説明

ベルト搬送装置および画像形成装置

【課題】無端ベルトが安定して走行することができ、かつ、無端ベルトの長寿命化が図れるベルト搬送装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】軸部10の両端部には、押し広げ部材14,16が支持されている。押し広げ部材14,16は、駆動ローラ41の外側に向かって径が大きくなるテーパ面を有した円錐台形状の部材であり、弾性体部12の両端部に一部が収容されている。押し広げ部材14,16の外側端面には、楕円型カム80,82が接している。楕円型カム80,82はカム駆動モータ76,78によって回転駆動される。楕円型カム80,82が回転駆動すると、コイルばね18のばね力に抗して押し広げ部材14,16がローラ軸方向の内側に移動する。転写ベルト34の両側部の上方の位置には、転写ベルト34の蛇行を検知するセンサ72,74が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ベルトや転写ベルトや定着ベルトなどに用いられるベルト搬送装置およびそのベルト搬送装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無端ベルトはこれを掛け回すローラの組立位置精度等により、稼働中に無端ベルトが所定の位置で回転せず、ローラの軸方向に移動してしまう蛇行という現象が起きる。従って、このような蛇行現象を防止するため、従来より、蛇行を補正する技術が種々提案されている。例えば特許文献1に示されているベルト搬送装置は、ローラ軸端部へ向かって軸の径が大きくなる蛇行補正ローラと、無端ベルトの蛇行を検知するセンサーとを備え、センサーが蛇行を検知すると、蛇行補正ローラをローラ軸方向に移動させて無端ベルトの蛇行を補正するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2001−147559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のベルト搬送装置のような蛇行補正機能を有していたとしても、無端ベルトがローラ軸中央部で釣合がとれた状態で安定して走行するように収束することは困難であった。さらに、蛇行補正ローラが、ローラ軸端部へ向かって軸の径が大きくなっている構造のため、無端ベルトの側部に常に曲げストレスがかかる。このため、無端ベルトが劣化し易いという問題があった。
【0005】
それゆえに、本発明の主たる目的は、無端ベルトが安定して走行することができ、かつ、無端ベルトの長寿命化が図れるベルト搬送装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、軸部と軸部の外周に設けられた弾性体部とを有する蛇行補正ローラと、蛇行補正ローラと共に所定の位置に配置された複数のローラと、蛇行補正ローラおよび複数のローラに掛け回され、循環搬送される無端ベルトと、無端ベルトの蛇行を検知する検知手段と、蛇行補正ローラの両端にそれぞれ設けられ、弾性体部の端部に押し込まれることにより、弾性体部の端部の径を外側に向かって大きくする押し広げ部材と、押し広げ部材をローラ軸方向に駆動する押し広げ部材駆動手段と、検知手段からの検知結果に基づいて、押し広げ部材駆動手段を駆動制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする、ベルト搬送装置である。
【0007】
請求項1の発明では、検知手段によって無端ベルトの蛇行が検知されると、制御手段が押し広げ部材をローラ軸方向に駆動させて蛇行補正ローラに押し込む。これにより、蛇行補正ローラの端部の弾性体部が押し広げられ、蛇行補正ローラはその端部に向かって径が大きくなるように変形する。すなわち、蛇行補正ローラの端部の外周面には、端部に向かって径が大きくなるテーパ面が形成され、このテーパ面によって蛇行が規制される。このとき、無端ベルトの蛇行量が大きくなるにつれて、押し広げ部材の蛇行補正ローラへの押し込み量を増やすことにより、テーパ面の傾斜角度を大きくすることができ、より強い力で蛇行を規制することができ、蛇行の収束も速くできる。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明に従属する発明であって、押し広げ部材が、蛇行補正ローラの外側に向かって径が大きくなるテーパ面を有した円錐台形状の部材であることを特徴とする、ベルト搬送装置である。
【0009】
請求項2の発明では、押し広げ部材の構成が簡素であるため、ベルト搬送装置の製造コストが安価である。
【0010】
さらに、請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のベルト搬送装置を備えたことを特徴とする、画像形成装置である。
【0011】
請求項3の発明では、無端ベルトの蛇行を防止できるため、蛇行による無端ベルトのたるみやしわが抑えられ、画像むらなどを低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、押し広げ部材をローラ軸方向に駆動させて蛇行補正ローラに押し込むことにより、蛇行補正ローラの端部の弾性体部が押し広げられ、蛇行補正ローラの端部には端部に向かって径が大きくなるテーパ面が形成される。そして、このテーパ面によって蛇行が規制され、無端ベルトの走行を安定したものにできる。また、蛇行補正ローラが他のローラと平行に配置されていなくても、蛇行を補正できる。さらに、蛇行が発生していない通常の状態では、蛇行補正ローラの端部の外周面形状はフラットなので、無端ベルトの側部に余分な負荷がかかることもないため、無端ベルトの長寿命化が可能となる。
