説明

プレーナ型アクチュエータ

【課題】比較的簡単な構成で、周囲温度が変化した場合であっても可動部の揺動角度を精度よく検出できるプレーナ型アクチュエータを提供する。
【解決手段】枠状の固定部の内側にトーションバーで揺動可能に支持された可動部を有し、この可動部を揺動駆動するプレーナ型アクチュエータであって、可動部の揺動動作による応力の影響を受けて抵抗値が変化するピエゾ抵抗素子R1,R2と、可動部の揺動動作による応力の影響を受けても抵抗値が変化せず抵抗温度係数の小さい抵抗素子13,14とで構成したブリッジ回路21を備え、ブリッジ回路21は、一方の対辺21a,21cに抵抗素子13,14を配置し、他方の対辺21b,21dにピエゾ抵抗素子R1,R2を配置し、ブリッジ回路21の出力値Voutに基づいて可動部の揺動角度を検出する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレーナ型アクチュエータに関し、特に、トーションバーによって揺動可能に支持された可動部の揺動角度を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
可動部がトーションバーによって揺動可能に支持された構成のプレーナ型アクチュエータとして、例えば特許文献1に記載の電磁駆動式のプレーナ型アクチュエータがある。このアクチュエータは、枠状の固定部、可動部、及び、固定部に可動部を揺動可能に軸支するトーションバーが一体に形成され、可動部に駆動コイルが設けられると共に該駆動コイルに静磁界を作用させる静磁界発生手段(例えば永久磁石)を備える。そして、駆動コイルを流れる電流と、静磁界発生手段による静磁界との相互作用により発生する駆動力(ローレンツ力)を利用して可動部をトーションバーの軸回りに揺動させる。
【0003】
ここで、可動部にミラーを設けるようにすれば、可動部を揺動させることでミラーに照射した光ビームの反射光を偏向・走査することができるので、光スキャナやレーザプロジェクタ等における光偏向走査用のアクチュエータとして用いることができる。
【0004】
このような光偏向走査用のアクチュエータにおいては、装置の安定した動作等を確保するため、可動部の揺動角度(ミラーの傾斜角度)を精度よく制御する必要がある。このため、例えば特許文献2に記載のアクチュエータ(ガルバノミラー)では、トーションバー上に4つのピエゾ抵抗素子(歪みゲージ)を形成し、これらピエゾ抵抗素子でブリッジ回路を構成し、可動部の揺動動作に基づくピエゾ抵抗素子の抵抗値変化によって変化するブリッジ回路の出力値から可動部(ミラー部)の揺動角度を測定しつつ、可動部の揺動角度を制御するようにしている。
【0005】
ところで、一般に、ピエゾ抵抗素子はその周囲温度(アクチュエータ自体の温度も含む)の変化に伴って抵抗値が変化する特性を有している。そのため、周囲温度が変化した場合に、可動部の揺動動作に伴って生じるトーションバーの歪みに起因するピエゾ抵抗素子の抵抗値変化だけを測定することは難しく、可動部の揺動角度を精度よく検出することができなかった。このため、従来では、例えば特許文献3に記載の温度補償回路等を設け、この温度補償回路を用いて周囲温度に応じてブリッジ回路の出力値を補正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2722314号公報
【特許文献2】特開平5−119280号公報
【特許文献3】特開平11−237254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、温度補償回路を設ける構成では、構成要素の増加や回路の複雑化を招くこととなり、コスト高となってしまうため好ましくない。
なお、このような課題は、光偏向走査用のアクチュエータとして用いる場合に限られるものではなく、トーションバーによって可動部を揺動可能に支持する構成を有し、この可動部の揺動角度を検出する必要のあるアクチュエータに共通するものである。
【0008】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、比較的簡単な構成で、周囲温度が変化した場合であっても可動部の揺動角度を精度よく検出できるプレーナ型アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本発明のプレーナ型アクチュエータは、枠状の固定部の内側にトーションバーによって揺動可能に支持された可動部を有し、該可動部が揺動駆動されるプレーナ型アクチュエータであって、前記可動部の揺動動作による応力の影響を受けて抵抗値が変化する2つのピエゾ抵抗素子と、前記可動部の揺動動作による応力の影響を受けても抵抗値が変化せず且つ前記ピエゾ抵抗素子より抵抗温度係数の小さい2つの抵抗素子とで構成したブリッジ回路を備え、前記ブリッジ回路は、前記2つのピエゾ抵抗素子と前記抵抗温度係数の小さい2つの抵抗素子をそれぞれ対辺同士に配置して構成し、前記ブリッジ回路の出力値に基づいて前記可動部の揺動角度を検出する構成としたことを特徴とする。
