説明

フィルム状接着剤およびそれを用いた半導体パッケージ

【解決課題】低温接着性、埋め込み性に優れた半導体パッケージ内で好適に用いることができるダイボンドフィルムとしての機能を有するフィルム状接着剤および、低温接着性、埋め込み性に優れたダイボンドフィルムとしての機能を有するフィルム状接着剤とダイシングテープとしての機能とを併せ持つフィルム状接着剤を提供する。
【解決手段】ガラス転移温度が100℃以下の熱可塑性ポリイミドを主成分として含む接着剤層(C)及び50℃での貯蔵剪断弾性率が10Pa以下の粘着剤層(D)を含むことを特徴とするフィルム状接着剤。更に基材(A)及び粘着剤層(B)を含むことを特徴とする前記のフィルム状粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状接着剤に関し、詳しくは半導体パッケージ内で好適に用いることができるダイボンドフィルムの機能を有するフィルム状接着剤、ダイボンドフィルムの機能と当該パッケージ組立工程内でダイシングテープとしての機能とを併せ持つフィルム状接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージの製造工程は、1)大口径のウェーハ裏面にフィルム状接着剤を貼り付ける工程、2)フィルム状接着剤側にダイシングテープを貼り付ける工程、3)ダイシングし、チップを個片化する工程、4)個片化されたチップをダイシングテープからピックアップする工程、5)フィルム状接着剤を介して被着体である基板にダイボンドする工程、6)チップ/基板間をワイヤボンドする工程、7)封止剤でモールドする工程を経るのが一般的である。
【0003】
フィルム状接着剤はダイボンドフィルムとして機能し、上記1)工程ではウェーハに対しての接着であり、上記5)工程では基板に対しての接着である。ウェーハに対する接着に着目すると、近年、ウェーハが薄厚化しており、高温で接着するとウェーハの反りが発生する問題が生じており、フィルム状接着剤にはより優れた低温接着性が求められている。一方、基板に対する接着に着目すると、近年、1パッケージ内でのチップ積層段数が増加し、チップにワイヤボンドする温度、時間がより高温化、長時間化しており、従来のフィルム状接着剤では、ワイヤボンド中に硬化してしまい、基板表面の凹凸に対する埋め込み不良が生じる問題があった。従って、信頼性確保のため、フィルム状接着剤にはより厳しいワイヤボンド条件でも、基板表面凹凸に対するより優れた埋め込み性が求められている。
【0004】
更に、近年、工程の簡略化を目的に、ダイボンドフィルムとしての機能とダイシングテープとしての機能を併せ持つ、ダイシング・ダイボンドフィルムが求められている(特許文献1及び2参照)。これにより上記製造工程の1)と2)を同時に行えるようになる。
しかし、低温接着性、埋め込み性に優れたダイシング・ダイボンドフィルムは開発されていないのが現状である。
【特許文献1】特開2004−83602号公報
【特許文献2】特開2004−95844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、低温接着性、埋め込み性に優れた半導体パッケージ内で好適に用いることができるダイボンドフィルムとしての機能を有するフィルム状接着剤、およびダイボンドフィルムとしての機能を有するフィルム状接着剤と当該パッケージ組立工程内でダイシングテープとしての機能とを併せ持つフィルム状接着剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討し、本発明を完成した。
すなわち、第一の発明は、
ガラス転移温度が100℃以下の熱可塑性ポリイミドを主成分として含む接着剤層(C)及び50℃での貯蔵剪断弾性率が1×106Pa以下の粘着剤層(D)を含むことを特徴とするフィルム状接着剤である。
【0007】
更に前記フィルム状接着剤が基材(A)及び粘着剤層(B)を含むことは、ダイシングテープとしての機能を付与することができ、好ましい態様である。
前記基材(A)が、25℃での引張弾性率が500MPa以下のフィルムであることは、ピックアップ時のエキスパンド性の観点で好ましい態様である。
前記粘着剤層(B)と前記接着剤層(C)との180°ピール強度が0.1〜2.5N/25mmであることは、ピックアップ性の観点で好ましい態様である。
前記接着剤層(C)が、ポリイミドの他に、熱硬化性樹脂及びフィラーを含む樹脂組成物からなることは、耐熱性の観点で好ましい態様である。
【0008】
前記ポリイミドが、分子内に鎖状ポリエーテルを有するジアミンを含むジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させて得られるポリイミドであることは、低温接着性の観点で好ましい態様である。
【0009】
