説明

フィルムミラー、フィルムミラーの製造方法及び太陽光集光用ミラー

【課題】ガスバリア性を付与して耐久性を向上させることができ、また、フィルム基材の熱変形や正反射率の低下を防げ、フィルムの寸法安定性や表面平滑性を維持することのできるフィルムミラー、フィルムミラーの製造方法及び太陽光集光用ミラーを提供する。
【解決手段】フィルムミラー100は、a)フィルム基材4、b)金属からなる反射層3、c)金属からなる反射層3よりも光源側には酸化ケイ素層1、の少なくとも上記a)〜c)を構成中に含み、酸化ケイ素層1またはアルキル含有酸化ケイ素層2、酸化ケイ素を含むポリマー層は、光照射によって硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムミラー、フィルムミラーの製造方法及び太陽光集光用ミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石炭エネルギー、石油、天然ガス等の化石燃料エネルギーに代わる代替エネルギーとしては現在、バイオマスエネルギー、核エネルギー、並びに風力エネルギー及び太陽エネルギー等の自然エネルギーが検討されているが、化石燃料の代替エネルギーとして最も安定しており、且つ量の多い自然エネルギーは、太陽エネルギーであると考えられる。
しかしながら、太陽エネルギーは非常に有力な代替エネルギーであるものの、これを活用する観点からは、(1)太陽エネルギーのエネルギー密度が低いこと、並びに(2)太陽エネルギーの貯蔵及び移送が困難であることが、問題となると考えられる。
これに対して、太陽エネルギーのエネルギー密度が低いという問題は、巨大な反射装置で太陽エネルギーを集めることによって解決することが提案されている。
反射装置は、太陽光による紫外線や熱、風雨、砂嵐などに晒されるため、従来、ガラス製ミラーが用いられてきた。ガラス製ミラーは環境に対する耐久性が高い反面、輸送時に破損したり、重いミラーを設置する架台の強度を持たせるために、プラントの建設費がかさむといった問題があった。
【0003】
そこで、上記問題を解決するために、ガラス製ミラーを樹脂製反射シートに置き換えることが考えられてきたが(例えば特許文献1参照)、アクリル樹脂は吸水性が高く屋外環境では密着性を維持することが難しく2年以上の長期間使用には接着剤の部分剥離といった問題が出てくる。また、反射層に銀などの金属を用いると、樹脂層を介して酸素や水蒸気、硫化水素などが透過し、銀を腐食してしまうといった問題もあり、樹脂製ミラーの適用は困難であった。この問題に対して構成材料を樹脂のみではなく、無機物、例えばセラミック前駆体を液体中に分散させた状態で塗布して酸化ケイ素膜の薄膜をつくる技術が開発されている(例えば特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−520174号公報
【特許文献2】特許第3311172号
【特許文献3】特開2008−129153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に述べられているように、ポリシラザンを硬化させて水蒸気バリア膜とすることができるが、このとき加熱のみによる硬化でバリア性を得ようとした場合には、100℃以上の温度が求められる。そのため、フィルムの熱変形と硬化膜の特性はトレードオフと言える。太陽熱発電におけるフィルムミラーの役割としては、蓄熱媒体に反射光を効率よく集光する必要がある点が特徴であり、フィルムの熱変形は正反射効率を低下させる要因となる。硬化方法を加熱法に限定した場合は、寸法安定性のある製品を収率よく提供することが困難であった。
さらに、特許文献2には水蒸気バリア膜とした酸化ケイ素の実施例記載があるが、屋外用途の場合は、少なくとも0.1g/m2/day以下の水蒸気バリア性が必要となることが検討の結果分かってきた。少なくとも0.1g/m2/day以下の水蒸気バリア性を達成するには熱のみの硬化では不可能であり改善が必要である。
さらに、特許文献2には最表面にポリマー層が配置されており、屋外にて太陽光を反射する用途に使おうとした場合には、光が金属からなる反射層に到達するまでにポリマー層は紫外線にさらされる構成になっているが、300nmの波長のエネルギーは95.1kcal、200nmの波長のエネルギーは142.7kcalであり、ポリマーの結合エネルギーを超えることが分かっている。例えば、CH3-CH3 88kcal/mol、CH3O-CH3 80kcal/mol、CH3-CH2C6H5 72kcal/mol(書籍「高分子の光安定化技術」シーエムシー出版)。よって、特許文献2のようにポリマー層を最表層に配置する場合には、銀反射層の劣化よりも、ポリマー層の着色のほうが反射効率低下に大きく寄与することが分かった。
【0006】
一方、特許文献3には、銀反射層の保護膜として酸化アルミニウムなどの金属酸化物が用いられており、酸化ケイ素膜は有機ポリシラザンを加熱硬化させて得ている。この場合、酸化アルミニウムの水蒸気バリア性は初期は高いが、酸化アルミニウム膜に微細なクラックが入るとそこから水蒸気が浸透し銀反射膜を腐食させる。酸化ケイ素膜に水蒸気バリア性を持たせることができれば銀反射層の腐食防止に有利だが、特許文献3の製法では水蒸気バリア性は得られない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ガスバリア性を付与して耐久性を向上させることができ、また、フィルム基材の熱変形や正反射率の低下を防げ、フィルムの寸法安定性や表面平滑性を維持することのできるフィルムミラー、フィルムミラーの製造方法及び太陽光集光用ミラーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、a)フィルム基材、
b)金属からなる反射層、
c)前記金属からなる反射層よりも光源側には酸化ケイ素層、の少なくとも上記a)〜c)を構成中に含み、
前記酸化ケイ素層は、光照射によって硬化させたことを特徴とする太陽光を反射する機能を持つフィルムミラーが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属からなる反射層よりも光源側に酸化ケイ素層というバリア層を設けることによって、ガスバリア性を付与して耐久性を向上させることができる。
また、フィルムミラーを作成する工程で、光照射によって酸化ケイ素層及びアルキル含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層は、光照射によって硬化させるので、過剰な熱をかけないことから、フィルム基材の熱変形を防止し、正反射率の低下を防げ、フィルムの寸法安定性や表面平滑性を維持することができる。アルキル含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層が酸化ケイ素層とほぼ同じ工程で作成されるが、組成中に有機分を含んでいるために酸化ケイ素層の応力緩和層として効果がある。
さらに、フィルム基材やそのほか光源側に配置されるポリマーフィルムに紫外線吸収剤を添加することで、強い紫外線からフィルム基材やポリマーフィルムを保護でき、着色の防止及び反射効率を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】フィルムミラーの一例(実施例1)を示す断面図である。
【図2】フィルムミラーの一例(実施例2)を示す断面図である。
【図3】フィルムミラーの一例(実施例3)を示す断面図である。
【図4】フィルムミラーの一例(実施例4)を示す断面図である。
【図5】フィルムミラーの一例(実施例5)を示す断面図である。
【図6】フィルムミラーの一例(実施例6)を示す断面図である。
【図7】フィルムミラーの一例(実施例7)を示す断面図である。
【図8】フィルムミラーの一例(実施例8)を示す断面図である。
【図9】フィルムミラーの一例(実施例9)を示す断面図である。
