説明

フォトリソグラフィー方法

【課題】 加工深さが異なる複数の領域を一回の露光工程によりレジスト膜上に形成することを可能とするフォトリソグラフィー方法を提供すること。
【解決手段】 基板101上に下層レジスト102aと上層レジスト102bを順次積層させて塗布する。これらのレジストがポジ型の場合は、その露光感度は、上層レジスト102bが高く、下層レジスト102aが低くなるようにする。このように、互いに感度の異なる2つのフォトレジストを、下層レジスト102aとして相対的に低感度のレジストを、上層レジスト102bとして相対的に高感度のレジストを、順次積層させ、この2層レジストに露光光を照射させた後に現像を行うと、レジスト残膜率100%の領域(a’)、レジスト残膜率0〜100%の領域(b’)、およびレジスト残膜率0%の領域(c’)の何れの領域も、製造工程上その制御性に問題のない露光量範囲で得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィー方法に関し、より詳細には、LSIなどに代表される半導体、液晶、プリント基板などの微細なパターンを、簡便かつ低コストで、安定して形成することを可能とするフォトリソグラフィー技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやLSIなどに代表される半導体、液晶、プリント基板の製造をはじめとした種々の基板製造工程においては、基板上に所望の微細パターニングを施すための工程が必須のものとなっている。このような微細加工工程は主として、フォトリソグラフィー技術に基づくものであり、一般には、以下のような工程によりパターニングが実行される。
【0003】
先ず、基板(シリコンウエハ等の半導体基板やガラス基板、あるいはプリント基板等)のパターン形成面上に、感光性の有機高分子化合物をスピンコータにより塗布した後、これをホットプレート等の加熱手段で加熱して基板に塗布したレジスト膜中の溶剤を除去するためのプリベーク(PB)を施し、所定の回路等のパターンを形成したフォトマスクを介して紫外線や電子線やX線などを照射してレジスト膜に露光を行ってフォトマスクのパターンを転写する。そして、露光後のレジスト膜中での化学反応を促進させるためのポストエクスポージャーベーク(PEB)を施し、レジスト膜を現像して基板上にレジストパターンを形成する。なお、上記の現像工程では、用いるレジストがポジ型の場合には露光により感光したレジスト部分が溶解(除去)される一方、ネガ型レジストを用いた場合にはレジストの未感光部分が溶解(除去)される。
【0004】
このようなパターニングが施された基板に、薬剤を用いたエッチングやRIE(反応性イオンエッチング)を行うと、レジストが設けられていない領域の下地のみがエッチングされることになる。また、レジストパタ−ンが形成された基板に不純物元素の熱拡散やイオン注入を施すことにより、レジストが設けられていない領域の下地領域にのみ、不純物を局所的にドーピングすることができる。さらに、パターニングされたレジスト膜を有する基板面上に、CVDやスパッタリング等の手法により所定の成膜を行うと、上述した現像工程でレジストが除去されなかった領域には当該レジスト上に成膜され、一方、レジストが除去された領域では下地(基板)上に成膜されることとなる。そして、一連の所定の処理が終了すると、基板上のレジストは化学的処理などによって除去(剥離)される。なお、レジスト残存部分に成膜された膜は、レジスト剥離時にレジストと一緒に除去されることとなる。
【0005】
一般的な基板製造工程においては、上述したような、レジスト塗布後に各種処理を施して所定の工程が終了した後にレジスト除去するといった一連のプロセスは、1回にとどまらず複数回が必要とされる。例えば、半導体製造工程においては上述のレジスト塗布からレジスト剥離操作を20回程度、液晶製造工程においては5回程度実行するのが一般的である。そして、このような単一のレジスト塗布からレジスト剥離プロセスは、概ね10程度の細かなサブ・プロセスを含んでいる。つまり、半導体製造工程においては概ね200程度のサブ・プロセス、液晶製造工程においては概ね50程度のサブ・プロセスが、レジスト塗布からレジスト剥離プロセスとして必要とされることとなる。
【0006】
したがって、基板製造工程に必要とされるレジスト塗布からレジスト剥離プロセスの頻度を低減させることにより、製造工程全体としての大きな省プロセス化を可能とし、そのプロセスの簡便化と基板製造に要する時間の短縮化および低コスト化が図れることに加え、パターンの形成プロセスの安定化にも繋がることとなる。
【特許文献1】特開平2−29955号公報
【特許文献2】特開平8−203131号公報
【非特許文献1】平岡俊郎、堀田康之、真竹茂「ナノ多孔質体と選択的めっき技術を組み合わせた新しい高密度配線技術」東芝レビュー第57巻4号(2002年)31−34頁。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下では、従来のレジスト塗布からレジスト剥離プロセスに関連するエッチング工程における問題点について説明する。
【0008】
図1は、下地である基板の主面に、2段階の段差を形成する際の従来方法を説明するための概念図である。先ず、例えばシリコンウエハなどの基板11上にポジ型レジスト12を塗布し(図1(a))、これに所定の領域に開口部13aを有するフォトマスク13を用いて露光を施す(図1(b))。ここで、フォトマスク13の開口部13aはレジスト12を感光させるに充分な光量の光を透過する一方、非開口部は露光光を充分に遮蔽する。したがって、フォトマスク13の開口部13a直下のレジスト12は後の現像により完全に除去されてレジスト残存率は0%となる一方、非開口部により遮蔽されているレジストの残存率は100%となる。このような露光の後、レジスト12を現像して露光により感光したレジスト領域を除去し(図1(c))、その後、このレジスト除去によって局所的に暴露された基板表面をエッチングして第1の段差11aを形成する(図1(d))。
【0009】
次に、第1の段差11aに対して所定の領域にフォトマスク13の開口部13aが投影されるようにフォトマスク13をアライメントして2回目の露光を実行し、図1(b)の工程で未露光のまま残存しているレジスト12を感光させる(図1(e))。そして、レジスト12を現像して、2回目の露光により感光したレジスト領域を除去(図1(f))した後、このレジスト除去によって局所的に暴露された基板表面と図1(d)で示したエッチングにより形成された第1の段差11aの表面とをエッチングして、第2の段差11bを形成する(図1(g))。なお、この2回目のエッチングにより、第1の段差11aも同時にエッチングされるため、結果として、相互に深さが異なる第1および第2の段差(11aおよび11b)が得られることとなる。そして、最後に、残存しているレジスト12を全て剥離して、2段階の段差を有する基板面が得られる(図1(h))。
【0010】
このように、従来の手法によれば、基板面に2段階の段差を形成するには、「レジストへの露光、現像、基板面のエッチング、およびレジスト剥離(但し、これは最終工程のみ)」の一連の工程を2回繰り返す必要がある。このことは、基板に形成するパターンが複雑化すればするほど必要とされる工程が増えることを意味しており、基板製造に要する時間とコストが増大してしまうという問題を生じる。また、これと同様の問題は、基板製造に伴う成膜工程や拡散・イオン注入工程についても生じることとなるため、問題はさらに深刻となる。
【0011】
このような煩雑な従来の一連の工程は、単に、基板製造に要する時間とコストの増大という問題にとどまらず、安定した基板製造が阻害されて製品の歩留まりが低下するという問題も生じさせる。
【0012】
図2は、携帯電話などの集積回路製造工程などで必要となる配線の形成プロセスの一例を説明するための概念図である。この工程では、先ず、レジスト12の膜の所定の位置に、垂直方向の回路をつくるためのビアホール14と呼ばれる穴をフォトリソグラフィー工程(すなわち、レジスト塗布、プリベーク、露光、および現像の一連の工程)により形成し(図2(a))、このビアホール14の内部に銅15を充填する(図2(b))。なお、ここで使用されるレジストは永久性感光樹脂であり、パターンニング後も永久的に残るレジストである。そして、2回目のフォトリソグラフィー工程によりレジスト12の上層部のみに浅い溝を形成してこれを配線形成部分とした後、この配線形成部分に銅を充填することによりビアホール14内に充填された銅15と配線部分16とを接続して配線として完成させる(図2(c))。携帯電話などの高機能化に伴ってそれらのデバイスも高集積化することとなるが、回路の集積度を高めるために必要となるビアホールの微細化はフォトリソグラフィー技術の進歩により可能とされたものである。
【0013】
このようなデバイスが正常に動作するためには、ビアホール内に充填された銅と配線とを正確かつ確実に接続させる必要があるが、デバイスの高集積化に伴ってビアホールのサイズが小さくなると、ビアホール形成後に行われる配線形成時でのフォトマスクの位置合わせの僅かなズレに起因して、最終的にビアホール形成位置と配線形成位置とが本来の位置からズレてしまい、ビアホール内に充填された銅と配線とを確実に接続させることが困難となるという問題が生じる。つまり、従来の煩雑な一連の工程は、安定した基板製造の阻害要因となるといった問題があった。そして、このような「位置ズレ」問題は、形成されるべきビアホールが微細化すればするほど顕著となる。
【0014】
このような問題に鑑みて、いわゆる「ハーフトーンマスク」が用いられるようになった。フォトリソグラフィー工程においてポジ型レジストを用いた場合、通常のフォトマスクを用いると、露光光が透過せず現像後のレジスト残膜率が100%となる領域と露光光が実質的に全て透過して現像後のレジスト残膜率が0%となる領域の2つの領域が形成される。これに対して、例えば非特許文献1に記載されているようなハーフトーンマスクを用いて露光を行うと、上記の2つの領域に加えて、レジスト残膜率が100%と0%の中間(例えば数10%程度)の領域を形成することが可能となる。
【0015】
図3は、下地である基板の主面に2段階の段差を形成する際に、ハーフトーンマスクを用いた場合の工程を説明するための概念図である。先ず、例えばシリコンウエハなどの基板11上にポジ型レジスト12を塗布し(図3(a))、これに所定の領域に開口部103aおよび露光光の透過量が所定の値となるように調整されたハーフトーン領域103bを有するフォトマスク103を用いて露光する(図3(b))。ここで、フォトマスク103の開口部103aはレジスト12を感光させるに充分な光量の光を透過させ、ハーフトーン領域103bはレジスト残膜率が所定の値(例えば数10%程度)となる光量の光を透過させる。そして、フォトマスク103の開口部103aでもハーフトーン領域103bでもない領域は、露光光を充分に遮蔽してレジスト残膜率は100%となる。このような露光の後、レジスト12を現像して露光により感光したレジスト領域を除去し(図3(c))、その後、このレジスト除去によって局所的に暴露された基板表面をエッチングして第1の段差101aを形成する(図3(d))。
【0016】
なお、通常のプロセスでは、上述の第1の段差101aの形成の後に、レジスト12を溶解する溶剤を用いて、ハーフトーン領域103bのレジストのみを剥離させておくのが一般的である。しかし、ハーフトーン領域103bに残存するレジストの膜厚が充分薄くなるように条件設定した場合には、このようなレジスト剥離をわざわざ実行しなくても、後の基板エッチング処理中に残存レジストがエッチング液に溶解して剥離されるため、レジスト剥離工程を1回省略することができる。
【0017】
次に、ハーフトーン領域103bに対応する基板表面と既にエッチングにより形成された第1の段差101aの表面とをさらにエッチングし、第2の段差101bを形成する(図3(e))。なお、このエッチングにより、第1の段差101aも同時にエッチングされるため、結果として、相互に深さが異なる第1および第2の段差(101aおよび101b)が得られる。そして、最後に、残存しているレジスト12を全て剥離して、2段階の段差を有する基板面が得られる(図3(f))。このように、ハーフトーンマスクを用いることとすれば、レジスト膜上に、レジスト残膜率が100%の領域(a)と0%の領域(c)およびその中間の残膜率を有する領域(b)の3つの領域を、一度のフォトリソ工程で形成することが可能となるのである。
【0018】
図4は、ハーフトーンマスクを用いた露光により上述の3つの残膜率領域を得るための、レジスト残膜率の露光量依存性を説明するための概念図で、横軸はレジストに照射される露光光の単位面積当たりの光量、縦軸はレジスト残膜率である。この図に示すように、露光量の増大とともにレジスト残膜率は低下する傾向を示すから、ハーフトーンマスクを得るためには、その基体としてレジスト残膜率が(概ね)100%の領域(a)となるものを予め選択し、この基体の所定の領域に残膜率が(概ね)0%の領域(c)を得るための開口部を形成するとともに、レジスト残膜率が0〜100%の範囲の所定値となる領域(b)を得るためのハーフトーン領域を形成する。
【0019】
図5は、ハーフトーンマスクを用いて、ビアホールおよび配線領域を一回の露光工程で同時形成する際の工程を説明するための概念図で、永久性感光樹脂のポジ型レジスト(パターンニング後も永久的に残るレジスト)12に所定のパターニングが施されたハーフトーンマスク103を介して露光を施すと、開口部103aに対応するレジスト領域はその厚み方向に完全に感光し、ハーフトーン領域103bに対応するレジスト領域は表面からの所定の厚み領域のみが感光する(図5(a))。したがって、露光後のレジスト12を現像すると、レジスト膜を貫通するビアホール14と、レジスト膜の表面領域の所定の深さで形成された配線(形成)領域16とが得られる(図5(b))。そして、これらのビアホール14および配線(形成)領域16に銅15を充填すると、ビアホール14内に充填された銅15と配線部分16とが接続されて配線が完成することとなる(図5(c))。
