説明

フレキシブル配線モジュール及びフレキシブル配線装置

【課題】 信号伝送品質の向上と電磁ノイズ放射の抑制が可能で、優れた可撓性を有するフレキシブル配線モジュール及びフレキシブル配線装置を実現する。
【解決手段】 電気配線と該電気配線を外部に接続するための電気接続端子を有する可撓性の配線板10を備え、配線板10の配線長方向に離間する一対の端部領域A1,A2及び端部領域に挟まれた配線領域Bを有するフレキシブル配線モジュールである。配線領域Bに端部領域間を結ぶ少なくとも1つの貫通スリット20を設けることにより、配線領域Bが複数の配線フィン30に分割され、配線フィン30の少なくとも一部を配線フィン30の厚さ方向に積層して束線した束線領域Cが形成されている。束線領域Cにおいて、第1の配線フィンの上層及び下層の少なくとも一方に隣接して、第1の配線フィンの電気配線よりも大きな幅の電気配線を有する第2の配線フィンが配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、機械的可動部などに用いるフレキシブル配線モジュール及びフレキシブル配線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の機械的可動部や曲面部に配設する配線として、可撓性を有するフレキシブル配線板が用いられている。また、バイポーラトランジスタや電界効果トランジスタ等の電子デバイスの性能向上により、大規模集積回路(LSI)の飛躍的な動作速度向上が図られ、それを接続する電気配線の速度制限や電磁ノイズ誤動作が問題となってきている。このような問題に対応するため、高速信号を光で配線するフレキシブル光配線板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−43129号公報
【特許文献2】特開平4−313300号公報
【特許文献3】特開2008−159766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態は、信号伝送品質の向上と電磁ノイズ放射の抑制が可能で、優れた可撓性を有するフレキシブル配線モジュール及びフレキシブル配線装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、電気配線と該電気配線を外部に接続するための電気接続端子を有する可撓性の配線板を備え、該配線板の配線長方向に離間する一対の端部領域及び該端部領域に挟まれた配線領域を有するフレキシブル配線モジュールであって、前記配線領域に前記端部領域間を結ぶ少なくとも1つの貫通スリットを設けることにより、前記配線領域が複数の配線フィンに分割され、前記配線フィンの少なくとも一部を前記配線フィンの厚さ方向に積層して束線した束線領域が形成され、前記束線領域において、第1の配線フィンの上層及び下層の少なくとも一方に隣接して、前記第1の配線フィンの電気配線よりも大きな幅の電気配線を有する第2の配線フィンが配置されてなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係わるフレキシブル配線モジュールの概略構成を示す上面図。
【図2】図1のA−A’及びB−B’における概略断面図。
【図3】第1の実施形態に係わるフレキシブル配線装置の概略構成を示す上面図。
【図4】第1の実施形態に係わるフレキシブル配線モジュールの製造工程を示す上面図。
【図5】第1の実施形態に係わるフレキシブル配線モジュールの変形例を示す断面図。
【図6】第2の実施形態に係わるフレキシブル配線モジュールの概略構成を示す上面図。
【図7】第2の実施形態に用いた第2の配線板の構成を示す上面図と断面図。
【図8】第2の実施形態に用いた第1及び第2の配線板の構成を示す上面図。
【図9】第3の実施形態に係わるフレキシブル配線装置の概略構成を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行っていく。ここでは、幾つか具体的材料や構成を例に用いて説明を行っていくが、これは同様な機能を持つ材料や構成であれば同様に実施可能であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0008】
