説明

フィルム基板

【課題】入出力アウターリードにクラックや断線が発生することを防止可能なフィルム基板を提供する。
【解決手段】ベースフィルム2と、ベースフィルム2の両端にそれぞれ整列して形成された複数の入出力アウターリード3,4とを備え、ベースフィルム2の両端に形成された複数の入出力アウターリード3,4を、それぞれ外部基板に電気的に接続することで、外部基板同士を電気的に接続するフィルム基板において、ベースフィルム2の両端に形成された複数の入出力アウターリード3,4の両側に、ベースフィルム2の変形を抑制し複数の入出力アウターリード3,4の断線を防止するための補強用金属パターン7をそれぞれ形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルのTFTガラス基板やプリント基板などの外部基板に接続され、外部基板同士を電気的に接続するフィルム基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置が急速に普及してきている。
【0003】
液晶表示装置の1つとして、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)を用いたTFT液晶表示装置がある。このTFT液晶表示装置では、液晶パネルには、液晶材料の駆動素子であるTFTを表面に規則的に配列して形成したTFTガラス基板が用いられている。
【0004】
TFTガラス基板と液晶表示装置に設けられるプリント基板(Printed Circuit Board;PCB)とは、TFTを駆動する駆動用半導体素子(LSI(Large scale Integration)など)が実装されたフィルム基板により接続される。このフィルム基板は、一般に、COF(Chip on film/FPC)、あるいはTCP(Tape Carrier Package)などと呼ばれている。
【0005】
このとき、TFTガラス基板とフィルム基板との接続、およびPCBとフィルム基板との接続は、一般に異方性導電膜(Anisotropic Conductive Film;ACF)を用いたアウターリードボンディング(Outer Lead Bonding;OLB)により行われる。
【0006】
図2に示すように、フィルム基板21は、ベースフィルム22と、ベースフィルム22の両端にそれぞれ整列して形成された複数の入出力アウターリード23,24と、を備えている。このフィルム基板21では、ベースフィルム22の一端(図示上側の端部)に、図示しないPCBに接続される複数の入力アウターリード23を整列して形成し、ベースフィルム22の他端(図示下側の端部)に、図示しないTFTガラス基板に接続される複数の出力アウターリード24を整列して形成している。
【0007】
フィルム基板21では、ベースフィルム22上にTFTを駆動する駆動用半導体素子としてのLSI25が実装されており、LSI25と複数の入出力アウターリード23,24とが配線パターンにより接続されている。PCBからの電気信号は、入力アウターリード23を介してLSI25に入力され、LSI25からの電気信号は、出力アウターリード24を介してTFTガラス基板に出力される。
【0008】
また、フィルム基板21では、複数の入出力アウターリード23,24の両側、すなわちベースフィルム22の両側端部に、ベースフィルム22の一端から他端に亘って、補強用のダミーリード26が形成される。ダミーリード26を形成することで、ベースフィルム22上のパターン密度を略均一とし、TFTガラス基板やPCBへの接続作業時等の温度変化の繰返しによる入出力アウターリード23,24や配線パターンへのクラックや断線の発生を抑制することができる。
【0009】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、特許文献1〜3がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−204588号公報
【特許文献2】特開2006−196878号公報
【特許文献3】特開2008−47781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、図3に示すように、TFT液晶表示装置31では、液晶パネル(TFTガラス基板)32とPCB33とを重ねて配置するのが一般的である。よって、TFT液晶表示装置31では、液晶パネル32とPCB33の両者に接続されるフィルム基板21は、180度折れ曲がった状態となる。
【0012】
フィルム基板21を液晶パネル32とPCB33に接続した状態で、液晶パネル32とPCB33の位置がずれると、フィルム基板21には、その幅方向(図示矢印方向)にせん断的応力がかかり、特に、フィルム基板21の四隅に応力が集中して、入出力アウターリード23,24にクラックや断線が発生する原因となっていた。
【0013】
一般に、フィルム基板21の両端部は、ソルダーレジスト(SR)にも保護されない領域であり、接続後の移送時等にせん断的応力がかかり易く、入出力アウターリード23,24にクラックや断線が発生しやすい。
【0014】
