説明

プラズマ発生用電源装置

【課題】構成が簡潔で安価なプラズマ発生用電源装置を提供する。
【解決手段】商用交流電力などの交流電力を整流器で直流電力に変換し、直流電力をインバータで高周波交流電力に逆変換し、高周波交流電力をマッチング部とプラズマ発生装置からなる負荷回路に供給するようにしたプラズマ発生用電源装置において、インバータを駆動するスイッチング周波数を可変することにより、電源電力の調整を行い、プラズマ発生装置へ供給する高周波電流を一定にしたり、高周波電圧を一定にしたり、あるいは、高周波電力を一定にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ発生用電源装置に関し、さらに詳細には、高周波スパッタリングやプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法)あるいはエッチングなどのような半導体製造工程を実施する半導体製造装置においてプラズマを発生する際などに用いて好適なプラズマ発生用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプラズマ発生用電源装置として、例えば、インバータを備えた、所謂、インバータ方式のプラズマ発生用電源装置が知られている。
【0003】

ここで、図1には、従来のインバータ方式のプラズマ発生用電源装置のブロック構成説明図が示されている。
【0004】
また、図2には、図1に示すプラズマ発生用電源装置の可変マッチング部およびプラズマ発生装置の等価回路が示されている。
【0005】
このプラズマ発生用電源装置100は、交流電源120から供給される交流電力を所望の電圧の高周波交流電力に変換して、負荷であるプラズマ発生装置130へ供給するものである。
【0006】
なお、交流電源120としては、例えば、商用交流電源を用いることができ、その場合には、プラズマ発生用電源装置100は、商用交流電力を高周波交流電力に変換してプラズマ発生装置130へ供給する。
【0007】
より詳細には、プラズマ発生用電源装置100は、交流電源120から供給された交流電力を直流電力に変換して出力する可変整流器102と、電解コンデンサ104と、直流電力を入力して高周波交流電力に逆変換して出力するインバータ106と、インバータ106から出力された高周波交流電力を入力してプラズマ発生装置130へ出力する回路定数が可変な可変マッチング部108と、可変マッチング部108から出力される高周波交流電力の位相検出および電力検出を行う検出部110と、検出部110による検出結果に基づいて可変マッチング部108における整合条件を制御する整合制御部112と、検出部110による検出結果に基づいてインバータ106を駆動するスイッチング周波数を制御する周波数制御部114と、検出部110による検出結果に基づいて可変整流器102が変換する直流電圧を制御する電圧制御部116とを有して構成されている。
【0008】

以上の構成において、プラズマ発生用電源装置100は、交流電源120から供給された交流電力を可変整流器102で直流電力に変換し、直流電力をインバータ106で高周波交流電力に逆変換し、高周波交流電力を可変マッチング部108とプラズマ発生装置130からなる負荷回路に供給するようになされている。
【0009】
そして、こうしたプラズマ発生用電源装置100においては、インバータ106を共振周波数と同一の周波数のスイッチング周波数で駆動することにより、無効電力を低減させていた。
【0010】

ところで、上記したようなインバータを共振周波数と同一の周波数のスイッチング周波数で駆動する方式のプラズマ発生用電源装置においては、出力調整を行う場合に直流電圧を可変する必要があるため、整流器として可変整流器を用いており、一般的には、可変整流器としてサイリスタが使用されていた。
【0011】
しかしながら、サイリスタを使用する場合には、以下の(1)乃至(3)に示す問題点があった。
【0012】
(1)過大なリップルが発生するため、リップル除去用に大容量の電解コンデンサ(プラズマ発生用電源装置100における電解コンデンサ104である。)が必要であった。ところが、電解コンデンサは、半導体素子や受動素子と比較すると、部品寿命が圧倒的に短く、定期的にメンテナンスを行って交換する必要があるという問題点があった。
【0013】
(2)サイリスタによる整流は、低出力設定時に力率が大きく低下するという問題点があった。
【0014】
(3)サイリスタによる制御は、商用周波数でのフィードバック制御であるため、プラズマ発生装置の負荷変動に対する追尾制御が遅れるという問題点があった。
【0015】

