説明

プロジェクター式測定装置

【課題】比較的大きな被測定物に対しても高精度な測定が可能となるプロジェクター式測定装置を提供すること。
【解決手段】プロジェクター式測定装置1は、載置台10と、照明部16と、被測定物5を画像として所定倍率で光学的に取得する画像取得部21と、画像取得部21から出力される取得画像データに基づいて投写画像データとして出力して制御する画像制御部31と、光源から射出される光束を、投写画像データに基づいて光変調素子により変調し、投写用光学像に変換して出力する光学変換部51と、投写用光学像を所定倍率で投写する投写光学部52と、投写用光学像が投写されて投写画像を形成すると共に、所定倍率で作成された基本形状図シート6を載置するスクリーン40と、投写画像と基本形状図シート6との変位を変位データとして取得する変位取得部36と、変位データに基づいて変位量を算出する変位量算出部37と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の形状などを測定するプロジェクター式測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造された物(被測定物)の形状が、設計された形状(理想形状)と比較して、どの位の差があるのかを測定して検査する測定装置として投影測定装置が知られている。このような投影測定装置は、特許文献1に開示されるように、被測定物をスクリーン上に拡大投影し、座標測定、もしくは理想形状を表す拡大図と比較測定を行っていた。また、特許文献2に開示されるように、基準線をスクリーン上に任意に現す方式のもので測定を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−264217号公報
【特許文献2】特開昭63−98505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に開示される投影測定装置は、小さな被測定物を拡大して測定する場合には、投影測定装置内部に設置されるスクリーンの大きさの範囲内で、倍率を上げることも可能で、精度も高く測定できた。しかし、大きな被測定物になるとスクリーンの大きさの制約から拡大倍率が制限されてしまい、精度的に満足できるものではなかった。
従って、比較的大きな被測定物に対しても高精度な測定が可能となるプロジェクター式測定装置が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0006】
(適用例1)本適用例に係るプロジェクター式測定装置は、(a)被測定物を載置する載置台と、(b)被測定物を照明する照明部と、(c)被測定物を画像として所定倍率で光学的に取得する画像取得部と、(d)画像取得部から出力される取得画像データに基づいて取得画像データを投写画像データとして出力して制御する画像制御部と、(e)光源および光変調素子を有し、光源から射出される光束を、画像制御部から出力される投写画像データに基づいて光変調素子により変調し、投写画像データを投写用光学像に変換して出力する光学変換部と、(f)光学変換部から出力された投写用光学像を所定倍率で投写する投写光学部と、(g)投写用光学像が投写されて投写画像を形成すると共に、所定倍率で作成された被測定物の基本形状図シートを載置するスクリーンと、(h)スクリーンに形成された投写画像とスクリーンに載置された基本形状図シートとの変位を変位データとして取得する変位取得部と、(i)変位取得部から出力された変位データに基づいて変位量を算出する変位量算出部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このようなプロジェクター式測定装置によれば、プロジェクター式測定装置は、載置台、照明部、画像取得部、画像制御部、光学変換部、投写光学部、スクリーン、変位取得部、および変位量算出部を備えている。そして、光学変換部は、光源および光変調素子を有しており、光源から射出される光束を、画像制御部から出力される投写画像データに基づいて光変調素子により変調し、投写画像データを投写用光学像に変換して出力する。このような光学変換部は、いわゆるプロジェクターの動作を行う。また、投写光学部は、投写用光学像を投写し、スクリーンに投写画像を形成させる。これにより、比較的大きな被測定物に対しても、拡大投写できるプロジェクター式測定装置が可能となる。また、変位取得部では、スクリーンに形成された投写画像とスクリーンに載置された基本形状図シートとの変位を変位データとして取得し、変位量算出部により、変位取得部から出力される変位データに基づいて変位量を算出する。これにより、高精度な測定が可能なプロジェクター式測定装置が実現できる。
【0008】
(適用例2)上記適用例に係るプロジェクター式測定装置において、(a)載置台に設置されて載置台を平面方向に移動する移動部と、(b)移動部を移動させ、スクリーンに形成された投写画像の被測定部位を、基本形状図シートの被測定部位に対応する部位に一致させた場合、変位として変位取得部に取得させるための入力を行う入力部と、を備え、変位取得部は、入力部により変位を変位データとして取得することが好ましい。
【0009】
このようなプロジェクター式測定装置によれば、移動部により、被測定物を載置する載置台を平面方向に移動し、スクリーンに形成された投写画像の被測定部位を、基本形状図シートの被測定部位に対応する部位に一致させた場合、入力部により、変位取得部に変位として取得させるための入力を行う。変位取得部は、この変位を変位データとして取得する。このような構成と動作により、被測定物の平面方向の高精度な測定が可能となる。
【0010】
(適用例3)上記適用例に係るプロジェクター式測定装置において、(a)載置台に設置されて載置台を垂直方向に移動する移動部と、(b)移動部を移動させ、スクリーンに形成された投写画像の被測定部位の焦点を合わせた場合、変位として変位取得部に取得させるための入力を行う入力部と、を備え、変位取得部は、入力部により変位を変位データとして取得することが好ましい。
【0011】
このようなプロジェクター式測定装置によれば、移動部により、被測定物を載置する載置台を垂直方向に移動し、スクリーンに形成された投写画像の被測定部位の焦点を合わせた場合、入力部により、変位取得部に変位として取得させるための入力を行う。変位取得部は、この変位を変位データとして取得する。このような構成と動作により、被測定物の垂直方向の高精度な測定が可能となる。
【0012】
(適用例4)上記適用例に係るプロジェクター式測定装置において、投写画像の投写倍率を補正するための倍率補正部材を有し、変位量算出部は、倍率補正部材の測定による倍率補正値に基づいて変位量を算出することが好ましい。
【0013】
このようなプロジェクター式測定装置によれば、倍率補正部材を用いて投写画像の投写倍率を補正し、変位量算出部は、倍率補正値に基づいて変位量を算出するため、更に高精度な測定を行うことができる。
【0014】
(適用例5)本適用例に係るプロジェクター式測定装置は、(a)被測定物を載置する載置台と、(b)被測定物を照明する照明部と、(c)被測定物を画像として所定倍率で光学的に取得する画像取得部と、(d)画像取得部から出力される取得画像データに基づく第1投写画像データと、被測定物の基本形状データに基づく第2投写画像データとを含む投写画像データとして出力して制御する画像制御部と、(e)光源および光変調素子を有し、光源から射出される光束を、画像制御部から出力される投写画像データに基づいて光変調素子により変調し、第1投写用光学像と第2投写用光学像とを含む投写用光学像に変換して出力する光学変換部と、(f)光学変換部から出力された、投写用光学像を所定倍率で投写する投写光学部と、(g)投写用光学像が投写され、第1投写画像データによる第1投写画像と第2投写画像データによる第2投写画像とを形成するスクリーンと、(h)スクリーンに形成された、第1投写画像と第2投写画像との変位を変位データとして取得する変位取得部と、(i)変位取得部から出力された変位データに基づいて変位量を算出する変位量算出部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
このようなプロジェクター式測定装置によれば、プロジェクター式測定装置は、載置台、照明部、画像取得部、画像制御部、光学変換部、投写光学部、スクリーン、変位取得部、および変位量算出部を備えている。画像制御部は、取得画像データに基づく第1投写画像データと、被測定物の基本形状データに基づく第2投写画像データとを含む投写画像データとして光学変換部に出力する。そして、光学変換部は、光源および光変調素子を有しており、光源から射出される光束を、画像制御部から出力される投写画像データに基づいて光変調素子により変調し、第1投写用光学像と第2投写用光学像とを含む投写用光学像に変換して出力する。このような光学変換部は、いわゆるプロジェクターの動作を行う。また、投写光学部は、投写用光学像を所定倍率で投写し、スクリーンに、第1投写画像データによる第1投写画像と第2投写画像データによる第2投写画像とを形成させる。これにより、比較的大きな被測定物に対しても拡大投写できるプロジェクター式測定装置が可能となる。また、変位取得部では、スクリーンに形成された、第1投写画像と第2投写画像との変位を変位データとして取得し、変位量算出部により、変位取得部から出力される変位データに基づいて変位量を算出する。これにより、高精度な測定が可能なプロジェクター式測定装置が実現できる。
【0016】