また、以下の実施形態では、フレキシブル配線モジュールの基板形状のみ示し、電気配線などの配線パターンを省略して示す場合があるが、これは説明を簡単化するためのものであり、任意の配線を形成可能なことは述べるまでもないことである。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係わるフレキシブル配線モジュールの概略構成を示す上面図、図2(a)は図1のA−A’における概略断面図、図2(b)は図1のB−B’における概略断面図である。
【0010】
本実施形態のフレキシブル配線モジュールでは、1枚のフレキシブル配線板10の端部領域11(A1,A2)を除いた配線領域Bに貫通スリット20を設け、貫通スリット20により分離された複数の配線フィン30(30a〜30e)を配線領域Bの途中で束線帯40により束線した束線領域Cを設けている。電気配線35は、一方の端部領域A1から配線フィン30a〜30eのそれぞれを通って他方の端部領域A2に到達する。束線領域Cは配線フィン30が束ねられた領域であり、端部領域11の平面に対し法線(紙面に垂直)方向及び水平(紙面に並行)方向の両方の折り曲げが可能なフレキシブル配線束となっている。
【0011】
本実施形態に用いるフレキシブル配線板10の構成例としては、図2(a)に示すように、例えばベースフィルム14が25μm厚のポリイミド、電気配線35が25μm厚の圧延Cu箔、カバーレイ12が25μm厚のポリイミドという3層構造のラミネート体とし、フレキシブル配線板全体の大きさが幅10mmで長さ150mmとする。このフレキシブル配線板10に両端部のそれぞれ10mmを端部領域A1,A2として残し、レーザーカッターにより0.1mm幅のスリット20を1mmピッチで設けることにより、0.9mm幅で130mm長の配線フィン30が10本形成される。
【0012】
配線フィン30は束線して用いることから、全ての配線フィン30の幅がほぼ同一であることが望ましく、貫通スリット20を形成する部分にはCu等の電気配線パターンを設けないようにしておくのは述べるまでもない。また、配線フィン30は可撓性の観点から配線領域長の1/10以下の幅とすることが望ましい。これらは、以降の実施例でも同様である。
【0013】
次に、上記の配線フィン群を並んでいる順に積層して寄せ集め、束線帯40として例えば弗素樹脂系のシールテープを用いて、図1に示すように配線領域Bの少なくとも一部を束線する。束線領域Cの長さは例えば100mmとし、配線領域Bのほぼ中央に設けることが望ましい。このとき、束線帯40には粘着剤のないテープを用い、束線帯40の内側で配線フィン30が動けるよう非固定の状態にしておくことで、束線領域Cを屈曲した際の配線フィン30の伸縮や曲げ応力の緩和が容易となり、束線領域Cの可撓性を大幅に高めることが可能になる。
【0014】
本実施形態のフレキシブル配線モジュールにおいては、図2(b)に示すように、束線領域Cにおいて内層に配置した第1の配線フィン30cの上層及び下層に隣接して、配線フィン30cの電気配線35よりも大きな幅の電気配線35を有する第2の配線フィン30b,30dを配置している。そのため、配線フィン30b,30c,30dによって3層の電気配線構造(ストリップライン構造)が形成される。
【0015】
これにより、上記のフレキシブル配線モジュールを用いて2つの電気回路を接続したフレキシブル配線装置において、信頼性の向上をはかることができる。具体的には、図3に示すように、端部領域A1側において、フレキシブル配線モジュールの第1の電気接続端子(非図示。電気配線35の一部を露出させ、その表面に例えばNi/Au(厚さ5μm/0.3μm)をメッキすることで形成可能)に、例えば接地電位51,直流電源52,送信回路53を有する電気回路50aを接続する。一方、端部領域A2側において、フレキシブル配線モジュールの第2の電気接続端子(非図示)に、例えば受信回路54を有する電気回路50bを接続する。このようなフレキシブル配線装置において、第2の配線フィン30b,30dの電気配線を所定の電位に固定することで、第1の配線フィン30cの電気配線35の特性インピーダンスを所望の値に制御することが容易になる。
【0016】