前記ポリイミドが、分子内に少なくとも1個のフェノール性ヒドロキシル基を有するジアミンと分子内に鎖状ポリエーテルを有するジアミンを含むジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させて得られるガラス転移温度40℃以上100℃以下のポリイミドであることは、低温接着性の観点で好ましい態様である。
第二の発明は、
ガラス転移温度が100℃以下のポリイミドを含み、かつ180℃の温度で1時間保持した際の貯蔵剪断弾性率が180℃の温度で5.0×10Pa以下である接着剤層(C’)を少なくとも1層有することを特徴とするフィルム状接着剤である。
前記の接着剤層(C’)が、分子内に鎖状ポリエーテルを有するジアミンを含むジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させて得られる熱可塑性ポリイミドと熱硬化性樹脂を必須成分として含む樹脂組成物から構成されることは、低温接着性と耐熱性の観点から好ましい態様である。
【0010】
前記の接着剤層(C’)が、分子内に少なくとも1個のフェノール性ヒドロキシル基を有するジアミンと分子内に鎖状ポリエーテルを有するジアミンを含むジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させて得られるガラス転移温度40℃以上100℃以下の熱可塑性ポリイミドと熱硬化性樹脂を必須成分として含む樹脂組成物から構成されることは、低温接着性と耐熱性の観点から好ましい態様である。
第三の発明は、前記のフィルム状接着剤を用いて製造される半導体パッケージである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフィルム状接着剤は、半導体パッケージ内で好適に用いることができるダイボンドフィルムとしての機能を有し、低温接着性に優れ、また基板表面凹凸に対する埋め込み性に優れる。更に、当該パッケージ組立工程内でダイシングテープとしての機能を併せ持たせることにより、工程の簡略化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のフィルム状接着剤は、半導体パッケージ内でダイボンドフィルムとして機能する接着剤層(C)及び粘着剤層(D)又は接着剤層(C‘)を含む。好ましい構成は、ダイシングテープとして機能する支持基材(A)及び粘着剤層(B)と、半導体パッケージ内でダイボンドフィルムとして機能する接着剤層(C’)がこの順に積層した構成である。より好ましい構成は、ダイシングテープとして機能する支持基材(A)及び粘着剤層(B)と、半導体パッケージ内でダイボンドフィルムとして機能する接着剤層(C)及び粘着剤層(D)がこの順に積層した構成である。
【0013】
ダイシングテープとして機能する支持基材(A)及び粘着剤層(B)の材質は特に限定されず、ダイシング時に不具合が生じず、ピックアップ時に容易に剥離できるものであれば、UV式、非UV式(感圧式)いずれでも良い。支持基材(A)の25℃での引張弾性率は、ピックアップ時のエキスパンド性の観点から500MPa以下が好ましく、更に好ましくは400MPa以下である。
【0014】
支持基材(A)として具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等が例示できる。
粘着剤(B)として具体的には、ポリオレフィン系粘着剤、アクリル系粘着剤が例示できる。
市販品としては、UV式としては、例えば、電気化学工業株式会社製UHPシリーズや古河電気工業株式会社製UCシリーズ等が挙げられる。非UV式としては、例えば、三井化学株式会社製MPFシリーズ等が挙げられる。
基材(A)や粘着剤(B)の厚みは特に限定されず、基材(A)は50〜150μm程度、粘着剤層(B)は5〜20μm程度がハンドリングの観点で好ましい。
【0015】
半導体パッケージ内でダイボンドフィルムとして機能する接着剤層(C‘)、接着剤層(C)及び粘着剤層(D)の材質は特に限定されず、半導体パッケージ製造工程における250℃以上のリフロー工程で膨れや剥がれ等の不具合が生じなければ良い。
【0016】
接着剤層(C)及び接着剤層(C‘)は、熱可塑性ポリイミドを主成分として含み、ポリイミドのガラス転移温度は100℃以下が好ましく、更には40℃以上、80℃以下であることが低温接着性の観点から好ましい。
接着剤層(C)及び接着剤層(C‘)は、更に熱硬化性樹脂及びフィラーを含有していることが耐熱性の観点から好ましい。
【0017】
熱可塑性ポリイミドとしては、分子内に鎖状ポリエーテルを有するジアミンを含むジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリイミドであることが低温接着性の観点から好ましい。
【0018】
