説明

フッ素含有ポリシロキサン、それを用いる感光性樹脂組成物及びその硬化物

【課題】硬化物が耐熱性に優れた、塗布性、重ね塗布性に優れた低屈折率感光性樹脂組成物を開発する。
【解決手段】一般式RfRSi(OR3−a(式中、Rfはフッ素を含む有機基を表す。aは0または1の整数である。)で示されるアルコキシケイ素化合物、一般式XRSi(OR3−b(式中、Xはエポキシ基を含む有機基を表す。bは0または1の整数である。RはC1〜C4のアルキル基を表す。)で示されるアルコキシケイ素化合物、及び一般式YSi(OR4−c−d(式中、Yは(メタ)アクリル基を含む有機基を表す。cは0または1の整数、dは0〜2の整数である。)で示されるアルコキシケイ素化合物を塩基性触媒の存在下、共加水分解縮合させることにより得られるフッ素含有ポリシロキサン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な低屈折フッ素含有ポリシロキサン、及びそれと光重合開始剤から成る感光性樹脂組成物に関するものであり、さらには得られた硬化物が耐熱性、透明性に優れることから、主として液晶ディスプレイ用パネル、CCD、カラーフィルター保護膜等のクリヤーコーティング剤、レジスト下層膜に適した感光性樹脂組成物およびその硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、低屈折率高分子材料の光学用物品への進出は著しく、液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター、CCD用保護膜、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、光ディスク、光ファイバー、光導波路等への検討が盛んに行われている。その中でも、液晶ディスプレイ用パネルのクリヤーコーティングや、カラーフィルターの段差を平滑にすることおよび後工程での薬品処理や加熱からカラーフィルターを保護するクリヤーコーティング等への検討が行われている。このような目的のため、現在、アクリル系の低屈折率樹脂(特許文献1、2)、アクリル系とエポキシ系を併用した低屈折率樹脂(特許文献3)が提案されている。また、エポキシ基含有ケイ素化合物を含む組成物として、特許文献4、特許文献5、特許文献6には耐熱性に優れた硬化物を与える組成物が、特許文献7には高硬度・基板への密着性に優れた硬化物を与える組成物がそれぞれ提案されているが、優れた塗布性や耐熱性を併せ持つのではなかった。
【0003】
【特許文献1】特開平10−182745号公報
【特許文献2】特開2004−31532号公報
【特許文献3】特開平11−2702号公報
【特許文献4】特開2004−43696号公報
【特許文献5】特開2004−256609号公報
【特許文献6】特開2004−346144号公報
【特許文献7】特開2005−15581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでの低屈折率樹脂組成物は一般に屈折率を低くすればするほどフッ素導入比率が増加し、塗布性や耐熱性の低下を招いていた。特に電子材料用途のようなスピンコートによってμmレベル薄膜化塗布が行われるようになった近年では塗布膜の平坦性や多層有機膜間での均一性などが問われ、このような最先端技術分野には塗布性が非常に重要な要求特性となってきた。単膜の平坦性だけでなく、上層ないしは下層有機膜に対してハジキによる塗布欠陥の無い低屈折率樹脂組成物が求められるようになってきた。また、デバイスの信頼性向上や鉛フリーはんだのような新たな課題が浮上し、材料に対する耐熱性の要求が一段と厳しくなってきており、塗布性、耐熱性に優れた低屈折率樹脂が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果本発明に至った。
すなわち本発明は、
下記一般式(1)
RfRSi(OR3−a(1)
(式中、Rfはフッ素を含む有機基、RはC1〜C10のアルキル基、C1〜C10の置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。aは0または1の整数である。RはC1〜C4のアルキル基を表す。)
で示されるアルコキシケイ素化合物、
下記一般式(2)
XRSi(OR3−b(2)
(式中、Xはエポキシ基を含む有機基、RはC1〜C10のアルキル基、C1〜C10の置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。bは0または1の整数である。RはC1〜C4のアルキル基を表す。)
で示されるアルコキシケイ素化合物、
及び下記一般式(3)
Si(OR4−c−d(3)
(式中、Yは(メタ)アクリル基を含む有機基、RはC1〜C10のアルキル基、C1〜C10の置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。cは0または1の整数、dは0〜2の整数である。RはC1〜C4のアルキル基を表す。)
で示されるアルコキシケイ素化合物を塩基性触媒の存在下、共加水分解縮合させることにより得られるフッ素含有ポリシロキサン(A)、
(2)一般式(1)の化合物において、Rfがフッ素原子を1〜20個有する有機基、一般式(2)の化合物において、Xがグリシドキシ基で置換されたC1〜C4のアルキル基又はオキシラン基を持ったC5〜C8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基である化合物であり、一般式(3)の化合物において、Yが(メタ)アクリロキシ基で置換されたC1〜C4のアルキル基である(1)記載のフッ素含有ポリシロキサン(A)、
(3)(1)又は(2)記載のフッ素含有ポリシロキサン(A)を含有する感光性樹脂組成物、
(4)さらに光重合開始剤(B)を含有する(3)に記載の感光性樹脂組成物、