例えば、電気回路50aの送信回路53から出力される高速信号(例えば1GbpsのNRZ差動信号)を、第1の配線フィン30cの電気配線35で伝送する際、第1の配線フィン30cの電気配線35と、送信回路53とフレキシブル配線モジュールを接続する伝送線路との間で、特性インピーダンスを整合させ、これらの接続点における高速信号の反射を大幅に低減することができる。また同様に、第1の配線フィン30cの電気配線35で伝送された高速信号を、電気回路50bの受信回路54で受信する際、第1の配線フィン30cの電気配線35と、受信回路54とフレキシブル配線モジュールを接続する伝送線路との間で、特性インピーダンスを整合させ、これらの接続点における高速信号の反射を大幅に低減することができる。即ち、送信回路53から受信回路54までの信号伝送品質を大幅に向上することが可能になる。
【0017】
また、第2の配線フィン30b,30dの電気配線35がシールドとなるため、高速信号を伝送することで第1の配線フィン30cの電気配線35から発生する電磁ノイズが、第1の配線フィン30cの上方又は下方にある第2の配線フィン30a,30eの電気配線35に結合することや、フレキシブル配線モジュールの外部に放射することを防ぎ、クロストークや電磁ノイズ放射の発生を抑制することが可能になる。
【0018】
さらに、本実施形態のフレキシブル配線モジュールにおいては、前述のように、束線帯40の内側で配線フィン30(電磁シールドとして機能する配線フィン30b,30dを含む)が動けるよう非固定の状態にしてあり、束線領域Cの可撓性を大幅に高めることが可能である。
【0019】
一方、一般的な電磁シールド方法として、例えばFe、Ni、フェライト等の電波吸収材料を含むシートをフレキシブル配線板に貼り付ける方法があるが、この方法では、電波吸収材料を含むシートを貼り付けた配線フィンが厚くなり、束線領域の可撓性が大幅に低下する恐れがある。また、束線領域の屈曲時には、曲率半径の中心から見て、配線フィンの一方の表面側には圧縮歪みが、他方の表面側には引っ張り歪みがかかるため、電波吸収材料を含むシートが配線フィンから剥がれる恐れがあり、信頼性の低下に繋がる。
【0020】
このように本実施形態によれば、フレキシブル配線板10にスリット20を設けて配線領域Bをほぼ同一の幅の複数の配線フィン30に分割し、隣接する配線フィン30を非固定の状態で積層すると共に束線帯40により束線して一体化し、内層に配置した第1の配線フィン30cの上層及び下層に隣接して、配線フィン30cの電気配線よりも大きな幅の電気配線を有する第2の配線フィン30b,30dを配置することにより、信号伝送品質の向上と電磁ノイズ放射の抑制が可能であると共に、優れた可撓性を有するフレキシブル配線モジュールの実現が可能になる。
【0021】
ここで、図1で示したフレキシブル配線モジュールの製造工程の一例を、図4を参照して説明する。
【0022】
図4(a)は、通常のフレキシブル配線板製造工程が終了した状態であり、Cu配線パターン(不図示)等の配線組み込みが終了した段階である。前述したように、この段階で貫通スリットを設ける部分には配線を設けないようにする。図4(b)は複数本の貫通スリット20を形成し、配線フィン30を分離する工程である。貫通スリット20の形成には、前述したレーザ加工のほか、金型打ち抜きや機械切削であるルーター加工などが可能である。
【0023】
次に、2つの端部領域11をそれぞれ図4(c)の破線矢印のように、2箇所同時に面内方向に回転させる。この動作により各配線フィン30が捻られ且つ引き寄せられるが、端部領域11を回転させた向きに合わせて図4(d)のように位置をずらして適度に張力を与えると、配線フィン30が隣接する配線フィン30と表面と裏面を対向するように重なりながらきれいに整列して束にまとまる。この状態を保持しながら、束線帯40を巻きつけることにより、図4(e)のようにフレキシブル配線モジュールが完成する。
【0024】
なお、配線フィン30の重ね方は、他の方法(例えば、各々の配線フィンが、隣接する配線フィンと表面と表面若しくは裏面と裏面を対向するように、複数の配線フィンを重ねる)を用いても良い。
【0025】
第1の配線フィンは、束線領域Cにおいて内層のどの位置にあっても良いし、図5に示すように、第1の配線フィンが最外層にあっても良い。図5の場合は30aが第1の配線フィンに相当し、30bが第2の配線フィンに相当する。第1の配線フィンが最外層にある場合、第2の配線フィンは、第1の配線フィンの上層若しくは下層のどちらか一方にしか配置できないが、この場合は、第1の配線フィン30aの電気配線と、これに隣接する第2の配線フィン30bの電気配線とで、マイクロストリップライン構造を形成することができる。
【0026】
