説明

フリップチップ用樹脂封止材及び半導体実装体の製造方法

【課題】リフロー装置を用いて電極接合と樹脂封止とを行う際に、信頼性の高い電極接合を行うことができ、かつ、基板又は半導体素子の反りを抑制することのできるフリップチップ用樹脂封止材を提供する。また、該フリップチップ用樹脂封止材を用いた半導体実装体の製造方法を提供する。
【解決手段】リフロー装置を用いて電極接合と樹脂封止とを行う際に用いられるフリップチップ用樹脂封止材であって、エポキシ化合物と、酸無水物硬化剤又はフェノール系硬化剤とを含有し、260℃でのゲルタイムが20秒以上であり、回転式レオメーターにより測定した1Hzでの50〜250℃の間における最低溶融粘度が1Pa・sより小さいフリップチップ用樹脂封止材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフロー装置を用いて電極接合と樹脂封止とを行う際に、信頼性の高い電極接合を行うことができ、かつ、基板又は半導体素子の反りを抑制することのできるフリップチップ用樹脂封止材に関する。また、本発明は、該フリップチップ用樹脂封止材を用いた半導体実装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する際、フリップチップ実装においては、一般的に、半導体チップに形成された複数の突起状電極(バンプ)と、基板又は他の半導体チップに形成された電極部とを接合した後、封止材を充填する方法が用いられている。しかしながら、このような方法では、一連の長いプロセスを経るため生産に時間がかかることが問題である。
【0003】
この問題を解決するために、例えば、電極接合と樹脂封止とを同時に行う方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、無機基板または有機基板の回路形成面の半導体素子を搭載する位置に所定の液状封止樹脂組成物を塗布した後、前記半導体素子の電極と前記基板の回路を、バンプを介して接合すると同時に前記液状封止樹脂組成物の硬化を行う半導体装置の製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の方法においては、半田の融点よりも低い温度のリフロー予備加熱と、半田の融点よりも高い温度のリフロー本加熱とが行われる。そして、液状封止樹脂組成物の粘弾性測定における粘度が、リフロー予備加熱時の温度範囲で1Pa・s以下で、リフロー本加熱時のピーク温度でのゲルタイムが30s以下である。また、特許文献1には、液状封止樹脂組成物として、二官能以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、硬化剤として芳香族アミン、フラックス作用を有する硬化促進剤を含有する液状封止樹脂組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法においては、液状封止樹脂組成物の硬化を行った後、常温に戻す過程で基板又は半導体チップに反りが発生しやすいという問題がある。近年、半導体装置の小型化、高集積化への要求が高まり、基板又は半導体チップにも薄型化が求められていることから、反りの問題は従来以上に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−96886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、リフロー装置を用いて電極接合と樹脂封止とを行う際に、信頼性の高い電極接合を行うことができ、かつ、基板又は半導体素子の反りを抑制することのできるフリップチップ用樹脂封止材を提供することを目的とする。また、本発明は、該フリップチップ用樹脂封止材を用いた半導体実装体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、リフロー装置を用いて電極接合と樹脂封止とを行う際に用いられるフリップチップ用樹脂封止材であって、エポキシ化合物と、酸無水物硬化剤又はフェノール系硬化剤とを含有し、260℃でのゲルタイムが20秒以上であり、回転式レオメーターにより測定した1Hzでの50〜250℃の間における最低溶融粘度が1Pa・sより小さいフリップチップ用樹脂封止材である。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は、特許文献1に記載の方法においては、ゲルタイムが一定値以下の液状封止樹脂組成物を用いて、電極接合と樹脂封止とを高温下にて一括で行うために、常温に戻す過程で基板又は半導体チップに反りが発生しやすいことを見出した。
