説明

フォトレジスト下層膜形成材料及びパターン形成方法

【解決手段】スルホ基又はそのアミン塩で置換された炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を有するノボラック樹脂を含有することを特徴とするフォトレジスト下層膜形成材料。
【効果】本発明のフォトレジスト下層膜形成材料は、必要により反射防止効果のある中間層と組み合わせることによって、200nm以上の膜厚で十分な反射防止効果を発揮できるだけの吸光係数を有し、基板加工に用いられるCF4/CHF3系ガス及びCl2/BCl3系ガスエッチングの速度も通常のm−クレゾールノボラック樹脂よりも強固であり、高いエッチング耐性を有する。また、塩基性物質を吸着したポーラス低誘電率膜からの汚染に対する耐性(ポイゾニング耐性)に優れ、パターニング後のレジスト形状も良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工に用いられる多層レジスト工程において有効な下層膜形成材料及びこれを用いた遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F2レーザー光(157nm)、Kr2レーザー光(146nm)、Ar2レーザー光(126nm)、軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)、イオンビーム、X線露光に好適なレジストパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光を用いたリソグラフィーにおいては、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。
【0003】
レジストパターン形成の際に使用するリソグラフィー用の光源として、水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられており、更なる微細化のための手段として、露光光を短波長化する方法が有効とされてきた。このため、64MビットDRAM加工方法の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.13μm以下)を必要とする集積度1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、特にArFエキシマレーザー(193nm)を用いたリソグラフィーが検討されてきている。
【0004】
一方、従来、段差基板上に高アスペクト比のパターンを形成するには2層レジスト法が優れていることが知られており、更に、2層レジスト膜を一般的なアルカリ現像液で現像するためには、ヒドロキシ基やカルボキシル基等の親水基を有する高分子シリコーン化合物が必要である。
【0005】
シリコーン系化学増幅ポジ型レジスト材料としては、安定なアルカリ可溶性シリコーンポリマーであるポリヒドロキシベンジルシルセスキオキサンのフェノール性水酸基の一部をt−Boc基で保護したものをベース樹脂として使用し、これと酸発生剤とを組み合わせたKrFエキシマレーザー用シリコーン系化学増幅ポジ型レジスト材料が提案された(特許文献1:特開平6−118651号公報、非特許文献1:SPIE Vol. 1925 (1993) p377等参照)。また、ArFエキシマレーザー用としては、シクロヘキシルカルボン酸を酸不安定基で置換したタイプのシルセスキオキサンをベースにしたポジ型レジストが提案されている(特許文献2,3:特開平10−324748号公報、特開平11−302382号公報、非特許文献2:SPIE Vol. 3333 (1998) p62等参照)。更に、F2レーザー用としては、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶解性基として持つシルセスキオキサンをベースにしたポジ型レジストが提案されている(特許文献4:特開2002−55456号公報)。上記ポリマーは、トリアルコキシシシラン、又はトリハロゲン化シランの縮重合によるラダー骨格を含むポリシルセスキオキサンを主鎖に含むものである。
【0006】
珪素が側鎖にペンダントされたレジスト用ベースポリマーとしては、珪素含有(メタ)アクリルエステル系ポリマーが提案されている(特許文献5:特開平9−110938号公報、非特許文献3:J. Photopolymer Sci. and Technol. Vol. 9 No.3 (1996) p435−446等参照)。
【0007】
2層レジスト法の下層膜としては、酸素ガスによるエッチングが可能な炭化水素化合物であり、更にその下の基板をエッチングする場合におけるマスクになるため、高いエッチング耐性を有することが必要である。酸素ガスエッチングにおいては、珪素原子を含まない炭化水素のみで構成される必要がある。また、上層の珪素含有レジスト膜の線幅制御性を向上させ、定在波によるパターン側壁の凹凸とパターンの崩壊を低減させるためには、反射防止膜としての機能も有し、具体的には下層膜からレジスト膜内への反射率を1%以下に抑える必要がある。
【0008】
ここで、最大500nmの膜厚までの反射率を計算した結果を図1,2に示す。露光波長は193nm、露光装置のNAは0.85、2/3輪帯照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、80nmラインアンドスペースパターンを想定し、上層レジスト膜のn値を1.74、k値を0.02と仮定し、図1では下層膜のk値を0.3に固定し、縦軸にn値を1.0〜2.0、横軸に膜厚0〜500nmの範囲で変動させたときの基板反射率の計算結果を示す。膜厚が300nm以上の2層レジスト用下層膜を想定した場合、上層レジスト膜と同程度かあるいはそれよりも少し屈折率が高い1.6〜1.9の範囲で反射率を1%以下にできる最適値が存在する。
【0009】
図2では、下層膜のn値を1.5に固定し、k値を0〜1.0の範囲で変動させたときの反射率を示す。k値が0.24〜0.15の範囲で反射率を1%以下にすることが可能である。一方、40nm程度の薄膜で用いられる単層レジスト用の反射防止膜の最適k値は0.4〜0.5であり、300nm以上で用いられる2層レジスト用下層の最適k値とは異なる。2層レジスト用下層では、より低いk値、即ち、より高透明な下層膜が必要であることが示されている。
【0010】
ここで、193nm用の下層膜形成材料として、SPIE Vol. 4345 (2001) p50(非特許文献4)に紹介されているように、ポリヒドロキシスチレンとアクリル化合物の共重合体が検討されている。ポリヒドロキシスチレンは193nmに非常に強い吸収を持ち、そのもの単独ではk値が0.6前後と高い値である。そこで、k値が殆ど0であるアクリル化合物と共重合させることによって、k値を0.25前後に調整しているのである。
【0011】
しかしながら、ポリヒドロキシスチレンに対して、アクリルポリマーの基板エッチングにおけるエッチング耐性は弱く、しかもk値を下げるためにかなりの割合のアクリル化合物を共重合せざるを得ず、結果的に基板エッチングの耐性はかなり低下する。エッチングの耐性は、エッチング速度だけでなく、エッチング後の表面ラフネスの発生にも現れてくる。アクリル化合物の共重合によってエッチング後の表面ラフネスの増大が深刻なほど顕著になっている。
【0012】
ベンゼン環よりも193nmにおける透明性が高く、エッチング耐性が高いものの一つにナフタレン環がある。特開2002−14474号公報(特許文献6)にナフタレン環、アントラセン環を有する下層膜が提案されている。しかしながら、ナフトール共縮合ノボラック樹脂、ポリビニルナフタレン樹脂のk値は0.3〜0.4の間であり、目標の0.1〜0.3の透明性には未達であり、更に透明性を上げなくてはならない。また、ナフトール共縮合ノボラック樹脂、ポリビニルナフタレン樹脂の193nmにおけるn値は低く、本発明者らの測定した結果では、ナフトール共縮合ノボラック樹脂で1.4、ポリビニルナフタレン樹脂に至っては1.2である。特開2001−40293号公報(特許文献7)、特開2002−214777号公報(特許文献8)で示されるアセナフチレン重合体においても、波長248nmに比べて193nmにおけるn値が低く、k値は高く、共に目標値には達していない。n値が高く、k値が低く透明で且つエッチング耐性が高い下層膜が求められている。
【0013】
