説明

フレームに対して基板を位置決めする位置決めシステムおよび方法

【課題】サブステージにまたはその近傍に力を発生させるための熱が発生しない改善されたリソグラフィ装置の位置決めシステムを提供する。
【解決手段】サブステージ9は、メインステージ5に対して第1位置11と第2位置13の間で一方向に移動可能である。この方法は、メインステージ5の位置決めによって起動される受動力システムを使用して第1ステージを位置決めすることを含む。受動力システムは二つの磁石システム19、21を備える。各磁石システム19,21は、第2ステージに対して第1ステージに上記方向の力を非接触で与えるように構成される。力は、受動力システムによって第1ステージに与えられる上記移動方向の合力となる。合力の大きさおよび/または方向は、第2ステージに対する第1ステージの位置によって決まる。第1ステージは、合力がゼロとなるゼロ力位置23を第1位置11と第2位置13との間に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にリソグラフィ装置の位置決めシステムおよびフレームに対して基板を位置決めする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常は基板のターゲット部分に転写する機械である。リソグラフィ装置は例えば集積回路(IC)の製造に用いられる。この場合、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々のレイヤ上に形成される回路パターンを作成することができる。このパターンは、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つまたは複数のダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は、典型的に基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層への結像によって行われる。一般に、単一の基板は、連続してパターニングされる隣接するターゲット部分のネットワークを含む。従来のリソグラフィ装置は、ターゲット部分にパターン全体を一度に露光することで各ターゲット部分が照射されるいわゆるステッパーと、所与の方向(「走査」方向)に放射ビームによりパターンを走査する一方、この方向と平行にまたは逆平行に基板を同期して走査することで各ターゲット部分が照射されるいわゆるスキャナとを含む。パターンを基板上にインプリントすることで、パターニングデバイスから基板にパターンを転写することも可能である。
【0003】
リソグラフィ装置は、例えばメトロロジフレームまたはメインフレームである基準物体に対して、サブステージなどの可動物体を位置決めする位置決めシステムを備えていてもよい。サブステージは、基板またはパターニングデバイス保持する支持構造であってもよいし、支持構造を含んでもよい。
【0004】
通常、位置決めシステムは、フレームに対して移動方向に移動可能であるメインステージを備え、サブステージはメインステージに対して第1位置と第2位置の間で移動方向に移動可能である。サブステージがメインステージによって支持されてもよい。一般に、フレームとメインステージの間には、フレームに対してメインステージに移動方向に力を与える第1アクチュエータとして長ストロークのアクチュエータが設けられ、メインステージとサブステージの間には、メインステージに対してサブステージに移動方向に力を与える第2アクチュエータとしての短ストロークアクチュエータが設けられる。長ストロークアクチュエータを使用して、メインステージとサブステージの粗い位置決めを行い、短ストロークアクチュエータを使用して、メインステージに対するサブステージの微細な位置決めを行う。短ストロークアクチュエータは、可動磁石システムであってもよい。可動磁石システムでは、ステータすなわちメインステージの一部が、ムーバすなわちサブステージの一部によって取り囲まれたコイルシステムを備える。ムーバは、高い磁界密度を実現するために、磁気透過性の高い金属に組み込まれた磁石を備える。
【0005】
この構成により、長ストロークアクチュエータがメインステージを特定の加速度で加速すると、短ストロークアクチュエータはサブステージとメインステージの間に力を与えて同じ量だけサブステージを加速しなければならない。サブステージを加速するための力は、事実上二回生成される。すなわち、長ストロークアクチュエータによる一回と、短ストロークアクチュエータによる一回である。この結果、短ストロークアクチュエータはこれらの要求にしたがって設計され、そのために短ストロークアクチュエータは比較的大きくかつ重くなり、サブステージの質量が比較的大きくなる。したがって、サブステージを加速するためにさらに大きな力を生成しなければならなくなる。また、サブステージを特定の量だけ加速すると、短ストロークアクチュエータによってサブステージにまたはその近傍に多くの熱が発生し、構造的な変形を引き起こす。これは、位置測定精度の低下と、サブステージ上面にあるパターニングデバイスまたは基板の変形を生み出す。
【0006】
サブステージを冷却するために、サブステージとメインステージまたはフレームとの間に冷却液を運ぶホースを設けてもよいが、こうすると位置決めシステムの位置決め精度を制限する力の外乱が導入されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
改善された位置決めシステムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、基準物体に対してサブステージを位置決めする方法が提供される。基準物体は、フレームに対して移動方向に移動可能であるメインステージであって、メインステージに対してサブステージが第1位置と第2位置の間で移動方向に移動可能である、メインステージと、メインステージとフレームの間にあり、フレームに対してメインステージに移動方向の力を与えるメインアクチュエータと、サブステージとメインステージの間にある受動力システムであって、少なくとも二つの磁石システムを備え、各磁石システムがメインステージに対して移動方向の力をサブステージに非接触で与えるように構成され、力が受動力システムによってサブステージに与えられる移動方向の合力となる、受動力システムと、を備える。合力の大きさおよび/または方向がメインステージに対するサブステージの位置によって決まり、サブステージは、合力の大きさがゼロになるゼロ力位置を第1位置と第2位置との間に有しており、メインアクチュエータを用いてフレームに対してメインステージを位置決めすることによって、受動力システムを用いて基準物体に対してサブステージを所望の位置またはその近傍に位置決めする。