本発明者は、エポキシ化合物を含有するフリップチップ用樹脂封止材において、硬化剤として酸無水物硬化剤又はフェノール系硬化剤を用い、260℃でのゲルタイムを一定値以上に、回転式レオメーターにより測定した1Hzでの50〜250℃の間における最低溶融粘度を一定値より小さく調整することにより、信頼性の高い電極接合を実現するとともに基板又は半導体素子の反りを抑制しながら、リフロー装置を用いて電極接合と樹脂封止とを効率的に行うことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材は、リフロー装置を用いて電極接合と樹脂封止とを行う際に用いられるフリップチップ用樹脂封止材である。
リフロー装置を用いて電極接合と樹脂封止とを行う方法によれば、フリップチップボンダー等を用いて1つの半導体チップごとに電極接合を行う方法等と比べて、生産効率を大きく改善することができる。
【0011】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材は、エポキシ化合物を含有する。
上記エポキシ化合物は特に限定されず、例えば、軟化点が150℃以下のエポキシ樹脂、常温で液体又は結晶性固体のエポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0012】
上記軟化点が150℃以下のエポキシ樹脂として、例えば、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルフェノールノボラックエポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0013】
上記常温で液体又は結晶性固体のエポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、アントラセン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0014】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材は、更に、エポキシ基含有ポリマーを含有することが好ましい。
上記エポキシ基含有ポリマーの種類及び含有量を調整することで、得られるフリップチップ用樹脂封止材の粘度特性を後述する範囲内に調整することができる。
また、上記エポキシ基含有ポリマーを含有することで、得られるフリップチップ用樹脂封止材の硬化物は、上記エポキシ化合物に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、上記エポキシ基含有ポリマーに由来する優れた靭性とを兼備することとなり、高い接合信頼性及び接続信頼性を発現することができる。
【0015】
上記エポキシ基含有ポリマーは、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有するポリマーであれば特に限定されず、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を多く含み、得られるフリップチップ用樹脂封止材の硬化物が優れた機械的強度、耐熱性、靭性等を発現できることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。これらのエポキシ基含有ポリマーは、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0016】
上記エポキシ基含有ポリマーの重量平均分子量の好ましい下限は8000、好ましい上限は2万である。上記重量平均分子量が8000未満であると、得られるフリップチップ用樹脂封止材を用いてフィルムを製造する際の造膜性が不充分となり、フィルムとして形状を保持することができないことがある。上記重量平均分子量が2万を超えると、得られるフリップチップ用樹脂封止材が後述する粘度特性を達成することができないことがある。
また、上記重量平均分子量が8000未満であると、得られるフリップチップ用樹脂封止材には低分子量化合物が多く存在するため、樹脂封止時にボイドが発生しやすくなることがある。
【0017】
上記エポキシ基含有ポリマーのエポキシ当量の好ましい下限は200、好ましい上限は1000である。上記エポキシ当量が200未満であると、得られるフリップチップ用樹脂封止材の硬化物が堅く、脆くなることがある。上記エポキシ当量が1000を超えると、得られるフリップチップ用樹脂封止材の硬化物の機械的強度、耐熱性等が不充分となることがある。
【0018】
上記エポキシ基含有ポリマーのうち、市販品としては、例えば、G−0250M(重量平均分子量2万、日油社製)、G−0130S−P(重量平均分子量9000、日油社製)が好ましく、G−0130S−P(重量平均分子量9000、日油社製)が特に好ましい。