なお、上記したインバータを共振周波数と同一の周波数のスイッチング周波数で駆動する方式のプラズマ発生用電源装置において、サイリスタ以外にチョッパー電源やPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)インバータを使用して、直流電圧を可変する方法があるが、数kW以上の電源を構成する場合には、直流電力変換部が大型化、高価格化してしまうという問題点があった。
【0016】

また、ISM(Industry−Science−Medical:産業科学医療)用バンドを利用するプラズマ発生用電源装置においては、周波数安定度が定められている。
【0017】
具体的に説明すると、13.56MHzのプラズマ発生用電源装置においては、プラズマ発生装置の負荷の変化に対して±0.05%(±7kHz)となるように周波数マッチングを調整する必要があり、マッチング回路でL、Cの定数可変方式を採用していた。
【0018】
このため、従来のISM用バンドを利用するプラズマ発生用電源装置は、マッチング部の構成が非常に複雑になり、さらに、高度な調整操作または自動調整機能が必要とされていたという問題点があった。
【0019】

また、プラズマ発生用電源装置の出力インピーダンスとプラズマ発生装置の入力インピーダンスとを50Ωで整合する手法の装置が知られている。
【0020】
こうしたプラズマ発生装置のプラズマ発生用電源装置は、具体的には、A級/B級/AB級/D級アンプで構成されるプラズマ発生用電源装置である。
【0021】

ここで、図3には、従来のA級/B級/AB級/D級アンプで構成されるプラズマ発生用電源装置のブロック構成説明図が示されている。
【0022】
また、図4には、図3に示すプラズマ発生用電源装置の可変マッチング部およびプラズマ発生装置の等価回路が示されている。
【0023】
このプラズマ発生用電源装置200は、交流電源220から供給される交流電力を所望の電圧の高周波交流電力に変換して、負荷であるプラズマ発生装置230へ供給するものである。
【0024】
なお、交流電源220としては、例えば、商用交流電源を用いることができ、その場合には、プラズマ発生用電源装置200は、商用交流電力を高周波交流電力に変換してプラズマ発生装置230へ供給する。
【0025】
より詳細には、プラズマ発生用電源装置200は、交流電源220から供給された交流電力を直流電力に変換して出力する整流器202と、電解コンデンサ204と、発振回路206と、増幅器208と、回路定数が可変な可変マッチング部210と、方向性結合器212と、反射電力検出部214と、反射電力検出部214による検出結果に基づいて可変マッチング部210における整合条件を制御する整合制御部216と、反射電力検出部214による検出結果に基づいて増幅器208の出力を制御する出力制御部218とを有して構成されている。
【0026】

ところで、上記したようなA級/B級/AB級/D級アンプで構成されるプラズマ発生用電源装置においては、プラズマ発生装置の入力インピーダンスの変化に対してマッチング回路を調整する必要があり、L、C定数の可変素子を使用していた。
【0027】
このため、こうしたプラズマ発生用電源装置は、マッチング部(プラズマ発生用電源装置200における可変マッチング部210である。)の構成が複雑になり、さらに、高度な調整操作または自動調整機能が必要とされていたという問題点があった。
【0028】

なお、上記において説明したような従来のプラズマ発生用電源装置に係る技術としては、以下に示す特許文献1乃至特許文献5に開示された技術がある。
【特許文献1】特開2004−80846号公報
【特許文献2】特開平11−288796号公報
【特許文献3】特開平9−247945号公報
【特許文献4】特開2003−125586号公報
【特許文献5】特開平7−142387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、構成が簡潔で安価なプラズマ発生用電源装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記目的を達成するために、本発明によるプラズマ発生用電源装置は、インバータを駆動するスイッチング周波数を可変することにより、出力調整を行うようにしたものである。
【0031】
ここで、出力調整とは、プラズマ発生装置へ供給する高周波電流を一定にしたり、高周波電圧を一定にしたり、あるいは、高周波電力を一定にすることを意味する。
【0032】
これにより、マッチング回路の回路定数を固定とすることができるようになり、構成が簡潔で安価なプラズマ発生用電源装置を得ることができる。
【0033】
即ち、本発明は、商用交流電力などの交流電力を整流器で直流電力に変換し、直流電力をインバータで高周波交流電力に逆変換し、高周波交流電力をマッチング部とプラズマ発生装置からなる負荷回路に供給するようにしたプラズマ発生用電源装置において、インバータを駆動するスイッチング周波数を可変することにより、電源電力の調整を行い、プラズマ発生装置へ供給する高周波電流を一定にしたり、高周波電圧を一定にしたり、あるいは、高周波電力を一定にするようにしたものである。
【0034】
こうした本発明によるプラズマ発生用電源装置によれば、構成が簡潔で安価なプラズマ発生用電源装置を得ることができる。
【0035】
また、本発明によるプラズマ発生用電源装置においては、インバータを駆動するスイッチング周波数を、共振周波数付近の周波数あるいは共振周波数より高い周波数とするようにしてよい。
【0036】

