説明

プリントコイル製造方法

【課題】焼成時間をそれ程長くしなくても、クラックの発生する恐れのないプリントコイル製造方法を提供すること。
【解決手段】基板11上にインクジェットプリンタにより、銀粒子と溶媒とを含む銀ペーストを、所定のコイル状に塗布するコイル塗布工程と、該塗布工程終了後に、該銀ペーストを加熱して焼成する焼成工程とを有するプリントコイル製造方法において、コイル塗布工程が、銀ペーストをコイル状に塗布する第1塗布工程S1と、第1塗布工程S1終了後、第1塗布工程S1で塗布した第1塗布層21の上に、銀ペーストを重ねて塗布する第2塗布工程S2とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にインクジェットプリンタにより、金属粒子と溶媒とを含む金属ペーストを、所定のコイル状に塗布するコイル塗布工程と、該塗布工程終了後に、該金属ペーストを加熱して焼成する焼成工程とを有するプリントコイル製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車においては、高出力のブラシレスモータが使用されており、今後もハイパワー化が予想されている。ハイブリッド自動車のブラシレスモータを制御するためには、モータの出力軸の回転角度を正確に把握する必要がある。ステータの各コイルへの通電切替えを制御するには、ロータの回転位置を正確に把握している必要があるからである。
このため、モータにはレゾルバが備えられ、正確に角度検出されることが望ましい。自動車の駆動機構に用いられるレゾルバには、耐環境性などに加えて駆動機構の回転数が高い為に高精度化が要求されることになる。そして、他の車載部品と同様にレゾルバにも小型化と共に低コスト化が要求されている。
【0003】
一方、基板上に配線を形成するときに、銀粒子と溶媒とを含む銀ペーストを、所定のコイル状に塗布し、その後、銀ペーストを加熱して焼成することにより、溶媒を蒸発させて銀粒子を結合させて、配線層を形成する方法が知られている。
例えば、特許文献1においては、多層の配線層を形成するために、絶縁を必要とする層間に、絶縁ペーストを塗布して絶縁体層を形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-093814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のプリントコイル製造方法には、次のような問題があった。
例えば、金属ペーストの塗布する塗布層の幅を300μmとし、厚みを約16μmとする。そして、焼成後の配線層の幅は300μmとし、厚みを約4μmとして形成する。この場合、焼成はオーブン方式で、230℃2時間行っているが、この焼成時間では、溶媒を十分に蒸発させることができないので、配線層の内部に溶媒が残留するため、銀粒子の結合が弱くなり、配線層にクラックが発生する恐れがあった。クラックが発生すると、断線の恐れがあり、問題であった。
金属ペーストは、携帯電話の配線等で使用されているが、それらの配線層は、1μm程度と薄いため、2時間程度の焼成時間で十分であるが、例えば、レゾルバの励磁コイルパターンを形成する場合には、携帯電話等と比較して、大きな電流を流す必要があるため、厚みを4μm程度必要とするのである。
この問題を回避するためには、焼成時間を長くするとよいのであるが、それでは、生産性が低下する問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決して、焼成時間を、それ程長くしなくても、クラックの発生する恐れのないプリントコイル製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプリントコイル製造方法は、次の構成を有している。