【0010】
かかる構成では、抵抗温度係数の小さい抵抗素子の抵抗値をピエゾ抵抗素子の抵抗値に対して十分大きな値に設定することで、温度変化に起因するブリッジ回路の出力値の変動量を軽減できるようになる。
【0011】
前記2つのピエゾ抵抗素子は、具体的には請求項2のように、前記可動部の揺動動作により同じ方向の応力の影響を受ける位置に配置する。この場合、請求項3のように、前記2つのピエゾ抵抗素子は、前記固定部と前記トーションバーとの接続部近傍に配置するとよい。
【0012】
請求項4のように、前記抵抗温度係数の小さい2つの抵抗素子は、金属皮膜抵抗とするとよい。
【0013】
請求項5のように、前記抵抗温度係数の小さい抵抗素子の抵抗値は、前記ブリッジ回路の温度変化に基づく出力値の変動量が温度変化前の出力値に対して1パーセント以内になるように前記ピエゾ抵抗素子の抵抗値より大きな値に設定するとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のプレーナ型アクチュエータによれば、抵抗温度係数の小さい抵抗素子の抵抗値をピエゾ抵抗素子の抵抗値に対して十分に大きく設定するだけで、ブリッジ回路の出力値への温度変化に起因する誤差を軽減でき、可動部の揺動角度の検出精度を向上することができる。従って、ブリッジ回路の出力値を温度補正するための温度補償回路等を設ける必要がなく、構成要素の削減や回路の簡素化を計ることができ、アクチュエータのコストを低減することができる
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの一実施形態の概略構成を示す図。
【図2】第1及び第2ピエゾ抵抗素子と抵抗温度係数の小さい抵抗素子で構成されるブリッジ回路の一例を示す図。
【図3】ブリッジ回路の出力電圧Voutを示す図。
【図4】本発明と従来とを比較するための従来のブリッジ回路を構成する4つのピエゾ抵抗素子の配置状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態の概略構成を示し、電磁駆動式のプレーナ型アクチュエータに適用した例を示している。本実施形態による電磁駆動式のプレーナ型アクチュエータ(以下単に「アクチュエータ」という)は、半導体製造技術を利用して製造される。
【0017】
図1に示すように、アクチュエータ1は、枠状の固定部3と、固定部3の内側に配置され一対のトーションバー5,5によって揺動可能に支持された可動部7と、を備える。
可動部7は、固定部3に対して所定の空隙を有して設けられている。一対のトーションバー5,5は、可動部7を挟むように形成されており、各トーションバー5,5は、対向する固定部3の内側面の略中央部分と可動部7の側面の略中央部分とを連結している。尚、固定部3、トーションバー5,5及び可動部7は、半導体基板から一体的に形成されている。
【0018】
可動部7の表面には、駆動コイル7aが形成されている。駆動コイル7aは、可動部7の周縁部近傍に形成され、その端部は、固定部3に形成された電極端子9,9にそれぞれ接続されている。電極端子9,9は、外部の駆動電流供給回路(図示省略)に接続されており、外部の駆動電流供給回路から電極端子9,9を介して所定の電流を駆動コイル7aに供給できるようになっている。
【0019】
また、トーションバー5,5の軸方向と直交する方向(図の上下方向)において、固定部3の両外側には、それぞれ磁界発生手段として永久磁石11,11が設けられている。永久磁石11,11は、可動部7(及び固定部3)を挟んで互いに反対磁極が対向するように配置されて静磁界を形成する。本実施形態では、磁界発生手段として永久磁石11,11を用いているが、永久磁石に代えて電磁石を用いてもよい。
【0020】
更に、アクチュエータ1には、可動部7の揺動動作、即ち、トーションバー5,5の捩れによって生じる歪み(応力)を検出するための第1及び第2ピエゾ抵抗素子R1,R2が形成されている。
【0021】
第1及び第2ピエゾ抵抗素子R1,R2は、可動部7の揺動動作により同じ方向(圧縮方向又は引張方向)の応力の影響を受ける位置に形成されている。ここで、可動部7の揺動動作による同じ方向の応力の影響を受ける位置とは、例えば可動部7を揺動させたときに圧縮方向又は引張方向の歪みが同時に発生する固定部3表面の所定領域又はトーションバー5,5表面のことである。
