説明

フレキシブルプリント配線板、光電気配線板及びそれらの製造方法

【課題】銅回路が形成されたフレキシブルプリント配線板に積層した光導波路を、曲げても光導波路に亀裂が入らないフレキシブルプリント配線板、光電気配線板及びそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】フレキシブル基材に銅回路が形成されたフレキシブルプリント配線板において、銅回路材料が圧延銅箔であり、該銅回路材料の弾性率がフレキシブル基材の1.2倍以下であることを特徴とするフレキシブルプリント配線板、該フレキシブルプリント配線板に光導波路を積層してなる光電気配線板、並びに、フレキシブル基材に圧延銅箔を積層し、銅回路を形成するフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、圧延銅箔を250〜350℃に熱処理して、その弾性率を4000〜6000Mpaとする工程を有するフレキシブルプリント配線板及び光電気配線板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板、光電気配線板及びそれらの製造方法に関し、特に、銅回路が形成されたフレキシブルプリント配線板に積層した光導波路を、曲げても光導波路に亀裂が入らないフレキシブルプリント配線板、光電気配線板及びそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報容量の増大に伴い、幹線やアクセス系といった通信分野のみならず、ルータやサーバ内の情報処理にも光信号を用いる光インタコネクション技術の開発が進められている。具体的には、ルータやサーバ装置内のボード間あるいはボード内の短距離信号伝送に光を用いるために、電気配線板に光伝送路を複合した光電気複合基板の開発がなされている。光伝送路としては、光ファイバーに比べ、配線の自由度が高く、かつ高密度化が可能な光導波路を用いることが望ましく、中でも、加工性や経済性に優れたポリマー材料を用いた光導波路が有望である。
【0003】
また、折畳み型携帯電話のヒンジ部やノート型パソコンのディスプレイと本体とを結ぶヒンジ部などで用いるためにフレキシブルな基材に光導波路を積層し、屈曲性、柔軟性を備えた光電気配線板が好適と考えられている。
このような光電気配線板では、フレキシブル基材に、高い引張り強度を有する銅で回路を形成したフレキシブルプリント配線板が用いられる。このような配線板では、フレキシブル光導波路とフレキシブルプリント配線板を貼り合せて複合化する際に、弾性率の高い銅を用いると、曲げた場合に導波路に曲げ負荷が大きく作用するため、フレキシブルプリント配線板と反対面の導波路表面に亀裂が入り、R(曲率半径)1mm等の小径曲げには不向きであるという問題があった。
このようなフレキシブルプリント配線板として、例えば、特許文献1に、銅及び酸素の量、及び銅箔を板厚方向に貫通した結晶粒の断面面積率を規定し、長期間保存後の強度の低下を軽減したフレキシブルプリント配線板用の圧延銅箔が記載されているが、引張強度350Mpa(弾性率50000Mpa相当)以上(請求項3、[0026]等参照)と高く、上記の問題を解決するに至っていない。
また、特許文献2には、樹脂基板に圧延銅箔を張り合わせる前に350℃以上550℃で熱処理し(請求項1、2、[0013]等参照)、強度の低下を防ぐ発明であって、実施例においては熱処理後も引張強度が大きく(300N/mm2以上、1N/mm2=1MPa)([0016]表1参照)、比較例6、7では200N/mm2以下では強度が落ちてしまう([0019]表2、[0020]参照)との記載からも200N/mm2以下では望ましくないことを示しているのみであって、上記の問題を解決する発明ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−38169
【特許文献2】特開2005−138310
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の課題を解決するためなされたもので、銅回路が形成されたフレキシブルプリント配線板に積層した光導波路を、曲げても光導波路に亀裂が入らないフレキシブルプリント配線板、光電気配線板及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、結晶の方向性の揃えた圧延銅箔を用い、かつ、高温で熱処理することで大幅に弾性率を減少することで、銅箔の基材であるポリイミドと同等の弾性率とでき、これにより、図1に示すように、曲げ重心位置を従来の銅回路近傍Aから、ポリイミド層と導波路コアの間Bに移すことができ、導波路表面に作用する応力を低減できることを見出し、本発明を関係するに至った。
すなわち、本発明は、下記の発明を提供するものである。
