パンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の新規な用途
本発明はパンドラチン誘導体またはこれを含有ケンフェリアパンドラタ抽出物の新規な用途に関する。具体的には、本発明はパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺改善用及び/または抗老化用組成物に関する。前記パンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、細胞増殖を誘導し、コラーゲン分解を阻止し、コラーゲン合成を促進することにより、抗老化活性が優れていて、特に皺改善、予防または治療効果が優れているため、化粧料組成物、食品組成物または薬学的組成物の有効な成分として利用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2007年10月17日付で出願された大韓民国特許出願第2007−0104788号を優先権として主張し、前記明細書全体は本発明の参考文献である。
本発明はパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の新規な用途に関するものである。具体的に本発明はパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ(Kaempferia pandurata)抽出物を含有することを特徴とする皺改善用及び/または抗老化用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
老化は大別して自然老化或いは内因性老化と外的老化とに区分され、自然老化は遺伝的原因によるものであるため、調節が難しいものの、外的老化は環境的原因によるものであるため、人為的な調節が容易である。従って、外的老化を防止するための研究が持続されており、特に、長期間の紫外線照射により進行する外因性光老化に伴う皺形成防止に対する研究が注目されている(Gilchrest B. A., J. Am. Acad. Dermatol., 1989:21:610-613)。前記外因性皮膚老化である光老化の臨床的特徴は、皮膚が粗く弾力性がなくなり、不規則な色素沈着が発生し、深い皺がよった肌が増加するのである。
【0003】
前記老化に影響を及ぼす外部因子等は風、温度、湿度、煙草の煙、公害、紫外線等により老化が起こり、特に、紫外線による老化を光老化と言う。特に、美容の対象として重要な顔面、頭部等の皺形成には前記光老化の影響が大きいものとして糾明されていて、抗老化または抗皺化粧品開発の基礎研究として人体皮膚や動物モデルを利用した光老化と皺形成に関する研究が活発に進められている。前記光老化の皺形成に関しては今まで皮膚の主要構成成分であるコラーゲンの合成、分解等の基礎的な生理代謝変化を検討した結果が多数報告されている(Lavker R. M., Blackwell science Inc., 1995:123-135)。
【0004】
前記光老化のメカニズムを簡単に説明すると、皮膚が多量の紫外線にさらされると、皮膚には高濃度の活性酸素(reactive oxygen species)が生成し、皮膚の酵素的、非酵素的抗酸化防御系を崩壊させる。これにより、皮膚組織の主蛋白質であるコラーゲンが著しく減少する。前記コラーゲン減少に重要な影響を及ぼすのはコラーゲン分解酵素−1(MMP−1,matrix metalloproteinase-1)である。前記酵素は細胞外基質(extracellular matrix)と基底膜(basement membrane)の分解に関与する酵素として紫外線照射により、皮膚内のコラーゲン分解酵素−1活性が増加し、コラーゲンを著しく崩壊させることにより、皺形成に極めて重要な役割をしているとの研究結果等が報告されている(Sim G. S., Kim J. H et al., Kor. J. Biotechnol. Bioeng., 2005:20(1):40-45)。
【0005】
現在、開発されている皮膚皺改善または抗老化のための有効成分等は一部化粧品原料として使用できないか、または極めて不安定で皮膚への伝達が容易でないため、特別な安定化システムと伝達体系が必要であり、皮膚皺の改善効果が認められない等の問題点があり、最近レチノイド(retinoid)を含有した皮膚保護剤に関心が集まっている。前記レチノイドは日光により蓄積された結果である皺、皮膚の厚化、垂れ、弾力減少等の光老化現象を解決する手段として利用されている。しかしながら、レチノイドは極めて不安定な化合物であって、紫外線、水分、熱、酸素に敏感なため、容易に化学的な変化を起こす問題点があり、これを解決するための天然物由来の有効成分開発の研究に力が注がれている実情である。
【0006】
一方、ケンフェリアパンドラタ(Kaempferia pandurata)は、ボエセンベルジアパンドラタ(Boesenbergia pandurata)としても知られているショウガ科植物であり、根茎部位は風邪、腸炎、皮膚疾患及び尿道痛症に広く使用されている。ケンフェリアパンドラタには、ピノセンブリンカルコン(pinocembrin chalcone)、カーダモニン(cardamonin)、ピノセム(pinocembrin)、ピノストロビン(pinostribin)、4−ヒドロキシパンドラチンA(4-hydroxypanduratin A)、パンドラチンA(panduratin A)等が含有されており、このような成分は抗癌効果を呈することが報告されており(Trakoontivakorn, G., 等、J. Arig. Food chem., 49, 3046-3050, 2001)、フラボノイド系統のジヒドロカルコン(dihydrochalcone)化合物等は、殺虫効果を呈することが報告されている(Pandji, C., 等、Phytochemistry, 34, 415-419, 1993)。さらに、大韓民国登録特許第492034号にはイソパンドラチンAのようなパンドラチン誘導体を含有する虫歯及び歯周炎予防と治療用抗菌剤及び口腔組成物についての記載がある。しかしながら、パンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の皺改善または抗老化効果については未だに報告された例がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国登録特許第492034号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Gilchrest B. A., J. Am. Acad. Dermatol., 1989:21:610-613
【非特許文献2】Lavker R. M., Blackwell science Inc., 1995:123-135
【非特許文献3】Sim G. S., Kim J. H et al., Kor. J. Biotechnol. Bioeng., 2005:20(1):40-45
【非特許文献4】Trakoontivakorn, G., 等、J. Arig. Food chem., 49, 3046-3050, 2001
【非特許文献5】Pandji, C., 等、Phytochemistry, 34, 415-419, 1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここに、本発明者等は皺改善または抗老化活性がある天然物由来の物質を研究する中、パンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物が前記のような活性があることを見出し本発明を完成した。
【0010】
従って、本発明の目的は下記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺改善及び/または抗老化用化粧料組成物を提供することにある。
【化1】
【0011】
本発明の他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺改善用及び/または抗老化用食品組成物を提供することにある。
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺予防及び治療用及び/または抗老化用薬学的組成物を提供することにある。
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の化粧料組成物製造のための使用を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の食品組成物製造のための使用を提供することにある。
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の薬学的組成物製造のための使用を提供することにある。
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の皺予防、改善または治療方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の抗老化方法を提供することにある。
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物のコラーゲン合成を促進する方法を提供することにある。
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物のコラーゲン分解を抑制する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明は下記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺改善用及び/または抗老化用化粧料組成物を提供する。
【化2】
【0015】
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺改善用及び/または抗老化用食品組成物を提供する。
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺予防及び治療用及び/または抗老化用薬学的組成物を提供する。
本発明は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の化粧料組成物製造のための使用を提供する。
【0016】
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の食品組成物製造のための使用を提供する。
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の薬学的組成物製造のための使用を提供する。
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の皺予防、改善または治療方法を提供する。
【0017】
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の抗老化方法を提供する。
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物のコラーゲン合成を促進する方法を提供する。
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物のコラーゲン分解を抑制する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ケンフェリアパンドラタで皺改善活性物質を分離する過程を示す。
【図2】ケンフェリアパンドラタエタノール抽出物のコラーゲン分解酵素−1の抑制活性及びプロコラーゲン合成促進活性を示す(A:コラーゲン分解酵素−1蛋白質発現抑制活性、B:コラーゲン分解酵素−1mRNA発現抑制活性、C:プロコラーゲン生合成促進活性、D:プロコラーゲンmRNA発現促進活性)。
【図3】パンドラチンAのコラーゲン分解酵素−1の抑制活性及びプロコラーゲン合成促進活性を示す(A:コラーゲン分解酵素−1蛋白質発現抑制活性、B:コラーゲン分解酵素−1mRNA発現抑制活性、C:プロコラーゲン生合成促進活性、D:プロコラーゲンmRNA発現促進活性)。
【図4】イソパンドラチンAのコラーゲン分解酵素−1の抑制活性及びプロコラーゲン合成促進活性を示す(A:コラーゲン分解酵素−1蛋白質発現抑制活性、B:コラーゲン分解酵素−1mRNA発現抑制活性、C:プロコラーゲン生合成促進活性、D:プロコラーゲンmRNA発現促進活性)。
【図5】4−ヒドロキシパンドラチンのコラーゲン分解酵素−1の抑制活性及びプロコラーゲン合成促進活性を示す(A:コラーゲン分解酵素−1蛋白質発現抑制活性、B:コラーゲン分解酵素−1mRNA発現抑制活性、C:プロコラーゲン生合成促進活性、D:プロコラーゲンmRNA発現促進活性)。
【図6】ケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体がMAPKs活性に及ぼす効果を示す。
【図7】ケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体がAP−1のDNA結合活性に及ぼす効果を示す。
【図8】ケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体がc−Jun及びc−Fos活性に及ぼす効果を示す。
【図9】マウスの皮膚にケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体を塗布した後の皮膚鋳型の写真である。
【図10】マウスの皮膚にケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体を塗布した後、Rt、Rm、Rz、Ra値を測定した結果を示す(Rt:皮膚表面の最も高い値と低い値間の距離、Rm:5部位測定値の内Rtの最も大きい値、Rz:5部位測定値Rt平均、Ra:算術平均表面粗度)。
【図11】マウスの経口にケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体を投与した後の鋳型の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の内容をより詳細に説明する。
本発明で“ケンフェリアパンドラタ抽出物”とは、ボエセンベルジアパンドラタとも呼ばれる、ケンフェリアパンドラタ由来の前記パンドラチン誘導体を含有する抽出物を言う。前記パンドラチン誘導体を含有できるものであれば、前記ケンフェリアパンドラタ抽出物の製造方法には制限がないが、好ましくは、ケンフェリアパンドラタ植物または植物の一部(幹、根茎または葉)から水、C1〜C6の有機溶媒及び亜臨界または亜臨界流体からなる群より選ばれる一つ以上の溶媒で抽出することにより製造することができる。さらに、必要な場合、当業界で公知の方法により、ろ過及び濃縮段階を追加的に含めて製造することができる。
【0020】
前記C1〜C6の有機溶媒はこれに限定はされないものの、好ましくは、C1〜C6のアルコール、アセトン、エテール、ベンゼン、クロロホルム、酢酸エチル(ethyl acetate)、ジクロロメタン(methylene chloride)、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテルからなる群より選ばれるものを言う。
【0021】
さらに、本明細書において“超臨界流体”とは、一般的な条件では気体状態ではあるものの、臨界温度と臨界圧力以上では流体であることを言い、亜臨界流体は亜臨界液体と気体とを含み、特に、亜臨界液体は温度が超臨界温度と飽和温度よりも低い状態の流体であり、亜臨界気体は温度が飽和温度よりも高く、圧力は超臨界圧力より低い状態の流体を言う。前記超臨界流体及び亜臨界流体は医薬品工業、食品工業、化粧品・香料工業、化学工業、エネルギー工業及びその他多様な分野に応用されている。本発明で使用できる超臨界流体及び亜臨界流体は特別に制限されるのではなく、例えば、二酸化炭素、窒素、亜酸化窒素、メタン、エチレン、プロパン、プロピレン、石油エテール、エチルエテール及びシクロヘキサン等を利用することができる。二酸化炭素は大量購入が可能で、比較的安価で、非爆発性で、加工用として十分に安全であるため特に好ましい。前記二酸化炭素は臨界温度が31.1℃で臨界圧力は73.8気圧である。
【0022】
本発明の一実施例では、乾燥したケンフェリアパンドラタを粉砕し、これにエタノール、ヘキサンまたはクロロホルム溶媒を利用して抽出し、ろ過及び濃縮段階を経て、ケンフェリアパンドラタエタノール、ヘキサンまたはクロロホルム抽出物を製造した。さらに、超臨界流体として二酸化炭素を利用した超臨界流体抽出機に、ケンフェリアパンドラタを投与してケンフェリアパンドラタ超臨界抽出物を製造した(実施例1参照)。
【0023】