(5)光重合開始剤(B)として、光カチオン重合開始剤と光ラジカル重合開始剤を併用することを特徴とする(4)に記載の感光性樹脂組成物、
(6)(3)乃至(5)のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物、
(7)(6)に記載の硬化物を含有する物品、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のフッ素含有ポリシロキサン(A)を用いた感光性樹脂組成物は低屈折率でかつ塗布性に優れており、さらにその硬化物は耐熱性に優れるため、光学用物品、特に液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター保護膜、CCD保護膜等のクリヤーコーティング剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のフッ素含有ポリシロキサン(A)は、一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)で示されるアルコキシケイ素化合物を塩基性触媒の存在下共加水分解縮合することにより得られる。
RfRSi(OR3−a(1)
(式中、Rfはフッ素を含む有機基、RはC1〜C10のアルキル基、C1〜C10の置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。aは0または1の整数である。RはC1〜C4のアルキル基を表す。)
XRSi(OR3−b(2)
(式中、Xはエポキシ基を含む有機基、RはC1〜C10のアルキル基、C1〜C10の置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。bは0または1の整数である。RはC1〜C4のアルキル基を表す。)
Si(OR4−c−d(3)
(式中、Yは(メタ)アクリル基を含む有機基、RはC1〜C10のアルキル基、C1〜C10の置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。cは0または1の整数、dは0〜2の整数である。RはC1〜C4のアルキル基を表す。)
【0008】
本発明で使用する、一般式(1)のフッ素置換された有機基を有するアルコキシケイ素化合物中のフッ素置換された有機基Rfとしては、フッ素置換された有機基であれば特に制限はないが、フッ素で置換された鎖状又は環状アルキル基が挙げられ、例えば、フッ素が3個以上のC1〜C14のフルオロアルキル基、フッ素が4個以上のC3〜C14のフルオロシクロアルキル基が例示される。これらの中でフッ素原子を3個〜20個有するC1〜C10のフルオロアルキル基、例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、トリフルオロブチル基、トリフルオロペンチル基、トリフルオロヘキシル基、トリフルオロオクチル基、トリフルオロデシル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘプタデカフルオロデシル基が好ましい。
【0009】
本発明で使用する、一般式(2)のアルコキシケイ素化合物中のエポキシ基を有する有機基Xとしては、エポキシ基を有する有機基であれば特に制限はないが、例えば、グリシドキシ基が結合したC1〜C4のアルキル基、グリシジル基、オキシラン基を持ったC5〜C8のシクロアルキル基で置換されたC1〜C6のアルキル基が挙げられる。C4以下のオキシグリシジル基が結合したグリシドキシアルキル基としては例えば、2−グリシドキシエチル、3−グリシドキシプロピル、4−グリシドキシブチル等のC4以下のオキシグリシジル基が結合したグリシドキシアルキル基が挙げられ、オキシラン基を持ったC5〜C8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基としては例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘプチル)エチル基、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ペンチル基等が挙げられる。これらの中で、C1〜C3のアルキル基にオキシグリシジル基が結合したグリシドキシアルキル基、オキシラン基を持ったC5〜C8のシクロアルキル基で置換されたC3以下のアルキル基、例えば、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基が好ましい。
【0010】
本発明で使用する、一般式(3)のアルコキシケイ素化合物中の(メタ)アクリル基を有する有機基Yとしては、(メタ)アクリル基を有する有機基であれば特に制限はないが、例えば、メタクリロキシメチル基、2−メタクリロキシエチル基、3−メタクリロキシプロピル基、4−メタクリロキシブチル基、アクリロキシメチル基、2−アクリロキシエチル基、3−アクリロキシプロピル基、4−アクリロキシブチル基等の(メタ)アクリロキシ基で置換されたC1〜C4のアルキル基が挙げられる。これらの中で(メタ)アクリロキシ基で置換されたC1〜C3のアルキル基、例えば2−メタクリロキシエチル基、3−メタクリロキシプロピル基、2−アクリロキシエチル基、3−アクリロキシプロピル基が好ましい。
【0011】
本発明で使用する一般式(1)における置換基R、一般式(2)における置換基R、一般式(3)における置換基Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、アミル基、へキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状または分岐状のC1〜C10のアルキル基または置換アルキル基、アリール基、置換アリール基等が挙げられる。これらの中で、C1〜C6のアルキル基、アリール基が好ましい。
【0012】
