説明

フィルムコンデンサ及びその製造方法

【課題】両面に金属膜が形成された金属化フィルムを厚み方向に重ね合わせたフィルムコンデンサにおいて、対向する分割電極同士を位置ずれすることなく重ね合わせる。
【解決手段】検出ユニット(36)により第1の金属化フィルム(21)における第1の分割電極(21a)の分割位置を検出し、検出ユニット(36)で検出された分割位置に基づいて、除去ユニット(37)により第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)を分割して第2の分割電極(22a)を形成し、第1及び第2の分割電極(21a,22a)とがそれぞれ対向するように、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を重ね合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、片面に金属膜が蒸着された金属化フィルムを巻芯上に巻回してなるフィルムコンデンサが知られている。このようなフィルムコンデンサは、電子機器や電気機器等において、特に安定した電気特性を要する回路に多く用いられている。また、近年のフィルムコンデンサは、電解コンデンサと比較して低損失であり、信頼性にも優れているため、空調機やハイブリッド自動車等のインバータ回路の平滑コンデンサとしても利用されている。
【0003】
特許文献1,2には、金属化フィルムの金属膜を長さ方向に分割して複数の分割電極を形成したフィルムコンデンサが開示されている。このように、複数の分割電極を形成することで、フィルムコンデンサに自己保安機構を持たせることができる。
【0004】
ここで、フィルムコンデンサの自己保安機構とは、金属膜を分割してそれぞれの分割電極が許容する電流を制限しておき、分割電極のうち1つが短絡する等して電流が瞬間的に集中して流れた場合に、その熱エネルギーで分割電極が飛散して除去されるようにしたものであり、コンデンサ全体が短絡状態となることを回避できる。
【特許文献1】特開昭57−154822号公報
【特許文献2】特開平7−45466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、片面に金属膜を蒸着させた従来のフィルムコンデンサよりも高性能な、両面に金属膜が蒸着された2枚の金属化フィルムを厚み方向に重ね合わせてなるフィルムコンデンサに対して自己保安機構を持たせることは、以下の理由により非常に困難であった。
【0006】
すなわち、対向する2枚の金属化フィルムにそれぞれ予め形成されている分割電極同士を正確に重ね合わせるために、これらの金属化フィルムを重ね合わせ位置までそれぞれ搬送する際の搬送速度を正確に同期させなければならなかった。また、分割電極を形成した際に製品毎の寸法誤差によるバラツキが生じていた場合には、搬送速度をいかに正確に同期させたとしても、分割電極同士を正確に重ね合わせることができなかった。
【0007】
このように、対向する分割電極同士の重ね合わせ位置がずれた状態で重ね合わされてしまうと、一方の金属化フィルム側に形成された分割電極が、他方の金属化フィルムに形成された隣り合う分割電極に跨るように重ね合わされ、隣り合う分割電極同士が電気的に接続されてしまい、自己保安機構が成り立たなくなるおそれがあった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、両面に金属膜が形成された金属化フィルムを厚み方向に重ね合わせたフィルムコンデンサにおいて、対向する分割電極同士を位置ずれすることなく重ね合わせることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明では、互いに重ね合わされた金属化フィルムのうち一方の金属膜を予め分割しておき、この分割位置に対応するように、他方の金属化フィルムの金属膜を重ね合わせ直前に分割するようにした。
【0010】
具体的に、本発明は、フィルム体(20a)の両面に金属膜(20b)が形成された複数枚の金属化フィルム(21,22)が厚み方向に重ね合わされて巻芯(13)上に巻回されてなるフィルムコンデンサを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明は、互いに重ね合わされた第1及び第2の金属化フィルム(21,22)における前記フィルム体(20a)の間には、前記金属膜(20b)が該フィルム体(20a)の長さ方向に分割されてなる複数の分割電極(20c)が形成され、
前記分割電極(20c)は、前記第1の金属化フィルム(21)の金属膜(20b)を長さ方向に分割してなる第1の分割電極(21a)と、前記第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)を長さ方向に分割してなる第2の分割電極(22a)とをそれぞれ対向させて重ね合わせることで構成され、