(1)フレキシブル基材に銅回路が形成されたフレキシブルプリント配線板において、銅回路材料が圧延銅箔であり、該銅回路材料の弾性率がフレキシブル基材の1.2倍以下であることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
(2)前記銅回路材料の弾性率が4000〜6000Mpaである前記(1)に記載のフレキシブルプリント配線板。
(3)前記フレキシブル基材がポリイミドである前記(1)又は(2)に記載のフレキシブルプリント配線板。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のフレキシブルプリント配線板に光導波路を積層してなる光電気配線板。
(5)フレキシブル基材に圧延銅箔を積層し、銅回路を形成するフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、圧延銅箔を250〜350℃に熱処理して、その弾性率を4000〜6000Mpaとする工程を有するフレキシブルプリント配線板の製造方法。
(6)フレキシブル基材に圧延銅箔を積層し、銅回路を形成した後、前記フレキシブル基材に光導波路を積層する光電気配線板の製造方法であって、圧延銅箔を250〜350℃に熱処理して、その弾性率を4000〜6000Mpaとする工程を有する光電気配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフレキシブルプリント配線板、光電気配線板は、曲率半径(外周基準)Rが1mmという小径で曲げても光導波路に亀裂が入らない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のフレキシブルプリント配線板及び光電気配線板の一例を説明する図である。
【図2】本発明におけるスライド・曲げ耐久性試験方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、図1に示すように、フレキシブル基材2に銅回路1が形成されている。銅回路1は、接着剤を介してフレキシブル基材2に貼り付けられていても良い。
また、本発明の光電気配線板は、さらに、フレキシブル基材2の銅回路1とは反対側に、接着層3を介して、下部クラッド層4、コア層5及び上部クラッド層6からなる光導波路が積層されている。
【0010】
銅回路1は、フレキシブル基材2上に積層した銅層をエッチング等の常法により回路を形成したものであって、形成方法は限定されない。
本発明においては、銅回路1の材料の弾性率がフレキシブル基材2の1.2倍以下であり、0.5〜1.0倍であると好ましく、0.5〜0.7倍であるとさらに好ましい。
本発明において、フレキシブル基材2の弾性率としては、3000〜10000Mpaであると好ましく、5000〜8000Mpaであるとさらに好ましい。
フレキシブル基材2を形成する材料としては、例えば、ポリイミドが主に用いられるが、その他にポリエチレンテレフタレート(PET)、アラミド等が挙げられ、ポリイミドが好ましい。
フレキシブル基材2の厚さとしては10〜25μmが好ましく、10〜15μmがさらに好ましい。10〜25μmであれば、本発明の効果が十分得られる弾性率となる。
【0011】
また、銅回路1の材料は圧延銅箔であり、その弾性率としては、4000〜12000Mpaであると好ましく、4000〜6000Mpaであるとさらに好ましい。
本発明においては、圧延銅箔を250〜350℃(好ましくは280〜320℃)に熱処理することにより、例えば、熱処理前の弾性率が40000〜60000Mpaであったものを4000〜6000Mpaとすることができる。
また、銅回路1の材料の引張強度としては、50〜75Mpaであると好ましく、弾性率/引張強度が80以下であると好ましい。弾性率/引張強度が80以下であると、切れにくく柔軟性がある材料となる。
銅回路1の厚さとしては5〜25μmが好ましく、5〜12μmがさらに好ましい。25μm以下であれば、十分薄いため、圧延により引き伸ばされた加工率が高いため、粒界は細長い状態となる。この状態にて熱処理をすると大きな粒界に進展し、軟らかい特性を示す。また、5μm以上であれば、圧延により引き伸ばされた加工率が低いため、粒界は圧延前に近く、熱処理をしても大きな粒界に進展せず、圧延前の硬い特性を示す。
【0012】
以下、本発明の光電気配線板において、フレキシブル基材2上に積層する光導波路について説明する。
(接着層)
フレキシブル基材2と下部クラッド層4間の接着力を確保するために、フレキシブル基材2と下部クラッド層4間に導入する接着層3の種類としては特に限定されないが、両面テープ、UVまたは熱硬化性接着剤、プリプレグ、ビルドアップ材、電気配線板製造用途に使用される種々の接着剤が好適に挙げられる。