【0020】
このように、携帯電話などの集積回路の製造工程でハーフトーンマスクを用いることとするとレジスト残膜率0%のフォトマスク領域は露光光を全透過させてレジストを厚み方向に完全に感光させるために現像後にビアホールが形成され、レジスト残膜率数10%のハーフトーン領域はレジスト膜の表面領域のみを感光させて現像後には配線領域が得られることとなる。これにより、ビアホールと配線の位置ズレがなく微細なビアホールが形成可能となる。
【0021】
しかしながら、このようなハーフトーンマスクを用いた露光にも以下のような問題がある。既に図4を用いて説明したように、ハーフトーンマスクを用いることとすると、レジスト残膜率が100%の領域(a)、レジスト残膜率が0%より高く100%未満の範囲の所定値となる領域(b)、およびレジスト残膜率が0%の領域(c)が一回の露光で形成することが可能となるが、図4に示したように、レジスト残膜率が0%より高く100%未満の範囲の所定値となる領域(b)を形成可能な露光量(すなわち、当該領域に対応するレジスト感度曲線の露光量)は急激に変化しており、露光量の僅かな変動によってレジスト残膜率が大幅に変動してしまう。このため、レジスト膜に安定して所定の露光厚みを有する領域を形成することが極めて困難であるという問題を生じる。
【0022】
図6は、このような問題の具体例を説明するための概念図で、図6(a)はハーフトーン領域での露光量が過少な場合、図6(b)はハーフトーン領域での露光量が過大な場合の図である。これらの図に示したように、ハーフトーン領域での露光量が少ないと、残存レジスト厚が厚くなり基板のエッチングができずに銅配線が全く形成されない結果となったり(図6(a))、逆に、ハーフトーン領域での露光量が多いと残存レジスト厚みが薄くなり、極端な場合には残存するレジストがなくなって、本来得られるべき2つの段差が得られずに(図6(b))、銅配線が下方まで形成されてしまう。つまり、図4で示したハーフトーン領域(b)を利用して配線領域を形成しようとすると、僅かな露光量のズレによりレジストの残存膜厚が変化してしまう結果、銅配線が全く形成されない結果となってしまったり、逆に、銅配線が下方まで形成されてしまうことにより配線不良が生じてしまうということが生じ得る。
【0023】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、一回の露光工程により、加工深さが異なる複数の領域をレジスト膜上ひいては基板上に形成することを可能とするフォトリソグラフィー方法を提供すること、および、かかるフォトリソグラフィー方法により、ICやLSI等に代表される半導体基板、液晶基板、プリント基板などの製造に必須な形成工程の、簡便化・低コスト化を図り、かつ、確実なパターニングを実現する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、このような課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、フォトリソグラフィー方法であって、基体の面上に、第1のフォトレジスト層(下層)と第2のフォトレジスト層(上層)とを順次積層させて複層レジストを形成する第1のステップと、前記複層レジストに露光を施した後に現像処理する第2のステップとを備え、前記第1のフォトレジスト層と第2のフォトレジスト層は、露光光に対する感度(露光感度)が互いに異なるように材料選択されており、前記基体面上に、前記下層および上層の2層のフォトレジストが残存する第1の領域と、前記下層のフォトレジストのみが残存する第2の領域と、前記下層および上層の何れのフォトレジストもが残存しない第3の領域とを形成することを特徴とする。
【0025】
請求項2に記載の発明は、フォトリソグラフィー方法であって、基体の面上に、第1のフォトレジスト層(下層)と第2のフォトレジスト層(上層)とを順次積層させて複層レジストを形成する第1のステップと、前記複層レジストにハーフトーンマスクを介して露光を施した後に現像処理する第2のステップとを備え、前記第1のフォトレジスト層と第2のフォトレジスト層は、露光光に対する感度(露光感度)が互いに異なるように材料選択されており、前記基体面上に、前記下層および上層の2層のフォトレジストが残存する第1の領域と、前記下層のフォトレジストのみが残存する第2の領域と、前記下層および上層の何れのフォトレジストもが残存しない第3の領域とを、前記第2のステップにおける各々一回の露光および現像処理により形成することを特徴とする。
【0026】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記第1のフォトレジスト層と第2のフォトレジスト層は何れも、ポジ型のフォトレジストであることを特徴とする。
【0027】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記第2のフォトレジスト層の露光感度は、前記第1のフォトレジスト層の露光感度に比較して高くなるように材料選択されていることを特徴とする。
【0028】
請求項5に記載の発明は、請求項1または2に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記第1のフォトレジスト層と第2のフォトレジスト層は何れも、ネガ型のフォトレジストであることを特徴とする。
【0029】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記第2のフォトレジスト層の露光感度は、前記第1のフォトレジスト層の露光感度に比較して低くなるように材料選択されていることを特徴とする。
【0030】
請求項7に記載の発明は、請求項1または2に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記第1のフォトレジスト層はネガ型のフォトレジストであり、前記第2のフォトレジストはポジ型のフォトレジストであることを特徴とする。
【0031】
請求項8に記載の発明は、請求項1または2に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記第1のフォトレジスト層はポジ型のフォトレジストであり、前記第2のフォトレジストはネガ型のフォトレジストであることを特徴とする。
【0032】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8の何れか1項に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記第1のステップにおけるフォトレジストの積層は、前記第2のフォトレジスト層(上層)の膜厚が前記第1のフォトレジスト層(下層)の膜厚より厚くなるように実行されることを特徴とする。
【0033】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9の何れか1項に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記第2のステップにおける前記第1のフォトレジスト層と前記第2のフォトレジスト層のそれぞれの現像処理は、前記第1のフォトレジスト層および前記第2のフォトレジスト層をそれぞれ単独で現像処理する際の現像液濃度よりも低濃度の現像液を用いて実行されることを特徴とする。
【0034】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10の何れか1項に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記第1のステップは、前記第1および第2のフォトレジスト層の塗布後にそれぞれのプリベークを実行するサブステップを備え、前記第2のフォトレジスト層(上層)のプリベークは、前記第1のフォトレジスト層(下層)のプリベークよりも低温で実行されるものであること特徴とする。
【0035】
請求項12に記載の発明は、請求項1乃至11の何れか1項に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記第1のステップは、前記第1のフォトレジスト層と第2のフォトレジスト層との間に中間層を形成するサブステップを備え、前記中間層は、前記第1および第2のフォトレジスト層の何れにも溶解しない材料で形成されることを特徴とする。
【0036】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記中間層は、水溶性高分子を含有する水溶液を用いて形成されることを特徴とする。
【0037】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記水溶性高分子は、酸性を示す高分子であることを特徴とする。
【0038】
請求項15に記載の発明は、請求項13に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記水溶性高分子は、でんぷん、加工でんぷん、カゼイン、にかわ、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸ソーダ、ペクチンなどの天然高分子、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、および、ポリアクリル酸、の群から選択される少なくとも一種の高分子であることを特徴とする。
【0039】
請求項16に記載の発明は、請求項13乃至請求項15の何れか1項に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記水溶液は、前記水溶性高分子と酸との混合物を含有するものであることを特徴とする。
【0040】
請求項17に記載の発明は、請求項16に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記酸は、ギ酸(メタン酸)、酢酸(エタン酸)、プロピオン酸(プロパン酸)、酪酸(ブタン酸)、吉草酸(ペンタン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン)、カプリン酸(カン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、乳酸、クエン酸、アミノ酸、シュ酸、マロン酸、コハク酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ベンゼンスルフォン酸、ドデシルベンゼンスルフォン酸、および、フェノール、の群から選択される少なくとも一種の酸であることを特徴とする。
【0041】
請求項18に記載の発明は、請求項1乃至17の何れか一項に記載の方法により形成された前記第3の領域の前記基体表面にエッチングを施す第1のエッチング工程と、前記第2の領域の前記基体表面にエッチングを施す第2のエッチング工程と、を備えていることを特徴とする。
【0042】
請求項19に記載の発明は、請求項18に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記第2のエッチング工程は、前記第2の領域に残存する下層のフォトレジストを溶解可能なエッチング液を用いて実行され、前記第2の領域の基体表面のエッチングが当該第2の領域に残存する下層のフォトレジストの溶解に引き続いて進行することを特徴とする。
【0043】
請求項20に記載の発明は、請求項18に記載のフォトリソグラフィー方法において、前記第2のエッチング工程に先立ち、前記第2の領域に残存する下層のフォトレジストを除去して前記基体表面を暴露するレジスト剥離工程を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0044】
本発明は、露光光に対する感度(露光感度)が互いに異なるように材料選択された下層のレジストと上層のレジストとを順次積層させて複層のレジストを塗布形成することとしたので、下層および上層の2層のフォトレジストが残存する第1の領域と、下層のフォトレジストのみが残存する第2の領域と、下層および上層の何れのフォトレジストもが残存しない第3の領域とを、一回の露光・現像工程で形成することが可能となる。
【0045】
さらに、本発明では、上述の複層レジストを、何れもポジ型であるが互いに露光感度が異なるフォトレジストを2層積層させたり、これとは逆に、何れもネガ型で互いに露光感度が異なるフォトレジストを2層積層させたり、あるいは、一方がポジ型で他方がネガ型のフォトレジストを積層させたりといったバリエーションで形成することが可能であるので、プロセス適用の自由度が高く、例えば、ICやLSI等に代表される半導体基板、液晶基板、プリント基板などの製造に必須な形成工程の、簡便化・低コスト化を図り、かつ、確実なパターニングを実現する方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0047】
本発明のフォトリソグラフィー方法は、ハーフトーンマスクを用いて露光を行い基板上にパターニングを施すに際して、露光光に対する「感度」が互いに異なるフォトレジストを少なくとも2層積層させ、上述した3つの領域(すなわち、レジスト残膜率が100%の領域(a)、レジスト残膜率が0%より高く100%未満の範囲(以下ではこれを、「0〜100%範囲」と記す)の所定値となる領域(b)、およびレジスト残膜率が0%の領域(c))を一回の露光で形成する。ここで、フォトレジストの露光「感度」とは、ある露光量の光が照射された場合に得られるレジスト残膜率の指標となるものであり、フォトレジストの種類(ポジ型であるかネガ型であるか)までも含む概念である。
【0048】
つまり、何れもポジ型であるが互いに露光感度が異なるフォトレジストを2層積層させたり、これとは逆に、何れもネガ型で互いに露光感度が異なるフォトレジストを2層積層させたり、あるいは、一方がポジ型で他方がネガ型のフォトレジストを積層させたりといったバリエーションがあり得ることとなる。なお、フォトレジストとしては、本発明を実施するに際して悪影響を及ぼさない限度で、公知のものを用いることが可能である。
【0049】