本発明で“パンドラチン誘導体”とは、下記化学式1〜3からなる群より選ばれる化合物を言う。具体的に化学式1、化学式2、及び化学式3で示される化合物はそれぞれ、パンドラチンA、イソパンドラチンA、4−ヒドロキシパンドラチンAである。
【化3】
【0024】
前記パンドラチン誘導体は、市販のものを用いるか、または公知の合成方法を利用して製造することができ、前記ケンフェリアパンドラタ抽出物またはケンフェリアパンドラタ植物を圧搾して得たオイルから分離精製して収得することができる。前記ケンフェリアパンドラタ抽出物からパンドラチン誘導体の分離及び精製は、好ましくは、シリカゲルまたは活性アルミナ等の各種合成樹脂を充填したカラムクロマトグラフィー及び高性能液体クロマトグラフィー等を単独または組み合わせて行うが、この方法に限定されるものではない。
【0025】
本発明の一実施例では、乾燥したケンフェリアパンドラタを粉砕後、エタノールと混合して溶媒抽出した後、溶媒を除去して抽出成分を濃縮した。濃縮された粗抽出物と酢酸エチルを混合して酢酸エチル溶解性成分を抽出し、酢酸エチルを除去して酢酸エチル溶解性成分を抽出した後、各成分の極性差によって、各成分別に分離した。具体的に一次的にヘキサン、酢酸エチルを混合した溶媒を利用して展開させることにより不純物を除去して、これを再度ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルを混合した溶媒を利用して分離することにより。最終的にパンドラチンA(panduratin A)、イソパンドラチンA(isopanduratin A)または4−ヒドロキシパンドラチンA(4-hydroxypanduratin A)を収得することができた(図1及び実施例2〜実施例4参照)。
【0026】
前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、抗老化活性が優れており、特に皺改善、予防または治療効果が優れている。
【0027】
具体的に、先ず、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、優れた細胞増殖活性を有している。繊維芽細胞を使用したMTT実験を行った結果、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を投与した場合、細胞増殖が著しく誘導されることを確認した(実施例1参照)。
【0028】
さらに、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、コラーゲン分解酵素−1の発現を抑制してコラーゲン分解を抑制し、プロコラーゲン合成を誘導することにより、コラーゲン合成を促進する活性がある。前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を処理した場合、コラーゲン分解酵素−1の発現が抑制される反面、プロコラーゲン合成は増加されたことを確認した(実験例2参照)。
【0029】
ここに、本発明者等は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物が、コラーゲン分解を抑制してコラーゲン合成を促進するメカニズムを確認した。
【0030】
具体的には、コラーゲン分解が発生するメカニズムは、MAPKs(mitogen-activated protein kinases)に属するERK(extracellular-regulated protein kinases)、JNK(Jun-N-terminal Kinase)及びp38キナーゼがリン酸化されて活性化すれば、AP−1(activator protein-1)の活性が誘導され(Xu Y,Fisher GJ.,J Dermatol Sci Suppl 2005;1:S1-S8)、DNAと結合し、これを介してMMPs(matrix metalloproteinase)分泌が起こり、コラーゲンが分解される。この際、c−Jun及びc−Fosは前記AP−1とDNA結合に影響を及ぼすことが知られている(Waskiewicz AJ,Cooper JA.,Curr Opin Cell Biol.,1995; 7:798-805)。
【0031】
パンドラチンAを投与した場合、前記ERK、JNK及びp38キナーゼの活性及びAP−1とDNA結合が抑制され、さらに前記c−Jun及びc−Fosの活性が抑制されることにより、結局MMPs分泌が抑制されることがわかった。従って、パンドラチンAはコラーゲン分解を抑制してコラーゲン活性を促進する活性があることがわかった(実験例3参照)。
【0032】
さらに、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を、紫外線にさらされて皺が発生したマウスの皮膚に塗布するか、または口腔に投与した結果、著しく皺が改善されたことを確認した(実験例4参照)。
【0033】
従って、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、抗老化活性が優れていて、特に、皺改善、予防または治療効果が優れているため、化粧料組成物、食品組成物または薬学的組成物の有効な成分として利用することができる。
【0034】
前記本発明の化粧料組成物は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を、有効成分として含有し、皮膚学的に許容可能な賦形剤と共に、基礎化粧品組成物(化粧水、クリーム、エッセンス、クレンジングフォーム及びクレンジングウォータのような洗顔剤、パック、ボディオイル)、色調化粧品組成物(ファウンデーション、リップスティック、マスカラ、メーキャップベース)、頭髪製品組成物(シャンプー、リンス、ヘアコンデショーナ、ヘアジェル)及び石鹸等の形態で製造することができる。
【0035】
前記賦形剤は、これに限定はされないものの、例えば、皮膚軟化剤、皮膚浸透増強剤、着色剤、芳香剤、乳化剤、濃化剤及び溶媒を含み得る。さらに、香料、色素、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤及び保湿剤等を含むことができ、物性改善を目的に漸増剤、無機塩類、合成高分子物質等を含み得る。例えば、本発明の化粧料組成物で洗顔剤及び石鹸を製造する場合には、通常の洗顔剤及び石鹸ベースに前記パンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を添加して容易に製造することができる。クリームを製造する場合には、一般的な水中油滴型(O/W)のクリームベースに、前記パンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物、またはこれの塩を添加して製造することができる。さらに、香料、キレート剤、色素、酸化防止剤、防腐剤等と物性改善を目的とした蛋白質、ミネラル、ビタミン等合成または天然素材を添加できる。
【0036】
本発明の化粧料組成物に含有される前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物の含量は、これに限定はされないものの、組成物の総質量の0.001〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましい。前記含量が0.001質量%未満では目的とする抗老化または皺改善効果を期待できず、10質量%を超えると安定性または剤形製造に問題が生じる。
【0037】
一方、前記本発明の食品組成物は、機能性食品、栄養補助剤、健康食品及び食品添加剤等の全ての形態を含む。
【0038】
前記類型の食品組成物は、当業界で公知の方法により、多様な形態で製造し得る。これに限定はされないものの、例えば、健康食品には、前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物そのものを、お茶、ジュース及びドリンクの形態で製造して飲用できるように、液状化、顆粒化、カプセル化及び粉末化して摂取し得る。さらに、前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を、抗老化または皺改善効果があるとして知られた公知の活性成分と共に、混合して組成物の形態で製造し得る。さらに、機能性食品としてはこれに限定はされないものの、飲料(アルコール性飲料を含む)、果実及びその加工食品(例えば、果物缶詰、瓶詰、ジャム、ママレード等)、魚類、肉類及びその加工食品(例えば、ハム、ソーセージ、コーンビーフ等)、パン類及び麺類(例えば、うどん、ソバ、ラーメン、スパゲッティ、マカロニ等)、果汁、各種ドリンク、クッキー、飴、乳製品(例えば、バター、チーズ等)、食用植物油脂、マーガリン、植物性蛋白質、レトルト食品、冷凍食品、各種調味料(例えば、味噌、醤油、ソース等)に前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を添加して製造しすることができる。さらに、前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を食品添加剤の形態で使用するためには、粉末または濃縮液の形態で製造することができる。
【0039】
本発明の食品組成物の内、パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物の好ましい含有量としては、これに限定はされないものの、好ましくは、最終的に製造された食品の総質量の0.01〜50%である。より好ましくは、本発明の食品組成物は特に、抗老化または皺改善に効果があるものとして知られている活性成分と共に、混合して健康食品の形態で製造することができる。
【0040】
一方、前記本発明の薬学的組成物は、前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を単独で含有するかまたは一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または稀釈剤を追加して含有し得る。
【0041】
薬学的に許容される担体としては、例えば、経口投与用担体または非経口投与用担体が挙げられる。経口投与用担体はラクトース、澱粉、セルロース誘導体、マグネシウムステアレート、ステアリン酸等を含み得る。さらに、非経口投与用担体は水、適合したオイル、食塩水、水性グルコース及びグリコール等を含むことができて、安定化剤及び保存剤を追加的して含み得る。適合した安定化剤には亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。適合した保存剤にはベンズアルコニウムクロライド、メチル−またはプロピル−パラベン及びクロロブタノールがある。その他の薬学的に許容される担体は、下記の文献に記載されている(Remington's Pharmaceutical Sciences,19th ed., Mark Publishing Company,Easton,PA,1995)。
【0042】
本発明の薬学的組成物は人間を始め、哺乳動物にどのような方法でも投与できる。例えば、経口または非経口的に投与できる。非経口的な投与方法はこれに限定はされないものの、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、隔膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻孔内、腸管、局所、舌下または直腸内に投与してもよい。本発明の薬学組成物は、上述したような投与経路により、経口投与用または非経口投与用製剤に製剤化し得る。経口投与用製剤の場合に、本発明の組成物は粉末、顆粒、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリ剤、懸濁液等で当業界で公知の方法を利用して剤形化でき得る。例えば、経口用製剤は活性成分を固体賦形剤と配合した後、これを粉砕して適合した補助剤を添加した後、顆粒混合物に加工することにより、錠剤または糖衣錠剤を収得し得る。適した賦形剤の例には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール及びマルチトール等を含む糖類と、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉及び馬鈴薯澱粉等を含む澱粉類、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等を含むセルロース類、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等のような充填剤が含まれる。さらに、必要に応じて架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはナトリウムアルキネート等を崩解剤として添加することができる。さらに、本発明の薬学的組成物は抗凝縮剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤等を添加することができる。非経口投与用製剤の場合には、注射剤、クリーム剤、ローション剤、外用軟膏剤、オイル剤、保湿剤、ゲル剤、エアローゾル及び鼻孔吸込み剤の形態で当業界で公知の方法で剤形化することができる。これら剤形は公知の調剤録(Remington's Pharmaceutical Sciences,15th Edition,1975. Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania 18042, Chapter 87:Blaug,Seymour)に記載されている。
【0043】
本発明の薬学的組成物の総有効量は、単一投与量で患者に投与することも、多重投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)により投与することもできる。本発明の薬学組成物は疾患の程度によって有効成分の含量を変更することができる。非経口投与用の場合にはパンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を基準に、1日に体重1kg当り、好ましくは0.01〜50mg、さらに好ましくは0.1〜30mgの量で投与できるようにし、さらに、経口投与の場合には前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を基準に、1日に体重1kg当り、好ましくは0.01〜100mg、さらに好ましくは0.1〜50mgの量で投与できるように、1回〜数回に分けて投与することができる。しかしながら、前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物の用量は、薬学的組成物の投与経路及び治療回数のみならず、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌及び排泄率等多様な要因等を考慮して患者に対する有効投与量が決定されるものであることから、このような点を考慮する場合、当分野の通常的な知識を有する者であれば、前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を抗老化または皺の予防または治療としての特定した用途に伴う適切な有効投与量を決定し得るであろう。本発明に伴う薬学組成物は本発明の効果を呈する限り、その剤形、投与経路及び投与方法に特別に限定はされない。
【0044】
さらに、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、抗老化活性が優れていて、特に、皺改善、予防または治療効果が優れているため、抗老化、皺改善、予防または治療用化粧料組成物、食品組成物または薬学的組成物製造のために利用することができる。
【0045】
前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を利用して、化粧料組成物、食品組成物または薬学的組成物を製造する方法及び前記組成物に対する、下記のパンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物の含量は上述した通りである。
【0046】
さらに、前記化学式1〜3からなる群より選ばれる前パンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、皺予防、改善または治療及び抗老化方法に利用することができる。
【0047】
前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を皺予防、改善または治療及び抗老化に利用するために、これに限定はされないものの、これを必要とする個体に有効な量で投与することができる。
【0048】