接着層3の弾性率としては、5〜1000Mpaであると好ましい。
接着層3の厚さは、特に限定されず、本発明の効果を阻害しない程度の厚さであれば良く、例えば、5〜25μmであると好ましい。
【0013】
(下部クラッド層及び上部クラッド層)
以下、本発明で使用される下部クラッド層4及び上部クラッド層6について説明する。下部クラッド層4及び上部クラッド層6としては、クラッド層形成用樹脂又はクラッド層形成用樹脂フィルムを用いることができる。
【0014】
本発明で用いるクラッド層形成用樹脂としては、コア層5より低屈折率で、光又は熱により硬化する樹脂組成物であれば特に限定されず、熱硬化性樹脂組成物や感光性樹脂組成物を好適に使用することができる。より好適にはクラッド層形成用樹脂が、(A)ベースポリマー、(B)光重合性化合物及び(C)光重合開始剤を含有する樹脂組成物により構成されることが好ましい。なお、クラッド層形成用樹脂に用いる樹脂組成物は、下部クラッド層4と上部クラッド層6において、該樹脂組成物に含有する成分が同一であっても異なっていてもよく、該樹脂組成物の屈折率が同一であっても異なっていてもよい。
【0015】
ここで用いる(A)ベースポリマーはクラッド層を形成し、該クラッド層の強度を確保するためのものであり、該目的を達成し得るものであれば特に限定されず、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン等、あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。これらのベースポリマーは1種単独でも、また2種以上を混合して用いてもよい。上記で例示したベースポリマーのうち、耐熱性が高いとの観点から、主鎖に芳香族骨格を有することが好ましく、特にフェノキシ樹脂が好ましい。また、3次元架橋し、耐熱性を向上できるとの観点からは、エポキシ樹脂、特に室温で固形のエポキシ樹脂が好ましい。さらに、後に詳述する(B)光重合性化合物との相溶性が、クラッド層形成用樹脂の透明性を確保するために重要であるが、この点からは上記フェノキシ樹脂及び(メタ)アクリル樹脂が好ましい。なお、ここで(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂を意味するものである。
【0016】
フェノキシ樹脂の中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ化合物又はそれらの誘導体、及びビスフェノールF、ビスフェノールF型エポキシ化合物又はそれらの誘導体を共重合成分の構成単位として含むものは、耐熱性、密着性及び溶解性に優れるため好ましい。ビスフェノールA又はビスフェノールA型エポキシ化合物の誘導体としては、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ化合物等が好適に挙げられる。また、ビスフェノールF又はビスフェノールF型エポキシ化合物の誘導体としては、テトラブロモビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールF型エポキシ化合物等が好適に挙げられる。ビスフェノールA/ビスフェノールF共重合型フェノキシ樹脂の具体例としては、東都化成(株)製「フェノトートYP−70」(商品名)が挙げられる。
【0017】
室温で固形のエポキシ樹脂としては、例えば、東都化学(株)製「エポトートYD−7020、エポトートYD−7019、エポトートYD−7017」(いずれも商品名)、ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート1010、エピコート1009、エピコート1008」(いずれも商品名)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0018】
次に、(B)光重合性化合物としては、紫外線等の光の照射によって重合するものであれば特に限定されず、分子内にエチレン性不飽和基を有する化合物や分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物などが挙げられる。
分子内にエチレン性不飽和基を有する化合物としては、(メタ)アクリレート、ハロゲン化ビニリデン、ビニルエーテル、ビニルピリジン、ビニルフェノール等が挙げられるが、これらの中で、透明性と耐熱性の観点から、(メタ)アクリレートが好ましい。
(メタ)アクリレートとしては、1官能性のもの、2官能性のもの、3官能性以上の多官能性のもののいずれをも用いることができる。なお、ここで(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを意味するものである。
