説明

フランジの締結構造

【課題】 高温環境で、確実なシール性を確保できるフランジの締結構造を提供する。
【解決手段】 金属シールを挟持して対向配置される一対のフランジ7,9を締結する締結構造1であって、フランジ7,9に相互に連通するように貫通して設けられた貫通孔11,13と、これに挿通されるセラミックス製の連結部材17と、組合せた時、中空の円筒形状を形成し、外周部に雄ねじ部33が刻設されている複数に分割された金属製の締結ボルト19と、中空の内周部に雄ねじ部33と螺合する雌ねじ部37を有する金属製の締結ナット21と、ばね座金23と、を備え、連結部材17は、貫通孔11,13を通過する程度の大きさの挿入頭部25および貫通孔11,13に係止される程度の大きさの係止頭部27を有し、締結ボルト19は、挿入頭部25の座面29に当接し、雄ねじ部33は挿入頭部25より外側に突出するように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジの締結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、高温ガス炉による水素製造装置は、高温の硫酸蒸気中の運転となるため、配管・フランジは金属では耐食性が十分でないため炭化珪素などのセラミックスによって形成される。
セラミックス同士あるいはセラミックスと金属との組合せのフランジを金属ボルトによって締結した場合、金属ボルトの方がセラミックス製フランジよりも線膨張係数が大きいので、高温使用時には金属ボルトの方が熱伸び量が大きくなる。このため、有効な締結が行なえなくなるので、フランジ面圧あるいは金属シール面圧が維持できなくなる。
アルミナなどのセラミックス製のボルトを使用することも考えられるが、現状では、首下寸法が短く使用範囲が制限されるし、また、高トルクを負荷した場合にねじが破損するなど信頼性に問題がある。
【0003】
このような、セラミックス製フランジと金属製フランジとを締結する締結構造として、例えば、特許文献1に示されるものが提案されている。
これは、セラミックス製フランジと金属製フランジとを金属製弾性シールを挟んで対峙して配置し、両フランジを挟むように断面コ字状の金属製の締付枠を被せ、締付枠に螺合した締結ボルトにより金属製フランジをセラミックフランジに押付けるようにし、金属製部分とセラミックス製部分との熱伸び量の差異を金属製弾性シールの弾性変形で吸収するようにしたものである。
【0004】
【特許文献1】特開平11−248066号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるものは、金属部分がフランジを挟むように設けられているので、金属製部分とセラミックス製部分との熱伸び量の差異が多くなる。また、その方向は締付が緩む方向となるので、シール性に問題を生じる恐れがある。
さらに、熱伸び量の差異を金属製弾性シールの弾性変形で吸収するようにしているので、許容量が少なく、信頼性が少ないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、高温環境で、確実なシール性を確保できるフランジの締結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるフランジの締結構造は、金属シールを挟持して対向配置される一対のフランジを締結するフランジの締結構造であって、前記一対のフランジに相互に連通するように貫通して設けられた孔と、該孔に挿通されるセラミックスで形成された連結部材と、組合せた時、中空の円筒形状を形成し、外周部に第一ネジが刻設されている複数に分割された金属製の第一締結部材と、中空の内周部に前記第一ネジと螺合する第二ネジを有する金属製の第二締結部材と、金属製のばね座金と、を備え、前記連結部材は、その一端部に前記孔を通過する程度に外側に突出して設けられた第一頭部および他端部に前記孔に係止される程度に外側に突出して設けられた第二頭部を有し、前記第一締結部材は、端部が前記第一頭部の座面に当接し、前記第一ネジは前記第一頭部より外側に突出するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、金属シールを挟持して対向配置される一対のフランジの孔の一方端にばね座金を配置する。孔の他方端に連結部材を孔よりも小さい第一頭部から挿入し、貫通させる。分割された第一締結部材を第一頭部とフランジとの間において円筒形状に組み合わせる。
次いで、第二締結部材をその中空部が第一頭部の周りを通過するようにして、内周部の第二ネジと第一締結部材の第一ネジとを螺合させる。