(1)基板上にインクジェットプリンタにより、金属粒子と溶媒とを含む金属ペーストを、所定のコイル状に塗布するコイル塗布工程と、該塗布工程終了後に、該金属ペーストを加熱して焼成する焼成工程とを有するプリントコイル製造方法において、コイル塗布工程が、金属ペーストをコイル状に塗布する第1塗布工程と、第1塗布工程終了後、第1塗布工程で塗布した金属ペーストの上に、金属ペーストを重ねて塗布する第2塗布工程とを有することを特徴とする。
(2)基板上にインクジェット装置により、金属粒子と溶媒とを有する金属ペーストを、コイル状に塗布するコイル塗布工程と、該塗布工程終了後に、該金属ペーストを加熱して焼成する焼成工程とを有するプリントコイル製造方法において、コイル塗布工程が、金属ペーストを単層または複数層塗布すること、コイル塗布工程と焼成工程とを、同じ箇所に重ねて、複数回行うこと、を特徴とする。
【0008】
(3)(1)または(2)に記載するプリントコイル製造方法において、前記基板の熱膨張率が、金属の熱膨張率とほぼ同じであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
次に、上記構成を有するプリントコイル製造方法の作用、及び効果について説明する。
(1)基板上にインクジェットプリンタにより、金属粒子と溶媒とを含む金属ペーストを、所定のコイル状に塗布するコイル塗布工程と、該塗布工程終了後に、該金属ペーストを加熱して焼成する焼成工程とを有するプリントコイル製造方法において、コイル塗布工程が、金属ペーストをコイル状に塗布する第1塗布工程と、第1塗布工程終了後、第1塗布工程で塗布した金属ペーストの上に、金属ペーストを重ねて塗布する第2塗布工程とを有することを特徴とする。
例えば、レゾルバの励磁コイルパターンを形成する場合には、第1塗布工程で厚み5μmの塗布層を塗布し、第2塗布工程で厚み5μmの塗布層を塗布し、第3塗布工程で5μmの塗布層を塗布する場合を考えると、第1塗布工程で、ある箇所を塗布した後、第2塗布工程で重ねて塗布するまでに、3分程度の時間があるため、第1塗布工程で塗布された塗布層から、溶媒が蒸発する。同様に、第2塗布工程で、ある箇所を塗布した後、第3塗布工程で重ねて塗布するまでに、3分程度の時間があるため、第2塗布工程で塗布された塗布層から、溶媒が蒸発する。
これにより、焼成工程の前に、溶媒を蒸発させることができるため、焼成後における塗布層に残留する溶媒を減少させることができ、配線層にクラックが発生する恐れを低減することができる。
また、基板自体をヒータにより、70度程度に加熱しておけば、さらに効率的に第1塗布工程でと付された塗布層から溶媒を蒸発させることができる。
【0010】
(2)基板上にインクジェット装置により、金属粒子と溶媒とを有する金属ペーストを、コイル状に塗布するコイル塗布工程と、該塗布工程終了後に、該金属ペーストを加熱して焼成する焼成工程とを有するプリントコイル製造方法において、コイル塗布工程が、金属ペーストを単層または複数層塗布すること、コイル塗布工程と焼成工程とを、同じ箇所に重ねて、複数回行うこと、を特徴とする。
例えば、第1塗布工程で厚み5μmの塗布層を塗布し、焼成工程を行い、第2塗布工程で厚み5μmの塗布層を塗布し、焼成工程を行い、第3塗布工程で5μmの塗布層を塗布し、焼成工程を行う場合を考えると、15μmを一度に塗布して焼成する場合と比較して、第1焼成工程、及び第2焼成工程の焼成時間を、各々30分間と短めにしても、塗布層が薄いため、溶剤を十分に蒸発させることができるため、焼成後における塗布層に残留する溶媒を減少させることができ、配線層にクラックが発生する恐れを低減することができる。
3回目の焼成時間を2時間とっているのは、銀粒子の結合を十分確保するためである。
【0011】
(3)(1)または(2)に記載するプリントコイル製造方法において、前記基板の熱膨張率が、金属の熱膨張率とほぼ同じであることを特徴とする。基板の材質であるPPSの熱膨張率は、2×10−5/℃であり、銀の熱膨張率は、1.97×10−5/℃なので、プリントコイルが高温化で使用された場合でも、ほぼ同じに膨張するため、膨張率の差により発生する応力が存在せず、配線層にクラックが発生する恐れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、レゾルバのSIN励磁コイルパターンを示し、(b)は、COS励磁コイルパターン示す図である。