図7は、何れもポジ型であるが互いに露光感度が異なるフォトレジストを2層積層させて、ハーフトーンマスクを用いた露光を行う場合のプロセスを説明するための概念図である。先ず、例えばシリコンウエハなどの基板101上に下層レジスト102aと上層レジスト102bを順次積層させて塗布する(図7(a))。ここで、下層レジスト102aと上層レジスト102bは何れも、ポジ型のフォトレジストであるが、その露光感度は、上層レジスト102bが高く、下層レジスト102aが低い。つまり、これらの2層のレジストは何れも、露光照射部が後の現像によって除去されるという同様の性質を有するが、上層と下層のレジスト間には露光感度に差異がある。
【0050】
なお、本明細書においてハーフトーンマスクとは、所望の領域の露光量を、(実質的に)100%(透過領域)、100%より小さく0%より大きい値(半透明領域)、(実質的に)0%(遮光領域)に調節することができるマスクを広く意味しており、このような露光量の調節には、材質の選択や膜厚の設定などの公知の手法を広く適用することができる。通常は、完全に光が遮光される部分はクロム膜やモリブデンシリサイド膜あるいは石英からなり、半透明部分はモリブデンシリサイド膜や石英からなるが、これらの材料に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0051】
図8は、このような2つのフォトレジストの感度曲線を説明するための図で、横軸はレジストに照射される露光光の単位面積当たりの光量、縦軸はそれぞれのフォトレジストの現像後の残膜率である。また、図9は、上記の2つのフォトレジストを積層させた「2層レジスト」の感度曲線を説明するための図で、横軸はレジストに照射される露光光の単位面積当たりの光量、縦軸はこの2層レジストの現像後の残膜率である。
【0052】
図8および図9に示されているように、互いに感度の異なる2つのフォトレジストを、下層レジスト102aとして相対的に低感度のレジストを、上層レジスト102bとして相対的に高感度のレジストを、順次積層させ(図10参照)、この2層レジストに露光光を照射させた後に現像を行うと、レジスト残膜率100%の領域(a’)、レジスト残膜率0〜100%の領域(b’)、およびレジスト残膜率0%の領域(c’)の何れの領域も、製造工程上その制御性に問題のない露光量範囲で得ることができる。なお、レジストの現像に用いる薬液としては、工程に悪影響を及ぼさない限度で、公知の現像液を幅広く用いることができる。
【0053】
つまり、単層レジストとした場合には、既に図4で示したように、上記3つの領域のうちのレジスト残膜率0〜100%の領域(b’)を得るための露光量範囲は極めて狭く、僅かな露光量のズレによって当該領域を形成することが困難となるのに対して、本発明のように、互いに感度の異なる2つのフォトレジストが積層された「2層レジスト」とすると、レジスト残膜率0〜100%の領域(b’)を得るための露光量範囲を格段に広げることができるようになる。その結果、露光量が設定値から僅かに変動したとしても、現像後のレジスト残膜の厚みの大幅な変動が解消されることとなり、一回の露光でフォトレジスト上に上述の3つの領域を確実に形成すること、および各々の領域のレジスト残膜の厚さを比較的簡単に制御することが可能となる。このことは、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングが施される種々の基板の製造工程のプロセス数を大幅に少なくすること、および形成されるパターンの精度を高めることを同時に可能とすることを意味している。
【0054】
具体的には、基板101上に設けられた上述の2層レジスト102に、所定の領域に開口部103aおよび露光光の透過量が所定の値となるように調整されたハーフトーン領域103bを有するフォトマスク103を用いて露光する(図7(b))。ここで、フォトマスク103の開口部103aは、レジスト102を感光させるに充分な光量の光を透過する。すなわち、フォトマスク103の開口部103aに対応した領域では、上層レジスト102bと下層レジスト102aの双方がその厚み方向に完全に感光し、現像によってレジスト102が完全に除去されることとなる。一方、ハーフトーン領域103bは上層レジスト102bをその厚み方向に完全に感光はさせるが下層レジスト102aは完全には感光せず、後の現像によって下層レジスト102aが基板101面上に残存することとなる光量の露光光を透過させる。
【0055】
つまり、2層レジストのそれぞれの層厚と露光感度ならびに当該2層レジストを感光させる際の露光量は、用いるハーフトーンマスクの露光光透過度を考慮して適切に設定され、これにより、上層レジスト102bを完全感光させる一方、下層レジスト102aを完全感光させずに残存させ、これにより、上記領域bの形成を確実に実行することを可能としている。
【0056】
そして、このような露光の後、レジスト102を現像して領域c’に基板101面を暴露させ(図7(c))、この局所的に暴露された基板表面をエッチングして第1の段差101aを形成する(図7(d))。なお、通常のプロセスでは、上述の第1の段差101aの形成の後に、レジスト102を溶解する溶剤を用いて、ハーフトーン領域103bのレジストのみを剥離させておくのが一般的であるが、ハーフトーン領域103bに残存するレジストの膜厚が充分薄くなるように条件設定した場合には、このようなレジスト剥離をわざわざ実行しなくても、後の基板エッチング処理中に残存レジストがエッチング液に溶解して剥離されるため、レジスト剥離工程を1回省略することができる。つまり、レジスト残膜率数10%の領域(b’)は、下層レジスト102aを予め充分薄く形成しておくこととすれば、後に実行される基板101のエッチングの進行と並行して、同じエッチング液で下層レジスト102aを除去することも可能となる。そして、下層レジスト102aが除去された後も更にエッチングを進行させることで第2の段差101bを形成し、2つの異なる段差(101aおよび101b)を基板上に形成することが可能となる。なお、第1の段差101aを形成した後にレジスト102を溶解する溶剤を用いて、ハーフトーン領域103bのレジストのみを剥離させておくようにしておいてもよいことはいうまでもない。
【0057】
次に、さらにエッチングを施して、ハーフトーン領域103bに対応する基板表面と既にエッチングにより形成された第1の段差101aの表面とをエッチングし、第2の段差101bを形成する(図7(e))。なお、このエッチングにより、第1の段差101aも同時にエッチングされるため、結果として、相互に深さが異なる第1および第2の段差(101aおよび101b)が得られる。そして、最後に、残存しているレジスト102を全て剥離して、2段階の段差を有する基板面が得られる(図7(f))。このように、本発明によれば、2層レジストの膜上に、レジスト残膜率が100%の領域(a’)とレジスト残膜率0%の領域(c’)およびその中間の残膜率を有する領域(b’)の3つの領域を、一回のフォトリソ工程で確実に形成することが可能となるのである。
【0058】
上記の例は、ポジ型レジストで2層レジストを形成したが、ネガ型レジストで2層レジストを形成するようにしてもよい。つまり、互いに感度の異なる2つのネガ型フォトレジストを、下層レジスト102aとして相対的に高感度のレジストを、上層レジスト102bとして相対的に低感度のレジストを、順次積層させる(図10参照)こととしても、上述したのと同様の理由により、レジスト残膜率100%の領域(a’)、レジスト残膜率0〜100%の領域(b’)、およびレジスト残膜率0%の領域(c’)の何れの領域も、製造工程上その制御性に問題のない露光量範囲で得ることができる。
【0059】
図11は、何れもネガ型レジストであるが互いに露光感度が異なるフォトレジストを2層積層させて、ハーフトーンマスクを用いた露光を行う場合のプロセスを説明するための概念図である。先ず、例えばシリコンウエハなどの基板101上に下層レジスト102aと上層レジスト102bを順次積層させて塗布する(図11(a))。ここで、下層レジスト102aと上層レジスト102bは何れも、ネガ型のフォトレジストであるが、その露光感度は、上層レジスト102bが低く、下層レジスト102aが高い。つまり、上述したポジ型レジストの場合とは相対的な露光感度の関係を上層と下層で逆に設定してある。
【0060】
図12は、このような2つのネガ型フォトレジストの感度曲線を説明するための図で、横軸はレジストに照射される露光光の単位面積当たりの光量、縦軸はそれぞれのフォトレジストの現像後の規格化残膜率である。また、図13は、上記の2つのネガ型フォトレジストを積層させた「2層レジスト」の感度曲線を説明するための図で、横軸はレジストに照射される露光光の単位面積当たりの光量、縦軸はこの2層レジストの現像後の規格化残膜率である。
【0061】
図12および図13に示されているように、互いに感度の異なる2つのネガ型フォトレジストを(下層レジスト102aとして相対的に高感度のレジストを、上層レジスト102bとして相対的に低感度のレジストを)、順次積層させた2層レジストに露光光を照射させた後に現像を行った場合にも、レジスト残膜率100%の領域(a’)、レジスト残膜率0〜100%の領域(b’)、およびレジスト残膜率0%の領域(c’)の何れの領域も、製造工程上その制御性に問題のない露光量範囲で得ることができる。
【0062】
具体的なプロセスとしては、基板101上に設けられた上述の2層レジスト102に、所定の領域に開口部103aおよび露光光の透過量が所定の値となるように調整されたハーフトーン領域103bを有するフォトマスク103を用いて露光する(図11(b))。なお、この場合のハーフトーンマスクの露光光透過率とフォトレジスト残膜率との関係は、ポジ型フォトレジストを用いた2層レジストの場合とは逆になることはいうまでもない。この露光後の現像(図11(c))、エッチング(図11(d)、図11(e))、およびレジスト剥離(図11(f))は、図7を用いて説明したものと同様であるので、繰り返しての説明は省略する。
【0063】
ここでも、レジスト残膜率数10%の領域(b’)は、下層レジスト102aを予め充分薄く形成しておくこととすれば、後に実行される基板101のエッチングの進行と並行して、同じエッチング液で下層レジスト102aを除去することも可能となる。そして、下層レジスト102aが除去された後も更にエッチングを進行させることで第2の段差101bを形成し、2つの異なる段差(101aおよび101b)を基板上に形成することが可能となる。なお、第1の段差101aを形成した後にレジスト102を溶解する溶剤を用いて、ハーフトーン領域103bのレジストのみを剥離させておくようにしておいてもよいことはいうまでもない。
【0064】
これまでの2例は何れも、ポジ型レジスト同士もしくはネガ型レジスト同士を積層させて2層レジストを形成しているが、一方をポジ型レジスト、他方をネガ型レジストとし、これらの2種のレジストを積層することで2層レジストを形成するようにしても、上述したのと同様の理由により、レジスト残膜率100%の領域(a’)、レジスト残膜率0〜100%の領域(b’)、およびレジスト残膜率0%の領域(c’)の何れの領域も、製造工程上その制御性に問題のない露光量範囲で得ることができる。なお、この場合には、下層レジスト102aにネガ型のフォトレジストを、上層レジスト102bにポジ型のフォトレジストを用い、この2層を順次積層させるか、これとは逆に、下層レジスト102aにポジ型のフォトレジストを、上層レジスト102bにネガ型のフォトレジストを用い、この2層を順次積層させる(図10参照)。
【0065】
図14は、ネガ型レジストとポジ型レジストを積層させた2層レジストに、ハーフトーンマスクを用いて露光を行う場合のプロセスを説明するための概念図である。先ず、例えばシリコンウエハなどの基板101上に下層レジスト102aと上層レジスト102bを順次積層させて塗布する(図14(a))。
【0066】
図15は、このようなネガ型およびポジ型のレジストのそれぞれの感度曲線を説明するための図で、横軸はレジストに照射される露光光の単位面積当たりの光量、縦軸はそれぞれのフォトレジストの現像後の規格化残膜率である。
【0067】
また、図16は、上記のネガ型およびポジ型のレジストを積層させた「2層レジスト」の感度曲線を説明するための図で、横軸はレジストに照射される露光光の単位面積当たりの光量、縦軸はこの2層レジストの現像後の規格化残膜率である。
【0068】
図15および図16、に示されているように、ネガ型とポジ型のフォトレジストを順次積層させた2層レジストに露光光を照射させた後に現像を行った場合にも、レジスト残膜率100%の領域(a’)、レジスト残膜率0〜100%の領域(b’)、およびレジスト残膜率0%の領域(c’)の何れの領域も、製造工程上その制御性に問題のない露光量範囲で得ることができる。
【0069】
具体的なプロセスとしては、基板101上に設けられた上述の2層レジスト102に、所定の領域に開口部103aおよび露光光の透過量が所定の値となるように調整されたハーフトーン領域103bを有するフォトマスク103を用いて露光する(図14(b))。
【0070】
なお、2層レジストの上層はポジ型レジストであり、下層はネガ型レジストであるから、ハーフトーンマスクの開口部103aを透過してレジスト102に照射される露光光は、上層レジスト102bと下層レジスト102aの双方をその厚み方向に完全に感光させるが、これを現像させた場合には、上層レジスト102bは完全に溶解される一方、下層レジスト102aは光硬化しており基板101面上に残存することとなる。また、ハーフトーン領域103bを透過してレジスト102に照射される露光光は、上層レジスト102bをその厚み方向に完全に感光させ、一方、下層レジスト102aは感光しないために光硬化しない。したがって、これを現像させた場合には、感光した上層レジスト102bと未硬化の下層レジスト102aが共に溶解されることとなり、基板101の表面が暴露されることとなる(図14(c))。
【0071】