【図10】フィルムミラーの一例(実施例10)を示す断面図である。
【図11】フィルムミラーの一例(実施例11)を示す断面図である。
【図12】フィルムミラーの一例(実施例12)を示す断面図である。
【図13】フィルムミラーの一例(比較例1)を示す断面図である。
【図14】フィルムミラーの一例(比較例2)を示す断面図である。
【図15】フィルムミラーの一例(比較例3)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
本発明に係るフィルムミラーは、a)フィルム基材、b)金属からなる反射層、c)金属からなる反射層よりも光源側に設けられた酸化ケイ素層の少なくとも上記a)〜c)を構成中に含み、酸化ケイ素層は、光照射によって硬化させたものである。c)の金属からなる反射層よりも光源側に設けられた酸化ケイ素層と接してアルキル含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層を積層させることができる。アルキル含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層は酸化ケイ素層とほぼ同じ工程で光照射によって作成される。
図1は、本発明に係る太陽光を反射する機能を持つフィルムミラーの一例を示す断面図である。
図1に示すように、フィルムミラー100は、光源側から順番に、酸化ケイ素層1、アクリル樹脂含有酸化ケイ素層2、金属からなる反射層(Ag層)3、フィルム基材4、粘着層5が積層されてなる。
【0011】
(フィルム基材4)
フィルム基材の材料としては、フレキシブル性や軽量化の点で、例えば、ポリエステル
、ポリエチレンナフタレート、アクリル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、セルロー
ス、ポリアミドのいずれかを含むことが好ましい。フィルム基材の形状は、平面、拡散面
、凹面、凸面、台形等、各種のフィルムミラーの基材として求められる形状であればよい
。フィルム基材の厚さは、平面形状である場合、20〜500μmが好ましい。フィルム
基材としては、軽量化できる点から、プラスチックのフィルムが特に好ましい。フィルム
基材は、フィルムである場合、下地膜、銀膜等との密着性を向上させるために、プラズマ
処理等が施されていてもよい。
また、フィルム基材には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、
シアノアクリレート系、ポリマー型の紫外線吸収剤のうちいずれかを含むことが好ましい

【0012】
(金属からなる反射層3)
金属からなる反射層としては、例えば、銀または銀合金、その他、金、銅、アルミニウ
ム、これらの合金も用いることができる。特に、銀を使用することが好ましい。このよう
な反射層は、光を反射させる反射膜としての役割を果たす。反射層を銀または銀合金から
なる膜とすることにより、フィルムミラーの可視光領域での反射率を高め、入射角による
反射率の依存性を低減できる。可視光領域とは、400〜700nmの波長領域を意味す
る。入射角とは、膜面に対して垂直な線に対する角度を意味する。
【0013】
銀合金としては、反射層の耐久性が向上する点から、銀と、金、パラジウム、スズ、ガ
リウム、インジウム、銅、チタンおよびビスマスからなる群から選ばれる1種以上の他の
金属とからなる合金が好ましい。他の金属としては、高温耐湿性、反射率の点から、金が
特に好ましい。
反射層が銀合金からなる膜である場合、銀は、反射層における銀と他の金属との合計(
100原子%)中、90〜99.8原子%が好ましい。また、他の金属は、耐久性の点か
ら0.2〜10原子%が好ましい。
また、反射層の膜厚は、60〜300nmが好ましく、80〜200nmが特に好ましい。反射層の膜厚が60nm未満では、膜厚が薄く、光を透過してしまうため、フィルムミラーの可視光領域での反射率が低下するおそれがある。反射層の膜厚が300nmを超えると、反射層の表面に凹凸が発生しやすくなり、これにより光の散乱が生じてしまい、可視光領域での反射率が低下するおそれがある。
【0014】
金属からなる反射層は、湿式めっきや、真空蒸着等の乾式めっきで形成することが好ましい。
【0015】
(酸化ケイ素層1及びアルキル基含有酸化ケイ素層2、酸化ケイ素を含むポリマー層)
酸化ケイ素層及びアルキル基含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層は、下
記式(1)の少なくとも一種のパーヒドロポリシラザンを含む溶液を塗布液として使用し
、光照射で硬化させることによって形成される。
-(SiHNH)- ・・・式(1)
このようにポリシラザンが溶媒中に分散した塗布液を塗布して光照射で硬化することによって、短時間で緻密な酸化ケイ素膜等とすることができる。
【0016】
さらに、別の好ましい態様の一つとしては、下記式(2)の少なくとも一種のポリシラ
ザンを含む溶液を使用する。
-(SiR'R''-NR''')n-(SiR*R**-NR***)p - ・・・式(2)
式中、R'、R''、R'''、R*、R**及びR***は、互いに独立して、水素、あるいは場合によっては置換されたアルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基を表し、この際、n及びpは整数であり、そしてnは、該ポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められる。
【0017】
特に好ましいものは、
− R'、R'''及びR***が水素を表し、そしてR''、R*及びR**がメチルを表す化合物;
−R'、R'''及びR***が水素を表し、そしてR''、R*がメチルを表し、そしてR**がビニルを表す化合物;
− R'、R'''、R*及びR***が水素を表し、そしてR''及びR**がメチルを表す化合物、である。
【0018】
また、下記式(3)の少なくとも一種のポリシラザンを含む溶液も同様に好ましい。
-(SiR'R''-NR''')n-(SiR*R**-NR***)p -(SiR1, R2-NR3)q- ・・・式(3)
上記式中、R'、R''、R'''、R*、R**、R***、R1、R2及びR3は、互いに独立して、水素、あるいは場合によっては置換されたアルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基を表し、この際、n、p及びqは整数であり、そしてnは、該ポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められる。
特に好ましいものは、R'、R'''及びR***が水素を表し、そしてR''、R*、R**及びR2がメチルを表し、R3が(トリエトキシシリル)プロピルを表し、そしてR1がアルキルまたは水素を表す化合物である。
【0019】
溶剤中のポリシラザンの割合は、一般的にはポリシラザン1〜80重量%、好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。
溶剤としては、特に、水及び反応性基(例えばヒドロキシル基またはアミン基)を含まず、ポリシラザンに対して不活性の有機系で好ましくは非プロトン性の溶剤が好適である。これは、例えば、脂肪族または芳香族炭化水素、ハロゲン炭化水素、エステル、例えば酢酸エチルまたは酢酸ブチル、ケトン、例えばアセトンまたはメチルエチルケトン、エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはジブチルエーテル、並びにモノ−及びポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(ジグライム類)またはこれらの溶剤からなる混合物である。
【0020】
