電されることが矢印により示されている。更に、(c)停車時には、蓄電池52のみから補機54に給電されることが太い矢印により示されている。
(3)充電所での充電時には、架線50からパンタグラフ28を介して、主として蓄電池52に充電されることが太い矢印により示されている。また、補機64にも一部給電されることが細い矢印により示されている。
【0036】
[架線レス区間、架線区間、及び充電所の配置の実施例]
図4は、蓄電池搭載電車4が走行・停止する架線レス区間及び架線区間における、充電所34、線路30e、30w、32n、32s及び地上子10(10−(1)、10−(2)、10−(3e)、10−(3w)、10−(4s)、10−(4n)、10−(6n)、10−(6s)など)の配置の実施例の平面図である。図4の平面の上下方向に「NS線」が配置されていることが示され、主として左右方向に「EW線」が配置されていることが示されている。NS線及びEW線のいずれも複線である。ここで、EW線は架線レス区間で構成され、NS線は架線区間で構成されている。また、架線レス区間のEW線の端部(図4における右端部)に充電所34が配置されているものとする。NS線とEW線とは交差している。
図4に示すNS線及びEW線には、複数の駅、即ち、駅S1、駅S2、駅S3、駅S4、駅S5、及び駅S6が設けられている。図における矢印は、電車の進行方向を示す。EW線(架線レス区間)からNS線(架線区間)に渡るのは、EW線の右部からNS線に渡るとき(即ち、駅S3から駅S5又は駅S6に渡るとき)のみであり、NS線(架線区間)からEW線(架線レス区間)に渡るのは、NS線からEW線の右部に渡るとき(即ち、駅S3から駅S4に渡るとき)のみである。EW線の左部とNS線の間の渡りは無いものとしている。
【0037】
蓄電池搭載電車4は架線レス区間(EW線)を走行後、充電所34に停止して充電することがあるし、充電所34を出発して架線レス区間(EW線)を走行することもある。また、架線レス区間(EW線右部)を走行後架線区間(NS線)に乗り入れることがあるし、架線区間(NS線)走行後架線レス区間(EW線)に乗り入れることもある。更に、架線区間(NS線)を乗り越えて、架線レス区間(EW線右部、EW線左部)から架線レス区間(EW線左部、EW線右部)へ進んでいくこともある。
【0038】
以下、パンタグラフ自動昇降装置の動作のフローチャート(図5)の説明では、図4に示す配置図を実施例の一つとしている。もちろん、本発明に係るパンタグラフ自動昇降装置は、図4以外の配置においても適切に動作するものである。
【0039】
[パンタグラフ自動昇降装置の制御部のフローチャート]
図5は、本発明の好適な実施形態に係る蓄電池搭載電車4におけるパンタグラフ自動昇降装置の制御部18のフローチャートである。
【0040】
制御部18は一般的なプロセッサを含み、速度計20、トランスポンダ車上装置12(車上送受信器16)、上昇検知器24、下降検知器22、及び架線電圧計25からの入力データ、並びに、全扉閉信号及び充電停止信号に基づいて演算を行い、上昇下降指示信号や警告データ等の出力データを作成してパンタグラフ作動部26等に送信する。つまり、図5は、制御部18がその際の出力データを作成するためのフローチャートである。大まかに述べると、制御部18はトランスポンダ車上装置12から位置データが入力されたか否かを常時監視している(S02、S04、S24、S44、S64)。位置データの入力があり且つ所定の条件が満たされれば、パンタグラフ作動部26への上昇下降指示信号を作成する(ケース1、ケース2、ケース3、ケース4)ことになる。以下、制御部18の出力データにより、パンタグラフ28が自動昇降される場合(ケース1、ケース2、ケース3、ケース4)について詳しく説明する。
【0041】
(1)充電所でパンタグラフを上昇する場合(図5のケース1及び図7参照)