これにより、フレキシブル配線モジュールに電気回路を接続し、第2の配線フィン30bの電気配線を所定の電位に固定すれば、第1の配線フィン30aの電気配線の特性インピーダンスを容易に制御することができ、前述の効果を享受することができる。またこのとき、第1の配線フィン30aの電気配線と第2の配線フィン30bの間で電磁界のカップリングが形成されており、フレキシブル配線モジュール外への電磁ノイズ放射を大幅に抑制することが可能である。
【0027】
これと同様に、第2の配線フィンは、第1の配線フィンが内層にある場合でも、第1の配線フィンの上層若しくは下層のどちらか一方だけに隣接して配置されても良い。
【0028】
なお、第2の配線フィンは、第1の配線フィンに隣接して配置せず、束線領域における最外層に配置することもできる(例えば図2(b)の30a,30e)。この場合、フレキシブル配線モジュールに電気回路を接続し、第2の配線フィン30a,30eの電気配線を所定の電位に固定すれば、第2の配線フィン30a,30eが電磁シールドとして機能し、第1の配線フィン30cやそれ以外の配線フィン(例えば図2(b)の30b,30d)の電気配線から発生する電磁ノイズが、フレキシブル配線モジュールの外部に放射することを防ぎ、電磁ノイズ放射の発生を抑制することが可能になる。
【0029】
図2(b)では第1の配線フィンの電気配線を2本としたが、これは1本でも良いし、複数本でも良い。複数本の電気配線を用いることで、多数の信号を伝送することや、多系統の電源を供給することができるようになる。また、第1の配線フィンの電気配線は、位相が180度異なる2つの電気信号で情報を伝送する差動信号配線であっても良いし、1つの電気信号で情報を伝送するシングルエンド配線であっても良い。同様に、第2の電気配線は複数本でも良い。第1の配線フィンが複数本の場合、及び、第2の配線フィンが複数本の場合は、第1の配線フィンの電気配線のうちの何れか1本の電気配線の幅と、第2の配線フィンの電気配線のうちの何れか1本の電気配線の幅とを比べ,第2の配線フィンの電気配線の幅が大であれば良い。
【0030】
第2の配線フィン及び第2の配線フィンの電気配線は、第1の配線フィンの電気配線の上方若しくは下方を覆うように配置することが望ましい。これにより、第1の配線フィンの電気配線や、その他の配線フィンの電気配線から発生する電磁ノイズが、フレキシブル配線モジュールの外部に漏れることを防ぎ、電磁ノイズ放射の発生をより効果的に抑制することが可能になる。
【0031】
図3では、送信回路53と受信回路54が、電気回路50aの直流電源52から給電される回路を示したが、これらは別の直流電源によって給電されても良い。
【0032】
図3では、束線領域Cにおける最外層の配線フィン30a,30eの電気配線は、電気回路50に接続されておらず、電気的にフローティングとなっているが、これらは、電源配線(所定の電位)としても良いし、信号伝送用に用いても良い。
【0033】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係わるフレキシブル配線モジュールの概略構成を示す上面図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0034】
第1の実施形態では、フレキシブル配線モジュールは1枚のフレキシブル配線板を加工して形成されたものであったが、本実施形態のフレキシブル配線モジュールは、個別に形成された複数のフレキシブル配線板を一体化したものである。
【0035】
図6に示したフレキシブル配線モジュールは、貫通スリット20(20a〜20c)を設けたフレキシブル配線板10の貫通スリット20b上に、別のフレキシブル配線板60を搭載して接着固定し、一体化して形成してある。貫通スリット20bは、貫通スリット20a,20cよりも幅が広く、更に配線板60よりも幅が広いものとなっている。フレキシブル配線板60とフレキシブル配線板10は、フレキシブル配線板10の端部領域A1,A2のそれぞれにおいて接着固定されている。接着固定には、例えば熱硬化性のエポキシ系樹脂や、両面接着シートを用いることができる。
【0036】
また、フレキシブル配線板60の電気配線とフレキシブル配線板10の電気配線は、適宜形成されている各々の電気接続端子(非図示)を介して電気接続してある。電気接続には、例えばワイヤボンディング、インクジェット配線、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Coductive Film)や異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Coductive Paste)を用いることができる。これにより、全ての配線フィンの電気配線の入出力端子をフレキシブル配線板10上に形成することが可能となっている。
