説明

ヒートパイプ、ヒートパイプの製造方法およびヒートパイプ機能付き回路基板

【課題】本発明は、高密度実装を妨げず、冷却効果の高いヒートパイプ、ヒートパイプの製造方法およびヒートパイプ機能付き回路基板を提供する。
【解決手段】 平板状の上部板2と、前記上部板2と対向する平板状の下部板3と、前記上部板2と前記下部板3の間に積層されると共に内部貫通孔11を有する平板状の複数の中間板10を備え、前記複数の中間板10のそれぞれに設けられた前記内部貫通孔11同士は、それぞれの一部のみが重なって、前記内部貫通孔11の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路15が形成され、前記上部板2、前記下部板3および前記複数の中間板10のそれぞれは、外部貫通孔12を有し、前記上部板2に設けられた前記外部貫通孔12、前記下部板3に設けられた前記外部貫通孔12および前記中間板10に設けられた前記外部貫通孔12のそれぞれが重なり合ってビアホール4が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路、LED素子、パワーデバイスなどの発熱体を冷却するヒートパイプ、ヒートパイプの製造方法およびヒートパイプ機能付き回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、産業機器および自動車などには、半導体集積回路、LED素子、パワーデバイスなどの電子部品が使用されている。これらの電子部品は、内部を流れる電流によって発熱する発熱体になっている。発熱体の発熱が一定温度以上となると、動作保証ができなくなる問題もあり、他の部品や筐体へ悪影響を及ぼし、結果として電子機器や産業機器そのものの性能劣化を引き起こす可能性がある。
【0003】
このような発熱体を冷却するために、封入された冷媒の気化と凝縮による冷却効果を有するヒートパイプが提案されている。
【0004】
一方で、電子機器や産業機器の小型化のために、電子部品や素子の高密度実装が要求されている。ヒートパイプは、その一方の面のみに電子部品や素子に接して配置されるので、電子機器の中で無駄な容量を占めることになりがちである。また、発熱体である電子部品のサイズがヒートパイプのサイズよりも小さい場合には、ヒートパイプの設置箇所には、冷却対象以外の電子部品の実装が困難となり、ヒートパイプが高密度実装の妨げとなることも生じる。あるいは、ヒートパイプの冷却能力を活用しきれない問題も生ずる。
【0005】
実装密度を向上させる技術として、冷却機能を有する金属コアプリント配線基板にスルーホールを形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ヒートパイプの実装を容易にする技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、ヒートパイプの冷却能力向上と表面の活用のために、ヒートパイプの表面に凹状の曲がり部を設ける技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2007−242740号公報
【特許文献2】特開2004−37001号公報
【特許文献3】特開平11−101585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、小径のビアホールを貫通させるために金属コア層を薄肉処理してからビアホール形成が行われる。このとき、薄肉処理がなされた金属コア層の両面に絶縁層が貼り付けられてからビアホールが形成されるので、薄肉部が薄過ぎる場合には、ビアホールの位置ずれが生じることがある。また、金属コア層と異なり、内部が空洞であるヒートパイプ(冷媒を封入するためにはヒートパイプの内部は空洞である)では、加工が困難である。空洞の上下層の金属板部分に形成圧力がかかるため、ビアホールの形成位置や形状ずれが生じうるからである。このため、金属コア層に薄肉部を設けてビアホールを貫通させる技術は、ヒートパイプにビアホールを形成することへ応用が困難である。
【0008】
特許文献2は、ヒートパイプの実装を容易化できるが、ヒートパイプを実装した箇所においては、他の電子部品を実装できない。このため、ヒートパイプが高密度実装の弊害になることは解決されていない。また、ヒートパイプの外縁部にビアホールを形成するに際して、内部空間の封止を破壊しうる問題もある。
【0009】
特許文献3は、ヒートパイプに曲がり部があることで、この曲がり部に沿って電子部品を実装することを可能にする。しかし、曲がり部に沿ったリード配線に限定され、現実的には電子部品をヒートパイプに実装することは困難である。
【0010】
特許文献1〜3のいずれの技術によっても、高密度実装を妨げないヒートパイプの実現は困難である。特に今後、冷却能力を高める必要が大きくなるにつれてヒートパイプ自身の大型化が避けられない。このようにヒートパイプが大型化する場合であっても、高密度実装を損なわないヒートパイプの実現が求められる。
【0011】
そこで本発明は、高密度実装を妨げず、冷却効果の高いヒートパイプ、ヒートパイプの製造方法およびヒートパイプ機能付き回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のヒートパイプは、封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプであって、平板状の上部板と、前記上部板と対向する平板状の下部板と、前記上部板と前記下部板の間に積層されると共に内部貫通孔を有する平板状の複数の中間板を備え、前記複数の中間板のそれぞれに設けられた前記内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、前記内部貫通孔の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成され、前記上部板、前記下部板および前記複数の中間板のそれぞれは、外部貫通孔を有し、前記上部板に設けられた前記外部貫通孔、前記下部板に設けられた前記外部貫通孔および前記中間板に設けられた前記外部貫通孔のそれぞれが重なり合ってビアホールが形成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、平板状であって、冷媒が垂直・平面方向に循環して高速に熱移動を可能とするヒートパイプが実現できる。
【0014】
加えて、非常に微小な直径を有するビアホールを、ヒートパイプの強度や耐久性に影響を与えず、ヒートパイプに形成することができる。
【0015】
更に、ヒートパイプに設けられたビアホールを介した電子部品の電気的接続が実現され、ヒートパイプの使用が高密度実装を阻害することも無くなる。加えて、電子部品の冷却と実装が両立できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の第1の発明に係るヒートパイプは、封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプであって、平板状の上部板と、前記上部板と対向する平板状の下部板と、前記上部板と前記下部板の間に積層されると共に内部貫通孔を有する平板状の複数の中間板を備え、前記複数の中間板のそれぞれに設けられた前記内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、前記内部貫通孔の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成され、前記上部板、前記下部板および前記複数の中間板のそれぞれは、外部貫通孔を有し、前記上部板に設けられた前記外部貫通孔、前記下部板に設けられた前記外部貫通孔および前記中間板に設けられた前記外部貫通孔のそれぞれが重なり合ってビアホールが形成される。
【0017】
この構成により、微小な直径を有するビアホールが、ヒートパイプに形成される。加えて、平板状で冷却効果の高いヒートパイプが実現できる。
【0018】
本発明の第2の発明に係るヒートパイプでは、第1の発明に加えて、前記上部板、前記下部板および前記複数の中間板のそれぞれに設けられた前記外部貫通孔は、前記ヒートパイプの厚みに対する加工限度に基づく直径よりも小さいと共に、前記上部板、前記下部板および前記複数の中間板のそれぞれの厚みに対する加工限度に基づく直径以上である。
【0019】
本発明の第3の発明に係るヒートパイプでは、第2の発明に加えて、前記加工限度は、前記外部貫通孔を形成する板の厚み方向をtとし、前記外部貫通孔の直径をφdとした場合に、(1/2)*t ≦ φdの式で表される。
【0020】
