説明

プローブ情報管理システム、車載端末、およびプローブ情報管理装置

【課題】プローブ情報の収集における無駄な通信コストを抑えることを可能にする。
【解決手段】VICSセンタ3は、ナビゲーション装置1から収集したプローブ情報をもとに、統計処理必要量のプローブ情報が収集済みの収集済み道路と統計処理必要量のプローブ情報が収集済みでない非収集済み道路とを判別する判別部34を備え、判別部34で収集済み道路と非収集済み道路とを判別した情報である収集状況情報をナビゲーション装置1に送信し、ナビゲーション装置1は、VICSセンタ3から送信された収集状況情報をもとに、収集済み道路についてのプローブ情報のVICSセンタ3への送信を行わないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブ情報管理システム、車載端末、およびプローブ情報管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両側から送信される当該車両の位置情報や走行情報などを含むプローブ情報を収集して統計処理を行い、渋滞情報などの道路交通情報を作成するプローブ情報管理装置が従来から知られている。しかしながら、上述したプローブ情報管理装置では、車両の走行台数が少ない道路については、統計処理に必要な台数分のプローブ情報が得られず、精度の高い道路交通情報を作成できないという問題点があった。
【0003】
そこで、この問題を解決する手段として、例えば、特許文献1には、プローブ情報の少ない地域(少数地域)を抽出し、抽出した少数地域の情報を車両側に送信するとともに、車両側から少数地域のプローブ情報を受信した場合に車両側に対して所定のサービスを提供することによって、少数地域の走行を促して少数地域となる地域を減らす技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−93560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、車両側ではプローブ情報を逐次蓄積しており、蓄積したプローブ情報を所定の時間ごとや各リンクの走行ごとなどの所定のタイミングにおいて常にプローブ情報管理装置に送信するようになっている。よって、特許文献1に開示の技術では、統計処理に必要な台数分のプローブ情報が既に得られた地域のプローブ情報であってもプローブ情報管理装置に送信し続けてしまい、車両側およびプローブ情報管理装置側の両方にとって無駄な通信コストがかかるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、プローブ情報の収集における無駄な通信コストを抑えることを可能にするプローブ情報管理システム、車載端末、およびプローブ情報管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のプローブ情報管理システムにおいては、プローブ情報管理装置が、車載端末から収集したプローブ情報をもとに、道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集された道路である収集済み道路と道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集されていない道路である非収集済み道路とを判別する判別手段を備え、判別手段で判別した収集済み道路および非収集済み道路の情報を車載端末に送信し、車載端末が、プローブ情報管理装置から送信された収集済み道路および非収集済み道路の情報をもとに、収集済み道路についてのプローブ情報のプローブ情報管理装置への送信を行わないようにすることになる。
【0008】
また、請求項2のプローブ情報管理システムにおいては、プローブ情報管理装置が、車載端末から収集したプローブ情報をもとに、道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集された道路である収集済み道路と道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集されていない道路である非収集済み道路とを判別する判別手段を備え、判別手段で判別した収集済み道路および非収集済み道路の情報のうちの少なくとも非収集済み道路の情報を車載端末に送信するとともに、収集済み道路についてのプローブ情報の送信を車載端末に行わせないようにする指示である送信制限指示を送信し、車載端末が、プローブ情報管理装置から送信された送信制限指示をもとに、収集済み道路についてのプローブ情報のプローブ情報管理装置への送信を行わないようにすることになる。
【0009】