これ以後の、エッチング(図14(d))、2回目のエッチング(図14(e))、およびレジスト剥離(図14(f))は、図7および図11を用いて説明したものと同様であるので、繰り返しての説明は省略する。なお、ここでも、レジスト残膜率数10%の領域(b’)は、下層レジスト102aを予め充分薄く形成しておくこととすれば、後に実行される基板101のエッチングの進行と並行して、同じエッチング液で下層レジスト102aを除去することも可能となる。そして、下層レジスト102aが除去された後も更にエッチングを進行させることで第2の段差101bを形成し、2つの異なる段差(101aおよび101b)を基板上に形成することが可能となる。なお、第1の段差101aを形成した後にレジスト102を溶解する溶剤を用いて、ハーフトーン領域103bのレジストのみを剥離させておくようにしておいてもよいことはいうまでもない。
【0072】
図7、図11、図14のいずれに図示した場合にも、2層レジストの現像工程後には、ハーフトーンマスクのレジスト残膜率100%の領域(a’)では下層レジスト102aと上層レジスト102bとが共に残存し、レジスト残膜率数10%の領域(b’)では下層レジスト102aのみが残り、レジスト残膜率0%の領域(c’)では上層レジスト102bと下層レジスト102aが共に現像液により溶解されて除去される。このため、この現像に続くエッチング工程では、レジスト残膜率0%の領域(c’)では基板101面のエッチングが直ちに開始されることとなり、一つ目の段差101aが基板101に形成される。
【0073】
また、このような2層レジストを用いたリソグラフ方法は、エッチングにより基板面を加工する工程に限らず、成膜工程やイオン注入工程などの他の工程にも適用可能であることはいうまでもない。
【0074】
ところで、特許文献1には、光ディスク製造方法として、互いに露光感度が異なる2層のレジストを積層させてパターン形成する方法が開示されている。この特許文献1に開示された方法は、レーザ光照射により露光される2層レジストの上層レジストおよび下層レジストの露光感度に差異を設けることで、レーザ露光強度に多少バラツキがあっても所定のパターンを安定して形成することが可能となるというものである。また、特許文献2にも、上層レジストと下層レジストとの間に中間層を設けた複数層レジストを用いて光ディスク製造用の原盤を作製する方法が記載されている。
【0075】
これらの特許文献に開示されている手法と本件発明とは、フォトレジストを複層化するという点では一致するものの、その目的および効果の点では全く異なる。すなわち、特許文献1に記載のものは、単層フォトレジストでは、当該フォトレジストの膜中に、所定の深さを有するドット状の穴部を形成するための露光が制御困難である点に鑑みてフォトレジストを2層化したに過ぎない。また、特許文献2に記載のものは、特許文献1に記載されたような手法を更に改良するものであって、誘電体膜などにより形成される中間層に反射防止効果をもたせたものである。
【0076】
これに対して、本発明のものは、例えばハーフトーンマスクを用いたフォトリソ工程において、深さの異なる少なくとも2つの段差領域を一回の露光工程で基板上に形成することを可能とするものであって、これにより基板製造工程のプロセス数を削減し、かつプロセスの簡便化を図るものである。
【0077】
以下に、実施例により、本発明をより具体的に説明する。なお、以下の実施例においてフォトレジスト塗布に用いたスピンコータおよび乾燥用のホットプレートはそれぞれ、(株)アクティブ製のSpincoater ACT-300AおよびAS ONE CORPRATION製のデジタルホットプレートCTHである。
【実施例1】
【0078】
本実施例は、ポジ型レジストを2層積層させたレジストに関するものである。本発明に適用可能なフォトレジストに特別な制限はないが、ここでは、下層レジストとしてAZ Electronic社製AZ MiR 703を、上層レジストとしてAZ Electronic社製AZ 6112を用いている。
【0079】
本発明において、下層レジストと上層レジストの露光感度の差をなるべく大きくとるために、下層レジストの露光感度を上層レジストの露光感度に比較して低くなるように設定する。これは、下層レジストの露光感度を低く設定(選択)することで、図8および図9で示される領域b’を得るための露光量の範囲を広げることが可能となるためである。また、上層レジストと下層レジストとの間のミキシング(下層レジストと上層レジストとが混ざり合う現象)を抑制するために、下層レジストを塗布した後に実行されるプリベークの温度は高く設定する必要がある。
【0080】
つまり、上層レジストおよび下層レジストの塗布工程において、それぞれのレジスト塗布後にプリベーク工程が設けられるが、上層レジストのプリベーク温度を下層レジストのプリベーク温度よりも低く設定することにより、上層レジストと下層レジストの露光感度差を大きくすることができ、下層レジストのみが残存する領域を安定して形成することが可能となる。
【0081】
ところで、一般に、プリベーク温度が高いほどフォトレジストの感度は低下する傾向がある。これは、プリベーク温度を高くすることでレジスト膜中の溶媒が蒸発しやすくなり、その結果、反応が生じにくくなるためである。そこで、先ず最初に、プリベーク温度と下層レジストの感度との関係を調べた。
【0082】
図17は、プリベーク温度ごとに得られた下層レジストの感度曲線を説明するための図である。なお、このデータは、以下の条件下で得られた。すなわち、レジスト塗布条件として、300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク(PB)条件として、90〜170℃まで20℃刻み/90sec、露光時間は、5sec〜60sec間5sec刻み、および60sec〜80sec間10sec刻み、そして、ポストエクスポージャーベーク(PEB)条件として110℃/60secとし、現像液としては、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38wt%水溶液(東京応化工業製、以下では「NMD-3」という)を用い、その現像時間は60secである。
【0083】
図17に示されているとおり、プリベーク温度が高くなるにつれてレジストの露光感度は低下する傾向を示し、例えば、170℃でプリベークした場合には露光後に現像を行っても残膜率がおよそ90%の一定値に止まり、所望のパターニングを施すことは困難な結果となっている。これは、170℃というような高温でプリベークすると、フォトレジスト膜中の溶媒がほとんど蒸発してしまい、その後にレジストのベース樹脂同士で架橋反応が生じることでレジストが固化してしまったためではないかと考えられる。本実施例では、このデータに基づいて、(i)下層レジストの露光感度が上層レジストの露光感度に比較して低くとれ、かつ、(ii)上層レジストと下層レジストとの間のミキシング現象を充分抑制するという条件を満足するため、露光感度が低く且つ架橋しないと考えられる150℃でプリベークを行うことにした。
【0084】
次に、プリベーク温度を150℃一定とし、プリベーク時間と下層レジスト(AZ Electronic社製AZ MiR 703)の感度との関係について調べた。なお、このデータは、以下の条件下で得られた。すなわち、レジスト塗布条件として300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク(PB)条件として150℃/90sec、120sec、または180sec、露光時間は10sec〜120sec間10sec刻み、そして、ポストエクスポージャーベーク(PEB)条件として110℃/60secとし、現像液としてはNMD-3を用い、その現像時間は60secである。
【0085】
図18は、こうして得られたプリベーク時間と下層レジストの露光感度依存性を説明するための図で、この図に示されているように、プリベーク時間が長くなるとともに露光感度は低下する。また、プリベークを180秒行うと、下層レジスト膜中の溶媒がなくなり架橋反応が起ってしまうために、レジストを露光・現像してもレジスト除去が困難となっている。ここで、下層レジストの露光感度を低くし、ミキシングを防ぐためには、120秒のプリベークが最適と思われる。しかし、上層レジストのプリベーク時にも必然的に下層レジストにベークが加わるために、上層レジストをプリベークしている間にも下層レジスト中の溶媒は飛ばされてしまう。上層に用いるレジストはその露光感度を高くするためにプリベーク温度を低く設定するが、それでも上層レジストのプリベーク時間と同じ時間だけのプリベークは下層レジストに加わらざるを得ない。これらのことを踏まえ、下層レジストのプリベーク時間として90秒を最適とし、以降の実施例での下層レジストのプリベーク条件を、温度150℃、時間90秒とした。
【0086】
下層レジストのプリベーク条件を上述にようにして決定した後、上層レジスト(AZ Electronic社製AZ 6112)のプリベーク条件を決定するための実験を行った。上層レジストはその露光感度が下層レジストと比べて高いことが重要となる。上層レジストの露光感度を高くすることで、下層レジストとの露光感度差が広がり、図8および図9に示した領域b'に対応する露光量範囲が広がるからである。従って、上層レジストのプリベークは、比較的低い温度で実行する必要がある。これは、一般に、プリベーク温度が低いほどレジストの露光感度は高くなるからである。そこで、上層レジストのプリベーク温度と露光感度との関係(感度曲線)を調べた。なお、この露光感度曲線を求めるための実験条件は、レジスト塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、PB:50〜110℃まで20℃刻み/60sec、露光時間:10sec〜40sec間5sec刻み、PEB:110℃/60sec、および現像:NMD-3/60sec、である。
【0087】
図19は、上層レジストのプリベーク温度と露光感度との関係(感度曲線)を調べた結果を説明するための図で、この図に示された結果によれば、下層レジストと同様に、上層レジストについてもプリベーク温度を高めると露光感度が低下するという傾向が認められる。なお、どのプリベーク温度条件についても、露光量の低い領域での大きな膜減りが認められはしたが、上層レジストは露光感度が高く設定されるべきことを最も重要視して、プリベークの温度を50℃、ベーク時間を60秒と設定することにした。
【0088】
これまで説明してきた実験結果に基づいて条件設定を行うこととし、図10に示したのと同様に、基板101面上に下層レジスト102aと上層レジスト102bを積層させて2層レジストを塗布してそのレジスト残膜率を評価した。なお、それぞれのレジストの塗布およびベーク条件は、下層レジスト(AZ MiR 703)については、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:150℃/90 secであり、上層レジスト(AZ 6112)については、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:50℃/60secである。そして、露光時間を10sec〜100sec間10sec刻み(露光強度は0.2mW/cm2)とし、現像はNMD-3で60sec実行した。
【0089】
図20は、上述の上層レジストおよび下層レジストならびにこれらを積層させて得られた2層レジストの露光感度曲線を示す図である。この図に示された2層レジストの露光感度曲線は、レジスト残膜率100%領域(<0.1mJ/cm2)、レジスト残膜率数十%領域(0.7〜8mJ/cm2)、およびレジスト残膜率0%領域(>18mJ/cm2)の形成が露光量の制御によって可能であることを示しており、特に、露光感度曲線において、レジスト残膜率数十%領域におけるレジスト残膜率の露光量依存性を概ね水平(露光量に実質的に依存しない)ようにすることが可能となっている。このような露光感度曲線によれば、露光量の僅かな変動によってレジスト残存膜厚が大幅に変動することがなくなり、安定してパターニングを施すことが可能となる。
【0090】
実際に、ハーフトーンマスクを用いてパターニングを実行したところ、レジスト残膜率100%領域(露光量:0mJ/cm2)では下層レジストおよび上層レジスト共に基板上に残存し、レジスト残膜率数十%領域ではハーフトーンマスクを用いた露光量(5mJ/cm2)の制御により下層レジストのみが残存し、レジスト残膜率0%領域(露光量:20mJ/cm2)では下層レジストおよび上層レジストが共に溶解・除去されることが確認できた。
【0091】
さらに、上述したのと同じ条件で2層レジストを基板上に形成し、この2層レジストの露光感度が現像液濃度にどのように依存するかを確認した。これは、下層レジスト(AZ MiR 703)と上層レジスト(AZ 6112)との露光感度差をより大きく設定することを目的とするもので、現像液濃度を薄くして上層と下層の両レジストの露光感度を何れも低くすることで、(大きな)露光感度差を設けるためである。この目的のために、先ず、下層レジストと上層レジストのそれぞれについて、別々に、現像液濃度を変えてそのレジストの露光感度がどのように変化するかを確認した。なお、ここで用いた現像液はTMAH2.38%水溶液(NMD-3)を水で希釈したものである。
【0092】
先ず、下層レジスト(AZ MiR 703)について、現像液濃度とレジスト露光感度との関係を調べるため、以下の条件で実験を行った。すなわち、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:150℃/90sec、露光時間:0sec〜200sec間5sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、PEB:なし、現像:TMAHの1.0、1.2、1.5、1.7、および2.0wt%の各水溶液(現像時間:/60sec)、である。
【0093】
