説明

ファンモータ

【課題】 モータ内において空気流れの偏りを抑制して、モータ各部を効率よく冷却する。
【解決手段】 ファンモータ1のロータマグネット10およびステータ13は円筒形状のファンボス2に収納されている。ファンブレード3はファンボスおよびロータマグネットと一体的に回転し、空気流れFを発生する。ステータは空芯コイルで構成される電機子コイル14を備え、空芯がステータを貫通するよう設けられている。ファンボスの正圧側の周方向間隙25から流入する空気は、モータ内部で、ヒートシンク部材19の突起20の周りを流れ、主として貫通穴よりエアギャップ12をへて外周側空間23へ達し、さらに、ファンボスの負圧側で開口するファンボス穴4よりファンボス外へ積極的に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のエンジン冷却などに使用されるファンモータは、エンジンからの輻射熱にさらされるエンジンルーム内に配置されることから、ファンモータ自体の冷却構造に配慮が払われている。たとえば、送風羽根の回転に伴いファンモータのケースの前後に設けたそれぞれの通気口において空気を吸引および空気を吐出することにより、ケース内部に空気を流通させてファンモータの内部の部材を効率よく冷却するものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、この従来技術では、一方の通気口より吸引された空気が、モータケース内において回転電機子とその周りの円筒マグネットステータとの間のエアギャップで空気流となって他の通気口より外部へ流出する。モータケース内のこのような空気流によりモータ各部の冷却を行っている。
【特許文献1】実公平7−47971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術では、モータケースの空気の流入、流出のための2つの通気口間のケース内における空気流通路が、エアギャップで絞れられているので、モータ内において空気流通路に偏りが生じ、この空気流が当たらない部位では冷却が行われない、すなわち、空気流によるモータ各部の冷却に偏りが生ずるという問題があった。また、エアギャップにおける通気抵抗は比較的大きく、これによりモータケース内の通気量が制限されるという問題があった。すなわち、必要部位の十分な冷却を行うことが困難な場合があった。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、モータ内において空気流れの偏りを抑制して、モータ各部を効率よく冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、電機子コイル(14)を備えるステータ(13)と、径方向に形成されるエアギャップ(12)を介してステータと対向するとともに、外部からの電気エネルギに応じて回転軸(5)周りに回転するロータ(9、10)と、ロータの回転軸に軸方向が一致するように固定されてロータと一体的に回転する円筒部材であって、円筒部材の内側にロータおよびステータを収納するファンボス(2)と、ファンボスの円筒外側面(2b)に一体的に設けられ、ロータの回転に応じて回転軸方向に空気流れ(F)を形成するファンブレード(3)と、を備えるファンモータであって、ステータには、ロータと対向してエアギャップを形成する第1の面(13a)とロータとは反対側の第2の面(13b)とを連通する貫通穴(16)が設けられているとともに、ファンボスには、ロータの外周部近傍にエアギャップとファンボスの外側とを連通する通気口(4)が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、ステータにロータと対向する第1の面とその反対側の第2の面とを連通する貫通穴が設けられているので、この貫通穴がモータ内での空気流れのバイパスとなり、モータ内を流れ空気流量を増大させるとともに、ステータ部など、貫通穴近傍を冷却することができる。
【0008】
ファンボスの通気口は、請求項2に記載のように、ファンブレードが形成する空気流れのファンブレードより風上側のファンボス部位に形成することにより、ファンボス外部におけるファンブレードによる大きな負圧によって、ファンボス内部から通気口を介してファンボス外部へ強い空気流れを発生させることができる。
【0009】
また、ステータの貫通穴の第2の面側の開口は、請求項3に記載のように、ファンブレードが形成する空気流れのファンブレードより風下側の領域に連通させることにより、ステータの貫通穴への空気の流入を容易にして、空気流量を増加させることができる。
【0010】
さらに、電機子コイルは、請求項4に記載のように、貫通穴周りに巻回されている空芯コイルとすることができる。
【0011】
また、請求項5に記載のように、ステータの第2の面(13b)側には、ヒートシンク部材(19)が設けられており、ヒートシンク部材と第2の面との間には面状の空気通路(21)が形成されているとともに、ヒートシンク部材より面状空気通路内をステータ側に突出するように複数の突起(20)が設けられ、面状空気通路は、ファンブレードの風下側の領域に連通するようにすれば、ヒートシンク部材に貫通穴を流れる空気を積極的に当てることができ、ヒートシンク部材を効率よく冷却することができる。