(適用例6)本適用例に係るプロジェクター式測定装置は、(a)被測定物を載置する載置台と、(b)被測定物を照明する照明部と、(c)被測定物を画像として所定倍率で光学的に取得する画像取得部と、(d)画像取得部から出力される取得画像データに基づいて取得画像データを第1投写画像データとして出力して制御すると共に、被測定物の基本形状データに基づいて基本形状データを第2投写画像データとして出力して制御する画像制御部と、(e)第1光源および第1光変調素子を有し、第1光源から射出される光束を、画像制御部から出力される第1投写画像データに基づいて第1光変調素子により変調し、第1投写画像データを第1投写用光学像に変換して出力すると共に、第2光源および第2光変調素子を有し、第2光源から射出される光束を、画像制御部から出力される第2投写画像データに基づいて第2光変調素子により変調し、第2投写画像データを第2投写用光学像に変換して出力する光学変換部と、(f)光学変換部から出力された、第1投写用光学像と第2投写用光学像とを所定倍率で投写する投写光学部と、(g)第1投写用光学像と第2投写用光学像とが投写され、第1投写画像と第2投写画像とを形成するスクリーンと、(h)スクリーンに形成された、第1投写画像と第2投写画像との変位を変位データとして取得する変位取得部と、(i)変位取得部から出力された変位データに基づいて変位量を算出する変位量算出部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
このようなプロジェクター式測定装置によれば、プロジェクター式測定装置は、載置台、照明部、画像取得部、画像制御部、光学変換部、投写光学部、スクリーン、変位取得部、および変位量算出部を備えている。そして、光学変換部は、第1光源および第1光変調素子を有しており、第1光源から射出される光束を、画像制御部から出力される第1投写画像データに基づいて第1光変調素子により変調し、第1投写画像データを第1投写用光学像に変換して出力する。また、光学変換部は、第2光源および第2光変調素子を有しており、第2光源から射出される光束を、画像制御部から出力される第2投写画像データに基づいて第2光変調素子により変調し、第2投写画像データを第2投写用光学像に変換して出力する。このような光学変換部は、いわゆるプロジェクターの動作を行う。また、投写光学部は、第1投写用光学像と第2投写用光学像とを投写し、スクリーンに第1投写画像と第2投写画像とを形成させる。これにより、比較的大きな被測定物に対しても拡大投写できるプロジェクター式測定装置が可能となる。また、変位取得部では、スクリーンに形成された、第1投写画像と第2投写画像との変位を変位データとして取得し、変位量算出部により、変位取得部から出力される変位データに基づいて変位量を算出する。これにより、高精度な測定が可能なプロジェクター式測定装置が実現できる。
【0018】
(適用例7)上記適用例に係るプロジェクター式測定装置において、(a)載置台に設置されて載置台を平面方向に移動する移動部と、(b)移動部を移動させ、スクリーンに形成された第1投写画像の被測定部位を、第2投写画像の被測定部位に対応する部位に一致させた場合、変位として変位取得部に取得させるための入力を行う入力部と、を備え、変位取得部は、入力部により変位を変位データとして取得することが好ましい。
【0019】
このようなプロジェクター式測定装置によれば、移動部により、被測定物を載置する載置台を平面方向に移動し、スクリーンに形成された第1投写画像の被測定部位を、第2投写画像の被測定部位に対応する部位に一致させた場合、入力部により、変位取得部に変位として取得させるための入力を行う。変位取得部は、この変位を変位データとして取得する。このような構成と動作により、被測定物の平面方向の高精度な測定が可能となる。
【0020】
(適用例8)上記適用例に係るプロジェクター式測定装置において、(a)載置台に設置されて載置台を垂直方向に移動する移動部と、(b)移動部を移動させ、スクリーンに形成された第1投写画像の被測定部位の焦点を合わせた場合、変位として変位取得部に取得させるための入力を行う入力部と、を備え、変位取得部は、入力部により変位を変位データとして取得することが好ましい。
【0021】
このようなプロジェクター式測定装置によれば、移動部により、被測定物を載置する載置台を垂直方向に移動し、スクリーンに形成された第1投写画像の被測定部位の焦点を合わせた場合、入力部により、変位取得部に変位として取得させるための入力を行う。変位取得部は、この変位を変位データとして取得する。このような構成と動作により、被測定物の垂直方向の高精度な測定が可能となる。
【0022】
(適用例9)上記適用例に係るプロジェクター式測定装置において、スクリーンに形成された、第1投写画像の被測定部位と、第2投写画像の被測定部位に対応する部位と、の双方の位置を変位取得部に取得させるための入力を行う入力部を備えることが好ましい。
【0023】
このようなプロジェクター式測定装置によれば、入力部により、第1投写画像の被測定部位と、第2投写画像の被測定部位に対応する部位との双方の位置を変位取得部に取得させるための入力を行うことで、変位取得部は、位置(または変位)を位置データ(または変位データ)として取得する。そして、変位量算出部は変位量を算出することができる。これにより、ユーザーは、被測定物の測定したい部位を容易に入力することができ、変位量を算出させることができる。従って、プロジェクター式測定装置の利便性が更に向上する。
【0024】
(適用例10)上記適用例に係るプロジェクター式測定装置において、第1投写画像および第2投写画像の投写倍率を補正するための倍率補正部材を有し、変位量算出部は、倍率補正部材の測定による倍率補正値に基づいて変位量を算出することが好ましい。
【0025】
このようなプロジェクター式測定装置によれば、倍率補正部材を用いて第1投写画像および第2投写画像の投写倍率を補正し、変位量算出部は、倍率補正値に基づいて変位量を算出するため、更に高精度な測定を行うことができる。
【0026】
(適用例11)上記適用例に係るプロジェクター式測定装置において、第1投写用光学像と第2投写用光学像とを任意の倍率で投写するズーム機構部を備え、変位量算出部は、前記倍率を含めて変位量を算出することが好ましい。
【0027】
このようなプロジェクター式測定装置によれば、ズーム機構部を備えて、任意の倍率で投写させ、変位量算出部で変位量を算出することができる。これにより、例えば、被測定物の被測定部位が小さく見づらい場合などには、任意の倍率で拡大して測定することができる。従って、被測定物の細かい部位も高精度に測定できると共に、測定の利便性を更に向上したプロジェクター式測定装置が実現できる。
【0028】
(適用例12)上記適用例に係るプロジェクター式測定装置において、画像制御部は、スクリーンに対して背面投写または前面投写が行える投写画像データを出力することが好ましい。
【0029】
このようなプロジェクター式測定装置によれば、画像制御部は、スクリーンに対して背面投写または前面投写が行える投写画像データを出力するため、画像投写部は、スクリーンに対して背面投写または前面投写を行うことができる。これによりにより、ユーザーは、投写画像の見易さや測定操作のし易さなどに応じていずれかを選択できる。また、プロジェクター式測定装置を構成する構成部の設置の自由度を向上させる。従って、プロジェクター式測定装置の設置性や操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態に係るプロジェクター式測定装置を示す概構成図。
【図2】プロジェクター式測定装置の概斜視図。
【図3】プロジェクター式測定装置の概機能図。
【図4】プロジェクター式測定装置を使用する際の操作手順を示すフローチャート。
【図5】第2実施形態に係るプロジェクター式測定装置を示す概構成図。
【図6】プロジェクター式測定装置の概機能図。
【図7】プロジェクター式測定装置の光学変換部の概構成図。
【図8】プロジェクター式測定装置を使用する際の操作手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
【0032】
図1は、第1実施形態に係るプロジェクター式測定装置を示す概構成図である。図2は、プロジェクター式測定装置の概斜視図である。図3は、プロジェクター式測定装置の概機能図である。図1〜図3を参照して、プロジェクター式測定装置1の構成および動作を説明する。
【0033】
本実施形態のプロジェクター式測定装置1は、設計図に基づいて加工や成形を行って製造された製品(物)の形状と、設計図に基づく形状とを比較し、どの位の変位(ズレ)があるのかを測定して検査する装置である。そして、プロジェクター式測定装置1は、製造された製品(物)を被測定物5(測定検査をされる物)とし、被測定物5の外観形状を光学的に画像として取得して投写させ、設計形状とのズレ量を変位量として測定する。
【0034】
図1、図2を参照して、プロジェクター式測定装置1を、装置構成から説明を行う。
プロジェクター式測定装置1は、複数の装置で構成されている。プロジェクター式測定装置1は、被測定物5を載置する載置台10、被測定物5を照明する照明装置15、被測定物5を画像データとして取得する画像取得装置20、および画像取得装置20に画像を取得させて投写画像データとして出力する制御装置30で構成されている。
【0035】
また、プロジェクター式測定装置1は、制御装置30から出力された投写画像データを投写するプロジェクター装置50、プロジェクター装置50から投写されて投写画像を形成するスクリーン40、および被測定物5を平面方向(X,Y方向)および垂直方向(Z方向)に移動する移動装置60で構成されている。
【0036】
また、プロジェクター式測定装置1は、移動装置60を移動して、スクリーン40に投写された被測定物5の被測定部位を、スクリーン40に貼付された基本形状図シート6の対応する部位に一致させ、その位置を変位として変位取得部36に取得させるための入力を行う入力装置65で構成されている。また、プロジェクター式測定装置1は、入力装置65からの信号入力により変位を変位データとして取得し、その変位データに基づいて変位量を算出する制御装置30、および変位量を表示する表示装置70などから構成されている。なお、プロジェクター式測定装置1は、制御装置30により統括制御されている。
【0037】
なお、図2に示すように、本実施形態のプロジェクター装置50は、スクリーン40に対して、スクリーン40の背面側から投写用光学像を投写する。従ってスクリーン40は、透過型のスクリーンを用いている。また、プロジェクター式測定装置1を構成する各装置は、それぞれ任意の場所に設置および固定できるようになっている。従って、ユーザーは、測定し易い場所にそれぞれの装置を設置することで、プロジェクター式測定装置1を使用することができる。
