説明

ヒトORL1受容体に対するアゴニストとしてのビシクロ’3.1.1!ヘプタン置換ベンズイミダゾロン及びキナゾリノン誘導体

本発明はヒトORL1(ノシセプチン)受容体に対するアゴニストであるヒドロノポール置換ベンズイミダゾロン及びキナゾリノン誘導体の1群に関する。本発明はまた、これらの化合物の調製、薬理学的に有効量のこれらの新規のベンズイミダゾロン及びキナゾリノン誘導体の少なくとも1種を有効成分として含有する製薬学的組成物並びにORL1受容体が関与する障害の処置のためのこれらの製薬学的組成物の使用に関する。本発明は記号が説明中に示された意味をもつ一般式(1):
【化1】


の化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒトORL1(ノシセプチン)受容体に対するアゴニストであるヒドロノポール(hydronopol)置換ベンズイミダゾロン及びキナゾリノン誘導体の1群に関する。本発明はまた、これらの化合物の調製、製薬学的に有効量のこれらの新規のベンズイミダゾロン及びキナゾリノン誘導体の少なくとも1種を有効成分として含有する製薬学的組成物並びにORL1受容体が関与する障害の処置のためのこれらの製薬学的組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
‘Opioid Receptor−Like 1(オピオイド受容体様1)’受容体はヒトcDNAライブラリーから同定された。この「オーファン受容体(orphan receptor)」はμ−、κ−及びδ−オピオイド受容体と密接な相同性を有することが立証された(非特許文献1及び2参照)。オピオイド受容体とのその密接な配列及び構造の類似にも拘わらず、古典的なオピオイド受容体リガンドはORL1受容体と相互に作用しない。1995年に、17−アミノ酸の神経ペプチドが脳抽出物から精製され、そしてその後Gタンパク質−結合ORL1受容体の天然のリガンドであることが示された(非特許文献3及び4参照)。このペプチドはオーファンFQ又はノシセプチンと名付けられ、そしてそれは3種の伝統的なオピオイド受容体に結合しない。これらの所見はORL1受容体の機能的役割及びそれに対する新規のリガンドの実質的な研究の引き金を引いた。それは、効力及び選択性(μ−アヘン剤に対するORL1)において異なるペプチド及び非ペプチドのリガンド双方につき説明している幾つかのレビュー(例えば、非特許文献5参照)及び多数の特許出願物を包含する数百の刊行物をもたらした。μ−アヘン剤受容体は身体中に広く分布されているので、選択性の欠如が一連の望ましくないアヘン剤様副作用、例えば、鎮静、呼吸抑制、耐性及び依存性をもたらす可能性がある(非特許文献6参照)。ORL1関連特許出願物の6件:特許文献1、2、3、4、5及び6はベンズイミダゾロン誘導体に関する(特許文献1〜6参照)。
【0003】
本発明にもっとも近い先行技術は特許文献5である(特許文献5参照)。しかし、そこに記載されたベンズイミダゾロン誘導体は有用なORL1に基づく治療剤にとり重要であると一般に認識される基準を満たすとは思われない。それらは次の特徴:
(1)適度の効力(166〜1252nMの範囲内におけるORL1受容体に対する親和性)、
(2)μ−アヘン剤受容体に対する選択性の欠如(19〜457nMの範囲内の親和性)、
(3)経口投与後の利用可能性の証明が存在しないこと、及び
(4)CNS−利用可能性の証明が存在しないこと、
を有する。
【特許文献1】国際公開第98/54168号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/36421号パンフレット
【特許文献3】国際公開第00/006545号パンフレット
【特許文献4】国際公開第00/08013号パンフレット
【特許文献5】国際公開第01/39775号パンフレット
【特許文献6】米国特許第20020128288号明細書
【非特許文献1】Mollereau等、FEBS Lett.,341,33−38,1994
【非特許文献2】Bunzow等、FEBS Lett.,347,284−288,1994
【非特許文献3】Reinscheid等、Science,270,792−794,1995
【非特許文献4】Meunier等、Nature,377,532−535,1995
【非特許文献5】Grond等、Anaesthesist.51,996−1005,2002