【0037】
こうして形成されたフレキシブル配線モジュールは、第1の実施形態のフレキシブル配線モジュールと同様、配線フィン群を並んでいる順に積層して寄せ集め、束線領域Cを形成することができる。束線領域Cにおいて配線フィン30及び配線板60が動けるよう非固定の状態にしておくことで、束線領域Cを屈曲した際の配線フィン30の伸縮や曲げ応力の緩和が容易となり、束線領域Cの可撓性を大幅に高めることが可能になる。
【0038】
図7(a)はフレキシブル配線板60の概略上面図、図7(b)は図7(a)A−A’におけるフレキシブル配線板60の概略断面図である。
【0039】
フレキシブル配線板60は、電気配線63(63a〜63c)と光配線路64を有し、光半導体素子62(電気信号を光信号に変換する発光素子62a、光信号を電気信号に変換する受光素子62b)と駆動IC61(発光素子62aを駆動する駆動IC61a、受光素子62bを駆動して受光電流を増幅する駆動IC61b)を搭載してある。駆動IC61と光半導体素子62はフレキシブル配線板60上にフリップチップ実装されており、例えばAuスタッドバンプを介して電気配線63上に電気接続されている。また、光半導体素子62a,62bは、光配線路64を介して光結合している。
【0040】
電気配線63は例えば厚さ12μmの圧延Cuで、例えば厚さ20μmのポリイミドからなるベースフィルム66上に形成されており、光半導体素子62と駆動IC61の搭載部や電気接続端子(非図示)等を除き、表面が例えば厚さ25μmのポリイミドからなるカバーレイ67で被覆されている。なお、電気接続端子は、電気配線63の表面に例えばNi/Au(厚さ5μm/0.3μm)をメッキすることで形成可能である。
【0041】
ベースフィルム66の下層には光配線層が形成されている。光配線路(光導波路コア)64は、断面が例えば30μm×30μmのエポキシ系樹脂であり、周囲を光閉じ込めのための光導波路クラッド65(例えば厚さ50μmのエポキシ系樹脂)で覆われた構造としてある。光配線層の下部には例えば厚さ25μmのポリイミドからなるカバーレイ67が形成されている。
【0042】
光導波路材料(光導波路コア64及び光導波路クラッド65)としては、例えばエポキシ系樹脂の他、アクリル系樹脂,ポリイミド系樹脂などを用いることができ、光導波路コア64が光導波路クラッド65より屈折率が高くなるように材料、添加物を調整したものを用いる。また、光導波路コア64と光半導体素子18との光結合は、例えば光半導体素子の搭載位置において光導波路コア64に45°ミラー(不図示)を設けておくことで実現できる。
【0043】
フレキシブル配線板60においては、電気配線63bに入力された電気信号を元に駆動IC61aが発光素子62aを駆動して光信号を生成し、光配線路64で光信号が伝送される。次に、受光素子62bで受信された光信号は電気信号に変換され、駆動IC61bで増幅されて電気配線63cに出力される。また、駆動IC61a,61bは、電気配線63aによって電源が供給されている。
【0044】
上述のフレキシブル配線板60を用いることで、本実施形態のフレキシブル配線モジュールにおいて、電気配線を用いた場合に比べて大幅に高速の信号伝送(例えば10Gbps)が可能となる。一方で、低速の信号伝送(例えば10Mbps以下)や電源供給は通常のフレキシブル配線板10を用いることが可能である。そこで、フレキシブル配線板60を必要最小限の領域に用い、フレキシブル配線板10と一体化した構成とすることで、全ての信号配線をフレキシブル配線板60で賄う構成に比べて、配線部材コストの上昇を大幅に抑制することができる。
【0045】
また、フレキシブル配線板60を用いて高速の信号伝送を行う場合、光配線路からは電磁ノイズが発生しないが、光半導体素子62を駆動する際に駆動IC61から発生する電磁ノイズが、駆動IC61と直接接続されている電気配線63aに結合しやすい。そのため、フレキシブル配線板60を第1の配線フィンとし(図2(b)の30c)、第1の配線フィン30cに隣接する30b,30dを第2の配線フィンとし、さらに、フレキシブル配線モジュールに電気回路を接続して第2の配線フィン30b,30dの電気配線を所定の電位に固定することで、電気配線63aに結合した電磁ノイズが、配線フィン30aと30eの電気配線に結合することや、外部に放射されることを抑制することが可能になる。