また、一般式(1)における置換基R、一般式(2)における置換基R、一般式(3)における置換基Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基等のC1〜C4のアルキル基が挙げられる。これらR、R、Rは、相溶性、反応性等の反応条件の観点から、メチル又はエチルであることが好ましい。
【0013】
一般式(1)の化合物として用いることの出来る化合物の好ましい具体例としては、例えば、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、トリフルオロエチルトリメトキシシラン、トリフルオロエチルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロブチルトリメトキシシラン、トリフルオロブチルトリエトキシシラン、トリフルオロペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロペンチルトリエトキシシラン、トリフルオロヘキシルトリメトキシシラン、トリフルオロヘキシルトリエトキシシラン、トリフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリフルオロデシルトリメトキシシラン、トリフルオロデシルトリエトキシシラン、パーフルオロエチルトリメトキシシラン、パーフルオロエチルトリエトキシシラン、パーフルオロプロピルトリメトキシシラン、パーフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘキサフルオロイソプロピルトリメトキシシラン、ヘキサフルオロイソプロピルトリエトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等が挙げられ、信越化学工業株式会社、チッソ株式会社、東レ・ダウコーニング株式会社などから入手可能である。
【0014】
これら一般式(1)で示されるアルコキシケイ素化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を用いても良い。
【0015】
一般式(2)の化合物として用いることのできる化合物の好ましい具体例としては、例えば、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、2−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、2−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、信越化学工業株式会社、チッソ株式会社、東レ・ダウコーニング株式会社などから入手可能である。
【0016】
これら一般式(2)で示されるアルコキシケイ素化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を用いても良い。
【0017】
一般式(3)の化合物として用いることのできる化合物の内、(メタ)アクリル基を有する化合物の好ましい具体例としては、例えば、2−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−メタクリロキシエチルメチルジメトキシシラン、2−メタクリロキシエチルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−アクリロキシエチルメチルジメトキシシラン、2−アクリロキシエチルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、信越化学工業株式会社、チッソ株式会社、東レ・ダウコーニング株式会社などから入手可能である。
【0018】
また、一般式(3)で示される化合物の内、(メタ)アクリル基を有しない化合物として用いることのできる化合物の好ましい具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0019】
これら一般式(3)で示されるアルコキシケイ素化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を用いても良い。なお、本発明においては、一般式(3)で示される化合物は(メタ)アクリル基を有する化合物、すなわち一般式(3)のcが1である場合が好ましい。
【0020】
本発明のフッ素含有ポリシロキサン(A)は、一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)のアルコキシケイ素化合物を、一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)のアルコキシケイ素化合物の合計重量を100重量%とした場合、一般式(1)は1〜70重量%、好ましくは5〜65重量%、一般式(2)は3〜80重量%、好ましくは5〜70重量%、一般式(3)は3〜70重量%、好ましくは5〜60重量%の割合となるように混合し、共加水分解縮合させることにより得ることが出来る。また、共加水分解縮合のために添加する水の添加量としては反応系全体のアルコキシ基1モルに対して0.1〜1.5モル当量が好ましく、0.2〜1.2モル当量が特に好ましい。
【0021】
上記縮合反応に使用する触媒は塩基性であれば特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの無機塩基、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチレントリアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなどの有機塩基を使用することが出来る。これらの中でも、特に反応性制御の点から無機塩基、アンモニア、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドが好ましい。触媒の添加量としては、反応に使用するアルコキシケイ素化合物の合計に対し、通常5×10‐4〜7.5重量%、好ましくは1×10‐3〜5重量%である。