前記第2の分割電極(22a)は、前記第2の金属化フィルム(22)の長さ方向に連続する前記金属膜(20b)を、前記第1の金属化フィルム(21)の長さ方向に予め分割された前記第1の分割電極(21a)の分割位置に対応するように、該第1及び第2の金属化フィルム(21,22)の重ね合わせ直前に分割することで形成されたものであることを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明では、第2の分割電極(22a)は、第2の金属化フィルム(22)の長さ方向に連続する金属膜(20b)を、第1の金属化フィルム(21)の長さ方向に予め分割された第1の分割電極(21a)の分割位置に対応するように、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)の重ね合わせ直前に分割することで形成される。
【0013】
このため、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)同士を重ね合わせる際の、第1及び第2の分割電極(21a,22a)の位置合わせを精度良く行うことができ、両面に金属膜が形成された複数枚の金属化フィルム(21,22)を厚み方向に重ね合わせてなるフィルムコンデンサ(11)に対しても容易に自己保安機構を持たせることができる。これにより、フィルムコンデンサ(11)の耐久性や信頼性を大きく向上させることができる。
【0014】
具体的に、従来のように、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)に予め第1及び第2の分割電極(21a,22a)を形成しておき、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を搬送しながら所定の重ね合わせ位置で第1及び第2の分割電極(21a,22a)を重ね合わせようとした場合には、搬送前に第1及び第2の分割電極(21a,22a)の位置合わせを適切に行っていたとしても、第1及び第2の分割電極(21a,22a)を形成した際の製品誤差や搬送速度の違いによる位置ずれ等に起因して、第1及び第2の分割電極(21a,22a)を同期させて精度良く重ね合わせることができないおそれがある。
【0015】
このように、第1及び第2の分割電極(21a,22a)が位置ずれした状態で重ね合わされると、隣り合う第1の分割電極(21a)間に跨るように第2の分割電極(22a)が重ね合わされてしまい、複数の分割電極(20c)が電気的に接続された状態となって、自己保安機構を持たせることができない。
【0016】
これに対し、本発明では、第2の分割電極(22a)を重ね合わせ直前に、第1の分割電極(21a)の分割位置に応じて第2の分割電極(22a)を形成するようにしたから、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)の搬送途中における位置ずれについては考慮する必要が無く、また、第2の分割電極(22a)を形成してからすぐに第1及び第2の分割電極(21a,22a)を重ね合わせるため、第1及び第2の分割電極(21a,22a)の位置合わせを精度良く行うことができる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、
前記分割電極(20c)の幅方向の一端側縁部は該フィルム体(20a)の一端側縁まで延びる一方、該分割電極(20c)の幅方向の他端側縁部は該フィルム体(20a)の他端側縁から離間していることを特徴とするものである。
【0018】
第2の発明では、分割電極(20c)の幅方向の一端側縁部はフィルム体(20a)の一端側縁まで延び、他端側縁部はフィルム体(20a)の他端側縁から離間している。このため、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)の他端側縁部に絶縁部分を設けて、第1及び第2の分割電極(21a,22a)を同極に接続する構造とすることができる。
【0019】
第3の発明は、フィルム体(20a)の両面に金属膜(20b)が形成された複数枚の金属化フィルム(21,22)が厚み方向に重ね合わされて巻芯(13)上に巻回されてなるフィルムコンデンサの製造方法を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0020】
すなわち、第3の発明は、長さ方向に予め分割された第1の分割電極(21a)を有する第1の金属化フィルム(21)と、長さ方向に連続する金属膜(20b)を有する第2の金属化フィルム(22)とを、所定の重ね合わせ位置まで搬送する搬送工程と、
前記第1の金属化フィルム(21)における前記第1の分割電極(21a)の分割位置を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出された前記第1の分割電極(21a)の分割位置に基づいて、前記第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)を長さ方向に分割して第2の分割電極(22a)を形成する分割工程と、
前記第1の分割電極(21a)と前記第2の分割電極(22a)とがそれぞれ対向するように、前記第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を前記重ね合わせ位置で重ね合わせる重ね合わせ工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0021】