上記ポリシラザン溶液の追加の成分としては、塗料の製造に慣用されているもののような更に別のバインダーである。これは、例えば、セルロースエーテル及びセルロースエステル、例えばエチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートまたはセルロースアセトブチレート、天然樹脂、例えばゴムもしくはロジン樹脂、または合成樹脂、例えば重合樹脂もしくは縮合樹脂、例えばアミノプラスト、特に尿素樹脂及びメラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステルもしくは変性ポリエステル、エポキシド、ポリイソシアネートもしくはブロック化ポリイソシアネート、またはポリシロキサンである。
ポリシラザン調合物の更に別の成分としては、例えば、調合物の粘度、下地の濡れ、成膜性、潤滑作用または排気性に影響を与える添加剤、あるいは無機ナノ粒子、例えばSiO2、TiO2、ZnO、ZrO2またはAl2O3であることができる。このような方法を用いることによって、亀裂及び孔が無いためにガスに対する高いバリア作用に優れる緻密なガラス用の層を製造することができる。
【0021】
酸化ケイ素層またはアルキル基含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層は、ポリシラザン溶液(酸化ケイ素前駆体を含む液)を塗布した後、150nm〜250nmの波長の光を照射させて形成することが好ましい。好適な放射線源は、約172nmに最大放射を有するエキシマラジエータ、約185nmに輝線を有する低圧水銀蒸気ランプ、並びに230nm以下の波長成分を有する中圧及び高圧水銀蒸気ランプ、及び約222nmに最大放射を有するエキシマランプである。
【0022】
180nm以下の波長の放射線成分を有する放射線源、例えば約172nmに最大放射を有するXe2*エキシマラジエータを使用すると、酸素及び/または水蒸気の存在下において、上記の波長範囲におけるこれらのガスの高い吸光係数の故に光分解によってオゾン並びに酸素ラジカル及びヒドロキシルラジカルが非常に効率よく生じ、これらがポリシラザン層の酸化を促進する。しかし、両機序、すなわちSi−N結合の解裂と、オゾン、酸素ラジカル及びヒドロキシルラジカルの作用は、ポリシラザン層の表面上にもVUV放射線が到達して初めて起こり得る。
【0023】
また、酸化ケイ素層またはアルキル基含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層
は、ポリシラザン溶液(酸化ケイ素前駆体を含む液)を塗布した後、1μm〜3μmの波
長の光を照射させて形成してもよい。具体的には、赤外線パルス光で照射し硬化させる。
この場合、反射層である銀面によって熱線は反射されるので基材であるフィルムにはダメ
ージなく効率よく硬化することができる。
【0024】
本発明において、VUV放射線及びUV放射線での照射は、同時にまたは相前後してあ
るいは交互に、200nm以下のVUV放射線、特に180nm以下のVUV放射線、ま
たは180〜200nmの波長成分を含むVUV放射線を用いて、及び230〜300n
mの波長成分を含むUV放射線、特に240〜280nmの範囲のUV放射線を用いて行
われる。この場合、200nm以下の波長成分を含む放射線によって生ずるオゾンが23
0〜300nmの波長成分を含む放射線により分解されて酸素ラジカル(活性酸素)を生
成することによって相乗効果が生じ得る。
【化1】

【0025】
層の表面上でまたは層自体中で上記のプロセスが進行すると、層の転化プロセスが加速
され得る。このような組み合わせのための放射線源としては、約172nmの波長成分を
含むXe2*エキシマラジエータ及び約254nmもしくは230〜280nmの範囲の波
長成分を含む水銀低圧もしくは水銀中圧ランプが好適である。
本発明においては、SiOx格子の形のガラス様の層の形成は、層の温度を同時に高め
ることによって加速され、そして層の品質は、それのバリア性に関して向上される。
【0026】
熱の入力は、使用されたUVランプによってまたは赤外線ラジエータを用いて被膜及び
基材を介して行われるか、あるいはヒートレジスタを用いて気相空間を介して行うことが
できる。温度の上限は、使用した基材の耐熱性によって決定される。PETフィルムの場
合には約150℃である。
【0027】
また、本発明の好ましい態様の一つでは、酸化転化プロセスの間に、基材は、赤外線に
よって50〜150℃の温度(被覆するべき基材の耐熱性に依存する)に加熱され、そし
てこれと同時に放射線に曝される。更に別の好ましい態様の一つでは、転化プロセスの間
の照射室中のガス温度は50〜150℃の温度に高められる。そうすることで、被膜が基
材上で同時に加熱されて、ポリシラザン層の転化が加速される。ただし50〜150℃の
温度範囲はフィルム基材の軟化温度を超えない範囲で選択される。
【0028】
ガスに対する層のバリア作用は、透過実験によって、及びSi−H結合及びSi−NH−Si結合の残留含有量並びに生成したSi−OH結合及びSi−O−Si結合に関してはATR−IR測定によって測定することができる。層表面に対して垂直方向の窒素及びSiOx濃度勾配は、SIMSによって測定するのが最も簡単である。
【0029】
本発明の方法は、フィルム基材上でポリシラザン層を照射することによって塗布、乾燥及び酸化転化を一つの作業工程で行うこと、すなわち例えばフィルムのコーティングにおいてこれを“ロール・ツゥ・ロール(Roll to Roll)”方式で行うことを可能にする。このようにして得られる酸化ケイ素層またはアルキル基含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層は、酸素、二酸化炭素、空気などのガスまたは水蒸気に対する高いバリア作用に優れる。
【0030】
また、酸化ケイ素層またはアルキル基含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層は、40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が10^-2g/m^2 ・24h 以下であることが好ましい。
さらに、酸化ケイ素層またはアルキル基含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層は、膜厚がそれぞれ1μm以下であり、それぞれの光線透過率の平均値は90%以上であることが好ましい。これによって、光損失がなく、太陽光を効率よく反射することができる。
【0031】
酸化ケイ素層またはアルキル基含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層は、こ
れらのうち少なくとも異なる組成の2種を積層させることが好ましい。または、同組成の
ものを2層以上積層させてもよい。
【0032】
(粘着層5)
粘着層としては、特に制限されず、例えばドライラミネート剤、ウエットラミネート
剤、ヒートシール剤、ホットメルト剤などのいずれもが用いられる。例えばポリエステル
系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ニトリルゴムなどが
用いられる。ラミネート方法は特に制限されず、例えばロール式で連続的に行うのが経済
性及び生産性の点から好ましい。粘着層の厚さは通常1〜50μm程度の範囲から選ば
れる。厚さが1μm未満では充分な粘着効果が得られず、一方50μmを超えると粘着剤
層が厚すぎて乾燥速度が遅くなり、非能率的である。しかも本来の粘着力が得られず、溶
剤が残留するなどの弊害が生じるので好ましくない。
【0033】
本発明に係るフィルムミラー全体の厚さは75〜250μmが好ましく、更に好ましくは90〜230μm、更に好ましくは100〜220μmである。厚さが75μm以下では、フィルムミラーを金属基材に貼り付けた時に、ミラーがたわんでしまって、十分な正反射率を得ることができず、また250μmより厚いと取り扱い性が悪くなるため、好ましくない。
【0034】