【0019】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材が上記エポキシ基含有ポリマーを含有する場合、上記エポキシ基含有ポリマーの含有量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が500重量部である。上記エポキシ基含有ポリマーの含有量が1重量部未満であると、得られるフリップチップ用樹脂封止材の硬化物は、熱によるひずみが発生する際、靭性が不充分となり、接合信頼性が劣ることがある。上記エポキシ基含有ポリマーの含有量が500重量部を超えると、得られるフリップチップ用樹脂封止材は、粘度が上昇して後述する粘度特性を達成することができなかったり、硬化物の耐熱性が低下したりすることがある。
【0020】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材は、硬化剤として、酸無水物硬化剤又はフェノール系硬化剤を含有する。
上記酸無水物硬化剤及び上記フェノール系硬化剤は、フラックス活性を有する。従って、上記酸無水物硬化剤又は上記フェノール系硬化剤を含有することで、本発明のフリップチップ用樹脂封止材は、フラックス活性を有する硬化促進剤等を更に含有しなくてもフリップチップ実装に好適に用いられる。
【0021】
上記酸無水物硬化剤は特に限定されないが、2官能の酸無水物硬化剤が好ましい。上記2官能の酸無水物硬化剤は特に限定されず、例えば、フタル酸誘導体の無水物、無水マレイン酸等が挙げられる。
また、上記酸無水物硬化剤として、3官能以上の酸無水物硬化剤粒子を用いてもよい。上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子は特に限定されず、例えば、無水トリメリット酸等の3官能の酸無水物からなる粒子、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等の4官能以上の酸無水物からなる粒子等が挙げられる。
【0022】
上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が20μmである。上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、硬化剤粒子の凝集が生じ、得られるフリップチップ用樹脂封止材が後述する粘度特性を達成することができないことがある。上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の平均粒子径が20μmを超えると、得られるフリップチップ用樹脂封止材において、硬化時に硬化剤粒子が充分に拡散することができず、硬化不良となることがある。
【0023】
また、上記酸無水物硬化剤が、上記2官能の酸無水物硬化剤と上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子とを含有する場合、これらの配合比は特に限定されないが、上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の含有量(重量)を上記2官能の酸無水物硬化剤の含有量(重量)で除した値[=(3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の含有量)/(2官能の酸無水物硬化剤の含有量)]の好ましい下限が0.1、好ましい上限が10である。上記値が0.1未満であると、上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子を添加する効果が充分に得られないことがある。上記値が10を超えると、得られるフリップチップ用樹脂封止材の硬化物が脆くなり、充分な接合信頼性が得られないことがある。
上記値のより好ましい下限は0.2、より好ましい上限は8である。
【0024】
上記フェノール系硬化剤は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエンフェノール、アラルキルフェノール、トリスフェノール、テトラキスフェノール、レゾール型フェノール、ビフェニルジメチレン型フェノール、フェノール樹脂−シリカハイブリッド及びこれらの誘導体、変性体等が挙げられる。なかでも、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジシクロペンタジエンフェノール、ビフェニルジメチレン型フェノール、フェノール樹脂−シリカハイブリッド及びこれらの誘導体、変性体が好ましい。
【0025】
上記フェノール系硬化剤のうち、市販品として、例えば、TD−2131(DIC社製)、Matrimid(Huntsman社製)、KA−1160(DIC社製)等が挙げられる。