分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の2官能又は多官能芳香族グリシジルエーテル、ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂等の2官能又は多官能脂肪族グリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の2官能脂環式グリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル等の2官能芳香族グリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等の2官能脂環式グリシジルエステル、N,N−ジグリシジルアニリン等の2官能又は多官能芳香族グリシジルアミン、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート等の2官能脂環式エポキシ樹脂、2官能複素環式エポキシ樹脂、多官能複素環式エポキシ樹脂、2官能又は多官能ケイ素含有エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの(B)光重合性化合物は、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0019】
次に(C)成分の光重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば(B)成分にエポキシ化合物を用いる場合の開始剤として、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリルセレノニウム塩、ジアルキルフェナジルスルホニウム塩、ジアルキル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム塩、スルホン酸エステルなどが挙げられる。
【0020】
また、(B)成分に分子内にエチレン性不飽和基を有する化合物を用いる場合の開始剤としては、ベンゾフェノン等の芳香族ケトン、2−エチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、2−メルカプトベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール類、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド類、9−フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物などが挙げられる。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。なお、コア層及びクラッド層の透明性を向上させる観点からは、上記化合物のうち、芳香族ケトン及びフォスフィンオキサイド類が好ましい。
これらの(C)光重合開始剤は、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
(A)ベースポリマーの配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量に対して、5〜80質量%とすることが好ましい。また、(B)光重合性化合物の配合量は、(A)及び(B)成分の総量に対して、95〜20質量%とすることが好ましい。
この(A)成分及び(B)成分の配合量として、(A)成分が5質量%以上であり、(B)成分が95質量%以下であると、樹脂組成物を容易にフィルム化することができる。一方、(A)成分が80質量%以下あり、(B)成分が20質量%以上であると、(A)ベースポリマーを絡み込んで硬化させることが容易にでき、光導波路を形成する際に、パタン形成性が向上し、かつ光硬化反応が十分に進行する。以上の観点から、この(A)成分及び(B)成分の配合量として、(A)成分10〜85質量%、(B)成分90〜15質量%がより好ましく、(A)成分20〜70質量%、(B)成分80〜30質量%がさらに好ましい。
(C)光重合開始剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましい。この配合量が0.1質量部以上であると、光感度が十分であり、一方10質量部以下であると、露光時に感光性樹脂組成物の表層での吸収が増大することがなく、内部の光硬化が十分となる。さらに、光導波路として使用する際には、重合開始剤自身の光吸収の影響により光伝搬損失が増大することもなく好適である。以上の観点から、(C)光重合開始剤の配合量は、0.2〜5質量部とすることがより好ましい。
また、このほかに必要に応じて、クラッド層形成用樹脂中には、酸化防止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、着色剤、可塑剤、安定剤、充填剤などのいわゆる添加剤を本発明の効果に悪影響を与えない割合で添加してもよい。