前記“必要とする個体”とは、皺予防、改善または治療及び老化抑制が必要な哺乳動物を言い、好ましくは、人間を言う。さらに、前記“有効な量”とは、前記個体内でコラーゲンの分解を抑制し、コラーゲンの合成を促進して皺予防、改善または治療及び抗老化効果を呈する量を言う。前記有効な量で投与するための投与方法及び投与量は具体的に上述した通りである。
【0049】
さらに、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、コラーゲン合成を促進してコラーゲン分解を抑制する方法に利用することができる。
【0050】
前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物のコラーゲン合成促進及びコラーゲン分解抑制活性及びそのメカニズムについては上述した通りである。
【0051】
以上に説明した通り、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、細胞増殖を誘導してコラーゲン分解を阻止し、コラーゲン合成を促進することにより抗老化活性が優れていて特に、皺改善、予防または治療効果が優れているため化粧料組成物、食品組成物または薬学的組成物の有効な成分として利用することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び実験例を挙げて本発明の構成及び効果をより具体的に説明する。しかしながら、これら実施例及び実験例は本発明に対する理解を促すために例示の目的にのみ提供されたものであって、本発明の範疇及び範囲が下記実施例及び実験例により限定されるものではない。
【0053】
実施例1:パンドラチンを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の製造
1−1.ケンフェリアパンドラタエタノール抽出物の製造
乾燥したケンフェリアパンドラタ根茎をミキサーで粉砕し、粉砕したケンフェリアパンドラタ試料100gをエタノール1Lに入れて48時間常温で冷浸して抽出した。抽出された試料はろ紙(Whatman No.2)でろ過し、ろ液を真空回転濃縮機で濃縮して溶媒成分を除去し、ケンフェリアパンドラタエタノールの抽出物を得た。
【0054】
1−2.ケンフェリアパンドラタヘキサン抽出物の製造
乾燥したケンフェリアパンドラタ根茎をミキサーで粉砕し、粉砕したケンフェリアパンドラタ試料100gをヘキサン1Lに入れて48時間常温で冷浸して抽出した。抽出された試料はろ紙(Whatman No.2)でろ過し、ろ液を真空回転濃縮機で濃縮して溶媒成分を除去し、ケンフェリアパンドラタヘキサン抽出物を得た。
【0055】
1−3.ケンフェリアパンドラタクロロホルム抽出物の製造
乾燥したケンフェリアパンドラタ根茎をミキサーで粉砕し、粉砕したケンフェリアパンドラタ試料100gをクロロホルム1Lに入れて48時間常温で冷浸して抽出した。抽出された試料はろ紙(Whatman No.2)でろ過し、ろ液を真空回転濃縮機で濃縮して溶媒成分を除去し、ケンフェリアパンドラタクロロホルム抽出物を得た。
【0056】
1−4.ケンフェリアパンドラタ超臨界抽出物の製造
超臨界流体として二酸化炭素CO2を利用した超臨界流体抽出機で、ケンフェリアパンドラタ根茎から超臨界抽出物を収得した。この際、抽出温度は50℃、抽出圧力は200barで抽出した後、抽出物から溶媒を除去して超臨界抽出物を得た。
【0057】
実施例2:パンドラチンAの分離
前記実施例1−1で得た濃縮されたケンフェリアパンドラタエタノール抽出物と、酢酸エチルを混合して酢酸エチル溶解性成分を抽出し、酢酸エチルを減圧下で除去して酢酸エチル溶解性成分を濃縮した後、シリカゲルを6×15cmで充填したカラムでヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルを15:5:1.5(v/v/v)の比率で混合した溶媒システムを利用して分取した順に従って、全6分画に分けてそれぞれの分画を濃縮乾燥した。6個の分画の内、3番分画(分画3)をヘキサン、酢酸エチル、メタノールをそれぞれ18:2:1(v/v/v)の展開溶媒で薄層クロマトグラフィー(TLC,silica gel 60F254,Merck)して、分取した順に従い全3分画に分けて濃縮乾燥した。最終的に前記3個の分画の内、2番分画(分画3−2)をリサイクリング高性能液体クロマトグラフィー(recycling HPLC,column:W-252,20.0mm IDX500mm L)を利用して、順に従い全2分画に分けてそれぞれの分画を濃縮乾燥した。最終的に前記2個の分画の内、2番分画(分画3−2−2)を濃縮乾燥させ、純粋な単一皺改善活性物質である下記化学式1のパンドラチンAを分離した。
【化4】
【0058】
実施例3:イソパンドラチンAの分離
前記実施例1−1で得た濃縮されたケンフェリアパンドラタエタノール抽出物と、酢酸エチルを混合して酢酸エチル溶解性成分を抽出し、酢酸エチルを減圧下で除去して酢酸エチル溶解性成分を濃縮した後、シリカゲルを6×15cmで充填したカラムでヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルを15:5:1.5(v/v/v)の比率で混合した溶媒システムを利用して分取した順に従い、全6分画に分けてそれぞれの分画を濃縮乾燥した。6個の分画の内4番分画(分画4)をリバースフェィズ−18,(Rp-18 LIChropep,25-40m)充填物を利用してメタノール、水をそれぞれ9:1(v/v)の比率で混合した溶媒システムで溶出させ分取した順に従い、全2分画を得て、得られた分画の内2番分画(分画4−2)を濃縮乾燥した後、クロロホルム、メタノールを10:0.2(v/v)の比率で混合した溶媒システムを利用して溶出させて順に従い、全2分画に分けてそれぞれの分画を濃縮乾燥した。最終的に前記2個の分画の内、2番分画(分画4−2−2)をヘキサン、酢酸エチルを10:3(v/v)の比率で混合した溶媒システムを利用して溶出させて順に従い、全2分画に分けてそれぞれの分画を濃縮乾燥した。最終的に前記2個の分画の内、2番分画(分画4−2−2−2)を濃縮乾燥させ、純粋な単一皺改善活性物質である下記化学式2のイソパンドラチンAを分離した。
【化5】
【0059】
実施例4:4−ヒドロキシパンドラチンAの分離
前記実施例1−1で得た濃縮されたケンフェリアパンドラタエタノール抽出物と、酢酸エチルを混合して酢酸エチル溶解性成分を抽出し、酢酸エチルを減圧下で除去して酢酸エチル溶解性成分を濃縮した後、シリカゲルを6×15cmで充填したカラムでヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルを15:5:1.5(v/v/v)の比率で混合した溶媒システムを利用して分取した順に従い、全6分画に分けてそれぞれの分画を濃縮乾燥した。6個の分画の内6番分画(分画6)をジクロロメタン、メタノールを19:1(v/v)の比率で混合した溶媒システムで溶出させ、分取した順に従い、全3分画を得て、前記3個の分画の内2番分画(分画6−2)を再度クロロホルム、メタノールを20:1(v/v)比率で混合した溶媒システムを利用して分取した順に従い全2分画を得た。最終的に前記2個の分画の内、2番分画(分画6−2−2)をリサイクリング高性能液体クロマトグラフィー(recycling HPLC,column:W-252,20.0mm IDX500mm L)を利用して純粋な単一皺改善活性物質である下記化学式3の4−ヒドロキシパンドラチンAを分離した。
【化6】
【0060】
実験例1:ケンフェリアパンドラタ抽出物及びパンドラチン誘導体の細胞増殖効果
1−1.ケンフェリアパンドラタ抽出物の細胞増殖効果
前記実施例1−1で製造されたケンフェリアパンドラタエタノール抽出物を利用して、皮膚の皺改善効果を検証する細胞増殖効果を見るために、繊維芽細胞を使用したMTT試験法[3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide reduction method]を行った。皮膚皺改善効果があるものとして知られた緑茶抽出物(green tea extract)を比較対照群とした。その結果を下記表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
前記表1に示した通り、本発明のケンフェリアパンドラタ抽出物は比較群より細胞増殖効果が優れていることが確認できた。
【0063】
1−2.パンドラチン誘導体の細胞増殖効果
前記実施例2〜実施例4で製造されたパンドラチン誘導体を利用して皮膚の皺改善効果を検証する細胞増殖効果を見るために、繊維芽細胞を利用したMTT試験法[3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide reduction method]を行った。皮膚皺改善効果があるものとして知られたEGCG(epigallocatechin-3-O-gallate)を比較対照群とした。その結果を下記表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
前記表2に示した通り、本発明のパンドラチン誘導体は比較群より細胞増殖効果が優れていることが確認できた。
【0066】
実験例2:ケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体のコラーゲン分解酵素−1抑制及びプロコラーゲン合成促進効果
2−1.ケンフェリアパンドラタ抽出物の場合
前記実施例1で製造したケンフェリアパンドラタエタノール抽出物のコラーゲン分解酵素−1抑制活性とプロコラーゲン合成促進効果をウェスタンブロットとRT−PCR(Reverse Transcriptase-Polymerase Chain Reaction)の方法により測定した結果を図2に示す。
具体的には、繊維芽細胞培養液で蛋白質を抽出し、蛋白質分析試藥(Bio-Rad Laboratories Inc., Hercules,CA, 米国)を利用して蛋白質を定量した。ウェスタンブロットを実施するために、前記同量の蛋白質を3分間加熱して冷ました後、10%SDS−PAGEで電気泳動でニトロセルロース膜(Amersham International, Little Chalfont, 英国)に転移させた。前記膜はTBST(10mM Tris,pH7.5,100mM NaCl,0.1% Tween 20)に5%脱脂粉乳で飽和されていて、2時間かけて1次抗体(1:1000稀釈)でブラットを行い、TBSTで洗浄した後、2時間かけて2次抗体(1:2000稀釈)でブラットを行った後、TBSTで3回洗浄した。ブラットされた抗体はECL検出システム(Amersham International, Little Chalfont, 英国)で分析した。
さらに、RT−PCRを遂行するために収得した繊維芽細胞をTRIZOL(Invitrogen, 米国)を使用して総RNAを分離し、分離された総RNAを定量してコラーゲン分解酵素−1及びプロコラーゲンプライマーとTag Polymeraseを利用した。具体的にコラーゲン分解酵素−1プライマーを利用して94℃で30秒、50℃で1分、72℃で1分を25回繰り返してRT−PCRを実施し、プロコラーゲンプライマーを利用して94℃で30秒、60℃で1分、72℃で1分を28回繰り返してRT−PCRを実施した。前記実施後、1%アガロースゲルを利用して電気泳動した後、EtBr(Ethidium bromide)発現を介してコラーゲン分解酵素−1及びプロコラーゲンのmRNA発現量を分析した。
前記図2に記載された通り、前記ケンフェリアパンドラタエタノールを抽出物を処理した時、コラーゲン分解酵素−1蛋白質とmRNA発現量が濃度依存的に抑制された反面、コラーゲン蛋白質とmRNA発現量は濃度依存的に増加されることを確認した(図2参照)。
さらに、前記実施例1で製造したケンフェリアパンドラタヘキサン抽出物、クロロホルム抽出物及び超臨界抽出物に対しても前記と同じ実験を行った結果、ケンフェリアパンドラタヘキサン抽出物を処理した場合、対照群に比べてコラーゲン分解酵素−1の発現量は37%減少し、プロコラーゲン合成は250%増加した(図示せず)。さらに、ケンフェリアパンドラタクロロホルム抽出物を処理した場合、対照群に比べてコラーゲン分解酵素−1の発現量は40%減少し、プロコラーゲン合成は290%増加した(図示せず)。最後にケンフェリアパンドラタ超臨界抽出物を処理した場合、対照群に比べてコラーゲン分解酵素−1の発現量は29%減少し、プロコラーゲン合成は220%増加した(図示せず)。
前記結果からケンフェリアパンドラタ抽出物がコラーゲン分解酵素の発現を抑制し、プロコラーゲン合成を増加させることにより、抗老化または皺改善に効果的に利用し得ることがわかった。
【0067】
2−2.パンドラチン誘導体の場合
前記実施例2〜4で製造されたパンドラチン誘導体のコラーゲン分解酵素−1抑制活性と、プロコラーゲン合成促進効果を前記実験例2−1と同様の方法でウェスタンブロットとRT−PCRを遂行して測定した。その結果を図3〜5に示す。
前記図3〜5に記載された通り、前記実施例2〜4で製造されたパンドラチン誘導体のパンドラチンA(図3参照)。イソパンドラチンA(図4参照)または4−ヒドロキシパンドラチンA(図5参照)をそれぞれ処理した場合、コラーゲン分解酵素−1蛋白質とmRNAレベルが濃度依存的に抑制される反面、プロコラーゲン蛋白質とmRNAの発現は濃度依存的に増加した。特に、同一濃度で比較群であるEGCGと比較すると、EGCGより優れた活性を示した。
前記結果から前記パンドラチン誘導体はコラーゲン分解酵素の発現を抑制し、プロコラーゲン合成を促進することにより、抗老化または皺改善に有効に利用し得ることがわかった。
【0068】
実験例3:ケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体のコラーゲン分解抑制メカニズム
3−1.MAPKs(mitogen-activated protein kinases)活性に及ぼす効果
人間の皮膚繊維芽細胞(CCD-986sk, ATCC, Manassas, VA, 米国)をDMEM(Gibco, Grand Island, NY, 米国)培地に培養した。前記繊維芽細胞が10cm培養皿(SPL,ソウル、韓国)に80%まで培養されるようにして、24時間無血清培養培地で追加培養した。前記細胞を24時間前記実施例2のパンドラチンAが含有された無血清DMEMに継続して培養した。前記培養後、培地を5mlのPBS(phosphate-buffered saline)に代えて前記細胞に紫外線(20mJ/cm2)を照射した。この際、陰性対照群として同一条件で紫外線を照射していない細胞を、陽性対照群としてEGCG(epigallocatechin-3-O-gallate)を使用した。
前記繊維芽細胞をRIPAバッファー(Sigma-Aidrich Co., St, Louis, MO, 米国)に溶解させ、蛋白質分析試藥(Bio-Rad Laboratories Inc., Hercules, CA, 米国)を利用して蛋白質を定量した。ウェスタンブロットを実施するために、前記同量の蛋白質を3分間加熱して冷ました後、10%SDS−PAGEで電気泳動でニトロセルロース膜(Amersham International, Little Chalfont, 英国)に転移させた。前記膜はTBST(10mM Tris, pH7.5, 100mM NaCl,0.1% Tween 20)に5%脱脂粉乳で飽和されていて、2時間かけて1次抗体(1:1000稀釈)でブラットを行い、TBSTで洗浄した後、2時間かけて2次抗体(1:2000稀釈)でブラットを行った後、TBSTで3回洗浄した。ブラットされた抗体はECL検出システムで分析し、検出程度はRFLP scan version 2.1ソフトウェアプログラムを利用して測定した。
前記実験過程を介してMAPKs(mitogen-activated protein kinases)に属するERK(extracellular-regulated protein kinase)、JNK(Jun-N-terminal kinase)及びp38キナーゼの活性変化を測定した。その結果を図6に示す。
図6に示す通り、紫外線により、ERK、JNK及びp38キナーゼがリン酸化されて活性化が誘導されるものの、パンドラチンAを投与した場合、濃度依存的にERK、JNK及びp38キナーゼの活性が抑制されることがわかった。前記ERK、JNK及びp38キナーゼがリン酸化されて活性化されると、AP−1(activator protein-1)の活性が誘導され(Xu Y, Fisher GJ., J Dermatol Sci Suppl 2005;1:S1-S8)、これを介してMMPs(matrix metalloproteinase)の分泌が促進されて、コラーゲンが分解されることを考慮すると(Huang C, Schmid PC, Ma WY, Schmid HH, Dong Z.,J Biol Chem 1997;272:4187-94)、前記パンドラチンAはコラーゲン分解を抑制することにより、抗老化または皺改善に効果的に利用し得ることがわかった。