【0026】
上記酸無水物硬化剤又は上記フェノール系硬化剤の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物と、上記エポキシ基含有ポリマーとの合計100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が150重量部である。上記酸無水物硬化剤又は上記フェノール系硬化剤の含有量が5重量部未満であると、得られるフリップチップ用樹脂封止材が充分に硬化しないことがある。上記硬化剤の含有量が150重量部を超えると、得られるフリップチップ用樹脂封止材の接続信頼性が低下することがある。
上記酸無水物硬化剤又は上記フェノール系硬化剤の含有量は、上記エポキシ化合物と、上記エポキシ基含有ポリマーとの合計100重量部に対するより好ましい下限が10重量部、より好ましい上限が140重量部である。
【0027】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材は、更に、硬化を完全に行う観点から、硬化促進剤を含有してもよい。
上記硬化促進剤は特に限定されないが、イミダゾール化合物が好ましい。
【0028】
上記イミダゾール化合物は特に限定されず、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール化合物(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名「2MZ−A」、四国化成工業社製)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(商品名「2P4MHZ」、四国化成工業社製)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(商品名「2E4MZ」、四国化成工業社製)、常温で液状のイミダゾール化合物(商品名「フジキュア7000」、富士化成工業社製)等が挙げられる。なかでも、常温で液状のイミダゾール化合物(商品名「フジキュア7000」、富士化成工業社製)が好ましい。これらのイミダゾール化合物は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0029】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材が上記硬化促進剤を含有する場合、上記硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ化合物と、上記エポキシ基含有ポリマーとの合計100重量部に対する好ましい下限が0.3重量部、好ましい上限が8重量部である。上記硬化促進剤の含有量が0.3重量部未満であると、得られるフリップチップ用樹脂封止材が充分に硬化しないことがある。上記硬化促進剤の含有量が8重量部を超えると、得られるフリップチップ用樹脂封止材において、未反応の硬化促進剤が接着界面に染み出すことにより、接合信頼性が低下することがある。
【0030】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材は、その他必要に応じて、無機充填材、ブリード防止剤、シランカップリング剤、イミダゾールシランカップリング剤等の接着性付与剤、増粘剤等の添加剤を含有してもよい。
【0031】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材は、260℃でのゲルタイムが20秒以上である。
本発明のフリップチップ用樹脂封止材がこのようなゲルタイムを有することで、本発明のフリップチップ用樹脂封止材を、リフロー装置を用いた、通常240℃程度の半田溶融温度よりも高い温度に加熱して電極接合を行う際には完全には硬化させず、その後、温度を下げて半田溶融温度よりも低い温度にて完全硬化させる方法に用いることができる。これにより、信頼性の高い電極接合を行うことができ、かつ、電極接合と樹脂封止とを高温下にて一括で行う従来の場合とは異なり、基板又は半導体素子の反りを抑制することができる。
【0032】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材の260℃でのゲルタイムが20秒未満であると、フリップチップ用樹脂封止材は、半田溶融温度で硬化が進んでしまうため電極接合が充分に行われなかったり、常温に戻る過程で基板又は半導体素子に反りが発生したりしてしまう。
本発明のフリップチップ用樹脂封止材の260℃でのゲルタイムは、25秒以上であることが好ましく、27秒以上であることがより好ましい。