まず制御部18が、トランスポンダ車上装置12から位置データの入力データを受け取り(S02・Yes)、それが充電所の停止位置を示すものであれば(S04・Yes)、車両の速度が5km/時以下であるか(S06)、且つ、パンタグラフ28が下降状態であるか(S08)、確認する。車両の速度は、速度計20からの速度データにより把握される。パンタグラフ28が下降状態であるか否かは、下降検知器22からのパンタグラフが下降状態にあることを示すデータにより把握される。上記の条件がいずれも確認されれば、制御部18は上昇指示信号を作成してパンタグラフ作動部26に伝える(S10)。上昇指示信号の伝送後、制御部18における位置データはクリアされる(S12)。
【0042】
なお、車両の速度が「5km/時」である、ということは、車両が略停止状態にある、ということを示す。即ち、本実施形態では、車両の速度が5km/時以下のときに、車両が停止状態にあると判断している。この略停止状態にあることを示す速度は「5km/時以下」に限定されるものではなく、所定の速度以下(例えば、6km/時以下や、4km/時以下)であればよい。
【0043】
図4の平面に示す配置において、架線レス区間を走行する蓄電池搭載電車4が充電所の停止位置に停止する、ということは、EW線を右方向に進む蓄電池搭載電車4が、充電所34の所定の停止位置に停車する、ということに対応する。このとき「10−(1)」は充電所の停止位置の地上子であり、「4−(1)」は停止位置にある蓄電池搭載電車である。
【0044】
充電所でパンタグラフを自動上昇する場合の、蓄電池搭載電車4全体の概略の動きを図7に示している。蓄電池搭載電車4が架線レス区間を走行して充電所に近づく(図7(1)参照)。充電所停止位置の地上子10−(1)により蓄電池搭載電車4−(1)のトランスポンダ車上装置12及び制御部18が位置データを取得し、速度計20により車両の速度が5km/時以下であることを制御部18が取得し、且つ、下降検知器22によりパンタグラフ28が下降状態にあることを制御部18が検知すると(図7(2)参照)、制御部18がパンタグラフ作動部26に上昇指示信号を伝送することにより、パンタグラフ28が自動的に上昇し充電所の架線40に接触する(図7(3)参照)。
【0045】
このようにパンタグラフ28が自動的に上昇し充電所の架線40に接触することにより、蓄電池搭載電車4−(1)の停止と同時に充電所の架線40を介する充電が効率よく行われることになる。
【0046】
(2)充電所から出発時にパンタグラフを下降する場合(図5のケース2及び図8参照)
制御部18が、トランスポンダ車上装置12から位置データの入力データを受け取り(S02・Yes)、それが充電所の出発位置を示すものであれば(S04・No、S24・Yes)、車両の速度が5km/時以下であるか(S26)、パンタグラフ28が上昇状態であるか(S28)、車両の扉が全て閉状態であるか(S29(1))、且つ
、搭載蓄電池への充電が停止状態であるか(S29(2))、確認する。車両の速度は速度計20からの速度データにより把握される。パンタグラフ28が上昇状態であるか否かは、上昇検知器24からのパンタグラフが上昇状態にあることを示すデータにより把握される。車両の扉が全て閉状態であるか否かは全扉閉信号の有無により把握される。搭載蓄電池への充電が停止状態であるか否かは充電停止信号の有無により把握される。上記の条件がいずれも確認されれば、制御部18は下降指示信号を作成してパンタグラフ作動部26に伝える(S30)。下降指示信号の伝送後、制御部18における位置データはクリアされる(S32)。
【0047】
図4の平面に示す配置において、充電所に停止する蓄電池搭載電車4が架線レス区間に向けて出発する、ということは、充電所34に停止する蓄電池搭載電車が、EW線を左方向に進むべく出発する、ということに対応する。このとき「10−(2)」は充電所の出発位置の地上子であり、「4−(2)」は出発位置にある蓄電池搭載電車である。
【0048】