これらの構成により、加工限度を守った上で、微小な直径のビアホールを形成できる。この結果、ヒートパイプの強度や耐久性に影響を与えずに済む。
【0021】
本発明の第4の発明に係るヒートパイプでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、前記上部板、前記下部板および前記中間板の少なくとも一つが、厚み方向に接合しうる複数の部材から構成される。
【0022】
この構成により、上部板、下部板および複数の中間板のいずれかに貫通される外部貫通孔の直径がさらに小さくできる。結果として、ビアホールの直径が更に小さくできる。
【0023】
本発明の第5の発明に係るヒートパイプでは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、前記外部貫通孔を有する前記上部板と、前記外部貫通孔を有する前記下部板と、前記内部貫通孔と前記外部貫通孔を有する前記複数の中間板のそれぞれを、前記上部板と前記下部板で前記複数の中間板を挟んで積層し、前記上部板、前記下部板および前記複数の中間板のそれぞれに設けられた外部貫通孔同士が重なって、前記上部板から前記下部板までを貫通するビアホールが形成され、前記複数の中間板のそれぞれに設けられた前記内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、前記内部貫通孔の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成されることで製造される。
【0024】
この構成により、加工限度を守った微小な直径を有するビアホールが形成される。このような微小なビアホールが形成されることで、高密度実装への悪影響を出さないヒートパイプが実現できる。
【0025】
本発明の第6の発明に係るヒートパイプでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、板部を有し、前記複数の中間板の各々に設けられた前記切り欠き部同士が重なることで、内部空間である蒸気拡散路が形成され、前記蒸気拡散路は、封入された冷媒が気化して生じる蒸気冷媒を拡散させ、前記毛細管流路は、封入された冷媒が凝縮して生じる凝縮冷媒を還流させる。
【0026】
この構成により、高速に冷媒が循環して、熱移動の効率の良いヒートパイプが実現できる。
【0027】
本発明の第7の発明に係るヒートパイプでは、第6の発明に加えて、前記ビアホールは、前記複数の中間板における前記板部と前記切り欠き部の境界付近に位置する。
【0028】
この構成により、冷却性能に影響を与えにくいビアホールが形成される。
【0029】
本発明の第8の発明に係るヒートパイプでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、前記上部板および前記下部板のそれぞれは、前記毛細管流路と連通する凹部を更に備える。
【0030】
この構成により、凝縮した冷媒の還流が促進される。
【0031】
本発明の第9の発明に係るヒートパイプでは、第1から第8のいずれかの発明に加えて、前記ヒートパイプは、20mm角以上100mm角以下の方形、および1mm以上5mm以下の厚みを有している。
【0032】
この構成により、冷却と実装のバランスを両立したヒートパイプが実現できる。
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0034】
なお、本明細書におけるヒートパイプとは、内部空間に封入された冷媒が、発熱体からの熱を受けて気化し、気化した冷媒が冷却されて凝縮することを繰り返すことで、発熱体を冷却する機能を実現する部材、部品、装置、デバイスを意味する。
【0035】
(実施の形態1)
図1、図2を用いて、ヒートパイプの外観について説明する。
【0036】
図1は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの斜視図であり、図2は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの側面図である。
【0037】
ヒートパイプ1は、内部空間に封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却する。
【0038】
図1に示されるとおり、実施の形態1におけるヒートパイプ1は、平板状の方形を有している。ヒートパイプ1は、上部板2および下部板3により外形が形成され、上部板2から下部板3まで貫通するビアホール4を有している。なお、ビアホール4は、単数でも複数でも良く、その位置についても適宜定められる。本発明のヒートパイプは図1に示されるように平板状を有しており、回路基板などへの実装が容易であって、実装空間をあまり必要としない。
【0039】
ヒートパイプ1は、上部板2と下部板3に挟まれた内部空間を有し(図示せず)、この内部空間は、冷媒を封入している。また、内部空間には、毛細管流路と蒸気拡散路が形成されており、気化した冷媒は、蒸気拡散路を通じて平面、垂直方向に拡散する。凝縮した冷媒は、毛細管流路を通じて還流する。本発明のヒートパイプは平板状を有していても、蒸気拡散路を気化した冷媒が平面、垂直方向に拡散すると共に、毛細管流路を通じて凝縮した冷媒が平面、垂直方向に還流するので、十分な冷却性能を有する。
【0040】
なお、上部板2および下部板3の少なくとも一方は、発熱体と接触する受熱面となり、他方は気化した冷媒の潜熱を放熱する放熱面となる。なお、本発明のヒートパイプは、ビアホール4により両面実装が可能であるので、上部板2および下部板3の双方が、それぞれ受熱面と放熱面の両方の役割を有することもある。
【0041】
図2には、ヒートパイプ1が発熱体5、6と接触している状態が示されている。図2では、ヒートパイプ1の両面に発熱体5,6が実装されて接触している。発熱体5,6は、グリースなどの熱的接合材7を介して、ヒートパイプ1の表面と接触している。加えて、後述するが、ビアホール4は、配線層を有しており、発熱体5と発熱体6(これらの発熱体は、電子部品や半導体集積回路である)は電気的に接続されることが可能である。
【0042】
ヒートパイプ1は、内部に冷媒を封入しており、冷媒は、発熱体5,6からの熱により気化して蒸気拡散路を拡散し、放熱面で冷却されて凝縮して、凝縮した冷媒が毛細管流路を還流する。この結果、発熱体5,6は冷却される。このとき、発熱体5にとっては、下部板3が受熱面であって上部板2が放熱面である。発熱体6にとっては、上部板2が受熱面であって、下部板3が放熱面である。ヒートパイプ1は、ビアホール4を有することで、両面に接触する発熱体5、6を冷却できる。あるいは、一方の発熱体のみを冷却し、他方の発熱体との電気的接続を可能として、放熱面を利用した高密度実装が可能となる。
【0043】
ヒートパイプ1は、このように電子部品や半導体集積回路である発熱体5、6を冷却する。以上が、本発明のヒートパイプの基本的な外観や機能である。
【0044】
次に、図3を用いて実施の形態1におけるヒートパイプについて説明する。
【0045】
(全体)
図3は、本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの側断面図である。図3(a)は、製造時に各部材が分割された状態を示しており、図3(b)は、各部材が封止されてヒートパイプ1が完成した状態を示している。
【0046】
ヒートパイプ1は、平板状の上部板2と、平板状の下部板3と、平板状の複数の中間板10を備えている。
【0047】
下部板3は、上部板2と対向しており、その形状、大きさはほぼ同一であることが適当である。勿論、異なっていても本発明の意図は逸脱しない。
【0048】
複数の中間板10のそれぞれは、上部板2と下部板3の間に積層される。また、複数の中間板10のそれぞれは、内部貫通孔11を有している。複数の中間板10が積層される際には、内部貫通孔11同士の一部のみが重なって、内部貫通孔10そのものの断面積よりも小さな断面積を有する毛細管流路15が形成される。毛細管流路15は、凝縮した冷媒が還流する通路となる。
【0049】
また、上部板2、下部板3および複数の中間板10のそれぞれは、外部貫通孔12を有している。これらの外部貫通孔12は、上部板2、下部板3および複数の中間板10の全てが積層される際には、同一位置において重なり合ってビアホール4を形成する。ビアホール4は、上部板2から下部板3までを貫通しており、上部板2表面に実装される発熱体と下部板3表面に実装される発熱体とを電気的に接続できる。
【0050】
