説明

フローはんだ付け方法

【課題】VOCの量を減らした、または、用いない液状のフラックスには、アルコールよりも蒸発しにくい水を用いているため、従来のフラックスでのプリヒート温度では、噴流はんだ槽投入前に水分を完全に除去することができず、従来のはんだ付け実績を用いることができない。
【解決手段】基板8のスルーホールのランド12b及び部品装着面10のランド12aにプラズマ1を照射し、このスルーホール9のはんだ付け面11にメタルマスク14を設置し、メタルマスク14を介してはんだペースト15をはんだディスペンサ16で塗布した後、基板8のはんだ付け面11の反対面である部品装着面10から挿入部品17を装着し、基板8を噴流はんだ槽20にてはんだ付けを行うフローはんだ付け方法を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路基板に溶融はんだを接触させてはんだ付けを行う電子回路基板のフローはんだ付け方法を示す。特に電子回路基板のはんだ付け面に揮発性有機化合物が5重量%以下である低VOCはんだペースト(VOC:Volatile Organic Compaounds 揮発性有機化合物)を塗布することで、VOCフリーフラックスおよび低VOCフラックスを塗布しなくとも電子回路基板のフローはんだ付けを行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板のフローはんだ付けには、VOCフリーフラックスまたは低VOCフラックスが用いられている。しかしながら現在のフローはんだ付け装置においては、噴流はんだ槽投入前の電子回路基板に塗布されたこれらのフラックスの水分を完全に除去することが困難であった。本出願人は、VOCフリーフラックスまたは低VOCフラックスの水分を完全に除去し難い問題点解決に向けて、既に未公開自社出願の特願2008−277950で提案している。それは、スルーホールが設けられた基板のはんだ付け面にメタルマスクを設置し、前記メタルマスクを介してはんだペーストを塗布した後、前記基板の部品装着面から挿入部品を装着し、前記基板を噴流はんだ槽にてはんだ付けを行うフローはんだ付け方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、未公開自社出願の特願2008−277950に記載のフローはんだ付け方法では、VOCフリーフラックスまたは低VOCフラックスを用いることなくはんだ付けが可能となったが、塗布されたはんだペーストがスルーホールの壁面を通り、部品装着面側のランド上で濡れ拡がり不足を発生させることも見受けられた。しかしながら、はんだ接合の信頼性を考慮すれば、はんだペーストは部品装着面側のランド全面に濡れ拡がることが必要であることが望ましい。
【0004】
本発明は、前記課題を解決するもので、はんだペーストが部品装着面のランドに濡れ拡がるフローはんだ付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のフローはんだ付け方法は、基板のスルーホールの壁面ランド及び前記基板の部品装着面のランドにプラズマを照射し、前記基板のはんだ付け面にメタルマスクを設置し、前記メタルマスクを介してはんだペーストをはんだディスペンサで塗布した後、前記基板の部品装着面から挿入部品を装着し、前記基板を噴流はんだ槽にてはんだ付けを行うフローはんだ付け方法であって、前記はんだぺーストは、沸点が200〜300℃の揮発性有機化合物(Volatile Organic Compaounds:VOC)であるMを0重量%<M≦5重量%含み、鉛フリーはんだ共晶合金を前記VOCと混合した粘度80〜250Pa・sであることを特徴とする。
【0006】
なお、ここで使用するはんだペーストは、VOCを0重量%よりも大きく5重量%以下含むはんだペーストであり、以降「低VOCはんだペースト」とする。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明のフローはんだ付け方法によれば、部品装着面のランド上に低VOCはんだペーストが非ニュートン流体特有のバラス効果により、わずかに膨らんで部品装着面に出てきてバラツキを発生させるものの、0.5〜2.0mmΦのスルーホール部のランド及び基板の部品装着面のランドに、プラズマによって表面改質ならびに表面清浄化を行うことによって、バラツキのない濡れ広がりと濡れ上がりを可能にし、接合性の良いはんだ付けが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1におけるフローはんだ付け方法を示したフローチャート