請求項1および2の構成によれば、道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集された道路についてのプローブ情報を車載端末からプローブ情報管理装置に送信しないようになるので、車載端末およびプローブ情報管理装置の両方にとって無駄な通信コストがかからなくなる。従って、プローブ情報の収集における無駄な通信コストを抑えることが可能になる。
【0010】
請求項3の構成によれば、車載端末の表示器における電子地図上に非収集済み道路を収集済み道路と区別可能に表示させるので、ユーザが非収集済み道路を認識することが可能になる。また、ユーザに非収集済み道路を認識してもらうことにより、道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集されていない道路の走行を促すことができる。
【0011】
請求項4の構成によれば、車載端末から非収集済み道路についてのプローブ情報を受信した場合に、プローブ情報管理装置が当該車載端末に対して所定のサービスを提供するので、サービスの提供によってユーザに利益を与えることで、道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集されていない道路の走行をさらに促すことができる。
【0012】
請求項5の車載端末においては、プローブ情報管理装置でプローブ情報をもとに判別されてプローブ情報管理装置から送信される、道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集された道路である収集済み道路と道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集されていない道路である非収集済み道路との情報を受信し、プローブ情報管理装置から送信された収集済み道路および非収集済み道路の情報をもとに、収集済み道路についてのプローブ情報の前記プローブ情報管理装置への送信を行わないようにすることになる。
【0013】
これによれば、道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集された道路についてのプローブ情報を車載端末がプローブ情報管理装置に送信しないようになるので、プローブ情報の収集における無駄な通信コストを抑えることが可能になる。
【0014】
請求項6のプローブ情報管理装置においては、車載端末から収集したプローブ情報をもとに、道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集された道路である収集済み道路と道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集されていない道路である非収集済み道路とを判別する判別手段を備え、判別手段で判別した収集済み道路および非収集済み道路の情報のうちの少なくとも非収集済み道路の情報を車載端末に送信するとともに、収集済み道路についてのプローブ情報の送信を車載端末に行わせないようにする指示である送信制限指示を送信することになる。
【0015】
これによれば、プローブ情報管理装置が、道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集された道路についてのプローブ情報を車載端末から送信させないようにするので、プローブ情報の収集における無駄な通信コストを抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】プローブ情報管理システム100の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】ナビゲーション装置2の概略的な構成を示すブロック図である。
【図3】VICSセンタ3の概略的な構成を示すブロック図である。
【図4】プローブ情報の収集状況の情報の一例を示す模式図である。
【図5】VICSセンタ3での収集状況情報の送信までの処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【図6】道路色変更処理を説明するための模式図である。
【図7】ナビゲーション装置1でのプローブ情報送信制限処理に関連する処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用されたプローブ情報管理システム100の概略的な構成を示すブロック図である。図1に示すプローブ情報管理システム100は、ナビゲーション装置1およびVICS(登録商標)センタ3を含んでいる。
【0018】
ナビゲーション装置1は、経路探索や経路案内等の周知のナビゲーション機能の他に、プローブ情報の収集機能を備えている。ここで、図2を用いてナビゲーション装置1の概略的な構成について説明を行う。図2は、ナビゲーション装置1の概略的な構成を示すブロック図である。図2に示すようにナビゲーション装置1は、位置検出器11、地図データ入力器16、記憶媒体17、外部メモリ18、表示装置19、音声出力装置20、音声認識ユニット21、操作スイッチ群22、リモートコントロール端末(以下リモコン)23、リモコンセンサ24、送受信機25、および制御装置26を備えている。なお、ナビゲーション装置1が請求項の車載端末に相当する。