同様に、上層レジスト(AZ 6112)について、現像液濃度とレジスト露光感度との関係を調べるため、以下の条件で実験を行った。すなわち、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:50℃/60sec、露光時間:0sec〜200sec間5sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、PEB:なし、現像:TMAHの1.0、1.2、1.5、1.7、および2.0wt%各水溶液(現像時間:60sec)、である。なお、これらの一連の実験で現像液としてTMAH1.2wt%水溶液を用いた場合について説明すると、下層レジスト(AZ MiR 703)は140sec(28mJ/cm2)で溶解した一方、上層レジスト(AZ 6112)は60sec(12mJ/cm2)で溶解した。
【0094】
次に、下層レジスト(AZ MiR 703)および上層レジスト(AZ 6112)を重ねて塗布して得られた2層レジストの露光感度について調べた。基板101として用いたシリコンウエハの表面を露光・現像の後で目視観察すると、露光時間80sec(16mJ/cm2)で上層レジストのみが溶解したと判断でき、150sec(30mJ/cm2)で下層レジストと上層レジストの両方ともが溶解したと判断された。これは、レジスト膜厚を接触式膜厚計(アルハ゛ック製Dektak3030)で測定することによっても確認することができた。
【0095】
さらに、上述の各現像液濃度(TMAHの1.0、1.2、1.5、1.7、および2.0wt%各水溶液)での各レジスト層の露光感度を調べた。その結果を表1に纏めてある。この結果により、現像液濃度を下げるにつれて何れのレジストについても露光感度が低下することが確認された。また、現像液濃度が1.5wt%の時に、両レジストの露光感度差が最も大きくなることが明らかとなった。そこで、この結果に基づいて、現像液濃度として1.5wt%TMAH水溶液を用いることが最適と判断した。
【0096】
【表1】

【実施例2】
【0097】
本実施例では、下層レジストとして、g線用レジスト(東京応化工業製OFPR800)を用いることとし、先ず、上層レジストと下層レジストのそれぞれの特性を別々に評価した。その条件は以下のとおりである。すなわち、下層レジスト(OFPR800)については、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:150℃/90sec、露光:露光時間0sec〜300sec間10sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、PEB:110℃/60sec、現像:XNMD-3(60sec)、であり、上層レジスト(AZ 6112)については、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:50℃/60sec、露光:露光時間0sec〜100sec間を5sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、現像:XNMD-3(60sec)、である。
【0098】
それぞれのレジストの溶解テストによると、下層レジスト(OFPR800)は、露光時間150sec(30mJ/cm2)で溶解し、上層レジスト(AZ 6112)は露光時間5sec(1mJ/cm2)で溶解することが確認できた。
【0099】
次に、実際に、図10示したように、基板101(シリコンウエハ)上に、下層レジスト102a、上層レジスト102bで2層レジストを形成した。この2層レジストに露光・現像を施した後のシリコンウエハを目視観察すると、露光時間35sec(7mJ/cm2)で上層レジスト102bのみが溶解したと判断でき、160sec(32mJ/cm2)で下層レジスト102aと上層レジスト102bの両方ともが溶解したと判断された。なお、このことは、レジスト膜厚を接触式膜厚計(Dektak3030)で測定することによっても確認することができた。
【実施例3】
【0100】
本実施例では、下層レジストとして、ポリイミド系レジスト(PI技術研究所製のQ-RP-N57KI)を用いて検討した。先ずは、上層レジストと下層レジストとを別々に特性評価した。その条件は以下のとおりである。すなわち、上層レジスト(AZ 6112)については、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:50℃/60sec、露光:露光時間0sec〜100sec間5sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、現像:NMD-3(60sec)であり、下層レジスト(Q-RP-N57KI)については、塗布:300RPM/3sec、5000RPM/20sec、プリベーク:150℃/120sec、露光:露光時間100、200、300、400sec(露光強度:0.2mW/cm2)、現像:NMD-3(60sec)である。
【0101】
現像液にTMAHの2.38wt%水溶液(NMD-3)を用いてレジスト溶解テストを行った結果、下層レジスト(Q-RP-N57KI)は露光時間300sec(60mJ/cm2)で溶解し、上層レジスト(AZ 6112)は5sec(1mJ/cm2)で溶解することが確認された。
【0102】
ポリイミド系レジストは、通常のノボラック系レジストに比較して反応が生じ難く、現像液に溶解し難いことから、所望のパターンを得るために要する露光量は多くなる。実際に、図10に図示したような2層レジストを形成してこれをハーフトーンマスクを用いて露光・現像してパターニングしたところ、レジスト残膜率100%領域では下層レジスト102aと上層レジスト102bが共に残り、レジスト残膜率数十%領域ではハーフトーンマスクを用いた露光量(5mJ/cm2)の制御により下層レジスト102aのみが残り、レジスト残膜率0%領域(露光量80mJ/cm2)では下層レジスト102aと上層レジスト102bが共に現像液により溶解されて除去された。
【0103】
本実施例では、下層レジスト102aと上層レジスト102bとの間に中間層102cを設け、この中間層102cにより、上層レジスト102bと下層レジスト102aとの間にミキシングが生じない工夫がなされている。
【0104】
図21は、中間層を設けた本発明の複層レジストの断面概略図である。ここで、中間層の材料として無機物を用いることとすると、その無機物を下層レジスト102a上に蒸着しなければならず、その作業を真空下で実行することとなり、作業が複雑になる。これに対して、中間層の材料として有機ポリマーを用いた場合は、スピンコート法などにより、簡便に膜形成が可能である。しかし、中間層に有機モノマーを用いることとすると、分子量が小さいために膜形成が極めて困難であり実用的ではない。そこで、実際には、中間層にポリビニルアルコール(Wako製PVA、数平均分子量:約88,000)を用いることとし、PVAの20、10、5、2、1、および0.5wt%水溶液を準備し、このPVA水溶液をシリコンウエハ上にスピンコータで塗布してその塗布性を評価したところ、極めて良好であることが確認できた。
【0105】
なお、上述の中間層を水溶性ポリマーを用いて形成することとすると、レジストは水には溶解しないため、上層と下層の両レジストのミキシングが抑制され、下層レジストのみが残存する領域を安定して形成することが可能となる。また、上記の水溶性ポリマーとして酸性のものを用いることとすると、一般的に使用される現像液であるアルカリ水溶液に中間層が溶解するため、下層レジストのみが残存する領域を安定して形成することが可能となる。
【0106】
図21に図示したように、基板101上に、下層レジスト102a、中間層102c、および上層レジスト102bを順次重ねて塗布して複層レジストを形成し、その特性を評価した。なお、それぞれの層の塗布・べーク条件は、下層レジスト(AZ MiR 703)について、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:150℃/90secであり、中間層(PVA水溶液)について、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20secであり、上層レジスト(AZ 6112)について、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:50℃/60secである。また、この複層レジストの露光および現像条件は、露光:露光時間10sec〜200sec間5sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、現像:NMD-3/60secである。
【0107】
現像後に基板101のシリコンウエハを目視観察すると、露光時間25sec(5mJ/cm2)で上層レジスト102bのみが溶解したと判断でき、100sec(20mJ/cm2)で下層レジスト102aも上層レジスト102bも両方とも溶解したことが確認できた。このことは、レジスト膜厚を接触式膜厚計(Dektak3030)で測定して確認することもできた。
【0108】
また、実験結果によると、PVA水溶液を塗布して中間層102cを設けた複層レジストの初期膜厚(全体膜厚)と、下層および上層の両レジストの厚みを単純に足した厚みとが、ほぼ同じであった。この事実は、下層レジストと上層レジストとの間でミキシングが生じていないことを意味しており、ミキシングの抑制にPVA水溶液を用いて形成した中間層を設けることが有効であると判断できる。
【0109】
上述したような中間層形成用の水溶性高分子としては、一連の工程に悪影響を及ぼさない限りにおいて、種々の水溶性高分子を広く用いることができる。具体的な例を挙げると、でんぷん、加工でんぷん、カゼイン、にかわ、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸ソーダ、ペクチンなどの天然高分子、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの合成高分子があげられる。
【0110】
形成用の水溶性高分子は、単独で用いることは勿論のこと、酸と混合したものを用いることも可能である。このような酸としては、工程に悪影響を及ぼさない公知の酸を広く用いることができ、具体的な例としては、ギ酸(メタン酸)、酢酸(エタン酸)、プロピオン酸(プロパン酸)、酪酸(ブタン酸)、吉草酸(ペンタン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン)、カプリン酸(カン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、乳酸、クエン酸、アミノ酸、シュ酸、マロン酸、コハク酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ベンゼンスルフォン酸、ドデシルベンゼンスルフォン酸、フェノール等があげられる。
【実施例4】
【0111】
本実施例においては、上述した中間層102cを、ポリビニルピロリドン(Wako製PVP)水溶液により形成した。なお、PVPの重量平均分子量は約360,000である。また、水溶液の濃度は10wt%とした。本実施例においても、複層レジストは、図21に図示したように、下層レジスト102a、中間層102c、上層レジスト102bを順次積層させて形成している。なお、これらの各層の塗布・べーク条件は、以下の通りである。すなわち、下層レジスト(AZ MiR 703)については、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:150℃/90sec、中間層(PVP10wt%水溶液)については、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、上層レジスト(AZ 6112)については、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:50℃/60secであり、複層レジストの露光および現像条件は、露光:露光時間10sec〜200sec間5sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、現像:NMD-3/60secである。
【0112】
露光・現像後の基板101であるシリコンウエハを目視観察すると、露光時間25sec(5mJ/cm2)で上層レジスト102bのみが溶解したと判断でき、100sec(20mJ/cm2)で下層レジスト102aと上層レジスト102bの両方ともが溶解したことが判断された。このことは、レジスト膜厚を接触式膜厚計(Dektak3030)で測定することによっても確認することができた。
【0113】
また、実験結果によると、PVP水溶液を塗布して中間層102cを設けた複層レジストの初期膜厚(全体膜厚)と、下層および上層の両レジストの厚みを単純に足した厚みとが、ほぼ同じであった。この事実は、下層レジストと上層レジストとの間でミキシングが生じていないことを意味しており、ミキシングの抑制にPVP水溶液を用いて形成した中間層を設けることが有効であると判断できる。
【実施例5】
【0114】
本実施例においては、上述した中間層102cを、アクアタール(AZ Electronic社製AZ AQUATAR)により形成した。最初に、下層レジスト(AZ MiR 703)102aに対するアクアタールの塗布性を評価した。なお、下層レジスト(AZ MiR 703)102aおよびアクアタールの塗布・プリベークの条件は、下層レジスト102aにつき、塗布:300RPM/3sec、2000RPM/20sec、プリベーク:150℃/90secであり、アクアタール(水溶液)につき、塗布:300RPM/3sec、2000RPM/20sec、プリベーク:70℃/60secである。この条件下で、アクアタールを、下層レジスト102a上に良好に塗布することができた。
【0115】