【0033】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材の260℃でのゲルタイムの上限は特に限定されないが、好ましい上限は60秒である。本発明のフリップチップ用樹脂封止材の260℃でのゲルタイムが60秒を超えると、フリップチップ用樹脂封止材を硬化させるのに時間がかかりすぎることがある。
【0034】
本明細書中、フリップチップ用樹脂封止材の260℃でのゲルタイムとは、260℃に設定したホットプレート上にフリップチップ用樹脂封止材をのせ、流動性が失われるまでの時間を意味する。
また、フリップチップ用樹脂封止材の260℃でのゲルタイムを上記範囲内に調整する方法として、例えば、穏やかな硬化促進剤を選択したり、上述した各配合成分の種類及び含有量を調整したりすることにより、上記エポキシ化合物と上記酸無水物硬化剤又は上記フェノール系硬化剤との間の反応性を低下させ、硬化反応速度を遅延させる方法が挙げられる。
【0035】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材は、回転式レオメーターにより測定した1Hzでの50〜250℃の間における最低溶融粘度が1Pa・sより小さい。
本発明のフリップチップ用樹脂封止材がこのような最低溶融粘度を有することで、本発明のフリップチップ用樹脂封止材は、リフロー装置を用いて、通常240℃程度の半田溶融温度よりも高い温度に加熱して電極接合を行う際には、接合される半田を含有する電極同士の間に介在することなく、電極同士のセルフアラインメント現象を充分に進行させて信頼性の高い電極接合を行うことができる。
なお、セルフアラインメント現象とは、半田を含有する電極同士が溶融し、一体化する現象を意味する。
【0036】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材の回転式レオメーターにより測定した1Hzでの50〜250℃の間における最低溶融粘度が1Pa・s以上であると、フリップチップ用樹脂封止材は、半田溶融温度において、接合される半田を含有する電極同士の間に介在し、電極同士のセルフアラインメント現象を阻害してしまう。
本発明のフリップチップ用樹脂封止材の回転式レオメーターにより測定した1Hzでの50〜250℃の間における最低溶融粘度は、0.5Pa・s以下であることが好ましく、0.3Pa・s以下であることがより好ましい。
【0037】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材の回転式レオメーターにより測定した1Hzでの50〜250℃の間における最低溶融粘度の下限は特に限定されないが、実質的な下限は0.05Pa・sである。
【0038】
本明細書中、フリップチップ用樹脂封止材の回転式レオメーターにより測定した1Hzでの50〜250℃の間における最低溶融粘度とは、フリップチップ用樹脂封止材をフィルム化し、得られたフィルムについて回転式レオメーターにより測定した、50〜250℃、昇温速度7.5℃/min、周波数1Hzにおける最低溶融粘度を意味する。
なお、回転式レオメーターによりフリップチップ用樹脂封止材の1Hzでの50〜250℃の間における最低溶融粘度を測定する方法として、例えば、STRESSTECH(REOLOGICA社製)等の通常の回転式レオメーターを用いて、フィルム厚み600μm、周波数1Hz、歪量1rad、昇温速度7.5℃/min、測定温度範囲50〜350℃の条件で測定を行う方法等が挙げられる。
【0039】
また、フリップチップ用樹脂封止材の回転式レオメーターにより測定した1Hzでの50〜250℃の間における最低溶融粘度を上記範囲内に調整する方法として、例えば、上記エポキシ化合物の種類及び含有量を調整したり、上記エポキシ基含有ポリマーの重量平均分子量及び含有量を調整したりする方法が挙げられる。
【0040】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記エポキシ化合物と、上記酸無水物硬化剤又は上記フェノール系硬化剤と、必要に応じて他の添加成分とを所定量配合して混合する方法等が挙げられる。
上記混合する方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0041】
リフロー装置を用いて電極接合と樹脂封止とを行う半導体実装体の製造方法であって、半田を含有する突起状電極を有する半導体素子と、基板又は他の半導体素子とを、本発明のフリップチップ用樹脂封止材を介して前記半田を含有する突起状電極と前記基板又は他の半導体素子の電極部とが対向するよう位置合わせする工程(1)と、前記半田を含有する突起状電極と前記基板又は他の半導体素子の電極部とを接触させる電極接触工程(2)と、リフロー装置を用いて、半田溶融温度よりも高い温度に加熱して前記半田を含有する突起状電極と前記基板又は他の半導体素子の電極部とを接合する電極接合工程(3)と、温度を下げて、半田溶融温度よりも低い温度にて本発明のフリップチップ用樹脂封止材を完全硬化させる封止工程(4)とを有する半導体実装体の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0042】