【0019】
位置検出器11は、自車両の鉛直方向周りの角速度を検出するジャイロスコープ12、自車両の加速度を検出する加速度センサ13、各転動輪の回転速度から自車両の速度を検出する車輪速センサ14、および人工衛星からの電波に基づいて車両の現在位置を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機15を有しており、定期的に自車両の現在位置の検出を行う。
【0020】
これらの各センサ12〜15は、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては上述した内の一部で構成してもよく、さらに、図示しない地磁気センサやステアリングの回転センサ等を用いてもよい。
【0021】
地図データ入力器16は、記憶媒体17が装着され、その記憶媒体17に格納されている地図データを含む各種データを入力するための装置である。地図データには、道路を示すリンクデータとノードデータとが含まれる。なお、リンクとは、地図上の各道路を交差・分岐・合流する点等の複数のノードにて分割したときのノード間を結ぶものであり、各リンクを接続することにより道路が構成される。リンクデータは、リンクを特定する固有番号(リンクID)、リンクの長さを示すリンク長、リンク方向、リンク方位、リンクの始端及び終端ノード座標(緯度・経度)、道路名称、道路種別、一方通行属性、道路幅員、車線数、右折・左折専用車線の有無とその専用車線の数、および制限速度等の各データから構成される。
【0022】
一方、ノードデータは、地図上の各道路が交差、合流、分岐するノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、および交差点種類等の各データから構成される。
【0023】
また、記憶媒体17には、各種施設の種類、名称、住所のデータなども記憶されており、それらのデータは経路探索の際の目的地設定などに用いられる。なお、記憶媒体17としては、CD−ROMまたはDVD−ROM、メモリカード、HDD等が用いられる。
【0024】
外部メモリ18は、HDD等の書き込み可能な大容量記憶装置である。外部メモリ18には大量のデータや電源をOFFしても消去してはいけないデータを記憶したり、頻繁に使用するデータを地図データ入力器16からコピーして利用したりする等の用途がある。
【0025】
表示装置19は、車両の走行を案内するための地図等を表示するものであって、例えばフルカラー表示が可能なものであり、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等を用いて構成することができる。なお、表示装置19が請求項の表示器に相当する。音声出力装置20は、スピーカ等から構成され、制御装置26の指示に基づいて、経路案内時の案内音声などを出力する。音声認識ユニット21は、図示しないマイクから入力された音声を認識し、その認識した音声に対応する制御コマンドを制御装置26へ出力する。制御装置26では、この制御コマンドに従って処理を実行する。
【0026】
操作スイッチ群22は、例えば表示装置19と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられ、スイッチ操作により制御装置26へ各種機能の操作指示を行う。リモコン23には複数の操作スイッチ(図示せず)が設けられ、スイッチ操作によりリモコンセンサ24を介して各種指令信号を制御装置26に入力することにより、操作スイッチ群22と同じ機能を制御装置26に対して実行させることが可能である。
【0027】
送受信機25は、ネットワークや道路に敷設されたビーコンや各地のFM放送局を介してVICSセンタから配信される道路交通情報等の情報を受信する。また、送受信機25は、制御装置26の指示に従って、プローブ情報の収集機能によって収集したプローブ情報を外部(本実施形態ではVICSセンタ3)へ送信する。なお、送受信機25からVICSセンタ3へのプローブ情報の送信は、例えばDCM(data communication module)等のテレマティクス通信に用いられる車載通信モジュールを介して行う構成としてもよいし、例えばBluetooth(登録商標)等で接続した携帯電話機を介して行う構成としてもよい。また、DSRC通信用モジュールを介して行う構成としてもよいし、他の無線通信用モジュールを介して行う構成としてもよい。
【0028】