充電所から出発時にパンタグラフを自動下降する場合の、蓄電池搭載電車4全体の概略の動きを図8に示している。蓄電池搭載電車4がパンタグラフ28を架線40まで上げたまま充電所から発車する(図8(1)参照)。充電所出発位置の地上子10−(2)により蓄電池搭載電車4−(2)のトランスポンダ車上装置12及び制御部18が位置データを取得し、速度計20により車両の速度が未だ5km/時以下であることを制御部18が取得し、上昇検知器24によりパンタグラフ28が上昇状態にあることを制御部18が検知し、全扉閉信号の発生により車両の扉が全て閉状態であることを制御部18が検知し、且つ、充電停止信号の発生により搭載蓄電池への充電が停止状態であることを制御部18が検知すると(図8(2)参照)、制御部18がパンタグラフ作動部26に下降指示信号を伝送することにより、パンタグラフ28が自動的に下降し充電所の架線40から十分に離れる(図8(3)参照)。なお、充電所出発位置の地上子10−(2)は、上述の充電所停止位置の地上子10−(1)の機能を合わせ持つ大型のものであることもある。
【0049】
このようにパンタグラフ28が自動的に下降することにより、パンタグラフ、架線、及び歩道橋等の道路設備建築物の破損を防止できる。
【0050】
(3)架線レス区間から架線区間への乗り入れ時にパンタグラフを上昇する場合(図5のケース3及び図9参照)
制御部18が、トランスポンダ車上装置12から位置データの入力データを受け取り(S02・Yes)、それが架線区間内の停止位置を示すものであれば(S04・No、S24・No、S44・Yes)、車両の速度が5km/時以下であるか(S46)、且つ、パンタグラフ28が下降状態であるか(S48)、確認する。車両の速度は、速度計20からの速度データにより把握される。パンタグラフ28が下降状態であるか否かは、下降検知器22からのパンタグラフが下降状態にあることを示すデータにより把握される。上記の条件がいずれも確認されれば、制御部18は上昇指示信号を作成してパンタグラフ作動部26に伝える(S50)。上昇指示信号の伝送後、制御部18における位置データはクリアされる(S52)。
【0051】
図4の平面に示す配置において、蓄電池搭載電車4が架線レス区間から架線区間へ乗り入れて架線区間の停止位置に停止する、ということは、EW線を左に進む蓄電池搭載電車4が、図4の中央部分にて、NS線の上方向若しくは下方向に曲がり、「4−(3n)」若しくは「4−(3s)」で示唆される所定の停止位置に停車する、ということに対応する。つまり、「4−(3n)」及び「4−(3s)」は架線区間の停止位置にある蓄電池搭載電車であり、「10−(3n)」及び「10−(3s)」はその停止位置の地上子である。
【0052】
架線レス区間から架線区間への乗り入れ時にパンタグラフを自動上昇する場合の、蓄電池搭載電車4全体の概略の動きを図9に示している。蓄電池搭載電車4が架線レス区間を走行後、パンタグラフ28を下げたまま架線区間に乗り入れ(図9(1)参照)、最初の停止位置で停止する。架線区間の停止位置の地上子10−(3n)、10−(3s)により蓄電池搭載電車4−(3n)、4−(3s)のトランスポンダ車上装置12及び制御部18が位置データを取得し、速度計20により車両の速度が5km/時以下であることを制御部18が取得し、且つ、下降検知器22によりパンタグラフ28が下降状態にあることを制御部18が検知すると(図9(2)参照)、制御部18がパンタグラフ作動部26に上昇指示信号を伝送することにより、パンタグラフ28が自動的に上昇し架線区間の架線50に接触する(図9(3)参照)。
【0053】
このようにパンタグラフ28が自動的に上昇し架線区間の架線50に接触することにより、蓄電池の電力の消耗を最小限に留めて架線区間の架線50による給電が効率よく行われることになる。
【0054】
(4)架線区間から架線レス区間への乗り入れ時にパンタグラフを下降する場合(図5のケース4及び図10参照)
制御部18が、トランスポンダ車上装置12から位置データの入力データを受け取り(S02・Yes)、それが架線区間内の信号切替位置を示すものであれば(S04・No、S24・No、S44・No、S64・Yes)、車両の速度が5km/時以下であるか(S66)、且つ、パンタグラフ28が上昇状態であるか(S68)、確認する。車両の速度は速度計20からの速度データにより把握される。パンタグラフ28が上昇状態であるか否かは、上昇検知器24からのパンタグラフが上昇状態にあることを示すデータにより把握される。上記の条件がいずれも確認されれば、制御部18は下降指示信号を作成してパンタグラフ作動部26に伝える(S70)。下降指示信号の伝送後、制御部18における位置データはクリアされる(S72)。