一方、珪素を含まない単層レジスト膜を上層、その下に珪素を含有する中間層、更にその下に有機膜を積層する3層プロセスが提案されている(非特許文献5:J. Vac. Sci. Technol., 16 (6), Nov./Dec. 1979参照)。
一般的には珪素含有レジスト膜より単層レジスト膜の方が解像性に優れ、3層プロセスでは高解像な単層レジスト膜を露光イメージング層として用いることができる。
中間層としては、スピンオングラス(SOG)膜が用いられ、多くのSOG膜が提案されている。
【0014】
ここで3層プロセスにおける基板反射を抑えるための最適な下層膜の光学定数は、2層プロセスにおけるそれとは異なっている。
基板反射をできるだけ抑え、具体的には1%以下にまで低減させる目的は2層プロセスも3層プロセスも変わらないのであるが、2層プロセスは下層膜だけに反射防止効果を持たせるのに対して、3層プロセスは中間層と下層のどちらか一方あるいは両方に反射防止効果を持たせることができる。
反射防止効果を付与させた珪素含有層材料が、米国特許第6506497号明細書(特許文献9)、米国特許第6420088号明細書(特許文献10)に提案されている。
一般的に単層の反射防止膜よりも多層反射防止膜の方が反射防止効果が高く、光学材料の反射防止膜として広く工業的に用いられている。
中間層と下層の両方に反射防止効果を付与させることによって高い反射防止効果を得ることができる。
3層プロセスにおいて珪素含有中間層に反射防止膜としての機能を持たせることができれば、下層膜に反射防止膜としての最高の効果は特に必要がない。
3層プロセスの場合の下層膜としては、反射防止膜としての効果よりも基板加工における高いエッチング耐性が要求される。
そのために、エッチング耐性が高く、芳香族基を多く含有するノボラック樹脂を3層プロセス用下層膜として用いることが必要である。
【0015】
ここで、図3に中間層のk値を変化させたときの基板反射率を示す。
中間層のk値として0.2以下の低い値と、適切な膜厚設定によって、1%以下の十分な反射防止効果を得ることができる。
通常反射防止膜として、膜厚100nm以下で反射を1%以下に抑えるためにはk値として0.2以上が必要であるが(図2参照)、下層膜である程度の反射を抑えることができる3層構造の中間層としては0.2より低い値のk値が最適値となる。
【0016】
次に、下層膜のk値が0.2の場合と0.6の場合の、中間層と下層の膜厚を変化させたときの反射率変化を図4と図5に示す。
k値が0.2の下層は、2層プロセスに最適化された下層膜を想定しており、k値が0.6の下層は、193nmにおけるノボラックやポリヒドロキシスチレンのk値に近い値である。
下層膜の膜厚は基板のトポグラフィーによって変動するが、中間層の膜厚は殆ど変動せず、設定した膜厚で塗布できると考えられる。
ここで、下層膜のk値が高い方(0.6の場合)が、より薄膜で反射を1%以下に抑えることができる。
下層膜のk値が0.2の場合、250nm膜厚では反射を1%以下にするために中間層の膜厚を厚くしなければならない。
中間層の膜厚を上げると、中間層を加工するときのドライエッチング時に最上層のレジスト膜に対する負荷が大きく、好ましいことではない。
下層膜を薄膜で用いるためには、高いk値だけでなく、より強いエッチング耐性が必要である。
【0017】
下地の被加工膜がポーラスシリカからなる低誘電絶縁膜の場合、ポジ型レジスト膜では裾引きやスペース部分にスカムが生じるポイゾニングという問題が生じている。これは、アンモニアなどを使う基板洗浄工程時にポーラスシリカにアンモニアが吸着し、レジストプロセス時にアンモニアが遊離し、露光部に発生したレジストの酸を中和することによって発生すると考えられている。ポイゾニングの発生防止のためには、酸性基を有するポリマーを使うことが提案されている(特許文献11:特開2004−177666号公報)。
ナフタレンスルホン酸ノボラック樹脂は、優れた界面活性剤、電解質としての機能を有している。ナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物をセメント分散用の界面活性剤として用いる方法が、特開平5−17186号公報(特許文献12)、特開2006−233210号公報(特許文献13)に公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平6−118651号公報
【特許文献2】特開平10−324748号公報
【特許文献3】特開平11−302382号公報
【特許文献4】特開2002−55456号公報
【特許文献5】特開平9−110938号公報
【特許文献6】特開2002−14474号公報
【特許文献7】特開2001−40293号公報
【特許文献8】特開2002−214777号公報
【特許文献9】米国特許第6506497号明細書
【特許文献10】米国特許第6420088号明細書
【特許文献11】特開2004−177666号公報
【特許文献12】特開平5−17186号公報
【特許文献13】特開2006−233210号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】SPIE Vol. 1925 (1993) p377
【非特許文献2】SPIE Vol. 3333 (1998) p62
【非特許文献3】J. Photopolymer Sci. and Technol. Vol. 9 No.3 (1996) p435−446
【非特許文献4】SPIE Vol. 4345 (2001) p50
【非特許文献5】J. Vac. Sci. Technol., 16 (6), Nov./Dec. 1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、スルホン酸あるいはスルホン酸のアミン塩を有する芳香族化合物のノボラック樹脂を用いることで、ポリヒドロキシスチレン及びクレゾールノボラックよりもエッチング耐性が優れ、反射防止効果が高く、基板洗浄後のポーラスシリカ絶縁膜におけるポイゾニング耐性が高い2層あるいは3層プロセス用下層膜形成材料、及びこれを用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、スルホ基あるいはそのアミン塩で置換された炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を有するノボラック樹脂が、エッチング耐性にも優れ、ポイゾニング耐性が高い2層あるいは3層レジストプロセス用下層膜として有望な材料であることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、2層あるいは3層レジストプロセス用下層膜として、特に波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3〜20nmの軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)、X線におけるエッチング耐性に優れ、スルホン酸あるいはスルホン酸のアミン塩を有する芳香族化合物のノボラック樹脂をベースにする材料を提案するもので、基板加工におけるドライエッチング耐性が非常に高い下層膜を得ることができる。
【0022】
本発明の下層膜は、主に3層プロセスに適用される。KrF、ArFの2層プロセス用としてはk値がやや高いため、基板反射が大きくなるが、反射防止効果のある中間層と併せて2層の反射防止膜とすることで基板反射率を1%以下に抑えることができる。
また、本発明の下層膜形成材料は膜の緻密性に優れ、低誘電ポーラスシリカ膜から発生するアンモニアガスを中和することによる遮断効果が高く、これによってレジスト形状の異常(ポイゾニング)の発生を抑えることができる。
【0023】
従って、本発明は、下記フォトレジスト下層膜形成材料及びパターン形成方法を提供する。
請求項1:
スルホ基又はそのアミン塩で置換された炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を有するノボラック樹脂を含有することを特徴とするフォトレジスト下層膜形成材料。
請求項2:
スルホ基又はそのアミン塩で置換された炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を有するノボラック樹脂が、下記一般式(1)で示されることを特徴とする請求項1記載のフォトレジスト下層膜形成材料。
【化1】