分子内に鎖状ポリエーテルを有するジアミンの具体例としては、例えばポリテトラメチレンオキシド−ジ−o−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−m−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−o−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−m−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエートである。
【0019】
分子内に鎖状ポリエーテルを有するジアミンの全ジアミン成分に含まれる量は10モル%以上90モル%以下が好ましい。10モル%未満であるとガラス転移温度が高くなり好ましくなく、また、90モル%を超えるとガラス転移温度が低下しすぎ好ましくない傾向がある。
また、接着性の観点から、ジアミン成分には、分子内に少なくとも1個のフェノール性ヒドロキシル基を有するジアミンを含むことがより好ましい。
フェノール性ヒドロキシル基を有するジアミンとしては、特に限定なく使用できるが、一般式(1)〜(3)で表されるジアミンが好ましい。
【0020】
【化1】


(1)

【0021】
【化2】


(2)
【0022】
【化3】


(3)

(Zはそれぞれ独立に直結あるいは2価の有機基を表す。)
Zの2価の有機基としては、炭素数2〜27の、脂肪族基、脂環族基、単環式芳香族基、縮合多環式芳香族基、さらに芳香族基が直接または架橋員によって相互に連結された非縮合環式芳香族基等が挙げられる。
一般式(1)〜(3)で表されるジアミンの具体例としては、例えば、2,3−ジアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、2,6−ジアミノフェノール、3,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,6−ジアミノフェノール、4,5−ジアミノフェノール、4,6−ジアミノフェノール、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル]プロパン等が挙げられる。
【0023】
フェノール性ヒドロキシル基を有するジアミンは全ジアミン成分中に0.1〜10モル%であることが好ましく、更に好ましくは1〜5モル%である。0.1モル%未満では耐熱性能が充分に得られず、10モル%を超えると低温接着性能を低下させる傾向にある。
【0024】
本発明で使用できる分子内に鎖状ポリエーテルを有するジアミンや分子内に少なくとも1個のフェノール性ヒドロキシル基を有するジアミン以外のその他のジアミンとしては、ポリイミドとした際のガラス転移温度が100℃以下であれば特に限定なく使用できる。例えば、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−o−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−m−アミノベンゾエート、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−o−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−m−アミノベンゾエート、ポリトリメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート等が挙げられる。
【0025】
また、同様に、本発明で使用できるテトラカルボン酸二無水物成分としては、ポリイミドとした際のガラス転移温度が100℃以下であれば特に限定なく使用できる。例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、エチレングリコールビストリメリート二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物、α,ω−ポリジメチルシロキサンテトラカルボン酸二無水物、α,ω−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ポリジメチルシロキサン二無水物等が挙げられる。
【0026】
ポリイミドの製造方法としては、公知方法を含め、ポリイミドを製造可能な方法が全て適用できる。中でも、有機溶媒中で反応を行うことが好ましい。この反応において用いられる溶媒として、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、クレゾール等が挙げられる。
【0027】
また、この反応における反応原料の溶媒中の濃度は、通常、2〜50重量%、好ましくは5〜40重量%であり、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分との反応モル比は、テトラカルボン酸成分/ジアミン成分で0.8〜1.2の範囲であることが好ましい。この範囲であれば、耐熱性が低下することがなく好ましい。
【0028】
ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸合成における反応温度は、通常、60℃以下、好ましくは50℃以下10℃以上である。反応圧力は特に限定されず、常圧で十分実施できる。また、反応時間は反応原料の種類、溶媒の種類および反応温度によって異なるが、通常0.5〜24時間で十分である。本発明に係るポリイミドは、このようにして得られたポリアミド酸を100〜400℃に加熱してイミド化するか、または無水酢酸等のイミド化剤を用いて化学イミド化することにより、ポリアミド酸に対応する繰り返し単位構造を有するポリイミドが得られる。
【0029】
また、130℃〜250℃で反応を行うことにより、ポリアミド酸の生成と熱イミド化反応が同時に進行し、本発明に係るポリイミドを得ることができる。すなわち、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物とを有機溶媒中に懸濁または溶解させ、130〜250℃の加熱下に反応を行い、ポリアミド酸の生成と脱水イミド化とを同時に行わせることにより、本発明に係るポリイミドを得ることができる。
【0030】
本発明のポリイミドの分子量に特に制限はなく、用途や加工方法に応じ、任意の分子量とすることができる。本発明のポリイミドは、用いるジアミン成分、テトラカルボン酸二無水物の量比を調節することにより、例えば、ポリイミドを0.5g/dlの濃度でN−メチル−2−ピロリドンに溶解した後、35℃で測定した対数粘度の値を、0.1〜3.0dl/gの任意の値とすることができる。
【0031】
本発明において、ポリイミドという表現は、100%イミド化したポリイミド以外に、その前駆体であるポリアミド酸が一部共存した樹脂も含んでいる。
また、上記反応で得られたポリイミド溶液はそのまま用いても良いが、該ポリイミド溶液を貧溶媒中に投入してポリイミドを再沈析出させても良い。
【0032】
熱硬化性樹脂及びフィラーの材質は特に限定されないが、接着剤層(C)又は接着剤層(C‘)を180℃の温度で1時間保持した際の貯蔵剪断弾性率が5.0×10Pa以下、更に好ましくは3.0×10Pa以下になるように材料を選定することが基板表面凹凸に対する埋め込み性の観点から好ましい。5.0×10Paを超えると埋め込み性が悪化し、耐熱性に劣る傾向がある。
熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFのグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ化合物等が挙げられる。
熱硬化性樹脂の配合量は、熱可塑性ポリイミド100重量部に対して、1〜200重量部、好ましくは1〜100重量部である。この範囲であれば、耐熱性が維持され、フィルム形成能に優れる。
【0033】
また、必要に応じて、硬化剤を配合しても良い。硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられる。樹脂組成物の保存安定性という観点から、好ましくは、熱潜在性及び長い可使時間を有するものが良い。
硬化剤の配合量は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、0〜20重量部の範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、樹脂溶液状態でゲルが生じにくく、樹脂溶液の保存安定性に優れる。
【0034】
また、必要に応じて、フィラーを配合しても良い。フィラーとしては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等の有機フィラー、アルミナ、窒化アルミ、シリカ等の無機フィラーが挙げられる。
フィラーの配合量は熱可塑性ポリイミド100重量部に対して0〜5000重量部、好ましくは0〜3000重量部の範囲内である。この範囲内であれば、樹脂溶液状態でフィラーが沈降し難く、樹脂溶液の保存安定性に優れる。一方、フィラーが多すぎると接着性が低下することがある。
【0035】
また、必要に応じて、カップリング剤を添加しても良い。カップリング剤は、本発明の目的を損なわなければ特に限定されないが、樹脂溶解溶剤への溶解性が良好なものが好ましい。例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等が挙げられる。
カップリング剤の配合量はポリイミド100重量部に対して0〜50重量部、好ましくは0〜30重量部の範囲内である。この範囲内であれば、耐熱性が低下することはない。
【0036】
接着剤層(C)及び接着剤層(C‘)の厚みは、基板表面凹凸に対する埋め込み性の観点から、5〜100μmが好ましい。5μm未満であると埋め込みが不十分となり、100μmを超えても埋め込みが向上するわけではない。
粘着剤層(B)と接着剤層(C)又は接着剤層(C‘)が接していることが好ましく、その間の180°ピール強度は0.1〜2.5N/25mmであることが好ましい。0.1N/25mm未満ではダイシング時にチップ飛び等の問題が発生し、2.5N/25mmを超えるとピックアップ時にピックアップできなかったりチップにクラックが入ったりする場合がある。