第3の発明では、第1の金属化フィルム(21)における第1の分割電極(21a)の分割位置が電気的又は光学的に検出され、検出された分割位置に基づいて第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)が分割されて第2の分割電極(22a)が形成され、第1及び第2の分割電極(21a,22a)とがそれぞれ対向するように、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)が重ね合わされる。
【0022】
このため、第2の分割電極(22a)を形成してからすぐに第1及び第2の分割電極(21a,22a)を重ね合わせるため、第1及び第2の分割電極(21a,22a)の位置合わせを精度良く行うことができる。
【0023】
第4の発明は、第3の発明において、
前記分割工程では、前記第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)が前記フィルム体(20a)の幅方向に沿って溝状に除去されることを特徴とするものである。
【0024】
第4の発明では、分割工程において、第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)がフィルム体(20a)の幅方向に沿って溝状に除去される。このため、金属膜(20b)を確実に分割して、分割電極(20c)同士の絶縁性を十分に確保することができる。
【0025】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、
前記分割工程では、放電又はレーザーにより前記第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)が除去されることを特徴とするものである。
【0026】
第5の発明では、分割工程において、放電又はレーザーにより第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)が除去される。このため、放電やレーザーにより金属膜(20b)を精度良く除去するとともに、その除去面もきれいな仕上がりとすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)同士を重ね合わせる際の、第1及び第2の分割電極(21a,22a)の位置合わせを精度良く行うことができ、両面に金属膜(20b)が形成された複数枚の金属化フィルム(21,22)を厚み方向に重ね合わせてなるフィルムコンデンサ(11)に対しても容易に自己保安機構を持たせることができる。これにより、フィルムコンデンサ(11)の耐久性や信頼性を大きく向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
−全体構成−
本発明の実施形態に係るフィルムコンデンサ(11)は、図1に示すように、巻芯(13)に巻回されたコンデンサ素子(20)の両端部にメタリコン電極(14)が設けられたものであり、例えばインバータ回路とコンバータ回路との間の平滑コンデンサ等に用いられる。
【0030】
詳しくは、前記フィルムコンデンサ(11)は、コンデンサ素子(20)と、該コンデンサ素子(20)が巻回される巻芯(13)と、コンデンサ素子(20)の両端部に設けられた2つのメタリコン電極(14)と、それらのメタリコン電極(14)にそれぞれ電気的に接続された外部端子(16)と、コンデンサ素子(20)の外周面を覆うように配設される絶縁カバー(24)と、絶縁カバー(24)、コンデンサ素子(20)、巻芯(13)、メタリコン電極(14)及び外部端子(16)を封止するための封止樹脂(18)とを備えている。
【0031】
図2は2枚の金属化フィルムを重ね合わせる直前の状態を示す斜視図、図3は2枚の金属化フィルムを重ね合わせた状態を示す断面図である。図2及び図3に示すように、前記コンデンサ素子(20)は、例えばPVDF系の誘電体フィルムからなる帯状のフィルム体(20a)の両面にアルミニウム等の金属箔を蒸着させて金属膜(20b)を形成した第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を厚み方向に2枚重ね合わせてなるもので、巻芯(13)の外周に巻回されるように構成されている。
【0032】
なお、本実施形態では、フィルムコンデンサ(11)として、PVDF系の誘電体フィルムを用いるようにしているが、これに限らず、フィルムコンデンサ(11)として機能する材料であれば、どのようなフィルム材料であってもよい。
【0033】
互いに重ね合わされた第1及び第2の金属化フィルム(21,22)におけるフィルム体(20a)の間には、金属膜(20b)がフィルム体(20a)の長さ方向に分割されてなる複数の分割電極(20c)が形成されている。
【0034】
前記分割電極(20c)は、第1の金属化フィルム(21)の金属膜(20b)を長さ方向に分割してなる第1の分割電極(21a)と、第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)を長さ方向に分割してなる第2の分割電極(22a)とをそれぞれ対向させて重ね合わせることで構成されている。
【0035】