(式中、Xは水素原子、アミン化合物に水素原子を加えた化合物、又は4級アンモニウムである。R1は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。円は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基である。R2は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基である。mは1〜4の整数、nは0〜3の整数である。)
請求項3:
ナフタレンスルホン酸、アントラセンスルホン酸、アセナフテンスルホン酸、フルオレンスルホン酸、フェナントレンスルホン酸、ピレンスルホン酸又はこれらのアンモニウム塩から選ばれる部分構造を有するノボラック樹脂を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のフォトレジスト下層膜形成材料。
請求項4:
ノボラック樹脂が、更にフェノール化合物、ビスフェノール化合物、ビスナフトール化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物のノボラック体の繰り返し単位を有するものである請求項1乃至3のいずれか1項記載のフォトレジスト下層膜形成材料。
請求項5:
ノボラック樹脂が、更にフェノール性水酸基を持たない非共役2重結合を有する化合物に由来する繰り返し単位を有するものである請求項1乃至4のいずれか1項記載のフォトレジスト下層膜形成材料。
請求項6:
更に、有機溶剤を含有する請求項1乃至5のいずれか1項記載のフォトレジスト下層膜形成材料。
請求項7:
更に、架橋剤及び酸発生剤を含有する請求項1乃至6のいずれか1項記載のフォトレジスト下層膜形成材料。
請求項8:
請求項1乃至7のいずれか1項記載のフォトレジスト下層膜形成材料を被加工基板上に適用し、該形成された下層膜層の上にフォトレジスト組成物の層を適用し、このフォトレジスト層の所用領域に放射線を照射し、現像液で現像してフォトレジストパターンを形成し、次にドライエッチング装置でこのフォトレジストパターン層をマスクにしてフォトレジスト下層膜層及び被加工基板を加工することを特徴とするパターン形成方法。
請求項9:
請求項1乃至7のいずれか1項記載のフォトレジスト下層膜形成材料を被加工基板上に適用し、該形成された下層膜層の上に珪素原子を含有する中間膜層を適用し、該中間膜層の上にフォトレジスト組成物の層を適用し、このフォトレジスト層の所用領域に放射線を照射し、現像液で現像してフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチング装置でこのフォトレジストパターン層をマスクにして中間膜層を加工し、フォトレジストパターン層を除去後、上記加工した中間膜層をマスクにして下層膜層、次いで被加工基板を加工することを特徴とするパターン形成方法。
請求項10:
フォトレジスト組成物が珪素原子を含有しないポリマーを含み、中間膜層をマスクにして下層膜を加工するドライエッチングを、酸素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行う請求項9記載のパターン形成方法。
請求項11:
被加工膜が、比誘電率が3.5以下の低誘電率膜又は窒化膜である請求項9又は10記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明のフォトレジスト下層膜形成材料は、必要により反射防止効果のある中間層と組み合わせることによって、200nm以上の膜厚で十分な反射防止効果を発揮できるだけの吸光係数を有し、基板加工に用いられるCF4/CHF3系ガス及びCl2/BCl3系ガスエッチングの速度も通常のm−クレゾールノボラック樹脂よりも強固であり、高いエッチング耐性を有する。また、塩基性物質を吸着したポーラス低誘電率膜からの汚染に対する耐性(ポイゾニング耐性)に優れ、パターニング後のレジスト形状も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】2層プロセスにおける下層膜屈折率k値が0.3固定で、n値を1.0〜2.0の範囲で変化させた下層膜の膜厚と基板反射率の関係を示すグラフである。
【図2】2層プロセスにおける下層膜屈折率n値が1.5固定で、k値を0〜1.0の範囲で変化させた下層膜の膜厚と基板反射率の関係を示すグラフである。
【図3】3層プロセスにおける下層膜屈折率n値が1.5、k値が0.6、膜厚500nm固定で、中間層のn値が1.5、k値を0〜0.4、膜厚を0〜400nmの範囲で変化させたときの基板反射率の関係を示すグラフである。
【図4】3層プロセスにおける下層膜屈折率n値が1.5、k値が0.2、中間層のn値が1.5、k値を0.1固定で下層と中間層の膜厚を変化させたときの基板反射率の関係を示すグラフである。
【図5】3層プロセスにおける下層膜屈折率n値が1.5、k値が0.6、中間層のn値が1.5、k値を0.1固定で下層と中間層の膜厚を変化させたときの基板反射率の関係を示すグラフである。
【図6】3層レジスト加工プロセスの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のフォトレジスト下層膜形成材料を用いたパターン形成方法は、スルホ基あるいはそのアミン塩で置換された炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を有するノボラック樹脂、特に下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するノボラック樹脂を含むフォトレジスト下層膜を基板上に適用し、該下層膜の上に必要により中間層を介してフォトレジスト組成物の層を適用し、このフォトレジスト層の所用領域に放射線を照射し、現像液で現像してレジストパターンを形成し、ドライエッチング装置でフォトレジストパターン層をマスクにして下層膜層及び基板を加工するものであるが、ここで用いる下層膜形成材料は、
(A)スルホ基あるいはそのアミン塩で置換された炭素数6〜30の芳香族炭化水素を有するノボラック樹脂、特に下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するノボラック樹脂を必須成分とするほか、通常
(B)有機溶剤
を含むものであるが、スピンコート特性、段差基板の埋め込み特性、膜の剛性や耐溶媒性を上げるために
(C)ブレンド用ポリマー、
(D)架橋剤、
(E)酸発生剤
を含むこともできる。
【0027】
【化2】