【0069】
3−2.AP−1(activator protein-1)のDNA結合活性に及ぼす効果
AP−1(activator protein-1)のDNA結合活性を測定するために、EMSA(Electrophoretic mobility shift assay)を遂行した。具体的に前記実験例3−1で培養してパンドラチンAが投与され、紫外線を照射した繊維芽細胞をPBSで洗浄して収集した後、100μlのバッファー(10mM HEPES,10mM KCl, 0.1mM EDTA, 1mM DTT, 0.5mM PMSF, pH7.9)に15分間再度浮遊させ、30μlの溶解5%NP−40を追加して15秒間混合した。サイトソル(cytosol)部分を遠心分離して除去し、核ペレット(nuclear pellets)を抽出バッファー(20mM HEPES, 0.4 M NaCl, 1mM EDTA, 1mM DTT, 1mM PMSF, pH7.9)で溶解させた。定量された核蛋白質を利用して製造者の指示(Gel Shift Kit System; Panomics, Fremont, CA, 米国)に従い、gel shift assayを遂行した。前記遂行後探知された蛋白質はECL検出システム(Amersham International, Little Chalfont, 英国)で分析し、検出程度はRFLP scan version 2.1ソフトウェアプログラムを利用して測定した。
前記実験過程を介して、AP−1(activator protein-1)のDNA結合活性を測定した。その結果を図7に示す。
図7に示す通り、パンドラチンAを投与した場合、濃度依存的にAP−1(activator protein-1)とDNA結合が抑制されることがわかった。従って、AP−1(activator protein-1)の活性が誘導されて、MMPs(matrix metalloproteinase)の分泌が促進されることにより、コラーゲンが分解されることを考慮すると、前記パンドラチンAはコラーゲン分解を抑制することにより、抗老化または皺改善に効果的に利用できることがわかった。
【0070】
3−3:c−Jun及びc−Fos活性に及ぼす効果
前記パンドラチンAがc−Jun及びc−Fos活性に及ぼす効果を測定するために、前記実験例3−1と同じ方法でウェスタンブロットを遂行した。その結果を図8に示す。
図8に示す通り、パンドラチンAを投与した場合、濃度依存的にc−Jun及びc−Fos活性が抑制されることがわかり、前記c−Jun及びc−FosはAP−1の転写活性に影響を及ぼす(Waskiewicz AJ, Cooper JA., Curr Opin Cell Biol., 1995; 7:797-805)点を考慮すると、前記パンドラチンAは前記実験例3−2の通り、AP−1の活性を抑制できることがわかった。
【0071】
実験例4:ケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体の皺改善効果
4−1.皮膚に塗布した場合
6週令の雌無毛マウス(Hos:HR-1)48匹を1週間適応させた後、無作為で各群当り8匹ずつ6群に分けた。無毛マウス(Hos:HR-1)に8週間紫外線を照射した。この際、紫外線照射量は1週間に3回ずつそれぞれ1MED(1 MED=50 mJ/cm2)ずつ照射し、4MEDまで増加させて、試験終了まで維持した。試験群は紫外線無処理群、紫外線処理群、紫外線処理とケンフェリアパンドラタエタノール抽出物(0.1%,及び0.5%)処理群、紫外線処理とパンドラチンA(1mM, 5mM)処理群の総6群にした。それぞれの試料はエタノール:ポリエチレングリコール(7:3(v/v))に溶解させ、8週間毎日50μlずつ背部位に塗布し、紫外線無処理群と紫外線処理群はエタノール:ポリエチレングリコール(7:3(v/v))を50μlずつ塗布した。
【0072】
皺生成予防効果を調べるために、シリコンポリマー(SILFLO Impression Material, Flexico, England)を利用して皮膚鋳型(replica)を採取した。採取した皮膚鋳型はイメージファイルで貯蔵された皺影明暗映像を、コンピュータ映像分析システムであるSkin Visiometer SV 600ソフトウェア(Courage+Khazaha Elecronic, Kln,ドイツ)を利用してRt、Rm、Rz、Ra値(Rt:皮膚表面の最も高い値と低い値間の距離、Rm:5分間測定値の内Rtの最も高い値、Rz:5部位測定値Rt平均、Ra:算術平均表面粗度)を測定した。その結果を図9及び図10に示す。
図9に示す通り、ケンフェリアパンドラタエタノール抽出物処理群(0.1%,及び0.5%)及びパンドラチンA処理群(1mM及び5mM)は、紫外線処理群に比べて皺生成量が大きく減少したことがわかった。さらに、図10に示す通り、皮膚皺生成程度を示すRt、Rm、Rz、Ra値もケンフェリアパンドラタエタノール抽出物処理群とパンドラチンA処理群で全て有意的に減少したことがわかった(p<0.05)。
前記結果からケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体を皮膚に塗布する場合、皺改善効果が優れていることがわかった。
【0073】
4−2.口腔に投与した場合
前記実験例4−1の紫外線を照射した全てのマウスに、ケンフェリアパンドラタエタノール抽出物(200mg/kg)またはパンドラチンA(50mg/kg)をTween 80が5%含まれた0.5%カルボキシメチルセルロース溶媒に溶解させて8週間毎日経口繰り返し投与した。この時、対照群である紫外線無処理群と紫外線処理群は0.5%カルボキシルメチルセルロース溶液を投与した。
前記投与後皺生成予防効果を調べるために、シリコンポリマー(SILFLO impression material, Flexico, England)を利用して皮膚鋳型を採取した。その結果を図11に示す。
図11に示す通り、ケンフェリアパンドラタエタノール抽出物またはパンドラチンAをマウスの口腔に投与した場合にも皺生成量が大きく減少されたことがわかった。
前記結果からケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体を口腔に投与する場合には皺改善効果が優れていることがわかった。
【0074】
剤形例1:化粧品
1−1及び1−2:栄養化粧水(ミルクローション)
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物と、下記表3に記載の成分をそこに示す比率で使用して一般的な方法により栄養化粧水を製造した
【表3】
【0075】
1−3及び1−4:柔軟化粧水(スキンローション)
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物と、下記表4に記載の成分をそこに示す比率で使用して一般的な方法により柔軟化粧水を製造した。
【表4】
【0076】
1−5及び1−6:栄養クリーム
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物と、下記表5に記載の成分をそこに示す比率で使用して一般的な方法により栄養クリームを製造した。
【表5】
【0077】
1−7及び1−8:マッサージクリーム
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物と、下記表6に記載の成分をそこに示す比率で使用して一般的な方法によりマッサージクリームを製造した。
【表6】
【0078】
1−9及び1−10:パック
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物をと、下記表7に記載の成分をそこに示す比率で使用して一般的な方法によりパックを製造した。
【表7】
【0079】
1−11及び1−12:ゲル
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物と、下記表8に記載の成分をそこに示す比率で使用して一般的な方法によりゲルを製造した。
【表8】
【0080】
剤形例2−食品
2−1.健康食品の製造
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 1000mg、ビタミンAアセテート 70μg、ビタミンE 1.0mg、ビタミンB1 0.13mg、ビタミンB2 0.15mg、ビタミンB6 0.5mg、ビタミンB12 0.2μg、ビタミンC 10mg、ビオチン10μg、ニコチン酸アミド 1.7mg、葉酸 50μg、パントテン酸カルシウム 0.5mg、硫酸第1鉄 1.75mg、酸化亜鉛 0.82mg、炭酸マグネシウム 25.3mg、第1リン酸カルシウム 15mg、第2リン酸カルシウム 55mg、クエン酸カルシウム 90mg、炭酸カルシウム 100mg、塩化マグネシウム 24.8mgを混合して製造することができる。その配合比は任意に変更実施しても良い。通常の健康食品製造方法により前記の成分を混合した後、顆粒を製造し、一般的な方法により健康食品組成物製造に使用できる。
【0081】
2−2.健康飲料の製造
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 1000mg、クエン酸 1000mg、オリゴ糖 100g、梅実濃縮液2g、タウリン 1gに精製水を加えて全体 900mlを通常の健康飲料製造方法により前記の成分を混合し、約1時間85℃で撹拌加熱して得られた溶液をろ過し、滅菌された2L容器に取得して密封滅菌した後、冷蔵保管して健康飲料組成物製造に使用することができる。
【0082】
2−3.チューインガム
ガムベース 20質量%、砂糖 76.9質量%、香料 1質量%及び水 2質量%と、前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 0.1質量%を配合して一般的な方法によりチューインガムを製造した。
【0083】
2−4.キャンデー
砂糖 60質量%、水飴 39.8質量%及び香料 0.1質量%と、前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または、前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 0.1質量%を配合して一般的な方法によりキャンデーを製造した。
【0084】
2−5.ビスケット
薄力1級 25.59質量%、重力1級 22.22質量%、精白糖 4.80質量%、食塩 0.73質量%、ブドウ糖 0.78質量%、パームショートニング 11.78質量%、アンモニウム 1.54質量%、重曹 0.17質量%、重亜硫酸ナトリウム0.16質量%、米粉1.45質量%、ビタミンB1 0.0001質量%、ビタミンB2 0.0001質量%、ミルク香料 0.04質量%、水 20.6998質量%、全脂粉乳 1.16質量%、代用粉乳 0.29質量%、第1リン酸カルシウム 0.03質量%、散布塩 0.29質量%及び噴霧乳 7.27質量%と前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体、または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 1質量%を配合して一般的な方法によりビスケットを製造した。
【0085】
剤形例3−医薬品
3−1.散剤
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 50mg、結晶セルロース 2gを混合した後、一般的な散剤製造方法により機密包に充填して散剤を製造した。
【0086】
3−2.錠剤
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体、または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 50mg、結晶セルロース 400mg、ステアリン酸マグネシウム 5mgを混合した後、一般的な錠剤製造方法により打錠して錠剤を製造した。
【0087】
3−3.カプセル剤
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体、または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ誘導体 30mg、乳清蛋白質 100mg、結晶セルロース 400mg、ステアリン酸マグネシウム 6mgを混合した後、一般的なカプセル剤製造方法によりゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0088】
3−4.注射剤
通常の注射剤製造方法により、活性成分を注射用蒸留水に溶解し、pHを約7.5に調節した後、前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体、または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 100mg、注射用蒸留水、pH調節剤を混合して2ml容量のアンプルに充填、滅菌して注射剤を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0089】
前記パンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、細胞増殖を誘導し、コラーゲン分解を阻止してコラーゲン合成を促進し、優れた抗老化活性、特に、優れた皺改善、予防または治療効果が有するため、化粧料組成物、食品組成物または薬学的組成物の有効な成分として利用することができる。
【技術分野】
【0001】
本出願は2007年10月17日付で出願された大韓民国特許出願第2007−0104788号を優先権として主張し、前記明細書全体は本発明の参考文献である。
本発明はパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の新規な用途に関するものである。具体的に本発明はパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ(Kaempferia pandurata)抽出物を含有することを特徴とする皺改善用及び/または抗老化用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
老化は大別して自然老化或いは内因性老化と外的老化とに区分され、自然老化は遺伝的原因によるものであるため、調節が難しいものの、外的老化は環境的原因によるものであるため、人為的な調節が容易である。従って、外的老化を防止するための研究が持続されており、特に、長期間の紫外線照射により進行する外因性光老化に伴う皺形成防止に対する研究が注目されている(Gilchrest B. A., J. Am. Acad. Dermatol., 1989:21:610-613)。前記外因性皮膚老化である光老化の臨床的特徴は、皮膚が粗く弾力性がなくなり、不規則な色素沈着が発生し、深い皺がよった肌が増加するのである。
【0003】
前記老化に影響を及ぼす外部因子等は風、温度、湿度、煙草の煙、公害、紫外線等により老化が起こり、特に、紫外線による老化を光老化と言う。特に、美容の対象として重要な顔面、頭部等の皺形成には前記光老化の影響が大きいものとして糾明されていて、抗老化または抗皺化粧品開発の基礎研究として人体皮膚や動物モデルを利用した光老化と皺形成に関する研究が活発に進められている。前記光老化の皺形成に関しては今まで皮膚の主要構成成分であるコラーゲンの合成、分解等の基礎的な生理代謝変化を検討した結果が多数報告されている(Lavker R. M., Blackwell science Inc., 1995:123-135)。
【0004】
前記光老化のメカニズムを簡単に説明すると、皮膚が多量の紫外線にさらされると、皮膚には高濃度の活性酸素(reactive oxygen species)が生成し、皮膚の酵素的、非酵素的抗酸化防御系を崩壊させる。これにより、皮膚組織の主蛋白質であるコラーゲンが著しく減少する。前記コラーゲン減少に重要な影響を及ぼすのはコラーゲン分解酵素−1(MMP−1,matrix metalloproteinase-1)である。前記酵素は細胞外基質(extracellular matrix)と基底膜(basement membrane)の分解に関与する酵素として紫外線照射により、皮膚内のコラーゲン分解酵素−1活性が増加し、コラーゲンを著しく崩壊させることにより、皺形成に極めて重要な役割をしているとの研究結果等が報告されている(Sim G. S., Kim J. H et al., Kor. J. Biotechnol. Bioeng., 2005:20(1):40-45)。