【0038】
次に、図3を参照して、プロジェクター式測定装置1を、機能構成から説明を行う。
プロジェクター式測定装置1は、機能的構成部として、大略、載置台10、照明部16、画像取得部21、画像制御部31、光学変換部51、投写光学部52、スクリーン40、変位取得部36、変位量算出部37、ステージ61、入力部66などを備えて構成されている。
【0039】
載置台10は、透明な板状に形成されて被測定物5を載置する。また、照明部16(照明装置15)は、載置台10の上部に設置される反射用照明部17や、後述する載置台10の下方に設置されるステージ61の内部に設置される透過用照明部18を備えている。
【0040】
反射用照明部17は、載置台10に載置された被測定物5に対して上方から照明光を当て、被測定物5の外面に反射させて、画像を取り込む場合に用いる。透過用照明部18は、載置台10に載置された被測定物5に対して下方から照明光を当て、被測定物5の外形を透過させて、画像を取り込む場合に用いる。なお、被測定物5の外面の凹凸形状や、内面形状などを測定する場合には、反射用照明部17を用い、被測定物5の外形形状や孔形状などの輪郭を測定する場合には、透過用照明部18を用いることで、精度よく測定できる。
【0041】
画像取得部21(画像取得装置20)は、被測定物5の外観を画像として所定倍率で光学的に取得する。画像取得部21は、本実施形態ではCCD(Charge-Coupled Device)を用いている。また、画像取得部21は、所定の倍率となるように構成されたレンズ群からなる画像取得光学部22を複数備えている。
【0042】
そして、画像取得光学部22は、被測定物5の外形の大きさに応じて、全体像がCCDに収まるような倍率もしくは部分的に拡大してより精密に測定する倍率を選択できるように構成されている。なお、この画像取得部21で取得した際の画像取得光学部22の倍率と同じ倍率で、スクリーン40に投写画像が形成される。
【0043】
なお、被測定物5を測定する場合、スクリーン40に形成される投写画像の倍率が高くなるに従って、高精度な測定が行える。従って、画像取得光学部22および後述する投写光学部52は、使用する倍率に応じて交換可能に構成されている。
【0044】
画像制御部31(制御装置30)は、画像取得制御部32と、投写画像制御部33とを備えて構成されている。画像取得制御部32は、画像取得部21から取得画像データを出力させる。また、投写画像制御部33は、取得画像データに基づいて取得画像データを投写画像データに変換して光学変換部51に出力し、光学変換部51の光変調素子を制御する。
【0045】
光学変換部51(プロジェクター装置50)は、光源(図示省略)および光変調素子(図示省略)を有し、光源から射出される光束を、画像制御部31から出力される投写画像データに基づいて光変調素子(本実施形態では、透過型の液晶パネル(図示省略))により変調し、投写画像データを投写用光学像に変換して出力する。投写光学部52(プロジェクター装置50)は、各種レンズ群で構成され、光学変換部51から出力された投写用光学像を所定倍率で投写する。
【0046】
本実施形態のスクリーン40は、上述したように、透過型のスクリーンを用いている。そして、スクリーン40は、投写光学部52からスクリーン40の背面側に投写用光学像が投写され、投写画像を形成する。ユーザーは、スクリーン40の正面側(前面側)からこの投写画像を見ることができる。また、スクリーン40は、前面側に、投写画像と同じ所定倍率で作成された被測定物5の基本形状図シート6を、被測定物5の設定される基準位置に合わせて載置する。この場合、スクリーン40に載置した基本形状図シート6の設定される基準位置に、後述するステージ61を移動させて、被測定物5の投写画像を合わせてもよい。
【0047】
基本形状図シート6は、被測定物5を製造する際の基準となる設計形状(基本形状)を所定の倍率で表示したものである。言い換えると、基本形状図シート6は、被測定物5の設計図を所定倍率で表示したものである。また、基本形状図シート6は、透明なシートで形成されている。従って、ユーザーは、スクリーン40に背面側から投写された投写画像を、スクリーン40の前面側に載置された基本形状図シート6を介して見ることになる。なお、ユーザーは、後述する入力部66への入力により、投写画像の画質調整などを画像制御部31に行わせることも可能である。
【0048】
変位取得部36(制御装置30)は、後述する入力部66からの入力信号により、スクリーン40に形成された投写画像と、スクリーン40に載置された基本形状図シート6との変位を変位データとして取得する。変位量算出部37(制御装置30)は、変位取得部36から出力された変位データに基づいて変位量を算出する。なお、変位取得部36と変位量算出部37とにより、演算部35を構成している。また、表示部71(表示装置70)は、変位量算出部37で算出された変位量を表示する。
【0049】
移動部としてのステージ61(移動装置60)は、載置台10の下方に設置されている。ステージ61は、平面方向と垂直方向に移動可能に構成されている。そして、ユーザーは、ステージ61を平面方向または垂直方向に移動することで、載置台10と共に被測定物5を移動させることが可能となる。
【0050】
入力部66(入力装置65)は、ユーザーにより、ステージ61を平面方向に移動させ、スクリーン40に形成された投写画像の被測定部位(測定される部位)を、基本形状図シート6の被測定部位に対応する部位に一致させた後、入力操作される。また、入力部66は、ユーザーにより、ステージ61を垂直方向に移動させ、スクリーン40に形成された投写画像の被測定部位の焦点を合わせ、入力操作される。
【0051】
ステージ制御部38は、ステージ61が移動する場合の位置を位置データとして制御している。ステージ制御部38は、入力部66からの入力信号によりその状態での位置データを変位取得部36に出力する。また、ステージ制御部38は、制御装置30を構成している。なお、ステージ制御部38は、ステージ61の内部に設置されていてもよい。
【0052】
照明制御部39は、照明部16を制御している。詳細には、照明制御部39は、反射用照明部17および透過用照明部18のどちらを点灯させるかの制御を行う他、点灯時の照明光量や照明色なども制御している。なお、照明制御部39に前述した制御を行わせる指示入力は、入力部66(入力装置65)へのユーザーによる入力で行うことが可能である。なお、照明制御部39は、制御装置30を構成している。
【0053】
なお、本実施形態では、制御装置30の有する制御部(図示省略)の動作により、測定手順や入力操作案内などが、表示部71に表示される。ユーザーは、表示部71に表示される案内画面に従って、入力部66から必要な入力操作を行うことができ、その結果を確認することができる。
【0054】
図4は、プロジェクター式測定装置を使用する際の操作手順を示すフローチャートである。図1、図3、図4を参照してプロジェクター式測定装置1の操作手順を説明する。なお、本フローチャートを実行および統括制御するのは、制御装置30の制御部(図示省略)となる。
【0055】
ステップS100では、被測定物5を載置台10に載置する。次に、ステップS101では、被測定物5を測定するための適切な拡大倍率を設定する。そして、設定する倍率に合う画像取得光学部22を画像取得装置20に設置する。このとき、比較するための基本形状図シート6の倍率に合わせるように倍率を設定することが効率的である。また、倍率の選択に関して、被測定物5の形状全体を投写して測定したい場合には、形状全体がスクリーン40全体に投写できる倍率を選択することが必要となる。また、被測定物5の部分的な形状を拡大して投写し、測定したい場合には、部分的な形状がスクリーン40範囲内で拡大投写できる倍率を選択することが必要となる。画像取得光学部22の倍率を設定した場合、併せて、その倍率に対応する投写光学部52をプロジェクター装置50に設置する。
【0056】
次に、ステップS102では、被測定物5に対する照明方法を選択する。すなわち、照明部16を構成する反射用照明部17および透過用照明部18のいずれかを選択する。被測定物5の形状を反射光で測定する場合は、反射用照明部17を選択する。また、被測定物5の形状を透過光で測定する場合は、透過用照明部18を選択する。なお、選択操作方法は、照明部16に設置される点灯スイッチ(図示省略)を直接ONさせる方法で行う。
【0057】
次に、ステップS103では、後述するステップS104での被測定物5の平行出しを行うために用いる被測定物5の部位に対して焦点調整を行う。詳細には、投写画像を見ながら、被測定物5を載置するステージ61を垂直方向(Z軸方向)に移動させて焦点調整を行う。
【0058】
次に、ステップS104では、被測定物5の平行出し(傾き補正)を行う。傾き補正を行うことで、補正用の座標系として演算部35に保存させることができる。この補正を行うことにより、以降、被測定物5を測定した場合、補正用座標系を基に演算部35で補正演算を行うことができる。なお、傾き補正を行う場合の実際の方法は、画像取得光学部22のレンズ表面に印刷され、投写画像として投写されている基準線(直交する2つの線)の交点を用いる。なお、基準線の交点は、画像取得光学部22のレンズ中心に設定されている。
【0059】
被測定物5が、例えば2つの孔形状を有している場合、その2つの孔形状の中心座標を求めることで傾き補正を行うことができる。そして、いずれかの孔形状の中心座標を原点とすることで、補正用座標系が設定され、演算部35に保存することができる。また、被測定物5が、例えば直交する2辺を有する形状の場合には、直交する2辺を用いて、各々をX軸、Y軸とすることで、傾き補正を行うこともできる。そして、交点が原点となり、補正用座標系が設定され、演算部35に保存することができる。
【0060】
なお、具体的な傾き補正の方法を説明する。