【0009】
この状態で、第二締結部材を回転させると、第二締結部材は第一締結部材よりもフランジに近づく位置となり、第一締結部材は第一頭部の座面に当接する一方第二締結部材はばね座金に当接する。
第二締結部材をさらに回転すると、第一締結部材は第一頭部を一方側に押すので、連結部材は一方側へ移動する。しかし、連結部材の他方側の第二頭部は孔に係止されて移動しないので、第二締結部材がばね座金をフランジの方へ押圧することとなる。
このようにして、ばね座金の弾性力によって一対のフランジを確実に金属シールの面圧を維持した状態で締結することができる。
【0010】
また、一対のフランジを貫通して設けられた連結部材はセラミックス製であり、金属製の部分は第一締結部材および第二締結部材と長さが短いので、高温環境になった場合でも、金属製の部分とセラミック製の部分との熱伸び量の差異が大きくならない。そして、金属製の部分がより大きく伸びるが、その伸びる方向はフランジ間を押圧する方向である。
これらによって、高温環境でも確実にシール性能を確保することができる。
さらに、この熱伸び量の差異は、金属シールの弾性変形に加えて主としてばね座金の弾性変形によって吸収されるので、許容量が大きく、シール性能の信頼性を向上させることができる。
なお、ばね座金は必要に応じて複数用いてもよい。こうすると、熱伸び量の差異に対する許容量を一層大きくすることができる。
【0011】
また、本発明にかかるフランジの締結構造では、前記金属シールは、内側金属シールと外側金属シールとの2重構造としていることを特徴とする。
【0012】
このように、金属シールは、内側金属シールと外側金属シールとの2重構造としているので、確実にシールをすることができる。
なお、金属シールとしては、例えば、Cリング、バネ入りCリング、メタル中空Oリング等の種々形状の金属リング、あるいは、金製ガスケット等が用いられる。
【0013】
また、本発明にかかるフランジの締結構造は、前記内側金属シールおよび前記外側金属シールの内、腐食性流体に接触する側に金製ガスケットを用いていることを特徴とする。
【0014】
このように、内側金属シールおよび外側金属シールの内、腐食性流体に接触する側に金製ガスケットを用いているので、腐食による金属シールの劣化を防止することができる。
なお、金製ガスケットとしては、線状あるいはシート状のものが用いられる。
線状の金製ガスケットはV字型溝内に装着するのが好適である。こうすると、金製ガスケットは線接触として高面圧とすることができる。
また、金製ガスケットをコーナーで押し潰してシールするコーナーシールとするのが好適である。このようにすると、金製ガスケットは面接触となり一層高面圧とすることができる。
【0015】
また、本発明にかかるフランジの締結構造は、前記内側金属シールとして外側に開放されたCリングを用い、前記外側金属シールとして内側に開放されたCリングを用い、前記内側金属シールと前記外側金属シールとの間に加圧冷却ガスを供給するようにしていることを特徴とする。
【0016】
このように、内側金属シールと外側金属シールとの間に加圧冷却ガスが供給されているので、各金属シールの自緊効果を得ることができる。
また、各金属シールは冷却されるので、高温環境に伴う材料の劣化を防止することができる。
なお、腐食性流体に接触する側の金属シールの外側に金を被覆すると好適である。このようにすると、腐食による金属シールの劣化を防止することができる。
【0017】
また、本発明にかかるフランジの締結構造は、前記内側金属シールとして外側に開放されたCリングを用い、前記外側金属シールとして内側に開放されたCリングを用い、前記内側のCリングと前記外側のCリングの開放端部の一方側同士を連結して一体化していることを特徴とする。
【0018】
このように、内側のCリングと外側のCリングとの開放端部の一方側同士を連結して一体化しているので、1回の設置作業によって内側のCリングおよび外側のCリングを設置することができ、その分工数を低減することができる。
【0019】
また、本発明にかかるフランジの締結構造では、前記Cリングの内側にコイルばねを配置していることを特徴とする。
【0020】
このように、Cリングの内側にコイルばねを配置しているので、Cリングはコイルばねの弾性によって支持されることになる。このため、Cリングの弾性力が強化されるので、シール性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高温環境でも確実にシール性能を確保することができる。また、シール性能の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態にかかるフランジの締結構造1について、図1〜図3を用いて説明する。