(式中、Xは水素原子、アミン化合物に水素原子を加えた化合物、又は4級アンモニウムである。R1は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。円は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基である。R2は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基である。mは1〜4の整数、nは0〜3の整数である。)
【0028】
ここで、アミン化合物に水素原子を加えた化合物としては、後述の段落[0069]〜[0072]に塩基性化合物として記載のもの等が挙げられる。式(1)中円で示される炭素数6〜30の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、アセナフテン、フルオレン、トリフェニレン、フェナレン、フェナントレン、インデン、インダン、インダセン、ピレン、クリセン、ペリレン、ナフタセン、ペンタセン、コロネン、ヘプタセン、ベンゾ[a]アントラセン、ジベンゾフェナントレン、ジベンゾ[a,j]アントラセンが挙げられる。
炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニ基、アダマンチル基、アダマンタンメチル基、アダマンタンエチル基、テトラシクロデカニル基、トリシクロデカニル基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ノルボルニオキシ基、アダマンチルオキシ基、アダマンタンメチルオキシ基、アダマンタンエチルオキシ基、テトラシクロデカニルオキシ基、トリシクロデカニルオキシ基等が挙げられる。
炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、トリチル基、ピレニル基等が挙げられる。
炭素数2〜20のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロぺニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフタレンメチル基、アントラセンメチル基、ピレンメチル基、フルオレンメチル基が挙げられる。
【0029】
上記ノボラック樹脂において、芳香族炭化水素基のスルホ化は、芳香族炭化水素の水素原子をスルホン酸基で置換する求電子置換反応である。この反応は、特開平5−17186号公報あるいは特開2006−233210号公報に記載されており、芳香族炭化水素1モルに対して濃硫酸あるいは発煙硫酸を1.1〜1.5モル加え、100〜200℃で2〜10時間反応させることによって得ることができる。
次いで、縮合用水2〜10モルを加えて60〜150℃で20〜50%濃度のアルデヒド類0.7〜1.0モルを4時間程度で滴下した後、80〜150℃で10〜50時間反応させてノボラック化する。芳香族炭化水素としては、エッチング耐性と光学特性の観点からベンゼン環が2個以上のナフタレン環以上の縮合炭化水素が好ましい。
【0030】
スルホ化された芳香族炭化水素は単独でアルデヒド類存在下にノボラック化することもできるが、フェノール化合物又はフェノール性水酸基を持たない非共役2重結合を有する化合物と共縮合することもできる。スルホ化された芳香族炭化水素のノボラック樹脂は水溶性が高く、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)の様な一般的な溶媒に溶けづらくなる場合がある。PGMEAへの溶媒溶解性を上げるために、フェノール化合物と共縮合することは有効である。
【0031】
共重合可能なフェノール類、フェノール性水酸基を持たない非共役2重結合を有する化合物は、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、4−シクロペンチルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、4−ノルボルニルフェノール、4−(1−アダマンチルフェノール)、4−(2−アダマンチルフェノール)、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール、4−トリチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−t−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール及び1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどが挙げられる。
【0032】
芳香族基にアルデヒドが付加したメタノール基、あるいはアルコールの水素原子がアルキル基や、アシル基で置換されたアルコキシメチル基、アシロキシメチル基を有する芳香族化合物を共縮合することもできる。芳香族化合物1分子に対して、メタノール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基が複数有していれば、一般式(1)で示されるスルホ基を有する芳香族化合物と共縮合した場合に繰り返し単位を有する高分子体を形成することができる。芳香族基にアルデヒドが付加したメタノール基を有する化合物としては具体的には、ベンジルアルコール、ベンゼン−1,2−ジメタノール、ベンゼン−1,3−ジメタノール、ベンゼン−1,4−ジメタノール、ベンゼン−1,2,3−トリメタノール、ベンゼン−1,2,4−トリメタノール、ベンゼン−1,3,5−トリメタノール、ベンゼン−1,4,6−トリメタノール、ジフェニルメタノール、ジフェニル−1,6−ジメタノール、ジフェニル−3,4−ジメタノール、ジフェニル−3,8−ジメタノール、ナフタレン−1,2−ジメタノール、ナフタレン−1,3−ジメタノール、ナフタレン−1,4−ジメタノール、ナフタレン−1,5−ジメタノール、ナフタレン−1,6−ジメタノール、ナフタレン−1,7−ジメタノール、ナフタレン−1,8−ジメタノール、ナフタレン−2,3−ジメタノール、ナフタレン−2,4−ジメタノール、ナフタレン−2,5−ジメタノール、ナフタレン−2,6−ジメタノール、ナフタレン−2,7−ジメタノール、ナフタレン−2,8−ジメタノール、アントラセンジメタノール、ピレンジメタノール、フルオレン−2,8−ジメタノール、フルオレン−3,7−ジメタノール、インデンジメタノール、アセナフチレンジメタノール、フェナントレンジメタノール、ナフタセンジメタノール、ペンタセンジメタノールが挙げられ、アルコキシメチル基を有する芳香族化合物としては、前記メタノール基を有する芳香族化合物のヒドロキシ基を炭素数1〜6のアルキル基で置換した化合物が挙げられ、アシロキシメチル基を有する芳香族化合物としては、前記メタノール基を有する芳香族化合物のヒドロキシ基を炭素数1〜6のアシル基で置換した化合物が挙げられる。
【0033】
下記一般式(2)又は(3)で示されるビスフェノール化合物、ビスナフトール化合物を共重合することもできる。
【化3】