本発明の半導体実装体の製造方法では、まず、半田を含有する突起状電極を有する半導体素子と、基板又は他の半導体素子とを、本発明のフリップチップ用樹脂封止材を介して前記半田を含有する突起状電極と前記基板又は他の半導体素子の電極部とが対向するよう位置合わせする工程(1)を行う。
【0043】
本発明の半導体実装体の製造方法では、上記位置合わせする工程(1)の前に、本発明のフリップチップ用樹脂封止材を半導体素子の突起状電極面に塗布し、フィルム化する工程を行ってもよい。なお、この場合、半導体素子は半導体ウエハであることが好ましい。
【0044】
本発明のフリップチップ用樹脂封止材を半導体素子の突起状電極面に塗布し、フィルム化する方法として、例えば、溶剤としてプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の120〜250℃程度の沸点を有する中沸点溶剤又は高沸点溶剤を用いて、本発明のフリップチップ用樹脂封止材を溶解して接着剤溶液を調製した後、得られた接着剤溶液を、スピンコーター、スクリーン印刷等を使用して上記半導体素子の突起状電極面に印刷し、溶剤を乾燥する方法、溶剤を含有しない本発明のフリップチップ用樹脂封止材を、上記半導体素子の突起状電極面に塗布した後、Bステージ化剤又は露光によってフィルム化する方法等が挙げられる。
【0045】
また、本発明の半導体実装体の製造方法では、上記位置合わせする工程(1)の前に、本発明のフリップチップ用樹脂封止材を用いてフィルムを作製し、得られたフィルムをラミネートにより半導体素子の突起状電極面に供給する工程を行ってもよい。
本発明のフリップチップ用樹脂封止材を用いてフィルムを作製する方法は特に限定されず、例えば、溶剤としてメチルエチルケトン等の低沸点溶剤を用いて、本発明のフリップチップ用樹脂封止材を溶解して接着剤溶液を調製した後、得られた接着剤溶液を、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、スリットコーター等を使用してセパレーター上に塗工し、加熱等により溶剤を乾燥する方法等が挙げられる。
【0046】
また、本発明の半導体実装体の製造方法では、上述のようにして得られたフィルムをチップサイズに合わせて裁断し、半導体チップの突起状電極面に供給してもよい。
【0047】
本発明の半導体実装体の製造方法では、次いで、前記半田を含有する突起状電極と前記基板又は他の半導体素子の電極部とを接触させる電極接触工程(2)を行う。
上記電極接触工程(2)は、例えば、フリップチップボンダー等を用いて行われる。
【0048】
上記電極接触工程(2)においては、半田を含有する突起状電極1個あたり0.03Nより大きな圧力となるよう押圧を行うことが好ましい。半田を含有する突起状電極1個あたり圧力が0.03N以下であると、本発明のフリップチップ用樹脂封止材が、半田溶融温度において、接合される半田を含有する電極同士の間に介在しやすくなり、電極同士のセルフアラインメント現象を阻害しやすくなることがある。
上記電極接触工程(2)においては、半田を含有する突起状電極1個あたり0.03Nより大きく、かつ、0.05N以下の圧力となるよう押圧を行うことがより好ましい。
なお、半田を含有する突起状電極1個あたりの圧力は、半導体素子又は基板の電極数と、押圧の際の圧力とから計算することができる。
【0049】
本発明の半導体実装体の製造方法では、次いで、リフロー装置を用いて、半田溶融温度よりも高い温度に加熱して前記半田を含有する突起状電極と前記基板又は他の半導体素子の電極部とを接合する電極接合工程(3)を行う。
本発明の半導体実装体の製造方法によれば、リフロー装置を用いることで、フリップチップボンダー等を用いて1つの半導体チップごとに電極接合を行う方法等と比べて、生産効率を大きく改善することができる。
【0050】
上記電極接合工程(3)において、上記半田を含有する突起状電極と上記基板又は他の半導体素子の電極部とを接合する温度は、250〜290℃程度が好ましい。
また、上記電極接合工程(3)において、上記半田を含有する突起状電極と上記基板又は他の半導体素子の電極部とを接合するのにかける時間は、15〜60秒が好ましい。上記時間が15秒未満であると、電極接合が充分に行われないことがある。上記時間が60秒を超えると、半田溶融温度で本発明のフリップチップ用樹脂封止材の硬化が進んでしまうため電極接合が充分に行われなかったり、常温に戻る過程で基板又は半導体素子に反りが発生したりしてしまうことがある。