【0005】
現在、開発されている皮膚皺改善または抗老化のための有効成分等は一部化粧品原料として使用できないか、または極めて不安定で皮膚への伝達が容易でないため、特別な安定化システムと伝達体系が必要であり、皮膚皺の改善効果が認められない等の問題点があり、最近レチノイド(retinoid)を含有した皮膚保護剤に関心が集まっている。前記レチノイドは日光により蓄積された結果である皺、皮膚の厚化、垂れ、弾力減少等の光老化現象を解決する手段として利用されている。しかしながら、レチノイドは極めて不安定な化合物であって、紫外線、水分、熱、酸素に敏感なため、容易に化学的な変化を起こす問題点があり、これを解決するための天然物由来の有効成分開発の研究に力が注がれている実情である。
【0006】
一方、ケンフェリアパンドラタ(Kaempferia pandurata)は、ボエセンベルジアパンドラタ(Boesenbergia pandurata)としても知られているショウガ科植物であり、根茎部位は風邪、腸炎、皮膚疾患及び尿道痛症に広く使用されている。ケンフェリアパンドラタには、ピノセンブリンカルコン(pinocembrin chalcone)、カーダモニン(cardamonin)、ピノセム(pinocembrin)、ピノストロビン(pinostribin)、4−ヒドロキシパンドラチンA(4-hydroxypanduratin A)、パンドラチンA(panduratin A)等が含有されており、このような成分は抗癌効果を呈することが報告されており(Trakoontivakorn, G., 等、J. Arig. Food chem., 49, 3046-3050, 2001)、フラボノイド系統のジヒドロカルコン(dihydrochalcone)化合物等は、殺虫効果を呈することが報告されている(Pandji, C., 等、Phytochemistry, 34, 415-419, 1993)。さらに、大韓民国登録特許第492034号にはイソパンドラチンAのようなパンドラチン誘導体を含有する虫歯及び歯周炎予防と治療用抗菌剤及び口腔組成物についての記載がある。しかしながら、パンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の皺改善または抗老化効果については未だに報告された例がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国登録特許第492034号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Gilchrest B. A., J. Am. Acad. Dermatol., 1989:21:610-613
【非特許文献2】Lavker R. M., Blackwell science Inc., 1995:123-135
【非特許文献3】Sim G. S., Kim J. H et al., Kor. J. Biotechnol. Bioeng., 2005:20(1):40-45
【非特許文献4】Trakoontivakorn, G., 等、J. Arig. Food chem., 49, 3046-3050, 2001
【非特許文献5】Pandji, C., 等、Phytochemistry, 34, 415-419, 1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここに、本発明者等は皺改善または抗老化活性がある天然物由来の物質を研究する中、パンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物が前記のような活性があることを見出し本発明を完成した。
【0010】
従って、本発明の目的は下記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺改善及び/または抗老化用化粧料組成物を提供することにある。
【化1】
【0011】
本発明の他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺改善用及び/または抗老化用食品組成物を提供することにある。
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺予防及び治療用及び/または抗老化用薬学的組成物を提供することにある。
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の化粧料組成物製造のための使用を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の食品組成物製造のための使用を提供することにある。
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の薬学的組成物製造のための使用を提供することにある。
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の皺予防、改善または治療方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の抗老化方法を提供することにある。
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物のコラーゲン合成を促進する方法を提供することにある。
本発明のさらに、他の目的は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物のコラーゲン分解を抑制する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明は下記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺改善用及び/または抗老化用化粧料組成物を提供する。
【化2】
【0015】
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺改善用及び/または抗老化用食品組成物を提供する。
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺予防及び治療用及び/または抗老化用薬学的組成物を提供する。
本発明は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の化粧料組成物製造のための使用を提供する。
【0016】
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の食品組成物製造のための使用を提供する。
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の薬学的組成物製造のための使用を提供する。
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の皺予防、改善または治療方法を提供する。
【0017】
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の抗老化方法を提供する。
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物のコラーゲン合成を促進する方法を提供する。
本発明は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物のコラーゲン分解を抑制する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ケンフェリアパンドラタで皺改善活性物質を分離する過程を示す。
【図2】ケンフェリアパンドラタエタノール抽出物のコラーゲン分解酵素−1の抑制活性及びプロコラーゲン合成促進活性を示す(A:コラーゲン分解酵素−1蛋白質発現抑制活性、B:コラーゲン分解酵素−1mRNA発現抑制活性、C:プロコラーゲン生合成促進活性、D:プロコラーゲンmRNA発現促進活性)。
【図3】パンドラチンAのコラーゲン分解酵素−1の抑制活性及びプロコラーゲン合成促進活性を示す(A:コラーゲン分解酵素−1蛋白質発現抑制活性、B:コラーゲン分解酵素−1mRNA発現抑制活性、C:プロコラーゲン生合成促進活性、D:プロコラーゲンmRNA発現促進活性)。
【図4】イソパンドラチンAのコラーゲン分解酵素−1の抑制活性及びプロコラーゲン合成促進活性を示す(A:コラーゲン分解酵素−1蛋白質発現抑制活性、B:コラーゲン分解酵素−1mRNA発現抑制活性、C:プロコラーゲン生合成促進活性、D:プロコラーゲンmRNA発現促進活性)。
【図5】4−ヒドロキシパンドラチンのコラーゲン分解酵素−1の抑制活性及びプロコラーゲン合成促進活性を示す(A:コラーゲン分解酵素−1蛋白質発現抑制活性、B:コラーゲン分解酵素−1mRNA発現抑制活性、C:プロコラーゲン生合成促進活性、D:プロコラーゲンmRNA発現促進活性)。
【図6】ケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体がMAPKs活性に及ぼす効果を示す。
【図7】ケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体がAP−1のDNA結合活性に及ぼす効果を示す。
【図8】ケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体がc−Jun及びc−Fos活性に及ぼす効果を示す。
【図9】マウスの皮膚にケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体を塗布した後の皮膚鋳型の写真である。
【図10】マウスの皮膚にケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体を塗布した後、Rt、Rm、Rz、Ra値を測定した結果を示す(Rt:皮膚表面の最も高い値と低い値間の距離、Rm:5部位測定値の内Rtの最も大きい値、Rz:5部位測定値Rt平均、Ra:算術平均表面粗度)。
【図11】マウスの経口にケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体を投与した後の鋳型の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の内容をより詳細に説明する。
本発明で“ケンフェリアパンドラタ抽出物”とは、ボエセンベルジアパンドラタとも呼ばれる、ケンフェリアパンドラタ由来の前記パンドラチン誘導体を含有する抽出物を言う。前記パンドラチン誘導体を含有できるものであれば、前記ケンフェリアパンドラタ抽出物の製造方法には制限がないが、好ましくは、ケンフェリアパンドラタ植物または植物の一部(幹、根茎または葉)から水、C1〜C6の有機溶媒及び亜臨界または亜臨界流体からなる群より選ばれる一つ以上の溶媒で抽出することにより製造することができる。さらに、必要な場合、当業界で公知の方法により、ろ過及び濃縮段階を追加的に含めて製造することができる。
【0020】
前記C1〜C6の有機溶媒はこれに限定はされないものの、好ましくは、C1〜C6のアルコール、アセトン、エテール、ベンゼン、クロロホルム、酢酸エチル(ethyl acetate)、ジクロロメタン(methylene chloride)、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテルからなる群より選ばれるものを言う。
【0021】
さらに、本明細書において“超臨界流体”とは、一般的な条件では気体状態ではあるものの、臨界温度と臨界圧力以上では流体であることを言い、亜臨界流体は亜臨界液体と気体とを含み、特に、亜臨界液体は温度が超臨界温度と飽和温度よりも低い状態の流体であり、亜臨界気体は温度が飽和温度よりも高く、圧力は超臨界圧力より低い状態の流体を言う。前記超臨界流体及び亜臨界流体は医薬品工業、食品工業、化粧品・香料工業、化学工業、エネルギー工業及びその他多様な分野に応用されている。本発明で使用できる超臨界流体及び亜臨界流体は特別に制限されるのではなく、例えば、二酸化炭素、窒素、亜酸化窒素、メタン、エチレン、プロパン、プロピレン、石油エテール、エチルエテール及びシクロヘキサン等を利用することができる。二酸化炭素は大量購入が可能で、比較的安価で、非爆発性で、加工用として十分に安全であるため特に好ましい。前記二酸化炭素は臨界温度が31.1℃で臨界圧力は73.8気圧である。
【0022】
本発明の一実施例では、乾燥したケンフェリアパンドラタを粉砕し、これにエタノール、ヘキサンまたはクロロホルム溶媒を利用して抽出し、ろ過及び濃縮段階を経て、ケンフェリアパンドラタエタノール、ヘキサンまたはクロロホルム抽出物を製造した。さらに、超臨界流体として二酸化炭素を利用した超臨界流体抽出機に、ケンフェリアパンドラタを投与してケンフェリアパンドラタ超臨界抽出物を製造した(実施例1参照)。
【0023】
本発明で“パンドラチン誘導体”とは、下記化学式1〜3からなる群より選ばれる化合物を言う。具体的に化学式1、化学式2、及び化学式3で示される化合物はそれぞれ、パンドラチンA、イソパンドラチンA、4−ヒドロキシパンドラチンAである。
【化3】
【0024】
前記パンドラチン誘導体は、市販のものを用いるか、または公知の合成方法を利用して製造することができ、前記ケンフェリアパンドラタ抽出物またはケンフェリアパンドラタ植物を圧搾して得たオイルから分離精製して収得することができる。前記ケンフェリアパンドラタ抽出物からパンドラチン誘導体の分離及び精製は、好ましくは、シリカゲルまたは活性アルミナ等の各種合成樹脂を充填したカラムクロマトグラフィー及び高性能液体クロマトグラフィー等を単独または組み合わせて行うが、この方法に限定されるものではない。
【0025】
本発明の一実施例では、乾燥したケンフェリアパンドラタを粉砕後、エタノールと混合して溶媒抽出した後、溶媒を除去して抽出成分を濃縮した。濃縮された粗抽出物と酢酸エチルを混合して酢酸エチル溶解性成分を抽出し、酢酸エチルを除去して酢酸エチル溶解性成分を抽出した後、各成分の極性差によって、各成分別に分離した。具体的に一次的にヘキサン、酢酸エチルを混合した溶媒を利用して展開させることにより不純物を除去して、これを再度ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルを混合した溶媒を利用して分離することにより。最終的にパンドラチンA(panduratin A)、イソパンドラチンA(isopanduratin A)または4−ヒドロキシパンドラチンA(4-hydroxypanduratin A)を収得することができた(図1及び実施例2〜実施例4参照)。
【0026】
前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、抗老化活性が優れており、特に皺改善、予防または治療効果が優れている。
【0027】
具体的に、先ず、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、優れた細胞増殖活性を有している。繊維芽細胞を使用したMTT実験を行った結果、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を投与した場合、細胞増殖が著しく誘導されることを確認した(実施例1参照)。
【0028】
さらに、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、コラーゲン分解酵素−1の発現を抑制してコラーゲン分解を抑制し、プロコラーゲン合成を誘導することにより、コラーゲン合成を促進する活性がある。前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を処理した場合、コラーゲン分解酵素−1の発現が抑制される反面、プロコラーゲン合成は増加されたことを確認した(実験例2参照)。
【0029】
ここに、本発明者等は前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物が、コラーゲン分解を抑制してコラーゲン合成を促進するメカニズムを確認した。
【0030】
具体的には、コラーゲン分解が発生するメカニズムは、MAPKs(mitogen-activated protein kinases)に属するERK(extracellular-regulated protein kinases)、JNK(Jun-N-terminal Kinase)及びp38キナーゼがリン酸化されて活性化すれば、AP−1(activator protein-1)の活性が誘導され(Xu Y,Fisher GJ.,J Dermatol Sci Suppl 2005;1:S1-S8)、DNAと結合し、これを介してMMPs(matrix metalloproteinase)分泌が起こり、コラーゲンが分解される。この際、c−Jun及びc−Fosは前記AP−1とDNA結合に影響を及ぼすことが知られている(Waskiewicz AJ,Cooper JA.,Curr Opin Cell Biol.,1995; 7:798-805)。