前記第1の分割電極(21a)は、第1の金属化フィルム(21)の長さ方向に予め分割されたものであり、第2の分割電極(22a)は、第2の金属化フィルム(22)の長さ方向に連続する金属膜(20b)を、第1の金属化フィルム(21)の長さ方向に予め分割された第1の分割電極(21a)の分割位置に対応するように、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)の重ね合わせ直前に分割することで形成されたものである。なお、この点については後述するフィルムコンデンサ(11)の製造方法において説明する。
【0036】
また、前記分割電極(20c)の幅方向の一端側縁部はフィルム体(20a)の一端側縁まで延びる一方、分割電極(20c)の幅方向の他端側縁部はフィルム体(20a)の他端側縁から離間している。このような構成とすれば、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)の他端側縁部に絶縁部分を設けて、第1及び第2の分割電極(21a,22a)を同極に接続する構造とすることができる。
【0037】
図1に示すように、前記巻芯(13)は、円筒状の樹脂部材で構成されている。なお、この円筒状の巻芯(13)の内部には、金属製の芯部を設けてもよい。この場合、芯部は、メタリコン電極(14)を介して外部端子(16)に接続されていて、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)で発生した熱を芯部からメタリコン電極(14)及び外部端子(16)を介して外部へ放出することができる。
【0038】
前記メタリコン電極(14)は、巻芯(13)に巻回されて略円柱状に形成されたコンデンサ素子(20)の軸方向両端部にそれぞれ設けられている。このメタリコン電極(14)は、それぞれ、コンデンサ素子(20)の軸方向端部に金属を溶射することによって形成されていて、コンデンサ素子(20)の軸方向端部においてはみ出している第1及び第2の金属化フィルム(21,22)とそれぞれ電気的に導通している。
【0039】
前記外部端子(16)は、その基端部が巻芯(13)に対応する位置で、メタリコン電極(14)と電気的に接続されている。これらの外部端子(16)は、メタリコン電極(14)の径方向外方に向かって延びて、その先端部が封止樹脂(18)から外方に突出して基板(26)に接続されている。
【0040】
前記絶縁カバー(24)は、樹脂材料からなるシート状の部材を、円筒状のコンデンサ素子(20)の外周面に沿うように丸めて円筒状にしたものである。この絶縁カバー(24)は、コンデンサ素子(20)全体を覆うように設けられている。なお、コンデンサ素子(20)の外周側を覆うように絶縁カバー(24)を配設しているが、この限りではなく、絶縁カバー(24)がなく、該コンデンサ素子(20)を封止樹脂(18)で直接、封止するような構成であってもよい。
【0041】
前記封止樹脂(18)は、絶縁カバー(24)の外周側、メタリコン電極(14)及び外部端子(16)の基端部を封止するように設けられている。すなわち、この封止樹脂(18)は、外部端子(16)の先端側を除いて、フィルムコンデンサ(11)の構成部品全体を覆うように設けられている。
【0042】
−フィルムコンデンサの製造装置−
図4は、フィルムコンデンサの製造装置の構成を示す概略図である。図4に示すように、この製造装置(30)は、第1の金属化フィルム(21)がロール状に巻き付けられた第1の巻回ローラ(31)と、第2の金属化フィルム(22)が巻き付けられた第2の巻回ローラ(35)とから、それぞれ第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を引き出して所定の重ね合わせ位置まで搬送し、重ね合わせ位置に配設された巻芯(13)の外周に巻き取るものである。
【0043】
前記第1の金属化フィルム(21)の一方の面(図4では上側の面)には、金属膜(20b)が長さ方向に分割されてなる複数の第1の分割電極(21a)が形成されている。他方の面には、長さ方向に連続する金属膜(20b)が形成されている。そして、第1の巻回ローラ(31)には、第1の金属化フィルム(21)の第1の分割電極(21a)がロールの外側を向くように巻き付けられている。
【0044】
前記第1の巻回ローラ(31)から巻芯(13)までの間の第1の搬送経路には、複数のガイドローラ(32)が配設され、ガイドローラ(32)のローラ面に第1の金属化フィルム(21)が巻き掛けられている。
【0045】
前記第1の搬送経路における巻芯(13)寄りの位置には、第1の金属化フィルム(21)に形成された第1の分割電極(21a)の分割位置を検出する検出ユニット(36)が配設されている。この検出ユニット(36)は、電気的又は光学的に分割位置を検出するものであり、この検出結果は後述する除去ユニット(37)に送られる。
【0046】
前記第2の金属化フィルム(22)の両面には、長さ方向に連続する金属膜(20b)がそれぞれ形成されて、第2の巻回ローラ(35)に巻き付けられている。第2の巻回ローラ(35)から巻芯(13)までの間の第2の搬送経路には、複数のガイドローラ(32)が配設され、ガイドローラ(32)のローラ面に第2の金属化フィルム(22)が巻き掛けられている。
【0047】