(式中、R3、R4、R7、R8は同一又は異種の水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数2〜20のアルケニル基である。R5、R6、R9、R10は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、あるいはR5とR6、R9とR10は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。なお、R5とR6、R9とR10が互いに結合して環を形成する場合、R5とR6、R9とR10が結合する炭素原子を含めた環の炭素数は5〜30、特に6〜28である。)
【0034】
上記一般式(2)で示されるビスフェノール化合物として具体的には、下記のものが例示される。
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
【化7】

【0038】
【化8】

【0039】
【化9】

【0040】
【化10】

【0041】
【化11】

【0042】
【化12】


(式中、R3、R4は上記の通りである。)
【0043】
上記一般式(3)で示されるビスナフトール化合物は、下記に例示される。
【化13】

【0044】
【化14】

【0045】
【化15】

【0046】
【化16】

【0047】
【化17】

【0048】
【化18】

【0049】
【化19】


(式中、R7、R8は上記の通りである。)
【0050】
上記一般式(2)、(3)で示される化合物は、フェノールあるいはナフトールと対応するケトン化合物とを常法に従って反応させることによって得ることができる。
【0051】
本発明にかかわる下層膜に用いるノボラック樹脂おいて、スルホ基を有する芳香族炭化水素は、アルデヒド類との縮合反応によってノボラック化した繰り返し単位を有する。
【0052】
ここで用いられるアルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド、フルフラール等を挙げることができる。これらのうち、特にホルムアルデヒドを好適に用いることができる。
【0053】
これらのアルデヒド類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記アルデヒド類の使用量は、スルホ基を有する芳香族炭化水素類1モルに対して0.2〜5モルが好ましく、より好ましくは0.5〜2モルである。
【0054】
スルホ基を有する芳香族炭化水素類とアルデヒド類の縮合反応に触媒を用いることもできる。
具体的には、塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸性触媒を挙げることができる。
これらの酸性触媒の使用量はスルホ基を有する芳香族炭化水素類1モルに対して1×10-5〜5×10-1モルである。
【0055】
なお、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどの非共役2重結合を有する化合物との共重合反応の場合は、必ずしもアルデヒド類は必要ない。
【0056】
重縮合における反応溶媒として、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン又はこれらの混合溶媒を用いることができる。
これらの溶媒は、反応原料100質量部に対して、好ましくは0〜2,000質量部の範囲である。
反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができるが、通常10〜200℃の範囲である。
【0057】
上記縮合反応方法としては、フェノール類、アルデヒド類、触媒を一括で仕込む方法や、触媒存在下でフェノール類、アルデヒド類を滴下していく方法がある。
重縮合反応終了後、系内に存在する未反応原料、触媒等を除去するために、反応釜の温度を130〜230℃にまで上昇させ、1〜50mmHg程度で揮発分を除去することができる。
【0058】
上記一般式(1)で示される繰り返し単位を得るためのスルホ基含有フェノール類は単独で重合してもよいが、他のフェノール類を共重合してもよい。
【0059】
これによって得られたノボラック樹脂は、上記式(1)の繰り返し単位Aを1〜100モル%、特に5〜100モル%含有することが好ましく、また、上記共重合可能なフェノール類に基づく繰り返し単位Bの含有量は0〜98モル%、特に0〜95モル%、上記のその他の共重合可能なフェノール性水酸基を持たないモノマーに基づく繰り返し単位Cの含有量は0〜90モル%、特に0〜80モル%とすることが好ましい。
【0060】
この場合、繰り返し単位Bを含むことが好ましく、ノボラック樹脂が繰り返し単位A、繰り返し単位B、必要により繰り返し単位Cからなる場合は、
繰り返し単位A:1モル%≦A≦100モル%、特に2モル%≦A≦100モル%
繰り返し単位B:0モル%≦B≦98モル%、特に0モル%≦B≦95モル%
繰り返し単位C:0モル%≦C≦90モル%、特に0モル%≦C≦80モル%
であることが好ましい。なお、繰り返し単位Cを含む場合、その割合は5モル%以上、特に10モル%以上とすることが好ましく、この際、繰り返し単位Bは0モル%であってもよい。
【0061】
ノボラック樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の分子量は、重量平均分子量(Mw)が1,000〜30,000、特に2,000〜20,000であることが好ましい。分子量分布は1.2〜7の範囲内が好ましく用いられるが、モノマー成分、オリゴマー成分又は分子量(Mw)1,000以下の低分子量体をカットして分子量分布を狭くした方が、架橋効率が高くなり、また、ベーク中の揮発成分を抑えることによりベークカップ周辺の汚染を防ぐことができる。
【0062】
本発明の一般式(1)で示される繰り返し単位を有するノボラック樹脂の193nmにおける透明性を向上させるために、水素添加を行うことができる。好ましい水素添加の割合は、芳香族基の80モル%以下、特に60モル%以下である。なお、その下限は0モル%であるが、水素添加を行う場合、5モル%以上とすることが好ましい。
【0063】
更に、本発明では、一般式(1)の繰り返し単位を有するノボラック樹脂に他のポリマーをブレンドすることもできる。ブレンド用ポリマーとしては、前記一般式(1)の繰り返し単位を有するノボラック樹脂と混合し、スピンコーティングの成膜性や、段差基板での埋め込み特性を向上させる役割を持つものが好適である。また、炭素密度が高くエッチング耐性の高い材料がより好適に選ばれる。このようなブレンド用ポリマーとしては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール、4−トリチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−t−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’−ジメチル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’−ジアリル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’−ジフルオロ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’−ジフェニル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’−ジメトキシ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’,4,4’−ヘキサメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−5,5’−ジオール、5,5’−ジメチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール及び1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3−ヒドロキシ−ナフタレン−2−カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどのノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレート及びこれらの共重合体が挙げられる。
【0064】
上記ブレンド用ポリマーの配合量は、一般式(1)の繰り返し単位を有するノボラック樹脂100質量部に対して0〜1,000質量部、好ましくは0〜500質量部である。
【0065】
反射防止膜を含む下層膜に要求される性能の一つとして、上層膜、例えば珪素含有中間層及びレジスト膜とのインターミキシングがないこと、上層膜ヘの低分子成分の拡散がないことが挙げられる[Proc. SPIE Vol. 2195 (1994) p225−229]。これらを防止するために、一般的に反射防止膜のスピンコート後のベークで熱架橋するという方法が採られている。そのため、反射防止膜材料の成分として架橋剤を添加する場合、ポリマーに架橋性の置換基を導入する方法が採られることがある。架橋剤を特に添加していない場合でも、式(1)の繰り返し単位を有するノボラック樹脂の場合は、300℃以上の加熱によりヒドロキシ基が縮合反応、あるいはスルホン酸が触媒となって芳香族炭化水素の縮合によって架橋が進行する。特に芳香族炭化水素の縮合が進行した場合は、アモルファスカーボンライクな膜になることによって炭素密度が向上し、極めて強いエッチング耐性を有する膜が形成される。
【0066】
本発明で使用可能な架橋剤の具体例は特開2008−65303号公報の段落[0075]〜[0080]に記載されている。その配合量は、スルホ基を有するノボラック樹脂100質量部に対し、1〜50質量部、特に2〜30質量部が好ましい。
【0067】
本発明においては、熱による架橋反応を更に促進させるための酸発生剤を添加することができる。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。
【0068】
本発明で使用される酸発生剤としては、特開2008−65303号公報の段落[0081]〜[0111]に記載されている。特開2008−39811号公報に示されるイミド酸あるいはメチド酸のアンモニウム塩を熱酸発生剤として添加することもできるし、特開2008−39815号公報のトリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロオクチルスルホン酸以外のα位がフッ素で置換されたPFAS(Perfluoro alkyl sulfonic acid)に該当しないスルホン酸のアンモニウム塩を添加することもできる。その配合量は、スルホ基を有するノボラック樹脂100質量部に対し、0.001〜30質量部、特に0.1〜20質量部が好ましい。
【0069】
更に、本発明の下層膜形成材料には、スルホ基を中和してアミン塩にし、架橋剤を添加した場合に常温保存時の架橋反応の進行を防止し、保存安定性を向上させるための塩基性化合物を配合することができる。
このような塩基性化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられる。
【0070】
具体的には、第一級の脂肪族アミン類として、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、tert−アミルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン等が例示され、第二級の脂肪族アミン類として、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、N,N−ジメチルメチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルテトラエチレンペンタミン等が例示され、第三級の脂肪族アミン類として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルテトラエチレンペンタミン等が例示される。
【0071】
また、混成アミン類としては、例えばジメチルエチルアミン、メチルエチルプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジルジメチルアミン等が例示される。芳香族アミン類及び複素環アミン類の具体例としては、アニリン誘導体(例えばアニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,6−ジニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、N,N−ジメチルトルイジン等)、ジフェニル(p−トリル)アミン、メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニレンジアミン、ナフチルアミン、ジアミノナフタレン、ピロール誘導体(例えばピロール、2H−ピロール、1−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、N−メチルピロール等)、オキサゾール誘導体(例えばオキサゾール、イソオキサゾール等)、チアゾール誘導体(例えばチアゾール、イソチアゾール等)、イミダゾール誘導体(例えばイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール等)、ピラゾール誘導体、フラザン誘導体、ピロリン誘導体(例えばピロリン、2−メチル−1−ピロリン等)、ピロリジン誘導体(例えばピロリジン、N−メチルピロリジン、ピロリジノン、N−メチルピロリドン等)、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピリジン誘導体(例えばピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、1−メチル−2−ピリドン、4−ピロリジノピリジン、1−メチル−4−フェニルピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン等)、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、1H−インダゾール誘導体、インドリン誘導体、キノリン誘導体(例えばキノリン、3−キノリンカルボニトリル等)、イソキノリン誘導体、シンノリン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、フタラジン誘導体、プリン誘導体、プテリジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントリジン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体、アデニン誘導体、アデノシン誘導体、グアニン誘導体、グアノシン誘導体、ウラシル誘導体、ウリジン誘導体等が例示される。