図3に示されるように、実施の形態1におけるヒートパイプ1は、ビアホール4を有しており、ヒートパイプ1の両面に、発熱体である電子部品を実装したり接触させたりできる。あるいは、ヒートパイプ1の一方の面に接触している電子部品からの別の電子部品へ、ビアホール4を介した電気的接続を可能にする。
【0051】
次に、各部の詳細について説明する。
【0052】
(上部板)
上部板2は、平板状であり、外部貫通孔12を有している。外部貫通孔12は、単数でも複数でもよいが、複数の中間板10、下部板3と積層される際に同一位置となる位置に(および形状と面積も同一となることが好ましい)設けられる。
【0053】
上部板2は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、上部板2は、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。
【0054】
上部板2は、その一方の面であって中間板10と対向する面に、毛細管流路15に連通する(内部貫通孔11に連通する)凹部14を有している。凹部14は、毛細管流路15と連通することで、凝縮した冷媒が、上部板2から毛細管流路15へと伝わることを促進する。なお、凹部14は、本発明において必須の構成要件ではない。
【0055】
上部板2は、便宜上「上部」との呼称となっているが、物理的に上部の位置に存在しなければならないわけではなく、下部板3と特段に区別されるものでもない。
【0056】
上部板2は、中間板10を積層する際に、中間板10と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。
【0057】
(下部板)
下部板3は、上部板2と対向して複数の中間板10を挟む。下部板3は、上部板2と同じく外部貫通孔12を有しており、上部板2に設けられた外部貫通孔12と同一位置となる(および同一の形状や面積)ことが好ましい。
【0058】
下部板3は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板2と対向してヒートパイプ1を形成するので、上部板2と同一の形状、面積であることが好ましい。また、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。
【0059】
下部板3は、その一方の面であって中間板10と対向する面に、毛細管流路15に連通する(内部貫通孔11に連通する)凹部14を有している。凹部14は、毛細管流路15と連通することで、凝縮した冷媒が、下部板3から毛細管流路15へと伝わることを促進する。これは、上部板2に凹部14が設けられることと同様の意義を有する。特に、実施の形態1におけるヒートパイプ1は、その両面に発熱体が接触されることがありうるので、上部板2および下部板3のいずれにおいても冷媒の凝縮を促す放熱が行われる可能性がある。このため、上部板2および下部板3の双方が、凝縮した冷媒の還流を促す役割を担うことがありうる。あるいは、製造されたヒートパイプ1を実装する場合に、ユーザは上下を区別するのが面倒である。
【0060】
このような両面実装に対応するために、あるいは使用上の簡便さの点からも、下部板3は、上部板2と同様の構成、形状、素材を有していることが適当である。
【0061】
なお、上部板2と同様に、凹部14は必須の構成要件ではない。
【0062】
下部板3は、便宜上「下部」との呼称となっているが、物理的に下部の位置に存在しなければならないわけではなく、上部板2と特段に区別されるものでもない。
【0063】
下部板3は、中間板10を積層する際に、中間板10と接合される突起部や接着部を備えていることも好適である。
【0064】
(中間板)
次に、中間板10について説明する。
【0065】
複数の中間板10は、上部板2と下部板3の間に積層される。中間板10は、複数積層される。これは、中間板10に形成されている内部貫通孔11同士が、それぞれの一部のみが重なって毛細管流路を形成するためである。
【0066】
複数の中間板10のそれぞれは、内部貫通孔11と外部貫通孔12を有している。
【0067】
ここで、外部貫通孔12は、上部板2および下部板3に設けられた外部貫通孔12と同一位置(および同一の形状や面積)であることが好ましい。なお、同一位置とは、上部板2、下部板3および中間板10が積層された場合における座標を基準とする。
【0068】
中間板10に設けられた外部貫通孔12は、複数の中間板10のそれぞれ、上部板2、下部板3のそれぞれが積層されると、同一位置にある外部貫通孔がつながって、上部板2から下部板3までを貫通するビアホール4が形成される。
【0069】
中間板10は、金属、樹脂などで形成されるが、銅、アルミニウム、銀、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、ステンレスなどの熱伝導率の高い金属で形成されることが好ましい。また、方形、菱形、円形、楕円形、多角形など種々の形を有していてよいが、上部板2および下部板3に挟まれてヒートパイプ1を形成するので、上部板2と同一の形状であることが好ましい。また、製造上の容易性や実装上の容易性から方形が採用されやすい。なお、上部板2および下部板3に挟まれるので、中間板10の面積は、上部板2および下部板3と同一でも良く、若干小さくてもよい。
【0070】
また、中間板10には、上部板2および下部板3と接続される際に用いられる突起13が備わっていてもよい。
【0071】
突起13は、角柱状を有し、所定位置に配置されている。
【0072】
上部板2、複数の中間板10および下部板3がそれぞれ重ねられて圧力を掛けられて積層される際には、この突起13が押しつぶされて相互の部材を接着する役目を有する。
【0073】
また、突起13は積層の際の位置決めの基準にもなる。
【0074】
複数の中間板10は、上部板2と下部板3に挟まれて積層され、最終的にはヒートパイプ1を形成する。また、中間板10が複数枚積層されることで、内部空間が形成され、この内部空間に冷媒が封入されてヒートパイプとしての機能を発する。
【0075】
なお、上部板2、下部板3、複数の中間板10のそれぞれは、耐久性向上のために、角部に面取りがなされていてもよい。
【0076】
また、上部板2、下部板3、複数の中間板10の少なくとも一つには、積層時の位置決めのための位置決め孔や位置決め突起が設けられていても良い。加えて、実装時に分かりやすくするための印が設けられても良い。
【0077】
上部板2と下部板3に挟まれて複数の中間板10が積層されることで、ヒートパイプ1に内部空間が形成される。この内部空間に冷媒が封入されるので、上部板2および下部板3の少なくとも一方に冷媒を入れる注ぎ口が設けられていてもよい。上部板2、複数の中間板10および下部板3の全てが積層された後で、この注ぎ口から冷媒が封入され、封入後に内部空間が真空にされて注ぎ口が封止される。このようにして、内部空間に冷媒が封入され、ヒートパイプとしての機能を発するようになる。
【0078】
なお、冷媒の封入においては、真空または減圧下で行われる。真空または減圧下で行われることで、ヒートパイプ1の内部空間が真空または減圧された状態となって冷媒が封入される。減圧下であると、冷媒の気化・凝縮温度が低くなり、冷媒の気化・凝縮の繰り返しが活発になるメリットがある。
【0079】
(内部貫通孔と毛細管流路)
次に、内部貫通孔11と毛細管流路15について説明する。
【0080】
内部貫通孔11は、複数の中間板10のそれぞれに設けられる。なお、中間板10のそれぞれに複数の内部貫通孔11が設けられる。内部貫通孔11は、中間板10の表面から裏面にかけて貫通しており、その形状は円形でも楕円形でも方形でもよい。内部貫通孔11の一部同士が重なって毛細管流路15を形成することから、内部貫通孔11は方形であることが適当である。これは製造上の容易性からも適当である。
【0081】
内部貫通孔11は、複数の中間板10のそれぞれに形成される。内部貫通孔11は、掘削、プレス、ウェットエッチング、ドライエッチングなどで形成されれば良いが、微小加工および加工精度の面から、ウェットエッチング、ドライエッチングなどのエッチング加工で形成されるのが適当である。
【0082】
内部貫通孔11は、複数の中間板10のそれぞれに設けられる。ここで、複数の中間板10は、その内部貫通孔11の一部同士がそれぞれ重なるように積層されるので、内部貫通孔11の位置は、隣接する中間板10毎にずれていることが適当である。例えば、ある中間板10における内部貫通孔11の位置と、この中間板10と接する別の中間板10における内部貫通孔11の位置は、内部貫通孔11の面積の一部ずつが重なるようにずれている。このように、隣接する中間板10毎に内部貫通孔11の位置がずれていることで、複数の中間板10が積層された場合に、内部貫通孔11の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路15が形成される。