【0037】
粘着剤層(D)は、50℃での貯蔵剪断弾性率が1.0×106Pa以下であることが好ましく、より好ましくは1×105Pa以下である。1×106Paを超えると低温接着が困難になる傾向がある。
粘着剤層(D)を介してフィルム状接着剤をシリコンウェハに貼り付けることにより、より低温で貼り付けることができ、100μm以下といった薄いウェハに貼り付ける際にはウェハ反りを低減することができる。
粘着剤層(D)の具体例としてはシリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤等が挙げられる。
粘着剤層(D)の厚みは、シリコンウェハへの密着性と耐熱性の観点から、1〜10μmが好ましい。1μm未満であると密着力が得られず、10μmを超えると耐熱性が悪くなる傾向がある。
【0038】
本発明に係るフィルム状接着剤を製造する方法は特に限定されないが、例えばポリイミド樹脂を主成分として含む溶液をPET等の支持フィルム上に塗布・乾燥し、接着剤層(C)を形成した後、その上に更に粘着剤溶液を塗布・乾燥し粘着剤層(D)を形成する。これを予め押出成形等で用意した基材(A)及び粘着剤層(B)からなるテープを粘着剤層(B)と接着剤層(C)が接するようにラミネートするといった方法が挙げられる。
【0039】
必要に応じて、ダイボンドフィルム部分(接着剤層C+粘着剤層D又は接着剤層C‘)やダイシングテープ部分(基材A+粘着剤層B)は予め円周カットされる。
本発明に係る半導体パッケージを製造する方法は特に限定されないが、例えば、次のように製造されるのが一般的である。1)大口径のウェーハ裏面にフィルム状接着剤を粘着剤層(D)を介して貼り付け、2)ダイシングし、チップを個片化し、3)個片化されたチップを粘着剤層(B)と接着剤層(C)との間でピックアップし、4)接着剤層(C)を介して被着体である基板にダイボンドし、5)チップ/基板間をワイヤボンドし、6)封止剤でモールドする。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を、実施例によりさら詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の各物性値は以下の方法により測定した。
【0041】
(貯蔵剪断弾性率の測定方法)
測定装置:レオメトリックス社製、ARES
測定モード:温度分散(ひずみ制御)、ねじりモード
測定温度範囲:30〜200℃(5℃/分)、窒素雰囲気下
周波数:1Hz
(貯蔵剪断弾性率時間分解の測定方法)
測定装置:レオメトリックス社製、ARES
測定モード:時間分散(ひずみ制御)、ねじりモード
測定温度範囲:180℃、5時間、窒素雰囲気下
周波数:1Hz
【0042】
(引張弾性率の測定方法)
測定装置:東洋精機社製、ストログラフM−1
測定モード:引張りモード
【0043】
(ピール強度の測定方法)
測定装置:東洋精機社製、ストログラフM−1
測定モード:180°ピール
【0044】
(合成例1)
攪拌機、窒素導入管、温度計、メシチレンを満たしたディーンスターク管を備えた300mlの五つ口のセパラブルフラスコに、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート(イハラケミカル工業株式会社製、商品名:エラスマー1000、平均分子量1268)18.75g、オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物45.87g、N−メチル−2−ピロリドン100g、メシチレン45gを計り取り、窒素雰囲気下で溶解させ、そこにビスアミノプロピルテトラメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名:PAM−E)32.00gを少量ずつ添加した。その後、窒素導入管を溶液内に挿入し(バブリング状態にし)、系内の温度を170℃〜180℃に加熱し、水を共沸除去しながら12時間保持した。冷却後、メシチレン145gを加え希釈し、4,4’−ジミアノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル(和歌山精化工業株式会社製、商品名:HAB)0.93gを添加し、熱可塑性ポリイミドの溶液を得た。得られたポリイミドのガラス転移温度は56℃(引張弾性率測定におけるTanδのピーク温度)であった。
得られたポリイミド固形分100重量部に対して、エポキシ化合物(三井化学株式会社製、VG3101)20重量部、シリカ系フィラー(株式会社龍森製、1−FX)40重量部を配合し、攪拌機にて十分に混合し、樹脂組成物1を得た。
【0045】
(合成例2)