【0072】
更に、カルボキシ基を有する含窒素化合物としては、例えばアミノ安息香酸、インドールカルボン酸、アミノ酸誘導体(例えばニコチン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシルロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、メトキシアラニン)等が例示され、スルホニル基を有する含窒素化合物として3−ピリジンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム等が例示され、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物としては、2−ヒドロキシピリジン、アミノクレゾール、2,4−キノリンジオール、3−インドールメタノールヒドレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2’−イミノジエタノール、2−アミノエタノ−ル、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン、ピペリジンエタノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、3−ピロリジノ−1,2−プロパンジオール、8−ヒドロキシユロリジン、3−クイヌクリジノール、3−トロパノール、1−メチル−2−ピロリジンエタノール、1−アジリジンエタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)イソニコチンアミド等が例示される。アミド誘導体としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド等が例示される。イミド誘導体としては、フタルイミド、サクシンイミド、マレイミド等が例示される。
【0073】
塩基性化合物の配合量はスルホ基1モルに対して0.1〜2モル、特に0.5〜1.5モルが好適である。配合量が0.1モルより少ないと配合効果がなく、2モルを超えると熱で発生した酸を全てトラップして架橋しなくなったり、ポイゾニング耐性が低下したりする場合がある。
【0074】
本発明の下層膜形成材料において使用可能な有機溶剤としては、前記のベースポリマー、酸発生剤、架橋剤、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。その具体例を列挙すると、シクロヘキサノン、メチル−2−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合使用できるが、これらに限定されるものではない。本発明においては、これら有機溶剤の中でもジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びこれらの混合溶剤が好ましく使用される。
【0075】
有機溶剤の配合量は、ベースポリマー100質量部に対して200〜10,000質量部が好ましく、特に300〜5,000質量部とすることがより好ましい。
【0076】
本発明の下層膜は、フォトレジスト組成物と同様にスピンコート法などで被加工基板上に作製することが可能である。スピンコート後、溶媒を蒸発し、上層レジスト膜とミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベークをすることが望ましい。ベーク温度は80〜450℃の範囲内で、10〜600秒の範囲内が好ましく用いられる。なお、この下層膜の厚さは適宜選定されるが、10〜20,000nm、特に30〜15,000nmとすることが好ましい。下層膜を作製した後、3層プロセスの場合はその上に珪素含有中間層、更にその上に珪素を含まない単層レジスト層を作製する。また、珪素を含まない炭化水素系材料からなる通常の反射防止膜を形成してもよい。
この場合、これらのレジスト層を形成するためのフォトレジスト組成物としては公知のものを使用することができる。
【0077】
3層プロセス用の珪素含有中間層としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層が好ましく用いられる。中間層に反射防止膜として効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。
【0078】
特に193nm露光用としては、下層膜として芳香族基を多く含み、基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなるが、中間層で反射を抑えることによって基板反射を0.5%以下にすることができる。
NAが1.0以上の液浸リソグラフィーでは光の入射角が極めて浅くなる。基板反射を抑えるためには、反射防止膜機能を持たせた珪素含有中間層を設けた3層レジストプロセスは有効であるが、それでも光の入射角が浅くなるにつれて(NAが増加するにつれて)基板反射が増加する(Proc. SPIE Vol.6153 p61530K (2006))。スネルの法則によれば、光の入射角を深くするためには屈折率を高くする必要がある。但し、屈折率が高すぎると反射が増大するので最適値が存在する。図1において基板反射が最低になっているのは屈折率が1.8前後であり、これはレジストの屈折率1.7よりもやや高い値の下層膜の場合である。反射防止機能を有する珪素含有中間層を適用した3層でNAが1.0を超える液浸リソグラフィーにおける基板反射は一段と高くなるために、図1で示される下層膜1層のみの場合の反射の挙動に近くなる。NAが1.0を超える液浸リソグラフィーにおいては、反射防止機能を有する珪素含有中間層を適用した3層プロセスにおいても下層膜のn,k値が最適値から外れていると反射が大きくなるために、NA1.0以下のドライ露光の場合よりもいっそうの最適化が必要である。n値の理想値としてはレジストの屈折率1.7よりも若干高い1.8であるが、1.5以上であれば反射率を1%以下にすることが可能である。k値としては0.3が理想値であるが、0.2〜0.45の範囲であれば反射率を1%以下にすることが可能である。反射率が1%であればレジストの側壁に定在波による凹凸の発生が見られない。
ナフタレンは波長193nmでの吸収が少なく、例えばナフトールノボラックなどはk値が0.4前後で3層プロセスに用いるには十分なk値を有している。ところがn値が低く1.4前後である。共役を伸ばして吸収最大波長を長波長側にずらし、k値を下げようとすると、n値のピークも長波長側にずれてしまうために値が低くなってしまうのは芳香族基を用いた場合の欠点である。
ここで、硫黄原子の導入は屈折率を上げる効果がある。硫黄は吸収をずらして屈折率を上げているわけではないので、n値が高く、比較的k値が低い特徴がある。よって硫黄を含んでいるスルホ基の導入によって屈折率が増加し、芳香族が多くを占めている下層膜材料においても理想値に近い屈折率を得ることができる。
【0079】
反射防止効果がある中間層としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセニル基、193nm露光用としてはフェニル基又は珪素−珪素結合を有する吸光基をペンダントし、酸あるいは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0080】
また、Chemical Vapour Deposition(CVD)法で形成した中間層を用いることもできる。CVD法で作製した反射防止膜としての効果が高い中間層としてはSiON膜が知られている。CVD法よりスピンコート法による中間層の形成の方が簡便でコスト的なメリットがある。3層プロセスにおける上層レジスト組成物は、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられている単層レジスト組成物と同じものを用いることができる。
【0081】
上記フォトレジスト組成物によりレジスト層を形成する場合、上記下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法が好ましく用いられる。レジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、80〜180℃で10〜300秒の範囲が好ましい。その後、常法に従って露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得る。なお、レジスト膜の厚さは特に制限されないが、30〜500nm、特に50〜400nmが好ましい。
また、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3〜20nmの軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)、X線等を挙げることができる。
【0082】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。2層プロセスにおける下層膜エッチングは、珪素を含有するフォトレジストパターンをマスクにして酸素ガスを用いたエッチングを行う。酸素ガスに加えて、He、Arなどの不活性ガスや、CO、CO2、NH3、SO2、N2、NO2、H2ガスを加えることも可能であり、酸素ガスを使わずにCO、CO2、NH3、SO2、N2、NO2、H2ガスだけでエッチングを行うこともできる。特に後者のガスは、パターン側壁のアンダーカット防止のための側壁保護のために用いられる。3層プロセスにおける珪素含有中間層のエッチングは、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして中間層の加工を行う。次いで上記酸素ガスエッチングを行い、中間層パターンをマスクにして下層膜の加工を行う。
【0083】
次の被加工基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば基板がSiO2、SiNであればフロン系ガスを主体としたエッチング、p−SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスでエッチングした場合、2層レジストプロセスの珪素含有レジストと3層プロセスの珪素含有中間層は基板加工と同時に剥離される。塩素系、臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、珪素含有レジスト又は珪素含有中間層の剥離は基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0084】
本発明の下層膜は、これら被加工基板のエッチング耐性に優れる特徴がある。
なお、被加工基板としては、基板上に形成される。基板としては、特に限定されるものではなく、Si、α−Si、p−Si、SiO2、SiN、SiON、W、TiN、Al等で被加工膜(被加工基板)と異なる材質のものが用いられる。被加工膜としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p−Si、α−Si、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si、Cr、CrO、CrN、MoSi等種々のLow−k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50〜10,000nm、特に100〜5,000nm厚さに形成し得る。
【0085】
本発明のパターン形成方法は、このようにフォトレジスト下層膜を基板上に適用し、該下層膜の上に必要により中間層を介してフォトレジスト組成物の層を適用し、このフォトレジスト層の所用領域に放射線を照射し、現像液で現像してレジストパターンを形成し、ドライエッチング装置でフォトレジストパターン層をマスクにして下層膜層及び基板を加工するものであるが、2層レジスト加工プロセス、3層レジスト加工プロセスの一例について更に具体的に示すと下記の通りである。
【0086】
一方、3層レジスト加工プロセスの場合、図6(A)に示したように基板11bの上に積層された被加工基板11a上に下層膜12を形成した後、珪素含有中間層14を形成し、その上に単層フォトレジスト層13を形成する。
【0087】
次いで、フォトレジスト層13の所用部分13’を露光し[図6(B)]、PEB現像を行ってフォトレジストパターン層13を形成する[図6(C)]。このフォトレジストパターン層13をマスクとし、CF系ガスを用いて中間層14をエッチング加工し[図6(D)]、フォトレジストパターン層を除去後、この加工された中間層14をマスクとして下層膜12を酸素プラズマエッチングし[図6(E)]、更に加工中間層13を除去後、被加工基板11aをエッチング加工するものである[図6(F)]。
【実施例】
【0088】
以下、合成例及び実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
なお、分子量の測定法は具体的に下記の方法で行った。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0089】
[合成例1]
300mLのフラスコにナフタレン−1−スルホン酸を208g、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により触媒と金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、ナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物のポリマー1を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=1,800、Mw/Mn=5.20
【化20】