【0083】
毛細管流路15は、複数の中間板10が積層される際に、内部貫通孔11の一部同士が重なり合って、内部貫通孔11の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する。このような内部貫通孔11の断面積よりも小さな断面積を持つ孔が、ヒートパイプ1の厚み方向に積層され、厚み方向の孔同士が接続することで、厚み方向の流路が形成される。また、厚み方向において階段状の孔となるので、厚み方向であると同時に平面方向にも流れうる流路が形成される。この垂直・平面方向に形成される流路は、その断面積が非常に小さく、毛細管状態の流路となる。このようにして、毛細管流路15が形成される。
【0084】
なお、一部のみが重なるようにして、内部貫通孔11よりも小さな断面積を有する毛細管流路15が形成されるので、毛細管流路15を直接加工するよりも、高い精度で加工できるメリットがある。
【0085】
毛細管流路15は、凝縮した冷媒を還流させる。このとき、非常に小さな断面積を有する流路であるので、冷媒の還流速度が速い。加えて中間板10の広い範囲にわたって毛細管流路が形成されるので、凝縮した冷媒は垂直方向に加えて平面方向に渡って還流する。
【0086】
この結果、薄い平板形状を有しているにもかかわらず、ヒートパイプ1は、冷媒の気化と凝縮を高速かつ確実に繰り返すことができる。結果として、薄型で実装体積が少なくて済むヒートパイプが実現できる。これは、ビアホール4により両面実装するに際して必須の構成であり、従来技術における縦型や垂直型で厚みの大きいヒートパイプでは、そもそもビアホールによる両面実装が困難である。
【0087】
なお、毛細管流路15は、凝縮した冷媒が還流するが、気化した冷媒が通ることもある。また、気化した冷媒は、毛細管流路15以外の部分を通ることもある。
【0088】
また、毛細管流路15や凹部14の角部は、面取りされていたり、Rが設けられていたりすることも好適である。毛細管流路15は、六角形、円形、楕円形、方形、多角形など様々な断面形状を有していて良い。毛細管流路15の形状は、内部貫通孔11の形状と、内部貫通孔11同士の重ね合わせ方により定まる。また、断面積も同様に定まる。
【0089】
(外部貫通孔とビアホール)
次に、外部貫通孔12とビアホール4について説明する。
【0090】
外部貫通孔12は、上部板2、下部板3および複数の中間板10のそれぞれに設けられる。上部板2、下部板3および複数の中間板10の全てが積層されてヒートパイプ1が構成されるので、それぞれの部材に設けられる外部貫通孔12は、同一位置(および同一形状、同一面積)であることが好ましい。
【0091】
外部貫通孔12は、1つの部材当たりにおいて、単数でも複数でもよい。外部貫通孔12は、円形、方形、楕円形、多角形など種々の形状であってよいが、外部貫通孔12同士が重なってビアホール4が形成されることを考慮すると、円形であることが適当である。
【0092】
外部貫通孔12は、ヒートパイプ1が構成された後で形成されるのではなく、積層される部材(上部板2、下部板3、複数の中間板10のそれぞれ)毎に予め形成される。
【0093】
板状の部材に貫通孔を形成する際には、形成される貫通孔周辺の変形やクラックなどを生じさせない加工限度がある。貫通孔の形成においては、板状の部材の厚みをt、貫通孔の直径をφdとすると、(数1)
【0094】
【数1】

【0095】
との加工限度が成立する。すなわち、より小さな貫通孔を形成するためには、板状の部材の厚みを薄くする必要がある。部材の厚みが大きいと、(数1)で表されるとおり、貫通孔の直径を大きくする必要がある。貫通孔の直径を小さくするためには、加工時においてかなりの圧力を小さい領域に集中させる必要があり、貫通孔周辺への影響が大きくなりうるからである。
【0096】
一方で、ヒートパイプ1にビアホール4を形成するに当たっては、使用上の便宜およびヒートパイプ1の性能劣化防止のために、ビアホール4の直径は小さい方が好ましい。
【0097】
しかしながら、数1で表される加工限度があるために、ヒートパイプ1の構成後にビアホール4を形成すると、ビアホール4の直径がどうしても大きくなる。これは、どんなに薄型のヒートパイプ1であっても、ビアホール4の直径がヒートパイプ1の厚みに引きずられるからである。
【0098】
これに対して、実施の形態1におけるヒートパイプ1では、部材毎に外部貫通孔12が形成されている。ヒートパイプ1自体は一定の厚みが不可避であるが、積層される部材のそれぞれは、ヒートパイプ1そのものの厚みよりもかなり薄くできる。このため、部材毎に設けられる外部貫通孔12の直径は小さくできる。
【0099】
実施の形態1におけるヒートパイプ1は、上部板2、下部板3および複数の中間板10のそれぞれが積層されて構成される。このとき、上部板2、下部板3および複数の中間板10のそれぞれに設けられた外部貫通孔12同士が同一位置で重なることで、上部板2から下部板3までを貫通するビアホール4が形成される。この結果、ビアホール4は、ヒートパイプ1の厚みを基準にした加工限度(数1で示される加工限度)で定義される直径以下であって、部材毎の厚みを基準にした加工限度数1で示される加工限度)で定義される直径以上を有する。
【0100】
このような直径を有するビアホール4は、加工限度を超えることのない、小さな直径を有することになる。結果として、加工上、製造上の問題を生じさせること無く、使用上の便宜およびヒートパイプ1の性能劣化防止を実現するビアホール4が、ヒートパイプ1に形成できる。
【0101】
例えば数1を考慮すると、ビアホール4の直径φdを2mmにするためには、ビアホール4を空ける部材の厚みを4mm以下にする必要がある。ビアホール4が、ヒートパイプ1に直接形成されるとすると、ヒートパイプ1を4mm以下の厚みにする必要がある。
【0102】
逆に言えば、4mmの厚みを有するヒートパイプ1に、直接ビアホール4を形成する場合には、ビアホール4の加工限度となる直径φdは2mmである。
【0103】
一方、実施の形態1におけるヒートパイプであれば、ヒートパイプ1を構成する厚み方向にスライスされたのと同様な板状の部材(上部板2、下部板3、複数の中間板10のそれぞれ)毎に、ビアホール4を形成する外部貫通孔12が形成される。このため、ヒートパイプ1におけるビアホール4で考えるのとは異なり、最終的に形成されるビアホール4の直径は、各部材における外部貫通孔12での直径に依存する。
【0104】
このため、ヒートパイプ1の厚みが4mmであっても、上部板2、下部板3、2枚の中間板10(複数の中間板10を2枚と仮定して)の厚みは、それぞれ約1mmずつになる。各部材の厚みが1mmである場合には、外部貫通孔12の直径φdは、0.5mmまで小さくできる。ビアホール4は、外部貫通孔12同士が重なったものである。このため、ビアホール4の直径は0.5mmとなる。このように、実施の形態1におけるヒートパイプ1のビアホール4の直径は、従来技術の加工限度である2mmを大幅に改善し、0.5mmとできる。
【0105】
このように、実施の形態1におけるヒートパイプは、微小径のビアホールを設けることができる。
【0106】
ビアホール4は、ヒートパイプ1において表面から裏面に至るまで貫通されているので、ヒートパイプ1の両面に発熱体である電子部品を接触させたり実装したりできる。特に、表面の電子部品と裏面の電子部品同士を、電気的に接続させることもできる。あるいは、裏面の電子部品からの信号を、表面に引き出すことも可能となる。
【0107】
なお、外部貫通孔12同士が重なってビアホール4が形成されるが、板状の部材同士が積層されるので、ビアホール4の内部の壁は、封止される。このため、ヒートパイプ1の内部空間の封止が損なわれることも生じない。勿論、封止を高めるために、予め外部貫通孔12の外周が突出しており、突出部同士が重なるようにしておくことも適当である。
【0108】
以上のように、実施の形態1におけるヒートパイプは、ヒートパイプ自体の厚みに基づく加工限度よりも小さい直径を有するビアホールを有することができる。加えて、毛細管流路により、平面方向を活用した気化した冷媒の拡散と、凝縮した冷媒の還流が実現できるので、薄型で平板状のヒートパイプが実現できる。
【0109】
このように、平板状であるヒートパイプと微小直径のビアホールが相まって、高密度実装を損なわない高い冷却効果を有するヒートパイプが実現できる。
【0110】
なお、冷媒としては、水(純水、蒸留水等)、エタノール、メタノール、アセトン等が好適である。
【0111】
なお、下部板3、複数の中間板10は、外周部にシール用の突起や内部空間内に補強用突起を有していても良い。