【図2】コイル20の焼成前の塗布層の構造を示す断面図である。
【図3】インクジェットによる塗装順序を示す図である。
【図4】第1実施例の製造工程を示すフローチャートである。
【図5】第2実施例の製造工程を示すフローチャートである。
【図6】銀ペーストの着弾順序を示す図である。
【図7】インクジェット装置のノズルの構成を示す図である。
【図8】レゾルバの制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施例であるプリントコイル製造方法について、図面に基づいて詳細に説明する。図8に、プリントコイル製造方法により製造するレゾルバ10の位置検出制御の構成をブロック図で示す。
レゾルバ10は、回路部40及びセンサ部50よりなる。回路部40は、SIN波発生器41、高周波発生器42、COS波発生器43、第1変調器44、第2変調器45、検波器46、及び位相差検出器47よりなる。センサ部50は、励磁コイル20、検出コイル30、第1ロータリートランス35、第2ロータリートランス36よりなる。励磁コイル20は、SIN励磁コイル20A、COS励磁コイル20Bから構成されている。
7.2kHzの正弦波を発生させる正弦波発生器41は、図8に示すように第2変調器44に接続している。7.2kHzの余弦波を発生させる余弦波発生器43は、第2変調器45に接続されている。
【0014】
また、360kHzの正弦波を発生させる高周波発生器42が第1変調器44、及び第2変調器45に接続されている。また、SIN波発生器41及びCOS波発生器43は位相差検出器47に接続されている。検波器46は位相差検出器47に接続されている。
第1変調器44は、SIN励磁コイル20Aに接続され、第2変調器45は、COS励磁コイル20Bに接続されている。
検出コイル30は、第1ロータリートランス35に接続され、第2ロータリートランス36は検波器46に接続されている。
SIN励磁コイル20A、COS励磁コイル20B、及び第2ロータリートランス36は、レゾルバステータに備えられている。検出コイル30、及び第1ロータリートランス35は、レゾルバロータに備えられている。
【0015】
SIN波発生器41で発生したSIN波が、第1変調器44において高周波により例えばAM平衡変調(以下、AM変調と略す)され、SIN励磁コイル20Aに伝達される。同時にCOS波発生器43で発生したCOS波が、第2変調器45において高周波によりAM変調され、COS励磁コイル20Bに伝達される。
COS励磁コイル20Bに高周波でAM変調されたCOS波が流され、同時にSIN波励磁コイル20Aに高周波でAM変調された正弦波が流される。
【0016】
図1(a)に、第1実施形態の励磁コイルに用いるSIN励磁コイルのコイルパターン図を示す。図1(b)に、励磁コイルに用いるCOS励磁コイルのコイルパターン図を示す。両パターンは、基板上にインクジェットプリンタにより形成される。コイルパターンは、線幅が約300μm、厚みが4μmで形成されている。
SIN励磁コイル20Aは磁極数が4つで次数が2の励磁コイルである。よって、S極とN極がそれぞれ2つずつ用意されて交互に配置される。そして、COS励磁コイル20Bは基板11を挟んでSIN励磁コイル20Aの上に重ねて同じパターンにて形成される。SIN励磁コイル20AとCOS励磁コイル20Bは電気角で90°位相がずれている。そして、SIN励磁コイル20AにはSIN波の電流が与えられ、COS励磁コイル20BにはCOS波の電流が与えられる。
【0017】
次に、SIN励磁コイル20A、COS励磁コイル20Bを基板上に形成するプリントコイル製造方法について説明する。