【0022】
本発明においては、クラッド層の形成方法は特に限定されず、例えば、クラッド層形成用樹脂の塗布又はクラッド層形成用樹脂フィルムのラミネートにより形成すれば良い。
塗布による場合には、その方法は限定されず、例えば、前記(A)〜(C)成分を含有する樹脂組成物を常法により塗布すれば良い。
また、ラミネートに用いるクラッド層形成用樹脂フィルムは、例えば、前記樹脂組成物を溶媒に溶解して、支持体フィルムに塗布し、溶媒を除去することにより容易に製造することができる。
【0023】
ここで用いる溶媒としては、該樹脂組成物を溶解し得るものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒又はこれらの混合溶媒を用いることができる。樹脂溶液中の固形分濃度は30〜80質量%程度であることが好ましい。
【0024】
下部クラッド層4及び上部クラッド層6(以下、クラッド層4,6と略す)の厚さに関しては、乾燥後の厚さで、5〜500μmの範囲が好ましい。5μm以上であると、光の閉じ込めに必要なクラッド厚さが確保でき、500μm以下であると、膜厚を均一に制御することが容易である。以上の観点から、クラッド層4、6の厚さは、さらに10〜100μmの範囲であることがより好ましい。
また、クラッド層4,6の厚さは、最初に形成される下部クラッド層4と、コア層5を埋め込むための上部クラッド層6において、同一であっても異なってもよいが、コア層5を埋め込むために、上部クラッド層6の厚さは、コア層5の厚さよりも厚くすることが好ましい。
また、下部クラッド層4及び上部クラッド層6の弾性率としては、100〜2000Mpaであると好ましい。
【0025】
(コア層形成用樹脂及びコア層形成用樹脂フィルム)
本発明においては、下部クラッド層4に積層するコア層5の形成方法は特に限定されず、例えば、コア層形成用樹脂の塗布又はコア層形成用樹脂フィルムのラミネートにより形成すれば良い。
コア層5形成用樹脂としては、クラッド層1,3より高屈折率であるように設計され、活性光線によりコアバタンを形成し得る樹脂組成物を用いることができる。具体的には、前記クラッド層形成用樹脂で用いたのと同様の樹脂組成物を用いることが好ましい。
コア層5の形成方法は限定されず、前記樹脂組成物を常法により塗布する方法等が挙げられる。
【0026】
以下、ラミネートに用いるコア層形成用樹脂フィルムについて詳述する。
コア層形成用樹脂フィルムは、前記樹脂組成物を溶媒に溶解してキャリアフィルム上に塗布し、溶媒を除去することにより容易に製造することができる。ここで用いる溶媒としては、該樹脂組成物を溶解し得るものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒又はこれらの混合溶媒を用いることができる。樹脂溶液中の固形分濃度は、通常30〜80質量%であることが好ましい。
【0027】
コア層5形成用樹脂フィルムの厚さについては特に限定されず、乾燥後のコア層の厚さが、通常は10〜100μmとなるように調整される。該フィルムの厚さが10μm以上であると、光導波路形成後の受発光素子又は光ファイバーとの結合において位置合わせトレランスが拡大できるという利点があり、100μm以下であると、光導波路形成後の受発光素子又は光ファイバーとの結合において、結合効率が向上するという利点がある。以上の観点から、該フィルムの厚さは、さらに30〜70μmの範囲であることが好ましい。
また、コア層5の弾性率としては、1000〜3000Mpaであると好ましい。
本発明において用いられる光導波路は、コア層5及びクラッド層4、6を有する層を複数積層した多層光導波路であってもよい。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
参考例1
表1に示す通り、4種の銅箔、福田金属箔粉工業製ROFL[商品名](圧延箔,厚さ9μm,無酸素銅)、日鉱金属製BHSN[商品名](圧延箔,厚さ9μm,タフピッチ銅)、三井金属製NADFF[商品名](電解箔 9um無酸素銅)、福田金属製CF−SV[商品名](電解箔 9umタフピッチ銅)について、熱処理前、熱処理1[350℃/5分]後、熱処理2[300℃/5分]後の引張強度P及び弾性率Eを測定した。その結果を同表に示す。
なお、引張強度P及び弾性率Eは、テンシロン引張り試験機を用い、サンプル:1×5cm、裁断機で切断し、速度:5mm/min,n=3の条件で測定した。
弾性率は、引張り応力―ひずみ曲線の初めの直線部分を用いて以下に示す式により算出した。また、引張り応力―ひずみ曲線において、破断するまでの最大強度を引張強度とした。