本発明は上記事情に鑑み為されたものであり、入出力アウターリードにクラックや断線が発生することを防止可能なフィルム基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、ベースフィルムと、該ベースフィルムの両端にそれぞれ整列して形成された複数の入出力アウターリードと、を備え、前記ベースフィルムの両端に形成された前記複数の入出力アウターリードを、それぞれ外部基板に電気的に接続することで、外部基板同士を電気的に接続するフィルム基板において、前記ベースフィルムの両端に形成された前記複数の入出力アウターリードの両側に、前記ベースフィルムの変形を抑制し前記複数の入出力アウターリードの断線を防止するための補強用金属パターンをそれぞれ形成したフィルム基板である。
【0016】
前記補強用金属パターンは、平面視で矩形状に形成され、その矩形状の長さ及び幅は、前記外部基板との接続部に幅方向の応力が加わった際に、前記複数の入出力アウターリードを形成した部分の前記ベースフィルムの変形を抑制できる長さ及び幅に形成されてもよい。
【0017】
前記複数の入出力アウターリードの両側に形成される前記補強用金属パターンは、前記ベースフィルムの中心軸に対して左右対称な形状に形成されてもよい。
【0018】
前記複数の入出力アウターリードの両側で、かつ、前記補強用金属パターンと前記入出力アウターリードとの間に、前記ベースフィルムの一端から他端に亘って、補強用のダミーリードが形成されてもよい。
【0019】
前記複数の入出力アウターリードが接続される一方の前記外部基板が、薄膜トランジスタ(TFT)が形成されたTFTガラス基板であり、前記ベースフィルムには、前記薄膜トランジスタを駆動する駆動用半導体素子が実装されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、入出力アウターリードにクラックや断線が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフィルム基板を示す平面図である。
【図2】従来のフィルム基板を示す平面図である。
【図3】図2のフィルム基板を用いたTFT液晶装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係るフィルム基板を示す平面図である。
【0024】
図1に示すように、フィルム基板1は、ベースフィルム2と、ベースフィルム2の両端にそれぞれ整列して形成された複数の入出力アウターリード3,4と、を備えている。ベースフィルム2は、例えばポリイミドフィルムからなる。
【0025】
フィルム基板1は、ベースフィルム2の両端に形成された複数の入出力アウターリード3,4を、それぞれ図示しない外部基板に電気的に接続することで、外部基板同士を電気的に接続するものである。以下、フィルム基板1を接続する外部基板として、TFTガラス基板とプリント基板(PCB)を用いる場合を説明するが、接続対象の外部基板はこれに限定されるものではない。
【0026】
フィルム基板1では、ベースフィルム2の一端(図示上側の端部)に、図示しないPCBに接続される複数の入力アウターリード3が整列して形成され、ベースフィルム2の他端(図示下側の端部)に、図示しないTFTガラス基板に接続される複数の出力アウターリード4が整列して形成される。
【0027】
ベースフィルム2上には、TFTを駆動する駆動用半導体素子としてのLSI5が実装され、LSI5と複数の入出力アウターリード3,4とが配線パターンにより接続されている。PCBからの電気信号は、入力アウターリード3を介してLSI5に入力され、LSI5からの電気信号は、出力アウターリード4を介してTFTガラス基板に出力される。つまり、フィルム基板1は、一般に、COF(Chip on film/FPC)、あるいはTCP(Tape Carrier Package)などと呼ばれるものである。
【0028】
LSI5は、バンプ(半田バンプ,Auバンプなど)によりフィルム基板2の配線パターンに実装(インナーリードボンディング)される。フィルム基板2上に形成される配線パターンは、例えば、銅配線上にスズメッキを施したものからなる。
【0029】
また、フィルム基板1では、複数の入出力アウターリード3,4の両側、すなわちベースフィルム2の両側端部に、ベースフィルム2の一端から他端に亘って、補強用のダミーリード6が形成される。ダミーリード6は、ベースフィルム2上のパターン密度を略均一とし、TFTガラス基板やPCBへの接続作業時等の温度変化の繰返しによる入出力アウターリード3,4や配線パターンへのクラックや断線の発生を抑制するためのものである。ダミーリード6は、ベースフィルム2上に形成される配線パターンと同様に、例えば、銅配線上にスズメッキを施したものからなる。
【0030】
ここでは、ダミーリード6に電気信号を供給しない場合を説明するが、ダミーリード6の一部を、共通信号(Vcom)を伝達する信号路として用いてもよい。この場合、共通信号を伝達する信号路としては、最も外側(ベースフィルム2の側端側)のダミーリード6を用いるとよい。
【0031】
さて、本実施の形態に係るフィルム基板1では、ベースフィルム2の両端に形成された複数の入出力アウターリード3,4の両側に、ベースフィルム2の変形を抑制し複数の入出力アウターリード3,4の断線を防止するための補強用金属パターン7がそれぞれ形成される。
【0032】
補強用金属パターン7は、入出力アウターリード3,4の両側に形成されたダミーリード6のさらに外側(ベースフィルム2の側端側)に形成される。換言すれば、ダミーリード6は、複数の入出力アウターリード3,4の両側で、かつ、補強用金属パターン7と入出力アウターリード3,4との間に形成される。つまり、補強用金属パターン7は、応力が集中し易いベースフィルム2の四隅近傍に形成される。補強用金属パターン7は、ベースフィルム2上に形成される配線パターンと同様に、例えば、銅配線上にスズメッキを施したものからなる。