【0022】
本実施形態においては、図1において可動部7の揺動中心(即ち、トーションバー5,5の軸線)をX軸とし、X軸に直交し可動部7の重心を通る線をY軸としたときに、第1及び第2ピエゾ抵抗素子R1,R2は、固定部3とトーションバー5,5の接続部近傍、例えば各トーションバー5,5の固定部3側の各根元近傍に、X軸に対して同じ側(図1では上側)で、且つ、Y軸に略対称な位置に形成されている。
【0023】
尚、第1及び第2ピエゾ抵抗素子R1,R2の配置は、上記したものに限定されるものではない。図1と反対側(図1のX軸の下側)であってもよい。また、例えば、可動部7の揺動動作(トーションバー5,5の捩れ)による応力の影響を受ける固定部3とトーションバー5,5の接続部近傍の固定部3側に形成してもよい。更には、第1及び第2ピエゾ抵抗素子R1,R2が、トーションバー5,5に生じるせん断歪みを検出するようにしてもよい。
【0024】
本実施形態では、第1及び第2ピエゾ抵抗素子R1,R2と後述するブリッジ回路を構成するための2つの抵抗素子13,14を設けている。これら抵抗素子13,14は、応力が作用しても抵抗値が変化せず、且つ、周囲温度(アクチュエータ自体の温度も含む)が変化しても抵抗値が殆ど変化しないよう、ピエゾ抵抗素子より抵抗温度係数の小さいものであり、例えば市販の金属皮膜抵抗素子等である。
【0025】
2つの抵抗素子13,14は、例えば可動部7の揺動動作による応力の影響を受けない位置に配置している。ここで、可動部7の揺動動作による応力の影響を受けない位置とは、例えば可動部7を揺動させたときに歪みがほとんど発生しない(歪みが略零となる)領域のことである。本実施形態では、抵抗素子13,14を、トーションバー5,5から離れた固定部3の所定位置に設けている。この場合、抵抗素子13,14をチップ抵抗とすることが好ましい。尚、抵抗素子13,14の取付位置は、固定部3に限らず、外部の回路基板上でもよく、この場合は、固定部3に電極端子を形成してワイヤボンディングを用いて第1及び第2ピエゾ抵抗素子R1,R2と電気的に接続するようにすればよい。
【0026】
図2は、第1及び第2ピエゾ抵抗素子R1,R2と抵抗素子13,14によって構成したブリッジ回路を示している。図2に示すように、ブリッジ回路21は、左上側から反時計回りに、抵抗素子13が配置された第1の辺21aと、第1ピエゾ抵抗素子R1が配置された第2の辺21bと、抵抗素子14が配置された第3の辺21cと、第2ピエゾ抵抗素子R2が配置された第4の辺21dと、を有している。即ち、ブリッジ回路21は、2つのピエゾ抵抗素子R1,R2と抵抗温度係数の小さい2つの抵抗素子13,14をそれぞれ対辺同士に配置して構成してある。
【0027】
ブリッジ回路21には、外部の電圧供給源(図示省略)から所定の入力電圧Vinが供給され、第1の辺21aと第2の辺21bの接続点と第3の辺21cと第4の辺21dの接続点との電位差を出力電圧Voutとする。そして、アクチュエータ1は、ブリッジ回路21の出力電圧Voutの値に基づいて可動部7の揺動角度を検出する角度検出回路(図示せず)を備える。
【0028】
次に、本実施形態によるアクチュエータ1の作用を説明する。
外部の駆動電流供給回路から駆動コイル7aに電流が供給されると磁界が発生し、発生した磁界と永久磁石11,11によって形成された静磁界との相互作用によりローレンツ力が発生する。このローレンツ力によって可動部7をトーションバー5,5の軸回りに回転させる回転力が生じ、可動部7は、この回転力とトーションバー5,5の捩り抵抗力とがつり合う位置(角度)まで回動する。
【0029】
駆動コイル7aに交流電流が供給されることによって、可動部7はトーションバー5,5を中心に揺動する。駆動コイル7aに供給する電流量を調整することで、可動部7の揺動角度(振れ角)を制御することができる。尚、駆動コイル7aに直流電流が供給されると、供給された電流量に応じた回動位置で可動部7が停止することになる。
【0030】
また、第1及び第2ピエゾ抵抗素子R1,R2と抵抗温度係数の小さい2つの抵抗素子13,14によって構成されるブリッジ回路21は、可動部7の揺動角度に応じてその出力電圧Voutが変化するので、この出力電圧Voutをモニタすることで、可動部7の揺動角度を検出することができる。
【0031】
ここで、ブリッジ回路21の出力電圧Voutについて説明する。