次に、実際に、下層レジスト(AZ MiR 703)102a、中間層(アクアタール)102c、および上層レジスト(AZ 6112)102bを順次重ねて塗布し、その複層レジストの露光感度について調べた。なお、この複層レジストの積層構造は、既に図21で示したものと同様であり、それぞれの層の形成条件は、下層レジスト(AZ MiR 703)102aにつき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:150℃/90secであり、中間層(アクアタール水溶液)102cにつき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20secであり、上層レジスト(AZ 6112)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:50℃/60secである。また、露光および現像条件は、露光:露光時間10sec〜200sec間5sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、現像:NMD-3/60secである。
【0116】
現像後に基板101であるシリコンウエハ表面を目視観察すると、露光時間25sec(5mJ/cm2)で上層レジスト102bのみが溶解したと判断でき、100sec(20mJ/cm2)で下層レジスト102aと上層レジスト102bの両方が溶解したと判断された。なお、このことは、レジスト膜厚を接触式膜厚計(Dektak3030)で測定することによっても、確認することができた。
【0117】
また、実験結果によると、アクアタールを塗布して中間層102cを設けた複層レジストの初期膜厚(全体膜厚)と、下層および上層の両レジストの厚みを単純に足した厚みとが、ほぼ同じであった。この事実は、下層レジストと上層レジストとの間でミキシングが生じていないことを意味しており、ミキシングの抑制にアクアタール水溶液を用いて形成した中間層を設けることが有効であると判断できる。
【0118】
比較例として、中間層形成用材料としてヘキサメチルジシラザン(Wako製HMDS)を用いた場合に、上層と下層のレジスト同士でミキシングが生じるか否かを確認するために、以下のような評価を実行した。なお、ヘキサメチルジシラザンは、通常、シリコンウエハとレジストとの密着性強化剤として使用されるものである。それぞれの層の形成条件は、下層レジスト(AZ MiR 703)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、PB:150℃/90secであり、中間層(ヘキサメチルジシラザン)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20secであり、上層レジスト(AZ 6112)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、PB:50℃/60secである。
【0119】
表2に示すように、HMDSを塗布して中間層を設けた複層レジストの初期膜厚(全体膜厚)は、下層および上層の両レジストの厚みを単純に足した厚みに比較して薄くなっている。この事実は、下層レジストと上層レジストとの間でミキシングが生じていることを意味している。これは、下層レジストと上層レジストがHMDSに溶解したためであると考えられる。従って、中間層用材料としてはHMDSは適さないものと判断される。
【0120】
【表2】

【実施例6】
【0121】
本実施例においては、上述した中間層102cを、ポリアクリル酸(Wako製 PAc)により形成した。最初に、下層レジスト(AZ MiR 703)、中間層(PAc水溶液)、および上層レジスト(AZ 6112)を順次重ねて塗布して複層レジストを形成し、その露光感度を調べた。
【0122】
なお、この複層レジストの積層構造は、既に図21で示したものと同様であり、それぞれの層の形成条件は、下層レジスト(AZ MiR 703)102aにつき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:150℃/90secであり、中間層(PAc水溶液)102cにつき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:70℃/60secであり、上層レジスト(AZ 6112)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:50℃/60secである。また、露光および現像条件は、露光:露光時間10sec〜200sec間5sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、現像:NMD-3/60secである。
【0123】
これら3つの層を全て塗布した後に複層レジストの表面状態を評価した結果、中間層の膜の均一性がPVAやPVPで形成した場合に比べて若干劣り、部分的に膜厚が変動していることが確認された。しかし、現像後に基板であるシリコンウエハの表面を目視観察すると、露光時間25sec(5mJ/cm2)で上層レジストのみが溶解したと判断でき、100sec(20mJ/cm2)で下層レジストも上層レジストも両方とも溶解したと判断された。なお、このことは、レジスト膜厚を接触式膜厚計(Dektak3030)で測定することによっても、確認することができた。従って、下層レジストと上層レジストとの間でミキシングは生じておらず、PAc水溶液は中間層形成用材料として適しているものと判断された。
【実施例7】
【0124】
本実施例においては、中間層としてのポリアクリル酸を、下層レジスト上に均一に塗布するために、PAc水溶液にドデシルベンゼンスルホン酸(Wako製 DBS)を加えたものを用いた。そして、この複層レジストにおいて、上層と下層のレジスト同士でミキシングが生じるか否かの確認を行った。実際に、下層レジスト(AZ MiR 703)102a、中間層(PAc+DBS)102c、および上層レジスト(AZ 6112)102bを順次重ねて塗布し、その複層レジストの露光感度について調べた。なお、この複層レジストの積層構造は、既に図21で示したものと同様であり、それぞれの層の形成条件は、下層レジスト(AZ MiR 703)102aにつき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:150℃/90secであり、中間層(PAc+DBS水溶液)102cにつき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:70℃/60secであり、上層レジスト(AZ 6112)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:50℃/60secである。また、露光および現像条件は、露光:露光時間10sec〜200sec間5sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、現像:NMD-3/60secである。
【0125】
また、実験結果によると、中間層102cを設けた複層レジストの初期膜厚(全体膜厚)と、下層および上層の両レジストの厚みを単純に足した厚みとが、ほぼ同じであった。また、このことは、レジスト膜厚を接触式膜厚計(Dektak3030)で測定しても確認することができた。さらに、これらの3層を全て塗布して形成された複層レジストの形成後の表面状態も良好で、露光・現像後の基板たるシリコンウエハの表面を目視観察すると、露光時間25sec(5mJ/cm2)で上層レジストのみが溶解した部分、露光時間100sec(20mJ/cm2)で下層レジストも上層レジストも両方とも溶解した部分が得られていた。これらの事実は、下層レジストと上層レジストとの間でミキシングが生じていないことを意味しており、ミキシングの抑制に、ポリアクリル酸水溶液にドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)を加えた水溶液を用いて形成した中間層を設けることが有効であると判断できる。
【実施例8】
【0126】
本実施例においては、中間層としてのポリアクリル酸を、下層レジスト上に均一に塗布するために、PAc水溶液にベンゼンスルホン酸(Wako製 BS)を加えたものを用いた。そして、この複層レジストにおいて、上層と下層のレジスト同士でミキシングが生じるか否かの確認を行った。実際に、下層レジスト(AZ MiR 703)102a、中間層(PAc+BS)102c、および上層レジスト(AZ 6112)102bを順次重ねて塗布し、その複層レジストの露光感度について調べた。なお、この複層レジストの積層構造は、既に図21で示したものと同様であり、それぞれの層の形成条件は、下層レジスト(AZ MiR 703)102aにつき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:150℃/90secであり、中間層(PAc+BS水溶液)102cにつき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、プリベーク:70℃/60secであり、上層レジスト(AZ 6112)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、4000RPM/0.3sec、プリベーク:50℃/60secである。また、露光および現像条件は、露光:露光時間10sec〜200sec間5sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、現像:NMD-3/60secである。
【0127】
露光・現像後の基板たるシリコンウエハの表面を目視観察すると、露光時間25sec(5mJ/cm2)で上層レジストのみが溶解したと判断でき、100sec(20mJ/cm2)で下層レジストも上層レジストも両方とも溶解したと判断できた。これは、レジスト膜厚を接触式膜厚計(Dektak3030)で測定することでも確認することができた。従って、ポリアクリル酸水溶液にベンゼンスルホン酸(BS)を加えた水溶液を用いて形成した中間層を設けることが有効であると判断できる。
【実施例9】
【0128】
これまで説明してきた実施例は何れも、ポジ型レジストを2層積層させたレジストに関するものであった。これに対して本実施例は、ポジ型レジストとネガ型レジストを積層させた複層レジストに関するものである。ここでは、下層レジストとしてはネガ型レジストのAZ Electronic社製AZ CTP-100を、上層レジストとしてはポジ型レジストのAZ Electronic社製AZ 6112を用いた。
【0129】
ポジ型レジストの2層塗布の場合と同様に、下層レジストと上層レジストの露光感度の差を大きく設定するためには、下層レジストの露光感度が上層レジストの露光感度と比較して低いことが条件となる。下層レジストの露光感度を低くすることで、既に説明したように、領域b'を得るための露光量の範囲を広げることができるからである。また、実施例においては、化学増幅型レジストを用いたので、PEB条件も露光感度に影響を与える。そこで、PB温度を最適化したのち、PEB条件と下層レジストの露光感度曲線との関係を調べた。
【0130】
図22は、PEB条件を変えた場合の、化学増幅型レジストの規格化残膜率の露光量依存性を説明するための図である。ここで、レジスト塗布、PB、露光、PEB、および現像条件はそれぞれ、レジスト塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、PB:90℃/60sec、露光:露光時間 5sec〜80sec間5sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、PEB:90℃/20〜60sec間20sec刻み、現像:NMD-3/60secである。
【0131】
この図に示されているように、PEB時間が長いほどレジストの露光感度が高くなる傾向が確認された。本実施例では、充分な露光感度差が得られると判断される90℃/40secでPEBを行うことにした。
【0132】
このようにしてネガ型の下層レジストのPEB条件を決定した後、上層レジストにポジ型のAZ Electronic社製AZ 6112を用いて、ネガ型とポジ型のレジストを2層塗布しその特性を評価した。なお、これらのレジスト層形成条件は、下層レジスト(AZ CTP-100)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、PB:90℃/60secであり、上層レジスト(AZ 6112)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、PB:70℃/60secである。また、露光、PEB、および現像条件は、露光:露光時間5sec〜200sec間5sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、PEB:90℃/40sec、現像:NMD-3/60secである。
【0133】
図23は、上述の2層レジストの露光感度曲線を説明するための図で、この図に示すように、ポジ型の上層レジストとネガ型の下層レジストを積層させた2層レジストにおいて、残膜率100%領域(<1mJ/cm2)、残膜率0%領域(3〜4.5mJ/cm2)、および残膜率数十%領域(>6mJ/cm2)の3つの領域を、充分な制御性で形成可能な露光量範囲を確保することが可能である。つまり、このような構成の2層レジストによっても、露光量の僅かな変動によるレジスト残存膜厚の大幅な変動をなくし、安定したパターニングが可能となる。
【0134】
このような2層レジストに、上述の中間層を設けて、複層レジストとすることも可能なことはいうまでもない。本実施例においても、ポジ型の上層レジストとネガ型の下層レジストとの間に、両レジストがミキシングしないように中間層を設けた。なお、本実施例では、ポジ型レジストに対して最も塗布性が良好であったPAc+DBS水溶液を用いて中間層を形成した。下層レジストであるネガ型レジスト上にPAc+DBS水溶液を用いて中間層を塗布形成してその塗布性を評価したところ、良好な塗布性が確認できた。
【0135】
