説明

フェノール樹脂発泡体積層板及びその製造方法

【課題】フェノール樹脂発泡時のしみ出しがなく、低目付量の面材を用いることによって、製品外観が良好で、製造時に製造設備表面の汚染もなく、低価格なフェノール樹脂発泡体積層板を提供する。
【解決手段】面材として、扁平率が2〜5の扁平糸からなり、目付け量が5g/m2〜60g/m2の織布または不織布を用いて、フェノール樹脂発泡体積層板を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の壁材や天井材、屋根等の各種建築用断熱材、冷蔵装置用等その他の建築用以外の断熱材として使用される発泡体積層板とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂発泡体積層板は、フェノールとホルマリンをアルカリ性触媒により縮合したレゾール型フェノール樹脂に界面活性剤、発泡剤、硬化酸触媒を混合し、常温、もしくは加熱して、面材に挟み込む形で発泡硬化せしめて製造される。フェノール樹脂発泡体積層板の面材としては、可撓性面材が好ましく、特に発泡板としての性能及び取り扱い易さの点からは、合成繊維織布或いは不織布を用いるのが好ましく、更に経済性の点からは合成繊維不織布が好んで使用されるが、合成繊維不織布を使用しても、フェノール樹脂発泡体積層板に占める面材の原材料コスト比率は大きいため、より低目付け量とした面材を使用することでコストダウンを図ることが求められていた。面材の材質としては、ポリエチレンテレフタレート、またはポリプロピレン等が使用されている。
【0003】
フェノール樹脂発泡体積層板における面材の役割は、フェノール樹脂の発泡硬化時に、発泡設備の成型ロール及びコンベア表面を汚すことなく生産可能とすること、及びフェノール樹脂発泡体積層板の製品として外観を良好にすることである。
【0004】
しかしながら、コストダウンのために低目付け量の面材を使用した場合には、製造時に面材からの樹脂組成物のしみ出しが起きやすくなり、製品表面に変色(赤色)痕が残り、製品品位上の外観不良をもたらすのみならず、樹脂が付着することで製造設備を汚してしまうという問題があった。これらの問題を解決する方法として、繊維径と目付け量とをそれぞれ限定した合成繊維不織布を面材として使用する技術が特許文献1において提案されているが、コストダウンを目的とした、更なる低目付け量化の技術が望まれてきた。
【0005】
【特許文献1】特許第3523196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、フェノール樹脂発泡体積層板の面材として、フェノール樹脂発泡時のしみ出しがなく、低目付け量の面材を用いることによって、製品外観が良好で、製造時に製造設備表面の汚染もなく、低価格なフェノール樹脂発泡体積層板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、扁平形状をなす繊維からなる織布または不織布を面材に使用することで課題を解決でき本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち本発明の第1は、フェノール樹脂発泡体を2枚の面材間に挟持してなるフェノール樹脂発泡体積層板であって、上記面材が、扁平率が2〜5の扁平糸からなり、目付け量が5g/m2〜60g/m2の織布または不織布であることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2は、フェノール樹脂、界面活性剤、発泡剤、触媒からなる発泡性樹脂組成物を走行する面材上に連続的に吐出し、その上面を面材で被覆した後、上記発泡性樹脂組成物を発泡硬化せしめるフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法であって、上記面材として、扁平率が2〜5の扁平糸からなり、目付け量が5g/m2〜60g/m2の織布または不織布を用いることを特徴とする。
【0010】
上記本発明のフェノール樹脂発泡体積層板及びその製造方法においては、前記織布または不織布はフラジール通気度が50ml/cm2・sec〜250ml/cm2・secであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、面材として扁平糸からなる織布または不織布を面材として使用することで、低目付け量でも、樹脂組成物のしみ出しが少なく、製造設備を汚さず、製品外観が良好なフェノール樹脂発泡体積層板を従来よりも安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明について手順を追って説明する。
【0013】
前記した特許文献2に開示された面材は、目付け量が15g/m2〜80g/m2の合繊繊維不織布であった。この不織布は、コストダウン化のため目付け量を低減させた場合、繊維間の間隙が大きくなるため、フラジール通気度が高くなり繊維間からの樹脂組成物のしみ出しが多くなり、用いることが困難であった。
【0014】