【0009】
本発明の別の実施形態によると、位置決めシステムが提供される。このシステムは、 フレームに対して移動方向に移動可能であるメインステージと、メインステージに対して第1位置と第2位置の間で移動方向に移動可能であるサブステージと、フレームに対してメインステージに移動方向の力を与えるメインアクチュエータと、サブステージとメインステージの間にあり、少なくとも二つの磁石システムを備える受動力システムであって、各磁石システムがメインステージに対して移動方向の力をサブステージに非接触で与えるように構成されており、力が受動力システムによってサブステージに与えられる移動方向の合力となる、受動力システムと、を備える。合力の大きさおよび/または方向がメインステージに対するサブステージの位置によって決まり、サブステージは、合力の大きさがゼロになるゼロ力位置を第1位置と第2位置の間に有している。位置決めシステムは、メインアクチュエータを用いてフレームに対してメインステージを位置決めすることによって、受動力システムを用いて基準物体に対してサブステージを所望の位置またはその近傍に位置決めするよう構成されたコントロールシステムをさらに備える。
【0010】
以下、対応する参照符号が対応する部分を表す添付の模式図を参照して、本発明の実施形態を例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を示す図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係る位置決めシステムを示す図である。
【図3】図2の位置決めシステムの受動力システムの実施形態を示す図である。
【図4】図2の位置決めシステムの受動力システムの別の実施形態を示す図である。
【図5】図2の位置決めシステムの受動力システムのさらに別の実施形態を示す図である。
【図6】図2の位置決めシステムの受動力システムのさらなる実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を模式的に示す。この装置は、放射ビームB(例えば、UV放射または任意の他の適切な放射)を調整する照明系(照明器)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持し、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするよう構成された第1位置決めデバイスPMに接続されるパターニングデバイス支持構造またはマスク支持構造(例えば、マスクテーブル)MTと、を備える。この装置は、基板(例えば、レジストコートされたウェハ)Wを保持するよう構成され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするよう構成された第2位置決めデバイスPWに接続された基板テーブル(例えば、ウェハテーブル)WTすなわち「基板支持部」も備える。この装置は、基板Wの目標部分C(例えば、1つまたは複数のダイを含む)に、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに与えられたパターンを投影するよう構成された投影系(例えば、屈折投影レンズ系)PSをさらに備える。
【0013】
照明系は、屈折光学素子、反射光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子、あるいは他の種類の光学素子などの各種の光学素子、またはこれらの組み合わせを含み得るものであり、放射ビームの向きや形状、あるいは他の特性を制御するためのものである。
【0014】
パターニングデバイス支持部は、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、および例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かなどの他の条件に応じた態様でパターニングデバイスを保持する。パターニングデバイス支持部は、機械的、真空、静電気または他の取り付け技術を使用してパターニングデバイスを保持することができる。パターニングデバイス支持部は、必要に応じて固定または移動可能である、例えばフレームまたはテーブルであってもよい。パターニングデバイス支持部は、例えば投影システムに対してパターニングデバイスが所望の位置にあることを保証してもよい。本明細書における「レチクル」または「マスク」なる用語の使用は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義であるとみなすことができる。
【0015】
本明細書において「パターニングデバイス」なる用語は、基板の目標部分にパターンを生成するために放射ビーム断面にパターンを与えるのに使用される何らかのデバイスを指すものと広義に解釈される。放射ビームに付与されたパターンは、基板の目標部分に望まれるパターンに厳密に一致していなくてもよい。例えば、位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャがパターンに含まれていてもよい。一般に、放射ビームに付与されたパターンは、目標部分に生成される集積回路等のデバイスにおける特定の機能層に対応する。
【0016】
パターニングデバイスは、透過型であってもよいし、反射型であってもよい。パターニングデバイスには例えばマスク、プログラム可能ミラーアレイ、及びプログラム可能LCDパネルが含まれる。マスクはリソグラフィにおいて周知であり、バイナリマスク、レベンソン型位相シフトマスク、減衰型位相シフトマスク、さらには多様なハイブリッド型マスクなどのマスクタイプが含まれる。プログラム可能ミラーアレイは例えば、微小ミラーのマトリックス配列で構成される。各微小ミラーは、入射する放射ビームを異なる複数の方向に反射するよう個別的に傾斜可能である。ミラーマトリックスにより反射された放射ビームには、傾斜されたミラーによってパターンが付与されている。
【0017】
本明細書において「投影系」なる用語は、屈折光学素子、反射光学素子、反射屈折光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子、またはこれらの組み合わせを含む何らかの投影系であると広義に解釈される。投影系は、使用される露光光に応じて、あるいは液浸液または真空の使用等のその他の要因に応じて適切とされるいかなる投影系であってもよい。本明細書において「投影レンズ」という用語は、より一般化された用語である「投影系」と同義であるとみなしてもよい。
【0018】