上述した構成を有するアクチュエータ1において、可動部7が一方に回動すると、第1,2ピエゾ抵抗素子R1,R2は引張方向(又は圧縮方向)の応力を受け、可動部7が他方に回動すると、第1,2ピエゾ抵抗素子R1,R2は圧縮方向(又は引張方向)の応力を受けることになる。ピエゾ抵抗素子は、例えばP型拡散抵抗によって形成されていると、引張方向の応力を受けると抵抗値が増加し、圧縮方向の応力を受けると抵抗値が減少する。このため、例えば可動部7をトーションバー5,5の軸線を中心にして所定角度で交互に回動させる(即ち、揺動させる)と、上記ブリッジ回路21からは可動部7の揺動角度(振れ角)に応じた電圧が出力(例えば、sin波で出力)され、ブリッジ回路21の出力電圧Voutは図3に示すようになる。尚、抵抗素子13,14の抵抗値は、可動部7の揺動動作に関係なく変化しない。
【0032】
ここで、ピエゾ抵抗素子R1,R2の抵抗値をr1,r2とし、抵抗素子13,14の抵抗値をr13,r14とし、理想的にr1=r2=r、r13=r14=Rであるとする。可動部7の揺動動作によりピエゾ抵抗素子R1,R2が例えばΔr変化したとすると、r13=r14=Rは変化しないので、この場合の出力電圧をVout1とすると、Vout1は下記の(1)式のようになる。
Vout1=[{R−(r+Δr)}/{R+(r+Δr)}]Vin ・・・(1)
【0033】
また、周囲温度の変化によって各ピエゾ抵抗素子R1,R2の抵抗値がΔrt変化したと仮定すると、抵抗素子13,14の抵抗値Rが変化しないものとすれば、温度変化後の出力電圧をVout2としたとき、Vout2は下記の(2)式のようになる。
Vout2
=[{R−(r+Δr+Δrt)}/{R+(r+Δr+Δrt)}]Vin・・・(2)
【0034】
ここで、本実施形態のブリッジ回路21による温度変化の前後における出力電圧の変動分(Vout1−Vout2)をAとすると、Aは下記の(3)式のように表される。
A=[2R・Δrt/{(R+r+Δr+Δrt)(R+r+Δr)}]Vin ・・・(3)
【0035】
上記(3)式から、ブリッジ回路21の出力電圧Voutの温度変化の前後における変動量は、抵抗素子13,14の抵抗値Rを大きくすればする程小さくなることが分かる。このため、抵抗素子13,14の抵抗値r13,r14(=R)をピエゾ抵抗素子R1,R2の抵抗値をr1,r2に対して十分大きく設定すれば、ブリッジ回路21の出力電圧Voutに対するピエゾ抵抗素子R1,R2の温度変化に起因する抵抗値変化の影響を軽減できる。
【0036】
ここで、ブリッジ回路の出力電圧Voutに対する周囲温度変化の影響について、本実施形態の場合と従来の場合の比較について述べる。
4つのピエゾ抵抗素子で構成したブリッジ回路、即ち、本実施形態の抵抗素子13,14をピエゾ抵抗素子R3,R4で置き換えた従来のアクチュエータのブリッジ回路の場合、ピエゾ抵抗素子R3,R4は、図4のように配置する。
【0037】
ピエゾ抵抗素子R3,R4の抵抗値をr3,r4とし、理想的にr1=r2=r3=r4=rとする。この場合、可動部7の揺動動作によりピエゾ抵抗素子R1,R2が例えば−Δr変化したとすると、ピエゾ抵抗素子R3,R4は+Δr変化するので、ブリッジ回路の出力電圧をVout3とすると、Vout3は下記の(4)式のようになる。
Vout3=(Δr/r)Vin ・・・(4)
【0038】
また、温度変化によって各ピエゾ抵抗素子R1〜R4の抵抗値がΔrt変化したと仮定すると、温度変化後の出力電圧をVout4としたとき、Vout4は下記の(5)式のようになる。
Vout4={Δr/(r+Δrt)}Vin ・・・(5)
【0039】
ここで、具体的な一例として、例えば、アクチュエータは0〜45℃の温度範囲で、可動部7を±12°の揺動角度で揺動し、Vin=1V(ボルト)、r=1.65kΩ、Δr=116Ω、Δrt=225Ωとしたときの、温度変化前の出力電圧Voutに対する温度変化後の出力電圧Voutの変動量について、本実施形態と従来とを比較してみる。
従来のブリッジ回路の場合、(4)、(5)式より、温度変化前の出力電圧Vout3、温度変化後の出力電圧Vout4は、それぞれ、Vout3=0.070、Vout4=0.062となる。従って、従来のブリッジ回路は、温度変化前の出力電圧Vout3に対する温度変化後の出力電圧Vout4の変動量B(B={(Vout4−Vout3)/Vout3}×100とする)は、温度変化前の出力電圧Vout3の約12%である。
【0040】