【非特許文献6】Drug News Perspect,14,335,2001
【発明の開示】
【0004】
驚くべきことには、今回、一連のヒドロノピル置換ベンズイミダゾロン及びキナゾリノン誘導体において、1群の化合物がヒトORL1受容体に対して非常に高い親和性をもつことが示されたことが見いだされた。更に、これらの化合物はμ−アヘン剤受容体に関連したORL1受容体に優れた選択性を示し、経口投与後に容易に利用可能であり、そして「脳血液関門」を通過する。
【0005】
本発明は 一般式(1)
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、
はH、アルキル(1−6C)、アルキル(1−3C)シクロアルキル(3−6C)、カルボアルコキシ(2−7C)又はアシル(2−7C)を表わし、
[]はmが0又は1のいずれかである場合の−(CH−を表わし、
はハロゲン、CF、アルキル(1−6C)、アルキル(1−3C)シクロアルキル(3−6C)、フェニル、アミノ、アミノアルキル(1−3C)、アルキル(1−3C)アミノ、ジアルキル(1−3C)アミノ、シアノ、シアノアルキル(1−3C)、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル(1−3C)、(1−3C)アルコキシ、OCF、アシル(2−7C)、トリフルオロアセチル、アミノカルボキシル、(1−3C)アルキルスルホニル又はトリフルオロメチルスルホニルを表わし、そしてnは0〜4の整数であり、ただし、nが2、3又は4である時は、R置換基は同一であるか又は異なってもよく、
Aは飽和又は一部不飽和の環であり、
[]及び[]はそれぞれ−(CH−及び−(CH−を表わし、ただしAが一部不飽和の環であり、そしてo及びpが独立に0、1又は2のいずれかである時は、−CH−の意味することもまた可能であり、
、R、R及びRは独立に水素、アルキル(1−3C)、アルキル(1−3C)シクロアルキル(3−6C)、CHOHを表わすかあるいは(R及びR)又は(R及びR)又は(R及びR)又は(R及びR)が一緒になって1〜3個の炭素原子のアルキレン橋を形成することができ、ただし、oが2である時は、Rは水素であり、そしてpが2である時は、Rは水素であり、
[]はqが0〜2の整数である場合の−(CH−を表わす]
の化合物及び薬理学的に許容され得るそれらの塩及びプロドラッグに関する。
【0008】
式(1)を有するすべての化合物、ラセミ体、ジアステレオマーの混合物及び個々の立体異性体は本発明に属する。従って、不斉な可能性のある炭素原子上の置換基がR−配置又はS−配置のいずれかにある化合物は本発明に属する。更に、プロドラッグ、すなわち任意の知られた経路によりヒトに投与される時に、式(1)をもつ化合物に代謝される化合物は本発明に属する。とりわけ、これは第一級又は第二級アミノあるいはヒドロキシ基をもつ化合物に関する。このような化合物は有機酸と反応させて、投与後に容易に除去される更なる基、例えば、それらに限定はされないが、アミジン、エナミン、マンニッヒ塩基、ヒドロキシメチレン誘導体、O−(アシルオキシメチレンカルバメート)誘導体、カルバメート、エステル、アミド又はエナミノンが存在する場合の、式(1)をもつ化合物を生成することができる。プロドラッグは、吸収されると活性形態に転化される不活性化合物である(Medicinal Chemistry:Principles and
Practice,1994,ISBN 0−85186−464−5,Ed.:F.D.King,p.216)。
【0009】
本発明は特に、
Aが飽和環であり、
が水素、アルキル(1−3C)又はアシル(2−4C)を表わし、
、R、R及びRが独立に水素又はアルキル(1−3C)を表わすかあるいは(R及びR)又は(R及びR)又は(R及びR)又は(R及びR)が一緒になって1〜3個の炭素原子のアルキレン橋を形成することができ、ただし、oが2である時は、Rが水素であり、そしてpが2である時は、Rが水素であり、そしてR、m、n、o、p及びqが前記に示した意味をもつ
式(1)をもつ化合物に関する。
【0010】
更にとりわけ、本発明は、Aが飽和環であり、m=0、n=0又は1、o=1、p=1、q=0、R=H又はアセチルであり、Rがハロゲン、CF、アルキル(1−3C)、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、OCH又はOCFを表わし、R、R、R及びRが独立に水素又はアルキル(1−2C)を表わすかあるいは(R及びR)が一緒になって1〜2個の炭素原子のアルキレン橋を形成することができる式(1)の化合物に関する。