図示されるように、装置は(例えば透過型マスクを有する)透過型である。なお、装置は(例えば上述したタイプのプログラム可能なミラーアレイを有するか、または反射型マスクを有する)反射型であってもよい。
【0019】
リソグラフィ装置は二つ以上(二つの場合にはデュアルステージと呼ばれる)の基板テーブルすなわち「基板支持部」(及び/または二つ以上のマスクテーブルすなわち「マスク支持部」)を備えてもよい。このような多重ステージ型の装置においては、複数のテーブルまたはサポートが並行して使用されるか、あるいは1以上のテーブルまたはサポートで露光が行われている間に1以上の他のテーブルまたはサポートで準備工程が実行されるようにしてもよい。
【0020】
リソグラフィ装置は、基板の少なくとも一部が例えば水などの比較的高い屈折率を有する液体で覆われるものであってもよい。この液体は、投影系と基板との間の空隙を満たす。液浸液は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)と投影系との間などのリソグラフィ装置の他の空間に適用されるものであってもよい。本明細書では「液浸」という用語は、基板等の構造体が液体に完全に浸されているということを意味するのではなく、露光の際に投影系と基板との間に液体が存在するということを意味するに過ぎない。
【0021】
図1に示されるようにイルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えば光源SOがエキシマレーザである場合には、光源とリソグラフィ装置とは別体であってもよい。この場合、光源はリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは光源SOからビーム搬送系を介してイルミネータILへと到達する。ビーム搬送系BDは例えば適当な方向変更用ミラー及び/またはビームエキスパンダを含む。別の場合には、例えば光源が水銀ランプである場合には、光源はリソグラフィ装置に一体に構成されていてもよい。光源SOとイルミネータILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射系と総称されることがある。
【0022】
イルミネータILは放射ビームの角強度分布を調整するアジャスタADを備えてもよい。一般には、イルミネータの瞳面における照度分布の少なくとも外径及び/または内径の値(通常それぞれ「σ−outer」、「σ−inner」と呼ばれる)が調整される。加えてイルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の要素を備えてもよい。イルミネータILはビーム断面における所望の均一性及び照度分布を得るべく放射ビームを調整するために用いられる。
【0023】
放射ビームBは、支持部(例えばマスクテーブル)MTに保持されているパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射して、当該パターニングデバイスによりパターンが付与される。パターニングデバイス(例えばマスク)MAを経た放射ビームは投影系PSを通過する。投影系PSはビームを基板Wの目標部分Cに合焦させる。第2位置決めデバイスPWと位置センサIF(例えば、干渉計、リニアエンコーダ、静電容量センサなど)により基板テーブルWTは正確に移動される。例えば放射ビームBの経路に異なる複数の目標部分Cをそれぞれ位置決めするように移動される。同様に、例えば走査中またはマスクライブラリからのマスク交換後に、第1位置決めデバイスPMと別の位置センサ(図1に明示せず)により放射ビームBの経路に対してパターニングデバイス(例えばマスク)MAは正確に位置決めされてもよい。
【0024】
パターニングデバイス(例えばマスク)MAと基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2と基板アライメントマークP1、P2を用いて位置合わせされてもよい。図示の基板アライメントマークは専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分の間に間隔を空けて配置されてもよい(これらはスクライブレーンアライメントマークとして知られる)。同様に、パターニングデバイス(例えばマスク)MA上に二つ以上のダイが設けられる状況においては、パターニングデバイスアライメントマークがダイの間に配置されてもよい。
【0025】
図示の装置は以下のモードのうち少なくとも1つで使用することができる。
【0026】
1.ステップモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンの全体が1回の照射で1つの目標部分Cに投影される間、パターニングデバイス支持部(例えばマスクテーブル)MTすなわち「マスク支持部」と、基板テーブルWTすなわち「基板支持部」とが実質的に静止状態とされる(すなわち1回の静的な露光)。そして基板テーブルWTすなわち「基板支持部」がX方向及び/またはY方向に移動されて、異なる目標部分Cが露光される。ステップモードでは露光フィールドの最大サイズによって、1回の静的露光で結像される目標部分Cの寸法が制限されることになる。
【0027】
2.スキャンモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、パターニングデバイス支持部(例えばマスクテーブル)MTすなわち「マスク支持部」と、基板テーブルWTすなわち「基板支持部」とが同期して走査される(すなわち1回の動的な露光)。パターニングデバイス支持部(例えばマスクテーブル)MTすなわち「マスク支持部」に対する基板テーブルWTすなわち「基板支持部」の速度及び方向は、投影系PSの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められる。スキャンモードでは露光フィールドの最大サイズが1回の動的露光での目標部分Cの(非走査方向の)幅を制限し、走査移動距離が目標部分の(走査方向の)長さを決定する。
【0028】
3.別のモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影される間、パターニングデバイス支持部(例えばマスクテーブル)MTはプログラム可能パターニングデバイスを保持して実質的に静止状態とされ、基板テーブルWTすなわち「基板支持部」は移動または走査される。このモードでは一般にパルス放射源が用いられ、プログラム可能パターニングデバイスは走査中に基板テーブルWTすなわち「基板支持部」が移動するたびに、または連続するパルスとパルスの間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上述のプログラム可能ミラーアレイなどのプログラム可能パターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに適用可能である。