即ち、本発明のうち請求項1に記載の発明は、交流電力を整流器で直流電力に変換し、該直流電力をインバータで高周波交流電力に逆変換し、該高周波交流電力をマッチング部とプラズマ発生装置からなる負荷回路に供給するプラズマ発生用電源装置であって、上記インバータを駆動するスイッチング周波数を可変することにより、上記プラズマ発生装置へ供給する高周波電流を一定にするようにしたものである。
【0037】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、交流電力を整流器で直流電力に変換し、該直流電力をインバータで高周波交流電力に逆変換し、該高周波交流電力をマッチング部とプラズマ発生装置からなる負荷回路に供給するプラズマ発生用電源装置であって、上記インバータを駆動するスイッチング周波数を可変することにより、上記プラズマ発生装置へ供給する高周波電圧を一定にするようにしたものである。
【0038】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、交流電力を整流器で直流電力に変換し、該直流電力をインバータで高周波交流電力に逆変換し、該高周波交流電力をマッチング部とプラズマ発生装置からなる負荷回路に供給するプラズマ発生用電源装置であって、上記インバータを駆動するスイッチング周波数を可変することにより、上記プラズマ発生装置へ供給する高周波電力を一定にするようにしたものである。
【0039】
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2または3のいずれか1項に記載の発明において、上記マッチング部内の素子の定数固定でスイッチング周波数が自動追尾するようにしたものである。
【0040】
また、本発明のうち請求項5に記載の発明は、本発明のうち請求項1、2または3のいずれか1項に記載の発明において、上記インバータを駆動するスイッチング周波数を可変することにより、上記プラズマ発生装置へ供給する高周波電力を調整して一定にするようにしたものである。
【0041】
また、本発明のうち請求項6に記載の発明は、本発明のうち請求項5に記載の発明において、共振特性における共振周波数より高い周波数領域でスイッチング周波数を可変するようにしたものである。
【発明の効果】
【0042】
本発明は、以上説明したように構成されているので、構成が簡潔で安価なプラズマ発生用電源装置を提供することができるようになるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるプラズマ発生用電源装置の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0044】

ここで、図5には、本発明の第1の実施の形態によるプラズマ発生用電源装置のブロック構成説明図が示されている。
【0045】
また、図6(a)には、図5に示す本発明の第1の実施の形態によるプラズマ発生用電源装置の可変マッチング部およびプラズマ発生装置の等価回路が示されており、また、図6(b)には、図6(a)のプラズマ発生装置をインピーダンスZpに置き換えた等価回路が示されている。
【0046】
この本発明の第1の実施の形態によるプラズマ発生用電源装置10は、交流電源22から供給される交流電力を所望の電圧の高周波交流電力に変換して、負荷であるプラズマ発生装置24へ供給するものである。
【0047】
なお、交流電源22としては、例えば、商用交流電源を用いることができ、その場合には、プラズマ発生用電源装置10は、商用交流電力を高周波交流電力に変換してプラズマ発生装置24へ供給する。
【0048】
より詳細には、プラズマ発生用電源装置10は、交流電源22から供給された交流電力を直流電力に変換して出力する整流器12と、整流器12から出力された直流電力を入力して高周波交流電力に逆変換して出力するインバータ14と、インバータ14から出力された高周波交流電力を入力してプラズマ発生装置24へ出力する回路定数が固定な固定マッチング部16と、インバータ14から出力される高周波交流電力の位相検出、電流検出、電圧検出および電力検出を行う検出部18と、検出部18による検出結果に基づいてインバータ14を駆動するスイッチング周波数を制御する周波数制御部20とを有して構成されている。
【0049】