本発明では、面材として、扁平糸化された繊維を使用して製造された織布または不織布を使用することにより、従来よりも低目付け量でもフラジール通気度が低いことに着目し、本発明を完成した。
【0015】
即ち、本発明は、フェノール樹脂発泡体積層板製造時に、扁平率が2〜5の扁平糸からなる織布または不織布を用いることにより、目付け量を従来より低減しても、製造時に面材からの樹脂組成物のしみ出しを大幅に抑制でき、外観が良好なフェノール樹脂発泡体積層板を提供することができる。
【0016】
本発明において扁平率(繊維断面の異型度)の定義とは、扁平断面においては長軸と短軸の長さの比、即ちアスペクト比によって表され、長軸と短軸の直径の比D/dによって表される大きさを意味する。
【0017】
本発明に用いる織布または不織布を構成する繊維は扁平率が2〜5の扁平糸である。繊維の扁平率が2より小さいと、製造工程において、低目付け量では面材からの発泡性樹脂組成物のしみ出しが多くなるため、面材への印刷時にインクがにじんで印刷性が悪くなり、また扁平率が5より大きいと、面材とフェノール樹脂発泡体との接着性が低下してしまい好ましくない。
【0018】
また、面材の目付け量は、5g/m2〜60g/m2である。目付け量が5g/m2未満の場合には、面材からの発泡性樹脂組成物のしみ出しがひどく、製品外観不良及び製造設備表面の汚れが発生すると共に印刷性が悪くなる。また、目付け量が60g/m2より大きいと不経済である。より好ましくは、15g/m2〜45g/m2である。
【0019】
係る面材のフラジール通気度としては50ml/cm2・sec〜250ml/cm2・secが好ましい。尚、本発明において、フラジール通気度とは、JIS L 1096に準じてブラジール形試験機を用いて面材を通過する空気量を測定して算出した値である。
【0020】
本発明に用いるフェノール樹脂は、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物で合成したレゾール型フェノール樹脂である。本発明で使用するフェノール樹脂のフェノール類対アルデヒド類の出発モル比は、1:1〜1:4が好ましく、より好ましくは1:1.5〜1:2.0の範囲内である。フェノール樹脂は、水分量を調整することにより、適正な粘度にして使用される。この適正な粘度に調整されたフェノール樹脂に界面活性剤を混合後、発泡剤、硬化触媒を混合機に導入し、均一に攪拌混合して発泡性樹脂組成物を得る。そして発泡性樹脂組成物を成形金型に流し込む際に面材として、本発明に係る扁平糸を用いた織布または不織布をフェノール樹脂組成物の上下に併行して使用しながら、加熱、発泡、硬化させて、本発明のフェノール樹脂発泡体積層板を得る。
【0021】
本発明に用いる界面活性剤は、一般にフェノール樹脂発泡体積層板の製造に使用されるものを使用できるが、中でもノニオン系の界面活性剤が効果的である。例えば、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系界面活性剤、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体、アルキレンオキサイドとノニルフェノール、ドデシルフェノールのようなアルキルフェノールとの縮合物等が挙げられる。これら界面活性剤は、単独或いは複数のものを混合して使用される。
【0022】
本発明で用いる発泡剤は、熱伝導率の低い炭化水素系発泡剤が好ましく、具体的にはノルマルペンタン(沸点36.1℃)、イソペンタン(沸点27.8℃)、シクロペンタン(沸点49.3℃)が主に使用されるが、熱伝導率が少し大きいノルマルブタン(沸点−0.5℃)、イソブタン(沸点−11.7℃)等でも有効である。また炭化水素系発泡剤は単独、或いは二種以上を混合して使用してもよい。フェノール樹脂と発泡剤の混合割合は、目的とする発泡体の密度や熱伝導率、発泡条件、発泡倍率によって異なるが、フェノール樹脂に対し発泡剤を2〜15重量%程度が通常使用される。
【0023】
また硬化触媒は特に限定しないが、トルエンスルホン酸やキシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸などの芳香族スルホン酸類が挙げられ、これら一種類でも、二種類以上の組み合わせでもよい。また、これらの硬化触媒をジエチレングリコール、エチレングリコールなどの溶媒で希釈して用いることもできる。硬化触媒は、その種類及び、発泡条件により使用量は異なるが、フェノール樹脂に対し、5〜15重量%程度が通常使用される。
【0024】
フェノール樹脂と界面活性剤、発泡剤、及び触媒の混合方法は特に限定されず、ハンドミキサーや連続混合方式のピンミキサー等を利用してもよい。混合して得られた発泡性樹脂組成物を所定の成形型に流し込み、所定の温度条件で、発泡、硬化させてフェノール樹脂発泡体積層板を得る。加熱温度及び加熱時間は、フェノール樹脂の反応性や触媒量などによって異なるが、一般的な加熱温度は80℃前後で、加熱時間は60分〜120分程度であれば、完全に発泡し硬化が完了する。本方法で製造されたフェノール樹脂発泡体積層板は、面材として織布または不織布の扁平糸グレードを使用することで目付け量を低減してもフェノール樹脂発泡体積層板の外観を良好にでき、且つ製造設備を汚さない。