前記第2の搬送経路における巻芯(13)寄りの位置には、第2の金属化フィルム(22)表面の金属膜(20b)との間で放電を行うことで金属膜(20b)を除去する除去ユニット(37)が配設されている。この除去ユニット(37)は、検出ユニット(36)の検出結果に基づいて、第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)を幅方向に沿って溝状に除去するものであり、金属膜(20b)が除去されることで、第1の金属化フィルム(21)の第1の分割電極(21a)に対向するように長さ方向に分割された第2の分割電極(22a)が形成されるようになっている。
【0048】
前記検出ユニット(36)及び除去ユニット(37)よりも搬送方向の下流側には、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を挟み込むための上下一対の圧着ローラ(33,33)が配設されている。この圧着ローラ(33)は、それぞれ上下方向に移動自在に構成され、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を圧着したり又は圧着を解除することができるようになっている。
【0049】
前記巻芯(13)は、図示しない駆動モータに接続され、駆動モータの回転駆動により第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を重ね合わせた状態で巻芯(13)の外周に巻き取ることができるようになっている。
【0050】
前記巻芯(13)の下方には、カッターユニット(38)が配設されている。このカッターユニット(38)は、カッター刃の上下移動により巻芯(13)に巻き取られた第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を切断するものである。
【0051】
また、前記巻芯(13)の左方には、ヒートシールユニット(39)が配設されている。このヒートシールユニット(39)は、先端部が左右方向に移動自在とされ、先端部を巻芯(13)に巻き取られた第1及び第2の金属化フィルム(21,22)に押し当てることでヒートシール処理を行うものである。
【0052】
なお、本実施形態では、金属膜(20b)と除去ユニット(37)との間で放電を行うことで、金属膜(20b)を除去する構成について説明したが、この形態に限定するものではなく、金属膜(20b)に対してレーザーを照射することで、金属膜(20b)を除去して第2の分割電極(22a)を形成するようにしてもよい。
【0053】
−フィルムコンデンサの製造方法−
次に、図4の製造装置(30)を用いたフィルムコンデンサ(11)の製造方法について説明する。図5はフィルムコンデンサの製造工程を示すフローチャート図である。図5に示すように、まず、ステップS101では、第1の分割電極(21a)が形成された第1の金属化フィルム(21)がロール状に巻き付けられた第1の巻回ローラ(31)を装置にセットする一方、長さ方向に連続する金属膜(20b)が両面に形成された第2の金属化フィルム(22)がロール状に巻き付けられた第2の巻回ローラ(35)を装置にセットし、続くステップS102に進む。
【0054】
ステップS102では、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)をそれぞれ引き出し、ガイドローラ(32)、圧着ローラ(33)、及び巻芯(13)に巻き掛けるとともに、巻芯(13)を回転駆動して第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を重ね合わせながら巻き取り、続くステップS103に進む。
【0055】
ステップS103では、検出ユニット(36)により第1の金属化フィルム(21)に形成された第1の分割電極(21a)の分割位置を検出し、続くステップS104に進む。
【0056】
ステップS104では、検出ユニット(36)の検出結果に基づいて、第1の分割電極(21a)の分割位置に対応するように、第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)と除去ユニット(37)との間で放電を行うことで第2の分割電極(22a)を形成し、続くステップS105に進む。
【0057】
ステップS105では、巻芯(13)の外周に所定の巻き数だけ第1及び第2の金属化フィルム(21,22)が巻き取られたか否かを判定する。ステップS105での判定が「YES」の場合には、ステップS106に分岐して、ステップS106においてカッターユニット(38)で巻芯(13)に巻き取られた第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を切断し、ヒートシールユニット(39)でヒートシール処理を行い、処理を終了する。ステップS105での判定が「NO」の場合には、ステップS102に分岐して処理を繰り返す。
【0058】
以上のように、本発明の実施形態に係るフィルムコンデンサ(11)及びその製造方法によれば、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)同士を重ね合わせる際の、第1及び第2の分割電極(21a,22a)の位置合わせを精度良く行うことができ、両面に金属膜(20b)が形成された複数枚の金属化フィルム(21,22)を厚み方向に重ね合わせてなるフィルムコンデンサ(11)に対しても容易に自己保安機構を持たせることができる。これにより、フィルムコンデンサ(11)の耐久性や信頼性を大きく向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明は、両面に金属膜が形成された金属化フィルムを厚み方向に重ね合わせたフィルムコンデンサにおいて、対向する分割電極同士を位置ずれすることなく重ね合わせることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係るフィルムコンデンサの概略構成を示す縦断面図である。