なお、本発明のフィルムミラーは、図1に示す構成に限らず、例えば図2〜図15に示
す構成としても構わない。
図2では、フィルム基材4とアクリル樹脂含有酸化ケイ素層2との間に紫外線吸収剤入
りのアクリル樹脂層6及び接着層7が介在している。紫外線吸収剤を添加することで、フ
ィルムミラーの紫外線に対する劣化防止及び平滑な光学面を長期間提供することができる

【0035】
(紫外線吸収剤入りのアクリル樹脂6)
紫外線球取材入りのアクリル樹脂層に使用される紫外線吸収剤としては、波長370n
m以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上
の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、
ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、
シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げるこ
とができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物、ト
リアジン系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号、同8−337574
号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号、特開2003−113317号
公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
【0036】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(1−メチル−1−フェニルエチル)−5′−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0037】
また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN
)900、チヌビン(TINUVIN)928、チヌビン(TINUVIN)360(い
ずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、LA31(ADEKA社製)、RUVA−100(大塚化学製)が挙げられる。
【0038】
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,
2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5
−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニ
ルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
(接着層7)
接着層としては、樹脂からなり、フィルム基材と上述の紫外線吸収剤入りのアクリル樹
脂層とを密着するものである。従って、接着層はフィルム基材と紫外線吸収剤入りのアク
リル樹脂層とを密着する密着性、アクリル樹脂層を真空蒸着法等で形成する時の熱にも耐
え得る耐熱性、及びアクリル樹脂層が本来有する高い反射性能を引き出すための平滑性が
必要である。
【0040】
接着層に使用する樹脂は、上記の密着性、耐熱性、及び平滑性の条件を満足するものであれば特に制限はなく、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系樹脂等の単独またはこれらの混合樹脂が使用でき、耐候性の点からポリエステル系樹脂とメラミン系樹脂の混合樹脂が好ましく、さらにイソシアネート等の硬化剤を混合した熱硬化型樹脂とすればより好ましい。
【0041】
接着層の厚さは、0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。厚さが、0.01μmより薄いと、密着性が悪くなり接着層を形成した効果がなく、またフィルム基材表面の凹凸を覆い隠すことができ難くなり、平滑性が悪くなるので好ましくない。厚さが、3μmより厚くても、密着性の向上は望めず、かえって塗りムラの発生により平滑性が悪くなったり、接着層の硬化が不充分となる場合があるので好ましくない。
【0042】
接着層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。
【0043】
図3では、フィルム基材4と金属からなる反射層3との間に、金属酸化膜8が設けられ
ている。また、金属からなる反射層3とアクリル樹脂含有酸化ケイ素層2との間にも、金
属酸化膜8が設けられている。
(金属酸化膜8)
金属酸化膜としては、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化クロム
等が挙げられ、耐湿性の向上の点から酸化亜鉛が好ましい。そのほか波長550nmにおけ
る屈折率が1.35から1.8の低屈折率層と、波長550nmにおける屈折率が1.85から2.8である
高屈折率膜を交互に積層した多層膜であっても良い。低屈折率膜材料としては、酸化ケイ
素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどが挙げられる。高屈折率膜材
料としては、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化タン
タル、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。
【0044】
図4は、フィルム基材4は、金属からなる反射層3よりも光源側に配置した裏面鏡の場
合である。具体的には、光源側から順番に、酸化ケイ素膜1、アクリル樹脂含有酸化ケイ
素層層2、フィルム基材4、金属からなる反射層3、粘着層5となっている。
【0045】
図5は、図4と同様に裏面鏡の場合であり、フィルム基材4とアクリル樹脂含有酸化ケ
イ素層2との間に、図2と同様に紫外線吸収剤入りのアクリル樹脂層6及び接着層7が設
けられている。また、金属からなる反射層3の光源とは反対側の面に、光源側から順番に
、アクリル樹脂含有酸化ケイ素層2、酸化ケイ素膜1、粘着層5が設けられている。
【0046】
図6も、図3と同様にフィルム基材4と金属からなる反射層3との間、金属からなる反
射層3とアクリル樹脂含有酸化ケイ素層2との間に、それぞれ金属酸化膜8,8が設けら
れている。なお、この場合、図3と異なり裏面鏡となっている。
【0047】
図7は、図1の金属からなる反射層3の光源側の面に変色防止剤層9を設けた場合であ
る。
(変色防止剤層9)
変色防止剤層は、金属からなる反射層(具体的にはAg層)の変色防止として機能し、
例えばチオエーテル系、チオール系、Ni系有機化合物系、ベンゾトリアゾール系、イミ
ダゾール系、オキサゾール系、テトラザインデン系、ピリミジン系、チアジアゾール系が
挙げられる。
変色防止剤層は、大別して銀との吸着基を有するものと、酸化防止剤が好ましく用いら
れる。以下、これらについて具体例を挙げる。
《銀との吸着基を有する変色防止剤》
銀との吸着基を有する変色防止剤としては、アミン類およびその誘導体、ピロール環を
有する物、トリアゾール環を有する物、ピラゾール環を有する物、チアゾール環を有する
物、イミダゾール環を有する物、インダゾール環を有する物、銅キレート化合物類、チオ
尿素類、メルカプト基を有する物、ナフタレン系の少なくとも一種またはこれらの混合物
から選ばれることが望ましい。
【0048】