【0022】
縮合反応は、無溶剤または溶剤中で行うことができる。溶剤としては、一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)のアルコキシケイ素化合物を溶解する溶剤であれば特に制限はない。このような溶剤としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのような非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が例示できる。その中でも非プロトン性極性溶媒、アルコール類が好ましい。溶剤の使用量は、反応が円滑に進行する範囲であれば特に制限はないが、一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)の化合物の合計重量100部に対して、通常50〜900重量部程度使用する。
【0023】
縮合反応における反応温度は、触媒量にもよるが、通常20〜160℃、好ましくは40〜140℃である。又、反応時間は通常1〜12時間である。
【0024】
また反応時に分子中に(メタ)アクリル基の熱重合を防止するため、熱重合禁止剤の添加が好ましい。使用しうる熱重合禁止剤としては、具体的には例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、2,6−t−ブチル−p−クレゾール等があげられ、一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)の化合物の合計重量100重量部に対して、通常5〜2000ppm、好ましくは10〜1000ppm程度使用する。
【0025】
このようにして得られる本発明のフッ素含有ポリシロキサン(A)の分子量は、重量平均分子量で400〜50000のものが好ましく、750〜30000のものがより好ましい。重量平均分子量で400未満の場合、組成物にした場合の硬化性が低下する傾向があり、50000より大きい場合、組成物にした場合の相溶性の低下、粘度の上昇等の組成物としての物性低下が見られることがある。
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明のフッ素含有ポリシロキサン(A)、必要に応じて光重合開始剤を含有する。
【0027】
本発明のフッ素含有ポリシロキサン(A)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分を100重量%としたとき5〜95重量%、好ましくは20〜80重量%である。含有量が少ないと組成物の硬化物の硬度が低くなり、多いと組成物の粘度が高くなり、操作性が悪くなりやすい。
【0028】
該光重合開始剤としては、通常の感光性樹脂組成物に使用されるものが挙げられ、具体的には例えば、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロボレート、トリスフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロボレート、4,4’−ビス[ビス(2−ヒドロキシエトキシフェニル)スルフォニオ]フェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルフォニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の光カチオン重合開始剤類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等の光ラジカル重合開始剤類が挙げられる。これらの添加割合としては、感光性樹脂組成物の固形分を100重量%としたとき、通常0.01〜30重量%、好ましくは、0.1〜25重量%である。
【0029】
上記の光重合開始剤は、単独または2種以上の混合物として使用しても良い。
【0030】
更に、必要に応じて、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等の安息香酸誘導体等の促進剤などと組み合わせて使用することができる。これらの促進剤の添加量としては、光重合開始剤100重量部に対して、100重量部以下の量である。
【0031】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて希釈剤を含有することができる。希釈剤としては、本発明の感光性樹脂組成物中の各成分を溶解するものであれば特に制限はなく、具体的には例えば、γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類;ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、シクロヘキサン等の炭化水素類;トリクロロエタン、テトラクロロエタン、モノクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ等の石油系有機溶剤等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
これらの希釈剤を含有する場合、その使用量は、本発明の感光性樹脂組成物の塗布方法にもよるが、1〜95重量%、好ましくは5〜90重量%である。
【0033】
本発明の感光性樹脂組成物は、更に用途に応じて、非反応性化合物、無機充填剤、有機充填剤、シランカップリング剤、粘着付与剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、顔料、染料等の添加剤を適宜使用することができる。
上記添加剤は、公知公用のものであれば如何なるものも、その硬化性、樹脂特性を損なわない範囲で、特に制限無く使用することができる。
【0034】