制御装置26は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成される。そして、制御装置26は、位置検出器11、地図データ入力器16、外部メモリ18、音声認識ユニット21、操作スイッチ群22、リモコンセンサ24、送受信機25から入力された各種情報に基づき、ナビゲーション機能としての処理やプローブ情報の収集機能としての処理(以下、プローブ情報収集処理)やプローブ情報の送信処理(以下、プローブ情報送信処理)や地図上の道路色の変更処理(以下、道路色変更処理)やプローブ情報の送信制限処理(以下、プローブ情報送信制限処理)等を実行する。
【0029】
プローブ情報収集処理では、加速度センサ13から得られる加減速の情報、車輪速センサ14から得られる走行速度の情報、ナビゲーション機能によって得られる走行軌跡の情報、ブレーキECU等から得られるABS等のブレーキシステムの作動状況の情報、ワイパースイッチから得られるワイパーの作動状況の情報などの車両の走行情報や位置検出器11で検出した現在位置から定まる走行位置の情報(位置情報)といったプローブ情報を収集する。収集したプローブ情報は、走行情報、その走行情報が得られた走行位置の情報、その走行情報が得られた日時等の時間情報を紐付けて外部メモリ18等のメモリに蓄積する。時間情報については、図示しないタイマー回路やGPS受信機15を介してGPS衛星から得られる時間情報等を利用する構成とすればよい。
【0030】
プローブ情報は、例えば道路区間単位で扱う構成としてもよい。この場合には、自車両の過去の走行経路に対応した複数の道路区間ごとに、各道路区間を特定可能な位置情報(例えば道路区間の始点の経緯度および終点の経緯度の情報)、その道路区間の走行情報、その道路区間を走行した日時の情報を紐付けて蓄積することになる。なお、前述のリンクを道路区間の単位とする構成としてもよい。この場合には、位置情報としてリンクIDを用いる構成としてもよい。本実施形態では、リンク単位でプローブ情報を扱う場合を例に挙げて以降の説明を行う。
【0031】
プローブ情報送信処理では、プローブ情報収集処理で収集して蓄積しておいたプローブ情報にナビゲーション装置1が搭載されている車両を特定するための識別情報(例えば車両やナビゲーション装置1のID)を付加し、所定のタイミングで送受信機25からVICSセンタ3へ送信させる。ここで言うところの所定のタイミングとは、例えば5分ごとなどの一定の時間ごとであってもよいし、各リンクの走行ごとや一定の走行距離ごとなどであってもよい。本実施形態では、各リンクの走行ごとにプローブ情報を送信する場合を例に挙げて以降の説明を行う。また、道路色変更処理およびプローブ情報送信制限処理については後に詳述する。
【0032】
図1に戻って、VICSセンタ3は、地上に定置された基地局であって、サーバから構成されている。VICSセンタ3を構成するサーバが請求項のプローブ情報管理装置に相当する。そして、VICSセンタ3は、渋滞の度合いを示す渋滞度の情報、通行に要する時間を示す区間所要時間の情報(つまり、リンク旅行時間の情報)、事故や工事などによる通行止め等の交通障害の情報、通行止めや臨時規制などの交通規制の情報等の道路交通情報をネットワークや道路に敷設されたビーコンや各地のFM放送局を介して送信(配信)する。また、VICSセンタ3は、複数の車両のナビゲーション装置1から送信されてくるプローブ情報を受信することで収集し、収集したプローブ情報を統計処理することによって道路交通情報を作成する。
【0033】
なお、VICSセンタ3は、1つのサーバからなるものであってもよいし、複数のサーバからなっているものであってもよい。例えば、道路交通情報を作成、配信するサーバとプローブ情報を収集するサーバとがそれぞれ設けられている構成としてもよい。
【0034】
ここで、図3を用いて、VICSセンタ3の概略的な構成について説明を行う。図3は、VICSセンタ3の概略的な構成を示すブロック図である。図3に示すように、VICSセンタ3は、受信部31、格納制御部32、プローブ情報データベース(DB)33、判別部34、情報収集状況格納部35、道路交通情報作成部36、道路交通情報データベース(DB)37、送信部38、およびサービス提供部39を備えている。
【0035】
受信部31は、ナビゲーション装置1から送信されたプローブ情報を受信する。格納制御部32は、受信部31が受信したプローブ情報をプローブ情報DB33に格納する。格納制御部32は、新たなプローブ情報が受信部31で受信されるごとに、受信されたプローブ情報をプローブ情報DB33に格納していくことでプローブ情報DB33にプローブ情報を蓄積していく。なお、プローブ情報DB33に蓄積されたプローブ情報は、例えばナビゲーション装置1での収集時や受信部31での受信時等から1日以上経過したものなど、所定の時間が経過したものから消去されていく構成とすればよい。
【0036】