【0011】
更により好ましいものは、式(2)
【0012】
【化2】

【0013】
をもつ化合物及びすべてのその立体異性体である。
【0014】
本発明の化合物及びそれらの塩は下記に概説される一般的な経路に従って得ることができる。
【0015】
【化3】

【0016】
この一般的経路のための出発化合物は以下のように得られる:
ベンズイミダゾロン(m=0)はJ.Med.Chem.30,814−819,1987及び国際公開第99/36421号パンフレット(Pfizer)に記載の方法に従って合成することができる。キナゾリノン(m=1)はChem.Phar.Bull.,33.1116−1128,1985に従って合成することができる。離脱基としてX(ハロゲン、メシラート、トシラート)を伴うヒドロノポール−誘導体は標準的方法に従って対応するアルコールから合成することができる。対応するアルコールは以下のように:
・q=0を伴うシス類似体に対してはJ.Amer.Chem.Soc.68,638,1946及び米国特許第2,427,343号及び第2,427,345号明細書に記載のように(−)−β−ピネンから、
・q=0を伴うトランス類似体に対してはBull.Soc.Chim.Fr.,196,1958に記載のトランス−ミルタノールから又は僅かに代わりの方法により(アルコールの臭素化、シアノによる置換、エチルエステルへの転化及び所望のアルコールへの還元)、
・q=1又は2を伴うシス及びトランス類似体双方に対しては、トランス−ミルタノールからq=0を伴うトランス類似体の合成に対して記載されたものと類似の一致した方法の1又は2サイクルにより、
合成することができる。
【0017】
製薬学的に許容され得る塩は当該技術分野で周知の標準的方法を使用して、例えば、本発明の化合物を適当な酸、例えば、塩酸のような無機酸又は有機酸と混合することにより得ることができる。
【0018】
一般式(1)の本発明の化合物並びにそれらの塩はORL1アゴニスト活性を有する。それらはORL1受容体が関与するか又はこれらの受容体の操作により処置することができる障害の処置に有用である。例えば、急性及び慢性疼痛状態、中枢神経系障害、特に、それらに限定はされないが、不安及びストレス障害の症候の改善、鬱病、種々の形態の癲癇、発作、認知及び記憶の欠陥を特徴とする障害、例えば、アルツハイマー病、クロイツェルト−ヤコブ病、ハンチントン病、パーキンソン病、神経的リハビリテーション(外傷後脳損傷);急性脳又は脊髄傷害、(依存症及び乱用のような)薬物使用障害及び(薬物禁断症状のような)薬物誘発障害を包含する薬物関連障害;神経性拒食症及び神経性多食症のような摂食障害、肥満;胃腸障害、とりわけ過敏性大腸症候群、炎症性大腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎)、尿路炎症、水分貯留/排泄又は塩排泄の不均衡を特徴とする腎障害;心血管障害、例えば、心筋梗塞、不整脈、高血圧症、血栓症、貧血、動脈硬化症、狭心症、皮膚疾患、例えば、蕁麻疹、紅斑性狼瘡及び掻痒;緑内障のような眼科的障害;咳、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎及び嚢胞性線維症を包含する呼吸器障害;免疫系の疾患、並びにウイルス感染症における処置に有用である。
【0019】
本発明の化合物のインビトロ及びインビボのORL1受容体アゴニスト特性を以下に概説される方法を使用して決定した。
【0020】
ヒトORL1受容体に対する親和性
ヒトORL1受容体に対する化合物の親和性はArdati等、Mol.Pharmacol.51,816,1997により記載されたインビトロの受容体結合アッセイを使用して決定した。端的には、ヒトORL1受容体が安定に発現されたCHO(Chinese Hamster Ovary(チャイニーズハムスター卵巣))−細胞から膜プレパラートを得た。膜を、試験化合物の不在下又は適当なバッファー中に希釈された異なる濃度の試験化合物の存在下で[H]−ノシセプチンとともにインキュベートした。非特異的結合は10−6Mのノシセプチンの存在下で残存する結合と定義された。