攪拌機、窒素導入管、温度計、メシチレンを満たしたディーンスターク管を備えた300mlの五つ口のセパラブルフラスコに、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン15.00g、シリコーンジアミン(α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、BY16−853U、平均分子量920)43.44g、N−メチル−2−ピロリドン110.61g、メシチレン47.40gを計り取り、窒素雰囲気下で50℃に加熱し溶解させ、そこにオキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物18.49g、エチレングリコールビストリメリート二無水物8.15gを少量ずつ添加した。その後、窒素導入管を溶液内に挿入し(バブリング状態にし)、系内の温度を170℃〜180℃に加熱し、突沸に注意しながら30時間保持し、水を共沸除去することで熱可塑性ポリイミド溶液を得た。得られたポリイミドのガラス転移温度は67℃(引張弾性率測定におけるTanδのピーク温度)であった。
得られたポリイミド固形分100重量部に対して、エポキシ化合物(三井化学株式会社製、VG3101L)20重量部、イミダゾール系硬化剤(四国化成工業株式会社、2MAOK−PW)1重量部、シリカ系フィラー(株式会社龍森製、1−FX)39重量部を配合し、攪拌機にて十分に混合し、樹脂組成物2を得た。
【0046】
(合成例3)
攪拌機、窒素導入管、温度計、メシチレンを満たしたディーンスターク管を備えた500mlの五つ口のセパラブルフラスコに、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート(イハラケミカル工業株式会社製、商品名:エラスマー1000、平均分子量1268)13.95g、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン28.00g、オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物34.12g、N−メチル−2−ピロリドン100g、メシチレン40gを計り取り、窒素雰囲気下で溶解させた後、窒素導入管を溶液内に挿入し(バブリング状態にし)、系内の温度を170℃〜180℃に加熱し、水を共沸除去しながら12時間保持した。冷却後、N−メチル−2−ピロリドン290gを加え希釈し、4,4’−ジミアノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル(和歌山精化工業株式会社製、商品名:HAB)0.70gを添加し、熱可塑性ポリイミドの溶液を得た。得られたポリイミドのガラス転移温度は157℃(引張弾性率測定におけるTanδのピーク温度)であった。
得られたポリイミド固形分100重量部に対して、エポキシ化合物(三井化学株式会社製、VG3101)5重量部を配合し、攪拌機にて十分に混合し、樹脂組成物3を得た。
【0047】
(実施例1)
樹脂組成物1を表面処理PETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、A54、厚さ50μm)上に塗布し、100℃で30分間加熱し、厚さ20μmの接着剤層(C)を得た。また、180℃の温度で1時間保持した際の貯蔵剪断弾性率は0.96×106Paであった。
この接着剤層(C)の上に更に、シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング株式会社製、SD4560)100重量部に白金触媒溶液(東レ・ダウコーニング株式会社製、NC−25)0.9重量部を加えた溶液を塗布し、100℃で5分間加熱し、厚さ5μmの粘着層(D)を形成した。なお、粘着剤層(D)の50℃での貯蔵剪断弾性率は5.7×10Paであった。
得られた接着剤層(C)+粘着剤層(D)からなるダイボンドフィルム部分を8インチウェーハに相当する大きさに打ち抜き、接着剤層(C)側に、支持基材(A)+粘着剤層(B)からなるダイシングテープ(三井化学株式会社製、非UV式、商品名MPF、厚さ100μm、支持基材(A)の引張弾性率400MPa)の粘着剤層(B)を介して60℃でラミネートし、本発明のフィルム状接着剤を得た。なお、粘着剤層(B)と接着剤層(C)との180°ピール強度は1N/25mmであった。
得られたフィルム状接着剤の粘着剤層(D)を介して室温でガラスウェーハとリングフレームに貼り付け、5mm角大にダイシングを行ったが、水浸入、チップ飛び、バリ等の問題は発生しなかった。また、その後、ピックアップ(粘着剤層(B)と接着剤層(C)との間で剥離)を行ったが、ピックアップミス等の問題は発生しなかった。
得られた5mm角ガラスチップ上の接着剤層(C)を介して20mm角のシリコン上に、100℃、10MPa、10秒間ダイマウント想定の加熱圧着した後、180℃、無荷重、3時間加熱硬化した。この試験片を260℃のオーブンに30分間放置させたが膨れや剥がれといった問題は見られず、耐熱性(埋め込み性)に優れていることがわかった。
【0048】