判別部34は、プローブ情報DB33に蓄積されているプローブ情報をもとに、各リンク(つまり、各道路)について、道路交通情報を作成するための統計処理に必要な量(以下、統計処理必要量)のプローブ情報が収集されているか否かを判別する処理(以下、統計処理必要量到達判別処理)を行う。ここで言うところの統計処理必要量とは、精度の高い道路交通情報を作成するために統計学的に必要となるプローブ情報のサンプル数を示しており、要求される精度に応じて任意に設定可能な値である。
【0037】
そして、判別部34は、対象とするリンクについてのプローブ情報のサンプル数が統計処理必要量を満たしたと判別した場合には、そのリンクについてプローブ情報の収集が完了したことを示す情報収集完了フラグをオンにする。また、対象とするリンクについてのプローブ情報のサンプル数が統計処理必要量を満たしたと判別しなかった場合には、そのリンクについてプローブ情報の収集が完了したことを示す情報収集完了フラグをデフォルトのオフのままとする。つまり、判別部34は、統計処理必要量のプローブ情報が収集済みのリンク(つまり、収集済み道路)と統計処理必要量のプローブ情報が収集済みでないリンク(つまり、非収集済み道路)とを判別する。よって、判別部34が請求項の判別手段に相当する。
【0038】
判別部34は、各リンクについての情報収集完了フラグのオンオフの情報をプローブ情報の収集状況の情報(以下、収集状況情報)として情報収集状況格納部35に格納する。一例としては、図4に示すように、リンクIDと情報収集完了フラグのオンオフの情報とを紐付けたテーブルを収集状況情報として情報収集状況格納部35に格納する構成とすればよい。図4は、プローブ情報の収集状況の情報の一例を示す模式図である。
【0039】
なお、図4の例では、リンクID「A」〜「E」、および「G」〜「I」のリンクについて情報収集完了フラグがオンとなっており、リンクID「F」のリンクについて情報収集完了フラグがオフとなっている。これは、リンクID「A」〜「E」、および「G」〜「I」の道路についてはプローブ情報が道路交通情報を作成するのに必要な量だけ収集済みであり、リンクID「F」の道路についてはプローブ情報が道路交通情報を作成するのに必要な量だけ収集済みでないことを示している。
【0040】
道路交通情報作成部36は、判別部34での判別においてプローブ情報のサンプル数が統計処理必要量を満たす判別されたリンクについては、プローブ情報DB33に蓄積されている複数の車両のナビゲーション装置1から提供されたプローブ情報を統計処理することによって道路交通情報を作成する。プローブ情報を統計処理して道路交通情報を作成する方法としては公知の方法を用いる構成とすればよい。道路交通情報作成部36は、作成した道路交通情報を道路交通情報DB37に格納する。
【0041】
なお、道路交通情報作成部36は、ナビゲーション装置1から提供を受けたプローブ情報に限らず、都道府県警察や道路管理者等から提供を受けた道路交通情報も用いて道路交通情報を作成する構成としてもよい。
【0042】
送信部38は、道路交通情報DB37に格納されている道路交通情報をナビゲーション装置1に向けて送信する。例えば、ビーコンやFM放送局を介して配信する場合には道路交通情報を所定の周期ごとに送信する構成とすればよいし、ネットワークを介して配信する場合にはナビゲーション装置1側からの要求があった場合に道路交通情報を送信する構成とすればよい。また、送信部38は、道路交通情報を送信する場合に、情報収集状況格納部35に格納されている収集状況情報もナビゲーション装置1に向けて送信するものとする。
【0043】
ここで、図5を用いて、VICSセンタ3での収集状況情報の送信までの処理のフローについての説明を行う。図5は、VICSセンタ3での収集状況情報の送信までの処理のフローの一例を示すフローチャートである。図5に示すフローは、受信部31でプローブ情報を受信し、新たなプローブ情報がプローブ情報DB33に格納されたときに開始され、各リンクについて順番に処理が行われるものとする。
【0044】
ステップS1では、対象とするリンクについて、判別部34が前述の統計処理必要量到達判別処理を行い、ステップS2に移る。ステップS2では、対象とするリンクについてのプローブ情報のサンプル数が統計処理必要量を満たしたと判別した場合(ステップS2でYES)には、ステップS3に移る。また、対象とするリンクについてのプローブ情報のサンプル数が統計処理必要量を満たしたと判別しなかった場合(ステップS2でNO)には、ステップS4に移る。
【0045】
ステップS3では、情報収集状況格納部35に格納されている収集状況情報のうちの、対象とするリンクについての情報収集完了フラグを判別部34がオンにして収集状況情報を更新し、ステップS4に移る。
【0046】
ステップS4では、対象となる全リンクについてステップS1〜ステップS3の処理が済んだ場合、つまり、対象全リンク処理済みの場合(ステップS4でYES)には、ステップS5に移る。また、対象全リンク処理済みでなかった場合(ステップS4でNO)には、ステップS1に戻って次の順番のリンクについて統計処理必要量到達判別処理を行う。