【0090】
[合成例2]
300mLのフラスコにベンゼンスルホン酸を158g、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により触媒と金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、ベンゼンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物のポリマー2を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=2,200、Mw/Mn=7.40
【化21】

【0091】
[合成例3]
合成例1で得られたナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(ポリマー1)46g、水50g、1−ナフトール115gを加え、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き共縮合物ポリマー3を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=4,900、Mw/Mn=6.90
【化22】

【0092】
[合成例4]
合成例1で得られたナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(ポリマー1)46g、水50g、下記化合物1の280gを加え、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、共縮合物ポリマー4を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=6,600、Mw/Mn=5.90
【化23】

【0093】
[合成例5]
合成例1で得られたナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(ポリマー1)46g、水50g、下記化合物2の320gを加え、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、共縮合物ポリマー5を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=5,300、Mw/Mn=6.10
【化24】

【0094】
[合成例6]
合成例1で得られたナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(ポリマー1)62g、水50g、下記化合物3の315gを加え、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き共縮合物ポリマー6を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=4,400、Mw/Mn=7.40
【化25】

【0095】
[合成例7]
合成例1で得られたナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(ポリマー1)62g、水50g、下記化合物4の298gを加え、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、共縮合物ポリマー7を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=5,900、Mw/Mn=7.10
【化26】

【0096】
[合成例8]
合成例1で得られたナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(ポリマー1)62g、水50g、下記化合物5の224gを加え、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、共縮合物ポリマー8を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=8,800、Mw/Mn=7.70
【化27】

【0097】
[合成例9]
合成例1で得られたナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(ポリマー1)62g、水50g、下記化合物6の194gを加え、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、共縮合物ポリマー9を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=4,900、Mw/Mn=5.80
【化28】

【0098】
[合成例10]
合成例1で得られたナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(ポリマー1)83g、水50g、下記化合物7の201gを加え、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、共縮合物ポリマー10を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=4,600、Mw/Mn=6.20
【化29】

【0099】
[合成例11]
合成例1で得られたナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(ポリマー1)62g、水50g、下記化合物8の201gを加え、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、共縮合物ポリマー11を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=6,400、Mw/Mn=7.20
【化30】

【0100】
[合成例12]
合成例1で得られたナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(ポリマー1)46g、1−ピレンスルホン酸33g、水50g、1−ナフトール115gを加え、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、共縮合物ポリマー12を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=3,200、Mw/Mn=5.20
【化31】

【0101】
[合成例13]
合成例1で得られたナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(ポリマー1)46g、2−アントラセンスルホン酸31g、水50g、1−ナフトール115gを加え、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、共縮合物ポリマー13を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=6,400、Mw/Mn=6.60
【化32】

【0102】
[合成例14]
合成例1で得られたナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(ポリマー1)46g、3−フェナントレンスルホン酸31g、水50g、1−ナフトール115gを加え、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、共縮合物ポリマー14を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=3,200、Mw/Mn=5.20
【化33】

【0103】
[合成例15]
合成例2で得られたベンゼンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(ポリマー2)42g、水50g、下記化合物3の315gを加え、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、共縮合物ポリマー15を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=8,100、Mw/Mn=8.40
【化34】

【0104】
[合成例16]
ナフタレンスルホン酸146g、ジシクロペンタジエン42gを混合し、トリフルオロメタンスルホン酸0.2gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、共縮合物ポリマー16を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=4,100、Mw/Mn=5.90
【化35】

【0105】
[合成例17]
ナフタレンスルホン酸146g、トリシクロペンタジエン59gを混合し、トリフルオロメタンスルホン酸0.2gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、共縮合物ポリマー17を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=3,700、Mw/Mn=5.90
【化36】

【0106】
[合成例18]
合成例1で得られたナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(ポリマー1)46g、1,5−ナフタレンジメタノール82g、水50gを加え、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、共縮合物ポリマー18を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=6,900、Mw/Mn=5.90
【化37】

【0107】
[合成例19]
合成例1で得られたナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物(ポリマー1)46g、2,8−フルオレンジメタノール116g、水50gを加え、37%ホルマリン水溶液30gを加え、撹拌しながら100℃で4時間反応させた。反応後、メチルイソブチルケトン500mLに溶解し、十分な水洗により金属不純物を除去し、溶媒を減圧除去し、150℃,2mmHgまで減圧し、水分、未反応モノマーを除き、共縮合物ポリマー19を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求め、1H−NMR分析によりポリマー中の比率を以下のように求めた。
Mw=9,100、Mw/Mn=7.60
【化38】

【0108】
[比較合成例1]
500mLのフラスコに4−ヒドロキシスチレンを40g、2−メタクリル酸−1−アダマンタンを160g、溶媒としてトルエンを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を4.1g加え、80℃まで昇温後、24時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール300mL、水50mLの混合溶液中に沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体188gを得た。
得られた重合体を1H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
4−ヒドロキシスチレン:2−メタクリル酸−1−アダマンタン=0.32:0.68
重量平均分子量(Mw)=10,900
分子量分布(Mw/Mn)=1.77
この重合体を比較例用ポリマー1とする。
【0109】
なお、上記合成例において、下記化合物1〜8を用いた。
【化39】

【0110】
[レジスト下層膜材料の調製]
上記ポリマー1〜19で示される樹脂、比較例用ポリマー1で示される樹脂、比較例2としてはm,p比が0.4,0.6でMw=8,000、Mw/Mn=4.5のクレゾールノボラック樹脂(比較例用ポリマー2)、下記に示すブレンドオリゴマー1、ブレンドフェノール低核体1〜3、AG1で示される酸発生剤、CR1,2で示される架橋剤を、FC−430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む有機溶剤中に表1に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによってレジスト下層膜材料(実施例、比較例)をそれぞれ調製した。
【0111】
ポリマー1〜19:上記合成例1〜19で得たポリマー
比較例用ポリマー1:比較合成例1で得たポリマー
ブレンドオリゴマー1(下記構造式参照)
【化40】


ブレンドフェノール低核体1〜3(下記構造式参照)
【化41】


酸発生剤:AG1(下記構造式参照)
【化42】


架橋剤:CR1,2(下記構造式参照)
【化43】


有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
CyH(シクロヘキサノン)
中間層ポリマー1(下記構造式参照)
【化44】