例えば、被測定物5が有する2つの孔形状を用いる場合、ステージ61を移動させて、一方の孔形状の外周上の所望の位置を、基準線の交点と一致させ、入力部66を操作して入力し、その位置を演算部35に記憶させる。この動作を繰り返し、一方の孔に対して3箇所以上の位置を演算部35に記憶させる。この動作で、一方の孔形状の中心座標が演算される。次に、他方の孔形状に対しても、同様の動作を行うことで、他方の孔形状の中心座標が演算される。これにより、2つの孔形状の中心座標が演算されたため、傾きが演算される。また、2つの孔形状の中心座標のうち、いずれかを原点として設定入力することにより、補正用座標系が演算部35に保存される。
【0061】
また、例えば、被測定物5が有する2つの直交する辺を用いる場合、ステージ61を移動させて、一方の辺の外周上の所望の位置を、基準線の交点と一致させ、入力部66を操作して入力し、その位置を演算部35に記憶させる。この動作を複数回繰り返し、その位置を演算部35に記憶させることにより、直線として演算され、傾きが演算される。この動作を他方の辺に対しても行うことで、直線として演算される。また、各々の辺をX軸、Y軸とすることで、交点が原点となり、補正用座標系が演算部35に保存される。
【0062】
次に、ステップS105では、前段のステップS104の平行出し(傾き補正)が終了したか否かを判断する。終了していない場合は、ステップS104に移行し、平行出しを指示する。終了している場合は、ステップS106に移行する。
【0063】
ステップS106からステップS108は、投写画像の投写倍率を補正する(被測定物5が正確な倍率で投写される)ための補正を行うステップとなる。その際、倍率補正部材としての倍率校正用パターン(図示省略)を用いて補正を行う。倍率校正用パターンは、金属板やプラスチック板に正確な径で加工された丸孔形状を有するプレートや、ガラス板に正確な径で印刷された丸形状を有するプレートである。
【0064】
そして、ステップS106では、倍率校正用パターンをステージ61上面に載置する。次に、ステップS107では、倍率校正用パターンの測定を行う。実際には、倍率校正用パターンの丸形状を、上述したと同様にして測定する。倍率校正用パターンの丸形状を、3点入力や多点入力により、演算部35に丸形状の径を演算させる。
【0065】
次に、ステップS108では、倍率補正値としての倍率校正補正値を算出する。詳細には、測定して演算した丸形状の径の値と、倍率校正用パターンの丸形状の基本径に投写倍率を乗じた値と、を比較して、倍率校正補正値を算出する。これにより、実際の被測定物5の測定の際には、測定時に検出されるステージ61の移動量に対して、この倍率校正補正値を考慮して演算が行われる。
【0066】
なお、この倍率校正補正値により、投写画像の平面方向(X,Y方向)において、偏りを持たせることなく、全方向(360度)を均一に補正する。なお、光学系や機構系の方向による偏りをより正確に補正する必要がある場合には、ステップS107で、倍率校正用パターンの測定を行う際、径の測定を、X方向、Y方向それぞれ別々に測定を行うことがよい。
【0067】
そして、ステップS108において、測定された値により、X方向、Y方向の偏差を考慮して、X方向、Y方向それぞれ別々の倍率校正補正値を設定する。そして、X方向、Y方向の間の角度方向は補間計算し、その値を倍率校正補正値として設定する。また、垂直方向(Z方向)の校正は、光学系の焦点深度に依存するため、プロジェクター式測定装置1の製造時に校正しておくことにより、使用時における校正の必要がなくなる。
【0068】
次に、ステップS109に移行する。ステップS109では、基本形状図シート6を、投写画像に合わせてスクリーン40の前面に貼付する。詳細には、例えば、ステップS104で、傾き補正を行った被測定物5の2つの孔形状を基準とする場合、原点とした一方の孔形状に、基本形状図シート6の対応する孔形状を重ねる。次に、他方の孔形状に、基本形状図シート6の対応する孔形状を隙間などが等配分されるよう重ねる。これにより、基本形状図シート6をスクリーン40に貼付する。
【0069】
次に、ステップS110に移行する。ステップS110からステップS112は、被測定物5を実際に測定するステップとなる。ステップS110では、被測定物5の被測定部位を実際に測定する。測定の方法は、投写画像の被測定物5の測定したい部位(被測定部位)を、基本形状図シート6の対応する部位に一致させてその変位を測定する。
【0070】
本実施形態では、詳細には、ユーザーが、ステージ61を平面方向(X,Y方向)に移動させて、投写画像の被測定物5の被測定部位を、基本形状図シート6の対応する部位に一致させる。そして、入力部66により、その位置を読み込ませる入力を行う。この入力信号により、ステージ制御部38では、ステージ61のX,Y方向の変位(移動量)を変位取得部36に出力する。変位取得部36は、入力した変位を変位データとして取得する。そして、変位量算出部37は、変位取得部36から出力された変位データに基づいて変位量を算出する。なお、このとき、変位量算出部37は、前述した傾き補正による補正用座標系に基づいた補正演算を行い、併せて倍率校正補正値に基づいた演算を行うことで変位量を算出する。なお、算出された変位量は、表示部71に表示される。
【0071】
なお、制御装置30内に保存される変位量算出用の制御プログラムなどを実行させることにより、入力部66への入力がない場合にも、ユーザーが、ステージ61を平面方向に移動させた場合、その移動に合わせて、その変位をステージ制御部38から変位取得部36に常に出力させることもできる。その場合、上記制御プログラムにより、演算部35で補正用座標系を保存した以降において、変位量算出部37では、変位取得部36から出力される変位データが入力するタイミングに併せて、上述と同様に演算を行い、変位量を算出することもできる。なお、算出された変位量は、表示部71に表示することもできる。
【0072】
なお、孔形状の中心座標のズレ量や、孔形状の基本形状図シート6とのズレ量を変位量として算出することもできる。また、外形形状の、基本形状図シート6とのズレ量を変位量として算出することもできる。
【0073】
また、ステップS111、ステップS112により、垂直方向(Z方向)の変位量も測定することができる。ステップS111では、被測定物5の基準となる基準面に焦点を合わせる。詳細には、被測定物5を載置するステージ61を垂直方向(Z軸方向)に移動させて焦点を基準面に合わせる。焦点を基準面に合わせた後、ユーザーは、入力部66に、焦点を合わせたことを入力する。この入力信号により、演算部35では、ステージ制御部38からのZ方向の位置データを基準面のデータとして記憶する。
【0074】
次に、ステップS112では、実際に被測定物5の被測定部位の面の測定を行う。詳細には、被測定物5を載置するステージ61を垂直方向(Z軸方向)に移動させて、被測定部位の面に焦点を合わせる。焦点を合わせた後、ユーザーは、入力部66に、焦点を合わせたことを入力する。この入力信号により、ステージ制御部38は、Z方向の位置を変位取得部36に出力し、変位取得部36から出力された変位データにより、変位量算出部37で、変位量を算出する。なお、算出された変位量は、表示部71に表示する。
【0075】
なお、制御装置30内に保存される変位量算出用の制御プログラムなどを実行させることにより、入力部66への入力がない場合にも、ユーザーが、ステージ61を垂直方向に移動させた場合、その移動に合わせて、その変位をステージ制御部38から変位取得部36に常に出力させることもできる。その場合、上記制御プログラムにより、演算部35で基準面のデータを記憶した以降において、変位量算出部37では、変位取得部36から出力される変位データが入力するタイミングに併せて、演算を行い、変位量を算出することもできる。なお、算出された変位量は、表示部71に表示することもできる。
【0076】
以上のステップにより、被測定物5の平面方向または垂直方向の変位量を測定した後、ステップS113に移行する。ステップS113では、測定終了に伴い、スクリーン40に貼付した基本形状図シート6をスクリーン40から剥離することになる。そしてステップS114に移行して、被測定物5を載置台10から取り外す。
以上により、被測定物5の測定が終了する。
【0077】
上述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態のプロジェクター式測定装置1は、載置台10、照明部16、画像取得部21、画像制御部31、光学変換部51、投写光学部52、スクリーン40、変位取得部36、および変位量算出部37を備えている。そして、光学変換部51は、光源および光変調素子を有しており、光源から射出される光束を、画像制御部31から出力される投写画像データに基づいて光変調素子により変調し、投写画像データを投写用光学像に変換して出力する。このような光学変換部51は、いわゆるプロジェクターの動作を行う。また、投写光学部52は、投写用光学像を投写し、スクリーン40に投写画像を形成させる。これにより、比較的大きな被測定物5に対しても拡大投写できるプロジェクター式測定装置1が可能となる。なお、被測定物5の大きさと、必要とする拡大倍率に応じて、画像取得光学部22、投写光学部52、スクリーン40などを交換することもできるため、プロジェクター式測定装置1の利便性を更に向上できる。また、変位取得部36では、スクリーン40に形成された投写画像とスクリーン40に載置された基本形状図シート6との変位を変位データとして取得し、変位量算出部37により、変位取得部36から出力される変位データに基づいて変位量を算出する。これにより、高精度な測定が可能なプロジェクター式測定装置1が実現できる。
【0078】
本実施形態のプロジェクター式測定装置1によれば、移動部としてのステージ61により、被測定物5を載置する載置台10を平面方向に移動し、スクリーン40に形成された投写画像の被測定部位を、基本形状図シート6の被測定部位に対応する部位に一致させた場合、入力部66により、変位取得部36に変位として取得させるための入力を行う。変位取得部36は、この変位を変位データとして取得する。このような構成と動作により、被測定物5の平面方向の高精度な測定が可能となる。