【0046】
このように、本実施形態では、高速の信号伝送を行うための配線部材コストの上昇を大幅に抑制可能で、信号伝送品質の向上と電磁ノイズ放射の抑制が可能であると共に、優れた可撓性を有するフレキシブル配線モジュールが提供可能になる。
【0047】
なお、図6に示したフレキシブル配線モジュールでは、全ての配線フィン30の幅と各配線フィンの間隔が、それぞれほぼ同一となるよう、貫通スリット20及びフレキシブル配線板60の幅を設計することが望ましい。例えば、フレキシブル配線板10の幅を5.4mm、貫通スリット20a,20cの幅を0.1mm、貫通スリット20bの幅を1.2mmm、フレキシブル配線板60の幅を1mmとすることで、全ての配線フィン幅が1mmで、全ての貫通スリット幅が0.1mmとなる。
【0048】
図6では、幅の大きい貫通スリット20b上にフレキシブル配線板60を搭載する例を示したが、必ずしもこれに限らない。図8(a)に示すように、フレキシブル配線板60を、フレキシブル配線板10の何れかの配線フィン(例えば、配線フィン30c)上に搭載しても良い。また、図8(b)に示すように、フレキシブル配線板10の配線フィン30a〜30dの外側に搭載しても良い。図8(b)では、フレキシブル配線板10は3つの貫通スリット20a〜20cにより4つの配線フィン30a〜30dに分離されているとともに、両端にある端部領域が配線フィン30dよりも外側(図8(b)において下側)に延長されている。フレキシブル配線板60は、上述したフレキシブル配線板10の端部領域における延長部分に接着固定されている。
【0049】
第1の実施形態と同様、本実施形態においても、第2の配線フィンは、第1の配線フィンに隣接して配置せず、束線領域における最外層に配置することができる。フレキシブル配線モジュールに電気回路を接続し、第2の配線フィンの電気配線を所定の電位に固定することで、第1の配線フィンやそれ以外の配線フィンの電気配線から発生する電磁ノイズが、フレキシブル配線モジュールの外部に放射することを防ぐことができるようになる。
【0050】
フレキシブル配線板60は、必ずしも光信号伝送が可能なフレキシブル配線板である必要は無く、低誘電率材料(例えば液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer))をベースフィルムに用いたフレキシブル配線板を用いても良い。このようなフレキシブル配線板においては、電気配線のキャパシタンスを低減可能なため、光信号伝送を用いずともある程度高速の信号伝送(例えば1Gbps)が可能となる。一方で、一般的な材料であるポリイミドをベースフィルムに用いたフレキシブル配線板に比べて部材コストが増大するため、本実施形態のように、必要最小限のみの使用として通常のフレキシブル配線板と一体化して用いることで、高速の信号伝送を行うための配線部材コストの上昇が抑制可能になる。
【0051】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態に係わるフレキシブル配線装置の概略構成を示す上面図である。なお、図3と同一部分には同一符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0052】
第1及び第2の実施形態では、フレキシブル配線モジュールにおいて、第2の配線フィンの電気配線幅が第1の配線フィンの電気配線幅よりも大きいものを用いていたが、本実施形態では、フレキシブル配線モジュールを電気回路に接続することで、配線フィンの電気配線幅に制限を無くしたフレキシブル配線モジュールを用いることができる。
【0053】
図9に示したフレキシブル配線装置では、フレキシブル配線モジュールの端部領域A1側において、フレキシブル配線モジュールの電気接続端子(非図示)に、例えば接地電位51,直流電源52,送信回路53を有する電気回路50aを接続する。一方、端部領域A2側において、フレキシブル配線モジュールの電気接続端子(非図示)に、例えば受信回路54を有する電気回路50bを接続する。そして、配線フィン30b,30dの電気配線を所定の電位に固定してある。
【0054】