本実施形態は、本発明を高温ガス炉による水素製造装置に用いられる硫酸蒸気が流れる配管を接続するフランジに適用したものである。
図1は、締結構造1の全体概略構成を示す縦断面図である。
【0023】
水素製造装置には、硫酸蒸気が流れる配管3,5が設けられている。配管3,5を流れる硫酸蒸気は略500〜850℃という高温である。
配管3の端部は、略円板形状をしたフランジ7の軸線中心付近に設けられた貫通孔に挿入され固定されている。
フランジ7は、高温の硫酸蒸気に耐えるようにセラミックス、例えば、炭化珪素で形成されている。
配管5の端部は、略円板形状をしたフランジ9の軸線中心付近に設けられた貫通孔に挿入され固定されている。
フランジ9は、高温の硫酸蒸気に耐えるようにセラミックス、例えば、炭化珪素で形成されている。
【0024】
フランジ7,9は本発明の一対のフランジを構成している。
フランジ7には、軸線中心回りの円周上に略等間隔を空けて円形断面を持つ複数の貫通孔(孔)11が設けられている。
フランジ9には、フランジ7の貫通孔11に対応する位置に円形断面を持つ複数の貫通孔(孔)13が設けられている。
貫通孔11および貫通孔13は、略同径とされている。
貫通孔11および貫通孔13には、締結手段15が装着される。
【0025】
締結手段15には、連結部材17と、締結ボルト(第一締結部材)19と、締結ナット(第二締結部材)21と、ばね座金23とが備えられている。
連結部材17は、セラミックス製で、略円柱形状をしている。
なお、連結部材17は、多角柱形状、楕円柱形状等とされてもよい。
連結部材17の一端には、拡径された円筒形状の挿入頭部(第一頭部)25が形成されている。挿入頭部25の外径は、貫通孔11,13の径よりも小さく構成されている。
連結部材17の他端には、拡径された円筒形状の係止頭部(第二頭部)27が形成されている。係止頭部27の外径は、貫通孔11,13の径よりも大きく構成されている。
挿入頭部25の他端側には、座面29が形成されている。
【0026】
締結ボルト19は、例えば、ニッケル基合金、コバルト基合金あるいは鉄−ニッケル合金等の耐熱金属で形成されている。
締結ボルト19は、中空円筒形状をしており、図2に示されるように軸線中心を含む面で二分割されている。
なお、締結ボルト19の分割は三分割以上であってもよい。また、分割面は軸線中心に対して傾斜していてもよいし、階段状とされていてもよい。
締結ボルト19の中空部の径は挿入頭部25の外径よりも小さく構成されており、締結ボルト19の端面(端部)31の内周側は、挿入頭部25の座面29に当接する位置に位置する。
締結ボルト19の外周には、ネジが刻設された雄ねじ部(第一ネジ)33が形成されている。雄ねじ部33の底部は、挿入頭部25の外径よりも外側に位置している。
【0027】
締結ナット21は、例えば、ニッケル基合金、コバルト基合金あるいは鉄−ニッケル合金等の耐熱金属で形成されている。
締結ナット21は、図3に示されるように、円筒と六角柱と円板とが順次幅広になるように連接された形状をしている。
締結ナット21の軸線中心周りには、円柱状の中空部(中空)35が貫通するように設けられており、中空部35の周面にはネジが刻設された雌ねじ部(第二ネジ)37が形成されている。
雌ねじ部37は、雄ねじ部33と螺合するように構成されている。雌ねじ部37の内側突出部は、雄ねじ部33の底部と略一致するので、挿入頭部25の外径よりも外側に位置している。
【0028】
ばね座金23は、例えば、ニッケル基合金、コバルト基合金あるいは鉄−ニッケル合金等の耐熱金属で形成されている。
ばね座金23は、ドーナツ形をした円板で、板部が軸線方向に傾斜した形状をしている。ばね座金23の内径および外径は、締結ナット21の円板部の内径および外径と略同等に形成されている。
フランジ7の上面における貫通孔11の周囲には、ばね座金23を載置する座繰47が形成されている。
【0029】
フランジ7の下面には、矩形断面のリング状をした溝39が形成されている。溝39には、C形断面のリング状をしたCリング41(外側金属シール)がフランジ9に当接するように設置されている。Cリング41はその開放部が外側に位置するように設置されている。
Cリング41は、耐熱、耐蝕性を考慮して、例えば、ニッケル基系合金であるハステロイXで形成されている。