【0112】
(製造工程)
次に、各部材を積層して構成されるヒートパイプの製造工程について説明する。
【0113】
図3に示されるとおり、平板状で外部貫通孔12を有する上部板2、平板状で外部貫通孔12を有する下部板3、平板状で内部貫通孔11および外部貫通孔12を有する複数の中間板10がそれぞれ対向するように並べられる。複数の中間板10は、何枚であってもよいが、図3では、3枚である。また、複数の中間板10を、上部板2と下部板3が挟むような位置関係である。また、各部材は、上部板2、下部板3および複数の中間板10のそれぞれに設けられた外部貫通孔12同士が同一位置で重なるような位置関係に合わせられる。加えて、複数の中間板10は、複数の中間板10のそれぞれに設けられた内部貫通孔11のそれぞれの一部のみが重なるような位置関係にあわせられる。
【0114】
中間板10は、突起13を有している。
【0115】
上部板2、下部板3、複数の中間板10は、位置あわせされた上で積層され、ヒートプレスによって直接接合されて一体化される。このとき、各部材は、突起13によって直接接合される。
【0116】
ここで、直接接合とは、接合しようとする2つの部材の面を密着させた状態で加圧しつつ熱処理を加えることであって、面部の間に働く原子間力によって原子同士を強固に接合させることであり、接着剤を用いることなく、2つの部材の面同士を一体化しうる。このとき、突起13が強固な接合を実現する。
【0117】
ヒートプレスにおける直接接合の条件として、プレス圧力は、40kg/cm
〜150kg/cm
の範囲内であり、温度は250〜400℃の範囲内であることが好ましい。
【0118】
次に、上部板2や下部板3の一部に空けられた冷媒注入孔を通じて、冷媒が注入される。その後、冷媒注入孔が封止されてヒートパイプ1が製造される。なお、冷媒の封入は真空または減圧下で行われる。真空または減圧下で行われることで、ヒートパイプ1の内部空間が真空または減圧された状態となって冷媒が封入される。減圧下であると、冷媒の気化・凝縮温度が低くなり、冷媒の気化・凝縮の繰り返しが活発になるメリットがある。
【0119】
以上のような製造工程により、複数の中間板10の内部貫通孔11は、その一部のみが重なって、内部貫通孔11の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路15を形成する。各部材の外部貫通孔12は、相互に同一位置で重なって、上部板2から下部板3までを貫通するビアホール4を形成する。
【0120】
なお、外部貫通孔12が積層されることでビアホール4が形成される。このとき、外部貫通孔12の積層において隙間ができるとヒートパイプ1の密封性が阻害される。このため、外部貫通孔12の周囲には図4に示されるようなシール突起60が設けられ、上部板2、下部板3、複数の中間板10が積層されるときには、このシール突起60により密封性が確保される。図4は、本発明の実施の形態1における外部貫通孔の周囲の拡大図である。
【0121】
図5は、本発明の実施の形態1におけるビアホールの拡大図である。図5は、上部板2、下部板3、複数の中間板10が積層された場合に、ビアホール4の周囲が密封されている状態を示している。シール突起60同士の嵌合により、板同士が確実に接合されて、ヒートパイプ1が確実に密封される。
【0122】
図6は、本発明の実施の形態1におけるビアホール周辺の拡大図である。図6から明らかな通り、外部貫通孔12同士の積層によりビアホール4が形成され、内部貫通孔11同士の積層により毛細管流路15が形成される。
【0123】
以上のように、シール突起60により、外部貫通孔12同士が積層されてビアホール4が形成される場合に、ヒートパイプ1の密封性が確保される。
【0124】
以上の製造工程を一例として、実施の形態1におけるヒートパイプ1が製造される。
【0125】
(実施の形態2)
次に実施の形態2について、図7を用いて説明する。図7は、本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの側断面図である。図7(a)は、製造時に各部材が分割された状態を示しており、図7(b)は、各部材が封止されてヒートパイプ1が完成した状態を示している。
【0126】
実施の形態2では、上部板2および下部板3の少なくとも一方が、厚み方向に結合しうる部材から構成される場合について説明する。言い換えると、上部板2および下部板3の少なくとも一方が、厚み方向にスライス分割された部材から構成される場合について説明する。
【0127】
図3と同じ符号については説明を省略する。
【0128】
図7に示されるヒートパイプ1は、上部板2、下部板3および複数の中間板10が積層されてヒートパイプ1が製造されること、上部板2〜中間板10のそれぞれに設けられた外部貫通孔12同士が重なることでビアホール4が形成されること、複数の中間板10のそれぞれに設けられた内部貫通孔11の一部同士が重なることで、断面積の小さな毛細管流路15が形成されることについては、実施の形態1で説明したヒートパイプ1と同様である。
【0129】
図7に示されるヒートパイプ1は、上部板2と下部板3が厚み方向に接合されうる複数の部材から構成されている。
【0130】
上部板2は、第1上板ユニット20、第2上板ユニット21、第3上板ユニット22に分割された上で、これらが積層されて上部板2が形成される。
【0131】
同様に、下部板3は、第1下板ユニット30、第2下板ユニット31、第3下板ユニット32に分割された上で、これらが積層されて下部板3が形成される。上部板2および下部板3の少なくとも一方(図7では両方)が、厚み方向に分割された部材の積層により形成されることで、外部貫通孔12の直径(ひいてはビアホール4の直径)を更に小さくできる。実施の形態1で説明したとおり、外部貫通孔12の直径は、外部貫通孔12が空けられる部材の厚みが薄い方が、小さくできるからである。
【0132】
中間板10は、複数の枚数が積層されるので、外部貫通孔12の直径は、中間板10の一枚当たりの厚みに依存する。一方、上部板2、下部板3のそれぞれは、一つの部材であるので、外部貫通孔12の微小化に限界がある。特に、信頼性や耐久性の問題から、上部板2と下部板3は中間板10よりも厚みを有することが多く、ビアホール4の直径は、中間板10の厚みよりも、上部板2や下部板3の厚みに依存することが多い。
【0133】
この点を解決するために、図7に示されるように、上部板2および下部板3の少なくとも一方を、厚み方向に分割された複数の部材で構成する。
【0134】
第1上板ユニット20、第2上板ユニット21、第3上板ユニット22のそれぞれの厚みは、上部板2の厚みよりも薄い。このため、第1上板ユニット20、第2上板ユニット21および第3上板ユニット22のそれぞれに空けられる外部貫通孔12の直径は、実施の形態1の場合よりも小さくできる。上部板2は、第1上板ユニット20、第2上板ユニット21、第3上板ユニット22が積層されて形成される。
【0135】
第1下板ユニット30、第2下板ユニット31、第3下板ユニット32のそれぞれの厚みは、下部板3の厚みよりも薄い。このため、第1下板ユニット30、第2下板ユニット31および第3下板ユニット32のそれぞれに空けられる外部貫通孔12の直径は、実施の形態1の場合よりも小さくできる。下部板3は、第1下板ユニット30、第2下板ユニット31、第3下板ユニット32が積層されて形成される。
【0136】
このように、上部板2および下部板3の少なくとも一方を、厚み方向に分割された複数の部材により構成することで、ビアホール4の直径を更に小さくできる。
【0137】
ここで、第1上板ユニット20および第1下板ユニット30は、外部貫通孔12を有する平板状の板状の部材である。第2上板ユニット21と第2下板ユニット31は、外部貫通孔12を有し、凹部14を形成する一部であって底の部分が形成されている板状の部材である。第3上板ユニット22と第3下板ユニット32は、外部貫通孔12を有し、凹部14の一部であって先端部が形成されている板状の部材である。第2上板ユニット21と第3上板ユニット22が積層されると、凹部14が形成される。同様に、第2下板ユニット31と第3下板ユニット32が積層されると、凹部14が形成される。なお、第3上板ユニット22と第3下板ユニット32のそれぞれは、図7においては凹部14を形成する壁がばらばらに分割されたように配置されているが、相互にブリッジされるなどすれば、容易に他の部材と積層される。
【0138】
なお、上部板2、下部板3は、先に各部材(ユニット)が積層されてもよく、複数の中間板10などと共に積層されて接合されても良い。
【0139】
