説明

プレキュアトレッドの製造方法

【課題】生産性を犠牲にすることなく、プレキュアトレッドのタイヤ踏面垂直方向でのヒステリシスロス(tanδ)の差が小さく、プレキュアトレッド全域で均一に加硫されたプレキュアトレッドの製造方法を提供する。
【解決手段】未加硫トレッドを加硫プレス装置により加硫する際に、前記加硫プレス装置と前記未加硫トレッドの間に非加硫性シートを配置して加硫することを特徴とするプレキュアトレッドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキュアトレッド(予め加硫済みのトレッド)の製造方法に関し、特にトレッドゴム全域での加硫度が均一化されたプレキュアトレッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤを使用する自動車などの燃費を考えるとタイヤの転がり抵抗が低いことが望ましく、転がり抵抗を下げる為には、タイヤトレッドゴムのヒステリシスロス(tanδ)が低いことが望ましい。一般にトレッドゴムのヒステリシスロスは内側で低く、表面に近づくにしたがって高くなる傾向にあり、こうした傾向が新品時(使用初期)の転がり抵抗が増加する要因のひとつとなっている。
既知の技術として、加硫温度を低温とする技術が知られているが、厚さ方向での差は生じてしまうことや生産効率への影響が大きいなどの問題がある。
低発熱効果を有するプレキュアトレッド技術として、例えば、特許文献1は、2層構造トレッドのベースゴムを低発熱かつ高伸びとする技術が、特許文献2は、プレキュアトレッドの接着用クッションゴムとしてプレキュアトレッドを構成するゴムよりも発熱性が低いゴムを用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−51481号公報
【特許文献2】特開平10−129216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術は、確かに低発熱効果を有するプレキュアトレッドが得られるが、プレキュアトレッド自体の表面と内部での加硫度が均一か否かに関する記載や示唆はない。また、低発熱性のベースゴムによる2層構造を必要とするため、キャップゴムとの張り合わせ工程を要する、ゴム配合やプレキュア工程が制限されるなど生産面での問題があった。
また、特許文献2に記載された従来技術では、プレキュアトレッドを構成するゴムよりも低発熱な接着用クッションゴムとしたのみでは、タイヤの走行温度低減への寄与が少なく、さらに、プレキュアトレッド自体の表面と内部の加硫度の均一性に関する記載や示唆はない。また、クッションゴム自身、低発熱とすることでゴム配合が制限されるという問題があった。しかも、近年の省エネルギーや燃費向上の社会的要求から更なる低発熱性の向上が望まれるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、生産性を犠牲にすることなく、プレキュアトレッドのタイヤ踏面垂直方向でのヒステリシスロス(tanδ)の差が小さく、プレキュアトレッド全域で均一に加硫されたプレキュアトレッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、加硫プレス装置と未加硫トレッドの間に非加硫性シートを配置して加硫することで、タイヤトレッド表面の過加硫を防ぎ、タイヤトレッド内部まで均一に加硫することが可能となるとの知見を得、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明のプレキュアトレッドの製造方法は、未加硫トレッドを加硫プレス装置により加硫する際に、前記加硫プレス装置と前記未加硫トレッドの間に非加硫性シートを配置して加硫することを特徴とする。
【0008】
また、前記非加硫性シートは、厚さが0.05〜3.5mmであり、熱伝導率が0.02〜30W・m-1・K-1であることがより好ましく、さらに、前記非加硫性シートは、融点が130℃以上であり、かつ、少なくとも最表面は架橋反応を起こさない物質で構成されていることがより一層好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生産性を犠牲にすることなく、プレキュアトレッドのタイヤ踏面垂直方向でのヒステリシスロス(tanδ)の差が小さく、プレキュアトレッド全域で均一に加硫されたプレキュアトレッドの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のプレキュアトレッドの製造方法により作製されたプレキュアトレッドの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(プレキュアトレッド)
本発明の製造方法によって作製されたプレキュアトレッドは、プレキュア方式による更生タイヤのタイヤトレッドに好適に用いられる。ここで、プレキュア方式とは、トレッドパターンを有する加硫済みの貼り替え用のプレキュアトレッドを台タイヤに貼り付け、加硫缶を用いて加硫接着する更生タイヤの製造方法である。
【0012】
以下に、図1に示した断面図を参照してプレキュアトレッド1について説明する。タイヤのカーカス部分(タイヤ骨格部分)の上にある、パターンと呼ばれる溝模様のあるタイヤ部分をトレッド部と言う。トレッド部に用いるタイヤ部材をタイヤトレッドといい、プレキュアトレッド1が好適に用いられる。プレキュアトレッド1を外表面2a、中央2b、底面2cに分けてみると、トレッド外表面2aは、地面に直接接触する面(踏面)であり、そのヒステリシスロス(tanδ)が転がり抵抗や自動車の燃費に一番大きく効いている部分である。さらにそれだけでなく、外表面2aと中央2bのヒステリシスロス(tanδ)の差が大きいと、特に、タイヤの使用初期(新品時)に転がり抵抗や自動車の燃費を悪化させるおそれが生ずる部分でもある。このように、トレッド外表面2aは、タイヤトレッドにおける大事な部分である。外表面2aは、中央2b、底面2cとトレッドとして一体化し、タイヤのカーカス部分(タイヤ骨格部分)の上に位置している。