Cリング41の内側には、O形断面のリング状をした金線ガスケット(金製ガスケット、内側金属シール)43が設置されている。金線ガスケット43は、金製であり、フランジ9の上面に形成されたV字断面のリング状をしたV字型溝45に嵌合されている。
【0030】
以上説明したフランジの締結構造の締結方法について説明する。
まず、フランジ7とフランジ9とを、金線ガスケット43およびCリング41を挟むようにして、相互の貫通孔11,13が一致するように設置する。
次いで、2枚のばね座金23を各座繰47へ載置するとともに連結部材15の挿入頭部25をフランジ9の貫通孔13に挿入し、フランジ7の貫通孔11を通って上方へ貫通させる。
連結部材15はこの位置関係を維持するように仮支持される。
【0031】
次いで、締結ボルト19が分割片毎に挿入頭部25の下方位置に持ち込まれ、連結部材15の周囲を覆うように一体的に組み合わされる。それとともに締結ナット21が挿入頭部25の周りを通過させられ、下方に移動される。
締結ナット21が締結ボルト19に係合すると、回転させられ、その雌ねじ部37と締結ボルト19の雄ねじ部33とを螺合させる。
締結ナット21をさらに回転させると、雌ねじ部37と雄ねじ部33との螺合が進み、締結ナット21は下方へ、締結ボルト19は上方へ移動する。
これが進むと、締結ボルト19の端面31は挿入頭部25の座面29に、締結ナット21の下面はばね座金23にそれぞれ当接する。
【0032】
締結ナット21をさらに回転させると、ばね座金23が圧縮される。ばね座金23の圧縮によって、その反力が締結ナット21およびフランジ7に作用する。
このばね座金23の反力によって、締結ナット21および締結ボルト19を介して挿入頭部25は上方へ押上げられ、係止頭部27がフランジ9に当接して係止される。
同時に、フランジ7が下方に押付けられ、金線ガスケット43およびCリング41が圧縮されてシールされる。
このようにして、ばね座金23の弾性力によってフランジ7,9間を金線ガスケット43およびCリング41の面圧を維持した状態で締結することができる。
【0033】
このようにして締結されたフランジの結合構造1の動作について説明する。
高温の硫酸蒸気が配管3,5内を流れ、フランジ7,9間の間隙に流入する。これに対して、主として金線ガスケット43がシールとして機能し、Cリング41は、そのバックアップとして機能し、硫酸蒸気が外部に漏れるのを阻止している。
このように、シールを金線ガスケット43とCリング41との2重構造としているので、確実にシールをすることができる。
また、硫酸蒸気(腐食性流体)に接触する側に金線ガスケット43を用いているので、腐食によるシールの劣化を防止することができる。
金線ガスケット43はV字型溝45内に装着されているので、金線ガスケット43はフランジ7,9と線接触して高面圧とすることができる。
【0034】
運転の進行に伴い、フランジ7,9および締結手段15等は高温の硫酸蒸気によって加熱され、高温になる。
高温になると、各部材はそれぞれ膨張する。セラミックスと金属とでは線膨張係数が大幅に異なるので、それぞれ伸び量に差異がでる。
締結ボルト19および締結ナット21は、ともに金属であるので、熱によって伸びても螺合関係は確実に維持される。
この時、締結ボルト19および締結ナット21は、連結部材17に比べて短いので、両者の熱伸び量の差異は大きくならない。
【0035】
また、締結ボルト19および締結ナット21は短いにも拘わらず、その伸び量は連結部材17のそれよりも大きくなるが、これにより、締結ボルト19および締結ナット21は一層ばね座金23を押圧するので、シール性能を向上させることができる。
このように、高温になってもシール性能は大きく変化せず、一層向上できるので、シール性能を確実に確保することができる。
さらに、この熱伸び量の差異は、主としてばね座金23の弾性変形によって吸収されるので、許容量が大きく、シール性能の信頼性を向上させることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、金線ガスケット43は、フランジ9に設けられたV字型溝45に嵌合させるようにしているが、図4に示されるようにコーナーシールとしてもよい。
フランジ7の下面に突出部49を設け、フランジ9の上面に突出部49に対応する凹部51を設ける。金線ガスケット43を、突出部49と凹部51とのコーナーで押し潰す。
このようにすると、金線ガスケット43は面接触となり一層高面圧とすることができる。
また、金製ガスケットとして線状のものを用いているが、これはシート状のものを用いてもよい。
さらに、外側金属シールとして、Cリング41を用いているが、これは、例えば、バネ入りCリング、メタル中空Oリング等の種々形状の金属リングを用いてもよい。