[引張り弾性率(MPa)=直線上の2点間の応力の差(N)÷フレキシブル光導波路の元の平均断面積(mm2)÷同じ2点間のひずみの差]
表1の結果より、厚さが同一であれば、熱処理した圧延銅箔が、弾性率の値が小さいことが判明した。
【0029】
【表1】

【0030】
参考例2
表2に示す通り、福田金属箔粉工業製ROFL(圧延箔,無酸素銅)の厚さ9μm、12μm、18μm、25μmの4種について熱処理前、熱処理1[350℃/5分]後、熱処理2[300℃/5分]後、熱処理3[180℃/5分]後の引張強度P及び弾性率Eを測定した。その結果を同表に示す。
なお、引張強度P及び弾性率Eは、参考例1と同様にして測定した。
表2の結果より、厚さが9〜25μmの範囲では薄くなるに従い、弾性率の値が小さくなることが判明した。また、熱処理は、300〜350℃が好適であり、180℃では弾性率の値が殆ど変化しないことが判明した。
【0031】
【表2】

【0032】
実施例1〜4及び比較例1〜8
[クラッド層形成用樹脂フィルムの作製]
(A)ベースポリマーとして、フェノキシ樹脂(商品名:フェノトートYP−70、東都化成株式会社製)48質量部、(B)光重合性化合物として、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート(商品名:KRM−2110、分子量:252、旭電化工業株式会社製)50質量部、(C)光重合開始剤として、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩(商品名:SP−170、旭電化工業株式会社製)2質量部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を広口のポリ瓶に秤量し、メカニカルスターラ、シャフト及びプロペラを用いて、温度25℃、回転数400rpmの条件で、6時間撹拌し、クラッド層形成用樹脂ワニスAを調合した。その後、孔径2μmのポリフロンフィルタ(商品名:PF020、アドバンテック東洋株式会社製)を用いて、温度25℃、圧力0.4MPaの条件で加圧濾過し、さらに真空ポンプ及びベルジャーを用いて減圧度50mmHgの条件で15分間減圧脱泡した。
上記で得られたクラッド層形成用樹脂ワニスAを、キャリアフィルムであるポリアミドフィルム(東レ(株)製、商品名「ミクトロン」、厚さ12μm)のコロナ処理面に塗工機(マルチコーターTM−MC、株式会社ヒラノテクシード製)を用いて塗布し、80℃、10分、その後100℃、10分で溶剤乾燥させ、次いで保護フィルムとして離型PETフィルム(商品名:ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム株式会社、厚さ:25μm)を離型面が樹脂側になるように貼り付け、クラッド層形成用樹脂フィルムを得た。
【0033】
[コア層形成用樹脂フィルムの作製]
(A)ベースポリマーとして、フェノキシ樹脂(商品名:フェノトートYP−70、東都化成株式会社製)26質量部、(B)光重合性化合物として、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(商品名:A−BPEF、新中村化学工業株式会社製)36質量部、及びビスフェノールA型エポキシアクリレート(商品名:EA−1020、新中村化学工業株式会社製)36質量部、(C)光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア819、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1質量部、及び1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名:イルガキュア2959、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1質量部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を用いたこと以外は上記製造例と同様の方法及び条件でコア層形成用樹脂ワニスBを調合した。その後、上記製造例と同様の方法及び条件で加圧濾過さらに減圧脱泡した。
上記で得られたコア層形成用樹脂ワニスBを、PETフィルム(商品名:コスモシャインA1517、東洋紡績株式会社製、厚さ:16μm)の非処理面上に、上記製造例と同様な方法で塗布乾燥し、次いで保護フィルムとして離型PETフィルム(商品名:ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム株式会社、厚さ:25μm)を離型面が樹脂側になるように貼り付け、コア層形成用樹脂フィルムを得た。
【0034】
[フレキシブル光導波路の作製]