アミン類及びその誘導体としては、エチルアミン、ラウリルアミン、トリ−n−ブチルアミン、O−トルイジン、ジフェニルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2N−ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アセトアミド、アクリルアミド、ベンズアミド、p−エトキシクリソイジン、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウムサリシレート、モノエタノールアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンカーバメイト、ニトロナフタレンアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムシクロヘキサンカルボキシレート、シクロヘキシルアミンシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロヘキシルアンモニウムアクリレート、シクロヘキシルアミンアクリレート等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0049】
ピロール環を有する物としては、N−ブチル−2,5−ジメチルピロール,N−フェニル−2,5ジメチルピロール、N−フェニル−3−ホルミル−2,5−ジメチルピロール,N−フェニル−3,4−ジホルミル−2,5−ジメチルピロール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
トリアゾール環を有する物としては、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−ヒドロキシ−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−メチル−1,2,3−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4,5,6,7−テトラハイドロトリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ3’5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0051】
ピラゾール環を有する物としては、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリジ
ン、ピラゾリドン、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ヒドロキシピラゾー
ル、4−アミノピラゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
チアゾール環を有する物としては、チアゾール、チアゾリン、チアゾロン、チアゾリジン、チアゾリドン、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、P−ジメチルアミノベンザルロダニン、2−メルカプトベンゾチアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
イミダゾール環を有する物としては、イミダゾール、ヒスチジン、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5ジヒドロキシメチルイミダゾール、4−フォルミルイミダゾール、2−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−フォルミルイミダゾール、4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
インダゾール環を有する物としては、4−クロロインダゾール、4−ニトロインダゾー
ル、5−ニトロインダゾール、4−クロロ−5−ニトロインダゾール等、あるいはこれら
の混合物が挙げられる。
【0055】
銅キレート化合物類としては、アセチルアセトン銅、エチレンジアミン銅、フタロシアニン銅、エチレンジアミンテトラアセテート銅、ヒドロキシキノリン銅等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
チオ尿素類としては、チオ尿素、グアニルチオ尿素等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
メルカプト基を有する物としては、すでに上記に記載した材料も加えれば、メルカプト酢酸、チオフェノール、1,2‐エタンジオール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプトベン
ゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、グリコールジメルカプトアセテート、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
ナフタレン系としては、チオナリド等が挙げられる。
【0059】
《酸化防止剤》
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、チオール系酸化防止剤及びホスファ
イト系酸化防止剤を使用することが好ましい。フェノール系酸化防止剤としては、例えば
、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン
、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス−〔メチレン−3−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネー、3,9−ビス[1,1−ジ−メチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−2,4,8,10−テトラオキオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。
特に、フェノール系酸化防止剤としては、分子量が550以上のものが好ましい。チオ
ール系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、
ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)等を挙げら
れる。ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフ
ェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,6
−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス−(2,6−ジ
−t−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキ
ス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイト、2,
2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げ
られる。
【0060】
図8は、金属からなる反射層(具体的にはAg層)3の光源側と反対側の面に、防食犠
牲層として銀よりもイオン化傾向の高いCu層10を設けた場合である。Cu層10をA
g層の下地層とすることによって、銀の劣化を抑制することができる。
【0061】
図9は、フィルム基材4の光源側の面に易接着材料からなる易接着層11を設けた場合
である。
(易接着層11)
易接着材料は、バインダー成分としてメチル(メタ)アクリレート、分散する微粒子としてシリカ微粒子、及び前記シリカ微粒子を凝集することなく分散させるための分散剤として脂肪族ヒドロキシカルボン酸を構成成分とする高分子量顔料分散剤を含むものである。
【0062】
本発明においては、このようなバインダー成分、微粒子、分散剤を特定のものとすることにより、無溶剤の易接着材料とすることができ、また、塗膜化した際に優れた透明性と、フィルム基材とアクリル樹脂含有酸化ケイ素膜の密着性を向上させることができる。
【0063】