(実施例2)
実施例1中における粘着剤層(D)のシリコーン樹脂/白金触媒溶液の代わりに、アクリル樹脂(三井・デュポンポリケミカル製、ベーマック)100重量部、エポキシ化合物(三井化学株式会社製、VG3101)20重量部、硬化触媒(四国化成製、2maok−PW)1重量部からなる配合物を使用した以外は実施例1と同様の方法で試験片を作製し、評価を行った。
評価結果を表1に示す。
【0049】
(実施例3)
実施例1中における樹脂組成物1の代わりに樹脂組成物2を使用した以外は実施例1と同様の方法で試験片を作製し評価を行った。
評価結果を表1に示す。
【0050】
(実施例4)
実施例1中における粘着剤層(D)のシリコーン樹脂/白金触媒溶液の代わりに、樹脂組成物1を使用した以外は実施例1と同様の方法で試験片を作製し評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0051】
(比較例1)
実施例1中における樹脂組成物1の代わりに樹脂組成物3を使用した以外は実施例1と同様の方法で試験片を作製し評価を行った。
評価結果を表1に示す。
【0052】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のフィルム状接着剤は、半導体パッケージ内で好適に用いることができるダイボンドフィルムおよびダイボンドフィルムと当該パッケージ組立工程内でダイシングテープとして使用でき、低温接着性、基板の凹凸への埋め込み性に優れるので、産業上の利用価値は高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が100℃以下の熱可塑性ポリイミドを主成分として含む接着剤層(C)及び50℃での貯蔵剪断弾性率が1×106Pa以下の粘着剤層(D)を含むことを特徴とするフィルム状接着剤。
【請求項2】
更に基材(A)及び粘着剤層(B)を含むことを特徴とする請求項1記載のフィルム状粘着剤。
【請求項3】
前記基材(A)が、25℃での引張弾性率が500MPa以下のフィルムであることを特徴とする請求項2記載のフィルム状粘着剤。
【請求項4】
前記粘着剤層(B)と前記接着剤層(C)との180°ピール強度が0.1〜2.5N/25mmであることを特徴とする請求項2または3に記載のフィルム状接着剤。
【請求項5】
前記接着剤層(C)が、熱可塑性ポリイミドの他に、熱硬化性樹脂及びフィラーを必須成分として含む樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1〜4何れかに記載のフィルム状接着剤。
【請求項6】
前記ポリイミドが、分子内に鎖状ポリエーテルを有するジアミンを含むジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させて得られるポリイミドであることを特徴とする請求項5記載のフィルム状接着剤。
【請求項7】
前記ポリイミドが、分子内に少なくとも1個のフェノール性ヒドロキシル基を有するジアミンと分子内に鎖状ポリエーテルを有するジアミンを含むジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させて得られるガラス転移温度40℃以上100℃以下のポリイミドであることを特徴とする請求項5記載のフィルム状接着剤。
【請求項8】
ガラス転移温度が100℃以下の熱可塑性ポリイミドを含み、かつ180℃の温度で1時間保持した際の貯蔵剪断弾性率が180℃の温度で5.0×10Pa以下である接着剤層(C’)を少なくとも1層有することを特徴とするフィルム状接着剤。
【請求項9】
前記の接着剤層(C’)が、分子内に鎖状ポリエーテルを有するジアミンを含むジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させて得られる熱可塑性ポリイミドと熱硬化性樹脂を必須成分として含む樹脂組成物からなることを特徴とする請求項8に記載のフィルム状接着剤。
【請求項10】
前記の接着剤層(C’)が、分子内に少なくとも1個のフェノール性ヒドロキシル基を有するジアミンと分子内に鎖状ポリエーテルを有するジアミンを含むジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを反応させて得られるガラス転移温度40℃以上100℃以下の熱可塑性ポリイミドと熱硬化性樹脂を必須成分として含む樹脂組成物からなることを特徴とする請求項8に記載のフィルム状接着剤。
【請求項11】
請求項1〜10何れかに記載のフィルム状接着剤を用いて製造される半導体パッケージ。

【公開番号】特開2006−161038(P2006−161038A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327045(P2005−327045)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】