【0029】
上記のモードを組み合わせて動作させてもよいし、モードに変更を加えて動作させてもよく、さらに全く別のモードを用いてもよい。
【0030】
以下、第1および/または第2の位置決めデバイスPM、PWの実施形態を、図2ないし図6を参照してより詳細に説明する。これらの実施形態は第1および第2位置決めデバイスPM、PWに限定されるものではないが、他の応用形態に適用可能な例としての役割を果たす。
【0031】
図2は、本発明の一実施形態に係る位置決めシステム1の模式図を示す。位置決めシステム1はフレーム3を備える。フレーム3は、図1のリソグラフィ装置の支持フレームまたはベースフレームであってもよい。
【0032】
位置決めシステム1は、フレーム3に対して移動方向7に移動可能であるメインステージ5と、メインステージ5に対して第1位置11と第2位置13との間で移動方向7に移動可能であるサブステージ9とをさらに備える。メインステージ5に対するサブステージ9の位置は、サブステージ9の重心15の位置によって示される。したがって、第1位置11と第2位置13はメインステージ5上に示されており、サブステージ9の重心15に対して取り得るストロークを定義する。メインステージ5に対する重心15の相対位置をより見やすくするために、重心15を通る点線25が描かれている。
【0033】
サブステージ9は基板支持部またはパターニングデバイス支持部であってもよく、この実施形態ではメインステージ5によって支持されている。しかしながら、サブステージ9とメインステージ5の両方がフレーム3によって支持される実施形態も考えられる。サブステージ9とメインステージ5は、それぞれ第1ステージおよび第2ステージと広義に称することもできる。
【0034】
メインステージ5とフレーム3の間には、移動方向7においてフレーム3に対する力Fをメインステージ5に与えるメインアクチュエータ17が設けられる。メインアクチュエータ17は、永久磁石システムと協動するコイルシステムを備える可動磁石システムであってもよい。この場合、例えばコイルシステムがフレーム3上に配置され、永久磁石システムがメインステージ5上に配置される。メインアクチュエータ17は、コイルシステムがメインステージ5上に配置され、永久磁石システムがフレーム3上に配置される可動コイルシステムであってもよい。
【0035】
メインステージ5とサブステージ9の間には、受動力システムが設けられる。受動力システムは二つの磁石システム19、21を備え、各磁石システム19、21はメインステージ5に対する移動方向の力を非接触でサブステージ9に与えるように構成される。磁石システム19、21の力は合力、すなわち力のベクトル和となり、受動力システムによって移動方向でサブステージ9に加えられる。合力の大きさおよび/または方向は、メインステージ5に対するサブステージ9の位置によって決まる。
【0036】
サブステージ9は、第1位置11と第2位置13の間にゼロ力位置23を有しており、ここでは合力の大きさがゼロになる。ゼロ力位置23はメインステージ5上に示されている。図2において、サブステージ9はゼロ力位置に図示されている。
【0037】
位置決めシステム1は、メインアクチュエータ17を用いてフレーム3に対してメインステージ5を位置決めすることによって、受動力システムを用いて所望の位置にまたはその近傍に基準物体2に対してサブステージ9を位置決めするように構成されたコントローラまたはコントロールシステム27も備える。所望の位置は、基準物体2に対する任意の位置とすることができ、所望の軌跡として定義されてもよく、あるいは所望の速度、加速度、ジャーク(jerk)などとして定義されてもよい。基準物体2はフレーム3に接続されていてもよいし、または別個のオブジェクトであってもよい。例えば、フレーム3がベースフレームであってもよく、基準物体がメトロロジフレームであってもよい。
【0038】
コントロールシステム27は、サブステージおよび/またはメインステージの位置量を測定するための少なくとも1つのセンサを備えてもよい。この場合、コントロールシステム27は、所望の位置量および少なくとも1つのセンサの出力に基づいてメインアクチュエータに対し駆動信号を提供するように構成される。好ましくは、少なくとも1つのセンサが基準物体2に対するサブステージとメインステージの位置量を測定し、これがメインステージに対するサブステージの位置の測定となる。しかしながら、メインステージの位置量がサブステージに対して測定されることも想定される。しかしながら、組み合わせも可能である。
【0039】
磁石システム19、21は、永久磁石および/または磁化可能な材料を含む素子などの受動磁気素子を備える。
【0040】
メインアクチュエータを用いて例えば図2の右方向にメインステージ5を動かすことで、サブステージ9がメインステージ5に対して第1位置の方に動く。これは、基準物体2に対してサブステージを位置決めするために使用可能であるゼロでない合力をサブステージ9に対して生じさせる。メインステージに対するサブステージの相対位置を適切に設定することで、合力の大きさおよび/または方向を調節可能であり、基準物体2に対するサブステージの位置制御を確立することができる。
【0041】
受動的な態様でサブステージの位置決めを行うことの利点は、サブステージにまたはその近傍に力を発生させるための熱が発生しないことである。その結果、サブステージや、サブステージの上面にある基板およびパターニングデバイスなどの部品の変形が減少する。基板上に熱が発生しないか、少なくとも熱が小さくなるので、冷却液を搬送するホースなどの冷却装置を省力することができ、その結果、力の外乱が少なくなり位置決め精度が向上する。
【0042】
別の利点は、能動的な磁石−コイルシステムを使用する場合と比べて、メインステージおよび/またはサブステージの全質量が低下することである。質量が小さくなると、同一のエネルギー入力に対して位置決めシステムの動作が速くなる。
【0043】
正確な位置決めのために、位置決めシステム1はサブステージとメインステージの間に第2アクチュエータ18を備え、メインステージ5に対してサブステージ9に移動方向の力F2を与えてもよい。受動力システムの利点は、基板の微細な位置決めのために第2アクチュエータが力F2を与え外乱を抑制するだけでよいため、第2アクチュエータ18を比較的小型に設計できることである。力F2は、粗い位置決めに要する力よりも小さく、受動力システムによって与えられる。第2アクチュエータ18の存在は、本発明にとって不可欠ではないことに注意する。