【図2】本発明の実施形態1におけるプラズマ発生装置の模式図
【図3】プラズマ発生装置を電子回路基板に設置した構成を示した断面図
【図4】電子回路基板にメタルマスクを設置した図
【図5】低VOCはんだペーストをスルーホールにディスペンスするはんだ供給方法を説明するための図
【図6】本発明の実施の形態2におけるフローはんだ付け方法を示したフローチャート
【図7】超音波振動を基板に加振する超音波装置を示した図
【図8】超音波装置が基板に接している状態を示した図
【図9】メタルマスクのマスク形状の一例を示した図
【図10】メタルマスクのマスク形状の一例を示した図
【図11】メタルマスクのマスク形状の一例を示した図
【図12】メタルマスクのマスク形状の一例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるフローはんだ付け方法を示したフローチャートである。
【0011】
まず全体のステップ1〜5の概略説明をしてから後述にて詳細に述べる。ステップ1は、基板のランドにプラズマを照射する工程である。ステップ2は、基板のはんだ付け面にメタルマスクを設置する工程である。ステップ3は、基板のはんだ付け面に低VOCはんだペーストをはんだディペンサで塗布する工程である。ステップ4は、上方に基板の部品装着面、下方にはんだ付け面となるように基板を裏返し、基板の部品装着面からスルーホールに挿入部品を装着する工程である。ステップ5は、基板を予備加熱し、噴流はんだ槽で溶融はんだに接触させるフローはんだ付けする工程である。
【0012】
次に、各ステップについて詳細に述べる。ステップ1は、基板のランドにプラズマを照射する工程である。基板は、フローはんだ付けに用いられる基板であり、スルーホール径が0.5〜2.0mmΦのスルーホール径を設けている。プラズマは、この基板の部品挿入面(以降「部品装着面」と称する)のランド及びスルーホール部の壁面ランドに照射する。以下に詳細については図を用いて後述する。
【0013】
次に本発明の実施の形態1におけるプラズマ発生装置の模式図を図2に示す。プラズマ発生装置の一例として、次のような形態のものを用いた。セラミックで形成された誘電体2を誘電体電極3ではさみ、この誘電体電極3に交流発生電源4を用いて13.56MHZの交流電圧をかける。水素とアルゴンの流量比4:96の混合ガス5をガス管6によって誘電体2内の流路に導入すると、プラズマノズル口7からプラズマ1が得られる形態となっている。
【0014】
上記プラズマ発生装置を電子回路基板に設置した構成を示した断面図を図3に示す。ここで用いる電子回路基板8(以降「基板8」と称する)は、スルーホール9が貫通して設けられている部品装着面10およびはんだ付け面11を有し、この部品装着面10とはんだ付け面11をランド12(部品装着面のランド12a、スルーホール壁面ランド12b、はんだ付け面のランド12cを併せたもの)が貫通した基板8である。プラズマ1を基板8に照射する。ここでプラズマ1によって、ランド12の表面正常化と表面改質がなされた領域13が形成される。この領域13は、部品装着面のランド12a全体と、スルーホール壁面ランド12b全体に対して少なくとも1/3〜1/2の面積を占める部分である。スルーホール壁面ランド12bの表面改質は、その後の工程においてはんだペーストが供給されたときに部品装着面のランド12aにはんだの濡れ上がりを良好とすることを目的としている。部品装着面からスルーホール壁面ランド12b全体に対する少なくとも1/3の面積を占める部分にプラズマ照射されていればはんだの濡れ上がりが可能であり、またスルーホール壁面ランド12b全体に対する1/2の面積を占める部分よりも大きな領域にプラズマ照射をしていても、はんだの濡れ上がり状態に大幅な変化は見られない。つまりは良好の状態であることからプラズマ照射の領域を決定した。