また、図7では、上部板2および下部板3のそれぞれを、3枚ずつの部材で構成したが、3枚以外でも2枚や4枚以上の部材で構成しても良い。勿論、上部板2および下部板3のいずれか一方のみを、複数の部材で構成しても良い。
【0140】
実施の形態2におけるヒートパイプ1は、図7(b)に示されるとおり、上部板2を構成する複数の部材20〜22、複数の中間板10、下部板3を構成する複数の部材30〜32のそれぞれがヒートプレスなどの方法で積層・接合されて製造される。この積層・接合により、それぞれの部材に設けられている外部貫通孔12が重なり合って、ビアホール4が形成される。
【0141】
実施の形態2のヒートパイプは、より小さな直径を有するビアホール4を実現できる。
【0142】
(実施の形態3)
実施の形態3では、空隙によって形成される蒸気拡散路を有するヒートパイプについて説明する。更には、実施の形態3におけるヒートパイプは、蒸気拡散路と毛細管流路との境界付近に、ビアホールを有する。
【0143】
図8、図9を用いて説明する。
【0144】
図8は、本発明の実施の形態3における中間板の上面図である。図9は、本発明の実施の形態3におけるヒートパイプの内部構造を示す写真である。
【0145】
図8に示される中間板10は、切り欠き部35と板部36を有する。図8では、切り欠き部35と板部36が交互に設けられている。また、中間板10の中央部は、板部36となっている。
【0146】
板部36は、複数の内部貫通孔11を備えている。内部貫通孔11は、複数の中間板10が重なるときにそれぞれの一部のみが重なって、内部貫通孔11の平面方向の断面積よりも小さな断面積を有する毛細管流路15を形成する。
【0147】
一方、複数の中間板10が重なる際に、切り欠き部35同士が重なって、ヒートパイプ1には、内部空間41が形成される。切り欠き部35同士が重なって空間の厚みが生じて内部空間41が形成されるからである。この内部空間41は、ヒートパイプ1の中で所定の体積を有する空間となり、発熱体の熱により気化した冷媒が、平面・垂直方向に拡散する蒸気拡散路40の役割を有する。特に、図9に示されるように蒸気拡散路40が、放射状に形成される場合には、気化した冷媒は放射線状に拡散する。蒸気拡散路40を経由して拡散した気化冷媒は、放熱面で冷却されて凝縮される。凝縮した冷媒は、液体であるので、毛細管流路15を経由して還流する。
【0148】
このように、毛細管流路15と蒸気拡散路40が、ヒートパイプ1の内部に形成されていることで、気化した冷媒の拡散と凝縮した冷媒の還流が、高速であると共に平面・垂直方向に行われる。
【0149】
実施の形態3におけるヒートパイプ1では、中間板10の切り欠き部35と板部36の境界付近に外部貫通孔12(すなわちビアホール4)が位置する。上部板2、下部板3および複数の中間板10において、外部貫通孔12は、切り欠き部35と板部36の境界付近にて空けられる。中間板10の形状に応じて、予め上部板2、下部板3および中間板10での外部貫通孔12の位置が決められればよい。
【0150】
上部板2、下部板3および複数の中間板10のそれぞれが積層される際に、外部貫通孔12同士が重なることで、上部板2から下部板3までを貫通するビアホール4が形成される。このとき、実施の形態3におけるヒートパイプ1においては、ビアホール4が切り欠き部35と板部36の境界付近に形成される。言い換えると、ビアホール4は、蒸気拡散路40と毛細管流路15の境界付近に形成される。
【0151】
ビアホール4が、蒸気拡散路40と毛細管流路の境界付近に形成されることで、毛細管流路を還流する凝縮した冷媒の移動や、蒸気拡散路40を拡散する気化した冷媒の移動を妨げにくくなる。ビアホール4が存在する場所では、ヒートパイプ1の内部空間は形成されないので、毛細管流路15も蒸気拡散路40もいずれも形成されない。このため、例えば毛細管流路15の中央にビアホール4が形成されると、凝縮した冷媒の還流経路が大きく阻害される。逆に、蒸気拡散路40の中央にビアホール4が形成されると、気化した冷媒の拡散路が大きく阻害される。また、蒸気拡散路40および毛細管流路15のビアホール4による影響の分散も重要である。
【0152】
これに対して、実施の形態3におけるヒートパイプ1では、ビアホール4が蒸気拡散路40と毛細管流路15の境界付近に形成されるので、いずれか一方のみへの影響を低減およびバランスできる。
【0153】
以上のように、実施の形態3におけるヒートパイプ1は、冷媒の移動を妨げにくいビアホール4を実現できる。
【0154】
なお、図8、9では、蒸気拡散路40が放射状である場合を例として説明したが、これは当然ながら一例に過ぎず、他の形状であってもよい。また、ビアホール4が形成される位置は、切り欠き部35と板部36の両方にまたがっていても良く、境界付近であって一方の領域内であってもよい。
【0155】
(実施の形態4)
次に実施の形態4について説明する。
【0156】
実施の形態4におけるヒートパイプは、所定のサイズを有している。
【0157】
本発明のヒートパイプは、そのサイズが特に限定されるものではないが、実用においては、あるサイズの範囲内であることが適当な場合がある。
【0158】
一例として、ヒートパイプ1は、20mm角以上100mm角以下の方形を有し、更に1mm以上5mm以下の厚みを有している。このように規定されるサイズは、冷却対象となる発熱体である電子部品のサイズや回路基板への実装上の容易性などから、導入される。
【0159】
勿論、ヒートパイプのサイズは、このサイズに限定されるものではなく、製造上の要求、使用上の要求、実装上の要求など、様々な要求に応じて定まればよい。
【0160】
図10は、本発明の実施の形態4におけるヒートパイプの斜視図である。ヒートパイプ1は、実施の形態1で説明した通り、上部板2、下部板3および複数の中間板10が積層・接合されて形成されている。それぞれの部材に設けられた外部貫通孔12が重なって、上部板2から下部板3までを貫通するビアホール4が形成されている。複数の中間板10には、実施の形態1で説明したとおり、内部貫通孔11が設けられており、内部貫通孔11の一部同士のみが重なることで、内部貫通孔11の平面方向の断面積よりも小さな断面積を有する毛細管流路15が形成されている。
【0161】
図10に示されるヒートパイプ1は、図中に記載のサイズ以外は、実施の形態1〜3で説明したヒートパイプと何ら変わるところはない。
【0162】
図10に示されるとおり、ヒートパイプ1は、縦、横、厚みのサイズに関するパラメータを有している。ここで、ヒートパイプ1は、
20mm ≦ 縦 ≦ 100mm
20mm ≦ 横 ≦ 100mm
1mm ≦ 厚み ≦ 5mm
のサイズを有している。
【0163】
このサイズに基づくヒートパイプ1は、実施の形態1〜3で説明したのと同様の効果を有するだけでなく、冷却対象となる電子部品などのサイズに適したヒートパイプとなる。
【0164】
(実施の形態5)
次に実施の形態5について説明する。
【0165】
実施の形態5では、ヒートパイプの製造方法および当該製造方法で製造されたヒートパイプについて説明する。
【0166】
図11は、本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの製造工程を説明する説明図である。図11(a)は、ヒートパイプの製造に必要な部材が並んでいる状態を示しており、図11(b)は、それぞれの部材が積層・接合されて製造されたヒートパイプを示している。
【0167】
まず、外部貫通孔12を有し、平板状の上部板2が用意される。
【0168】
次に、上部板2に対向し、外部貫通孔12を有する平板状の下部板3が用意される。ここで、下部板3は、上部板2と同一の形状・面積を有していることが、製造の容易性および製造されたヒートパイプの取り扱いの容易性から好適である。勿論、上部板2と下部板3が、異なる形状、面積を有していても良い。
【0169】
次に、上部板2と下部板3の間に挟まれると共に、外部貫通孔12と内部貫通孔11を有する複数の中間板10が用意される。複数の中間板10は、上部板2と下部板3の対向する領域に挟まれて用意される。複数の中間板10は、上部板2および下部板3と同一形状および同一面積を有していることが、製造の容易性および製造されたヒートパイプの取り扱いの容易性から好適である。なお、図11では、中間板10は3枚用意されているが、複数であれば何枚でもよい。
【0170】
上部板2、下部板3および複数の中間板10に設けられた外部貫通孔12は、積層された際に同一位置となる位置に設けられる。図11(b)に示されるように、上部板2、下部板3および複数の中間板10の全てが積層されてヒートパイプ1が製造されると、積層方向(厚み方向)の外部貫通孔12がつながって、上部板2から下部板3までを貫通するビアホール4が形成される。