これにより、配線フィン30b,30dの電気配線が電磁シールドとして機能するため、電気回路50aの送信回路53から出力される高速信号を、配線フィン30cの電気配線で伝送する際、配線フィン30cの電気配線から発生する電磁ノイズが、配線フィン30cの上方又は下方にある配線フィン30a,30eの電気配線に結合することや、フレキシブル配線モジュールの外部に放射されることを防ぐことができる。このため、クロストークや電磁ノイズ放射を大幅に抑制することが可能になる。
【0055】
このように本実施形態によれば、電磁ノイズ放射の抑制が可能であると共に、優れた可撓性を有するフレキシブル配線装置が提供可能になる。
【0056】
本実施形態のフレキシブル配線装置では、第1又は第2の実施形態のフレキシブル配線モジュールを用いても良いし、第1又は第2の実施形態で説明したフレキシブル配線モジュールにおいて、第2の配線フィンの電気配線幅が第1の配線フィンの電気配線幅よりも小さいフレキシブル配線モジュールを用いても良い。後者の場合でも、第2の配線フィンを設けない場合に比べて、クロストークや電磁ノイズ放射を抑制する効果が得られる。
【0057】
なお、第1の配線フィンの電気配線は1本でも良いし、複数本でも良い。また、第1の配線フィンの電気配線は、位相が180度異なる2つの電気信号で情報を伝送する差動信号配線であっても良いし、1つの電気信号で情報を伝送するシングルエンド配線であっても良い。また、第2の配線フィンの電気配線は1本でも良いし、複数本でも良い。同様に、第2の配線フィンの電気配線は1本でも良いし、複数本でも良い。また、第2の配線フィンの電気配線を、第1の配線フィンの電気配線よりも小さい幅の複数の電気配線としても良い。
【0058】
第1の配線フィンは、束線領域において内層のどの位置にあっても良いし、最外層にあっても良い。第1の配線フィンが最外層にある場合、電磁シールドとして機能する配線フィンはその上層若しくは下層にのみ配置することになるが、これにより、第1の配線フィンの上方若しくは下方側において電磁ノイズ放射の抑制が可能である。同様に、第2の配線フィンは、束線領域において内層のどの位置にあっても良いし、最外層にあっても良い。また、第1の配線フィンが内層にある場合でも、第2の配線フィンは第1の配線フィンの上層若しくは下層のどちらか一方だけに配置されても良い。
【0059】
(変形例)
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。フレキシブル配線板の大きさ(長さ及び幅)や材料等は、仕様に応じて適宜定めればよい。同様に、端部領域、配線領域、及び束線領域の関係も、仕様に応じて適宜定めればよい。また、配線フィンの本数、即ち配線板に設ける貫通スリットの本数は何ら限定されるものではなく、1本であっても本発明の効果は期待できる。
【0060】
また、複数の配線フィンがほぼ同一の幅となるように貫通スリットを設けることが最も望ましいが、必ずしもこれに限らず多少の違いは許容範囲である。
【0061】
本発明のフレキシブル配線板には、FPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat Cable)の何れも適用可能である。また、FPCやFFCの電気配線が単層でも多層でも構わない。光半導体素子である発光素子は、面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)、発光ダイオード、半導体レーザ等、種々の発光素子が使用可能である。光半導体素子である受光素子は、PINフォトダイオード、MSMフォトダイオード、アバランシェ・フォトダイオード、フォトコンダクター等、種々の受光素子が使用可能である。光信号伝送に用いる波長は、例えば光配線路の損失の波長依存性等に合わせて適宜定めれば良い。また、発光波長や受光波長に合わせて、光半導体素子の材料も適宜選定すれば良い。
【0062】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
10…フレキシブル配線板、11…端部領域、20…貫通スリット、30…フレキシブル配線フィン、35…電気配線、40…束線帯、50…電気回路、51…接地電位、52…直流電源、53…送信回路、54…受信回路、60…フレキシブル配線板、61…駆動IC、62…光半導体素子、63…電気配線、64…光配線路、65…光導波路クラッド、66…ベースフィルム、67…カバーレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気配線と該電気配線を外部に接続するための電気接続端子を有する可撓性の配線板を備え、該配線板の配線長方向に離間する一対の端部領域及び該端部領域に挟まれた配線領域を有するフレキシブル配線モジュールであって、