【0015】
ステップ2は、電子回路基板のはんだ付け面にメタルマスクを設置する工程である。図4は、本発明の実施の形態1におけるフローはんだ付け方法を説明するための電子回路基板にメタルマスクを設置した図である。
【0016】
図4(b)の電子回路基板にメタルマスクを設置した構成を示した断面図に示すように、ここで用いるメタルマスク14は、後述にて説明するが、基板8のスルーホール9の孔径の中心を含み、少なくともスルーホール9の一部を覆う開口形状を備えたもの(一例として図4(a)メタルマスクの開口形状を示した図を示す。白抜き部Aは、開口部分である)、基板8のはんだ付け面11側に設置する。
【0017】
次のステップ3では、はんだペーストを用いる。なお、ここで使用するはんだペーストは、VOCを0重量%よりも大きく5重量%以下含むはんだペーストであり、以降「低VOCはんだペースト」とする。
【0018】
ステップ3は、基板8のはんだ付け面11に低VOCはんだペースト15をはんだディペンサ16で塗布する工程である。この低VOCはんだペーストをスルーホールにディスペンスするはんだ供給方法を説明するための図が図5であり、塗布された低VOCはんだペースト15の状態を図5(b)に示す。
【0019】
ここで用いる低VOCはんだペースト15は、沸点が200〜300℃のVOCを5重量%以下含み、鉛フリーはんだ共晶合金をVOCと混合した粘度80〜250Pa・sのはんだペーストである。この低VOCはんだペースト15全体での鉛フリーはんだ共晶合金は、約90重量%である。この粘度の低VOCはんだペースト15を基板8のはんだ付け面11に塗布することにより、基板8のスルーホール9の壁面ランド12bを通り、部品装着面のランド12a上に低VOCはんだペースト15が広がった。これは、非ニュートン流体特有のバラス効果によるものであり、細管であるスルーホール9からわずかに膨らんで低VOCはんだペースト15が部品装着面10に出てくるからである。
【0020】
ここで、バラス効果と前述のプラズマ照射の説明を受けて、今回用いられる基板8のスルーホール9の径の大きさについて説明する。スルーホール9の径が0.5mmΦより小さい基板では、プラズマを照射しても、低VOCはんだペースト15は基板8のスルーホール9の壁面を通り、部品装着面10のランド12a上にほとんど広がらなかった。また2.0mmΦより大きい場合では、低VOCはんだペースト15が基板8のスルーホール9の壁面を通り、部品装着面10のランド12a上に非ニュートン流体特有のバラス効果で容易に広がる傾向があり、プラズマ1の表面清浄化および表面改質の効果がない傾向があった。
【0021】
また一般に低VOCはんだペーストに用いるVOCは、通常沸点が250℃未満になると、後の工程であるフローはんだ付けのはんだ槽の高熱によりVOCの逃散が激しくなる。したがって、低VOCはんだペースト15が基板8のスルーホール9の壁面を通り、バラス効果による部品装着面10のランド12a上への広がりが不十分となる。しかしながら、プラズマ1によって、部品装着面10のランド12aへ処理をすることによって、VOCが逃散しても200℃までのランド12a上への広がりが可能となった。200℃未満では、上記のようにVOCの逃散が激しくなるために、低VOCはんだペースト15は基板8のスルーホール9上への広がりが不十分となる。次に沸点が300℃より高い場合では、VOCの逃散は小さいものの、はんだ槽の高熱により基板8に塗布された低VOCはんだペースト15の印刷形状がダレてブリッジやツララを形成する。
【0022】
また低VOCはんだペーストは、材料の粘度を80Pa・s未満にすると、粘性が低すぎて通常の印刷形状が得られなかった。
【0023】
次に、一般に粘度が200Pa・sより大きくなると、次の工程である基板8の部品装着面10から挿入部品17のリードを挿入した際に粘度が高すぎて、リードがはんだをはんだ付け面11側に押し出してしまう結果となる。しかしながらプラズマ1によって、部品装着面10のランド12aおよびスルーホール9の壁面ランド12bへプラズマにより界面処理を行うために、低VOCはんだペースト15がプラズマ処理スルーホール部壁面ランド12bとの密着性が良好となる。このために低VOCはんだペースト15はリードにより、ほとんど押し出されることなく、この粘度が250Pa・sまで可能となっている。これより粘度が高くなると、次工程である基板8の部品装着面10から挿入部品17のリードを挿入した際に粘度が高すぎて、リードがはんだをはんだ付け面11側に押し出してしまう結果となった。