【0079】
本実施形態のプロジェクター式測定装置1によれば、移動部としてのステージ61により、被測定物5を載置する載置台10を垂直方向に移動し、スクリーン40に形成された投写画像の被測定部位の焦点を合わせた場合、入力部66により、変位取得部36に変位として取得させるための入力を行う。変位取得部36は、この変位を変位データとして取得する。このような構成と動作により、被測定物5の垂直方向の高精度な測定が可能となる。
【0080】
本実施形態のプロジェクター式測定装置1によれば、倍率補正部材としての倍率校正用シートを用いて投写画像の投写倍率を補正し、変位量算出部37は、倍率補正値に基づいて変位量を算出するため、更に高精度な測定を行うことができる。
【0081】
本実施形態のプロジェクター式測定装置1によれば、プロジェクター装置50(光学変換部51、投写光学部52)を備えているため、短い投写距離で大きな拡大率を得ることができる。
【0082】
従来の投影測定装置では、傾き補正を行う場合には、上述した基準線に被測定物の辺などを一致させる方法がとられており、ステージを平面方向で回転させる操作を行っていた。また、回転しても一致させられない場合には、被測定物の向きも変えるなどしていた。しかし、本実施形態のプロジェクター式測定装置1によれば、回転操作や、被測定物5の向きを変えるなどの操作が必要なく、簡易な操作で効率的に傾き補正を行うことが可能となる。
(第2実施形態)
【0083】
図5は、第2実施形態に係るプロジェクター式測定装置を示す概構成図である。図6は、プロジェクター式測定装置の概機能図である。図7は、プロジェクター式測定装置の光学変換部の概構成図である。図5〜図7を参照して、プロジェクター式測定装置2の構成および動作を説明する。なお、図5〜図7において、第1実施形態と同様の構成部には、同様の符号を付記し、その詳細な説明は省略する。また、本実施形態のプロジェクター式測定装置2の外観は、第1実施形態で説明した図2に示す斜視図から、基本形状図シート6を取り去った図と同様となるため、図示を省略する。
【0084】
本実施形態のプロジェクター式測定装置2における構成は、図5に示すように、第1実施形態と略同様であり、異なる点は、第1実施形態での基本形状図シート6を用いない点である。また、本実施形態のプロジェクター式測定装置2における機能は、図6に示すように、制御装置80およびプロジェクター装置90の機能が第1実施形態と異なっている。以降では、第1実施形態と異なる制御装置80およびプロジェクター装置90に関して説明する。
【0085】
本実施形態のプロジェクター式測定装置2は、制御装置80において、画像制御部81、および演算部86を備えている。画像制御部81は、第1画像取得制御部82と、第1投写画像制御部83とを備えて構成されている。また、画像制御部81は、第2画像取得制御部84と、第2投写画像制御部85とを備えて構成されている。また、プロジェクター装置90は、光学変換部(第1光学変換部91、第2光学変換部92)、および投写光学部95とで構成されている。また、制御装置80は、ズーム駆動制御部89を備えている。これに対して、プロジェクター装置90は、ズーム機構部96を備えている。
【0086】
第1画像取得制御部82は、第1実施形態と同様に、画像取得部21から取得画像データを出力させる。また、第1投写画像制御部83も、第1実施形態と同様に、取得画像データに基づいて取得画像データを第1投写画像データに変換して第1光学変換部91に出力し、第1光学変換部91の光変調素子を制御する。
【0087】
第2画像取得制御部84は、制御装置80を構成する記憶部(図示省略)に記憶される被測定物5の基本形状データを読み込む。第2投写画像制御部85は、基本形状データに基づいて基本形状データを第2投写画像データに変換して第2光学変換部92に出力し、第2光学変換部92の光変調素子を制御する。なお、基本形状データは、CAD(Computer-Aided Design)などを用いて設計された被測定物5の設計データである。
【0088】
第1光学変換部91は、第1光源(図示省略)および第1光変調素子を有している。そして、第1光学変換部91は、第1光源から射出される光束を、画像制御部81(第1投写画像制御部83)から出力される第1投写画像データに基づいて第1光変調素子(本実施形態では、透過型の液晶パネル91a(図7参照))により変調し、第1投写画像データを第1投写用光学像に変換して出力する。
【0089】
第2光学変換部92は、第2光源(図示省略)および第2光変調素子を有している。そして、第2光学変換部92は、第2光源から射出される光束を、画像制御部81(第2投写画像制御部85)から出力される第2投写画像データに基づいて第2光変調素子(本実施形態では、透過型の液晶パネル92a(図7参照))により変調し、第2投写画像データを第2投写用光学像に変換して出力する。
【0090】
なお、プロジェクター装置90は、図7に示すように、反射ミラー93および合成光学部94を備えている。反射ミラー93は、液晶パネル92aの後段に設置されており、液晶パネル92aで変調された第2投写用光学像を反射する。また、合成光学部94は、内部に、一方の光学像を透過して他方の光学像を反射する膜94aが形成されている。
【0091】
ここで、液晶パネル91aで変調された第1投写用光学像は、合成光学部94の膜94aを透過して後段の投写光学部95に進む。そして、反射ミラー93で反射されて合成光学部94に入射した第2投写用光学像は、合成光学部94の膜94aにより反射されて後段の投写光学部95に進む。この合成光学部94により、第1投写用光学像と第2投写用光学像が合成される。
【0092】
投写光学部95は、第1実施形態と同様に構成されている。そして、投写光学部95は、第1光学変換部91(詳細には、合成光学部94)から出力された第1投写用光学像と、第2光学変換部92(詳細には、合成光学部94)から出力された第2投写用光学像とを所定倍率でスクリーン40に投写する。
【0093】
本実施形態のスクリーン40は、第1実施形態と同様に構成されており、透過型のスクリーンを用いている。そして、スクリーン40は、投写光学部95からスクリーン40の背面側に投写用光学像が投写され、第1投写光学像による第1投写画像と、第2投写光学像による第2投写画像とを形成する。ユーザーは、スクリーン40の正面側(前面側)からこの投写画像を見ることができる。
【0094】
変位取得部87(制御装置80)は、入力部66からの入力信号により、スクリーン40に形成された第1投写画像と第2投写画像との変位を変位データとして取得する。変位量算出部88(制御装置80)は、変位取得部87から出力された変位データに基づいて変位量を算出する。なお、変位取得部87と変位量算出部88とにより、演算部86を構成している。また、表示部71(表示装置70)は、変位量算出部88で算出された変位量を表示する。
【0095】
本実施形態のプロジェクター装置90は、ズーム機構部96により、投写光学部95を構成する各種レンズ群を動作させて、第1、第2投写画像を任意の倍率で拡大することができる。なお、このズーム機構部96は、制御装置80のズーム駆動制御部89によって駆動および制御されている。また、ズーム機構部96は、図示省略するエンコーダーなどを用いて構成されるズーム検出部が設置されている。ズーム検出部は、ズーム機構部96の移動量をズーム駆動制御部89に出力する。ズーム駆動制御部89は、このズーム検出部から出力された移動量により、適正な拡大倍率となっているか否かを確認し、適正でない場合は、修正を行うこともできる。
【0096】
図8は、プロジェクター式測定装置を使用する際の操作手順を示すフローチャートである。図5、図6、図8を参照してプロジェクター式測定装置2の操作手順を説明する。なお、本フローチャートを実行および統括制御するのは、制御装置80の図示省略する制御部となる。
【0097】
ステップS200では、被測定物5を載置台10に載置する。次に、ステップS201では、被測定物5を測定する適切な拡大倍率を設定する。そして、設定する倍率に合う画像取得光学部22を画像取得装置20に設置する。画像取得光学部22の倍率を設定した場合、ズーム駆動制御部89は、同期して、第1、第2投写画像の倍率が、設定した倍率となるようにズーム機構部96を駆動させる。
【0098】
次に、ステップS202では、被測定物5に対する照明方法を選択する。第1実施形態と同様に、被測定物5の形状を反射光で測定する場合は、反射用照明部17を選択する。また、被測定物5の形状を透過光で測定する場合は、透過用照明部18を選択する。なお、選択操作方法は、照明部16に設置される点灯スイッチ(図示省略)を直接ONさせる方法で行う。
【0099】
次に、ステップS203では、後述するステップS204での被測定物5の平行出しを行うために用いる被測定物5の部位に対して焦点調整を行う。詳細には、第1投写画像を見ながら、被測定物5を載置するステージ61を垂直方向(Z軸方向)に移動させて焦点調整を行う。
【0100】
次に、ステップS204では、被測定物5の平行出し(傾き補正)を行う。傾き補正を行うことで、補正用の座標系として演算部86に保存させることができる。この補正を行うことにより、以降、被測定物5を測定した場合、補正用座標系を基に演算部86で補正演算を行うことができる。なお、傾き補正を行う場合の実際の方法は、画像取得光学部22のレンズ表面に印刷され、投写画像として投写されている基準線(直交する2つの線)の交点を用いる。なお、基準線の交点は、画像取得光学部22のレンズ中心に設定されている。なお、詳細な傾き補正の方法は、第1実施形態と同様に行うため、説明を省略する。なお、傾き補正が行われた場合、補正用座標系が設定されて演算部86に保存することができる。
【0101】