【0031】
パンドラチンAを投与した場合、前記ERK、JNK及びp38キナーゼの活性及びAP−1とDNA結合が抑制され、さらに前記c−Jun及びc−Fosの活性が抑制されることにより、結局MMPs分泌が抑制されることがわかった。従って、パンドラチンAはコラーゲン分解を抑制してコラーゲン活性を促進する活性があることがわかった(実験例3参照)。
【0032】
さらに、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を、紫外線にさらされて皺が発生したマウスの皮膚に塗布するか、または口腔に投与した結果、著しく皺が改善されたことを確認した(実験例4参照)。
【0033】
従って、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、抗老化活性が優れていて、特に、皺改善、予防または治療効果が優れているため、化粧料組成物、食品組成物または薬学的組成物の有効な成分として利用することができる。
【0034】
前記本発明の化粧料組成物は、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を、有効成分として含有し、皮膚学的に許容可能な賦形剤と共に、基礎化粧品組成物(化粧水、クリーム、エッセンス、クレンジングフォーム及びクレンジングウォータのような洗顔剤、パック、ボディオイル)、色調化粧品組成物(ファウンデーション、リップスティック、マスカラ、メーキャップベース)、頭髪製品組成物(シャンプー、リンス、ヘアコンデショーナ、ヘアジェル)及び石鹸等の形態で製造することができる。
【0035】
前記賦形剤は、これに限定はされないものの、例えば、皮膚軟化剤、皮膚浸透増強剤、着色剤、芳香剤、乳化剤、濃化剤及び溶媒を含み得る。さらに、香料、色素、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤及び保湿剤等を含むことができ、物性改善を目的に漸増剤、無機塩類、合成高分子物質等を含み得る。例えば、本発明の化粧料組成物で洗顔剤及び石鹸を製造する場合には、通常の洗顔剤及び石鹸ベースに前記パンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を添加して容易に製造することができる。クリームを製造する場合には、一般的な水中油滴型(O/W)のクリームベースに、前記パンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物、またはこれの塩を添加して製造することができる。さらに、香料、キレート剤、色素、酸化防止剤、防腐剤等と物性改善を目的とした蛋白質、ミネラル、ビタミン等合成または天然素材を添加できる。
【0036】
本発明の化粧料組成物に含有される前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物の含量は、これに限定はされないものの、組成物の総質量の0.001〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましい。前記含量が0.001質量%未満では目的とする抗老化または皺改善効果を期待できず、10質量%を超えると安定性または剤形製造に問題が生じる。
【0037】
一方、前記本発明の食品組成物は、機能性食品、栄養補助剤、健康食品及び食品添加剤等の全ての形態を含む。
【0038】
前記類型の食品組成物は、当業界で公知の方法により、多様な形態で製造し得る。これに限定はされないものの、例えば、健康食品には、前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物そのものを、お茶、ジュース及びドリンクの形態で製造して飲用できるように、液状化、顆粒化、カプセル化及び粉末化して摂取し得る。さらに、前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を、抗老化または皺改善効果があるとして知られた公知の活性成分と共に、混合して組成物の形態で製造し得る。さらに、機能性食品としてはこれに限定はされないものの、飲料(アルコール性飲料を含む)、果実及びその加工食品(例えば、果物缶詰、瓶詰、ジャム、ママレード等)、魚類、肉類及びその加工食品(例えば、ハム、ソーセージ、コーンビーフ等)、パン類及び麺類(例えば、うどん、ソバ、ラーメン、スパゲッティ、マカロニ等)、果汁、各種ドリンク、クッキー、飴、乳製品(例えば、バター、チーズ等)、食用植物油脂、マーガリン、植物性蛋白質、レトルト食品、冷凍食品、各種調味料(例えば、味噌、醤油、ソース等)に前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を添加して製造しすることができる。さらに、前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を食品添加剤の形態で使用するためには、粉末または濃縮液の形態で製造することができる。
【0039】
本発明の食品組成物の内、パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物の好ましい含有量としては、これに限定はされないものの、好ましくは、最終的に製造された食品の総質量の0.01〜50%である。より好ましくは、本発明の食品組成物は特に、抗老化または皺改善に効果があるものとして知られている活性成分と共に、混合して健康食品の形態で製造することができる。
【0040】
一方、前記本発明の薬学的組成物は、前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を単独で含有するかまたは一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または稀釈剤を追加して含有し得る。
【0041】
薬学的に許容される担体としては、例えば、経口投与用担体または非経口投与用担体が挙げられる。経口投与用担体はラクトース、澱粉、セルロース誘導体、マグネシウムステアレート、ステアリン酸等を含み得る。さらに、非経口投与用担体は水、適合したオイル、食塩水、水性グルコース及びグリコール等を含むことができて、安定化剤及び保存剤を追加的して含み得る。適合した安定化剤には亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。適合した保存剤にはベンズアルコニウムクロライド、メチル−またはプロピル−パラベン及びクロロブタノールがある。その他の薬学的に許容される担体は、下記の文献に記載されている(Remington's Pharmaceutical Sciences,19th ed., Mark Publishing Company,Easton,PA,1995)。
【0042】
本発明の薬学的組成物は人間を始め、哺乳動物にどのような方法でも投与できる。例えば、経口または非経口的に投与できる。非経口的な投与方法はこれに限定はされないものの、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、隔膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻孔内、腸管、局所、舌下または直腸内に投与してもよい。本発明の薬学組成物は、上述したような投与経路により、経口投与用または非経口投与用製剤に製剤化し得る。経口投与用製剤の場合に、本発明の組成物は粉末、顆粒、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリ剤、懸濁液等で当業界で公知の方法を利用して剤形化でき得る。例えば、経口用製剤は活性成分を固体賦形剤と配合した後、これを粉砕して適合した補助剤を添加した後、顆粒混合物に加工することにより、錠剤または糖衣錠剤を収得し得る。適した賦形剤の例には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール及びマルチトール等を含む糖類と、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉及び馬鈴薯澱粉等を含む澱粉類、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等を含むセルロース類、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等のような充填剤が含まれる。さらに、必要に応じて架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはナトリウムアルキネート等を崩解剤として添加することができる。さらに、本発明の薬学的組成物は抗凝縮剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤等を添加することができる。非経口投与用製剤の場合には、注射剤、クリーム剤、ローション剤、外用軟膏剤、オイル剤、保湿剤、ゲル剤、エアローゾル及び鼻孔吸込み剤の形態で当業界で公知の方法で剤形化することができる。これら剤形は公知の調剤録(Remington's Pharmaceutical Sciences,15th Edition,1975. Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania 18042, Chapter 87:Blaug,Seymour)に記載されている。
【0043】
本発明の薬学的組成物の総有効量は、単一投与量で患者に投与することも、多重投与量(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)により投与することもできる。本発明の薬学組成物は疾患の程度によって有効成分の含量を変更することができる。非経口投与用の場合にはパンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を基準に、1日に体重1kg当り、好ましくは0.01〜50mg、さらに好ましくは0.1〜30mgの量で投与できるようにし、さらに、経口投与の場合には前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を基準に、1日に体重1kg当り、好ましくは0.01〜100mg、さらに好ましくは0.1〜50mgの量で投与できるように、1回〜数回に分けて投与することができる。しかしながら、前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物の用量は、薬学的組成物の投与経路及び治療回数のみならず、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌及び排泄率等多様な要因等を考慮して患者に対する有効投与量が決定されるものであることから、このような点を考慮する場合、当分野の通常的な知識を有する者であれば、前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を抗老化または皺の予防または治療としての特定した用途に伴う適切な有効投与量を決定し得るであろう。本発明に伴う薬学組成物は本発明の効果を呈する限り、その剤形、投与経路及び投与方法に特別に限定はされない。
【0044】
さらに、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、抗老化活性が優れていて、特に、皺改善、予防または治療効果が優れているため、抗老化、皺改善、予防または治療用化粧料組成物、食品組成物または薬学的組成物製造のために利用することができる。
【0045】
前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を利用して、化粧料組成物、食品組成物または薬学的組成物を製造する方法及び前記組成物に対する、下記のパンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物の含量は上述した通りである。
【0046】
さらに、前記化学式1〜3からなる群より選ばれる前パンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、皺予防、改善または治療及び抗老化方法に利用することができる。
【0047】
前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物を皺予防、改善または治療及び抗老化に利用するために、これに限定はされないものの、これを必要とする個体に有効な量で投与することができる。
【0048】
前記“必要とする個体”とは、皺予防、改善または治療及び老化抑制が必要な哺乳動物を言い、好ましくは、人間を言う。さらに、前記“有効な量”とは、前記個体内でコラーゲンの分解を抑制し、コラーゲンの合成を促進して皺予防、改善または治療及び抗老化効果を呈する量を言う。前記有効な量で投与するための投与方法及び投与量は具体的に上述した通りである。
【0049】
さらに、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、コラーゲン合成を促進してコラーゲン分解を抑制する方法に利用することができる。
【0050】
前記パンドラチン誘導体またはケンフェリアパンドラタ抽出物のコラーゲン合成促進及びコラーゲン分解抑制活性及びそのメカニズムについては上述した通りである。
【0051】
以上に説明した通り、前記化学式1〜3からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、細胞増殖を誘導してコラーゲン分解を阻止し、コラーゲン合成を促進することにより抗老化活性が優れていて特に、皺改善、予防または治療効果が優れているため化粧料組成物、食品組成物または薬学的組成物の有効な成分として利用することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び実験例を挙げて本発明の構成及び効果をより具体的に説明する。しかしながら、これら実施例及び実験例は本発明に対する理解を促すために例示の目的にのみ提供されたものであって、本発明の範疇及び範囲が下記実施例及び実験例により限定されるものではない。
【0053】
実施例1:パンドラチンを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の製造
1−1.ケンフェリアパンドラタエタノール抽出物の製造
乾燥したケンフェリアパンドラタ根茎をミキサーで粉砕し、粉砕したケンフェリアパンドラタ試料100gをエタノール1Lに入れて48時間常温で冷浸して抽出した。抽出された試料はろ紙(Whatman No.2)でろ過し、ろ液を真空回転濃縮機で濃縮して溶媒成分を除去し、ケンフェリアパンドラタエタノールの抽出物を得た。
【0054】
1−2.ケンフェリアパンドラタヘキサン抽出物の製造
乾燥したケンフェリアパンドラタ根茎をミキサーで粉砕し、粉砕したケンフェリアパンドラタ試料100gをヘキサン1Lに入れて48時間常温で冷浸して抽出した。抽出された試料はろ紙(Whatman No.2)でろ過し、ろ液を真空回転濃縮機で濃縮して溶媒成分を除去し、ケンフェリアパンドラタヘキサン抽出物を得た。
【0055】
1−3.ケンフェリアパンドラタクロロホルム抽出物の製造
乾燥したケンフェリアパンドラタ根茎をミキサーで粉砕し、粉砕したケンフェリアパンドラタ試料100gをクロロホルム1Lに入れて48時間常温で冷浸して抽出した。抽出された試料はろ紙(Whatman No.2)でろ過し、ろ液を真空回転濃縮機で濃縮して溶媒成分を除去し、ケンフェリアパンドラタクロロホルム抽出物を得た。
【0056】
1−4.ケンフェリアパンドラタ超臨界抽出物の製造
超臨界流体として二酸化炭素CO2を利用した超臨界流体抽出機で、ケンフェリアパンドラタ根茎から超臨界抽出物を収得した。この際、抽出温度は50℃、抽出圧力は200barで抽出した後、抽出物から溶媒を除去して超臨界抽出物を得た。
【0057】
実施例2:パンドラチンAの分離