【0024】
同様に、塗布された低VOCはんだペーストのメタルマスクからのヌケ易さの指標であるチキソ比を0.4以下にすると、メタルマスク14に低VOCはんだペーストが残存し、0.6以上にすると、今度は材料の粘度が80Pa・s以上200Pa・s以下にならなかった。
【0025】
ステップ4は、上方に基板8の部品装着面10、下方にはんだ付け面11となるように基板8を裏返し、基板8の部品装着面10からスルーホール9に挿入部品17を装着する工程である。
【0026】
ステップ5は、基板8を予備加熱し、噴流はんだ槽20で溶融はんだに接触させるフローはんだ付けする工程である。
【0027】
このフローに従って低VOCはんだペーストを用いたフローはんだ付け方法についての具体的な事例を説明する。
【0028】
プラズマ1は、セラミックで形成された誘電体電極3に、交流発生電源4を用いて13.56MHZの交流電圧をかけた。水素とアルゴンの流量比4:96の混合ガス5をガス管6によって誘電体内の流路に導入し、プラズマノズル口7から、プラズマ1が発生させた。プラズマノズル口7を基板8と2mmの距離に設置し、基板8の部品装着面10のランド12a及びスルーホール径が0.8mmΦのスルーホール9のランド12bに、10秒間プラズマ1を照射させた。ここでスルーホール9のランド12bは、部品装着面10から1/3より少し多いくらいの領域にプラズマ1が照射された。このプラズマ1によって、ランド12a及びランド12bの表面正常化と表面改質を行いプラズマ処理された領域13を形成した。
【0029】
次に、ここで用いる低VOCはんだペースト15は、フラックス用溶剤として沸点が270℃の高沸点溶剤であるグリコールエーテルを0.5重量%使用して作製した。またはんだの合金成分としては、平均粒径28μmで20μm〜40μmの分布を有するSn―0.7重量%Cu共晶合金を用いた。これらの材料を調整して混練し、ペースト粘度が187Pa・sであり、またチキソ比が0.47のものを使用した。
【0030】
次にメタルマスク14としては、厚み140ミクロンでレーザー加工したメタルマスク14の作製を行った。ここでメタルマスク14のマスク開口形状は、対応する1個のスルーホールの断面積Sに対して、基板にはんだペーストを塗布したときに裏面(はんだ付け面)から表面(部品装着面)に細孔が形成されるようにスルーホールの中心部を覆いかつ1個のスルーホールの断面積Sの30〜50%を覆うことを特徴とする。また、メタルマスクの開口形状は、低VOCはんだペーストを塗布したときに基板のランドに濡れ広がるように、スルーホールの断面積Sを4分割して均等に開口したものでも良いし、2分割して均等に開口したものでも良い。しかしながらはんだ付け面11のスルーホール径が1mm未満の場合、細孔が形成されるようにスルーホールの断面全てを覆うようにし、はんだ付け面11のスルーホール径が1mm以上の場合は、はんだ充填後のスルーホール9において、はんだ付け面11から部品装着面10に細孔が形成されるように、前述に示した図4(a)に示すようなマスク形状のものを準備した。
【0031】
次に上記メタルマスク14を基板8のはんだ付け面11に設置し、印刷機によって上記低VOCはんだペースト15を印刷した。上記のどちらの径の場合も、非ニュ―トン流体特有のバラス効果により、部品装着面10側に流出した低VOCはんだペースト15は部品装着面10のランド12a上に広がった。この断面の状態を図5bに示している。このような状態となった基板8に対して、次に、上方に基板8の部品装着面10、下方にはんだ付け面11となるように基板8を裏返し、基板8の部品装着面10からスルーホール9に挿入部品17を装着した。
【0032】
次に挿入部品17が装着された基板8を加熱し、噴流はんだ槽で溶融はんだに接触させるフローはんだ付けを行った。
【0033】