【0047】
ステップS5では、送信部38が、道路交通情報を送信するときに、情報収集状況格納部35に格納されている収集状況情報もナビゲーション装置1に向けて送信し、フローを終了する。
【0048】
図3に戻って、サービス提供部39は、ナビゲーション装置1から送信されたプローブ情報のうちの位置情報(本実施形態の例ではリンクID)をもとに、情報収集状況格納部35に格納されている収集状況情報を参照する。そして、収集状況情報において、当該リンクIDに対応する情報収集完了フラグがオフであった場合には、当該プローブ情報の送信元のナビゲーション装置1のユーザに対して、所定のサービスを提供する。よって、サービス提供部39が請求項のサービス提供手段に相当する。
【0049】
なお、プローブ情報の送信元のナビゲーション装置1のユーザの特定は、プローブ情報に付加されているIDをもとに行う構成とすればよい。また、サービスの提供は、例えば、各種有償サービスの割引やクレジットカードのポイントへの変換などに利用可能なポイント、店舗で利用可能なクーポンの情報等を送信部38からナビゲーション装置1に送信することで行う構成とすればよい。これによれば、サービスの提供によってユーザに利益を与えることで、非収集済み道路の走行を促すことができる。
【0050】
続いて、ナビゲーション装置1での道路色変更処理およびプローブ情報送信制限処理についての詳細な説明を行う。道路色変更処理では、VICSセンタ3から送信される収集状況情報を送受信機25で受信すると、制御装置26がその収集状況情報をもとに、表示装置19に前述の地図データに基づく電子地図を表示させる場合に、電子地図上に非収集済み道路を収集済み道路と区別可能に表示させる制御を行う。よって、制御装置26が請求項の表示制御手段に相当する。
【0051】
詳しくは、収集状況情報において情報収集完了フラグがオフとなっているリンクIDに対応するリンク(道路)の電子地図上での表示色を、情報収集完了フラグがオンとなっているリンクIDに対応するリンクの電子地図上での表示色と異ならせて表示させる。収集状況情報が図4の例で示すのと同様の場合には、図6で示すように、電子地図上でのリンクID「F」に対応する道路Fの表示色を、リンクID「A」〜「E」、および「G」〜「I」の道路A〜E、G〜Iの表示色と異ならせて表示させることになる。これによれば、ナビゲーション装置1のユーザが非収集済み道路を認識することが可能になるので、ユーザの車両の非収集済み道路の走行を促すことが可能になる。
【0052】
なお、本実施形態では、非収集済み道路を収集済み道路と区別可能に表示させる方法として、表示色を異ならせる例を示したが、必ずしもこれに限らない。非収集済み道路を収集済み道路と区別可能な方法であれば、例えば非収集済み道路の領域を点滅表示させたりするなど、他の方法を用いる構成としてもよい。
【0053】
プローブ情報送信制限処理では、VICSセンタ3から送信される収集状況情報をもとに、統計処理必要量のプローブ情報が収集された道路についてのプローブ情報をVICSセンタ3に送信しないようにする。詳しくは、収集状況情報において情報収集完了フラグがオンとなっているリンクIDに対応するリンク(道路)についてのプローブ情報を、送受信機25から送信しないように制御装置26が制御し、情報収集完了フラグがオフとなっているリンクIDに対応するリンクについてのプローブ情報のみを送信可能とする。
【0054】
ここで、図7を用いて、ナビゲーション装置1でのプローブ情報送信制限処理に関連する処理のフローについての説明を行う。図7は、ナビゲーション装置1でのプローブ情報送信制限処理に関連する処理のフローの一例を示すフローチャートである。図7に示すフローは、あるリンクの走行を開始したときに開始されるものとする。
【0055】
まず、ステップS11では、対象リンクの走行が完了したか否かを判定する。位置検出器11で検出される車両の現在位置をもとに、対象リンクの次のリンクに現在位置が移っていた場合に、リンクの走行が完了したと判定する構成とすればよい。そして、リンクの走行が完了したと判定した場合(ステップS11でYES)には、ステップS12に移る。また、リンクの走行が完了したと判定しなかった場合(ステップS11でNO)には、ステップS11のフローを繰り返す。
【0056】
ステップS12では、収集済み道路該当判別処理を行い、ステップS13に移る。収集済み道路該当判別処理では、対象リンクが、VICSセンタ3から受信した収集状況情報において情報収集完了フラグがオンとなっているリンクIDに対応するリンクか否かを判別する。詳しくは、収集状況情報において、対象リンクのリンクIDに対応する情報収集完了フラグがオンであるか否かに応じて判別する。
【0057】