【0055】
図4の平面に示す配置において、蓄電池搭載電車4が架線区間から架線レス区間へ乗り入れる際に架線区間内の信号切替用地上子を検知する、ということは、NS線を下方向に進む蓄電池搭載電車4若しくはNS線を上方向に進む蓄電池搭載電車4が、図4の中央部分にて、「4−(4n)」若しくは「4−(4s)」で示唆される所定の信号切替位置に停車して、信号切替用地上子「10−(4n)」「10−(4s)」を検知し、EW線の右方向に曲がる、ということに対応する。つまり、「4−(4n)」及び「4−(4s)」は架線区間内の信号切替位置にある蓄電池搭載電車であり、「10−(4n)」及び「10−(4s)」はその信号切替位置の地上子である。
【0056】
架線区間から架線レス区間への乗り入れ時にパンタグラフを自動下降する場合の、蓄電池搭載電車4全体の概略の動きを図10に示している。蓄電池搭載電車4が架線区間を走行後、架線区間内の信号切替位置で停止する(図10(1)参照)。架線区間内の信号切替用地上子10−(4n)、10−(4s)により蓄電池搭載電車4−(4n)、4−(4s)のトランスポンダ車上装置12及び制御部18が位置データを取得し、速度計20により車両の速度が5km/時以下であることを制御部18が取得し、且つ、上昇検知器24によりパンタグラフ28が上昇状態にあることを制御部18が検知すると(図10(2)参照)、制御部18がパンタグラフ作動部26に下降指示信号を伝送することにより、パンタグラフ28が自動的に下降する。その後、蓄電池搭載電車4は、パンタグラフ28を下降状態にしたまま架線レス区間に乗り入れる(図10(3)参照)。
【0057】
このようにパンタグラフ28が自動的に下降することにより、パンタグラフ、架線、及び歩道橋等の道路設備建築物の破損を防止できる。
【0058】
以上のようにして、本実施形態のパンタグラフ自動昇降装置は、車両の充電所での到着時、出発時において、及び架線レス区間と架線区間の切替時において、パンタグラフの上昇下降を自動制御する。よって、蓄電池搭載電車が架線区間若しくは充電所でパンタグラフを上昇させて充電し、その後架線レス区間へ乗り入れるときに、パンタグラフの下降が忘れられたままとされることによって、パンタグラフ、架線、及び歩道橋等の道路設備建築物を破損してしまうことを防止できる。更に、蓄電池搭載電車が架線レス区間を走行し、架線のある充電所へ到着後に(若しくは架線区間へ乗り入れたときに)、パンタグラフの上昇が忘れられたままとされることによって、充電が為されないこと若しくは不十分になってしまうことを防止できる。更に、自動的にパンタグラフが上昇し下降することにより電車に搭載された蓄電池の充電時間が十分に確保されるので、列車ダイヤの遅延を防止できる。
【0059】
また、図5に示すパンタグラフ自動昇降装置の制御部のフローチャートでは、制御部が必ず地上子の位置そのもののデータを取得することとしているが、本発明を構築するにあたって、地上子の位置そのもののデータは必要不可欠であるわけではない。つまり、図5に示す個々のケース(1〜4)において少なくとも一つの地上子の存在が確認されれば、本発明の実施形態を構築できることになる。
【0060】
[危険回避のためのパンタグラフ自動昇降装置の制御部のフローチャート]
図6(1)(2)も、本発明の好適な実施形態に係る蓄電池搭載電車4におけるパンタグラフ自動昇降装置の制御部18のフローチャートであるが、図5に示される機能とは異なる機能を示すものである。つまり、本発明に係るパンタグラフ自動昇降装置は、図6に示すような自動危険回避機能や警告機能を有してもよい。
【0061】
図6(1)に示すフローチャートにより、制御部18は、位置データの入力は無いが所定条件によりパンタグラフ作動部26への上昇下降指示信号を作成する(ケース5)。また、図6(2)に示すフローチャートにより、制御部18は、警告点灯部27への警告データを作成する(ケース6)。以下、ケース5、ケース6について詳しく説明する。
【0062】