遊離物からの結合放射活性物の分離はPackard細胞収穫装置(cell harvester)を使用して氷冷バッファーによる数回の洗浄を伴うPackard GF/Bガラス繊維フィルターをとおす濾過により実施された。結合放射活性を液体シンチレーションカクテル(Microscint 0,Packard)を使用してシンチレーションカウンター(Topcount,Packard)で測定した。測定された放射活性を置換(displacing)試験化合物の濃度に対してプロットし、置換(displacement)曲線を4−パラメーターのロジスティック回帰により計算して、IC50値、すなわち放射性リガンドの50%が置換される置換化合物の濃度を与えた。親和性pK値はCheng−Prusoff方程式:
pK=−log(IC50/(1+S/K))
[ここでIC50は前記のとおりであり、Sはモル/lで表わされるアッセイに使用された[H]−ノシセプチン濃度(典型的には0.2nM)であり、そしてKはヒトORL1受容体(0.4nM)に対する[H]−ノシセプチンの平衡解離定数である]
に従って、放射性リガンド濃度に対するIC50値及びヒトORL1受容体に対するその親和性を補正することにより計算した。
【0021】
本発明の化合物は前記の結合アッセイにおいてORL1受容体に高い親和性を有する。この特性がORL1受容体が関与するか又はこれらの受容体の操作により処置することができる障害の処置においてそれらを有用にさせる。
【0022】
μ−アヘン剤受容体に対する親和性
μ−アヘン剤受容体に対する化合物の親和性はChilders等、Eur.J.Pharm 55,11,1979により記載されたインビトロの受容体結合アッセイを使用して決定した。端的には、ヒトμ−アヘン剤受容体が安定に発現されたCHO−細胞から膜プレパラートを得て、試験化合物の不在下又は、適当なバッファー中に希釈された、10μM〜0.1nMまでの濃度範囲の試験化合物の存在下で[H]−ナロキソンとともにインキュベートした。非特異的結合は10−7Mのレバロルファン.タルトレートの存在下で残存する結合と定義された。遊離物からの結合放射活性物の分離は前記のように実施され、化合物の親和性は1nMの[H]−ナロキソンの濃度(S)及び1.3nMのK値を使用して同様に計算した。
【0023】
本発明の大部分の化合物は前記の結合アッセイにおいてμ−アヘン剤受容体に低い親和性:典型的にはORL1受容体に対するそれらの親和性よりファクター100だけ低い親和性を有する。従ってそれらはモルフィネのようなアヘン剤で起ることが知られている望ましくない副作用を誘起しそうにない。
【0024】
インビトロのORL1受容体アゴニスム
Gタンパク質結合ORL1受容体の活性化はアデニレートシクラーゼ活性を阻害し、そして第2メッセンジャーのcAMPの細胞内濃度を減少する。Jenck等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97,4938−4943,2000により記載
されたアッセイを使用して、ORL1受容体に対する化合物の活性を測定した。それらはそれらのpK値と一致するpEC50−値をもつ強力なアゴニストであることが示された。
【0025】
インビボのORL1受容体アゴニズム
本発明の化合物は、腹腔内及び/又は経口投与後、Molewijk等、Psychopharmacology,117,32−40,1995により記載された調整超音波苦痛発声(conditioned ultrasonic distress vocalization)法において著しく有効であることが示された。これは化合物が経口投与後、良好な生体利用能を有するのみならずまた、それらが「血液脳関門」を通過することを示す。ペプチドのノシセプチンもまたこのアッセイで活性であるが、その効果を示すためには、脳中に直接(頭蓋内脳室注入により)投与される必要がある。
【実施例】
【0026】
合成の特定の実施例
[実施例1の合成]
:(下記の表を参照されたい)
【0027】
段階1.(−)−シスヒドロノポール(20g、0.12モル)及びトリエチルアミン(41.6ml、0.30モル)の溶液(150mlのジクロロメタン中)を0℃に冷却し、氷冷下でメシルクロリド(11.2ml、0.15モル)の溶液(50mlのジクロロメタン中)を滴下した。室温で16時間撹拌後、HClの溶液(1N、100ml)を添加した。水層を70mlのジクロロメタンで2回洗浄し、そして合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、真空下濃縮した。メシラートを黄橙色の油状生成物(27.7g、11モル、92%収率)として得た。