【0051】
本発明の半導体実装体の製造方法では、次いで、温度を下げて、半田溶融温度よりも低い温度にて本発明のフリップチップ用樹脂封止材を完全硬化させる封止工程(4)を行う。
【0052】
上記封止工程(4)において、本発明のフリップチップ用樹脂封止材を完全硬化させる温度は特に限定されないが、120〜200℃が好ましい。上記温度が120℃未満であると、本発明のフリップチップ用樹脂封止材の完全硬化に時間がかかりすぎることがある。上記温度が200℃を超えると、基板又は半導体素子の反りを充分に抑制できないことがある。
【0053】
本発明の半導体実装体の製造方法において、半導体素子は半導体ウエハであっても半導体チップであってもよいが、半導体チップ上に半導体チップを、半導体ウエハ上に半導体チップを、又は、半導体ウエハ上に半導体ウエハを実装することが好ましい。
また、本発明の半導体実装体の製造方法では、基板上に半導体ウエハを、半導体ウエハ上に半導体チップを、又は、半導体ウエハ上に半導体ウエハを実装した場合には、上記封止工程(4)の後に、得られた半導体実装体を個片化する工程を行ってもよい。
【0054】
本発明の半導体実装体の製造方法によれば、上述したような260℃でのゲルタイム及び回転式レオメーターにより測定した1Hzでの50〜250℃の間における最低溶融粘度を有する本発明のフリップチップ用樹脂封止材を用いて、上記電極接合工程(3)を行った後で上記封止工程(4)を行うことにより、信頼性の高い電極接合を行うことができ、かつ、基板又は半導体素子の反りを抑制することができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、リフロー装置を用いて電極接合と樹脂封止とを行う際に、信頼性の高い電極接合を行うことができ、かつ、基板又は半導体素子の反りを抑制することのできるフリップチップ用樹脂封止材を提供することができる。また、本発明によれば、該フリップチップ用樹脂封止材を用いた半導体実装体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0057】
(実施例1〜5及び比較例1〜4)
1.フリップチップ用樹脂封止材からなるフィルムの製造
表1の組成に従って、ホモディスパーを用いて下記に示す各材料を攪拌混合し、フリップチップ用樹脂封止材を含有する溶液を調製した後、アプリケーターによって溶液を離型処理されたペットフィルム上に塗工し、溶剤を乾燥して100μm厚のフィルムを得た。
(1)エポキシ化合物
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(商品名「HP−7200HH」、DIC社製)
ジシクロペンタンジメタノール型エポキシ樹脂(商品名「EP−4088」、アデカ社製)
【0058】
(2)酸無水物硬化剤
1−イソプロピル−4−メチルビシクロ−[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物(商品名「YH−309」、JER社製)
【0059】
(3)フェノール系硬化剤
クレゾールノボラック樹脂(商品名「KA−1160」、DIC社製)
【0060】
(4)アミン系硬化剤
芳香族アミン(商品名「アデカハードナーEH−101」、アデカ社製)
【0061】
(5)硬化促進剤
常温で液状のイミダゾール化合物(商品名「フジキュア7000」、富士化成工業社製)
2−エチル−4−メチルイミダゾール(商品名「2E4MZ」、四国化成工業社製)
【0062】
(6)エポキシ基含有ポリマー
グリシジル基含有アクリル樹脂(重量平均分子量2万、商品名「G−0250M」、日油社製)
グリシジル基含有アクリル樹脂(重量平均分子量9000、商品名「G−0130S−P」、日油社製)
【0063】
(7)その他
溶剤 メチルエチルケトン(MEK、和光純薬工業社製)
【0064】
2.ゲルタイムの測定
260℃に設定したホットプレート上にフリップチップ用樹脂封止材をのせ、流動性が失われるまでの時間を計測して、260℃でのゲルタイムとした。
【0065】
3.最低溶融粘度の測定
得られたフィルムについて、回転式レオメーター(STRESSTECH、REOLOGICA社製)を用いて、フィルム厚み600μm、周波数1Hz、歪量1rad、昇温速度7.5℃/min、測定温度範囲50〜350℃の条件で測定を行い、50〜250℃の間に最も複素粘度が低下した値を最低溶融粘度とした。
【0066】
<評価>
実施例及び比較例で得られたフィルムを、半田ボール(高さ85μm)が150μm間隔でチップ全面に3136個形成されたフルアレイのTEGチップ(10mm×10mm×厚み725μm)にラミネートした後、チップサイズに合わせてフィルムを裁断し、樹脂付TEGチップを得た。