(5)パンタグラフが誤って上昇状態にあるときに強制的に下降させる場合(図6(1)のケース5及び図11参照)
制御部18が、トランスポンダ車上装置12から位置データの入力データを何ら受け取っていないが、所定時間架線電圧値データがゼロであるか(S84)、車両の速度が5km/時より大きいか(S86)、且つ、パンタグラフ28が上昇状態であるか(S88)、確認する。架線電圧値は架線電圧計25から把握される。車両の速度は速度計20からの速度データにより把握される。パンタグラフ28が上昇状態であるか否かは、上昇検知器24からのパンタグラフが上昇状態にあることを示すデータにより把握される。上記の条件がいずれも確認されれば、蓄電池搭載電車4は架線レス区間を誤ってパンタグラフ28を上げたまま走行しているということだから、制御部18は下降指示信号を作成してパンタグラフ作動部26に伝える(S90)。所定の時間待機(S92)後、制御部18はケース5が再発しないか確認を繰り返すことになる(S84、S86、S88、S90)。パンタグラフの上昇状態の誤発生に備えるためである。
【0063】
パンタグラフが誤って上昇状態にあるときに強制的に下降される場合の、蓄電池搭載電車4全体の概略の動きを図11に示している。蓄電池搭載電車4が、例えば、充電所からの出発時にパンタグラフを下降し損ねて発車したような場合、架線レス区間を誤ってパンタグラフ28を上げたまま走行してしまう(図11(1)参照)。このとき、架線電圧計25により架線電圧値が所定時間ゼロであることを制御部18が検知し、速度計20により車両の速度が5km/時より大きいことを制御部18が取得し、且つ、上昇検知器24によりパンタグラフ28が上昇状態にあることを制御部18が検知すると(図11(2)参照)、制御部18がパンタグラフ作動部26に下降指示信号を伝送することにより、パンタグラフ28が強制的に下降される(図11(3)参照)。
【0064】
このように、架線レス区間で誤ってパンタグラフが一時的に上がるような事故が発生しても、パンタグラフ28が強制的に下降されることにより、パンタグラフ、架線、及び歩道橋等の道路設備建築物を破損してしまうことが可及的に防がれる。
【0065】
(6)架線レス区間から架線区間への乗り入れ又は横断の直前にパンタグラフの状態を確認する場合(図6(2)のケース6及び図12参照)
制御部18が、トランスポンダ車上装置12から位置データの入力データを受け取り(S02・Yes)、それが架線レス区間の、架線区間の直前の停止位置を示すものであれば(S104・Yes)、パンタグラフ28が上昇状態であるか(S106)、確認される。パンタグラフ28が上昇状態であるか否かは、上昇検知器24からのパンタグラフが上昇状態にあることを示すデータにより把握される。この条件が確認されれば、制御部18は警告データを作成して警告点灯部27に伝える(S108)。警告データの伝送後、制御部18における位置データはクリアされる(S110)。
【0066】
図4の平面に示す配置において、蓄電池搭載電車4が架線レス区間から架線区間へ乗り入れる直前に、(架線区間直前の)架線レス区間の停止位置の地上子を感知する、ということは、EW線を左方向に進む蓄電池搭載電車4が、図4の中央部分にて、NS線の上方向若しくはNS線の下方向に曲がる直前に、「4−(6w)」で示唆される所定の停止位置の地上子を感知する、ということに対応する。つまり、「4−(6w)」は架線レス区間の(架線区間直前の)停止位置にある蓄電池搭載電車であり、「10−(6w)」はその停止位置の地上子である。
また、図4の平面に示す配置において、蓄電池搭載電車4が架線レス区間から架線区間を横断する直前に、(架線区間直前の)架線レス区間の停止位置の地上子を検知する、ということは、EW線を右方向に進む蓄電池搭載電車4若しくはEW線を左方向に進む蓄電池搭載電車4が、図3の中央部分にて曲がることをせずそのまま直進するに当たり、「4−(6e)」若しくは「4−(6w)」で示唆される所定の停止位置の地上子を検知する、ということに対応する。つまり、「4−(6e)」若しくは「4−(6w)」は架線レス区間の(架線区間を横断する直前の)停止位置にある蓄電池搭載電車であり、「10−(6e)」若しくは「10−(6w)」はその停止位置の地上子である。なお、「4−(6e’)」は架線レス区間の(架線区間を横断した直後の)停止位置にある蓄電池搭載電車であり、「10−(6e’)はその停止位置の地上子である。