【0044】
受動力システムの剛性は、メインステージに対するサブステージの位置変化、すなわち移動方向における位置変化に対する合力の大きさの変化率である。一実施形態では、ゼロ力位置における剛性の大きさが第1位置または第2位置近傍での剛性の大きさよりも小さくなるように、すなわち、剛性の大きさがゼロ力位置で最小になり第1位置および第2位置に向けて増加するように、磁石システムが設計される。これは、ゼロ力位置での微細な位置決めに第2アクチュエータを使用すると、第2アクチュエータと受動力システムとの間の干渉がゼロ力位置で最小となる一方で、第1位置および第2位置近傍での剛性を大きくすることが粗い位置決めにとって有利であることを意味する。
【0045】
図3ないし図5は、図2の位置決めシステムの受動力システムの代替実施形態をより詳細に示す。
【0046】
図3は、図2の位置決めシステム1の一部を表しており、特に上から3つの状況A、B、Cにおけるメインステージ5とサブステージ9を描いている。受動力システムは二つの磁石システム19、21を備えており、磁石システム19、21のそれぞれが、メインステージ5に取り付けられたメインステージ磁石アセンブリ30と、サブステージ9に取り付けられたサブステージ磁石アセンブリ32とを備える。
【0047】
メインステージ磁石アセンブリとサブステージ磁石アセンブリは、永久磁石30a−30d、32a−32dの一次元配列をそれぞれ備える。永久磁石の磁気分極は、各永久磁石の内部に引かれた矢印で示されている。配列内で隣接する永久磁石は、例えば永久磁石30aと32aのように、メインステージ磁石アセンブリの永久磁石とサブステージ磁石アセンブリの関連する永久磁石とが反対向きとなるように、反対の磁気分極が与えられている。このため、各磁石システム19、21のメインステージ磁石アセンブリ30とサブステージ磁石アセンブリ32は、反発し合うように構成される。
【0048】
ここで、隣接する永久磁石が逆向きの磁気分極を有する二次元配列を用いる実施形態も可能であることに注意する。簡単であるという理由により、線形配列の実施形態を一例として本明細書で説明する。
【0049】
各磁石システム19、21のメインステージ磁石アセンブリ30とサブステージ磁石アセンブリ32は、移動方向7において互いに逆方向を向く。特に、磁石システム19、21は、基板がゼロ力位置23にあるとき、基板の線、この場合は重心15を通る線25に対して対称である。このため、磁石システム19は移動方向7の正方向、すなわち図3の右向きに基板に力を与えるが、これは磁石システム21によって基板に与えられる力とは逆向きである。力の大きさは、メインステージに対するサブステージの相対位置によって決まる。
【0050】
状況Aでは、基板はメインステージに対してゼロ力位置にあり、したがって磁石システム19のメインステージ磁石アセンブリ30とサブステージ磁石アセンブリ32の間のギャップ34は、磁石システム21のメインステージ磁石アセンブリ30とサブステージ磁石アセンブリ32の間のギャップ36と等しい。このため、磁石システムによってサブステージに加えられる力は、移動方向において互いに釣り合い、移動方向における合力が大きさゼロ、すなわちなくなる。
【0051】
状況Bでは、サブステージの重心15を通る線25によって示されるように、第1位置11とゼロ力位置23との間にサブステージ9が位置するように、メインステージ5がコントロールシステムにより位置決めされている。その結果、ギャップ34がギャップ36よりも小さくなり、磁石システム19の合力が磁石システム21の合力よりも大きくなる。そのため、ゼロ力位置に向けてサブステージに移動方向の合力Frが加わる。メインステージに対してサブステージをこの位置に位置決めすることによって、サブステージを右方向、すなわち移動方向の正方向に加速することができる。
【0052】
状況Cでは、サブステージの重心15を通る線25によって示されるように、ゼロ力位置23と第2位置13との間にサブステージ9が位置するように、メインステージ5がコントロールシステムにより位置決めされている。その結果、ギャップ36がギャップ34よりも小さくなり、磁石システム19の合力が磁石システム21の合力よりも小さくなる。そのため、ゼロ力位置に向けてサブステージに移動方向の合力Frが加わる。メインステージに対してサブステージをこの位置に位置決めすることによって、サブステージを左方向、すなわち移動方向の負方向に加速することができる。
【0053】
図3に係る実施形態の利点は、ギャップ34、36を比較的小さくできる一方で、ゼロ力位置における受動力システムの剛性の大きさを最小に維持できることである。これは、磁石アセンブリ内で隣接する磁石の分極が反対向きであることにより生じる。小さいギャップ34、36が好ましいが、これは、所望の合力がサブステージに加わるようにフレームに対してメインステージを位置決めするためのメインアクチュエータの力が少なくて済むためである。所望の力が必要とされるとき、わずかな相対移動のみで十分である。ゼロ力位置における剛性を最小化することは、フレームに対するサブステージの微細な位置決めにとって有益であるが、これはサブステージの微細な位置決めのための第2アクチュエータと受動力システムとの間の干渉がより小さくなるからである。小さな位置誤差はサブステージに加わる大きな力の誤差にはつながらないので、サブステージに対するメインステージの位置決めの精度を低くすることができる。
【0054】
隣接する磁石が逆向きの分極を有する磁石アセンブリ30、32を設けることで、磁石アセンブリのある距離での磁界強度が、例えば分極が平行である状況に対して減少するので、ゼロ力位置における同一の剛性の大きさに対して、ギャップ34、36をより小さくすることができる。
【0055】
剛性の大きさは、磁石のサイズ、特に磁極ピッチによって影響を受けることがある。減磁力および力の大きさの感度は、磁石の厚さの設定によって調節することができる。したがって当業者は、減磁の感度が低くなるような磁石構成を設計し、システムに必要である範囲で剛性の大きさをできるだけ小さく設定することができる。
【0056】