以上の構成において、プラズマ発生用電源装置10は、交流電源22から供給された交流電力を整流器12で直流電力に変換し、直流電力をインバータ14で高周波交流電力に逆変換し、高周波交流電力を固定マッチング部16とプラズマ発生装置24からなる負荷回路に供給するようになされている。
【0050】
そして、こうしたプラズマ発生用電源装置10は、周波数制御部20によって、検出部18による検出結果に基づき、共振周波数に対しプラズマ発生状態に影響を及ぼさない範囲でインバータ14のスイッチング周波数を可変する。
【0051】
このように、プラズマ発生用電源装置10においては、周波数制御部20によりインバータ14のスイッチング周波数を可変することによりマッチング調整が可能であるため、固定マッチング部16を用いているようにマッチング部の回路定数は固定(調整不要)としてよい。
【0052】
即ち、プラズマ発生用電源装置10によれば、インバータ14を駆動するスイッチング周波数を可変することにより、電源電力の調整を行い、プラズマ発生装置24へ供給する高周波電流を一定にしたり、高周波電圧を一定にしたり、あるいは、高周波電力を一定にすることができるものであり、構成が簡潔で安価なプラズマ発生用電源装置を実現することができる。
【0053】

次に、図7には、本発明の第2の実施の形態によるプラズマ発生用電源装置のブロック構成説明図が示されている。
【0054】
なお、図7に示す本発明の第2の実施の形態によるプラズマ発生用電源装置の説明においては、図5に示す本発明の第1の実施の形態によるプラズマ発生用電源装置10と同一または相当する構成については、上記において用いた符号と同一の符号を用いて示すことにより、その詳細な構成ならびに作用の説明は適宜に省略することとする。
【0055】
この図7に示す本発明の第2の実施の形態によるプラズマ発生用電源装置30と第1の実施の形態によるプラズマ発生用電源装置10とを比較すると、高周波交流電力の位相検出、電流検出、電圧検出および電力検出を行う検出部の接続状態のみが異なる。
【0056】
即ち、プラズマ発生用電源装置10においては、検出部18が、インバータ14から出力される高周波交流電力の位相、電流、電圧および電力を検出するように接続されている。
【0057】
一方、プラズマ発生用電源装置30において、固定マッチング部16から出力される高周波交流電力の位相、電流、電圧および電力を検出するように、検出部32が接続されている。
【0058】
こうしたプラズマ発生用電源装置30は、プラズマ発生用電源装置10と同様に、周波数制御部20によって、検出部32による検出結果に基づき、共振周波数に対しプラズマ発生状態に影響を及ぼさない範囲でインバータ14のスイッチング周波数を可変する。
【0059】
即ち、プラズマ発生用電源装置30においても、周波数制御部20によりインバータ14のスイッチング周波数を可変することによりマッチング調整が可能であるため、固定マッチング部16を用いているようにマッチング部の回路定数は固定(調整不要)としてよい。
【0060】
従って、プラズマ発生用電源装置30によっても、構成が簡潔で安価なプラズマ発生用電源装置が実現できる。
【0061】

ここで、図8には、本発明の第1の実施の形態によるプラズマ発生用電源装置における共振特性(マッチング特性)を表す周波数と出力電力との関係を示すグラフが示されている。
【0062】
以下に、インピーダンス計算式を示すが、まず、角速度を
ω=2πf ・・・ 式1
とする。
【0063】
ここで、図6(b)において、
Zp=Rp−j(1/ωCp) ・・・ 式2
である。
【0064】
図6(a)に示す等価回路のインピーダンスは、
Z={−j(1/ωCp・Zp)}/{−j(1/ωCp)+Zp}+jωL ・・・ 式3
となる。
【0065】
従って、式2および式3より、
Z={Rp/(ωC・Cp)+(Rp/ωC)(1/ωC+1/ωCp)}/{Rp+(1/ωC+1/ωCp)}+j〔[{1/(ωC・Cp)}(1/ωC+1/ωCp)−Rp/ωC]/{Rp+(1/ωC+1/ωCp)}+ωL〕
となる。
【0066】
ここで、
A=Rp/(ωC・Cp)+(Rp/ωC)(1/ωC+1/ωCp)
B=Rp+(1/ωC+1/ωCp)
C={1/(ωC・Cp)}(1/ωC+1/ωCp)−Rp/ωC
D=ωL
とすると、
Z=B/A+j(C/A+D)
であり、
|Z|=√{(B/A)+(C/A+D)} ・・・ 式4
である。
【0067】
式1および式4から
正規化周波数F=f/fに対する出力電力の特性は、図8に示す通りとなる。
【0068】