【実施例】
【0025】
本発明を実施例及び比較例によって更に詳細に説明する。
【0026】
[実施例1]
フェノール樹脂100gに、発泡剤としてノルマルペンタン(沸点36.1℃)6gを混合した物に、硬化酸触媒(パラトルエンスルホン酸一水和物60重量%とジエチレングリコール40重量%の混合物)8gを入れ均一に混合して発泡性樹脂組成物とする。30cm×30cm×3cmサイズの型枠に、面材として、旭化成せんい(株)製、エルタス扁平糸グレード目付け量25g/m2であるEH5025を敷き、その上に上記発泡性樹脂組成物を流し込み、更にその上に同じ面材を載せて金型の蓋をした。
【0027】
この型枠を80℃の加熱オーブンで2時間加熱し、フェノール樹脂を発泡させ、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0028】
金型の上蓋を外して、下面材と比較するとしみ出しの多い上面材上に樹脂組成物がしみ出した箇所をペンで囲んで印を付けた後、該フェノール樹脂発泡体積層板の30cm×30cmエリアをデジタルカメラで撮影し、色調補正後、ピクセルカウンターソフトにて樹脂組成物がしみ出した箇所の画素数と30cm×30cmエリア全体の画素数をそれぞれカウントし、下記計算式にて樹脂しみ出し面積比率を計算した。
【0029】
樹脂しみ出し面積比率(%)=(囲んだ部分の画素数/30cm×30cmエリア全体の画素数)×100
【0030】
上面材上に樹脂組成物がしみ出した箇所の面積比率測定結果を表1に示す。
【0031】
[実施例2]
面材として、エルタス扁平糸グレードEH5025に替えて、EH5045を用いることを除いては実施例1と同じ方法で、樹脂組成物がしみ出した部分の面積比率を測定した。
【0032】
上面材上に樹脂組成物がしみ出した箇所の面積比率測定結果を表1に示す。
【0033】
[比較例1]
面材として、エルタス扁平糸グレードEH5025に替えて、E5025を用いることを除いては実施例1と同じ方法で、樹脂組成物がしみ出した部分の面積比率を測定した。
【0034】
上面材上に樹脂組成物がしみ出した箇所の面積比率測定結果を表1に示す。
【0035】
表1において、各評価基準は以下の通りである。
【0036】
(製品外観)
○:樹脂組成物の面材上へのしみ出しは少なく、表面の汚れは目立たない。
△:樹脂組成物の面材上へのしみ出し部が若干有り、変色していることがわかる。
×:樹脂組成物の面材上へのしみ出し部が多く、変色が目立つ。
【0037】
(設備の汚れ)
○:樹脂組成物の付着がない。
△:樹脂組成物の付着が所々見られる。
×:樹脂組成物の付着がひどい。
【0038】
(印刷性)
○:美麗な印刷ができる。
△:若干にじみが有る。
×:にじみが目立つ。
【0039】
(総合評価)
○:良品である。
△:良品とするにはやや難あり。
×:不良品である。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のフェノール樹脂発泡体は、壁断熱材、屋根断熱材、室内の間仕切り断熱材、冷凍冷蔵庫用断熱材等として使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂発泡体を2枚の面材間に挟持してなるフェノール樹脂発泡体積層板であって、上記面材が、扁平率が2〜5の扁平糸からなり、目付け量が5g/m2〜60g/m2の織布または不織布であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項2】
前記織布または不織布はフラジール通気度が50ml/cm2・sec〜250ml/cm2・secであることを特徴とする請求項1記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項3】
フェノール樹脂、界面活性剤、発泡剤、触媒からなる発泡性樹脂組成物を走行する面材上に連続的に吐出し、その上面を面材で被覆した後、上記発泡性樹脂組成物を発泡硬化せしめるフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法であって、上記面材として、扁平率が2〜5の扁平糸からなり、目付け量が5g/m2〜60g/m2の織布または不織布を用いることを特徴とするフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
【請求項4】
前記織布または不織布はフラジール通気度が50ml/cm2・sec〜250ml/cm2・secであることを特徴とする請求項3記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。

【公開番号】特開2009−255332(P2009−255332A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105270(P2008−105270)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】