図2に、コイル20の焼成前の塗布層の構造を断面図で示す。PPS製の基板11の表面に、ポリイミドを主成分とする絶縁層12が形成されている。絶縁層12の上には、第1塗布層21、第2塗布層22、第3塗布層23が下から順番に形成されている。塗布層24は、第1塗布層21、第2塗布層22、及び第3塗布層23より構成されている。第1塗布層21、第2塗布層22、及び第3塗布層23の線幅は、約300μmであり、厚みは、各層5μmで、3層合わせてH=15μmである。塗布層24は、後で焼成されることにより、溶媒が蒸発し、最終的には、4μmの厚みとなる。
次に、プリントコイル製造方法を説明する。図4に、プリントコイル製造方法をフローチャートで示す。図3に、基板11に対するインクジェットヘッドの動きの説明図を示す。
【0018】
インクジェットプリンタのヘッドのノズル構成を、図7に示す。ノズルは、大きく2つに分かれている。一方は、銀ペースト24、及び絶縁膜12を塗布するためのノズルNであり、他方は、絶縁膜12を塗布するためのノズルLである。すなわち、銀ペースト24を塗布するときには、ノズルNのみを使用し、絶縁層12を塗布するときには、ノズルN、及びノズルLの両方を使用している。
基板の材質であるPPSの熱膨張率は、2×10−5/℃であり、銀の熱膨張率は、1.97×10−5/℃なので、プリントコイルが高温化で使用された場合でも、ほぼ同じに膨張する。
また、絶縁層12の材質はポリイミドを主成分としている。ポリイミドの耐熱性は250℃と高いため、高温化で使用されても、十分な絶縁性を確保することができる。
【0019】
図7に示すように、ノズルNは、3段で構成されている。すなわち、ノズルN1とノズルN2とは、横方向、中心間距離で140μm離れて配置されると共に、縦方向でも、中心間距離で140μm離れて配置されている。また、ノズルN3は、ノズルN2に対して、横方向、縦方向共に、中心間距離で140μm離れて配置されている。そして、ノズルN4は、縦方向はノズルN1と同じ位置にあり、横方向のみノズルN3に対して140μm離れて配置されている。同様に、ノズルN5は、縦方向はノズルN2と同じであり、横方向のみノズルN4に対して140μm離れて配置されている。同様に、ノズルN6は、縦方向はノズルN3と同じであり、横方向のみノズルN5に対して140μm離れて配置されている。
ノズルNは、256個配置されており、横方向の全体の長さは、約36mmである。インクジェットプリンタの進行方向は、図7の縦方向である。
また、ノズルLは、ノズルNに対して、横方向で70μmずれて配置されており、縦方向は、140μm離れて配置されている。3段に配置されている構成は、ノズルNと同じである。
【0020】
ノズルNから吐出された銀ペーストは、基板11に衝突することにより、厚み約5〜6μm、直径35〜50μmの略円筒形状となって、基板11の絶縁層12の上に密着する。銀ペーストは、銀粒子を含む銀ナノメタルインクを、界面活性剤、分散剤を含む溶媒に溶融したものである。
図6に、基板11の絶縁層12の上に密着した状態の銀ペーストMを示す。これにより、ノズルNによる着弾順序を説明する。
ノズルN1の第1着弾点M1(1)であり、順次M1(1)〜M1(12)へとヘッドが移動し、その都度、銀ペーストが吐出される。
同時に、ノズルN2により、着弾点M2(1)〜M2(12)が形成される。横方向においては、着弾点M1(1)と着弾点M2(1)のピッチは、140μmであり、直径が35〜50μmである4つの着弾点M1(1)、M1(4)、M1(7)、M1(10)により丁度空間が埋まるようにしている。
12個の着弾が終了すると、ヘッドが縦方向に移動して、次の着弾点M1(1)を着弾させる。これを繰り返すことにより、第1塗布層21を形成することができる。
【0021】
一方、図3に示すように、基板11は、円形形状であり、インクジェットヘッドは、14Aの領域内を塗布するために、図中上から下へ15Aを通る。次に、戻り通路16Aを通って上に戻る。次に、14Bの領域内を塗布するために、上から下へ15Bを通る。次に、戻り通路16Bを通って、上に戻る。次に、14Cの領域内を塗布するために、上から下へ15Cを通る。領域14A、14B、14Cの幅は、30mmである。インクジェットのノズルの塗布可能幅は、36mmであり、ノズルの一部は塗布に使用していない。