【0013】
本発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明に係るベルト搬送装置を備えたカラー画像形成装置68を示す概略構成図である。
【0015】
感光体ドラム22は駆動手段によって図示矢印の反時計方向に所定速度で駆動される。感光体ドラム22の外周近傍には、帯電器24、現像装置28、転写ベルト34、摺擦部材30、クリーニング部材32が設けられている。感光体ドラム22は帯電器24にて表面が帯電される。感光体ドラム22の回転方向における帯電器24の下流側には、レーザースキャニングユニット26が配置されている。レーザースキャニングユニット26から放射されたレーザ光Lは、反射ミラー27を介して感光体ドラム22上に照射され、静電潜像が形成される。
【0016】
レーザースキャニングユニット26の下流側には、ロータリー現像装置28が配置されている。現像装置28は、回転支持体29に支持された現像器28a,28b,28c,28dを備えている。現像器28a,28b,28c,28dは、それぞれマゼンタ、シアン、イエロー、ブラック各色のトナーを感光体ドラム22に付与するためのものである。現像器28a〜28dのそれぞれに対して、補給パイプ20およびトナーカートリッジ21が配設されている。
【0017】
現像装置28の下流側には、転写ベルト34が配置されている。無端状の転写ベルト34は従動ローラ36,38,40および駆動ローラ41によって回転可能に支持されている。転写ベルト34、従動ローラ36,38,40および駆動ローラ41はベルト搬送装置を構成しており、後述するように駆動ローラ41は蛇行補正ローラでもある。さらに、転写ベルト34の下流側には、感光体ドラム22に残ったトナーを除去するための摺擦部材30およびクリーニング部材32が配置されている。
【0018】
該静電潜像はまずマゼンタの現像器28aが感光体ドラム24と対向するように配備され、現像されマゼンタトナー像として顕像化される。顕像化された感光体ドラム24上のマゼンタトナー像は転写ベルト34上に転写される。転写ベルト34上に1ページ分のマゼンタ画像を転写すると回転支持体29が回転し、以上の工程をシアン、イエロー、ブラック各色について逐次行い、転写ベルト34上に複数色のトナー像を形成する。
【0019】
一方、ピックアップローラ44はブラックトナー像と同期して転写紙カセット42から被記録材としての転写紙Pを給紙する。転写紙Pには転写ベルト34上に重畳形成された、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの合成カラートナー像が転写され、定着装置46に搬入される。合成カラートナー画像を転写された転写材Pは、定着装置46で定着され、カラー印刷物として機外に排出されて排紙トレイ50上に積載される。
【0020】
次に、ベルト搬送装置の駆動ローラ41の蛇行補正機能について、図2および図3を参照して説明する。図2および図3はそれぞれ、駆動ローラ41の概略断面構成図である。
【0021】
蛇行補正ローラでもある駆動ローラ41は、軸部10と、軸部10の外周に軸部10に対して回転不能かつローラ軸方向に移動不能に固着された弾性体部12とを有している。軸部10は横断面が円形の棒状のもので、ステンレスなどの剛体からなる。弾性体部12は横断面がドーナツ形の長尺状のもので、ウレタンなどからなる。さらに、弾性体部12の外周表面に金属膜を形成して、耐摩耗性を向上させてもよい。
【0022】
軸部10の両端部にはそれぞれ、押し広げ部材14,16が軸部10に対して回転不能かつローラ軸方向に移動可能に支持されている。押し広げ部材14,16は、駆動ローラ41の外側に向かって径が大きくなるテーパ面を有した円錐台形状の部材であり、中央部に軸部10が挿通する貫通穴17が形成されている。弾性体部12の両端部にはそれぞれ凹部12a,12bが形成されており、この凹部12a,12bに押し広げ部材14,16の一部が収容されている。
【0023】
軸部10は、支持部材90a,90bに対して回転可能かつローラ軸方向に移動不能に支持部材90a,90bに支持されている。軸部10の一端には図示しないモータが連結しており、このモータによって駆動ローラ41を回転駆動することにより、転写ベルト34が循環搬送される。また、支持部材90a,90bと押し広げ部材14,16との間には、両者を繋ぐコイルばね18が配設されている(ただし、支持部材90bと押し広げ部材16との間のコイルばねは図示せず)。
【0024】
押し広げ部材14,16の外側端面には、楕円型カム80,82が接している。楕円型カム80,82はカム駆動モータ76,78によって回転駆動される。楕円型カム80,82が回転駆動すると、コイルばね18のばね力に抗して押し広げ部材14,16がローラ軸方向の内側に移動する。
【0025】
転写ベルト34の両側部の上方の位置には、転写ベルト34の蛇行を検知するセンサ72,74が設けられている。センサ72は転写ベルト34の左側部が所定の位置から左にずれるとON状態となり、センサ74は転写ベルト34の右側部が所定の位置から右にずれるとON状態となって、それぞれ出力信号を制御装置70に送信する。