次いで、得られた樹脂付TEGチップを、この樹脂付TEGチップの半田ボールと1本のデイジーチェーンとなるように配線された半田プリコート付ガラスエポキシTEG基板に、樹脂付TEGチップの半田ボールと、ガラスエポキシTEG基板の電極部とが対応するよう位置合わせした。その後、半田ボール1個あたり(1バンプあたり)のヘッド圧0.05Nで、フリップチップボンダーを用いて、樹脂付TEGチップの半田ボールとガラスエポキシTEG基板の電極部とを接触させた後、この状態でリフロー装置に搬入し、260℃20秒で電極接合を行った。その後、リフロー装置において、温度を下げて、190℃30分で完全硬化を行い、半導体実装体を得た。得られた半導体実装体について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0067】
(1)接続信頼性
デジタルマルチメーター(KT−2002、カイセ社製)を用いて、得られた半導体実装体の断線箇所を測定し、断線箇所が0箇所であった場合をOK、断線箇所が1箇所以上あった場合をNGとして評価した。
【0068】
(2)突起状電極の形状評価
得られた半導体実装体の断面を光学顕微鏡にて観察し、TEGチップの半田ボールとガラスエポキシTEG基板の電極部とが一体化し界面が見られなかった場合をOK、一体化せず界面が存在した場合をNGとして評価した。
【0069】
(3)反り評価(冷熱サイクル試験)
得られた半導体実装体について、−55〜125℃(30分/1サイクル)、500サイクルの冷熱サイクル試験を行った後、導通抵抗値を測定した。冷熱サイクル試験後の導通抵抗値の初期抵抗値からの変化率が10%未満であった場合をOK、10%以上であった場合をNGとして評価した。なお、比較例1〜4については上記(2)の突起状電極の形状評価の結果がNGであったため、本評価は行わなかった。
【0070】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、リフロー装置を用いて電極接合と樹脂封止とを行う際に、信頼性の高い電極接合を行うことができ、かつ、基板又は半導体素子の反りを抑制することのできるフリップチップ用樹脂封止材を提供することができる。また、本発明によれば、該フリップチップ用樹脂封止材を用いた半導体実装体の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフロー装置を用いて電極接合と樹脂封止とを行う際に用いられるフリップチップ用樹脂封止材であって、
エポキシ化合物と、酸無水物硬化剤又はフェノール系硬化剤とを含有し、
260℃でのゲルタイムが20秒以上であり、
回転式レオメーターにより測定した1Hzでの50〜250℃の間における最低溶融粘度が1Pa・sより小さい
ことを特徴とするフリップチップ用樹脂封止材。
【請求項2】
更に、重量平均分子量が2万以下のエポキシ基含有ポリマーを含有することを特徴とする請求項1記載のフリップチップ用樹脂封止材。
【請求項3】
リフロー装置を用いて電極接合と樹脂封止とを行う半導体実装体の製造方法であって、
半田を含有する突起状電極を有する半導体素子と、基板又は他の半導体素子とを、請求項1又は2記載のフリップチップ用樹脂封止材を介して前記半田を含有する突起状電極と前記基板又は他の半導体素子の電極部とが対向するよう位置合わせする工程(1)と、
前記半田を含有する突起状電極と前記基板又は他の半導体素子の電極部とを接触させる電極接触工程(2)と、
リフロー装置を用いて、半田溶融温度よりも高い温度に加熱して前記半田を含有する突起状電極と前記基板又は他の半導体素子の電極部とを接合する電極接合工程(3)と、
温度を下げて、半田溶融温度よりも低い温度にて前記フリップチップ用樹脂封止材を完全硬化させる封止工程(4)とを有する
ことを特徴とする半導体実装体の製造方法。
【請求項4】
電極接触工程(2)において、半田を含有する突起状電極1個あたり0.03Nより大きな圧力となるよう押圧を行うことを特徴とする請求項3記載の半導体実装体の製造方法。
【請求項5】
位置合わせする工程(1)の前に、請求項1又は2記載のフリップチップ用樹脂封止材を半導体素子の突起状電極面に塗布し、フィルム化する工程を更に有することを特徴とする請求項3又は4記載の半導体実装体の製造方法。

【公開番号】特開2012−124271(P2012−124271A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272742(P2010−272742)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】