説明

ペダル装置

【課題】ペダル位置の調整とペダル反力の調整を同時に行えるペダル装置を提供する。
【解決手段】電動モータ13、ネジ機構14およびストッパ部15により構成されるペダル位置・反力調整装置7により、ペダルアーム4を踏み込み方向前後に移動させる。これにより、ペダルアーム4に備えられたカムフォロワ16も移動し、カム17を移動させる。このため、カム17の移動に伴ってバネ19が撓み、バネ19の弾性力がカム17に反力として加えられる。この反力がカム17およびカムフォロワ16を介してブレーキペダル2に加えられる。さらに、ペダル位置・反力調整装置7によってペダルアーム4を移動させれば、反力調整を同時に行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキペダルやアクセルペダルといった車両用のペダル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、電気式ブレーキ装置に使用されるペダル装置として、操作ペダルの踏み込み操作に伴う反力特性を油圧式ブレーキ装置のペダル装置と同様にできる構造が提案されている。このペダル装置は、車体壁面に保持される回転軸を中心として揺動するペダルアームおよびペダルアームに固定されたペダル部と、ペダルアームに備えられた凸状係合部からなるカムフォロワと、固定端が車体壁面に固定され自由端がカムフォロワに当接される捩りバネとを備えた構成とされている。
【0003】
このような構成では、ドライバによるペダル部の踏み込みに伴ってペダルアームが回転軸を中心として揺動させられると、ペダルアームの揺動に伴ってカムフォロワも揺動させられる。これにより、カムフォロワに対して捩りバネからペダル部の踏み込みに対応した反力が付与される。この反力は、ペダル部の踏み込み量の増大に伴って増加することから、油圧式ブレーキ装置のペダル装置に近い反力特性を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−239930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のペダル装置では、油圧式ブレーキ装置のペダル装置に近い反力特性を得るのは十分ではなかった。つまり、ペダルストロークに対する踏力特性(=反力特性)について、ペダルストロークが増加するほど徐々に踏力(=反力)の増加量が増えていく関係になるのが好ましいが、特許文献1のペダル装置では、その増加量の増加割合が小さく、踏力(=反力)の増加効率が悪かった。
【0006】
なお、ここではペダル装置として、ブレーキ装置に適用されるものを例に挙げて説明したが、アクセルペダルにおいても、同様の反力特性を得たい場合には、上記問題が発生する。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、ペダルストロークの増加に対する踏力(=反力)の増加効率を高くできるペダル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者は、特許文献1に示すペダル装置について、ペダルストロークの増加に対する踏力(=反力)の増加効率が悪くなっている原因について検討した。そして、鋭意検討を行った結果、以下のような結果が得られた。これについて、図12に特許文献1のペダル装置の作動の様子を示し、この図を参照して説明する。
【0009】
図12に示すように、ドライバの踏み込みによってペダル部J1およびペダルアームJ2が実線位置から破線位置に移動したとする。これらの場合において、ペダル部J1に加えられる踏力Fは、数式1で表される。なお、数式1において、ペダルアームJ2に固定されたカムフォロワJ3の軌道の接線方向とカムフォロワJ3が捩りバネJ4から受ける力方向とのなす軸受角度をθ1、捩りバネJ4がカムフォロワJ3から受ける力方向と捩りバネJ4の回転方向との為す接触角度をθ2、捩りバネJ4の支持軸J5の中心から捩りバネJ4とカムフォロワJ3との接触点との距離をL、捩りバネJ4のトルクをT、ペダル比をGとしている。ペダル比Gについては、踏力Fが加えられるペダル部J1からペダルアームJ2の揺動中心までの距離L1に対するペダルアームJ2の揺動中心から捩りバネJ4に対して力を加えるカムフォロワJ3と捩りバネJ4との接触点までの距離L2の比(=L1/L2)で表される。
【0010】
(数1) F=T・cosθ1/(L・cosθ2・G)
この数式1において、ペダル比Gは定数であるため、踏力Fは、cosθ1、L、cosθ2および捩りバネJ4のトルクTを変数として、つまり捩りバネJ4のトルクT、軸受角度θ1、接触角度θ2、距離Lを変数として変動することになる。
【0011】
ここで、ペダル踏み込みが為されて図12中の実線位置から破線位置にブレーキペダルが移動させられた場合について検討してみると、移動に伴って、捩りバネJ4のトルクT、軸受角度θ1および接触角度θ2は共に増加し、距離Lは減少する。そして、数式1において、cosθ1は分子、Lおよびcosθ2は分母に含まれることから、捩りバネJ4のトルクT、接触角度θ2の増加および距離Lの減少は踏力Fを増加させることに寄与するが、軸受角度θ1の増加は踏力Fを減少させる方向に作用する。すなわち、ブレーキペダル踏み込みに伴って軸受角度θ1が増加していく構造となっていることが、踏力Fの増加効率を低下させていると考えられる。したがって、踏力Fの増加効率を向上させるためには、軸受角度θ1がブレーキペダル踏み込みに伴って増加するのではなく、減少する構造とすれば良いと言える。
【0012】