本発明の可能な実施形態として、図3の磁石システム19、21の構成は2×4の磁石を示しているが、磁石スタック当たりの磁石数、および参照符号34、36で示される固定極の距離は、上述したような異なる設計パラメータを最適化するように異なっていてもよい。例えば、有限要素シミュレーションによると、磁石スタック当たりの磁石数と固定極の距離を変化させてこのような特定の要件に応じた他の有利な構成があることを示している。特定の構成に対する要件は、必要な最大合力(Fr)、サブステージ9とメインステージ5の間の相対移動に関連する固定極距離、最大力距離(図3Bおよび図3Cを参照)における磁石システムの所望の剛性、およびゼロ力距離(図3Aを参照)における磁石システムの所望の剛性に応じて決まってもよい。有限要素シミュレーションに基づく可能な構成および設計パラメータのいくつかの例を以下の表に示すが、他の磁石スタック構成とすることも可能である。
【0057】
【表1】

【0058】
磁石システムの図3の構成を、メインステージ磁石アセンブリ30とサブステージ磁石アセンブリ32とが引き合うように適用することも可能である。その結果は、状況Bおよび状況Cにおける合力が図示の合力と反対になり、したがって合力Frの方向が状況Bおよび状況Cのそれぞれについて第1位置、第2位置の方を向くことになる。このシステムは本質的に不安定であるので、制御分野の当業者には知られているように、システム全体を安定にするために不安定なシステム向けの制御スキームを構成する必要がある。
【0059】
図4は、受動力システムの別の代替的実施形態を示す。全体の動作原理は図3の実施形態と同様であるため、サブステージがゼロ力位置にのみ示されている。この実施形態の受動力システムは、3つの磁石システム19−21を備える。磁石システムはそれぞれ、サブステージ9に取り付けられたサブステージ磁石アセンブリ32と、メインステージ5に取り付けられたメインステージ磁石アセンブリ30とを備える。磁石システム20のメインステージ磁石アセンブリ30とサブステージ磁石アセンブリ32は、互いに反発するように構成される。磁石システム19、21のメインステージ磁石アセンブリ30とサブステージ磁石アセンブリ32は、互いに引き付け合うように構成される。
【0060】
磁石システム19−21は、重心15を通る線26について対称に配置される。そのため、磁石システムによってサブステージに与えられる力は、描画平面と直交する軸の周りのサブステージの回転を生じさせない。上述の対称性は必須ではなく、回転が要求されるか、または例えばガイドシステムが存在するために回転が問題とならない場合は、特に必須ではない。
【0061】
磁石システム19、21と磁石システム20との間のギャップの違いのために、サブステージが第1位置11に向けて相対移動するとき、磁石システム20の反発力は磁石システム19、21の引力よりも大きく増加する。そのため、ゼロ力位置に向けられた合力がサブステージに加えられる。サブステージが第2位置に向けて相対移動すると、磁石システム20の反発力が磁石システム19、21の引力よりも減少し、そのためゼロ力位置に向けられた合力がサブステージに加えられる。
【0062】
この構成についても、例えば磁石システム19、21が反発力を与え、磁石システム20が引力を与えるように磁石システムを適合させることができる。また、磁石システム20のギャップが磁石システム19、21のギャップよりも大きくなるように、メインステージ磁石アセンブリ30とサブステージ磁石アセンブリ32との間のギャップを変更することができる。このような適合は、例えばシステムが不安定になるとき、磁石システムの永久磁石の強度の変更、および/またはコントロールシステムの別の制御スキームを必要とすることがある。
【0063】
図5は、本発明による受動力システムの代替実施形態を示す。受動力システムは二つの磁石システム19、21を備える。各磁石システムは、メインステージ5に対して移動方向の力をサブステージ9に非接触で与えるように構成される。各磁石システム19、21は、メインステージ5に取り付けられたメインステージ磁石アセンブリ30と、サブステージに取り付けられたサブステージ磁石アセンブリとを備える。この実施形態では、磁石システム19、21のサブステージ磁石アセンブリは、単一のサブステージ磁石アセンブリに統合、すなわち組み合わされている。この例では、磁石アセンブリ30、33が1つの永久磁石を備える。磁石の磁気分極は、永久磁石内部に引かれた矢印によって示されている。このため、磁石アセンブリは反発し合うように構成される。しかしながら、磁石アセンブリが図3の磁石アセンブリと同様に構成されてもよく、隣接する磁石が反対の分極を有する複数の磁石を備えてもよい。
【0064】
サブステージ磁石アセンブリ33は、リンク42を介してサブステージ9に取り付けられる。図5に示したものと同様の受動力システムが、移動方向7に見られるサブステージ9の反対側に設けられてもよい。
【0065】
サブステージ磁石アセンブリ33の移動をガイドしその結果サブステージ9をガイドするためのガイド40が設けられる。ガイド40と、サブステージ磁石アセンブリ33またはリンク42との間に、空気軸受などの軸受が設けられてもよい。これには、移動方向と直交する方向での磁石システムの剛性を抑制するという利点があってもよい。
【0066】
図6は、本発明に係る受動力システムの別の代替実施形態を示す。メインステージ5と、メインステージ5に対して移動可能なサブステージ9が示されている。受動力システムは二つの磁石システム19、21を備え、それぞれが移動方向7に直交する方向に見られるサブステージ9の両側に配置される。各磁石システムは、メインステージ5に取り付けられたメインステージ磁石アセンブリ30を備える。メインステージ磁石アセンブリ30は磁石内の矢印によって磁気分極が示された例えば5つの永久磁石30a−30eを有する。各磁石システムは、サブステージ9に取り付けられたサブステージ磁石アセンブリ32を備える。サブステージ磁石アセンブリ32は、磁石内の矢印によって磁気分極が示された例えば3つの永久磁石32a−32cを有する。
【0067】
サブステージ9は、メインステージ5に対するゼロ力位置に図示されている。磁石アセンブリはこの位置で反発し合うように構成される。磁石の構成によって不安定なゼロ力位置が生じ、その結果、サブステージをわずかに左または右に動かすと、磁石アセンブリが互いに引き合う位置へと自分自身を位置合わせすることに注意する。磁石アセンブリを位置合わせする傾向にある移動方向の力を使用して、フレーム3に対してサブステージ9を位置決めすることができる。事実、図3−5に示した各システムが、移動方向と実質的に直交する方向で同様の挙動を有していてもよく、その結果、受動力システムを使用してサブステージ9を別の方向で位置決めすることが可能である。こうして、受動力システムの構造的な特徴を変えることなく、二次元の位置決めが可能になる。コントロールシステムの構成は、二次元の場合について適合される必要があるかもしれない。この場合、メインアクチュエータは、二方向について同様にメインステージを位置決めする必要がある。この実施形態については、位置の制御を比較的単純なままとするために、サブステージの可動範囲を磁極ピッチに制限することが望ましい。