ここで用いる溶融はんだは、鉛フリーはんだ材料であれば良い。しかしながら噴流はんだ槽の溶融はんだの成分を、低VOCはんだペーストに含まれる鉛フリーはんだ共晶合金と同様にすれば、既に基板のはんだ付け面に低VOCはんだペーストが塗布されていることにより部品装着面への濡れ上がりが良好となる。ここでは、噴流はんだ槽の溶融はんだをSn−0.7重量%Cuとした。
【0034】
以上のように沸点が200〜300℃のVOCを5重量%以下含み、鉛フリーはんだ共晶合金をVOCと混合した粘度80〜250Pa・sである低VOCはんだペーストを、基板のはんだ付け面に塗布することにより、低VOCを用いた接合性の良いはんだ付けが可能となった。
【0035】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2におけるフローはんだ付け方法を示したフローチャートである。本発明の実施の形態2におけるフローはんだ付け方法は、前述の本発明の実施の形態1におけるフローはんだ付け方法に、基板に超音波振動を加振する工程(ステップA)を加えたものである。
【0036】
またこの超音波振動を基板に加振する超音波装置を示した図が図7である。図7においては、挿入部品17が装着された基板8は、超音波装置18を通過し、プリヒーター19で基板8が温められ、噴流はんだ槽20で溶融はんだに接触し、冷却装置21にて冷却されてはんだ付けが完成される。
【0037】
まず、実施の形態1と同様に基板8の部品装着面10のランド12a及びスルーホールの壁面ランド12bにプラズマ1を照射し(ステップ1)、続いて基板8のはんだ付け面11にメタルマスク14を設置する工程(ステップ2)の後、基板8のはんだ付け面11に低VOC(揮発性有機化合物)はんだペースト15をはんだディスペンサ16で塗布する工程(ステップ3)の後、上方に基板8の部品装着面10、下方にはんだ付け面11となるように基板8を裏返し、基板8の部品装着面10からスルーホール9に挿入部品17を装着する工程(ステップ4)を行う。
【0038】
ここで用いる低VOCはんだペースト15は、沸点が200〜300℃のVOCを5重量%以下含み、鉛フリーはんだ共晶合金をVOCと混合した粘度80〜250Pa・sのはんだペーストであり、この粘度の低VOCはんだペースト15を基板8のはんだ付け面11に塗布することにより、基板8のスルーホール9の壁面を通り、部品装着面10のランド12a上に低VOCはんだペースト15が広がった。これは、非ニュートン流体特有のバラス効果によるものであり、細管であるスルーホール9の径よりもわずかに膨らんで低VOCはんだペースト15が部品装着面10に出てくるからである。
【0039】
しかしながら、はんだ付け面11に塗布された余分な低VOCはんだペースト15がはんだ付け面11から一部垂れ下がる場合がある。この余分な低VOCはんだペースト15は、はんだ付けの濡れ性を悪くし、良好なはんだ付け基板を得ることができなくなる。そのため、噴流はんだ槽20に投入される前に基板8が予備加熱されるプリヒーターゾーンの投入口に超音波装置18を設置する。図8は超音波装置が基板に接している状態を示した図であり、図8(a)は断面図、図8(b)は上面図である。図8に示すように、はんだ付け面11側に反り防止バーが設置されている基板8のセンターラインの部品装着面10側に超音波装置18のホーン端子先端部22を接するようにした。
【0040】
このとき、ホーン端子先端部22が部品装着面10側センターライン上に接して、2〜5キロHzの周波数、1〜10μmの振幅の超音波で振動させた。これによって、超音波装置18によって余分な低VOCはんだペースト15を除去することが可能となった。
【0041】
ここで超音波振動の周波数が、2キロHz未満の場合では、余分な低VOCはんだペースト15を基板8から除去することができず、5キロHzより大きい場合は、基板8に塗布した低VOCはんだペースト15を剥ぎ取るばかりでなく、挿入された挿入部品17を基板8に対して不安定な状況にすることとなり、はんだ付け後の品質を低下させることになった。
【0042】
上記のフローに従って低VOCはんだペーストを用いたフローはんだ付け方法についての具体的な事例を説明する。