非反応性化合物とは、反応性が低いか、若しくは反応性の無い液状若しくは固体状のオリゴマーや樹脂であれば特に限定されないが、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エポキシ樹脂、液状ポリブタジェン、ジシクロペンタジェン誘導体、飽和ポリエステルオリゴマー、キシレン樹脂、ポリウレタンポリマー、ケトン樹脂、ジアリルフタレートポリマー(ダップ樹脂)、石油樹脂、ロジン樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコン系オリゴマーなどが挙げられる。
【0035】
無機充填剤としては、例えば、二酸化珪素、酸化珪素、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、カオリンクレー、焼成クレー、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、水酸アルミニウム、酸化アルミニウム、ガラス、雲母、硫酸バリウム、アルミナホワイト、ゼオライト、シリカバルーン、ガラスバルーン、等を挙げることができる。これらの無機充填剤には、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤などを添加、反応させるなどの方法により、ハロゲン基、エポキシ基、水酸基、チオール基の官能基を持たせることもできる。
【0036】
有機充填剤としては、例えば、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリオレフィン樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリスチレン、アクリル共重合体、ポリメチルメタクリレート樹脂、フッ素樹脂、ナイロン12、ナイロン6/66、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0037】
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトレメトキシシラン又はγ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤;アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤;アセチルアセトン・ジルコニウム錯体等のジルコニウム系カップリング剤、などが挙げられる。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物を得るには、上記した各成分を混合すればよく、混合の順序や方法は特に限定されない。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物は、180〜500nmの波長の紫外線又は可視光線を照射することによって重合させることができる。又、紫外線以外のエネルギー線の照射によって、あるいは、熱によっても硬化させることができる。
【0040】
上記波長180〜500nmの紫外線又は可視光線の光発生源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、エキシマーランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、エキシマーレーザー、太陽光を挙げることができる。
【0041】
本発明の感光性樹脂組成物のエネルギー線照射または加熱による硬化物を有する物品も本発明に含まれる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中特に断りがない限り、部は重量部を示す。また、実施例中の各物性値は以下の方法で測定した。
(1)重量平均分子量:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法
(2)エポキシ当量:JIS K−7236に記載の方法で測定。
(3)粘度:E型粘度計にて測定。
(4)屈折率:屈折率計を使用しD線(589nm)、25℃にて測定。
【0043】
実施例1
トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)109.1部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)94.5部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)24.8部、メチルイソブチルケトン(信越化学工業株式会社製)456.8部、2,6−t−ブチル−p−クレゾール(東京化成工業株式会社製)0.68部、0.5重量%炭酸カリウム(純正化学株式会社製)水溶液27.0部を反応容器に仕込み、80℃に昇温した。昇温後、80℃にて5時間反応させた。反応終了後、洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返した。次いで減圧下で溶媒を除去することによりポリシロキサン(A−1)159部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は456g/eq、重量平均分子量は2500、粘度は224Pa・s(25℃)、屈折率は1.436(25℃)であった。
【0044】
実施例2
トリフルオロプロピルトリメトキシシラン109.1部、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)73.9部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン49.7部、メチルイソブチルケトン465.4部、2,6−t−ブチル−p−クレゾール0.69部、0.1重量%水酸化カリウム水溶液27.0部を反応容器に仕込み、80℃に昇温した。昇温後、80℃にて5時間反応させた。反応終了後、洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返した。次いで減圧下で溶媒を除去することによりポリシロキサン(A−2)162部を得た。得られた化合物のエポキシ当量は562g/eq、重量平均分子量は1700、粘度は155Pa・s(25℃)、屈折率は1.446(25℃)であった。