【0067】
架線レス区間から架線区間への乗り入れ又は横断の直前にパンタグラフの状態を自動確認する場合の、蓄電池搭載電車4全体の概略の動きを図12に示している。蓄電池搭載電車4が架線レス区間を走行(図12(1)参照)後、架線区間へ乗り入れる直前、若しくは架線区間を横断する直前、架線レス区間の(架線区間直前の)停止位置の地上子10−(6e)、10−(6w)により蓄電池搭載電車4−(6e)、4−(6w)のトランスポンダ車上装置12及び制御部18が位置データを取得し、且つ、上昇検知器24によりパンタグラフ28が上昇状態にあることを制御部18が検知すると(図12(2)参照)、制御部18が警告点灯部27に警告データを伝送することにより、運転席の警告に係る点灯が強制的に為される(図12(3)参照)。なお、運転席に警告鳴動部が設けられ、制御部18が上記警告データを警告鳴動部に伝送し、警告鳴動部が警告音を強制的に鳴らして運転手に音により警告する、というような構成であってもよい。
【0068】
このように、架線区間が直前に迫っているにもかかわらずパンタグラフが上昇した状態にあれば運転席に警告が点灯若しくは鳴動されるから、パンタグラフ自動昇降装置が何らかの原因で作動しなかった場合でも、この警告に従い運転手が手動でパンタグラフを操作することで、パンタグラフ、及び架線等の設備の破損を事前に防止することができる。
【符号の説明】
【0069】
4・・・蓄電池搭載電車、8・・・トランスポンダ地上装置、10・・・地上子、12・・・トランスポンダ車上装置、14・・・車上子、16・・・車上送受信器、18・・・制御部、20・・・速度計、22・・・下降検知器、24・・・上昇検知器、25・・・架線電圧計、26・・・パンタグラフ作動部、27・・・警告点灯部、30e、30w・・・架線レス区間の線路、32n、32s・・・架線区間の線路、34・・・充電所、40・・・充電所の架線、50・・・架線区間の架線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンタグラフを上昇及び下降させるパンタグラフ駆動手段と、
車両の位置を検出する位置検出手段と、
パンタグラフの昇降状態を検出する昇降状態検出手段と、
車両の停止を検出する停止検出手段と、
前記パンタグラフ駆動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記位置検出手段により車両が所定の位置にあることを検出され、前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの下降が検出され、前記停止検出手段により車両の停止が検出されたときに、パンタグラフを上昇するように前記パンタグラフ駆動手段を制御する、
パンタグラフ自動昇降装置。
【請求項2】
パンタグラフを上昇及び下降させるパンタグラフ駆動手段と、
車両の位置を検出する位置検出手段と、
パンタグラフの昇降状態を検出する昇降状態検出手段と、
車両の停止を検出する停止検出手段と、
前記パンタグラフ駆動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記位置検出手段により車両が所定の位置にあることを検出され、前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの上昇が検出され、前記停止検出手段により車両の停止が検出されたときに、パンタグラフを下降するように前記パンタグラフ駆動手段を制御する、
パンタグラフ自動昇降装置。
【請求項3】
パンタグラフを上昇及び下降させるパンタグラフ駆動手段と、
車両の第1の位置を検出する第1の位置検出手段と、
車両の第2の位置を検出する第2の位置検出手段と、
パンタグラフの昇降状態を検出する昇降状態検出手段と、
車両の停止を検出する停止検出手段と、