【0026】
次に、以上の構成からなる駆動ローラ(蛇行補正ローラ)41の作用効果を説明する。
例えば、図2に示すように、転写ベルト34が矢印A方向(左方向)にずれると、センサ72がそのずれを検出してON状態になる。センサ72の出力信号が制御装置70に送信されると、制御装置70によってカム駆動モータ76を駆動させて、楕円型カム80を矢印B方向(反時計周り方向)に回転させる。これにより,押し広げ部材14が楕円型カム80によってコイルばね18のばね力に抗して、ローラ軸方向の内側に移動させられる。
【0027】
図3に示すように、押し広げ部材14が弾性体部12の左端部に押し込まれることにより、弾性体部12の左端部の径が外側に向かって大きくなるように変形する。すなわち、駆動ローラ41の左端部には、端部に向かって径が大きくなるテーパ面が形成され、このテーパ面に転写ベルト34の左側部が乗り上げる形となる。これにより、転写ベルト34の左側部には、矢印f方向(ローラ軸方向の内側方向)の反発力が作用して転写ベルト34のずれが停止する。この後、反発力が転写ベルト34を矢印C方向押し戻し、元の位置に戻すように作用する。
【0028】
転写ベルト34が元の位置に戻ると、センサ72はOFF状態になる。センサ72の出力信号が制御装置70に送信されると、制御装置70によってカム駆動モータ76を駆動させて、楕円型カム80を時計周り方向に回転させて、元の状態にする。これにより,押し広げ部材14がコイルばね18のばね力により、ローラ軸方向の外側に移動させられ、元の位置に戻る。これにより、押し広げ部材14が弾性体部12の左端部から引き戻され、弾性体部12の左端部が元のフラットな形状になって、転写ベルト34の蛇行が収束する。
【0029】
このとき、転写ベルト34の蛇行量が大きくなるにつれて、押し広げ部材14の弾性体部12への押し込み量を増やすことにより、テーパ面の傾斜角度を大きくすることができ、より強い力で蛇行を規制することができ、蛇行の収束も速くできる。また、押し広げ部材14,16の構成が簡素であるため、ベルト搬送装置の製造コストを安価にできる。
【0030】
以上のように、本発明によれば、押し広げ部材14,16をローラ軸方向に駆動させて弾性体部12の端部に押し込むことにより、弾性体部12が押し広げられ、駆動ローラ41の端部には端部に向かって径が大きくなるテーパ面が形成される。そして、このテーパ面によって蛇行が規制され、転写ベルト34の走行を安定にすることができる。
【0031】
また、駆動ローラ41が他のローラ36,38,40と平行に配置されていなくても、蛇行を補正できる。さらに、蛇行が発生していない通常の状態では、駆動ローラ41の端部はフラットなので、転写ベルト34の側部に余分な負荷がかかることがないため、転写ベルト34の長寿命化が可能となる。こうして得られた画像形成装置68は、転写ベルト34の蛇行を防止できるため、蛇行による無端ベルトのたるみやしわが抑えられ、画像むらなどを低減することができる。
【0032】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】蛇行補正ローラの概略断面構成図である。
【図3】図2に続く蛇行補正ローラの作用効果を説明するための概略断面構成図である。
【符号の説明】
【0034】
10 軸部
12 弾性体部
14,16 押し広げ部材
34 転写ベルト
36,38,40 従動ローラ
41 駆動ローラ(蛇行補正ローラ)
68 画像形成装置
70 制御装置
72,74 センサ
76,78 カム駆動モータ
80,82 楕円型カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と前記軸部の外周に設けられた弾性体部とを有する蛇行補正ローラと、
前記蛇行補正ローラと共に所定の位置に配置された複数のローラと、
前記蛇行補正ローラおよび前記複数のローラに掛け回され、循環搬送される無端ベルトと、
前記無端ベルトの蛇行を検知する検知手段と、
前記蛇行補正ローラの両端にそれぞれ設けられ、前記弾性体部の端部に押し込まれることにより、前記弾性体部の端部の径を外側に向かって大きくする押し広げ部材と、
前記押し広げ部材をローラ軸方向に駆動する押し広げ部材駆動手段と、
前記検知手段からの検知結果に基づいて、前記押し広げ部材駆動手段を駆動制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする、ベルト搬送装置。
【請求項2】
前記押し広げ部材が、前記蛇行補正ローラの外側に向かって径が大きくなるテーパ面を有した円錐台形状の部材であることを特徴とする、請求項1に記載のベルト搬送装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のベルト搬送装置を備えたことを特徴とする、画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−290875(P2008−290875A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140782(P2007−140782)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】