前記実施例1−1で得た濃縮されたケンフェリアパンドラタエタノール抽出物と、酢酸エチルを混合して酢酸エチル溶解性成分を抽出し、酢酸エチルを減圧下で除去して酢酸エチル溶解性成分を濃縮した後、シリカゲルを6×15cmで充填したカラムでヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルを15:5:1.5(v/v/v)の比率で混合した溶媒システムを利用して分取した順に従って、全6分画に分けてそれぞれの分画を濃縮乾燥した。6個の分画の内、3番分画(分画3)をヘキサン、酢酸エチル、メタノールをそれぞれ18:2:1(v/v/v)の展開溶媒で薄層クロマトグラフィー(TLC,silica gel 60F254,Merck)して、分取した順に従い全3分画に分けて濃縮乾燥した。最終的に前記3個の分画の内、2番分画(分画3−2)をリサイクリング高性能液体クロマトグラフィー(recycling HPLC,column:W-252,20.0mm IDX500mm L)を利用して、順に従い全2分画に分けてそれぞれの分画を濃縮乾燥した。最終的に前記2個の分画の内、2番分画(分画3−2−2)を濃縮乾燥させ、純粋な単一皺改善活性物質である下記化学式1のパンドラチンAを分離した。
【化4】
【0058】
実施例3:イソパンドラチンAの分離
前記実施例1−1で得た濃縮されたケンフェリアパンドラタエタノール抽出物と、酢酸エチルを混合して酢酸エチル溶解性成分を抽出し、酢酸エチルを減圧下で除去して酢酸エチル溶解性成分を濃縮した後、シリカゲルを6×15cmで充填したカラムでヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルを15:5:1.5(v/v/v)の比率で混合した溶媒システムを利用して分取した順に従い、全6分画に分けてそれぞれの分画を濃縮乾燥した。6個の分画の内4番分画(分画4)をリバースフェィズ−18,(Rp-18 LIChropep,25-40m)充填物を利用してメタノール、水をそれぞれ9:1(v/v)の比率で混合した溶媒システムで溶出させ分取した順に従い、全2分画を得て、得られた分画の内2番分画(分画4−2)を濃縮乾燥した後、クロロホルム、メタノールを10:0.2(v/v)の比率で混合した溶媒システムを利用して溶出させて順に従い、全2分画に分けてそれぞれの分画を濃縮乾燥した。最終的に前記2個の分画の内、2番分画(分画4−2−2)をヘキサン、酢酸エチルを10:3(v/v)の比率で混合した溶媒システムを利用して溶出させて順に従い、全2分画に分けてそれぞれの分画を濃縮乾燥した。最終的に前記2個の分画の内、2番分画(分画4−2−2−2)を濃縮乾燥させ、純粋な単一皺改善活性物質である下記化学式2のイソパンドラチンAを分離した。
【化5】
【0059】
実施例4:4−ヒドロキシパンドラチンAの分離
前記実施例1−1で得た濃縮されたケンフェリアパンドラタエタノール抽出物と、酢酸エチルを混合して酢酸エチル溶解性成分を抽出し、酢酸エチルを減圧下で除去して酢酸エチル溶解性成分を濃縮した後、シリカゲルを6×15cmで充填したカラムでヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルを15:5:1.5(v/v/v)の比率で混合した溶媒システムを利用して分取した順に従い、全6分画に分けてそれぞれの分画を濃縮乾燥した。6個の分画の内6番分画(分画6)をジクロロメタン、メタノールを19:1(v/v)の比率で混合した溶媒システムで溶出させ、分取した順に従い、全3分画を得て、前記3個の分画の内2番分画(分画6−2)を再度クロロホルム、メタノールを20:1(v/v)比率で混合した溶媒システムを利用して分取した順に従い全2分画を得た。最終的に前記2個の分画の内、2番分画(分画6−2−2)をリサイクリング高性能液体クロマトグラフィー(recycling HPLC,column:W-252,20.0mm IDX500mm L)を利用して純粋な単一皺改善活性物質である下記化学式3の4−ヒドロキシパンドラチンAを分離した。
【化6】
【0060】
実験例1:ケンフェリアパンドラタ抽出物及びパンドラチン誘導体の細胞増殖効果
1−1.ケンフェリアパンドラタ抽出物の細胞増殖効果
前記実施例1−1で製造されたケンフェリアパンドラタエタノール抽出物を利用して、皮膚の皺改善効果を検証する細胞増殖効果を見るために、繊維芽細胞を使用したMTT試験法[3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide reduction method]を行った。皮膚皺改善効果があるものとして知られた緑茶抽出物(green tea extract)を比較対照群とした。その結果を下記表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
前記表1に示した通り、本発明のケンフェリアパンドラタ抽出物は比較群より細胞増殖効果が優れていることが確認できた。
【0063】
1−2.パンドラチン誘導体の細胞増殖効果
前記実施例2〜実施例4で製造されたパンドラチン誘導体を利用して皮膚の皺改善効果を検証する細胞増殖効果を見るために、繊維芽細胞を利用したMTT試験法[3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide reduction method]を行った。皮膚皺改善効果があるものとして知られたEGCG(epigallocatechin-3-O-gallate)を比較対照群とした。その結果を下記表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
前記表2に示した通り、本発明のパンドラチン誘導体は比較群より細胞増殖効果が優れていることが確認できた。
【0066】
実験例2:ケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体のコラーゲン分解酵素−1抑制及びプロコラーゲン合成促進効果
2−1.ケンフェリアパンドラタ抽出物の場合
前記実施例1で製造したケンフェリアパンドラタエタノール抽出物のコラーゲン分解酵素−1抑制活性とプロコラーゲン合成促進効果をウェスタンブロットとRT−PCR(Reverse Transcriptase-Polymerase Chain Reaction)の方法により測定した結果を図2に示す。
具体的には、繊維芽細胞培養液で蛋白質を抽出し、蛋白質分析試藥(Bio-Rad Laboratories Inc., Hercules,CA, 米国)を利用して蛋白質を定量した。ウェスタンブロットを実施するために、前記同量の蛋白質を3分間加熱して冷ました後、10%SDS−PAGEで電気泳動でニトロセルロース膜(Amersham International, Little Chalfont, 英国)に転移させた。前記膜はTBST(10mM Tris,pH7.5,100mM NaCl,0.1% Tween 20)に5%脱脂粉乳で飽和されていて、2時間かけて1次抗体(1:1000稀釈)でブラットを行い、TBSTで洗浄した後、2時間かけて2次抗体(1:2000稀釈)でブラットを行った後、TBSTで3回洗浄した。ブラットされた抗体はECL検出システム(Amersham International, Little Chalfont, 英国)で分析した。
さらに、RT−PCRを遂行するために収得した繊維芽細胞をTRIZOL(Invitrogen, 米国)を使用して総RNAを分離し、分離された総RNAを定量してコラーゲン分解酵素−1及びプロコラーゲンプライマーとTag Polymeraseを利用した。具体的にコラーゲン分解酵素−1プライマーを利用して94℃で30秒、50℃で1分、72℃で1分を25回繰り返してRT−PCRを実施し、プロコラーゲンプライマーを利用して94℃で30秒、60℃で1分、72℃で1分を28回繰り返してRT−PCRを実施した。前記実施後、1%アガロースゲルを利用して電気泳動した後、EtBr(Ethidium bromide)発現を介してコラーゲン分解酵素−1及びプロコラーゲンのmRNA発現量を分析した。
前記図2に記載された通り、前記ケンフェリアパンドラタエタノールを抽出物を処理した時、コラーゲン分解酵素−1蛋白質とmRNA発現量が濃度依存的に抑制された反面、コラーゲン蛋白質とmRNA発現量は濃度依存的に増加されることを確認した(図2参照)。
さらに、前記実施例1で製造したケンフェリアパンドラタヘキサン抽出物、クロロホルム抽出物及び超臨界抽出物に対しても前記と同じ実験を行った結果、ケンフェリアパンドラタヘキサン抽出物を処理した場合、対照群に比べてコラーゲン分解酵素−1の発現量は37%減少し、プロコラーゲン合成は250%増加した(図示せず)。さらに、ケンフェリアパンドラタクロロホルム抽出物を処理した場合、対照群に比べてコラーゲン分解酵素−1の発現量は40%減少し、プロコラーゲン合成は290%増加した(図示せず)。最後にケンフェリアパンドラタ超臨界抽出物を処理した場合、対照群に比べてコラーゲン分解酵素−1の発現量は29%減少し、プロコラーゲン合成は220%増加した(図示せず)。
前記結果からケンフェリアパンドラタ抽出物がコラーゲン分解酵素の発現を抑制し、プロコラーゲン合成を増加させることにより、抗老化または皺改善に効果的に利用し得ることがわかった。
【0067】
2−2.パンドラチン誘導体の場合
前記実施例2〜4で製造されたパンドラチン誘導体のコラーゲン分解酵素−1抑制活性と、プロコラーゲン合成促進効果を前記実験例2−1と同様の方法でウェスタンブロットとRT−PCRを遂行して測定した。その結果を図3〜5に示す。
前記図3〜5に記載された通り、前記実施例2〜4で製造されたパンドラチン誘導体のパンドラチンA(図3参照)。イソパンドラチンA(図4参照)または4−ヒドロキシパンドラチンA(図5参照)をそれぞれ処理した場合、コラーゲン分解酵素−1蛋白質とmRNAレベルが濃度依存的に抑制される反面、プロコラーゲン蛋白質とmRNAの発現は濃度依存的に増加した。特に、同一濃度で比較群であるEGCGと比較すると、EGCGより優れた活性を示した。
前記結果から前記パンドラチン誘導体はコラーゲン分解酵素の発現を抑制し、プロコラーゲン合成を促進することにより、抗老化または皺改善に有効に利用し得ることがわかった。
【0068】
実験例3:ケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体のコラーゲン分解抑制メカニズム
3−1.MAPKs(mitogen-activated protein kinases)活性に及ぼす効果
人間の皮膚繊維芽細胞(CCD-986sk, ATCC, Manassas, VA, 米国)をDMEM(Gibco, Grand Island, NY, 米国)培地に培養した。前記繊維芽細胞が10cm培養皿(SPL,ソウル、韓国)に80%まで培養されるようにして、24時間無血清培養培地で追加培養した。前記細胞を24時間前記実施例2のパンドラチンAが含有された無血清DMEMに継続して培養した。前記培養後、培地を5mlのPBS(phosphate-buffered saline)に代えて前記細胞に紫外線(20mJ/cm2)を照射した。この際、陰性対照群として同一条件で紫外線を照射していない細胞を、陽性対照群としてEGCG(epigallocatechin-3-O-gallate)を使用した。
前記繊維芽細胞をRIPAバッファー(Sigma-Aidrich Co., St, Louis, MO, 米国)に溶解させ、蛋白質分析試藥(Bio-Rad Laboratories Inc., Hercules, CA, 米国)を利用して蛋白質を定量した。ウェスタンブロットを実施するために、前記同量の蛋白質を3分間加熱して冷ました後、10%SDS−PAGEで電気泳動でニトロセルロース膜(Amersham International, Little Chalfont, 英国)に転移させた。前記膜はTBST(10mM Tris, pH7.5, 100mM NaCl,0.1% Tween 20)に5%脱脂粉乳で飽和されていて、2時間かけて1次抗体(1:1000稀釈)でブラットを行い、TBSTで洗浄した後、2時間かけて2次抗体(1:2000稀釈)でブラットを行った後、TBSTで3回洗浄した。ブラットされた抗体はECL検出システムで分析し、検出程度はRFLP scan version 2.1ソフトウェアプログラムを利用して測定した。
前記実験過程を介してMAPKs(mitogen-activated protein kinases)に属するERK(extracellular-regulated protein kinase)、JNK(Jun-N-terminal kinase)及びp38キナーゼの活性変化を測定した。その結果を図6に示す。
図6に示す通り、紫外線により、ERK、JNK及びp38キナーゼがリン酸化されて活性化が誘導されるものの、パンドラチンAを投与した場合、濃度依存的にERK、JNK及びp38キナーゼの活性が抑制されることがわかった。前記ERK、JNK及びp38キナーゼがリン酸化されて活性化されると、AP−1(activator protein-1)の活性が誘導され(Xu Y, Fisher GJ., J Dermatol Sci Suppl 2005;1:S1-S8)、これを介してMMPs(matrix metalloproteinase)の分泌が促進されて、コラーゲンが分解されることを考慮すると(Huang C, Schmid PC, Ma WY, Schmid HH, Dong Z.,J Biol Chem 1997;272:4187-94)、前記パンドラチンAはコラーゲン分解を抑制することにより、抗老化または皺改善に効果的に利用し得ることがわかった。
【0069】
3−2.AP−1(activator protein-1)のDNA結合活性に及ぼす効果
AP−1(activator protein-1)のDNA結合活性を測定するために、EMSA(Electrophoretic mobility shift assay)を遂行した。具体的に前記実験例3−1で培養してパンドラチンAが投与され、紫外線を照射した繊維芽細胞をPBSで洗浄して収集した後、100μlのバッファー(10mM HEPES,10mM KCl, 0.1mM EDTA, 1mM DTT, 0.5mM PMSF, pH7.9)に15分間再度浮遊させ、30μlの溶解5%NP−40を追加して15秒間混合した。サイトソル(cytosol)部分を遠心分離して除去し、核ペレット(nuclear pellets)を抽出バッファー(20mM HEPES, 0.4 M NaCl, 1mM EDTA, 1mM DTT, 1mM PMSF, pH7.9)で溶解させた。定量された核蛋白質を利用して製造者の指示(Gel Shift Kit System; Panomics, Fremont, CA, 米国)に従い、gel shift assayを遂行した。前記遂行後探知された蛋白質はECL検出システム(Amersham International, Little Chalfont, 英国)で分析し、検出程度はRFLP scan version 2.1ソフトウェアプログラムを利用して測定した。
前記実験過程を介して、AP−1(activator protein-1)のDNA結合活性を測定した。その結果を図7に示す。
図7に示す通り、パンドラチンAを投与した場合、濃度依存的にAP−1(activator protein-1)とDNA結合が抑制されることがわかった。従って、AP−1(activator protein-1)の活性が誘導されて、MMPs(matrix metalloproteinase)の分泌が促進されることにより、コラーゲンが分解されることを考慮すると、前記パンドラチンAはコラーゲン分解を抑制することにより、抗老化または皺改善に効果的に利用できることがわかった。
【0070】
3−3:c−Jun及びc−Fos活性に及ぼす効果
前記パンドラチンAがc−Jun及びc−Fos活性に及ぼす効果を測定するために、前記実験例3−1と同じ方法でウェスタンブロットを遂行した。その結果を図8に示す。
図8に示す通り、パンドラチンAを投与した場合、濃度依存的にc−Jun及びc−Fos活性が抑制されることがわかり、前記c−Jun及びc−FosはAP−1の転写活性に影響を及ぼす(Waskiewicz AJ, Cooper JA., Curr Opin Cell Biol., 1995; 7:797-805)点を考慮すると、前記パンドラチンAは前記実験例3−2の通り、AP−1の活性を抑制できることがわかった。
【0071】
実験例4:ケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体の皺改善効果
4−1.皮膚に塗布した場合
6週令の雌無毛マウス(Hos:HR-1)48匹を1週間適応させた後、無作為で各群当り8匹ずつ6群に分けた。無毛マウス(Hos:HR-1)に8週間紫外線を照射した。この際、紫外線照射量は1週間に3回ずつそれぞれ1MED(1 MED=50 mJ/cm2)ずつ照射し、4MEDまで増加させて、試験終了まで維持した。試験群は紫外線無処理群、紫外線処理群、紫外線処理とケンフェリアパンドラタエタノール抽出物(0.1%,及び0.5%)処理群、紫外線処理とパンドラチンA(1mM, 5mM)処理群の総6群にした。それぞれの試料はエタノール:ポリエチレングリコール(7:3(v/v))に溶解させ、8週間毎日50μlずつ背部位に塗布し、紫外線無処理群と紫外線処理群はエタノール:ポリエチレングリコール(7:3(v/v))を50μlずつ塗布した。