さらに、下層レジスト、中間層、および上層レジストを順次重ねて塗布し、3層塗布による複層レジストの特性を評価した。なお、これらの層の形成条件はそれぞれ、下層レジスト(AZ CTP-100)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、PB:90℃/60secであり、中間層(PAc+DBS水溶液)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20secであり、上層レジスト(AZ 6112)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、PB:70℃/60secである。また、露光、PEB、および現像条件は、露光:露光時間10sec〜200sec間5sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、PEB:90℃/40sec、現像:NMD-3/60secである。
【0136】
現像後の基板であるシリコンウエハを目視観察すると、露光量3mJ/cm2で下層レジストおよび上層レジストの両方の溶解が確認された。また、露光量6mJ/cm2では下層レジストが固化し、中間の残膜率領域が形成可能であった。また、実験結果によると、中間層102cを設けた複層レジストの初期膜厚(全体膜厚)と、下層および上層の両レジストの厚みを単純に足した厚みとが、ほぼ同じであった。なお、このことは、レジスト膜厚を接触式膜厚計で測定して確認することもできた。この事実は、下層レジストと上層レジストとの間でミキシングが生じていないことを意味しており、ミキシングの抑制に、PAc+DBS水溶液を用いて形成した中間層を設けることが有効であると判断できる。
【実施例10】
【0137】
実施例9では、下層レジストとしてネガ型レジストのAZ Electronic社製AZ CTP-100を、上層レジストとしてポジ型レジストのAZ Electronic社製AZ 6112を用いたが、本実施例ではこれらの積層関係を逆転させて、下層レジストとしてポジ型レジストのAZ Electronic社製AZ 6112を、上層レジストとしてネガ型レジストのAZ Electronic社製AZ CTP-100を用いた。
【0138】
ポジ型レジストの2層塗布の場合と同様に、下層レジストと上層レジストの露光感度の差を大きく設定するためには、下層レジストの露光感度が上層レジストの露光感度と比較して高いことが条件となる。下層レジストの露光感度を高くすることで、既に説明したように、領域b'を得るための露光量の範囲を広げることができるからである。また、実施例においては、化学増幅型レジストAZ Electronic社製AZ CTP-100を用いたので、PEB条件も露光感度に影響を与える。そこで、PB温度を最適化したのち、PEB条件と下層レジストの露光感度曲線との関係を調べ、ネガ型の上層レジストのPEB条件を決定した後、下層レジストにポジ型のAZ Electronic社製AZ 6112を用いて、ポジ型とネガ型のレジストを2層塗布しその特性を評価した。なお、これらのレジスト層形成条件等は、既に実施例9で説明した内容と概ね同様であるので、繰り返しての説明は省略する。
【0139】
図24は、下層のポジ型レジストと上層のネガ型レジストを積層させた2層レジストに、ハーフトーンマスクを用いて露光を行う場合のプロセスを説明するための概念図で、例えばシリコンウエハなどの基板101上に下層レジスト102aと上層レジスト102bを順次積層させて塗布し(図24(a))、基板101上に設けられた上述の2層レジスト102に、所定の領域に開口部103aおよび露光光の透過量が所定の値となるように調整されたハーフトーン領域103bを有するフォトマスク103を用いて露光する(図24(b))。
【0140】
図25は、上記のポジ型およびネガ型のレジストを積層させた「2層レジスト」の感度曲線を説明するための概念図で、横軸はレジストに照射される露光光の単位面積当たりの光量、縦軸はこの2層レジストの現像後の規格化残膜率である。この図に示されているように、ポジ型とネガ型のフォトレジストを順次積層させた2層レジストに露光光を照射させた後に現像を行った場合にも、レジスト残膜率100%の領域(a’)、レジスト残膜率0〜100%の領域(b’)、およびレジスト残膜率0%の領域(c’)の何れの領域も、製造工程上その制御性に問題のない露光量範囲で得ることができる。
【0141】
図26は、本実施例の2層レジストの露光感度曲線を説明するための図で、この図に示すように、ネガ型の上層レジストとポジ型の下層レジストを積層させた2層レジストにおいて、残膜率100%領域(>6mJ/cm2)、残膜率0%領域(3〜4.5mJ/cm2)、および残膜率数十%領域(<1mJ/cm2)の3つの領域を、充分な制御性で形成可能な露光量範囲を確保することが可能である。つまり、このような構成の2層レジストによっても、露光量の僅かな変動によるレジスト残存膜厚の大幅な変動をなくし、安定したパターニングが可能となる。
【0142】
本実施例では、2層レジストの上層はネガ型レジストであり、下層はポジ型レジストであるから、ハーフトーンマスクの開口部103aを透過してレジスト102に照射される露光光は、上層レジスト102bと下層レジスト102aの双方をその厚み方向に完全に感光させるが、これを現像させた場合には、上層レジスト102bは光硬化し、下層レジスト102aも基板101面上に残存し両レジストが残存することとなる。また、ハーフトーン領域103bを透過してレジスト102に照射される露光光によっては、上層レジスト102bは光硬化せず、一方、下層レジスト102aは感光し溶解する。したがって、これを現像させた場合には、感光した下層レジスト102aと未硬化の上層レジスト102bが共に溶解されることとなり、基板101の表面が暴露されることとなる(図24(c))。なお、図24(d)乃至(f)に示したプロセスは図14(d)乃至(f)を用いて説明した内容と概ね同様であるので、繰り返しての説明は省略する。
【0143】
このような2層レジストに、上述の中間層を設けて、複層レジストとすることも可能なことはいうまでもない。本実施例においても、ネガ型の上層レジストとポジ型の下層レジストとの間に、両レジストがミキシングしないように中間層を設けることにより、下層レジストと上層レジストとの間のミキシングが抑制されることが確認できた。
【実施例11】
【0144】
本実施例は、ネガ型レジストを2層積層させたレジストに関するものである。ここでは、上層レジストとして東京応化工業社製TSMR-iN009を、下層レジストとしてAZ Electronic社製AZ CTP-100を用いている。ポジ型レジストの2層塗布の場合とは逆に、下層レジストと上層レジストの露光感度の差を大きく設定するためには、下層レジストの露光感度が上層レジストの露光感度と比較して高いことが条件となる。これは用いられるレジストのタイプが逆(すなわち、「ネガ」と「ポジ」)だからである。したがって、下層レジストの露光感度を高くすることで、既に説明したように、領域b'を得るための露光量の範囲を広げることができる。また、実施例においては、化学増幅型レジストを用いたので、PEB条件も露光感度に影響を与える。そこで、PB温度を最適化したのち、PEB条件と上層レジストの露光感度曲線との関係を調べた。
【0145】
図27は、PEB条件を変えた場合の、上述のTSMR-iN009の化学増幅型レジストの規格化残膜率の露光量依存性を説明するための図である。ここで、レジスト塗布、露光、PB、露光、PEB、および現像条件はそれぞれ、レジスト塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、PB:90℃/60sec、露光:露光時間5sec〜2000sec間10sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、PEB:90℃/20〜60sec間20sec刻み、現像:NMD-3/60secである。
【0146】
図28は、ネガ型レジストを積層させた2層レジストの露光感度曲線を説明するための図で、この図に示されているように、PEB時間が長いほどレジストの露光感度が高くなる傾向が確認された。本実施例では、充分な露光感度差が得られると判断される90℃/40secでPEBを行うことにした。
【0147】
このようにしてネガ型の下層レジストのPEB条件を決定した後、下層レジストにネガ型のAZ Electronic社製 AZ CTP-100を用いて、ともにネガ型のレジストを2層塗布しその特性を評価した。なお、これらのレジスト層形成条件は、上層レジスト(TSMR-iN009)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、PB:70℃/60secであり、下層レジスト(AZ CTP-100)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、PB:90℃/60secである。また、露光、PEB、および現像条件は、露光:露光時間5sec〜2000sec間10sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、PEB:90℃/40sec、現像:NMD-3/60secである。
【0148】
図28に示した2層レジストの露光感度曲線が示すように、ネガ型の上層レジストとネガ型の下層レジストを積層させた2層レジストにおいて、残膜率100%領域(>200mJ/cm2)、残膜率数十%領域(6〜100mJ/cm2)、残膜率0%領域(<5mJ/cm2)の3つの領域を、充分な制御性で形成可能な露光量範囲を確保することが可能である。つまり、このような構成の2層レジストによっても、露光量の僅かな変動によるレジスト残存膜厚の大幅な変動をなくし、安定したパターニングが可能となる。
【0149】
このような2層レジストに、上述の中間層を設けて、複層レジストとすることも可能なことはいうまでもない。本実施例においても、ネガ型の上層レジストとネガ型の下層レジストとの間に、両レジストがミキシングしないように中間層を設けた。なお、本実施例では、ネガ型レジストに対して最も塗布性が良好であったPAc+DBS水溶液を用いて中間層を形成した。下層レジストであるネガ型レジスト(AZ CTP-100)の上にPAc+DBS水溶液を用いて中間層を塗布形成してその塗布性を評価したところ、良好な塗布性が確認できた。
【0150】
さらに、下層レジスト、中間層、および上層レジストを順次重ねて塗布し、3層塗布による複層レジストの特性を評価した。なお、これらの層の形成条件はそれぞれ、下層レジスト(AZ CTP-100)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、PB:90℃/60secであり、中間層(PAc+DBS水溶液)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20secであり、上層レジスト(TSMR-iN009)につき、塗布:300RPM/3sec、3000RPM/20sec、PB:70℃/60secである。また、露光、PEB、および現像条件は、露光:露光時間10sec〜2000sec間10sec刻み(露光強度:0.2mW/cm2)、PEB:90℃/40sec、現像:NMD-3/60secである。
【0151】
現像後の基板であるシリコンウエハを目視観察すると、露光量20mJ/cm2では下層レジストが固化し、中間の残膜率領域が形成可能であった。また、露光量200mJ/cm2で下層レジストと上層レジストの両方が固化した。さらに、実験結果によると、中間層を設けた複層レジストの初期膜厚(全体膜厚)と、下層および上層の両レジストの厚みを単純に足した厚みとが、ほぼ同じであった。なお、このことは、レジスト膜厚を接触式膜厚計で測定して確認することもできた。この事実は、下層レジストと上層レジストとの間でミキシングが生じていないことを意味しており、ミキシングの抑制に、PAc+DBS水溶液を用いて形成した中間層を設けることが有効であると判断できる。
【0152】
これまで説明してきたように、本発明のフォトリソグラフィー方法は、例えば基板上にパターニングを施すために必要とされる工程数を少なくすること、およびレジスト膜厚を正確に制御したパターニングを実行することが可能である。従って、本発明は、IC、LSI等に代表される半導体基板、液晶基板、プリント基板等の基板を、精度良くかつ安価に製造することを可能とする。なお、本発明を主として2層の積層レジストとして説明したが、所望により3層以上の積層レジストとすることも可能である。
【0153】
また、本発明は、上記のような基板製造工程において、基板にレジストを塗布した後にその上に最初に塗布したレジストとは感度が異なるレジストをさらに塗布し、次に、例えばハーフトーンマスクを用いて紫外線等を照射して露光を1回行い、これに続いて、現像を1回行うことにより、上層・下層レジストの両方のレジストが残存する領域、下層レジストのみが残存する領域、および両レジストとも残存しない領域の3つの領域を形成する。つまり、これらの3つの領域が、一回のフォトリソ工程で形成されることとなる。
【0154】
また、本発明においては、上述の現像工程におけるレジストそれぞれの現像液の濃度を、各レジストに単独で用いて現像を行う場合の現像液の濃度よりも低く設定することにより、両レジスト間の露光感度差を広げ、これにより下層レジストのみが残存する領域を安定して形成することが可能となる。なお、上記の塗布工程における上層レジストの膜厚を下層レジストの膜厚より厚くすることで、パターニングをより簡便化することができる。
【0155】
なお、上層レジストおよび下層レジストの塗布工程において、それぞれのレジスト塗布後にプリベーク工程が設けられるが、上層レジストのプリベーク温度を下層レジストのプリベーク温度よりも低い温度とすることにより、両レジストの露光感度差を大きくでき、下層レジストのみが残存する領域を安定して形成することが可能となる。
【0156】
また、上述のレジスト塗布工程において、上層レジストと下層レジストとの間に、両レジストに溶解しない中間層を設けることにより、両レジストのミキシングが抑制され、下層レジストのみが残存する領域を安定して形成することが可能となる。
【0157】