【図2】2枚の金属化フィルムを重ね合わせる直前の状態を示す斜視図である。
【図3】2枚の金属化フィルムを重ね合わせた状態を示す断面図である。
【図4】フィルムコンデンサの製造装置の構成を示す概略図である。
【図5】フィルムコンデンサの製造工程を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0061】
11 フィルムコンデンサ
13 巻芯
20a フィルム体
20b 金属膜
20c 分割電極
21 第1の金属化フィルム
21a 第1の分割電極
22 第2の金属化フィルム
22a 第2の分割電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム体(20a)の両面に金属膜(20b)が形成された複数枚の金属化フィルム(21,22)が厚み方向に重ね合わされて巻芯(13)上に巻回されてなるフィルムコンデンサであって、
互いに重ね合わされた第1及び第2の金属化フィルム(21,22)における前記フィルム体(20a)の間には、前記金属膜(20b)が該フィルム体(20a)の長さ方向に分割されてなる複数の分割電極(20c)が形成され、
前記分割電極(20c)は、前記第1の金属化フィルム(21)の金属膜(20b)を長さ方向に分割してなる第1の分割電極(21a)と、前記第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)を長さ方向に分割してなる第2の分割電極(22a)とをそれぞれ対向させて重ね合わせることで構成され、
前記第2の分割電極(22a)は、前記第2の金属化フィルム(22)の長さ方向に連続する前記金属膜(20b)を、前記第1の金属化フィルム(21)の長さ方向に予め分割された前記第1の分割電極(21a)の分割位置に対応するように、該第1及び第2の金属化フィルム(21,22)の重ね合わせ直前に分割することで形成されたものであることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項2】
請求項1において、
前記分割電極(20c)の幅方向の一端側縁部は該フィルム体(20a)の一端側縁まで延びる一方、該分割電極(20c)の幅方向の他端側縁部は該フィルム体(20a)の他端側縁から離間していることを特徴とするフィルムコンデンサ。
【請求項3】
フィルム体(20a)の両面に金属膜(20b)が形成された複数枚の金属化フィルム(21,22)が厚み方向に重ね合わされて巻芯(13)上に巻回されてなるフィルムコンデンサの製造方法であって、
長さ方向に予め分割された第1の分割電極(21a)を有する第1の金属化フィルム(21)と、長さ方向に連続する金属膜(20b)を有する第2の金属化フィルム(22)とを、所定の重ね合わせ位置まで搬送する搬送工程と、
前記第1の金属化フィルム(21)における前記第1の分割電極(21a)の分割位置を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出された前記第1の分割電極(21a)の分割位置に基づいて、前記第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)を長さ方向に分割して第2の分割電極(22a)を形成する分割工程と、
前記第1の分割電極(21a)と前記第2の分割電極(22a)とがそれぞれ対向するように、前記第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を前記重ね合わせ位置で重ね合わせる重ね合わせ工程とを備えたことを特徴とするフィルムコンデンサの製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記分割工程では、前記第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)が前記フィルム体(20a)の幅方向に沿って溝状に除去されることを特徴とするフィルムコンデンサの製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記分割工程では、放電又はレーザーにより前記第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)が除去されることを特徴とするフィルムコンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−10257(P2010−10257A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165593(P2008−165593)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】