【0171】
複数の中間板10のそれぞれに設けられた内部貫通孔11は、それぞれの一部のみが重なる。一部のみが重なることで、内部貫通孔11の平面方向の断面積よりも小さな断面積を有する毛細管流路15が形成される。毛細管流路15は、凝縮した冷媒を還流させる。
【0172】
また、複数の中間板10が積層されることで、上部板2と下部板3とに挟まれた内部空間が形成される。この内部空間には、冷媒が封入される。封入された冷媒は、発熱体からの熱で気化する。冷媒は気化する際の潜熱により発熱体から熱を奪う。気化した冷媒は、ヒートパイプ1の表面からの冷却によって凝縮し、再び液化する。液化によって、発熱体から奪った熱が、放熱される。凝縮した冷媒は、毛細管流路15を通じて還流する。
【0173】
上部板2、下部板3および複数の中間板10は、それぞれ位置決めされた上で接合される。接合においては、熱と圧力を加えるヒートプレスが用いられる。
【0174】
複数の中間板10は、突起13を有している。この突起13は、上部板2、複数の中間板10、および下部板3のせきそうにおける位置決めに用いられると共に、接合時の接着剤の役割を有する。
【0175】
上部板2、下部板3、複数の中間板10は、位置あわせされた上で積層され、ヒートプレスによって直接接合されて一体化される。このとき、各部材は、突起13によって直接接合される。
【0176】
ここで、直接接合とは、接合しようとする2つの部材の面を密着させた状態で加圧しつつ熱処理を加えることであって、面部の間に働く原子間力によって原子同士を強固に接合させることであり、接着剤を用いることなく、2つの部材の面同士を一体化しうる。このとき、突起13が強固な接合を実現する。
【0177】
ヒートプレスにおける直接接合の条件として、プレス圧力は、40kg/cm
〜150kg/cm
の範囲内であり、温度は250〜400℃の範囲内であることが好ましい。
【0178】
次に、上部板2や下部板3の一部員向けられた冷媒注入孔を通じて、冷媒が注入される。その後、冷媒注入孔が封止されてヒートパイプ1が製造される。
【0179】
また、内部空間への冷媒の封入は、上部板2や下部板3などの一部に設けられた注入孔を通じて行われる。例えば、1つの冷媒注入孔と空気排出孔が設けられており、所定量の冷媒が注入される(冷媒注入孔から冷媒が注入されるのに合わせて、空気排出孔から空気が排出される)。冷媒が注入された後、冷媒注入孔と空気排出孔が可塑性金属で封止されて、冷媒が注入されたヒートパイプ1が完成する。
【0180】
なお、冷媒の封入は真空または減圧下で行われる。真空または減圧下で行われることで、ヒートパイプ1の内部空間が真空または減圧された状態となって冷媒が封入される。減圧下であると、冷媒の気化・凝縮温度が低くなり、冷媒の気化・凝縮の繰り返しが活発になるメリットがある。あるいは、冷媒が封入された後で、真空引きが行われて、不要な空気や不純物が、ヒートパイプ1の内部空間から取り除かれる。その上で冷媒注入孔が封止される。
【0181】
このような製造方法により、毛細管流路15とビアホール4を有し、薄型であって平板状であるヒートパイプ1が製造される。
【0182】
(実施の形態6)
次に実施の形態6について説明する。
【0183】
実施の形態6では、ヒートパイプ機能付き回路基板について説明する。
【0184】
図12は、本発明の実施の形態6におけるヒートパイプ機能付き回路基板の側面図である。
【0185】
ヒートパイプ機能付き回路基板50は、実施の形態1〜5で説明されたビアホール4を有するヒートパイプ1の、表面、裏面およびビアホール4の内面の少なくとも一つに配線層を有している。この配線層の存在により、ヒートパイプの表面に電子部品(冷却対象となる電子部品も冷却対象外の電子部品もそれぞれ含む)が実装できる。すなわち、ヒートパイプとしての機能を有する回路基板が実現できる。
【0186】
ヒートパイプ機能付き回路基板50は、実施の形態1〜5において説明されたヒートパイプ1の表面と裏面のそれぞれに絶縁層51を有している。ヒートパイプ1は銅やアルミニウムなどの金属でできているので、表面に回路基板を実装するためには、表面が絶縁されている必要がある。絶縁層51は、金属表面を絶縁する機能を有するカチオン型ポリイミド電着材料が塗布されて形成される。実施の形態6においては、株式会社シミズ社のカチオン型ポリイミド電着塗料(商品名エレコートP1)が選択された。絶縁層51の厚みは特に限定されるものではないが、ピンホールが発生しにくい厚さとして5〜20μmが好ましい。
【0187】
ヒートパイプ機能付き回路基板50は、絶縁層51の外側に更に導体層52を有している。導体層52は、実装される電子部品同士の電気的な接続を実現する。
【0188】
導体層52は、プリント配線基板で最もよく使用される銅箔がホットプレスを用いて蒸着されて形成される。導体層52の厚みは、15μm〜35μmが好ましい。
【0189】
導体層52は、エッチング加工により形成される。導体層52の上にエッチングレジストを塗布し、パターニング露光・現像後にエッチング処理が施され、ビアホール4における導体層52の除去が行われる。最後にレジストが剥離されれば、ヒートパイプ1の表面に絶縁層51、導体層52が形成される。
【0190】
更に、ヒートパイプ機能付き回路基板50は、ビアホール4と実装される電子部品とを導通させるために、めっき層53を有する。めっき層は、銅めっきなどが用いられる。めっき層53は、下地として0.5μm程度塗布された無電解銅めっき層の上に、5〜10μmの電解銅めっきが施されて形成される。
【0191】
このめっき層により、ビアホール4を介して、ヒートパイプ1の表面と裏面に実装された電子部品同士が、電気的に接続される。結果として、電子部品を実装可能な回路基板としても、ヒートパイプ1が使用できる。このとき、実装された電子部品は、それぞれヒートパイプ1の本体上に位置するので、電子部品が発する熱は、ヒートパイプ1によって冷却されるメリットがある。特に、ヒートパイプ1の表面と裏面において、対向しない位置同士に電子部品が実装されれば、両面において適切に電子部品が冷却される。また、ヒートパイプ1の形成されるビアホール4が非常に小さいので、ヒートパイプ1の強度や耐久性に問題を生じさせにくい。加えて、本体部分が発揮する冷却という性能への影響も少ない。
【0192】
更に、ビアホール4を介した電子部品の両面実装も可能である。
【0193】
この電子部品の実装においては、ヒートパイプ1の両面に実装するだけでなく、ヒートパイプ1の表面に実装された電子部品を、ビアホール4を介して、別の回路基板に接続することも可能である。
【0194】
以上のように、ヒートパイプ機能付き回路基板50は、電子部品の実装との関係でフレキシブルな使い方ができる。
【0195】
次に、図13を用いて、ヒートパイプ機能付き回路基板50の製造工程を説明する。
【0196】
図13は、本発明の実施の形態6におけるヒートパイプ機能付き回路基板の製造工程を示す工程図である。
【0197】
まず、図13(a)において示されるとおり、ヒートパイプ1の表面とビアホール4の内面にかけて絶縁層51が塗布される。絶縁層51の厚みは5〜20μmであるのが好ましい。
【0198】
次に、図13(b)において示されるとおり、絶縁層51の表面に導体層52が形成される。導体層52は、ホットプレスにより蒸着された銅箔で形成される。導体層52の厚みは、15〜35μm程度が好ましい。
【0199】
次に、図13(c)に示されるとおり、導体層52がエッチング加工で形状形成される。具体的には、ビアホール4以外の部分に、エッチングレジスト55が塗布される。ついで、パターニング露光・現像後にエッチング処理がなされ、ビアホール4部分を中心に導体層52の除去が行われる。
【0200】
ついで、図13(d)に示されるとおり、エッチングレジスト55が剥離される。エッチングレジスト55が剥離されることで、ビアホール4以外の部分に絶縁層51および導体層52が形成される。
【0201】
次に、図13(e)に示されるとおり、ビアホール4を電気的に導通させるために、めっき層53が形成される。めっき層53は、ヒートパイプ1の表面と裏面およびビアホール4の内周面に形成される。めっき層53は、銅めっきが好適に用いられ、無電解銅めっき層を下地とした上に電解銅めっきが形成される手法が適当である。なお、無電解銅めっきは、0.5μm程度塗布され、電解銅めっきは、5〜10μm程度の厚みを有していることが好ましい。
【0202】
図13(f)に示されるとおり、ビアホール4と導体層52をまとめてエッチングするためのレジスト56が塗布される。レジスト56が塗布された後、パターニング露光・現像が行われる。