【0028】
段階2.4−(1−ベンズイミダゾロン)ピペリジン(ACROS、6.51g、30ミリモル)、前反応段階で得たメシラート(8.9g、36ミリモル)、炭酸カリウム(16.8g、120ミリモル)及びヨウ化ナトリウム(5.4g、36ミリモル)の撹拌溶液(800mlのメチルエチルケトン中)をN下で80℃で16時間加熱した。反応混合物の真空下濃縮後、ジクロロメタン(500ml)及びNaHCO水溶液(5%、300ml)を添加した。水層をジクロロメタン(2回80ml)で洗浄し、合わせた有機層をMgSO上で乾燥し、真空下濃縮した。粗生成物を溶離剤としてジクロロメタン:メタノール:アンモニアの混合物(94.5:5:0.5)を使用するカラムクロマトグラフィー(シリカゲル))により精製した。真空濃縮後に生成された純粋生成物(7.5g、20ミリモル、68%収率)の溶液を無水エタノール中HCl溶液(60ml)中に溶解した。生成された溶液の30℃における真空下濃縮により368m/zのM及び167〜174℃の融点を有する白色非晶質固体として実施例1のHCl塩(8.25g、20ミリモル、定量的収率)を与えた。
[実施例43の合成]
【0029】
段階1.トリフェニルホスフィン(116g、0.44モル)をアセトニトリル(1リットル)に溶解し、N雰囲気下で氷浴中で冷却した。臭素(22.5ml、0.44モル)を滴下した。発熱反応の温度を10℃未満に維持した。添加完了後、氷浴を外し、250mlのアセトニトリル中に溶解された(−)−トランス−ミルタノール(68.8g、0.44モル、Aldrich)を緩徐に添加した。添加完了後、淡黄色溶液をウオータートラップから約200mlの溶媒除去下でディーン−スターク装置を使用して3時間還流した。生成された反応混合物を真空下濃縮した。粗生成物を溶離剤としてジクロロメタン−ジエチルエーテルの混合物(1:1v/v)を使用するカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製した。純粋な生成物を淡黄色の油(87.8g、41ミリモル、93%収率)として得た。
【0030】
段階2.得られたミルタニルブロミド(87.8g、0.41モル)を1リットルのジメチルホルムアミドに溶解した。シアン化ナトリウム(40g、0.81モル)を添加し、混合物を5時間撹拌還流した。冷却後、混合物を水(3リットル)で希釈し、メチルt−ブチルエーテル(3回1.5リットル)で抽出した。有機層を生理食塩水(300ml)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、真空下濃縮した。粗生成物を溶離剤としてジクロロメタン−ヘプタンの混合物(1:1v/v)を使用するカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製した。純粋な生成物を無色の液体(52.4g、0.32モル、78%収率)として得た。
【0031】
段階3.硫酸(190ml)を氷浴中で冷却した500mlのエタノールに滴下した。得られたミルタニルシアニド(52.4g、0.32モル)の溶液(100mlのエタノール中)を添加し、混合物を16時間撹拌還流した。冷却し、1.5リットルの水添加後、混合物をメチルt.ブチルエーテル1.5リットルで3回抽出した。有機層を飽和NaHCO水溶液(1リットル)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、真空下濃縮した。粗エステル(54.2g、0.26モル、81%収率)をほとんど無色の液体として得た。
【0032】
段階4.前反応段階で得たエステル(54.2g、0.26モル)をリチウムアルミニウム水素化物(20g、0.52モル)の懸濁液(1リットルのテトラヒドロフラン中)に添加した。添加完了後混合物を1時間還流した。氷浴中で冷却後、HCl水溶液(1N)1リットルを注意して添加した。添加完了後、混合物を更に水1リットルで希釈し、メチルt−ブチルエーテル1.5リットルで3回抽出した。有機層を生理食塩水(250ml)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、真空下濃縮した。粗混合物をクーゲルロール蒸留(bp85℃、3.10−2mbar)により精製すると無色の油として(−)−トランスヒドロノポール35g(0.17モル、65%)を与えた。