【0043】
ここで使用する低VOCはんだペースト15は、VOCとして沸点が280℃の高沸点溶剤であるジプロピレングリコールを0.4重量%使用して作製した。またはんだの合金成分としては、平均粒径29μで22μ〜39μの分布を有するSn―0.7重量%Cu共晶合金を用いた。これらの材料を調整して混練し、ペースト粘度が180Pa・sであり、またチキソ比が0.52のものを使用した。
【0044】
次にメタルマスク14としては、厚み140ミクロンでレーザー加工したメタルマスク14の作製を行った。ここで使用するメタルマスク14は、前述の実施の形態1で用いた図4(a)に示すようなマスク形状のものを準備した。
【0045】
次に上記メタルマスク14をフロー用基板のはんだ付け面11に設置し、はんだディスペンサ16によって上記低VOCはんだペースト15を塗布した。非ニュ―トン流体特有のバラス効果により、部品装着面10側に流出したはんだは部品装着面10のランド12a上に広がった。この断面の状態を図5(b)に示している。このような状態となった基板8に対して、次に、上方に基板8の部品装着面10、下方にはんだ付け面11となるように基板8を裏返し、基板8の部品装着面10からスルーホール9に挿入部品17を装着した。
【0046】
部品装着面10から挿入部品17をスルーホール9に挿入したとき、はんだ付け面11に塗布された余分な低VOCはんだペースト15がはんだ付け面11から一部垂れ下がった。この余分な低VOCはんだペースト15を取り除くために、プリヒーターゾーンの投入口に超音波装置18を設置して、本発振機ホーン端子先端部を基板8のセンターラインの部品装着面10側に接するようにし、4キロHzの周波数、2μmの振幅で振動させた。この振動により、基板8のはんだ付け面11に垂れた余分な低VOCはんだペースト15が除去された。この基板8を噴流はんだ槽20に浸漬させ、フローはんだ付けを行った。
【0047】
以上のように沸点が200〜300℃のVOCを5重量%以下含み、鉛フリーはんだ共晶合金をVOCと混合した粘度80〜250Pa・sである低VOCはんだペースト15を、基板8のはんだ付け面11に塗布し、部品装着面10から挿入部品17をスルーホール9に挿入したときの余分な低VOCはんだペースト15を超音波の加振することにより除去することで、良好な低VOCを用いたはんだ付けが可能となった。
【0048】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3におけるフローはんだ付け方法について説明する。前述の本発明の実施の形態1および2におけるフローはんだ付け方法では、基板8のはんだ付け面11にメタルマスク14を設置した後、低VOCはんだペースト15塗布していた。
【0049】
本発明の実施の形態3におけるフローはんだ付け方法において使用するメタルマスク14は、そのメタルマスク14のマスク開口形状は、対応する1個のスルーホールの断面積Sに対して、基板にはんだペーストを塗布したときに裏面(はんだ付け面)から表面(部品装着面)に細孔が形成されるようにスルーホールの中心部を覆いかつ1個のスルーホールの断面積Sの30〜50%を覆うことを特徴とする。また基板に複数のスルーホールがある場合は、メタルマスク14に対応する全てのスルーホールに対して上記の開口形状となるように備えたメタルマスクである。
【0050】
また、メタルマスクの開口形状は、低VOCはんだペースト15を塗布したときに基板8のランド12に濡れ広がるように、スルーホールの断面積Sを4分割して均等に開口したものでも良いし、2分割して均等に開口したものでも良い。しかしながらはんだ付け面11のスルーホール径が1mm未満の場合、細孔を形成されるようにスルーホールの断面全てを覆うようにし、はんだ付け面11のスルーホール径が1mm以上の場合は、はんだ充填後のスルーホール9において、はんだ付け面11から部品装着面10に細孔が形成されるようにする。
【0051】
またこのメタルマスク14は、ランド12にはんだペースト15が塗布できるように開口した形状が望ましいが、スルーホール中心部を覆うためランド12の少なくとも一部は覆う形状を有している。メタルマスク14のマスク形状の例として図9〜図12に示した形状がある。