【0203】
次に、図13(g)に示されるとおり、エッチング加工により配線回路57が形成される。めっき層53と導体層52がエッチング処理されて、必要な配線パターンを有する配線回路57が形成される。
【0204】
最後に、図13(h)に、完成したヒートパイプ機能付き回路基板50が示される。図13(g)に示されるレジスト56が全て剥離処理されている。このようにして、ビアホール4を介した電気的接続が可能な機能が構成される。
【0205】
このようにして製造されたヒートパイプ機能付き回路基板は、電子機器における高密度実装を阻害することなく、電子部品の冷却と実装を両立させる。
【0206】
これらのヒートパイプ、ヒートパイプ機能付き回路基板は、電子機器、製造機械、産業機械、自動車、航空機器などの幅広い分野に適用される。
【産業上の利用可能性】
【0207】
本発明は、電子部品や電子素子などの発熱性を有する発熱体の冷却などの分野において好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの斜視図
【図2】発明の実施の形態1におけるヒートパイプの側面図
【図3】本発明の実施の形態1におけるヒートパイプの側断面図
【図4】本発明の実施の形態1における外部貫通孔の周囲の拡大図
【図5】本発明の実施の形態1におけるビアホールの拡大図
【図6】本発明の実施の形態1におけるビアホール周辺の拡大図
【図7】本発明の実施の形態2におけるヒートパイプの側断面図
【図8】本発明の実施の形態3における中間板の上面図
【図9】本発明の実施の形態3におけるヒートパイプの内部構造を示す写真
【図10】本発明の実施の形態4におけるヒートパイプの斜視図
【図11】本発明の実施の形態5におけるヒートパイプの製造工程を説明する説明図
【図12】本発明の実施の形態6におけるヒートパイプ機能付き回路基板の側面図
【図13】本発明の実施の形態6におけるヒートパイプ機能付き回路基板の製造工程を示す工程図
【符号の説明】
【0209】
1 ヒートパイプ
2 上部板
3 下部板
4 ビアホール
5、6 発熱体
7 熱的接合材
10 中間板
11 内部貫通孔
12 外部貫通孔
13 突起
14 凹部
15 毛細管流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
封入された冷媒の気化および凝縮によって発熱体を冷却するヒートパイプであって、
平板状の上部板と、
前記上部板と対向する平板状の下部板と、
前記上部板と前記下部板の間に積層されると共に内部貫通孔を有する平板状の複数の中間板を備え、
前記複数の中間板のそれぞれに設けられた前記内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、前記内部貫通孔の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成され、
前記上部板、前記下部板および前記複数の中間板のそれぞれは、外部貫通孔を有し、前記上部板に設けられた前記外部貫通孔、前記下部板に設けられた前記外部貫通孔および前記中間板に設けられた前記外部貫通孔のそれぞれが重なり合ってビアホールが形成されるヒートパイプ。
【請求項2】
前記上部板、前記下部板および前記複数の中間板のそれぞれに設けられた前記外部貫通孔は、前記ヒートパイプの厚みに対する加工限度に基づく直径よりも小さいと共に、前記上部板、前記下部板および前記複数の中間板のそれぞれの厚みに対する加工限度に基づく直径以上である、請求項1記載のヒートパイプ。
【請求項3】
前記加工限度は、前記外部貫通孔を形成する板の厚み方向をtとし、前記外部貫通孔の直径をφdとした場合に、
(1/2)*t ≦ φd
の式で表される請求項2記載のヒートパイプ。
【請求項4】
前記上部板、前記下部板および前記中間板の少なくとも一つが、厚み方向に接合しうる複数の部材から構成される請求項1から3のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項5】
前記外部貫通孔を有する前記上部板と、
前記外部貫通孔を有する前記下部板と、
前記内部貫通孔と前記外部貫通孔を有する前記複数の中間板のそれぞれを、前記上部板と前記下部板で前記複数の中間板を挟んで積層し、
前記上部板、前記下部板および前記複数の中間板のそれぞれに設けられた外部貫通孔同士が重なって、前記上部板から前記下部板までを貫通するビアホールが形成され、
前記複数の中間板のそれぞれに設けられた前記内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、前記内部貫通孔の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成されることで製造される請求項1から4のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項6】
前記複数の中間板の各々は、切り欠き部と板部を有し、
前記複数の中間板の各々に設けられた前記切り欠き部同士が重なることで、内部空間である蒸気拡散路が形成され、
前記蒸気拡散路は、封入された冷媒が気化して生じる蒸気冷媒を拡散させ、
前記毛細管流路は、封入された冷媒が凝縮して生じる凝縮冷媒を還流させる、請求項1から5のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項7】
前記ビアホールは、前記複数の中間板における前記板部と前記切り欠き部の境界付近に位置する請求項6記載のヒートパイプ。
【請求項8】
前記上部板および前記下部板のそれぞれは、前記毛細管流路と連通する凹部を更に備える請求項1から7のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項9】
前記ヒートパイプは、20mm角以上100mm角以下の方形、および1mm以上5mm以下の厚みを有している請求項1から8のいずれか記載のヒートパイプ。
【請求項10】
外部貫通孔を有する平板状の上部板と、
前記上部板と対向し、外部貫通孔を有する平板状の下部板と、
前記上部板と前記下部板に挟まれると共に、外部貫通孔と内部貫通孔を有する複数の中間板を積層して製造され、
前記上部板、前記下部板および前記複数の中間板に設けられた前記外部貫通孔同士が重なって、前記上部板から前記下部板までを貫通するビアホールが形成され、
前記複数の中間板のそれぞれに設けられた前記内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、前記内部貫通孔の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成されることで製造されるヒートパイプ。
【請求項11】
前記複数の中間板は、前記上部板と前記下部板に挟まれて、封止された内部空間を形成し、前記内部空間は封入された冷媒を有する請求項10記載のヒートパイプ。
【請求項12】
外部貫通孔を有する平板状の上部板と、
前記上部板と対向し、外部貫通孔を有する平板状の下部板と、
前記上部板と前記下部板に挟まれると共に、外部貫通孔と内部貫通孔を有する複数の中間板を積層し、
前記上部板、前記下部板および前記複数の中間板に設けられた前記外部貫通孔同士が重なって、前記上部板から前記下部板までを貫通するビアホールが形成され、
前記複数の中間板のそれぞれに設けられた前記内部貫通孔同士は、それぞれの一部のみが重なって、前記内部貫通孔の平面方向の断面積よりも小さい断面積を有する毛細管流路が形成されるヒートパイプの製造方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか記載のヒートパイプの表面、裏面および前記ビアホールの内面の少なくとも一部に、電子部品を接続可能な配線層を備えるヒートパイプ機能付き回路基板。
【請求項14】
前記ビアホールの内面の配線層を介して、前記ヒートパイプの表面と裏面に実装された電子部品を電気的に接続する請求項13記載のヒートパイプ機能付き回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−236362(P2009−236362A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80862(P2008−80862)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(591245141)株式会社渕上ミクロ (26)
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【Fターム(参考)】