さらに、上述の中間層を水溶性ポリマーを用いて形成することとすると、レジストは水には溶解しないため、上層と下層の両レジストのミキシングが抑制され、下層レジストのみが残存する領域を安定して形成することが可能となる。
【0158】
ここで、上記の水溶性ポリマーとして酸性のものを用いることとすると、一般的に使用される現像液であるアルカリ水溶液に中間層が溶解するため、下層レジストのみが残存する領域を安定して形成することができる。
【0159】
以上、実施例により本発明のフォトリソグラフィー方法およびこの方法によりパターニングを施して得られる基板の製造方法について説明したが、上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内にあり、更に本発明の範囲内において他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明は、一回のフォトリソ(露光・現像)工程により、加工深さが異なる複数の領域をレジスト層および/または基板上に形成することを可能とするフォトリソグラフィー方法を提供する。また、本発明のフォトリソグラフィー方法により、ICやLSI等に代表される半導体基板、液晶基板、プリント基板などの製造に必須な微細パターンの形成工程の、簡便化・低コスト化が図られ、かつ、確実なパターニングを実現する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】下地である基板の主面に、2段階の段差を形成する際の従来方法を説明するための概念図である。
【図2】携帯電話などの集積回路製造工程などで必要となる配線の形成プロセスの一例を説明するための概念図である。
【図3】下地である基板の主面に2段階の段差を形成する際に、ハーフトーンマスクを用いた場合の工程を説明するための概念図である。
【図4】ハーフトーンマスクを用いた露光により上述の3つの残膜率領域を得るための、レジスト残膜率の露光量依存性を説明するための概念図で、横軸はレジストに照射される露光光の単位面積当たりの光量、縦軸はレジスト残膜率である。
【図5】ハーフトーンマスクを用いて、ビアホールおよび配線領域を一回の露光工程で同時形成する際の工程を説明するための概念図である。
【図6】露光量の僅かなズレに起因する問題の具体例を説明するための概念図で、(a)はハーフトーン領域での露光量が過少な場合の図、(b)はハーフトーン領域での露光量が過大な場合の図である。
【図7】何れもポジ型であるが互いに露光感度が異なるフォトレジストを2層積層させて露光を行う場合の本発明のプロセスを説明するための概念図である。
【図8】本発明に用いられる2つのポジ型フォトレジストの感度曲線を説明するための図である。
【図9】露光感度の異なる2つのフォトレジストを積層させた「2層レジスト」の感度曲線を説明するための図で、横軸はレジストに照射される露光光の単位面積当たりの光量、縦軸はこの2層レジストの現像後の残膜率である。
【図10】2層レジスト構造の概念図である。
【図11】何れもネガ型であるが互いに露光感度が異なるフォトレジストを2層積層させてハーフトーンマスクを用いた露光を行う場合のプロセスを説明するための概念図である。
【図12】2つのネガ型フォトレジストの感度曲線を説明するための図である。
【図13】2つのネガ型フォトレジストを積層させた「2層レジスト」の感度曲線を説明するための図である。
【図14】ネガ型レジスト(下層)とポジ型レジスト(上層)を積層させた2層レジストに、ハーフトーンマスクを用いて露光を行う場合のプロセスを説明するための概念図である。
【図15】ネガ型およびポジ型のレジストのそれぞれの感度曲線を説明するための図である。
【図16】ネガ型(下層)およびポジ型(上層)のレジストを積層させた「2層レジスト」の感度曲線を説明するための図である。
【図17】プリベーク温度ごとに得られたポジ型下層レジストの感度曲線を説明するための図である。
【図18】プリベーク時間とポジ型下層レジストの露光感度依存性を説明するための図である。
【図19】ポジ型上層レジストのプリベーク温度と露光感度との関係(感度曲線)を調べた結果を説明するための図である。
【図20】実施例1における、ポジ型上層レジストおよびポジ型下層レジストならびにこれらを積層させて得られた2層レジストの露光感度曲線を示す図である。
【図21】中間層を設けた本発明の積層レジストの断面概略図である。
【図22】PEB条件を変えた場合の、化学増幅型ネガレジスト(AZ CTP-100)の規格化残膜率の露光量依存性を説明するための図である。
【図23】ポジ型の上層レジストとネガ型の下層レジストを積層させた2層レジストの露光感度曲線を説明するための図である。
【図24】ポジ型レジスト(下層)とネガ型レジスト(上層)を積層させた2層レジストに、ハーフトーンマスクを用いて露光を行う場合のプロセスを説明するための概念図である。
【図25】ポジ型(下層)およびネガ型(上層)のレジストを積層させた「2層レジスト」の感度曲線を説明するための概念図である。
【図26】実施例10の、ポジ型(下層)およびネガ型(上層)のレジストを積層させた「2層レジスト」の感度曲線を説明するための概念図である。
【図27】PEB条件を変えた場合の、化学増幅型ネガレジスト(TSMR-iN009)の規格化残膜率の露光量依存性を説明するための図である。
【図28】ネガ型レジストを積層させた2層レジストの露光感度曲線を説明するための図である。
【符号の説明】
【0162】
11、101 基板
11a、101a 第1の段差
11b、101b 第2の段差
12 レジスト
14 ビアホール
15 銅
16 配線部分
102 複層レジスト
102a 下層レジスト
102b 上層レジスト
13、103 フォトマスク
103a 開口部
103b ハーフトーン領域



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の面上に、第1のフォトレジスト層(下層)と第2のフォトレジスト層(上層)とを順次積層させて複層レジストを形成する第1のステップと、
前記複層レジストに露光を施した後に現像処理する第2のステップとを備え、
前記第1のフォトレジスト層と第2のフォトレジスト層は、露光光に対する感度(露光感度)が互いに異なるように材料選択されており、
前記基体面上に、前記下層および上層の2層のフォトレジストが残存する第1の領域と、前記下層のフォトレジストのみが残存する第2の領域と、前記下層および上層の何れのフォトレジストもが残存しない第3の領域とを形成することを特徴とするフォトリソグラフィー方法。
【請求項2】
基体の面上に、第1のフォトレジスト層(下層)と第2のフォトレジスト層(上層)とを順次積層させて複層レジストを形成する第1のステップと、
前記複層レジストにハーフトーンマスクを介して露光を施した後に現像処理する第2のステップとを備え、
前記第1のフォトレジスト層と第2のフォトレジスト層は、露光光に対する感度(露光感度)が互いに異なるように材料選択されており、
前記基体面上に、前記下層および上層の2層のフォトレジストが残存する第1の領域と、前記下層のフォトレジストのみが残存する第2の領域と、前記下層および上層の何れのフォトレジストもが残存しない第3の領域とを、前記第2のステップにおける各々一回の露光および現像処理により形成することを特徴とするフォトリソグラフィー方法。
【請求項3】
前記第1のフォトレジスト層と第2のフォトレジスト層は何れも、ポジ型のフォトレジストであることを特徴とする請求項1または2に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項4】
前記第2のフォトレジスト層の露光感度は、前記第1のフォトレジスト層の露光感度に比較して高くなるように材料選択されていることを特徴とする請求項3に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項5】
前記第1のフォトレジスト層と第2のフォトレジスト層は何れも、ネガ型のフォトレジストであることを特徴とする請求項1または2に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項6】
前記第2のフォトレジスト層の露光感度は、前記第1のフォトレジスト層の露光感度に比較して低くなるように材料選択されていることを特徴とする請求項5に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項7】
前記第1のフォトレジスト層はネガ型のフォトレジストであり、前記第2のフォトレジストはポジ型のフォトレジストであることを特徴とする請求項1または2に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項8】
前記第1のフォトレジスト層はポジ型のフォトレジストであり、前記第2のフォトレジストはネガ型のフォトレジストであることを特徴とする請求項1または2に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項9】
前記第1のステップにおけるフォトレジストの積層は、前記第2のフォトレジスト層(上層)の膜厚が前記第1のフォトレジスト層(下層)の膜厚より厚くなるように実行されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項10】
前記第2のステップにおける前記第1のフォトレジスト層と前記第2のフォトレジスト層のそれぞれの現像処理は、前記第1のフォトレジスト層および前記第2のフォトレジスト層をそれぞれ単独で現像処理する際の現像液濃度よりも低濃度の現像液を用いて実行されることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項11】
前記第1のステップは、前記第1および第2のフォトレジスト層の塗布後にそれぞれのプリベークを実行するサブステップを備え、
前記第2のフォトレジスト層(上層)のプリベークは、前記第1のフォトレジスト層(下層)のプリベークよりも低温で実行されるものであること特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項12】
前記第1のステップは、前記第1のフォトレジスト層と第2のフォトレジスト層との間に中間層を形成するサブステップを備え、
前記中間層は、前記第1および第2のフォトレジスト層の何れにも溶解しない材料で形成されることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項13】
前記中間層は、水溶性高分子を含有する水溶液を用いて形成されることを特徴とする請求項12に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項14】
前記水溶性高分子は、酸性を示す高分子であることを特徴とする請求項13に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項15】
前記水溶性高分子は、でんぷん、加工でんぷん、カゼイン、にかわ、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸ソーダ、ペクチンなどの天然高分子、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、および、ポリアクリル酸、の群から選択される少なくとも一種の高分子であることを特徴とする請求項13に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項16】
前記水溶液は、前記水溶性高分子と酸との混合物を含有するものであることを特徴とする請求項13乃至請求項15の何れか1項に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項17】
前記酸は、ギ酸(メタン酸)、酢酸(エタン酸)、プロピオン酸(プロパン酸)、酪酸(ブタン酸)、吉草酸(ペンタン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン)、カプリン酸(カン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、乳酸、クエン酸、アミノ酸、シュ酸、マロン酸、コハク酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ベンゼンスルフォン酸、ドデシルベンゼンスルフォン酸、および、フェノール、の群から選択される少なくとも一種の酸であることを特徴とする請求項16に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れか一項に記載の方法により形成された前記第3の領域の前記基体表面にエッチングを施す第1のエッチング工程と、前記第2の領域の前記基体表面にエッチングを施す第2のエッチング工程と、を備えていることを特徴とするフォトリソグラフィー方法。
【請求項19】
前記第2のエッチング工程は、前記第2の領域に残存する下層のフォトレジストを溶解可能なエッチング液を用いて実行され、前記第2の領域の基体表面のエッチングが当該第2の領域に残存する下層のフォトレジストの溶解に引き続いて進行することを特徴とする請求項18に記載のフォトリソグラフィー方法。
【請求項20】
前記第2のエッチング工程に先立ち、前記第2の領域に残存する下層のフォトレジストを除去して前記基体表面を暴露するレジスト剥離工程を備えていることを特徴とする請求項18に記載のフォトリソグラフィー方法。












【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2006−30971(P2006−30971A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168332(P2005−168332)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(803000012)株式会社テクノネットワーク四国 (8)
【Fターム(参考)】