【0052】
いずれの形状であっても、バラス効果により、低VOCはんだペースト15を部品装着面10のランド12に盛り上げることができた。
【0053】
また、メタルマスク14の開口の中央につくられた、スルーホール9におけるはんだ付け面11から部品装着面10までの細孔をつくるための、低VOCはんだペースト15を供給しないスルーホール9中心部のマスク面積は、30%未満では挿入部品17のリードが挿入できる細孔が形成できず、50%より大きい場合では、バラス効果による部品装着面10のランド12a上への低VOCはんだペースト15の盛り上がりができなかった。
【0054】
このことからメタルマスク14のマスク形状として最適な大きさは、スルーホール9の断面積Sの30〜50%を覆う開口形状であることがわかり、はんだ付け後に十分な濡れ上がりを可能とした。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のフローはんだ付け方法は、低VOCはんだペーストを用い、プラズマを基板に照射させ、フロー用基板のはんだ付け面にメタルマスクを搭載後、低VOCはんだペーストを印刷した後、挿入部品を装着し、噴流はんだ槽ではんだ付けを行う方法であって、はんだ付けされている片面基板、両面基板、リフロー・フロー混載基板に対しても、利用可能である。また本発明は、上記フロー基板のみならず、材質としてセラミックを用いるようなデバイス用フロー基板や部分ディップ基板など、いわゆるはんだ溶融槽へ浸漬によるはんだ付けに使われているもの全てに適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 プラズマ
2 誘電体
3 誘電体電極
4 交流発生電源
5 混合ガス
6 ガス管
7 プラズマノズル口
8 基板
9 スルーホール
10 部品装着面
11 はんだ付け面
12 ランド
13 領域
14 メタルマスク
15 低VOCはんだペースト
16 はんだディスペンサ
17 挿入部品
18 超音波装置
19 プリヒーター
20 噴流はんだ槽
21 冷却装置
22 ホーン端子先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のスルーホールの壁面ランド及び前記基板の部品装着面のランドにプラズマを照射し、前記基板のはんだ付け面にメタルマスクを設置し、前記メタルマスクを介してはんだペーストをはんだディスペンサで塗布した後、
前記基板の部品装着面から挿入部品を装着し、前記基板を噴流はんだ槽にてはんだ付けを行うフローはんだ付け方法であって、
前記はんだぺーストは、
沸点が200〜300℃の揮発性有機化合物(Volatile Organic Compaounds:VOC)であるMを0重量%<M≦5重量%含み、鉛フリーはんだ共晶合金を前記VOCと混合した粘度80〜250Pa・sであることを特徴とするフローはんだ付け方法。
【請求項2】
はんだペーストに含まれる鉛フリーはんだ共晶合金は、
10μm〜40μmの粒度を有するSn−0.7重量%Cu共晶合金であり、
前記噴流はんだ槽のはんだ材料をSn−Cuはんだとすることを特徴する請求項1に記載のフローはんだ付け方法。
【請求項3】
基板の部品装着面から挿入部品を装着した後、
2〜5kHzの周波数、1〜10μmの振幅の超音波で前記基板を振動させた後、前記基板を噴流はんだ槽にてはんだ付けを行うことを特徴とする請求項1に記載のフローはんだ付け方法。
【請求項4】
メタルマスクは、
1個のスルーホールの中心部を覆いかつ、前記スルーホールの断面積Sの30〜50%を覆う開口形状であり、前記メタルマスクに対応する前記基板の全てのスルーホールに対して前記開口形状とすることを特徴とする請求項1に記載のフローはんだ付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−151220(P2011−151220A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11606(P2010−11606)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】