【0033】
補強用金属パターン7は、平面視で略矩形状に形成される。
【0034】
補強用金属パターン7の幅(図示左右方向の幅)は、小さすぎると、TFTガラス基板とPCBが位置ずれするなどして、TFTガラス基板やPCBとの接続部に幅方向の応力(せん断的応力)が加わった際に、ベースフィルム2の変形を抑制できず、入出力アウターリード3,4にクラックや断線が発生してしまうおそれが生じるので、ある程度の幅を確保する必要がある。
【0035】
また、補強用金属パターン7の長さ(図示上下方向の長さ)は、TFTガラス基板とPCBが位置ずれするなどした際に、応力が集中する範囲(入出力アウターリード3,4にクラックや断線が発生する可能性のある範囲)をカバーできる程度の長さとすることが望ましい。
【0036】
つまり、補強用金属パターン7の長さ及び幅は、TFTガラス基板やPCBとの接続部に幅方向の応力(せん断的応力)が加わった際に、入出力アウターリード3,4を形成した部分のベースフィルム2の変形を抑制できる程度の長さ及び幅に形成されることが望ましい。
【0037】
入出力アウターリード3,4の両側に形成される補強用金属パターン7、すなわち、図示上側の2つの補強用金属パターン7と、図示下側の2つの補強用金属パターン7は、ベースフィルム2の中心軸に対して左右対称な形状に形成されることが望ましい。これは、ベースフィルム2上のパターン密度の偏りを抑制し、TFTガラス基板やPCBへの接続作業時等の温度変化の繰返しによる入出力アウターリード3,4や配線パターンへのクラックや断線の発生を抑制するためである。
【0038】
本実施の形態の作用を説明する。
【0039】
本実施の形態に係るフィルム基板1では、ベースフィルム2の両端に形成された複数の入出力アウターリード3,4の両側に、補強用金属パターン7をそれぞれ形成している。
【0040】
補強用金属パターン7を形成することにより、フィルム基板1をTFTガラス基板とPCBに接続した後、その後の工程や移送時にTFTガラス基板とPCBが位置ずれするなどして、TFTガラス基板やPCBとの接続部に幅方向の応力(せん断的応力)が加わった場合であっても、ベースフィルム2の変形を抑制し、入出力アウターリード3,4にクラックや断線が発生することを防止することが可能になる。
【0041】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0042】
例えば、上記実施の形態では、フィルム基板1にLSI5を実装した場合(フィルム基板1がCOF,TCPである場合)を説明したが、LSI5等の半導体素子を実装しない通常のFPC(Flexible Printed Circuit)であっても、本発明は当然に適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 フィルム基板
2 ベースフィルム
3 入力アウターリード
4 出力アウターリード
5 LSI
6 ダミーリード
7 補強用金属パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムと、該ベースフィルムの両端にそれぞれ整列して形成された複数の入出力アウターリードと、を備え、
前記ベースフィルムの両端に形成された前記複数の入出力アウターリードを、それぞれ外部基板に電気的に接続することで、外部基板同士を電気的に接続するフィルム基板において、
前記ベースフィルムの両端に形成された前記複数の入出力アウターリードの両側に、前記ベースフィルムの変形を抑制し前記複数の入出力アウターリードの断線を防止するための補強用金属パターンをそれぞれ形成した
ことを特徴とするフィルム基板。
【請求項2】
前記補強用金属パターンは、平面視で矩形状に形成され、その矩形状の長さ及び幅は、前記外部基板との接続部に幅方向の応力が加わった際に、前記複数の入出力アウターリードを形成した部分の前記ベースフィルムの変形を抑制できる長さ及び幅に形成される請求項1記載のフィルム基板。
【請求項3】
前記複数の入出力アウターリードの両側に形成される前記補強用金属パターンは、前記ベースフィルムの中心軸に対して左右対称な形状に形成される請求項1または2記載のフィルム基板。
【請求項4】
前記複数の入出力アウターリードの両側で、かつ、前記補強用金属パターンと前記入出力アウターリードとの間に、前記ベースフィルムの一端から他端に亘って、補強用のダミーリードが形成される請求項1〜3いずれかに記載のフィルム基板。
【請求項5】
前記複数の入出力アウターリードが接続される一方の前記外部基板が、薄膜トランジスタ(TFT)が形成されたTFTガラス基板であり、
前記ベースフィルムには、前記薄膜トランジスタを駆動する駆動用半導体素子が実装される請求項1〜4いずれかに記載のフィルム基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−74492(P2012−74492A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217450(P2010−217450)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(508196494)日立電線フィルムデバイス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】