【0033】
段階5.調製された(−)−トランスヒドロノポール(5gr、28ミリモル)及びトリエチルアミン(9.4ml、68ミリモル)の溶液(50mlのジクロロメタン中)を0℃に冷却した。氷冷下で、メシルクロリドの溶液(2.7ml、35ミリモル)(13mlのジクロロメタン中)を滴下した。室温で16時間撹拌後、HCl溶液(1N、50ml)を添加した。水層をジクロロメタン(2回30ml)で洗浄し、合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、真空下濃縮した。メシラートを溶離剤としてジクロロメタン−メタノールの混合物(90:10)を使用してカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製した。純粋な生成物を無色の液体(5.6g、23ミリモル、81%収率)として得た。
【0034】
段階6.4−(1−ベンズイミダゾロン)ピペリジン(ACROS、1.8g、8.3ミリモル)、前反応段階で得たメシラート(2.5g、10ミリモル)、炭酸カリウム(4.7g、34ミリモル)及びヨウ化ナトリウム(1.5g、10ミリモル)の撹拌溶液(300mlのメチルエチルケトン中)をN下で80℃で16時間加熱した。反応混合物を真空下濃縮後、ジイソプロピルエーテル(300ml)を添加した。得られた淡黄色の沈殿物を濾取し、石油エーテル(100ml)で洗浄し、真空下乾燥した。沈殿物を還流エーテル(300ml)中に再度溶解し、ベースライン物質を濾去した。冷却後得られた沈殿物を濾取し、真空下乾燥すると、368m/zのM及び220〜239℃の融解範囲をもつ白色非晶質の固体として純粋な生成物1.85g(5ミリモル、61%収率)を与えた。
[実施例17の合成]
【0035】
段階1.3−フルオロ−4−ニトロトルエン(Aldrich、4.65gr、30ミリモル)、4−アミノ−1−ベンジル−ピペリジン(Aldrich、6.1ml、30ミ
リモル)、KCO(6.63gr、48ミリモル)の溶液(50mlのジメチルホルムアミド中)をN下で65℃で18時間撹拌した。室温に冷却後、混合物を水(200ml)−ジクロロメタン(350ml)中に注入した。水層をジクロロメタン(2回70ml)で抽出し、合わせた有機層を水(2回50ml)で洗浄し、MgSO上で乾燥し、真空下濃縮した。生成された粗生成物を溶離剤としてジクロロメタン−メタノールの混合物(97:3)を使用してカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製した。真空下濃縮後、純粋な生成物を黄色の油状物質(9.1gr、28ミリモル、93%収率)を得た。
【0036】
段階2.ラネー−Ni(Aldrich R 2800[7440−02−0]、約600mg)の一部を96%エタノールで洗浄し(2回10ml)、次にN下で前反応段階からの生成物(9.1g、28ミリモル)の溶液(200mlの96%エタノール中)に添加した。溶液を室温で、1気圧下で18時間水素化した。次に混合物をHyflo上で濾過し、96%エタノールで洗浄し(3回100ml)、濾液を真空下濃縮し、酢酸エチルで2回共蒸発(co−evaporated)すると紫色の油状物質(8.3g、28ミリモル、100%収率)として還元生成物を与えた。
【0037】
段階3.窒素下の室温で撹拌された前段階からの生成物(8.3g、28ミリモル)の溶液(100mlのアセトニトリル中)に1,1’−カルボニルジイミダゾール(ACROS、6.5g、40ミリモル)の一部を添加した。5分後に形成し始め、3時間目まで増加する沈殿物を濾取し、アセトニトリル(20ml)及びジイソプロピルエーテル(100ml)で洗浄し、真空下乾燥した。粗生成物(5.5g)を溶離剤としてジクロロメタン−メタノールの混合物(95:5)を使用してカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製した。真空下濃縮後、純粋な生成物を白色固体(5.0g、15ミリモル、55%収率)として得た。
【0038】