上記で得られた下部クラッド層形成用樹脂フィルムの保護フィルムである離型PETフィルム(ピューレックスA31)を剥離し、紫外線露光機(株式会社オーク製作所製、EXM−1172)にて樹脂側(基材フィルムの反対側)から紫外線(波長365nm)を1J/cm2照射し、次いで80℃で10分間加熱処理することにより、厚さ(15)μmの下部クラッド層を形成した。
次に、該下部クラッド層上に、ロールラミネータ(日立化成テクノプラント株式会社製、HLM−1500)を用い圧力0.4MPa、温度50℃、ラミネート速度0.2m/minの条件で、上記コア層形成用樹脂フィルムをラミネートし、次いで平板型ラミネータとして真空加圧式ラミネータ(株式会社名機製作所製、MVLP−500)を用い、500Pa以下に真空引きした後、圧力0.4MPa、温度50℃、加圧時間30秒の条件にて加熱圧着して、厚さ(50)μmのコア層を形成した。
次に、幅50μmのネガ型フォトマスクを介し、上記紫外線露光機にて紫外線(波長365nm)を0.6J/cm2照射し、次いで80℃で5分間露光後加熱を行った。その後、支持フィルムであるPETフィルムを剥離し、現像液(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/N,N−ジメチルアセトアミド=8/2、質量比)を用いて、コアパターンを現像した。続いて、洗浄液(イソプロパノール)を用いて洗浄し、100℃で10分間加熱乾燥した。
次いで、上記と同様なラミネート条件にて、上部クラッド層として上記クラッド層形成用樹脂フィルムをラミネートした。さらに、紫外線(波長365nm)を両面に合計で25J/cm2照射後、160℃で1時間加熱処理することによって、厚さ(20)μmの上部クラッド層を形成し基材フィルムが外側に配置されたフレキシブル光導波路を作製した。さらにポリアミドフィルム剥離のため、該フレキシブル光導波路を85℃/85%の高温高湿条件で24時間処理し、基材フィルムを除去したフレキシブル光導波路を作製した。
また、得られたフレキシブル光導波路の引張弾性率及び引張強度を上記方法により測定した結果、引張弾性率が2,000MPa、引張強度が70MPaであった。
【0035】
[シート状接着剤の作製]
HTR−860P−3(帝国化学産業株式会社製、商品名、グリシジル基含有アクリルゴム、分子量100万、Tg−7℃)100質量部、YDCN−703(東都化成株式会社製、商品名、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量210)5.4質量部、YDCN−8170C(東都化成株式会社製、商品名、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量157)16.2質量部、プライオーフェンLF2882(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名、ビスフェノールAノボラック樹脂)15.3質量部、NUCA−189(日本ユニカー株式会社製、商品名、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)0.1質量部、NUCA−1160(日本ユニカー株式会社製、商品名、γ‐ウレイドプロピルトリエトキシシラン)0.3質量部、A−DPH(新中村化学工業株式会社製、商品名、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)30質量部、イルガキュア369(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−オン:I−369)1.5質量部、シクロヘキサノンを加えて攪拌混合し、真空脱気した。この接着剤ワニスを、厚さ75μmの表面離型処理ポリエチレンテレフタレート(帝人株式会社製、テイジンテトロンフィルム:A−31)上に塗布し、80℃で30分間加熱乾燥し粘接着シートを得た。この粘接着シートに、厚さ80μmの光透過性の支持基材(サーモ株式会社製、低密度ポリエチレンテレフタレート/酢酸ビニル/低密度ポリエチレンテレフタレート三層フィルム:FHF−100)をあわせてラミネートすることにより保護フィルム(表面離型処理ポリエチレンテレフタレート)、粘接着剤層、及び光透過性の支持基材からなるシート状接着剤を作製した。粘接着剤層の厚さは10μmとした。
また、得られたシート状接着剤の引張弾性率を上記方法により測定した結果、引張弾性率は350MPaであった。
【0036】
[光電気配線板の作製]
フレキシブル光導波路に、ロールラミネータ(日立化成テクノプラント株式会社製、HLM−1500)を用い圧力0.4MPa、温度50℃、ラミネート速度0.2m/minの条件で、保護フィルムを剥がしたシート状接着剤をラミネートした。続いてダイシングソー(株式会社ディスコ製、DAD−341)を用いて、導波路を短冊状(長さ120mm、幅2mm)に加工し、支持基材側から紫外線(365nm)を250mJ/cm2照射し、粘接着剤層と支持基材界面の密着力を低下させ支持基材を剥がして接着剤付き光導波路を得た。