プラズマ発生用電源装置10において、インバータ14を駆動するスイッチング周波数を可変することにより、プラズマ発生装置24へ供給する高周波電流を調整して一定にしたり、高周波電圧を調整して一定にしたり、あるいは、高周波電力を調整して一定にするものである。
【0069】

また、図9には、プラズマ発生用電源装置10において、インバータ14を共振周波数より高い周波数のスイッチ周波数で駆動して出力調整をした場合の周波数と出力電力との関係を示すグラフ(実線部分参照)が示されている。
【0070】
プラズマ発生用電源装置10、30のインバータ14を駆動する際に、図9に示すグラフにおいて実線で示す周波数領域のように、共振周波数より高いスイッチング周波数で駆動して出力調整を行う場合には、スイッチング周波数を高くすると高周波交流電流の位相遅れが大きくなり、結果として、負荷投入電力、即ち、電源出力が下がることになる。
【0071】
そして、整流器12においては、直流電圧を可変する機能が不要となるため、例えば、シンプルなダイオードスタックにより構成することができる。
【0072】
上記したように、プラズマ発生用電源装置10、30において、共振周波数より高いスイッチング周波数でインバータ14を駆動すると、以下に説明する(1)乃至(3)の作用効果が奏される。
【0073】
(1)リップルが小さくなるので、電解コンデンサが不要になる。このため、メンテナンスを簡略化することができる。
【0074】
(2)整流器12としてダイオードスタックを使用することにより、力率が向上し、定格出力の50%においても、力率90%以上が維持可能となる。
【0075】
(3)インバータ14のスイッチング周波数制御は、高周波交流電流のフィードバック制御であるため、プラズマ発生装置24の負荷変動に対して高速追尾制御が可能となる。
【0076】

また、プラズマ発生用電源装置10、30において、図9に示すグラフにおいて実線で示す周波数領域のように、共振周波数より高いスイッチング周波数でインバータ14を駆動して出力調整を行う場合には、整流器12として、例えば、ダイオードスタックを使用することができるが、大電流対応のダイオードスタックはモジュール化されていて一般的に市販されている。
【0077】
このため、プラズマ発生用電源装置10、30により数kW以上の出力のプラズマ発生用電源装置を構成する場合でも、小型かつ低価格で構成することが可能となる。
【0078】

なお、プラズマ発生用電源装置10、30において、図9に示すグラフにおいて実線で示す周波数領域のように、共振周波数より高いスイッチング周波数でインバータ14を駆動して出力調整を行う場合には、例えば、数十kHz〜数百kHzのスイッチング周波数を想定しており、この想定に基づいて、固定マッチング部16とプラズマ発生装置24からなる共振回路の共振周波数が希望値になるように、予め固定マッチング部16の回路定数を設定しておくものである。
【0079】
そして、上記したように、共振周波数に対しプラズマ発生状態に影響を及ぼさない範囲でインバータ14のスイッチング周波数を可変することにより、マッチング調整を行うことが可能であり、マッチング部の回路定数は固定(調整不要)であり、シンプルな構成とすることができる。
【0080】