易接着材料のバインダー成分は、メチル(メタ)アクリレートである。ここでバインダー成分とは、分散剤を除くモノマー、及びポリマーをいう。バインダー成分をメチル(メタ)アクリレートとすることにより、フィルム基材とアクリル樹脂含有酸化ケイ素膜の両方に密着する膜とすることができる。また、易接着材料を無溶剤化することができる。易接着材料を無溶剤化するためには、シリカ微粒子をバインダー成分中に分散させなければならないため、当該シリカ微粒子と分散媒としてのバインダー成分との相性のよいもの、また易接着材料を塗料化した際に塗布しやすく取り扱い性のよいものという観点からバインダー主成分はメチル(メタ)アクリレートとする必要がある。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、またはメタクリレートを意味する。
【0064】
易接着材料は、メチル(メタ)アクリレート以外のバインダー成分を含有してもよい。そのようなバインダー成分としては特に限定されないが、易接着材料が無溶剤であることを考慮し、塗布しやすく取り扱い性の良い塗料とするため、常温(25℃程度)での粘度が14000mPa・s以下程度の流動性を持つものが好ましい。また、易接着材料という観点から、塗膜化した際に表面硬度が高くなるものが好ましい。このようなバインダー成分としては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3―ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0065】
バインダー成分におけるメチル(メタ)アクリレートの含有量は、50重量%以上とすることが好ましい。メチル(メタ)アクリレートの含有量を50重量%以上とすることにより、シリカ微粒子の分散性を向上させ、また、塗膜化した際に塗膜の表面硬度を保つことができる。
【0066】
次に、シリカ微粒子は、上述したように乾式燃焼法により製造した非晶質合成シリカである。このようなシリカ微粒子を用いることにより、塗膜化した際に耐擦傷性に優れた塗膜とすることができる。ここで、塗膜の表面硬度は、バインダー成分に無機物を含有させることにより向上できることが一般に知られており、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニア等の無機物質を熱硬化型樹脂、又は電離放射線硬化型樹脂に混入させ、ハードコート性塗膜とする技術もある。しかし、本発明においてはより透明性の高い塗膜とするため、表面硬度を向上させる無機物としてシリカ微粒子である必要がある。
【0067】
シリカ微粒子の大きさは、二次粒子径で5nm〜100nm程度が好ましく、さらに好ましくは、10nm〜50nm程度とすることが望ましい。5nm以上とすることにより、塗料化する際に粘度が上昇しすぎず分散不良となるのを抑制することができ、100nm以下とすることにより塗膜化した際に塗膜中の光の乱反射を防止し、透明性の低下を防止することができる。
【0068】
シリカ微粒子の含有量は、全バインダー成分100重量部に対し5重量部〜50重量部程度である。シリカ微粒子の含有量を5重量部以上とすることにより、アクリル樹脂含有酸化ケイ素膜との密着性を向上させることができる。また、50重量部以下とすることにより、易接着材料の流動性を制御し塗布しやすい塗料とすることができ、また上述したバインダー成分中におけるシリカ微粒子の分散性を向上させることができる。
【0069】
図10は、図9の酸化ケイ素層膜1の光源側の表面に、表面クラック防止層としてアクリル樹脂含有酸化ケイ素層2を設けた場合である。
【0070】
図11は、図9のフィルム基材4の両面に易接着層11,11を設け、金属からなる反射層3と酸化ケイ素層1との密着性を抑止、応力緩和層の役割を持たせた場合である。
【0071】
図12は、図11のCu層10の光源と反対側の面にも、アクリル樹脂含有酸化ケイ素層2と、酸化ケイ素層1をさらに設けた場合である。
(太陽光集光ミラー)
本発明のフィルムミラーは、太陽光を集光する目的において、好ましく使用できる。フィルムミラー単体で太陽光集光ミラーとして用いることもできるが、より好ましくは、樹脂基材を挟んで銀反射層を有する側と反対側の樹脂基材面に塗設された粘着層を介して、他基材上に、特に金属基材上に、当該フィルムミラーを貼り付けて太陽光集光ミラーとして用いることである。
【0072】
(フィルムミラーの製造方法)
本発明のフィルムミラーは、以下のような工程にて製造することができる。
[工程1]
フィルム基材として、2軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ100μm)を準備し、蒸着機内部に配置し、蒸着機内部は真空ポンプによって真空にする。真空蒸着機内には、ロール状に巻いたフィルムを繰り出す繰り出し装置と、フィルムに蒸着処理を施してなる金属蒸着フィルムを巻き取る巻き取り装置とが配置されている。繰り出し装置と巻き取り装置との間には、フィルムをそれぞれ案内するように、ロールA、ロールB、及びロールCが順に配置され、いずれも図示しない駆動手段によりフィルム走行と同期して回転駆動されるようになっている。
[工程2]
フィルム走行方向上流側部分と対向する位置には、蒸着核蒸発源がロールBへ向けて配置されている。蒸着核蒸発源は、Au、Ag、Cu、Al、等の金属をフィルムに蒸着するためのものであり、真空蒸着法等により金属蒸気を発生させ、フィルムの全幅に亘って均一に金属蒸着膜を形成する。
[工程3]
ジブチルエーテル中に分散したポリシラザンを工程2で作成した金属蒸着フィルムの一方の面に塗布する。塗布方法はスピンコート、ディップコート、スクリーン印刷、ワイヤーバーコート、ブレードコート、ロールコート、フローコート、スプレー等を用いることができる。塗布膜厚は10μm以内であり、塗布後100℃で5分ほど乾燥させる。乾燥後にフィルムを搬送させながら、Xeエキシマ放射線(30mW/cm波長約172nm)で1分間照射し、酸化転化させる。Xeエキシマ放射線で酸化転化させる手法は特表2009-503157に開示されている公知の手法で達成できる。
[工程4]
工程3で作成した酸化ケイ素膜とは逆側にポリエステル系のホットメルト接着剤を5μm厚に塗布する。
上記の作成順序に限らず、工程2の後に金属の劣化防止に効果のある変色防止剤を塗布しても良いし、同じく金属の劣化防止に金属酸化物膜、例えば酸化アルミニウムや酸化ケイ素、酸化アルミニウムと酸化ケイ素の混合膜を蒸着しても良い。
【0073】
以上のように、金属からなる反射層よりも光源側に、酸化ケイ素層のバリア層を配置することで、ガスバリア性を付与して耐久性を向上させることができる。また、アルキル含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層を酸化ケイ素層に接して積層させることにより酸化ケイ素層の応力緩和層として効果がある。
また、フィルムミラーを作成する工程で過剰な熱をかけないので、フィルム基材の寸法安定性と表面平滑性を維持することができる。
また、強い紫外線からポリマー層を保護するためにフィルム基材やそのほか光源側に配置されるポリマーフィルムに紫外線吸収剤を添加すれば、着色を防止し、反射効率を維持することができる。
さらに、赤外パルスまたはエキシマによる光照射で硬化した場合には、フィルム基材の熱変形が起こらず、正反射率の低下を防止することができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明について実施例及び比較例を用いて具体的に説明する。
[実施例1]
基材として、2軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み100μm)を用いた。上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、金属反射層として、真空蒸着法により厚さ80nmの銀反射層を形成し、銀反射層上に、ジブチルエーテル中にポリシラザン20wt%を分散させたNN320(AZ Electronic Materials製)を7μmの厚みになるように押し出し塗布し、100℃で5分間乾燥させた。Xeエキシマ放射線30mW/cmで1分間照射し酸化ケイ素膜を形成した。酸化ケイ素膜とは逆側に粘着剤としてアクリル系の粘着剤エスダイン#7851(積水化学工業製)を5μm厚に塗布し、実施例1のサンプルを得た(図1参照)。