次に、ステップS205では、前段のステップS204の平行出し(傾き補正)が終了したか否かを判断する。終了していない場合は、ステップS204に移行し、平行出しを指示する。終了している場合は、ステップS206に移行する。
【0102】
ステップS206からステップS208は、第1投写画像の投写倍率を補正する(被測定物5が正確な倍率で投写される)ための補正を行うステップとなる。その際、第1実施形態と同様に、倍率補正部材としての倍率校正用パターン(図示省略)を用いて補正を行う。なお、ステップS206からステップS208は、第1実施形態でのステップS106からステップS108に対応しているため、詳細な説明を省略する。
【0103】
ステップS206では、倍率校正用パターンをステージ61上面に載置する。次に、ステップS207では、倍率校正用パターンの測定を行う。次に、ステップS208では、倍率補正値としての倍率校正補正値を算出する。これにより、実際の被測定物5の測定の際には、測定時に検出されるステージ61の移動量に対して、この倍率校正補正値を考慮して演算が行われる。
【0104】
次に、ステップS209に移行する。ステップS209では、第2画像取得制御部84が、制御装置80の記憶部に記憶される被測定物5の基本形状データを読み込み、第2投写画像制御部85により、基本形状データを第2投写画像データに変換して第2光学変換部92に出力し、第2光学変換部92の光変調素子を制御する。そして、上述したように、プロジェクター装置90により、スクリーン40に第2投写画像として形成される。なお、この第2投写画像の投写倍率は、画像取得光学部22で設定した倍率と同様となる。また、ステップS204で、傾き補正が行われているため、その傾きも考慮した形状として投写される。必要に応じて、改めて測定の原点を選択決定してもよい。
【0105】
次に、ステップS210に移行する。ステップS210からステップS212は、被測定物5を実際に測定するステップとなる。ステップS210では、被測定物5の被測定部位を実際に測定する。測定の方法は、第1実施形態と同様に、第1投写画像の被測定物5の測定したい部位(被測定部位)を、第2投写画像の対応する部位に一致させてその変位を測定する。
【0106】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、ユーザーが、ステージ61を平面方向(X,Y方向)に移動させて、第1投写画像の被測定物5の被測定部位を、第2投写画像の対応する部位に一致させる。そして、入力部66により、その位置を読み込ませる入力を行う。この入力信号により、ステージ制御部38では、ステージ61のX,Y方向の変位(移動量)を変位取得部87に出力する。変位取得部87は、入力した変位を変位データとして取得する。そして、変位量算出部88は、変位取得部87から出力された変位データに基づいて変位量を算出する。なお、このとき、変位量算出部88は、前述した傾き補正による補正用座標系に基づいた補正演算を行い、併せて倍率校正補正値に基づいた演算を行うことで変位量を算出する。なお、算出された変位量は、表示部71に表示される。
【0107】
なお、制御装置80内に保存される変位量算出用の制御プログラムなどを実行させることにより、第1実施形態と同様に、入力部66への入力がない場合にも、ユーザーが、ステージ61を平面方向に移動させた場合、その移動に合わせて、その変位をステージ制御部38から変位取得部87に常に出力させることもできる。その場合、上記制御プログラムにより、演算部86で補正用座標系を保存した以降において、変位量算出部88では、変位取得部87から出力される変位データが入力するタイミングに併せて、上述と同様に演算を行い、変位量を算出することもできる。なお、算出された変位量は、表示部71に表示することもできる。
【0108】
なお、第1実施形態と同様に、孔形状の中心座標のズレ量や、孔形状の第2投写画像とのズレ量を変位量として算出することもできる。また、外形形状の、第2投写画像とのズレ量を変位量として算出することもできる。
【0109】
また、ステップS211、ステップS212により、第1実施形態と同様に、垂直方向(Z方向)の変位量も測定することができる。ステップS211では、被測定物5の基準となる基準面に焦点を合わせる。詳細には、被測定物5を載置するステージ61を垂直方向(Z軸方向)に移動させて焦点を基準面に合わせる。焦点を基準面に合わせた後、ユーザーは、入力部66に、焦点を合わせたことを入力する。この入力信号により、演算部86は、ステージ制御部38からのZ方向の位置データを基準面のデータとして記憶する。
【0110】
次に、ステップS212では、第1実施形態と同様に、実際に被測定物5の被測定部位の面の測定を行う。詳細には、被測定物5を載置するステージ61を垂直方向(Z軸方向)に移動させて、被測定部位の面に焦点を合わせる。焦点を合わせた後、ユーザーは、入力部66に、焦点を合わせたことを入力する。この入力信号により、ステージ制御部38は、Z方向の位置を変位取得部87に出力し、変位取得部87から出力された変位データにより、変位量算出部88で、変位量を算出する。なお、算出された変位量は、表示部71に表示する。
【0111】
なお、制御装置80内に保存される変位量算出用の制御プログラムなどを実行させることにより、第1実施形態と同様に、入力部66への入力がない場合にも、ユーザーが、ステージ61を垂直方向に移動させた場合、その移動に合わせて、その変位をステージ制御部38から変位取得部87に常に出力させることもできる。その場合、上記制御プログラムにより、演算部86で基準面のデータを記憶した以降において、変位量算出部88では、変位取得部87から出力される変位データが入力するタイミングに併せて、演算を行い、変位量を算出することもできる。なお、算出された変位量は、表示部71に表示することもできる。
【0112】
また、本実施形態のプロジェクター式測定装置2は、第2投写画像の基となる、被測定物5の設計データを保存しているため、第2投写画像との比較を行わなくても、第1投写画像の被測定部位を1点入力または多点入力することにより、その点に対応する設計データと比較して、変位量を算出することができる。
【0113】
次に、本実施形態では、ステップS213に移行する。ステップS213では、投写倍率の変更を行うか否かの選択を行う。詳細には、プロジェクター装置90の備えるズーム機構部96により、更に拡大または縮小を行うか否かを選択する。ここで、投写倍率を変更する場合は、ステップS214に移行する。
【0114】
ステップS214では、ユーザーは、入力部66などからの入力により、所望する倍率に変更を行う。ズーム駆動制御部89は、入力部66からの信号により、対応した倍率となるように、ズーム機構部96を駆動する。これにより、スクリーン40に形成される第1、第2投写画像の倍率が変更される。
【0115】
ステップS214が終了した場合、ステップS206に戻り、以降は、上述したように、ステップS214で倍率変更した第1、第2投写画像に対して、倍率校正を行い、倍率補正値としての倍率校正補正値を再度算出し、被測定物5の測定を行うことになる。
【0116】
なお、ステップS213で、投写倍率の変更を行わない場合には、ステップS215に移行し、被測定物5を載置台10から取り外して、被測定物5の測定が終了する。
【0117】
上述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態のプロジェクター式測定装置2は、載置台10、照明部16、画像取得部21、画像制御部81、光学変換部(第1光学変換部91、第2光学変換部92)、投写光学部95、スクリーン40、変位取得部87、および変位量算出部88を備えている。そして、第1光学変換部91は、第1光源から射出される光束を、画像制御部81から出力される第1投写画像データに基づいて第1光変調素子により変調し、第1投写画像データを第1投写用光学像に変換して出力する。また、第2光学変換部92は、第2光源から射出される光束を、画像制御部81から出力される第2投写画像データに基づいて第2光変調素子により変調し、第2投写画像データを第2投写用光学像に変換して出力する。このような光学変換部は、いわゆるプロジェクターの動作を行う。また、投写光学部95は、第1投写用光学像と第2投写用光学像とを投写し、スクリーン40に第1投写画像と第2投写画像とを形成させる。これにより、比較的大きな被測定物5に対しても拡大投写できるプロジェクター式測定装置2が可能となる。なお、被測定物5の大きさと、必要とする拡大倍率に応じて、画像取得光学部22、投写光学部95、スクリーン40などを交換することもできるため、プロジェクター式測定装置2の利便性を更に向上できる。また、変位取得部87では、スクリーン40に形成された、第1投写画像と第2投写画像との変位を変位データとして取得し、変位量算出部88により、変位取得部87から出力される変位データに基づいて変位量を算出する。これにより、高精度な測定が可能なプロジェクター式測定装置2が実現できる。
【0118】
本実施形態のプロジェクター式測定装置2によれば、移動部としてのステージ61により、被測定物5を載置する載置台10を平面方向に移動し、スクリーン40に形成された第1投写画像の被測定部位を、第2投写画像の被測定部位に対応する部位に一致させた場合、入力部66により、変位取得部87に変位として取得させるための入力を行う。変位取得部87は、この変位を変位データとして取得する。このような構成と動作により、被測定物5の平面方向の高精度な測定が可能となる。
【0119】
本実施形態のプロジェクター式測定装置2によれば、移動部としてのステージ61により、被測定物5を載置する載置台10を垂直方向に移動し、スクリーン40に形成された第1投写画像の被測定部位の焦点を合わせた場合、入力部66により、変位取得部87に変位として取得させるための入力を行う。変位取得部87は、この変位を変位データとして取得する。このような構成と動作により、被測定物5の垂直方向の高精度な測定が可能となる。
【0120】
本実施形態のプロジェクター式測定装置2によれば、倍率補正部材としての倍率校正用シートを用いて第1投写画像の投写倍率を補正し、変位量算出部88は、倍率補正値に基づいて変位量を算出するため、更に高精度な測定を行うことができる。