【0012】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1(a)、(b)は、本実施形態のファンモータ1におけるファンボス2およびファンブレード3の上面図および断面図である。図2は、ファンボス2内部の断面図であり、図3は、ファンブレード3を除くファンボス2の断面斜視図である。また、図4はステータ13の平面図である。
【0014】
本実施形態のファンボス2は円筒形状をなし、円筒内にはモータの構成部品を収納するとともに、円筒外側面2bには、ファンボス2の回転によって円筒軸方向の空気流れFを形成するファンブレード3が一体的に形成されている。本実施形態では、ファンブレード3は5枚翼としている。ファンブレード3の翼先端側は保持リング3aによって形状が保持されている。なお、図1におけるファンブレード3の断面は、翼幅中心線(図1中、一点鎖線で示す)に沿ったものとして示している。
【0015】
ファンブレード3の回転により、ファンブレード3の上流側は負圧状態となり、下流側は正圧状態となって、図中下方に空気流れFが形成される。ファンボス2の円筒外側面2bの負圧側部位には、ファンボス2の内外を連通する通気口としてのファンボス穴4が設けられている。
【0016】
このファンボス穴4は、軸方向においてファンボス2の底面2aよりエアギャップ12の位置までを開口範囲として矩形状に開口している。さらに、ファンボス2の外側面2bにおいて、ファンボス穴4をファンブレード3の周方向の各中間位置に5つ設けている。
【0017】
なお、ファンボス穴4の底面2aまでの開口により、ファンボス2の成型時、型抜きを容易にしている。
【0018】
本実施形態では、ファンボス2の内側に収納されているモータとして、円板状の永久磁石回転子(ロータ)が固定子(ステータ)側の電機子コイルと対向して回転する、いわゆるアキシャルギャップ・固定ヨーク形モータを採用している。
【0019】
ファンボス2の円筒底面部2aは、ロータディスク9にねじ等により固定されている。ロータディスク9の円板状部には直交方向にシャフト5が一体的に形成されている。シャフト5は軸受け6を介して円筒状のホルダ7に回転自在に支持されている。これにより、ファンボス2およびロータディスク9は一体的にホルダ7内を同一の回転軸であるシャフト5周りに回転可能となっている。
【0020】
ロータディスク9には、8極のマグネット板を円周方向に並べた円環状のロータマグネット10が、その中心をシャフト5の軸心に一致するよう固着されている。
【0021】
ステータ13は、ホルダ7に固着された円板状部材であり、円周方向に6つの電機子コイル14を備えている。ステータ13のエアギャップ側の面13aは、エアギャップ12を隔ててロータマグネット10と対向して磁気回路を形成している。
【0022】
各電機子コイル14は、台形状に巻回された空芯コイルであり、空芯部分を貫通穴16としている。すなわち、この貫通穴16は、ステータ13のエアギャップ12側の面である第1の面13aと、その反対側の面である第2の面13bとにそれぞれ開口して、第1および第2の面13a、13b間を貫通するものである。したがって、この貫通穴16内を空気が流通することができる。なお、この空芯部分は、ステータ13の中心寄り(回転軸寄り)の位置に設けることにより、後述する面状空気通路21の広い範囲に空気を流すことができ、ヒートシンク部材19をより効率的に冷却することができる。
【0023】
ステータ13の回転中心部には、ホルダ7の周囲に回転軸方向の連通路17が周方向に複数設けられている。この軸方向連通路17は、ステータ13のエアギャップ側の第1の面13aとその反対側に設けられている円環状空洞18とを連通している。なお、ステータ13の外周側とファンボス2の内側面2cとの間の円環状空隙15の径方向距離は、連通路17における通風抵抗よりも通風抵抗が大きくなるよう、その大きさが設定されている。
【0024】
ステータ13のロータマグネット10とは反対側の第2の面13bには、円板状のヒートシンク部材19が複数の突起20を介して接するようにホルダ7に固着して設けられている。すなわち、ヒートシンク部材19とステータ13との間には面状の空気通路21が設けられ、この面状空気通路21内をヒートシンク部材19からステータ13の第2の面13bに接触する複数の突起20を突出させている。
【0025】
したがって、面状空気通路21内を流通する空気が突起20と熱交換することにより、ヒートシンク部材19および突起20と接しているステータ13を空冷することができる。なお、ヒートシンク部材19の底部(図2紙面下方)には、ヒートシンク部材19により冷却可能に、モータの回路部22が納められている。
【0026】
ヒートシンク部材19の外周側とファンボス2の内側面2cとの間には円環状の周方向間隙25が設けられている。この周方向間隙25は、ファンモータ1の空気流れFの下流側、すなわち正圧側に開口しており、ファンモータ1のケースの正圧側通気口に相当する。なお、ヒートシンク部材19の回転中心部にも、ホルダ17の周囲に回転軸方向の連通路19aが複数設けられ、この連通路19aによってファンボス2の外部より円環状空洞18へ空気を導入している。
【0027】
次に、本実施形態において、ファンボス2の回転によってファンボス2内外に形成される空気流れについて説明する。
【0028】
ファンモータ1に外部より電気エネルギが与えられて、ステータ13とロータマグネット10との間に形成される電磁力によりロータ(ロータマグネット10、ロータディスク9)が回転することにより、ファンブレード3に空気流れFを発生させる。