前記配線領域に前記端部領域間を結ぶ少なくとも1つの貫通スリットを設けることにより、前記配線領域が複数の配線フィンに分割され、
前記配線フィンの少なくとも一部を前記配線フィンの厚さ方向に積層して束線した束線領域が形成され、
前記束線領域において、第1の配線フィンの上層及び下層の少なくとも一方に隣接して、又は前記束線領域の少なくとも一方の最外層に、前記第1の配線フィンの電気配線よりも大きな幅の電気配線を有する第2の配線フィンが配置されてなることを特徴とする、フレキシブル配線モジュール。
【請求項2】
電気配線と該電気配線を外部に電気接続するための第1の電気接続端子を有する可撓性の第1の配線板と、電気配線と該電気配線を外部に電気接続するための第2の電気接続端子を有し、前記第1の配線板に搭載された可撓性の第2の配線板と、を備え、配線長方向に離間する1対の端部領域及び該端部領域に挟まれた配線領域を有するフレキシブル配線モジュールであって、
前記第1の配線板の配線領域に前記端部領域間を結ぶ少なくとも1つの貫通スリットを設けることにより、前記配線領域が複数の配線フィンに分割され、
前記第2の配線板と前記配線フィンの少なくとも一部を前記配線フィンの厚さ方向に積層して束線した束線領域が形成され、
前記束線領域において、前記第2の配線板の上層及び下層の少なくとも一方に隣接して、又は前記束線領域の少なくとも一方の最外層に、前記第2の配線板の電気配線よりも大きな幅の電気配線を有する配線フィンが配置されてなることを特徴とする、フレキシブル配線モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフレキシブル配線モジュールと、
前記フレキシブル配線モジュールの前記第2の配線フィンの電気配線又は前記第2の配線板に隣接する前記配線フィンの電気配線を所定の電位に固定する電気回路と、
を具備したことを特徴とするフレキシブル配線装置。
【請求項4】
電気配線と該電気配線を外部に電気接続するための電気接続端子を有する可撓性の配線板と、該配線板の電気接続端子に接続された電気回路と、を備えたフレキシブル配線装置であって、
前記配線板が、配線長方向に離間する1対の端部領域及び該端部領域に挟まれた配線領域を有し、該配線領域に前記端部領域間を結ぶ少なくとも1つの貫通スリットを設けることにより、前記配線領域が複数の配線フィンに分割され、
前記配線フィンの少なくとも一部を前記配線フィンの厚さ方向に積層して束線した束線領域が形成され、
前記束線領域において、第1の配線フィンの上層及び下層の少なくとも一方に、前記電気回路によって所定の電位に固定された電気配線を有する第2の配線フィンが配置されてなることを特徴とする、フレキシブル配線装置。
【請求項5】
電気配線と該電気配線を外部に電気接続するための第1の電気接続端子を有する可撓性の第1の配線板と、電気配線と該電気配線を外部に電気接続するための第2の電気接続端子を有し、前記第1の配線板に搭載された可撓性の第2の配線板と、前記第1及び第2の配線板の各電気接続端子に接続された電気回路と、を備えたフレキシブル配線装置であって、
前記第1の配線板が、配線長方向に離間する1対の端部領域及び該端部領域に挟まれた配線領域を有し、該配線領域に前記端部領域間を結ぶ少なくとも1つの貫通スリットを設けることにより、前記配線領域が複数の配線フィンに分割され、
前記第2の配線板と前記配線フィンの少なくとも一部を前記配線フィンの厚さ方向に積層して束線した束線領域が形成され、
前記束線領域において、前記第2の配線板の上層及び下層の少なくとも一方に、前記電気回路によって所定の電位に固定された電気配線を有する配線フィンが配置されてなることを特徴とする、フレキシブル配線装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−195456(P2012−195456A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58437(P2011−58437)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】