次に、参考例1で用いた銅箔にポリイミド(宇部日東化成(株)製ユーピレックスVT[商品名])からなる弾性率7400Mpa、厚さ12μmのフレキシブル基材2を貼り付け、エッチングして、厚さ9μmの銅回路1を形成し、フレキシブルプリント配線板を得た。
さらに前述の所定の箇所に接着剤付き光導波路を、紫外線露光機(株式会社大日本スクリーン製,MAP−1200−L)付随のマスクアライナー機構を利用して位置決めし、同ロールラミネータを用い圧力0.4MPa、温度80℃、ラミネート速度0.2m/minの条件で仮圧着した後、クリンオーブン中で160℃、1時間加熱しフレキシブル光導波路と電気配線基板を接着して、光電気配線板を得た。
【0037】
[フレキシブルプリント配線板及び光電気配線板の評価]
得られた光電気配線板ついて、図2に示す構成で、屈曲耐久試験機(株式会社大昌電子製)を用い、曲げ角度0〜180°、芯無し条件で、曲げ半径1mm、曲げ速度2回/秒の条件で屈曲耐久試験を行い、1000回毎に導波路コア及び銅回路の破断有無を観察して破断しないR1mm曲げ可能回数を求めた。
また、スライド耐久試験機((株)大昌電子製)を用い、スライド量を20mmとし、曲げ半径を1mmに設定し、スライド速度2回/秒の条件で屈曲耐久試験を行い、1000回毎に導波路コア及び銅回路の破断有無を観察して破断しないR1mmスライド可能回数を求めた。その結果を表3に示す。
また、フレキシブルプリント配線板(FPC)のみでもスライド耐久試験機((株)大昌電子製)を用い、スライド量を20mmとし、曲げ半径を1mmに設定し、スライド速度2回/秒の条件で屈曲耐久試験を行い、1000回毎に銅回路の破断有無を観察して破断しないR1mmスライド可能回数を求めた。
【0038】
【表3】

【0039】
表3に示す様に、実施例1及び2の圧延銅箔の熱処理1及び2後では曲げ試験とスライド試験ともに10万回以上を満足している。熱処理を行わない比較例1及び2では10万回以下で破断している。また、比較例3〜8の電解銅箔では熱処理1及び2を行っても10万回以下で破断している。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の製造方法により得られたフレキシブルプリント配線板、光電気配線板は、各種光学装置、光インタコネクション等の幅広い分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1:銅回路
2:フレキシブル基材
3:接着層
4:下部クラッド層
5:コア層
6:上部クラッド層
7:固定板
8:スライド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル基材に銅回路が形成されたフレキシブルプリント配線板において、銅回路材料が圧延銅箔であり、該銅回路材料の弾性率がフレキシブル基材の1.2倍以下であることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記銅回路材料の弾性率が4000〜6000Mpaである請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記フレキシブル基材がポリイミドである請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブルプリント配線板に光導波路を積層してなる光電気配線板。
【請求項5】
フレキシブル基材に圧延銅箔を積層し、銅回路を形成するフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、圧延銅箔を250〜350℃に熱処理して、その弾性率を4000〜6000Mpaとする工程を有するフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
フレキシブル基材に圧延銅箔を積層し、銅回路を形成した後、前記フレキシブル基材に光導波路を積層する光電気配線板の製造方法であって、圧延銅箔を250〜350℃に熱処理して、その弾性率を4000〜6000Mpaとする工程を有する光電気配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−233622(P2011−233622A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100911(P2010−100911)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】