【0075】
[比較例1]
基材として、2軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み100μm)を用いた。上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、金属反射層として、真空蒸着法により厚さ80nmの銀反射層を形成し、銀反射層とは逆側に粘着剤としてアクリル系の粘着剤エスダイン#7851(積水化学工業製)を5μm厚に塗布し、比較例1のサンプルを得た(図13参照)。
【0076】
[実施例2]
基材として、2軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み50μm)を用いた。上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、金属反射層として、真空蒸着法により厚さ80nmの銀反射層を形成し、銀反射層とは逆の面に60μmの厚みのアクリル系フィルムをニチゴーポリエスターLP-035(日本合成化学)にて接着した。アクリル系フィルムにはベンゾトリアゾール系UV吸収剤が含有されている。アクリル系フィルムの上に応力緩和層としてアルキル基含有ポリシラザンMHPS-20DB(AZ Electronic Materials製)を7μmの厚みになるように塗布し80℃で5分乾燥後、さらにNN320(AZ Electronic Materials製)を7μmの厚みになるように塗布し、100℃で5分間乾燥させた。Xeエキシマ放射線30mW/cmで1分間照射し酸化ケイ素膜を形成した。銀反射面のほうにはアクリル系の粘着剤エスダイン#7851(積水化学工業製)を5μmの厚みで塗布した(図2参照)。
【0077】
[比較例2]
MHPS-20DBと NN320をアクリル系フィルムの上に塗布、乾燥、硬化させる工程を行わなかった以外は実施例2と同様の工程で作成した(図14参照)。
【0078】
[実施例3]
基材として、2軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み50μm)を用いた。銀の保護層として、酸化アルミニウムを100nmの厚みになるように真空蒸着し、その上に金属反射層として、真空蒸着法により厚さ80nmの銀反射層を形成し、銀反射層の上にさらに酸化アルミニウムを100nmの厚みになるように真空蒸着した。酸化アルミニウム層の上に実施例2と同様にMHPS-20DBと NN320を塗布し、80℃から100℃の温度で乾燥し、Xeエキシマ放射線を照射させることで硬化させた。銀反射層とは逆の面に粘着剤としてアクリル系の粘着剤エスダイン#7851(積水化学工業製)を5μm厚に塗布した(図3参照)。
【0079】
[比較例3]
銀反射層の上の酸化アルミニウムの上にNN320を塗布後の硬化方法が異なる以外は実施例3と同様の工程で作成した。NN320の硬化にはXeエキシマ放射線を用いずに120℃30分の熱をかけた(図15参照)。
【0080】
[実施例4]
実施例1では銀反射層上にNN320を塗布したのとは逆に、銀反射層が無いほうの基材表面に応力緩和層としてアルキル基含有ポリシラザンMHPS-20DB を塗布し、80℃で乾燥後、NN320を塗布、100℃で5分間乾燥させた。Xeエキシマ放射線30mW/cmで1分間照射し酸化ケイ素膜を形成した。銀反射面のほうにはアクリル系の粘着剤エスダイン#7851(積水化学工業製)を5μmの厚みで塗布した(図4参照)。
【0081】
[実施例5]
実施例2では銀反射層と粘着剤が接しているが、この銀反射層と粘着剤の間にMHPS-20DBと NN320を塗布、乾燥、Xeエキシマ放射線照射からなる酸化ケイ素バリア膜を作成し、裏面バリアと応力緩和の効果を得た(図5参照)。
【0082】
[実施例6]
ベンゾトリアゾール系UV吸収剤が含有されたアクリルフィルム50μmを基材として、NN320を7μmの厚みになるように塗布し、100℃で5分間乾燥させた。応力緩和層としてMHPS-20DBをその上に7μmの厚みになるように塗布した。Xeエキシマ放射線30mW/cmで1分間照射し酸化ケイ素膜を形成した。蒸着釜に入れて酸化アルミニウムの層を100nmつけて易接着層とし、金属反射層として真空蒸着法により厚さ80nmの銀反射層を形成し、さらに酸化アルミニウムの層を100nmつけてアクリル系の粘着剤エスダイン#7851(積水化学工業製)を5μmの厚みで塗布した(図6参照)。
【0083】
[実施例7]
銀反射層のよりも光源側に、New Dain Silver S1(大和化成株式会社製)を10倍希釈した銀の変色防止剤を塗布した他は、実施例1と同様の工程で作成した(図7参照)。
【0084】
[実施例8]
光源側を上としたときに銀反射層の下層に防食犠牲層として銅層を真空蒸着によって60nm形成した他は、実施例7と同様の工程で作成した(図8参照)。
【0085】
[実施例9]
コスモシャインA4100(東洋紡績株式会社製)の易接着層とは逆側に真空蒸着法により厚さ80nmの銀反射層を形成し、防食犠牲層として銅層を真空蒸着によって60nm形成した。易接着層側に応力緩和層としてMHPS-20DBを7μmの厚みになるように塗布し、さらにその上にNN320を7μmの厚みになるように塗布し、100℃で5分間乾燥させた。Xeエキシマ放射線30mW/cmで1分間照射し酸化ケイ素膜を形成した。アクリル系の粘着剤エスダイン#7851(積水化学工業製)を5μmの厚みで塗布した(図9参照)。
【0086】
[実施例10]
NN320のさらに上にクラック防止層としてMHPS-20DBを7μmの厚みになるように塗布した他は実施例9と同様の工程で作成した(図10参照)。
【0087】
[実施例11]
光学用両面易接着付きルミラー(東レ株式会社製)を用いた他は、実施例9と同様の工程で作成した(図11参照)。
【0088】
[実施例12]
防食犠牲層である銅層の裏面にMHPS-20DB とNN320を塗布して100℃で5分間乾燥し、さらにXeエキシマ放射線30mW/cmで1分間照射し酸化ケイ素膜を形成した他は実施例11と同様の工程で作成した(図12参照)。
【0089】
[酸化ケイ素膜の水蒸気透過率の測定]
水蒸気透過率の測定用に実施例1と比較例1においてそれぞれAg膜を蒸着しない試料を作成した。そして、JIS K7129の記載の「赤外線センサをつかった水蒸気透過度」の方法にそって測定を行った。測定した結果、実施例1の水蒸気透過度は0.005g/m2・24hであった。比較例1の水蒸気透過度は10g/m2・24hであった。
【0090】
[評価]
評価には実施例、比較例で作成したサンプルをスライドガラス(25.4mm×76.2mm×1mm)に貼りつけて下記の試験を実施し、その結果を下記表1に示した。
(反射率測定)
フィルムミラーを測定サイズの2.5cm角に切り出し、分光光度計U4000(日立ハイテクノロジーズ製)の反射率測定モードを選択し、角度5°で入射した光の反射光を積分球に導き正反射率を測定した。波長範囲は250nm〜2500nmを測定し、部分的に反射率が落ちる波長範囲が無いかどうかを確認した。可視光領域(400nm〜800nm)の反射率を平均し、実施例と比較例のそれぞれの正反射平均値を得た。
○:正反射率平均値が90%以上
△:正反射率平均値が89%から80%
×:正反射率平均値が79%以上
【0091】
(クロスカット法)
JISK5600-5-6の手順に従い、フィルムミラーの光源側からカッターを用いて2mm間隔で切り込みを入れ100個の碁盤の目を作成した。接着テープ(ニチバン製)を膜表面にしっかりと貼り、テープを勢いよくはがして剥離せずに残ったマス目の反射率を測定した。