【0072】
皺生成予防効果を調べるために、シリコンポリマー(SILFLO Impression Material, Flexico, England)を利用して皮膚鋳型(replica)を採取した。採取した皮膚鋳型はイメージファイルで貯蔵された皺影明暗映像を、コンピュータ映像分析システムであるSkin Visiometer SV 600ソフトウェア(Courage+Khazaha Elecronic, Kln,ドイツ)を利用してRt、Rm、Rz、Ra値(Rt:皮膚表面の最も高い値と低い値間の距離、Rm:5分間測定値の内Rtの最も高い値、Rz:5部位測定値Rt平均、Ra:算術平均表面粗度)を測定した。その結果を図9及び図10に示す。
図9に示す通り、ケンフェリアパンドラタエタノール抽出物処理群(0.1%,及び0.5%)及びパンドラチンA処理群(1mM及び5mM)は、紫外線処理群に比べて皺生成量が大きく減少したことがわかった。さらに、図10に示す通り、皮膚皺生成程度を示すRt、Rm、Rz、Ra値もケンフェリアパンドラタエタノール抽出物処理群とパンドラチンA処理群で全て有意的に減少したことがわかった(p<0.05)。
前記結果からケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体を皮膚に塗布する場合、皺改善効果が優れていることがわかった。
【0073】
4−2.口腔に投与した場合
前記実験例4−1の紫外線を照射した全てのマウスに、ケンフェリアパンドラタエタノール抽出物(200mg/kg)またはパンドラチンA(50mg/kg)をTween 80が5%含まれた0.5%カルボキシメチルセルロース溶媒に溶解させて8週間毎日経口繰り返し投与した。この時、対照群である紫外線無処理群と紫外線処理群は0.5%カルボキシルメチルセルロース溶液を投与した。
前記投与後皺生成予防効果を調べるために、シリコンポリマー(SILFLO impression material, Flexico, England)を利用して皮膚鋳型を採取した。その結果を図11に示す。
図11に示す通り、ケンフェリアパンドラタエタノール抽出物またはパンドラチンAをマウスの口腔に投与した場合にも皺生成量が大きく減少されたことがわかった。
前記結果からケンフェリアパンドラタ抽出物またはパンドラチン誘導体を口腔に投与する場合には皺改善効果が優れていることがわかった。
【0074】
剤形例1:化粧品
1−1及び1−2:栄養化粧水(ミルクローション)
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物と、下記表3に記載の成分をそこに示す比率で使用して一般的な方法により栄養化粧水を製造した
【表3】
【0075】
1−3及び1−4:柔軟化粧水(スキンローション)
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物と、下記表4に記載の成分をそこに示す比率で使用して一般的な方法により柔軟化粧水を製造した。
【表4】
【0076】
1−5及び1−6:栄養クリーム
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物と、下記表5に記載の成分をそこに示す比率で使用して一般的な方法により栄養クリームを製造した。
【表5】
【0077】
1−7及び1−8:マッサージクリーム
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物と、下記表6に記載の成分をそこに示す比率で使用して一般的な方法によりマッサージクリームを製造した。
【表6】
【0078】
1−9及び1−10:パック
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物をと、下記表7に記載の成分をそこに示す比率で使用して一般的な方法によりパックを製造した。
【表7】
【0079】
1−11及び1−12:ゲル
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物と、下記表8に記載の成分をそこに示す比率で使用して一般的な方法によりゲルを製造した。
【表8】
【0080】
剤形例2−食品
2−1.健康食品の製造
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 1000mg、ビタミンAアセテート 70μg、ビタミンE 1.0mg、ビタミンB1 0.13mg、ビタミンB2 0.15mg、ビタミンB6 0.5mg、ビタミンB12 0.2μg、ビタミンC 10mg、ビオチン10μg、ニコチン酸アミド 1.7mg、葉酸 50μg、パントテン酸カルシウム 0.5mg、硫酸第1鉄 1.75mg、酸化亜鉛 0.82mg、炭酸マグネシウム 25.3mg、第1リン酸カルシウム 15mg、第2リン酸カルシウム 55mg、クエン酸カルシウム 90mg、炭酸カルシウム 100mg、塩化マグネシウム 24.8mgを混合して製造することができる。その配合比は任意に変更実施しても良い。通常の健康食品製造方法により前記の成分を混合した後、顆粒を製造し、一般的な方法により健康食品組成物製造に使用できる。
【0081】
2−2.健康飲料の製造
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 1000mg、クエン酸 1000mg、オリゴ糖 100g、梅実濃縮液2g、タウリン 1gに精製水を加えて全体 900mlを通常の健康飲料製造方法により前記の成分を混合し、約1時間85℃で撹拌加熱して得られた溶液をろ過し、滅菌された2L容器に取得して密封滅菌した後、冷蔵保管して健康飲料組成物製造に使用することができる。
【0082】
2−3.チューインガム
ガムベース 20質量%、砂糖 76.9質量%、香料 1質量%及び水 2質量%と、前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 0.1質量%を配合して一般的な方法によりチューインガムを製造した。
【0083】
2−4.キャンデー
砂糖 60質量%、水飴 39.8質量%及び香料 0.1質量%と、前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または、前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 0.1質量%を配合して一般的な方法によりキャンデーを製造した。
【0084】
2−5.ビスケット
薄力1級 25.59質量%、重力1級 22.22質量%、精白糖 4.80質量%、食塩 0.73質量%、ブドウ糖 0.78質量%、パームショートニング 11.78質量%、アンモニウム 1.54質量%、重曹 0.17質量%、重亜硫酸ナトリウム0.16質量%、米粉1.45質量%、ビタミンB1 0.0001質量%、ビタミンB2 0.0001質量%、ミルク香料 0.04質量%、水 20.6998質量%、全脂粉乳 1.16質量%、代用粉乳 0.29質量%、第1リン酸カルシウム 0.03質量%、散布塩 0.29質量%及び噴霧乳 7.27質量%と前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体、または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 1質量%を配合して一般的な方法によりビスケットを製造した。
【0085】
剤形例3−医薬品
3−1.散剤
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 50mg、結晶セルロース 2gを混合した後、一般的な散剤製造方法により機密包に充填して散剤を製造した。
【0086】
3−2.錠剤
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体、または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 50mg、結晶セルロース 400mg、ステアリン酸マグネシウム 5mgを混合した後、一般的な錠剤製造方法により打錠して錠剤を製造した。
【0087】
3−3.カプセル剤
前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体、または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ誘導体 30mg、乳清蛋白質 100mg、結晶セルロース 400mg、ステアリン酸マグネシウム 6mgを混合した後、一般的なカプセル剤製造方法によりゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0088】
3−4.注射剤
通常の注射剤製造方法により、活性成分を注射用蒸留水に溶解し、pHを約7.5に調節した後、前記実施例2〜実施例4のパンドラチン誘導体、または前記実施例1のケンフェリアパンドラタ抽出物 100mg、注射用蒸留水、pH調節剤を混合して2ml容量のアンプルに充填、滅菌して注射剤を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0089】
前記パンドラチン誘導体またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物は、細胞増殖を誘導し、コラーゲン分解を阻止してコラーゲン合成を促進し、優れた抗老化活性、特に、優れた皺改善、予防または治療効果が有するため、化粧料組成物、食品組成物または薬学的組成物の有効な成分として利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1〜3
【化1】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺改善用及び/または抗老化用化粧料組成物。
【請求項2】
下記化学式1〜3
【化2】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺改善用及び/または抗老化用食品組成物。
【請求項3】
下記化学式1〜3
【化3】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺予防及び治療用及び/または抗老化用薬学的組成物。
【請求項4】
前記ケンフェリアパンドラタ抽出物が、水、C1〜C6の有機溶媒及び亜臨界または超臨界流体からなる群より選ばれる1つ以上の溶媒による抽出物である請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の組成物。
【請求項5】
前記C1〜C6の有機溶媒が、C1〜C6のアルコール、アセトン、エーテル、ベンゼン、クロロホルム、酢酸エチル(ethyl acetate)、ジクロロメタン(methylene chloride)、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテルからなる群より選ばれる請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
下記化学式1〜3
【化4】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の化粧料組成物製造のための使用。
【請求項7】
下記化学式1〜3
【化5】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の食品組成物製造のための使用。
【請求項8】
下記化学式1〜3
【化6】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の薬学的組成物製造のための使用。
【請求項9】
下記化学式1〜3
【化7】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の皺予防、改善または治療方法。
【請求項10】
下記化学式1〜3
【化8】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の抗老化方法。
【請求項11】
下記化学式1〜3
【化9】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物のコラーゲン合成を促進する方法。
【請求項12】
下記化学式1〜3
【化10】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物のコラーゲン分解を抑制する方法。
【請求項1】
下記化学式1〜3
【化1】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺改善用及び/または抗老化用化粧料組成物。
【請求項2】
下記化学式1〜3
【化2】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺改善用及び/または抗老化用食品組成物。
【請求項3】
下記化学式1〜3
【化3】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物を含有することを特徴とする皺予防及び治療用及び/または抗老化用薬学的組成物。
【請求項4】
前記ケンフェリアパンドラタ抽出物が、水、C1〜C6の有機溶媒及び亜臨界または超臨界流体からなる群より選ばれる1つ以上の溶媒による抽出物である請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の組成物。
【請求項5】
前記C1〜C6の有機溶媒が、C1〜C6のアルコール、アセトン、エーテル、ベンゼン、クロロホルム、酢酸エチル(ethyl acetate)、ジクロロメタン(methylene chloride)、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテルからなる群より選ばれる請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
下記化学式1〜3
【化4】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の化粧料組成物製造のための使用。
【請求項7】
下記化学式1〜3
【化5】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の食品組成物製造のための使用。
【請求項8】
下記化学式1〜3
【化6】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の薬学的組成物製造のための使用。
【請求項9】
下記化学式1〜3
【化7】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の皺予防、改善または治療方法。
【請求項10】
下記化学式1〜3
【化8】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物の抗老化方法。
【請求項11】
下記化学式1〜3
【化9】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物のコラーゲン合成を促進する方法。
【請求項12】
下記化学式1〜3
【化10】
からなる群より選ばれるパンドラチン誘導体、またはこれを含有するケンフェリアパンドラタ抽出物のコラーゲン分解を抑制する方法。
【図1】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【公表番号】特表2011−500669(P2011−500669A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529872(P2010−529872)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006137
【国際公開番号】WO2009/051434
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510062170)ニュートゥリー カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006137
【国際公開番号】WO2009/051434
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510062170)ニュートゥリー カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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