段階4.N下で撹拌された前段階からの生成物5.0g(15ミリモル)の溶液(300mlのメタノール中)に1NのHClアルコール溶液(50mlの無水エタノール中1.22g(15ミリモル)塩化アセチルから調製された)を添加した。10%Pd/C(約500mg)を添加後、混合物を室温で1気圧で21/2時間水素化した。次に混合物をHyflo上で濾過し、メタノールで洗浄し(2回100ml)、濾液を真空下濃縮すると白色固体として生成物4.15g(15ミリモル、100%収率)を与えた。
【0039】
段階5.前段階からの生成物(4.15g、15ミリモル)の撹拌溶液、実施例1の段階1からのメシラート(8.9g、16ミリモル)、炭酸カリウム(10.4g、75ミリモル)及びヨウ化ナトリウム(2.4g、16ミリモル)の撹拌溶液(250mlのメチルエチルケトン中)をN下で80℃で16時間加熱した。反応混合物を真空下濃縮後、ジクロロメタン(500ml)及びNaHCO水溶液(5%、300ml)を添加した。水層をジクロロメタンで洗浄し(2回80ml)、合わせた有機層をMgSO上で乾燥し、真空下濃縮した。粗生成物を溶離剤としてジクロロメタン−メタノール−アンモニアの混合物(92:7.5:0.5)を使用するカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製した。真空下濃縮により油状物質として純粋な生成物(5.0g、13ミリモル)を与えた。この油にジイソプロピルエーテル100mlを添加し、室温で30分間撹拌後、生成物が白色固体として沈殿した。固体を濾取し、真空下乾燥すると382m/zのM及び214〜217℃の融点をもつ3.3g(8.6ミリモル、57%収率)を与えた。
【0040】
これらの方法及び匹敵する方法により、45種の特定の実施例が合成された。それらは本発明をより詳細に更に具体的に表わすことを意図され、従って、いかなる方法でも本発明の範囲を限定すると判断されない。すべて一般式(1)により表わされるこれらの化合
物の構造的情報は以下の表に提示される。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【動物研究で使用される化合物の調製の実施例】
【0043】
実施例1の調製:
【0044】
経口(p.o.)投与のため:ガラス管中の所望の量(0.5〜5mg)の固形の実施例1に対し、幾らかのガラスビーズを添加し、固形物を渦流撹拌することにより2分間粉砕した。水中1%のメチルセルロース及び2%(v/v)のポロキサマー188(Lutrol F68)の溶液1mlの添加後、化合物を渦流撹拌することにより10分間懸濁させた。数滴のNaOH水溶液(0.1N)によりpHを7に調整した。懸濁液中の残りの粒子を超音波浴を使用することにより更に懸濁させた。
【0045】
腹腔内(i.p.)投与のため:ガラス管中の所望の量(0.5〜15mg)の固形の実施例1に対して、幾らかのガラスビーズを添加し、固形物を渦流撹拌することにより2分間粉砕した。1%メチルセルロース及び5%マニトールの溶液(水中)1mlの添加後、化合物を渦流撹拌することにより10分間懸濁させた。最後にpHを7に調整した。
【0046】
薬理学的データ
【0047】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、
はH、アルキル(1−6C)、アルキル(1−3C)シクロアルキル(3−6C)、カルボアルコキシ(2−7C)又はアシル(2−7C)を表わし、
[]はmが0又は1のいずれかである場合の−(CH−を表わし、
はハロゲン、CF、アルキル(1−6C)、アルキル(1−3C)シクロアルキル(3−6C)、フェニル、アミノ、アミノアルキル(1−3C)、アルキル(1−3C)アミノ、ジアルキル(1−3C)アミノ、シアノ、シアノアルキル(1−3C)、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル(1−3C)、(1−3C)アルコキシ、OCF、アシル(2−7C)、トリフルオロアセチル、アミノカルボキシル、(1−3C)アルキルスルホニル又はトリフルオロメチルスルホニルを表わし、そしてnは0〜4の整数であり、ただし、nが2、3又は4である時は、R置換基は同一であるか又は異なってもよく、
Aは飽和又は一部不飽和の環であり、
[]及び[]はそれぞれ−(CH−及び−(CH−を表わし、ただしAが一部不飽和の環であり、そしてo及びpが独立に0、1又は2のいずれかである時は、−CH−の意味することもまた可能であり、