また、プラズマ発生用電源装置10、30においては、固定マッチング部16とプラズマ発生装置24からなる直列共振回路のインピーダンスが最も低い状態、即ち、共振周波数付近のスイッチング周波数でインバータ14を駆動した場合に最大効率が得られる。
【0081】
そして、上記したように、固定マッチング部16とプラズマ発生装置24からなる共振回路の共振周波数が希望値になるように予め固定マッチング部の回路定数を設定し、共振周波数に対しプラズマ発生に影響を及ぼさない範囲でインバータ14のスイッチング周波数を可変することにより、マッチング調整を行うことが可能であり、マッチング部の回路定数は固定(調整不要)であり、シンプルな構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、CCP(Capacitively Coupled Plasma:容量結合型プラズマ)によるCVD装置やオゾン発生器、レーザー、プラズマディスプレイパネルあるいはランプなど放電を用いた励起装置などにおけるプラズマ発生用電源装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、従来のインバータ方式のプラズマ発生用電源装置のブロック構成説明図である。
【図2】図2は、図1に示すプラズマ発生用電源装置の可変マッチング部およびプラズマ発生装置の等価回路である。
【図3】図3は、従来のA級/B級/AB級/D級アンプで構成されるプラズマ発生用電源装置のブロック構成説明図である。
【図4】図4は、図3に示すプラズマ発生用電源装置の可変マッチング部およびプラズマ発生装置の等価回路である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態によるプラズマ発生用電源装置のブロック構成説明図である。
【図6】図6(a)は、図5に示す本発明の第1の実施の形態によるプラズマ発生用電源装置の可変マッチング部およびプラズマ発生装置の等価回路であり、また、図6(b)は、図6(a)のプラズマ発生装置をインピーダンスZpに置き換えた等価回路である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態によるプラズマ発生用電源装置のブロック構成説明図である。
【図8】図8は、本発明の第1の実施の形態によるプラズマ発生用電源装置における共振特性(マッチング特性)を表す周波数と出力電力との関係を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明の第1の実施の形態によるプラズマ発生用電源装置におけるインバータを、共振周波数より高い周波数のスイッチ周波数で駆動して出力調整をした場合の周波数と出力電力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0084】
10 プラズマ発生用電源装置
12 整流器
14 インバータ
16 固定マッチング部
18 検出部
20 周波数制御部
22 交流電源
24 プラズマ発生装置
30 プラズマ発生用電源装置
32 検出部
100 プラズマ発生用電源装置
102 可変整流器
104 電解コンデンサ
106 インバータ
108 可変マッチング部
110 検出部
112 整合制御部
114 周波数制御部
116 電圧制御部
120 整流器
130 プラズマ発生装置
200 プラズマ発生用電源装置
202 整流器
204 電解コンデンサ
206 発振回路
208 増幅器
210 可変マッチング部
212 方向性結合器
214 反射電力検出部
216 整合制御部
218 出力制御部
220 交流電源
230 プラズマ発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を整流器で直流電力に変換し、該直流電力をインバータで高周波交流電力に逆変換し、該高周波交流電力をマッチング部とプラズマ発生装置からなる負荷回路に供給するプラズマ発生用電源装置であって、
前記インバータを駆動するスイッチング周波数を可変することにより、前記プラズマ発生装置へ供給する高周波電流を一定にする
ことを特徴とするプラズマ発生用電源装置。
【請求項2】
交流電力を整流器で直流電力に変換し、該直流電力をインバータで高周波交流電力に逆変換し、該高周波交流電力をマッチング部とプラズマ発生装置からなる負荷回路に供給するプラズマ発生用電源装置であって、
前記インバータを駆動するスイッチング周波数を可変することにより、前記プラズマ発生装置へ供給する高周波電圧を一定にする
ことを特徴とするプラズマ発生用電源装置。
【請求項3】
交流電力を整流器で直流電力に変換し、該直流電力をインバータで高周波交流電力に逆変換し、該高周波交流電力をマッチング部とプラズマ発生装置からなる負荷回路に供給するプラズマ発生用電源装置であって、
前記インバータを駆動するスイッチング周波数を可変することにより、前記プラズマ発生装置へ供給する高周波電力を一定にする
ことを特徴とするプラズマ発生用電源装置。
【請求項4】
請求項1、2または3のいずれか1項に記載のプラズマ発生用電源装置において、
前記マッチング部内の素子の定数固定でスイッチング周波数が自動追尾する
ことを特徴とするプラズマ発生用電源装置。
【請求項5】
請求項1、2または3のいずれか1項に記載のプラズマ発生用電源装置において、
前記インバータを駆動するスイッチング周波数を可変することにより、前記プラズマ発生装置へ供給する高周波電力を調整して一定にする
ことを特徴とするプラズマ発生用電源装置。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマ発生用電源装置において、
共振特性における共振周波数より高い周波数領域でスイッチング周波数を可変する
ことを特徴とするプラズマ発生用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−114001(P2010−114001A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286860(P2008−286860)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】