そして、ステップS13では、対象リンクのリンクIDに対応する情報収集完了フラグがオンであった場合(ステップS13でYES)には、対象リンクのプローブ情報を送受信機25から送信させず、フローを終了する。また、対象リンクのリンクIDに対応する情報収集完了フラグがオンでなかった場合(ステップS13でNO)には、ステップS14に移る。ステップS14では、対象リンクのプローブ情報を送受信機25からVICSセンタ3に送信させ、フローを終了する。
【0058】
以上の構成によれば、統計処理必要量のプローブ情報が収集された道路についてのプローブ情報をナビゲーション装置1からVICSセンタ3に送信しないようになるので、ナビゲーション装置1およびVICSセンタ3の両方にとって無駄な通信コストがかからなくなる。従って、プローブ情報の収集における無駄な通信コストを抑えることが可能になる。
【0059】
なお、前述の実施形態では、VICSセンタ3から送信された収集状況情報をもとに、ナビゲーション装置1側で収集済み道路を判別して、収集済み道路についてのプローブ情報をVICSセンタ3に送信しないようにする構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、VICSセンタ3側から収集済み道路についてのプローブ情報の送信を行わせないようにする指示(以下、送信制限指示)をナビゲーション装置1に送信し、ナビゲーション装置1側において送信制限指示に従って、収集済み道路についてのプローブ情報の送信を行わないようにする構成としてもよい。
【0060】
この場合には、VICSセンタ3の送信部38からは、収集済み道路を識別する情報(例えばリンクID)とともに送信制限指示を送信する構成とすればよい。また、ナビゲーション装置1の制御装置26は、VICSセンタ3から受信したリンクIDおよび送信制限指示に従って、収集済み道路についてのプローブ情報の送信を送受信機25に行わせないようにすればよい。また、収集済み道路についてのプローブ情報の送信を行わせない期間の情報を送信制限指示に含ませることによって、一定期間(例えば1日など)だけ収集済み道路についてのプローブ情報の送信を行わせないようにしてもよい。さらに、プローブ情報の提供が必要となった場合に、VICSセンタ3から送信制限指示を取り消す指示をナビゲーション装置1に送信してプローブ情報の提供を可能にする構成としてもよい。
【0061】
また、前述の実施形態では、ナビゲーション装置1に請求項の車載端末を適用する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。走行情報や位置情報を取得可能であって、通信機と接続可能な車載器であれば、ナビゲーション装置1以外の車載器に請求項の車載端末を適用する構成としてもよい。
【0062】
さらに、前述の実施形態では、VICSセンタ3を構成するサーバに請求項のプローブ情報管理装置を適用する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、VICSセンタ以外の道路交通情報を配信するセンタを構成するサーバに請求項のプローブ情報管理装置を適用する構成としてもよい。
【0063】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 ナビゲーション装置(車載端末)、3 VICSセンタ(プローブ情報管理装置)、11 位置検出器、16 地図データ入力器、17 記憶媒体、18 外部メモリ、19 表示装置(表示器)、20 音声出力装置、21 音声認識ユニット、22 操作スイッチ群、23 リモコン、24 リモコンセンサ、25 送受信機、26 制御装置(表示制御手段)、31 受信部、32 格納制御部、33 プローブ情報DB、34 判別部(判別手段)、35 情報収集状況格納部、36 道路交通情報作成部、37 道路交通情報DB、38 送信部、39 サービス提供部(サービス提供手段)、100 プローブ情報管理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて前記車両の位置情報および走行情報を少なくとも取得し、取得した当該情報をプローブ情報として送信する車載端末と、
前記車載端末から送信されるプローブ情報を収集して道路交通情報を作成し、作成した道路交通情報を前記車載端末に送信するプローブ情報管理装置とを含むプローブ情報管理システムであって、
前記プローブ情報管理装置は、
前記車載端末から収集したプローブ情報をもとに、前記道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集された道路である収集済み道路と前記道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集されていない道路である非収集済み道路とを判別する判別手段を備え、