【0092】
(スチールウール)
#0000スチールウール(日本スチールウール製)に500g/cm2の荷重をかけ、フィルムミラーの光源側の上を10往復した。その後反射率を測定した。
【0093】
劣化試験1(耐候試験)
キセノンアークランプ装置を用いて、168時間後のフィルムミラーの反射率を測定した。
劣化試験2(硫化アンモニウム試験)
JIS−K8943に規定されている硫化アンモニウムを用いて、JIS−H8623付属書2に記載の方法にそって試験を行った。硫化アンモニウムを0.5mL滴下して1時間放置した後にフィルムミラーの反射率を測定した
劣化試験3(耐湿試験)
温度85℃、湿度85%RHの条件で恒温槽中に30日間放置し、取り出してから前述したクロスカット試験とスチールウール試験を実施した。
【0094】
【表1】

【0095】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜実施例12は比較例1〜3に比べて、反射率、密着性及び耐衝撃性においていずれも良好であった。
【符号の説明】
【0096】
1 酸化ケイ素層
2 アルキル含有酸化ケイ素層(アクリル樹脂含有酸化ケイ素層)
3 金属からなる反射層(Ag層)
4 フィルム基材
6 紫外線吸収剤入りアクリル樹脂層
9 変色防止層
10 Cu層
100 フィルムミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)フィルム基材、
b)金属からなる反射層、
c)前記金属からなる反射層よりも光源側には酸化ケイ素層、の少なくとも上記a)〜c)を構成中に含み、
前記酸化ケイ素層は、光照射によって硬化させたことを特徴とする太陽光を反射する機能を持つフィルムミラー。
【請求項2】
前記フィルム基材として、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、アクリル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、セルロース、ポリアミドのいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載のフィルムミラー。
【請求項3】
前記フィルム基材には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系、ポリマー型の紫外線吸収剤のうちいずれかを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルムミラー。
【請求項4】
前記金属からなる反射層は、金、銀、銅、アルミニウムのうちいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項5】
前記金属からなる反射層は、湿式めっきで作成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項6】
前記金属からなる反射層は、乾式めっきで作成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項7】
前記金属からなる反射層は、前記フィルム基材よりも光源側に配置することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項8】
前記フィルム基材は、前記金属からなる反射層よりも光源側に配置することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項9】
前記酸化ケイ素層は、前記フィルム基材から見て光源側とは反対側に配置されることを特徴とする請求項1〜6、8のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項10】
前記酸化ケイ素層と接してアルキル基含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層を積層させることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項11】
前記酸化ケイ素層及びアルキル基含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層は、酸化ケイ素前駆体を含む液を塗布後、150nm〜250nmの波長の光を照射させて形成させたことを特徴とする請求項10に記載のフィルムミラー。
【請求項12】
前記酸化ケイ素層及びアルキル基含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層は、酸化ケイ素前駆体を含む液を塗布後、1μm〜3μmの波長の光を照射させて形成させたことを特徴とする請求項10に記載のフィルムミラー。
【請求項13】
前記酸化ケイ素層及びアルキル基含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層は
、40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が10^-2g/m2 ・24h 以下であることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項14】
前記酸化ケイ素層及びアルキル基含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層のうち少なくとも異なる組成の2種を積層させたことを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項15】
前記酸化ケイ素層及びアルキル基含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層は同組成のものを2層以上積層させたことを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項16】
前記酸化ケイ素層及びアルキル基含有酸化ケイ素層、酸化ケイ素を含むポリマー層は、膜厚はそれぞれ1μm以下であり、それぞれの光線透過率の平均値は90%以上であることを特徴とする請求項10〜15のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項17】
前記金属からなる反射層と接して、Cu層が設けられていることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項18】
前記金属からなる反射層と接して、チオエーテル系、チオール系、Ni系有機化合物系、ベンゾトリアゾール系、イミダゾール系、オキサゾール系、テトラザインデン系、ピリミジン系、チアジアゾール系の変色防止剤層が設けられていることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載のフィルムミラー。
【請求項19】
請求項1〜請求項18までのいずれか一項に記載のフィルムミラーを製造するフィルムミラーの製造方法であって、
前記金属からなる反射層を銀蒸着によって形成する工程を有することを特徴とするフィルムミラーの製造方法。
【請求項20】
請求項1〜請求項18までのいずれか一項に記載のフィルムミラーを用いた太陽光集光用ミラーであって、
光源側とは反対側に塗設された粘着層を介して、金属基材上に当該フィルムミラーを貼り付けて形成されたことを特徴とする太陽光集光用ミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−128501(P2011−128501A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288978(P2009−288978)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】