これにより、基板11の絶縁層12の上に、第1塗布層21が形成される(S2)。第1塗布層21は、図1(a)のコイル20Aの配線の位置に塗布されている。第1塗布層21の厚みは、約5μmである。また、コイルの線幅は、約300μmである。15A、16A、15B、16B、15Cを通過して、第1塗布層21を形成するのに、本実施例のインクジェットヘッドでは、約3分間かかる。
【0022】
基板11の下面には、図示しないヒータが取り付けられており、基板11全体を70℃に加熱している。一方、第1塗布層21が形成された後、第2塗布層22が形成されるまでに、約3分間の時間がある。そのため、第1塗布層21は加熱され、かなりの量の溶媒が蒸発する。
次に、インクジェットヘッドは再び、15A、16A、15B、16B、15Cを通って、第1塗布層21の上に、第2塗布層22を形成する(S3)。第2塗布層22の厚みは、約5μmである。
第2塗布層22が形成された後、15A、16A、15B、16B、15Cを通過して、第3塗布層23が形成されるまでに、約3分間の時間がある。そのため、第2塗布層22は加熱され、かなりの量の溶媒が蒸発する。
次に、インクジェットヘッドは再度、15A、16A、15B、16B、15Cを通って、第2塗布層22の上に、第3塗布層23を形成する(S4)。第3塗布層23の厚みは、約5μmである。
次に、基板11全体をオーブンに入れて、230℃で、2時間焼成する(S5)。これにより、銀ペーストの塗布層24から、溶媒が蒸発することにより、銀粒子が密着して配線層となる。配線層の厚みは、約4μmである。
【0023】
以上、詳細に説明したように、本実施例のプリントコイル製造方法によれば、基板11上にインクジェットプリンタにより、銀粒子と溶媒とを含む銀ペーストを、所定のコイル状に塗布するコイル塗布工程と、該塗布工程終了後に、該銀ペーストを加熱して焼成する焼成工程とを有するプリントコイル製造方法において、コイル塗布工程が、銀ペーストをコイル状に塗布する第1塗布工程S1と、第1塗布工程S1終了後、第1塗布工程S1で塗布した第1塗布層21の上に、銀ペーストを重ねて塗布する第2塗布工程S2とを有することを特徴とするので、例えば、第1塗布工程S1で厚み5μmの第1塗布層21を塗布し、第2塗布工程S2で厚み5μmの第2塗布層22を塗布し、第3塗布工程S3で5μmの第3塗布層23を塗布する場合を考えると、第1塗布工程S1で、ある箇所を塗布した後、第2塗布工程S2で重ねて塗布するまでに、3分程度の時間があるため、第1塗布工程S1で塗布された第1塗布層21から、溶媒が蒸発する。
同様に、第2塗布工程S2で、ある箇所を塗布した後、第3塗布工程S3で重ねて塗布するまでに、3分程度の時間があるため、第2塗布工程S2で塗布された第2塗布層22から、溶媒が蒸発する。
これにより、焼成工程S5の前に、溶媒を蒸発させることができるため、焼成後における塗布層に残留する溶媒を減少させることができ、配線層にクラックが発生する恐れを低減することができる。
【0024】
また、基板11の熱膨張率が、金属の熱膨張率とほぼ同じであることを特徴とする。基板の材質であるPPSの熱膨張率は、2×10−5/℃であり、銀の熱膨張率は、1.97×10−5/℃なので、プリントコイルが高温化で使用された場合でも、ほぼ同じに膨張するため、膨張率の差により発生する応力が存在せず、配線層にクラックが発生する恐れを低減することができる。
【0025】
次に、第2実施例について、説明する。第2実施例は、基本的には、第1実施例と同じ内容なので、相違する点のみ詳細に説明し、同じ部分については、説明を割愛する。
第2実施例の製造工程を、図5にフローチャートで示す。
絶縁層12を塗布(S11)した後、第1塗布層21を形成する工程(S12)は、第1実施例と同じである。第1塗布層21を形成した後、オーブンにより230℃、30分間の焼成工程(S13)を行っている。