前記判別手段で判別した収集済み道路および非収集済み道路の情報を前記車載端末に送信し、
前記車載端末は、
前記プローブ情報管理装置から送信された収集済み道路および非収集済み道路の情報をもとに、収集済み道路についてのプローブ情報の前記プローブ情報管理装置への送信を行わないようにすることを特徴とするプローブ情報管理システム。
【請求項2】
車両に搭載されて前記車両の位置情報および走行情報を少なくとも取得し、取得した当該情報をプローブ情報として送信する車載端末と、
前記車載端末から送信されるプローブ情報を収集して道路交通情報を作成し、作成した道路交通情報を前記車載端末に送信するプローブ情報管理装置とを含むプローブ情報管理システムであって、
前記プローブ情報管理装置は、
前記車載端末から収集したプローブ情報をもとに、前記道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集された道路である収集済み道路と前記道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集されていない道路である非収集済み道路とを判別する判別手段を備え、
前記判別手段で判別した収集済み道路および非収集済み道路の情報のうちの少なくとも非収集済み道路の情報を前記車載端末に送信するとともに、収集済み道路についてのプローブ情報の送信を前記車載端末に行わせないようにする指示である送信制限指示を送信し、
前記車載端末は、
前記プローブ情報管理装置から送信された送信制限指示をもとに、収集済み道路についてのプローブ情報の前記プローブ情報管理装置への送信を行わないようにすることを特徴とするプローブ情報管理システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記車載端末は、
電子地図を表示する表示器と、
前記プローブ情報管理装置から送信された前記非収集済み道路の情報をもとに、前記電子地図上に非収集済み道路を収集済み道路と区別可能に表示させる表示制御手段とをさらに備えることを特徴とするプローブ情報管理システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記プローブ情報管理装置は、
前記車載端末から前記非収集済み道路についてのプローブ情報を受信した場合に、当該車載端末に対して、所定のサービスを提供するサービス提供手段をさらに備えることを特徴とするプローブ情報管理システム。
【請求項5】
車両に搭載されて前記車両の位置情報および走行情報を少なくとも取得し、取得した当該情報をプローブ情報として、前記車載端末から送信されるプローブ情報を収集して作成した道路交通情報を前記車載端末に送信するプローブ情報管理装置に送信する車載端末であって、
前記プローブ情報管理装置で前記プローブ情報をもとに判別されて前記プローブ情報管理装置から送信される、前記道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集された道路である収集済み道路と前記道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集されていない道路である非収集済み道路との情報を受信し、
前記プローブ情報管理装置から送信された収集済み道路および非収集済み道路の情報をもとに、収集済み道路についてのプローブ情報の前記プローブ情報管理装置への送信を行わないようにすることを特徴とする車載端末。
【請求項6】
車両に搭載されて前記車両の位置情報および走行情報を少なくとも取得してプローブ情報として送信する車載端末から送信されるプローブ情報を収集して道路交通情報を作成し、作成した道路交通情報を前記車載端末に送信するプローブ情報管理装置であって、
前記車載端末から収集したプローブ情報をもとに、前記道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集された道路である収集済み道路と前記道路交通情報を作成するのに必要な量のプローブ情報が収集されていない道路である非収集済み道路とを判別する判別手段を備え、
前記判別手段で判別した収集済み道路および非収集済み道路の情報のうちの少なくとも非収集済み道路の情報を前記車載端末に送信するとともに、収集済み道路についてのプローブ情報の送信を前記車載端末に行わせないようにする指示である送信制限指示を送信することを特徴とするプローブ情報管理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−168796(P2012−168796A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29999(P2011−29999)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】