【0121】
本実施形態のプロジェクター式測定装置2によれば、プロジェクター装置90を備えているため、短い投写距離で大きな拡大率を得ることができる。
【0122】
従来の投影測定装置では、傾き補正を行う場合には、上述した基準線に被測定物の辺などを一致させる方法がとられており、ステージを平面方向で回転させる操作を行っていた。また、回転しても一致させられない場合には、被測定物の向きも変えるなどしていた。しかし、本実施形態のプロジェクター式測定装置2によれば、回転操作や、被測定物5の向きを変えるなどの操作が必要なく、簡易な操作で効率的に傾き補正を行うことが可能となる。
【0123】
本実施形態のプロジェクター式測定装置2によれば、第1、第2投写用光学像を任意の倍率に変更可能なズーム機構部96を備え、変位量算出部88は、変更した倍率を含めて変位量を算出することができる。これにより、例えば、被測定物5の被測定部位が小さく見づらい場合などには、任意の倍率で拡大して測定することができる。また、逆に、被測定物5の被測定部位が拡大し過ぎている場合などには、任意の倍率で縮小して測定することができる。従って、被測定物5の細かい部位も高精度に測定できると共に、測定の利便性を更に向上したプロジェクター式測定装置2が実現できる。
【0124】
なお、上述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や改良などを加えて実施することが可能である。変形例を以下に述べる。
【0125】
前記第2実施形態では、画像制御部81は、第1投写画像制御部83と第2投写画像制御部85とを有している。また、プロジェクター装置90は、第1光源と第1光変調素子(液晶パネル91a)を有する第1光学変換部91と、第2光源と第2光変調素子(液晶パネル92a)を有する第2光学変換部92とを有している。そして、第1投写画像制御部83で取得画像データを第1投写画像データに変換し、第1光学変換部91で第1投写用光学像に変換する。また、第2投写画像制御部85で基本形状データを第2投写画像データに変換し、第2光学変換部92で第2投写用光学像に変換する。しかし、これに限られず、画像制御部は、第1画像取得制御部82で取得した取得画像データに基づく第1投写画像データと、第2画像取得制御部84で取得した基本形状データに基づく第2投写画像データと、を含んで合成された投写画像データとして出力してもよい。この場合、プロジェクター装置は、光源と光変調素子を有する光学変換部を備え、画像制御部から出力される投写画像データに基づき、光変調素子により変調し、第1投写用光学像と第2投写用光学像とを含んで合成された投写用光学像に変換して出力することでよい。この構成により、スクリーンは、投写用光学像が投写され、第1投写画像データによる第1投写画像と第2投写画像データによる第2投写画像とを形成する。この構成によっても、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0126】
前記第1実施形態では、製造された製品となる被測定物5と、被測定物5の設計図となる基本形状図シート6とを用いて、製品(被測定物5)の設計図(基本形状図シート6)とのズレ量(変位量)を測定している。しかし、例えば、射出成形などにより製品(被測定物5)を製造する場合には、射出成形用の金型が必要となり、その金型を製造するための金型用の設計図が必要となる。この射出成形により製造される製品は、成形の際に収縮が発生するため、金型は、この収縮率を考慮して製造されている。言い換えると、金型用の設計図は、製品の設計図に対して成型時の収縮率を補正して設計されている。
【0127】
ここで、製品(被測定物5)の成形用の金型と、金型用の設計図とのズレ量(変位量)を測定することも可能である。この場合、金型用の設計図を用いることなく、被測定物5の設計図となる基本形状図シート6を用いて行うことができる。この場合、基本形状図シート6は、収縮率を加味して拡大する必要はなく、金型を測定するための拡大倍率と同様の拡大倍率でよい。そして、例えば、収縮率が3%であり、拡大倍率が100倍である場合、金型の画像を100倍で取得した画像取得部21からの取得画像データを、画像制御部31で、1/1.03を乗じた倍率となるように画像処理を行い、投写光学部52から投写することでよい。そして、測定により得られた変位データに対して、変位量算出部37で、1.03を乗じた補正を行い変位量として算出することにより、測定することができる。これにより、金型が正確に製造されているかなどが容易で高精度に測定することができ、プロジェクター式測定装置1の利便性が更に向上する。
【0128】
なお、上述した変形例は、前記第2実施形態でも適用できる。詳細には、前記第2実施形態において、製品(被測定物5)の成形用の金型と、金型用の設計図とのズレ量(変位量)を測定することも可能である。この場合、金型用の基本形状データに基づく投写画像を用いることなく、第2実施形態と同様に、被測定物5の基本形状データに基づく第2投写画像を用いて行うことができる。なお、測定方法は上述したと同様となる。これにより、金型が正確に製造されているかなどが容易で高精度に測定することができ、プロジェクター式測定装置2の利便性が更に向上する。
【0129】
前記第2実施形態では、前記第1実施形態と同様に、ステージ61を移動させて、被測定物5の変位量を測定している。しかし、前記第2実施形態では、ステージ61を移動させずに、新たな入力部を備えて被測定物5の変位量を測定することも可能である。
【0130】
その場合、入力部は、例えば、スクリーン40の前面に赤外線センサーを縦横方向に配置し、スクリーン40上の点をピックした場合、そのピックした位置を検出させる構成でもよい。または、入力部は、スクリーン40の前面に圧力センサーや静電型センサーを配置し、スクリーン40上の点を所定の強さで押圧した場合、その押圧した位置を検出させる構成でもよい。または、入力部は、PC(Personal Computer)のマウス操作と同様のシステムを用いて、スクリーン40に形成される第1、第2投写画像を見ながら、所望の位置にカーソルを移動させてクリックした場合、そのカーソルの位置を検出させる構成でもよい。
【0131】
第1投写画像の被測定物5の被測定部位と第2投写画像の対応する部位のズレ量(変位量)を測定する場合、上述したように構成される入力部を使用して、双方の部位の点(位置)を変位取得部87に取得させる。これにより、変位取得部87は、入力された位置(または変位)を位置データ(変位データ)として取得する。そして、変位量算出部88は、中心座標や外形などをそれぞれ演算し、被測定部位の変位量を算出する。これにより、ユーザーは、ステージ61を移動させずに、第1投写画像と第2投写画像とを見ながら、第1投写画像(被測定物5)の被測定部位の位置入力や、比較する第2投写画像の、被測定部位に対応する部位の位置入力を容易に行うことができ、変位量を算出させることができる。従って、プロジェクター式測定装置2の利便性を更に向上させることができる。
【0132】
なお、入力部を備える場合、入力されたことをユーザーに知らせる手段(音や光などを用いた手段)を備えることで、入力が受け付けられたか否かが確認でき、入力を確実で効率的に行うことができる。これにより、プロジェクター式測定装置2による測定の利便性を向上させることができる。
【0133】
前記第2実施形態では、第1光学変換部91は第1光源を有し、第2光学変換部92は第2光源を有している。しかし、これに限られず、第1光源と第2光源とは、基本的に1つの光源を用いる構成としてもよい。その場合、1つの光源から射出される光束を2つに分配し、それぞれを第1光源、第2光源として、第1光変調素子(液晶パネル91a)と第2光変調素子(液晶パネル92a)とに光束を入射させる構成とすることができる。
【0134】
前記第1、第2実施形態のプロジェクター装置50,90は、スクリーン40に対して、スクリーン40の背面側から投写用光学像を投写している。言い換えると、画像制御部31,81は、スクリーン40に対して背面投写が行える投写画像データを出力している。しかし、これに限られず、画像制御部31,81は、前面投写が行える投写画像データを出力してもよい。なお、前面投写を行う場合、スクリーンは、反射型のスクリーンに変更することで、投写画像の輝度やコントラストを向上できる。これにより、ユーザーは、投写画像の見易さや測定操作のし易さなどに応じていずれかを選択することが可能となる。また、プロジェクター式測定装置を構成する構成部の設置の自由度を向上させる。従って、プロジェクター式測定装置の設置性や操作性を向上させることができる。
【0135】
前記第1、第2実施形態において、スクリーン40は、透過型のスクリーンを用いているが、これに限られず、プロジェクター式測定装置1,2の設置される部屋などの壁面をスクリーン(投写対象面)として利用し、上述したように、前面投写を行うことでもよい。これにより、プロジェクター式測定装置の設置性を向上させることができる。
【0136】
前記第1、第2実施形態において、制御装置30,80およびプロジェクター装置50,90は、ケーブルで接続されている。しかし、これに限られず、無線通信により接続して遠隔操作を可能とすることでもよい。これにより、プロジェクター式測定装置の設置性を更に向上させることができ、制御装置30,80の設置場所とは異なる場所にプロジェクター装置50,90などを設置してその場所の構造物の壁面などをスクリーン(投写対象面)として利用することが可能となり、プロジェクター式測定装置の利便性を更に向上させる。
【0137】