【0029】
この空気流れFは、ファンボス2の円筒側面において回転軸方向に形成される。このとき、ファンブレード3の風上側は負圧状態(負圧側)となっており、さらに、ファンボス穴4においてはファンボス2の回転速度(周速)に応じた大きさの径方向の圧力差(外側で負圧状態)が生じている。これらの圧力差によって、ファンボス2内の外周側空間23よりファンボス穴4を介してファンボス2外へ空気が押し出され空気流れが生ずる。
【0030】
円環状空隙15の通風抵抗は比較的大きく、一方、エアギャップ12にはステータ13の貫通穴16が連通している。したがって、外周側空間23への空気流は、主としてエアギャップおよび貫通穴16より供給される。またエアギャップ12には、ステータ13の軸方向連通路17を介してさらに上流側の円環状空洞18、面状空気通路21および周方向間隙25より空気が流れ込む。
【0031】
特に、周方向間隙25は正圧側通気口として、空気流れFの風下側にあって正圧状態にあるファンモータ2の外より、空気が押し込まれる。
【0032】
以上のようにして、ファンボス2(すなわち、ファンブレード3)の回転により、ファンボス2の内外にわたって、空気流れが図2中矢印Aで示される方向に形成される。すなわち、ファンボス2内においては、空気流れに偏りがなく、ヒートシンク部材19の突起20回りに空気が流れてヒートシンク部材19を効率的に冷却することができ、したがって、ヒートシンク部材19での熱伝導により、モータの必要部位を冷却することができる。また、貫通穴16に空気を積極的に流すことができるので、ステータ13の電機子コイル14を効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は、本実施形態のファンモータにおけるファンボスおよびファンブレードの上面図であり、(b)は(a)の部分断面図である。
【図2】ファンボス内部の断面図である。
【図3】ファンボスの断面斜視図である。
【図4】ステータの平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1…ファンモータ、2…ファンボス、3…ファンブレード、4…ファンボス穴、
10…ロータマグネット、11a…回転中心側開口、11b…外周側開口、
12…エアギャップ、13…ステータ、17…軸方向連通口、
19…ヒートシンク部材、20…突起、21…面状空気通路、23…外周側空間、
24…回転中心側空間、25…周方向間隙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子コイル(14)を備えるステータ(13)と、
径方向に形成されるエアギャップ(12)を介して前記ステータと対向するとともに、外部からの電気エネルギに応じて回転軸(5)周りに回転するロータ(9、10)と、
前記ロータの回転軸に軸方向が一致するように固定されて前記ロータと一体的に回転する円筒部材であって、前記円筒部材の内側に前記ロータおよびステータを収納するファンボス(2)と、
前記ファンボスの円筒外側面(2b)に一体的に設けられ、前記ロータの回転に応じて前記回転軸方向に空気流れ(F)を形成するファンブレード(3)と、を備えるファンモータであって、
前記ステータには、前記ロータと対向して前記エアギャップを形成する第1の面(13a)と前記ロータとは反対側の第2の面(13b)とを連通する貫通穴(16)が設けられているとともに、
前記ファンボスには、前記ロータの外周部近傍に前記エアギャップと前記ファンボスの外側とを連通する通気口(4)が設けられていることを特徴とするファンモータ。
【請求項2】
前記ファンボスの通気口は、前記ファンブレードが形成する空気流れの前記ファンブレードより風上側の前記ファンボス部位に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のファンモータ。
【請求項3】
前記ステータの貫通穴の前記第2の面側の開口は、前記ファンブレードが形成する空気流れの前記ファンブレードより風下側の領域に連通していることを特徴とする請求項1または2に記載のファンモータ。
【請求項4】
前記電機子コイルは、前記貫通穴周りに巻回されている空芯コイルにより構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のファンモータ。
【請求項5】
前記ステータの前記第2の面(13b)側には、ヒートシンク部材(19)が設けられており、
前記ヒートシンク部材と前記第2の面との間には面状の空気通路(21)が形成されているとともに、前記ヒートシンク部材より前記面状空気通路内を前記ステータ側に突出するように複数の突起(20)が設けられ、
前記面状空気通路は、前記ファンブレードの風下側の領域に連通していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のファンモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−129599(P2006−129599A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313966(P2004−313966)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】