【0068】
磁石アセンブリを、単一の永久磁石として(図5)および一次元配列として(図3および図6)図示してきたが、ハルバッハ構造を含む二次元配列などの他の構成を用いることも考えられる。またサブステージ磁石アセンブリの構成は、メインステージ磁石アセンブリの構成と同じである必要はないことに注意する。それらの一方がハルバッハ構造を有し、他方がハルバッハ構造でなくてもよい。
【0069】
一次元配列の構造が、移動方向と実質的に直行する少なくとも一方向における剛性を最小化する一方、移動方向において良好な特性を維持できるという利点を有することを、理論的に示してきた。
【0070】
特定の実施形態について説明した特徴を他の実施形態にも有利に適用できること、および図示した実施形態は特定の設計上の選択に限定されないことにさらに注意する。一例として、図示した実施形態は、重心を通る線に対して大体の場合対照的である。このことは好ましいが、本発明にとって必要ではない。同じことが、同様の特性を有する磁石を選択するために大体の場合等しい図示のギャップにも当てはまる。しかしながら、異なる特性を有する磁石を有し磁石間のギャップが異なるシステムも想定される。
【0071】
IC製造時におけるリソグラフィ装置の使用について本文で特定した言及がなされるかもしれないが、本明細書で述べるリソグラフィ装置は、集積光学システム、磁気領域メモリ用の誘導および検出パターン(guidance and detection pattern)、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造といった他の応用形態も有していることを理解すべきである。当業者は、このような代替的な応用形態の文脈において、「ウェハ」または「ダイ」という用語のあらゆる使用が、より一般的な用語である「基板」または「目標部分」とそれぞれ同義であるとみなしうることを認められよう。本明細書で参照される基板を、例えばトラック(通常、基板にレジスト層を塗布し露光されたレジストを現像する工具)または計測工具または検査工具で、露光の前後に処理することができる。可能であれば、本明細書の開示をこれらのおよび他の基板処理工具に適用することができる。さらに、例えば多層ICを作製するために基板を二回以上処理してもよく、したがって、本明細書で使用される基板という用語は、複数回処理された層を既に有している基板のことも指す場合がある。
【0072】
ここでは特に光学的なリソグラフィを本発明に係る実施形態に適用したものを例として説明しているが、本発明は例えばインプリントリソグラフィなど文脈が許す限り他にも適用可能であり、光学的なリソグラフィに限られるものではない。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスのトポグラフィが基板に生成されるパターンを決める。パターニングデバイスのトポグラフィが基板に塗布されているレジスト層に押し付けられ、電磁放射や熱、圧力、あるいはこれらの組み合わせによってレジストが硬化される。レジストが硬化されてから、パターニングデバイスは、パターンが生成されたレジストから外されて外部に移動される。
【0073】
本明細書で使用される「放射」および「ビーム」という用語は、あらゆるタイプの電磁放射を包含しており、イオンビームや電子ビームなどの粒子ビームだけでなく、紫外線(UV)放射(例えば、365、248、193、157または126nmの波長を有する)、極紫外線(EUV)放射(例えば、5〜20nmの範囲の波長を有する)を含む。
【0074】
文脈が許す場合、「レンズ」という用語は、屈折光学素子、反射光学素子、磁気光学素子、電磁気光学素子、静電気光学素子を含む様々なタイプの光学素子のいずれか1つまたは組み合わせを参照してもよい。
【0075】
本発明の具体的な実施形態を上述したが、本発明は説明したのとは別の方法で実行されてもよいことを理解されたい。例えば、本発明は、上述の方法を記載したコンピュータ読取可能な指示の1つまたは複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム、またはこのようなコンピュータプログラムを格納したデータ記憶媒体(例えば、半導体メモリ、磁気または光ディスク)の形をとってもよい。
【0076】
上述の記載は、説明を意図しており、限定するものではない。したがって、下記の請求項の精神から逸脱することなしに、上述の本発明に対して修正が施されてもよいことは当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準物体に対して第1ステージを位置決めする方法であって、
前記第1ステージは第2ステージに対して移動可能であり、
前記第2ステージは、第2ステージとフレームとの間に配置されフレームに対して第2ステージに移動方向の力を与えるメインアクチュエータを用いてフレームに対して移動方向に移動可能であり、
前記第1ステージは前記第2ステージに対して第1位置と第2位置との間で移動可能であり、
前記方法は、前記メインアクチュエータを用いて前記フレームに対して前記第2ステージを位置決めすることで起動される受動力システムを使用して、前記基準物体に対して前記第1ステージを所望の位置またはその近傍に位置決めすることを含み、
前記受動力システムは前記第1ステージと前記第2ステージの間に配置され、
前記受動力システムは少なくとも二つの磁石システムを備え、各磁石システムは前記第2ステージに対して前記移動方向の力を前記第1ステージに非接触で与えるように構成されており、
前記力は、前記受動力システムによって前記第1ステージに与えられる前記移動方向の合力となり、
前記合力の大きさおよび/または方向が前記第2ステージに対する前記第1ステージの位置によって決まり、
前記第1ステージは、前記合力の大きさがゼロになるゼロ力位置を前記第1位置と前記第2位置との間に有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1ステージの位置決めが、
前記第1位置と前記ゼロ力位置の間にあり、前記合力が前記ゼロ力位置の方を向く位置に前記第1ステージが来るように前記第2ステージを位置決めすること、
前記ゼロ力位置と前記第2位置の間にあり、前記合力が前記ゼロ力位置の方を向く位置に前記第1ステージが来るように前記第2ステージを位置決めすること、
前記第1ステージが前記ゼロ力位置に来るように前記第2ステージを位置決めすること、
のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1ステージの位置決めが、
前記第1位置と前記ゼロ力位置の間にあり、前記合力が前記第1位置の方を向く位置に前記第1ステージが来るように前記第2ステージを位置決めすること、
前記ゼロ力位置と前記第2位置の間にあり、前記合力が前記第2位置の方を向く位置に前記第1ステージが来るように前記第2ステージを位置決めすること、
前記第1ステージが前記ゼロ力位置に来るように前記第2ステージを位置決めすること、
のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
磁石システムが、別の磁石システムによって前記第1ステージに加えられる力と反対向きの力を前記第1ステージに加えるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記受動力システムを使用して前記基準物体に対する前記第1ステージの粗い位置決めを実行し、
第2アクチュエータが、前記第2ステージに対して前記第1ステージに力を加えて前記基準物体に対する前記第1ステージの微細な位置決めをするよう構成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2ステージがメインステージであり、前記第1ステージが前記メインステージのサブステージであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第2ステージがフレームに対して移動方向に移動可能であり、第1ステージが前記第2ステージに対して第1位置と第2位置の間で移動方向に移動可能である、第1ステージおよび第2ステージと、
前記フレームに対して前記第2ステージに前記移動方向の力を加えるように構成されたメインアクチュエータと、
前記第1ステージと前記第2ステージの間に配置された受動力システムであって、該受動力システムは少なくとも二つの磁石システムを備え、各磁石システムは前記第2ステージに対して前記移動方向の力を前記第1ステージに非接触で与えるように構成されており、前記力は、前記受動力システムによって前記第1ステージに与えられる前記移動方向の合力となり、前記合力の大きさおよび/または方向が前記第2ステージに対する前記第1ステージの位置によって決まり、前記第1ステージが、前記合力の大きさがゼロになるゼロ力位置を前記第1位置と前記第2位置との間に有している、受動力システムと、
前記メインアクチュエータを用いて前記フレームに対して前記第2ステージを位置決めすることで起動される前記受動力システムを使用して、基準物体に対して前記第1ステージを所望の位置またはその近傍に位置決めするように構成されたコントローラと、
を備える位置決めシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、
前記第1位置と前記ゼロ力位置の間にあり、前記合力が前記ゼロ力位置の方を向く位置と、
前記ゼロ力位置と前記第2位置の間にあり、前記合力が前記ゼロ力位置の方を向く位置と、
前記ゼロ力位置と、
のうちの1つに前記第1ステージが来るように、前記フレームに対して前記第2ステージを位置決めするように構成されることを特徴とする請求項7に記載の位置決めシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記第1位置と前記ゼロ力位置の間にあり、前記合力が前記第1位置の方を向く位置と、
前記ゼロ力位置と前記第2位置の間にあり、前記合力が前記第2位置の方を向く位置と、
前記ゼロ力位置と、
のうちの1つに前記第1ステージが来るように、前記フレームに対して前記第2ステージを位置決めするように構成されることを特徴とする請求項7に記載の位置決めシステム。
【請求項10】
前記磁石システムのそれぞれが、前記第1ステージに取り付けられた第1ステージ磁石アセンブリと、前記第2ステージに取り付けられた第2ステージ磁石アセンブリとを備えることを特徴とする請求項6に記載の位置決めシステム。
【請求項11】
前記第1ステージ磁石アセンブリと前記第2ステージ磁石アセンブリとが引き合うように構成されることを特徴とする請求項10に記載の位置決めシステム。
【請求項12】
第1ステージ磁石アセンブリと第2ステージ磁石アセンブリとが反発し合うように構成されることを特徴とする請求項7に記載の位置決めシステム。
【請求項13】
前記少なくとも二つの磁石システムの前記第1ステージ磁石アセンブリと前記第2ステージ磁石アセンブリが、前記移動方向において互いに反対向きにされていることを特徴とする請求項10に記載の位置決めシステム。
【請求項14】
前記少なくとも二つの磁石システムの前記第1ステージ磁石アセンブリと前記第2ステージ磁石アセンブリが、それぞれ少なくとも1つの永久磁石を含むことを特徴とする請求項11に記載の位置決めシステム。
【請求項15】
少なくとも1つの磁石システムが、少なくとも1つの別の磁石システムによって前記第1ステージに加えられる力と反対向きの力を前記第1ステージに加えるように構成されることを特徴とする請求項7に記載の位置決めシステム。
【請求項16】
前記第2ステージに対して前記第1ステージに前記移動方向の力を与えて、前記基準物体に対する前記第1ステージの微細な位置決めを行う第2アクチュエータが、前記第1ステージと前記第2ステージの間に設けられることを特徴とする請求項7に記載の位置決めシステム。
【請求項17】
前記第1ステージが、リソグラフィ装置の基板またはパターニングデバイスの支持構造を含むことを特徴とする請求項7に記載の位置決めシステム。
【請求項18】
前記受動力システムの剛性が、前記第2ステージに対しての前記第1ステージの位置変化に対する合力の大きさの変化率に対応し、
使用時に、前記剛性の大きさが前記ゼロ力位置で最小となり、前記第1位置および前記第2位置に向けて増加することを特徴とする請求項7に記載の位置決めシステム。
【請求項19】
前記第1ステージが前記第2ステージによって支持されることを特徴とする請求項7に記載の位置決めシステム。
【請求項20】
前記第2ステージがメインステージであり、前記第1ステージが前記メインステージのサブステージであることを特徴とする請求項7に記載の位置決めシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−40740(P2011−40740A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−173783(P2010−173783)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】