前記第2実施形態では、画像制御部81は、第1投写画像制御部83と第2投写画像制御部85とを有している。また、プロジェクター装置90は、第1光源と第1光変調素子(液晶パネル91a)を有する第1光学変換部91と、第2光源と第2光変調素子(液晶パネル92a)を有する第2光学変換部92とを有している。そのため、第1投写画像制御部83から出力する第1投写画像データと、第2投写画像制御部85から出力する第2投写画像データとを異なる色に変換したデータとして出力してもよい。これにより、スクリーン40に形成される第1投写画像と第2投写画像との色を異ならせることができる。これにより、第1投写画像と第2投写画像とが比較し易くなり、変位量測定のための入力操作性を向上させることができる。更に、この構成は、カラーブレイクアップ現象を低減するため、1つの光学変換部に色順次駆動により多色を投写することも可能となる。
【0138】
前記第1、第2実施形態のプロジェクター装置50,90は、光変調素子として透過型の液晶パネルを用いている。しかし、これに限られず、反射型の液晶パネルなど、反射型の光変調素子を用いることも可能である。
【0139】
前記第1、第2実施形態のプロジェクター装置50,90は、光変調素子としての液晶パネルを用いている。しかし、これに限られず、入射光束を画像信号に基づいて変調するものであればよく、マイクロミラー型光変調素子などを採用してもよい。なお、マイクロミラー型光変調素子としては、例えば、DMD(Digital Micromirror Device)を用いることができる。
【符号の説明】
【0140】
1,2…プロジェクター式測定装置、5…被測定物、6…基本形状図シート、10…載置台、16…照明部、17…反射用照明部、18…透過用照明部、21…画像取得部、22…画像取得光学部、31…画像制御部、36…変位取得部、37…変位量算出部、40…スクリーン、51…光学変換部、52…投写光学部、66…入力部、71…表示部、81…画像制御部、87…変位取得部、88…変位量算出部、91…第1光学変換部、92…第2光学変換部、95…投写光学部、96…ズーム機構部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を載置する載置台と、
前記被測定物を照明する照明部と、
前記被測定物を画像として所定倍率で光学的に取得する画像取得部と、
前記画像取得部から出力される取得画像データに基づいて当該取得画像データを投写画像データとして出力して制御する画像制御部と、
光源および光変調素子を有し、前記光源から射出される光束を、前記画像制御部から出力される前記投写画像データに基づいて前記光変調素子により変調し、前記投写画像データを投写用光学像に変換して出力する光学変換部と、
前記光学変換部から出力された前記投写用光学像を前記所定倍率で投写する投写光学部と、
前記投写用光学像が投写されて投写画像を形成すると共に、前記所定倍率で作成された前記被測定物の基本形状図シートを載置するスクリーンと、
前記スクリーンに形成された前記投写画像と前記スクリーンに載置された前記基本形状図シートとの変位を変位データとして取得する変位取得部と、
前記変位取得部から出力された前記変位データに基づいて変位量を算出する変位量算出部と、
を備えることを特徴とするプロジェクター式測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクター式測定装置において、
前記載置台に設置されて前記載置台を平面方向に移動する移動部と、
前記移動部を移動させ、前記スクリーンに形成された前記投写画像の被測定部位を、前記基本形状図シートの前記被測定部位に対応する部位に一致させた場合、前記変位として前記変位取得部に取得させるための入力を行う入力部と、を備え、
前記変位取得部は、前記入力部により前記変位を前記変位データとして取得することを特徴とするプロジェクター式測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載のプロジェクター式測定装置において、
前記載置台に設置されて前記載置台を垂直方向に移動する移動部と、
前記移動部を移動させ、前記スクリーンに形成された前記投写画像の被測定部位の焦点を合わせた場合、前記変位として前記変位取得部に取得させるための入力を行う入力部と、を備え、
前記変位取得部は、前記入力部により前記変位を前記変位データとして取得することを特徴とするプロジェクター式測定装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のプロジェクター式測定装置において、
前記投写画像の投写倍率を補正するための倍率補正部材を有し、
前記変位量算出部は、前記倍率補正部材の測定による倍率補正値に基づいて前記変位量を算出することを特徴とするプロジェクター式測定装置。
【請求項5】
被測定物を載置する載置台と、
前記被測定物を照明する照明部と、
前記被測定物を画像として所定倍率で光学的に取得する画像取得部と、
前記画像取得部から出力される取得画像データに基づく第1投写画像データと、前記被測定物の基本形状データに基づく第2投写画像データとを含む投写画像データとして出力して制御する画像制御部と、
光源および光変調素子を有し、前記光源から射出される光束を、前記画像制御部から出力される前記投写画像データに基づいて前記光変調素子により変調し、第1投写用光学像と第2投写用光学像とを含む投写用光学像に変換して出力する光学変換部と、
前記光学変換部から出力された、前記投写用光学像を前記所定倍率で投写する投写光学部と、
前記投写用光学像が投写され、前記第1投写画像データによる第1投写画像と前記第2投写画像データによる第2投写画像とを形成するスクリーンと、
前記スクリーンに形成された、前記第1投写画像と前記第2投写画像との変位を変位データとして取得する変位取得部と、
前記変位取得部から出力された前記変位データに基づいて変位量を算出する変位量算出部と、
を備えることを特徴とするプロジェクター式測定装置。
【請求項6】
被測定物を載置する載置台と、
前記被測定物を照明する照明部と、
前記被測定物を画像として所定倍率で光学的に取得する画像取得部と、
前記画像取得部から出力される取得画像データに基づいて当該取得画像データを第1投写画像データとして出力して制御すると共に、前記被測定物の基本形状データに基づいて当該基本形状データを第2投写画像データとして出力して制御する画像制御部と、
第1光源および第1光変調素子を有し、前記第1光源から射出される光束を、前記画像制御部から出力される前記第1投写画像データに基づいて前記第1光変調素子により変調し、前記第1投写画像データを第1投写用光学像に変換して出力すると共に、第2光源および第2光変調素子を有し、前記第2光源から射出される光束を、前記画像制御部から出力される前記第2投写画像データに基づいて前記第2光変調素子により変調し、前記第2投写画像データを第2投写用光学像に変換して出力する光学変換部と、
前記光学変換部から出力された、前記第1投写用光学像と前記第2投写用光学像とを前記所定倍率で投写する投写光学部と、
前記第1投写用光学像と前記第2投写用光学像とが投写され、第1投写画像と第2投写画像とを形成するスクリーンと、
前記スクリーンに形成された、前記第1投写画像と前記第2投写画像との変位を変位データとして取得する変位取得部と、
前記変位取得部から出力された前記変位データに基づいて変位量を算出する変位量算出部と、
を備えることを特徴とするプロジェクター式測定装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のプロジェクター式測定装置において、
前記載置台に設置されて前記載置台を平面方向に移動する移動部と、
前記移動部を移動させ、前記スクリーンに形成された前記第1投写画像の被測定部位を、前記第2投写画像の前記被測定部位に対応する部位に一致させた場合、前記変位として前記変位取得部に取得させるための入力を行う入力部と、を備え、
前記変位取得部は、前記入力部により前記変位を前記変位データとして取得することを特徴とするプロジェクター式測定装置。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載のプロジェクター式測定装置において、
前記載置台に設置されて前記載置台を垂直方向に移動する移動部と、
前記移動部を移動させ、前記スクリーンに形成された前記第1投写画像の被測定部位の焦点を合わせた場合、前記変位として前記変位取得部に取得させるための入力を行う入力部と、を備え、
前記変位取得部は、前記入力部により前記変位を前記変位データとして取得することを特徴とするプロジェクター式測定装置。
【請求項9】
請求項5または請求項6に記載のプロジェクター式測定装置において、
前記スクリーンに形成された、前記第1投写画像の被測定部位と、前記第2投写画像の前記被測定部位に対応する部位と、の双方の位置を前記変位取得部に取得させるための入力を行う入力部を備えることを特徴とするプロジェクター式測定装置。
【請求項10】
請求項5〜請求項9のいずれか一項に記載のプロジェクター式測定装置において、
前記第1投写画像および前記第2投写画像の投写倍率を補正するための倍率補正部材を有し、
前記変位量算出部は、前記倍率補正部材の測定による倍率補正値に基づいて前記変位量を算出することを特徴とするプロジェクター式測定装置。
【請求項11】
請求項5〜請求項10のいずれか一項に記載のプロジェクター式測定装置において、
前記第1投写用光学像と前記第2投写用光学像とを任意の倍率で投写するズーム機構部を備え、
前記変位量算出部は、前記倍率を含めて前記変位量を算出することを特徴とするプロジェクター式測定装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載のプロジェクター式測定装置において、
前記画像制御部は、前記スクリーンに対して背面投写または前面投写が行える前記投写画像データを出力することを特徴とするプロジェクター式測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−27675(P2011−27675A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176148(P2009−176148)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】