【0013】
ここで、ヒステリシスロス(tanδ)のプレキュアトレッド1の深さごとの均一性を評価する位置は、外表面2aから踏面垂直方向3に深さ1mm以内の部分(a)4とトレッド部中央2bから踏面垂直方向3に2mm以内の部分(b)5を用いるのが好ましい。計測位置を決めやすく、また全体の均一性(ばらつき)を代表する位置であるため、的確に均一性を評価できるからである。
【0014】
(プレキュアトレッドに用いるゴム組成物)
本発明のプレキュアトレッドの製造方法は、加硫時の非加硫性シートによる熱伝導コントロールに特徴があり、ゴム組成物に関する技術(ゴム成分や充填材などの原材料やその配合など)には、特に限定されない。
例えば、タイヤトレッドに用いるゴム組成物における硫黄の配合量を増量することや、充填剤の配合量を減量するとヒステリシスロス(tanδ)を低減できる技術として挙げられるが、特に限定されない。
【0015】
また、タイヤトレッドに適用するゴム組成物のゴム成分としては、特に限定されないが、天然ゴム(NR)の他、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等の合成ゴムが挙げられる。これらゴム成分は一種単独でも、ブレンドでもよい。なお、ブレンドの場合、天然ゴム(NR)とポリブタジエンゴム(BR)とをブレンドして配合するのが好ましく、そのブレンドの比率NR/BRが80/20〜60/40の範囲が好ましい。
【0016】
ゴム組成物の充填剤としては、特に限定されないが、カーボンブラック及びシリカが挙げられ、ここでカーボンブラックとしてはSAF級、ISAF級のカーボンブラックが好ましい。また、充填剤としてシリカを用いる場合、その補強性を更に向上させる観点から、シランカップリング剤を配合時に添加することが好ましい。
なお、ゴム組成物には、上記ゴム成分、充填剤の他に、ゴム工業界で通常のタイヤトレッドに用いられる配合剤、すなわち、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、プロセスオイルなどの軟化剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0017】
(プレキュアトレッドの製造方法)
本発明のプレキュアトレッドの製造方法は、未加硫トレッドを加硫プレス装置により加硫する際に、前記加硫プレス装置と前記未加硫トレッドの間に非加硫性シートを配置して加硫することを特徴とする。
【0018】
(未加硫トレッド)
前記未加硫トレッドとしては、特に限定されないが、上記ゴム組成物を
混練成型することで調製できる。
【0019】
(加硫プレス装置)
前記加硫プレス装置としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0020】
(非加硫性シート)
本発明のプレキュアトレッドの製造方法は、未加硫トレッドを加硫プレス装置により加硫する際に、上記加硫プレス装置と上記未加硫トレッドの間に非加硫性シートを配置して加硫する。このように上記加硫プレス装置と上記未加硫トレッドの間に非加硫性シートを配置して加硫することで、タイヤトレッド表面の過加硫を防ぎ、タイヤトレッド内部まで均一に加硫することが可能となる。これは、非加硫性シートがプレキュアトレッドを加硫する際の熱伝導を緩衝する構造を構成するためである。
シートの材質としては、PETフィルム、紙、不織布、などが挙げられる。
シート厚みtは、0.05〜3.5mmであることが好ましい。tが3.5mmを超えるとモールドへ追従性が悪くなり、熱伝導にバラつきが生じる。tが0.05mm未満だと耐久性が劣り、繰り返しの使用に耐えることができないからである。
シートの熱伝導率λは、0.02〜30W・m-1・K-1であることが好ましい。λが30W・m-1・K-1を超えると熱が急速に伝達をして、本願の効果を発揮できなく、λが0.02W・m-1・K-1未満だと加硫時間が長時間となり、生産性に劣るからである。
また、シートの融点が130℃以上であり、かつ、少なくとも最表面は架橋反応を起こさない物質で構成されていることが好ましい。融点が130℃未満だとシートが融解し、シートとゴム表面またはモールドが融着する可能性があり、最表面が架橋反応を起こさない物質で構成されていないとシートとゴムが共加硫するおそれがあるからである。
【0021】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態に多様な変更、改良を加え得ることは当業者にとって明らかであり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0022】
1 プレキュアトレッド
2a トレッド外表面
2b トレッド中央
2c トレッド底面
3 踏面垂直方向
4 部分(a)
5 部分(b)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫トレッドを加硫プレス装置により加硫する際に、前記加硫プレス装置と前記未加硫トレッドの間に非加硫性シートを配置して加硫することを特徴とするプレキュアトレッドの製造方法。
【請求項2】
前記非加硫性シートは、厚さが0.05〜3.5mmであり、熱伝導率が0.02〜30W・m-1・K-1であることを特徴とする請求項1に記載のプレキュアトレッドの製造方法。
【請求項3】
さらに、前記非加硫性シートは、融点が130℃以上であり、かつ、少なくとも最表面は架橋反応を起こさない物質で構成されていることを特徴とする請求項2に記載のプレキュアトレッドの製造方法。




【図1】
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【公開番号】特開2012−176539(P2012−176539A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40562(P2011−40562)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】