、R、R及びRは独立に水素、アルキル(1−3C)、アルキル(1−3C)シクロアルキル(3−6C)、CHOHを表わすかあるいは(R及びR)又は(R及びR)又は(R及びR)又は(R及びR)が一緒になって1〜3個の炭素原子のアルキレン橋を形成することができ、ただし、oが2である時は、Rは水素であり、そしてpが2である時は、Rは水素であり、
[]はqが0〜2の整数である場合の−(CH−を表わす]
の化合物、それらすべての立体異性体、並びに薬理学的に許容され得る塩及びプロドラッグ、ここでプロドラッグは、投与後に容易に除去される基、例えば、アミジン、エナミン、マンニッヒ塩基、ヒドロキシル−メチレン誘導体、O−(アシルオキシメチレンカルバメート)誘導体、カルバメート、エステル、アミド又はエナミノンが存在する場合の、式(1)をもつ化合物の誘導体である。
【請求項2】
Aが飽和環であり、
が水素、アルキル(1−3C)又はアシル(2−4C)を表わし、
、R、R及びRが独立に水素又はアルキル(1−3C)を表わすかあるいは(R及びR)又は(R及びR)又は(R及びR)又は(R及びR)が一緒になって1〜3個の炭素原子のアルキレン橋を形成することができ、ただし、oが2である時は、Rが水素であり、そしてpが2である時は、Rが水素であり、そしてR、m、n、o、p及びqが請求項1に示した意味をもつ一般式(1)の請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが飽和環であり、m=0、n=0又は1、o=1、p=1、q=0、R=H又はア
セチルであり、Rがハロゲン、CF、アルキル(1−3C)、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、OCH又はOCFを表わし、R、R、R及びRが独立に水素又はアルキル(1−2C)を表わすかあるいは(R及びR)が一緒になって1〜2個の炭素原子のアルキレン橋を形成することができる一般式(1)の請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式(2)
【化2】

をもつ請求項1に記載の化合物及びその立体異性体。
【請求項5】
薬理学的に有効な量の請求項1〜4のいずれかに記載の少なくとも1種の化合物を含有する製薬学的組成物。
【請求項6】
医薬として使用するための請求項1〜4のいずれかに記載の化合物又はその塩。
【請求項7】
ORL1受容体が関与するか又はこれらの受容体の操作により処置することができる障害の処置のための製薬学的組成物の調製のための請求項1〜4のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項8】
該障害が急性及び慢性疼痛状態、中枢神経系障害、特に、それらに限定はされないが、不安及びストレス障害の症候の改善、鬱病、種々の形態の癲癇、発作、認知及び記憶の欠陥を特徴とする障害、例えば、アルツハイマー病、クロイツェルト−ヤコブ病、ハンチントン病、パーキンソン病、神経的リハビリテーション(外傷後脳損傷);急性脳又は脊髄傷害、(依存症及び乱用のような)薬物使用障害及び(薬物禁断症状のような)薬物誘発障害を包含する薬物関連障害;神経性拒食症及び神経性多食症のような摂食障害、肥満;胃腸障害、とりわけ過敏性大腸症候群、炎症性大腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎)、尿路炎症、水分貯留/排泄又は塩排泄の不均衡を特徴とする腎障害;心血管障害、例えば、心筋梗塞、不整脈、高血圧症、血栓症、貧血、動脈硬化症、狭心症、皮膚疾患、例えば、蕁麻疹、紅斑性狼瘡及び掻痒;緑内障のような眼科的障害;咳、慢性閉塞性肺動脈疾患、気管支炎及び嚢胞性線維症を包含する呼吸器障害;免疫系の疾患並びにウイルス感染症であることを特徴とする請求項6に記載の使用。

【公表番号】特表2007−507470(P2007−507470A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530268(P2006−530268)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052392
【国際公開番号】WO2005/032547
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(501439149)ソルベイ・フアーマシユーチカルズ・ベー・ブイ (71)
【Fターム(参考)】