【0112】
[実施例、比較例]
表1に示すように、ポリマー1〜19、ブレンドポリマー(ブレンドフェノール低核体1〜3)、ブレンドオリゴマー1で示される樹脂、比較例用ポリマー1,2で示される樹脂、ArF珪素含有中間層ポリマー1、AG1で示される酸発生剤、CR1,2で示される架橋剤を、FC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表1に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって下層膜溶液と中間膜層溶液をそれぞれ調製した。
【0113】
下層膜形成材料をそれぞれシリコン基板上に塗布して、UDL−1〜25及び比較例UDL−3は300℃で60秒間、比較例UDL−1,2は200℃で60秒間ベークして膜厚200nmの下層膜を形成した。中間層としては、中間膜層溶液をスピンコートし、200℃で60秒間ベークして、膜厚70nmの珪素含有膜(以下、SOG1と略称する)を形成し、J.A.ウーラム社の入射角度可変の分光エリプソメーター(VASE)で波長193nmにおけるUDL−1〜25、SOG1、比較例UDL−1〜3の屈折率(n,k)を求め、その結果を表1に示した。
【0114】
表2に示す組成でレジストポリマー、塩基性化合物、酸発生剤をFC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表2に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって単層レジスト溶液を調製した。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
【化45】


有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0118】
次に、ドライエッチング耐性のテストを行った。まず、前記屈折率測定に用いたものと同じ下層膜(UDL−1〜25、比較例UDL−1〜3)を作製し、これらの下層膜のCF4/CHF3系ガスでのエッチング試験として下記(1)の条件で試験した。この場合、東京エレクトロン(株)製ドライエッチング装置TE−8500Pを用い、エッチング前後の下層膜及び膜厚差を測定することにより、エッチング速度を求めた。結果を表3に示す。
(1)CF4/CHF3系ガスでのエッチング試験
エッチング条件は下記に示す通りである。
チャンバー圧力 40.0Pa
RFパワー 1,300W
ギャップ 9mm
CHF3ガス流量 30mL/min
CF4ガス流量 30mL/min
Arガス流量 100mL/min
時間 60sec
【0119】
【表3】

【0120】
低誘電率膜基板上レジストパターン形状の観察
シリコン基板上に信越化学工業(株)製ポーラスシリカLK−0001をスピンコートし、400℃で60秒間ベークして比誘電率2.5の低誘電率絶縁膜を作製した。低誘電率絶縁基板をトリエチルアミン溶液に浸し、80℃で10分間加熱し、アミン成分を低誘電率膜に吸着させた。
上記方法でアミン成分を吸着させた低誘電率絶縁基板に、上記調製したレジストUDL−1〜25及び比較例UDL−3の溶液を塗布し、300℃で60秒間ベークして膜厚200nmのレジスト下層膜を形成した。比較例UDL−1,2の溶液を塗布したものは、200℃で60秒間ベークして膜厚200nmのレジスト下層膜を形成した。
次に、上記調製したSOG1を上記UDL−1〜25、比較例UDL−1〜3上に塗布して、200℃で60秒間ベークし、膜厚70nmのSOG1膜を形成した。次に、上記調製した単層レジスト上層膜材料の溶液をSOG1膜上に塗布して、120℃で60秒間ベークし、膜厚180nmの単層レジスト上層膜を形成した。
次いで、ArF露光装置((株)ニコン製;S307E、NA0.85、σ0.93、4/5輪帯照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、110℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像し、75nmL/S(ラインアンドスペース)のポジ型のパターンを得た。この得られたレジスト断面パターン形状を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4700)にて観察した結果を表4に示す。
【0121】
【表4】

【0122】
表4の結果から、実施例1〜25のレジスト下層膜材料を用いた場合では、レジストと下地との界面付近で、アミンで汚染された下地基板からの影響がなく、裾引きやアンダーカットによる形状変化が起きておらず、矩形のパターンが得られていることを確認した。
【0123】
表3に示すように、本発明にかかわる下層膜のCF4/CHF3系ガスエッチングの速度は、クレゾールノボラック樹脂やポリヒドロキシスチレンを用いた比較例よりも十分にエッチング速度が遅い。更に、表4に示すようにアミンで汚染された低誘電率膜からの汚染を防いでレジストパターンの裾引き形状を防ぐ効果があることが認められた。
【符号の説明】
【0124】
11b 基板
11a 被加工基板(被加工膜)
12 下層膜
14 珪素含有中間膜
13 フォトレジスト層
13’ 露光部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホ基又はそのアミン塩で置換された炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を有するノボラック樹脂を含有することを特徴とするフォトレジスト下層膜形成材料。
【請求項2】
スルホ基又はそのアミン塩で置換された炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を有するノボラック樹脂が、下記一般式(1)で示されることを特徴とする請求項1記載のフォトレジスト下層膜形成材料。
【化1】


(式中、Xは水素原子、アミン化合物に水素原子を加えた化合物、又は4級アンモニウムである。R1は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。円は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基である。R2は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基、アミノ基、又はヒドロキシ基である。mは1〜4の整数、nは0〜3の整数である。)
【請求項3】
ナフタレンスルホン酸、アントラセンスルホン酸、アセナフテンスルホン酸、フルオレンスルホン酸、フェナントレンスルホン酸、ピレンスルホン酸又はこれらのアンモニウム塩から選ばれる部分構造を有するノボラック樹脂を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のフォトレジスト下層膜形成材料。
【請求項4】
ノボラック樹脂が、更にフェノール化合物、ビスフェノール化合物、ビスナフトール化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物のノボラック体の繰り返し単位を有するものである請求項1乃至3のいずれか1項記載のフォトレジスト下層膜形成材料。
【請求項5】
ノボラック樹脂が、更にフェノール性水酸基を持たない非共役2重結合を有する化合物に由来する繰り返し単位を有するものである請求項1乃至4のいずれか1項記載のフォトレジスト下層膜形成材料。
【請求項6】
更に、有機溶剤を含有する請求項1乃至5のいずれか1項記載のフォトレジスト下層膜形成材料。
【請求項7】
更に、架橋剤及び酸発生剤を含有する請求項1乃至6のいずれか1項記載のフォトレジスト下層膜形成材料。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載のフォトレジスト下層膜形成材料を被加工基板上に適用し、該形成された下層膜層の上にフォトレジスト組成物の層を適用し、このフォトレジスト層の所用領域に放射線を照射し、現像液で現像してフォトレジストパターンを形成し、次にドライエッチング装置でこのフォトレジストパターン層をマスクにしてフォトレジスト下層膜層及び被加工基板を加工することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項記載のフォトレジスト下層膜形成材料を被加工基板上に適用し、該形成された下層膜層の上に珪素原子を含有する中間膜層を適用し、該中間膜層の上にフォトレジスト組成物の層を適用し、このフォトレジスト層の所用領域に放射線を照射し、現像液で現像してフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチング装置でこのフォトレジストパターン層をマスクにして中間膜層を加工し、フォトレジストパターン層を除去後、上記加工した中間膜層をマスクにして下層膜層、次いで被加工基板を加工することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
フォトレジスト組成物が珪素原子を含有しないポリマーを含み、中間膜層をマスクにして下層膜を加工するドライエッチングを、酸素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行う請求項9記載のパターン形成方法。
【請求項11】
被加工膜が、比誘電率が3.5以下の低誘電率膜又は窒化膜である請求項9又は10記載のパターン形成方法。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−134437(P2010−134437A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238077(P2009−238077)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】