これに対して、本実施形態のブリッジ回路21では、例えば、抵抗温度係数の小さい2つの抵抗素子13,14の抵抗値RをR=10kΩとした場合、(1)、(2)式より、Vout1、Vout2は、それぞれ、Vout1=0.700、Vout2=0.668となり、温度変化後の出力電圧Vout2の変動量B(B={(Vout2−Vout1)/Vout1}×100)は、温度変化前の出力電圧Vout1の約4.6%である。
【0041】
また、R=100kΩとした場合、(1)、(2)式より、Vout1、Vout2は、それぞれ、Vout1=0.965、Vout2=0.961となり、前記変動量Bは、温度変化前の出力電圧Vout1の約0.45%である。
【0042】
これら具体的な例でも、抵抗素子13,14の抵抗値の大きさを大きく設定すればする程、温度変化に起因するブリッジ回路21の出力電圧Voutの誤差を小さくできることが分かる。
【0043】
例えば、本発明のアクチュエータを光走査デバイスに利用する光走査システムにおいて、このアクチュエータの揺動振幅の誤差がシステム上1%まで許容できるとした場合、抵抗素子13,14の抵抗値RがR=47kΩのとき、Vout1=0.928、Vout2=0.919となり、温度変化後の出力電圧Vout2の変動量Bが温度変化前の出力電圧Vout1の約0.95%となる。従って、上述のブリッジ回路の条件において、抵抗素子13,14の抵抗値RをR=47kΩ以上に設定すれば、温度補償回路等に設けて温度の補正処理を行わなくとも、ブリッジ回路21の出力値の温度変化に起因する誤差を1%以内に抑えることができ、アクチュエータの揺動角度を精度良く検出できるようになる。
【0044】
従って、本実施形態のアクチュエータ1によれば、抵抗素子13,14の抵抗値をピエゾ抵抗素子R1,R2の抵抗値に対して十分に大きく設定するだけで、ピエゾ抵抗素子R1,R2の抵抗温度特性によるブリッジ回路21の出力値への温度変化による影響を軽減でき、可動部7の揺動角度の検出精度を向上することができる。このため、従来のように、ブリッジ回路21の出力値を温度補正するために温度補償回路等を設ける必要がなく、構成要素の削減や回路の簡素化を計ることができ、アクチュエータ1のコストを低減することができるようになる。
【符号の説明】
【0045】
1 アクチュエータ
3 固定部
5 トーションバー
7 可動部
7a 駆動コイル
9 電極端子
11 永久磁石
13,14 抵抗素子(抵抗温度係数の小さい)
21 ブリッジ回路
R1,R2 ピエゾ抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状の固定部の内側にトーションバーによって揺動可能に支持された可動部を有し、該可動部が揺動駆動されるプレーナ型アクチュエータであって、
前記可動部の揺動動作による応力の影響を受けて抵抗値が変化する2つのピエゾ抵抗素子と、前記可動部の揺動動作による応力の影響を受けても抵抗値が変化せず且つ前記ピエゾ抵抗素子より抵抗温度係数の小さい2つの抵抗素子とで構成したブリッジ回路を備え、前記ブリッジ回路は、前記2つのピエゾ抵抗素子と前記抵抗温度係数の小さい2つの抵抗素子をそれぞれ対辺同士に配置して構成し、前記ブリッジ回路の出力値に基づいて前記可動部の揺動角度を検出する構成としたことを特徴とするプレーナ型アクチュエータ。
【請求項2】
前記2つのピエゾ抵抗素子は、前記可動部の揺動動作により同じ方向の応力の影響を受ける位置に配置した請求項1に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項3】
前記2つのピエゾ抵抗素子は、前記固定部と前記トーションバーとの接続部近傍に配置した請求項2に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項4】
前記抵抗温度係数の小さい2つの抵抗素子は、金属皮膜抵抗である請求項1〜3のいずれか1つに記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項5】
前記抵抗温度係数の小さい抵抗素子の抵抗値は、前記ブリッジ回路の温度変化に基づく出力値の変動量が温度変化前の出力値に対して1パーセント以内になるように前記ピエゾ抵抗素子の抵抗値より大きな値に設定する請求項1〜4のいずれか1つに記載のプレーナ型アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−121156(P2011−121156A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282893(P2009−282893)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】