【0037】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について、図5を用いて説明する。
本実施形態では、第一実施形態とは、金属シールの構成が異なっている。よって、本実施形態においては、この相違点について説明し、その他の部分については重複した説明を省略する。
なお、前述の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0038】
本実施形態では、フランジ7の下面における溝39の内側に、矩形断面のリング状をした溝53が形成されている。
溝39には、C形断面のリング状をしたCリング55(外側金属シール)がフランジ9に当接するように設置されている。Cリング55はその開放部が内側に位置するように設置されている。
溝53には、C形断面のリング状をしたCリング57(内側金属シール)がフランジ9に当接するように設置されている。Cリング57はその開放部が外側に位置するように設置されている。
【0039】
Cリング55,57は、耐熱、耐蝕性を考慮して、例えば、ニッケル基系合金であるハステロイXで形成され、開放部と反対側の面は金で覆われている。
金は、金を被覆させるあるいは金をメッキすることで形成される。また、これらを重複して覆うようにしてもよい。
フランジ7には、溝39と溝53との中間部分に貫通孔59が設けられている。
貫通孔59は、図示しない加圧冷却ガスの供給源に接続されている。
【0040】
以上説明した本実施態様にかかるフランジの締結構造1の締結作業については、金線ガスケット43がCリング57に変わる以外は前述の第一実施形態と略同じであるので、ここでは重複した説明を省略する。
次に、締結されたフランジの結合構造1の動作について説明する。
高温の硫酸蒸気が配管3,5内を流れ、フランジ7,9間の間隙に流入する。これに対して、Cリング53,57がシールして、硫酸蒸気が外部に漏れるのを阻止している。
このように、シールをCリング53,57の2重構造としているので、確実にシールをすることができる。
また、Cリング53,57の開放部と反対側の面は金で覆われているので、硫酸蒸気(腐食性流体)に接触しても腐食によるシールの劣化を防止することができる。
【0041】
運転の進行に伴い、フランジ7,9および締結手段15等は高温の硫酸蒸気によって加熱され、高温になる。
これにより各部材は膨張するが、この膨張に伴う影響については前述の第一実施形態と略同様であるので、ここでは重複した説明を省略する。
運転中、図示しない供給源から貫通孔59を通って加圧冷却ガスがCリング53,57の間に供給されている。
この加圧冷却ガスが、Cリング53,57の開放部分からCリング53,57の内側に導入されるので、Cリング53,57には内側から外側に向けて圧力が作用する。この圧力によって各Cリング53,57はシール力を強化される。
また、同時に加圧冷却ガスによってCリング53,57は冷却されるので、高温環境に伴う材料の劣化を防止することができる。
【0042】
なお、金属シールとして、Cリング53,57を用いているが、これは、例えば、バネ入りCリング、メタル中空Oリング等の種々形状の金属リングを用いてもよい。
【0043】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について、図6および図7を用いて説明する。
本実施形態では、第一実施形態および第二実施形態とは、金属シールの構成が異なっている。よって、本実施形態においては、この相違点について説明し、その他の部分については重複した説明を省略する。
なお、前述の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0044】
本実施形態では、フランジ7の下面に矩形断面のリング状をした溝61が形成されている。溝61は、第二実施形態における溝39と溝5とを包含する程度に幅広に形成されている。
溝61には、長Cリング(Cリング)63がフランジ9に当接するように設置されている。
長Cリング63の断面は、内側端と外側端とが略C形をし、両側のC形の下側が平らになって連結されている形状をしている。
長Cリング63の内側端が本発明の内側金属シールを、外側端部が本発明の外側金属シールを構成している。
溝61には、図示しない加圧冷却ガスの供給源に接続されている貫通孔59が連通されている。
長Cリング63の略C形をした内側端および外側端には、それぞれ内部にリング状のコイルばね65,67が装着されている。