前記パンタグラフ駆動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記第1の位置検出手段により車両が所定の第1の位置にあることを検出され、前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの下降が検出され、前記停止検出手段により車両の停止が検出されたときに、パンタグラフを上昇するように前記パンタグラフ駆動手段を制御し、
及び、
前記制御手段は、
前記第2の位置検出手段により車両が所定の第2の位置にあることを検出され、前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの上昇が検出され、前記停止検出手段により車両の停止が検出されたときに、パンタグラフを下降するように前記パンタグラフ駆動手段を制御する、
パンタグラフ自動昇降装置。
【請求項4】
更に、
車両の速度を検出する速度検出手段と、
架線電圧を計測する架線電圧計測手段とを備え、
前記制御手段は、
前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの上昇が検出され、前記速度検出手段により所定速度より大きい車両の速度が検出され、前記架線電圧計測手段により架線電圧がゼロであることが計測されたときに、パンタグラフを下降するように前記パンタグラフ駆動手段を制御する、
請求項1乃至3のうちのいずれか1に記載のパンタグラフ自動昇降装置。
【請求項5】
更に、
警告通知手段と、
前記警告通知手段を制御する第2の制御手段とを備え、
前記第2の制御手段は、
前記位置検出手段により車両が所定の位置にあることを検出され、前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの上昇が検出されたときに、警告を発するように前記警告通知手段を制御する、
請求項1又は2に記載のパンタグラフ自動昇降装置。
【請求項6】
更に、
警告通知手段と、
前記警告通知手段を制御する第2の制御手段とを備え、
前記第2の制御手段は、
前記第1の位置検出手段若しくは前記第2の位置検出手段により車両が所定の位置にあることを検出され、前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの上昇が検出されたときに、警告を発するように前記警告通知手段を制御する、
請求項3に記載のパンタグラフ自動昇降装置。
【請求項7】
パンタグラフを上昇及び下降させるパンタグラフ駆動手段と、
パンタグラフの昇降状態を検出する昇降状態検出手段と、
車両の速度を検出する速度検出手段と、
架線電圧を計測する架線電圧計測手段と、
前記パンタグラフ駆動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの上昇が検出され、前記速度検出手段により所定速度より大きい車両の速度が検出され、前記架線電圧計測手段により架線電圧がゼロであることが計測されたときに、パンタグラフを下降するように前記パンタグラフ駆動手段を制御する、
パンタグラフ自動昇降装置。
【請求項8】
警告通知手段と、
車両の位置を検出する位置検出手段と、
パンタグラフの昇降状態を検出する昇降状態検出手段と、
前記警告通知手段を制御する第2の制御手段とを備え、
前記第2の制御手段は、
前記位置検出手段により車両が所定の位置にあることを検出され、前記昇降状態検出手段によりパンタグラフの上昇が検出されたときに、警告を発するように前記警告通知手段を制御する、
パンタグラフ状態警告装置。
【請求項9】
前記停止検出手段は、車両の速度が所定速度以下になったときに、車両の停止を検出する、請求項1乃至6のうちのいずれか1に記載のパンタグラフ自動昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−183771(P2010−183771A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26078(P2009−26078)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】