次に、焼成工程(S13)終了後、第2塗布工程(S14)を行い、第2塗布層22を形成している。そして、第2塗布層22を形成した後、オーブンにより230℃、30分間の焼成工程(S15)を行っている。
次に、焼成工程(S15)終了後、第3塗布工程(S16)を行い、第3塗布層23を形成している。そして、第3塗布層23を形成した後、オーブンにより230℃、2時間の焼成工程(S17)を行っている。
【0026】
以上、詳細に説明したように、第2実施例によれば、基板11上にインクジェット装置により、銀粒子と溶媒とを有する銀ペーストを、コイル状に塗布するコイル塗布工程と、該塗布工程終了後に、該銀ペーストを加熱して焼成する焼成工程とを有するプリントコイル製造方法において、コイル塗布工程が、銀ペーストを単層塗布すること、コイル塗布工程と焼成工程とを、同じ箇所に重ねて、複数回行うこと、を特徴とするので、例えば、第1塗布工程で厚み5μmの塗布層を塗布し、焼成工程を行い、第2塗布工程で厚み5μmの塗布層を塗布し、焼成工程を行い、第3塗布工程で5μmの塗布層を塗布し、焼成工程を行う場合を考えると、15μmを一度に塗布して焼成する場合と比較して、第1焼成工程、及び第2焼成工程の焼成時間を、各々30分間と短めにしても、塗布層が薄いため、溶剤を十分に蒸発させることができるため、焼成後における塗布層に残留する溶媒を減少させることができ、配線層にクラックが発生する恐れを低減することができる。
3回目の焼成時間を2時間とっているのは、銀粒子の結合を十分確保するためである。
【0027】
以上、本発明に係るについて実施例を示したが、本発明はこの実施例に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施例では、銀ペーストについて説明したが、金ペースト、銅ペースト、錫ペースト等を使用しても同様である。
また、例えば、第2実施例において、第1焼成時間S1、及び第2焼成時間S2として、各々30分とっているが、15分程度に短くしても良い。
【符号の説明】
【0028】
11 基板
12 絶縁層
20A SIN励磁コイル
20B COS励磁コイル
21 第1塗布層
22 第2塗布層
23 第3塗布層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にインクジェットプリンタにより、金属粒子と溶媒とを含む金属ペーストを、所定のコイル状に塗布するコイル塗布工程と、該塗布工程終了後に、該金属ペーストを加熱して焼成する焼成工程とを有するプリントコイル製造方法において、
前記コイル塗布工程が、前記金属ペーストを前記コイル状に塗布する第1塗布工程と、前記第1塗布工程終了後、前記第1塗布工程で塗布した前記金属ペーストの上に、前記金属ペーストを重ねて塗布する第2塗布工程とを有することを特徴とするプリントコイル製造方法。
【請求項2】
基板上にインクジェット装置により、金属粒子と溶媒とを有する金属ペーストを、コイル状に塗布するコイル塗布工程と、該塗布工程終了後に、該金属ペーストを加熱して焼成する焼成工程とを有するプリントコイル製造方法において、
前記コイル塗布工程が、前記金属ペーストを単層または複数層塗布すること、
前記コイル塗布工程と前記焼成工程とを、同じ箇所に重ねて、複数回行うこと、
を特徴とするプリントコイル製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載するプリントコイル製造方法において、
前記基板の熱膨張率が、金属の熱膨張率とほぼ同じであることを特徴とするプリントコイル製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−40448(P2011−40448A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184097(P2009−184097)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】