【0045】
このように構成された本実施形態にかかるフランジの締結構造1では、前述の第二実施形態の作用効果に加えて、次の作用・効果を奏する。
長Cリング63の内側端と外側端とに設けた略C形断面部の内側に、コイルばね65,67を配置しているので、この部分はコイルばね65,67の弾性によっても支持されることになる。
この分長Cリング63の弾性力が強化されるので、シール性能を向上させることができる。
なお、第一実施形態のCリング41あるいは第二実施形態のCリング53,57の内側にコイルばね65,67を設置するようにしても同様な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる締結構造の全体概略構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第一実施形態にかかる締結ボルトの全体概略構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の第一実施形態にかかる締結ナットの全体概略構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第一実施形態にかかる締結構造の別の実施形態の全体概略構成を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態にかかる締結構造の全体概略構成を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第三実施形態にかかる締結構造の全体概略構成を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第三実施形態にかかる長Cリングの構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 締結構造
7,9 フランジ
11,13 貫通孔
17 連結部材
19 締結ボルト
21 締結ナット
23 ばね座金
25 挿入頭部
27 係止頭部
29 座面
31 端面
33 雄ねじ部
37 雌ねじ部
41,53,57 Cリング
43 金線ガスケット
59 貫通孔
65,67 コイルばね


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属シールを挟持して対向配置される一対のフランジを締結するフランジの締結構造であって、
前記一対のフランジに相互に連通するように貫通して設けられた孔と、
該孔に挿通されるセラミックスで形成された連結部材と、
組合せた時、中空の円筒形状を形成し、外周部に第一ネジが刻設されている複数に分割された金属製の第一締結部材と、
中空の内周部に前記第一ネジと螺合する第二ネジを有する金属製の第二締結部材と、
金属製のばね座金と、を備え、
前記連結部材は、その一端部に前記孔を通過する程度に外側に突出して設けられた第一頭部および他端部に前記孔に係止される程度に外側に突出して設けられた第二頭部を有し、
前記第一締結部材は、端部が前記第一頭部の座面に当接し、前記第一ネジは前記第一頭部より外側に突出するように構成されていることを特徴とするフランジの締結構造。
【請求項2】
前記金属シールは、内側金属シールと外側金属シールとの2重構造としていることを特徴とする請求項1に記載のフランジの締結構造。
【請求項3】
前記内側金属シールおよび前記外側金属シールの内、腐食性流体に接触する側に金製ガスケットを用いていることを特徴とする請求項2に記載のフランジの締結構造。
【請求項4】
前記内側金属シールと前記外側金属シールとの間に加圧冷却ガスを供給するようにしていることを特徴とする請求項2に記載のフランジの締結構造。
【請求項5】
前記内側金属シールとして外側に開放されたCリングを用い、前記外側金属シールとして内側に開放されたCリングを用い、前記内側のCリングと前記外側のCリングとの開放端部の一方側同士を連結して一体化していることを特徴とする請求項4に記載のフランジの締結構造。
【請求項6】
前記Cリングの内側にコイルばねを配置していることを特徴とする請求項5に記載のフランジの締結構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−71334(P2007−71334A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260580(P2005−260580)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】