【0045】
実施例3、4、比較例1
本発明のフッ素含有ポリシロキサン(A)又は比較例1のポリシロキサン、光重合開始剤及び希釈溶剤を表1に記載の割合で秤量し、均一に混合することによって感光性樹脂組成物を作成した。作製した材料を用いて以下の試験を行い、結果を併せて表1に示した。
(塗布性)
調製した本発明の感光性樹脂組成物及び、比較例1の感光性樹脂組成物をシリコン基板上にスピンコートで1〜3μmの膜厚となるように塗布した。得られた塗布膜をホットプレートで100℃で100秒間乾燥し、次いで超高圧水銀灯により20秒間照射し、さらにホットプレートで200℃、5分間加熱し硬化反応させ、硬化膜を得た。これらの塗布膜を目視により観察し、ストリエーションなどに代表される塗布ムラが無いか観察した。ムラが無いものを○、あるものを×とした。
(重ね塗布性)
上記のような塗布性を再び繰り返し、2層目の膜がいわゆるハジキによって塗られない部分が存在しないか観察した。ハジキが無いものを○、あるものを×とした。
(耐熱性)
上記塗布性評価によって得られた膜を削り取りサンプリングする。この試料を用いてTG/DTA評価装置によって試料の重量減少量をモニタリングし、耐熱性評価を行った。温度測定範囲としては300℃まで上昇させ、2%の重量減少が起きたときの温度を比較した。
【0046】
表1
配合量(g)
実施例 比較例
3 4 1
A−1 100
A−2 − 100
エポキシ樹脂1*1 − − 100
光重合開始剤1*2 2.5 2.5 2.5
光重合開始剤2*3 2.5 2.5 2.5
PGMEA*4 245 245 245
塗布性 ○ ○ ×
重ね塗布性 ○ ○ ×
耐熱性(℃) 232 255 210
【0047】
*1:ダイセル化学工業株式会社製、セロキサイド2021(3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート)
*2:ローディア ジャパン株式会社製、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074(4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニル]ヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)
*3:日本化薬株式会社製、KAYACURE DETX−S(ジエチルチオキサントン)
*4:協和発行株式会社製、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0048】
表1に示した結果から、本発明のフッ素含有ポリシロキサン(A)を含有する感光性樹脂組成物は、塗布性、重ね塗布性が高い上、耐熱性が高い硬化物を与えることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
RfRSi(OR3−a(1)
(式中、Rfはフッ素を含む有機基、RはC1〜C10のアルキル基、C1〜C10の置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。aは0または1の整数である。RはC1〜C4のアルキル基を表す。)
で示されるアルコキシケイ素化合物、
下記一般式(2)
XRSi(OR3−b(2)
(式中、Xはエポキシ基を含む有機基、RはC1〜C10のアルキル基、C1〜C10の置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。bは0または1の整数である。RはC1〜C4のアルキル基を表す。)
で示されるアルコキシケイ素化合物、
及び下記一般式(3)
Si(OR4−c−d(3)
(式中、Yは(メタ)アクリル基を含む有機基、RはC1〜C10のアルキル基、C1〜C10の置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表す。cは0または1の整数、dは0〜2の整数である。RはC1〜C4のアルキル基を表す。)
で示されるアルコキシケイ素化合物を塩基性触媒の存在下、共加水分解縮合させることにより得られるフッ素含有ポリシロキサン(A)。
【請求項2】
一般式(1)の化合物において、Rfがフッ素原子を1〜20個有する有機基、一般式(2)の化合物において、Xがグリシドキシ基で置換されたC1〜C4のアルキル基又はオキシラン基を持ったC5〜C8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基である化合物であり、一般式(3)の化合物において、Yが(メタ)アクリロキシ基で置換されたC1〜C4のアルキル基である請求項1記載のフッ素含有ポリシロキサン(A)。
【請求項3】
請求項1又は2記載のフッ素含有ポリシロキサン(A)を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに光重合開始剤(B)を含有する請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
光重合開始剤(B)として、光カチオン重合開始剤と光ラジカル重合開始剤を併用することを特徴とする請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化物を含有する物品。

【公開番号】特開2007−2194(P2007−2194A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187108(P2005−187108)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】