そこで、請求項1に記載の発明では、ペダル(2)の揺動に伴って、回転軸を中心とする移動軌跡で移動させられるカムフォロワ(16)により、車体壁面(10)に保持される支持軸(18)に回動可能に支持されたカム(17)を移動させると共に、ペダル(2)が踏み込まれてカム(17)が支持軸(18)に対して回転させられる方向と反対方向に回転させられるときに、バネ手段(19、40)により、カム(17)の回転角が大きくなるほど大きな付勢力をカム(17)に対して付与させるようにしたペダル装置において、カムフォロワ(17)の軌道の接線方向とカムフォロワ(16)がカム(17)から受ける力方向とのなす軸受角度(θ1)をペダル(2)のペダルストロークの増加に伴って減少させることを特徴としている。
【0013】
このように、カムフォロワ(16)の軌道の接線方向とカムフォロワ(16)がカム(17)から受ける力方向とのなす軸受角度(θ1)が、ペダル踏み込みに伴って増加するのではなく、減少する構造とされている。このため、軸受角度(θ1)の減少が踏力を増加させることに寄与させられ、踏力の増加効率を向上させることが可能となる。
【0014】
そして、請求項2に記載したように、カム(17)がカムフォロワ(16)から受ける力方向とカム(17)の回転方向との為す接触角度(θ2)が、ペダル(2)のペダルストロークの増加に伴って増加する。このため、より踏力の増加率を向上させることができる。
【0015】
さらに、請求項3に記載したように、支持軸(18)の中心からカム(17)とカムフォロワ(16)との接触点との距離(L)が、ペダル(2)のペダルストロークの増加に伴って減少するようにすれば、軸受角度(θ1)の減少、接触角度(θ2)の増加および距離(L)の減少がすべて踏力Fを増加させることに寄与する。このため、より踏力の増加効率を向上させることが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、カム(17)におけるカムフォロワ(16)と接する面(17a)は、ペダル(2)のペダルストロークの増加に対するカム(17)の回転角度の増加率が大きくなる形状とされていることを特徴としている。
【0017】
このように、ペダルストロークの増加に対するカム(17)の回転角度の増加率を大きくすることで、さらに踏力の増加効率を向上させることが可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明では、カム(17)は、回転軸(12)とカムフォロワ(16)との間に延在することを特徴としている。
【0019】
このような配置とすることで、ペダルストロークの増加に伴い軸受角度(θ1)を減少させ、接触角度(θ2)を増加させ、距離(L)を減少させる構成を容易に実現することができる。
【0020】
例えば、請求項6に記載したように、カム(17)におけるカムフォロワ(16)と接する面(17a)を、ペダル(2)が踏み込まれる前の初期位置においてカムフォロワ(16)と接触する平坦面(17b)と、カムフォロワ(16)がペダル(2)が踏み込まれて平坦面(17b)を摺動移動させられてから接する傾斜面(17c)とを具備する構造とすることができる。
【0021】
請求項7に記載の発明では、ペダル(2)の踏み込み方向前後にペダルアーム(4)を移動させることで該ペダル(2)の初期位置の調整を行うと共に、該初期位置の調整に伴って、バネ手段(19、40)がカム(17)に付与する付勢力に基づいてペダル(2)に発生させられる反力の調整を行うペダル位置・反力調整装置(7)を具備していることを特徴としている。
【0022】
このように、ペダル位置・反力調整装置(7)にてペダルアーム(4)を踏み込み方向前後に移動させることで反力が調整できるようにしている。このため、ペダル位置・反力調整装置(7)を駆動することにより、これらペダル位置調整と反力調整の双方を同時に行うことが可能となる。
【0023】
請求項8に記載の発明では、バネ手段を支持軸(18)に対して巻回した捩りバネ(19)にて構成し、支持軸(18)に対して同軸的に配置することを特徴としている。
【0024】
このように、バネ手段を捩りバネ(19)にて構成すれば、支持軸(18)に対して巻回させることができるため、省スペース化を図ることが可能となる。
【0025】
この場合、請求項9に記載したように、捩りバネ(19)の一端をカム(17)におけるストッパ部(17f)にて係止させ、捩りバネ(19)の他端を捩りバネ(19)の撓み量を調整することにより反力の調整を行う調整部(20〜22)に固定することができる。
【0026】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるブレーキペダル装置1が適用されるブレーキシステムの概略構成を示したブロック図である。
【図2】図1に示すブレーキシステムに備えられたブレーキペダル装置1の側面図である。
【図3】ブレーキペダル2が踏み込まれる過程でのカムフォロワ16およびカム17の動きを示した概略図である。
【図4】(a)、(b)は、ペダル踏み込み前の初期位置とペダル踏み込み後の状態それぞれにおいて、ブレーキペダル2の揺動中心となる回転軸12の中心とカム17の回転中心となる支持軸18の中心およびカムフォロワ16に掛かる力の関係を示した模式図である。
【図5】ペダル部3からペダルアーム4の揺動中心までの距離L1に対するペダルアーム4の揺動中心からカムフォロワ16とカム17との接触点までの距離L2の関係を示した模式図である。
【図6】ブレーキペダル装置1におけるペダルストロークとカム17の回転角の関係を示した図である。
【図7】ペダル位置調整の様子を示したブレーキペダル装置1の側面図である。
【図8】ペダル位置調整を行うことにより、ブレーキペダル2の初期位置を車両後方にしたときと車両前方にしたときのストローク量−踏力特性を示した図である。
【図9】反力発生装置8によりペダルストローク量−踏力特性を変化させた場合の特性図である。
【図10】本発明の第2実施形態にかかるブレーキペダル装置1の側面図である。
【図11】本発明の第3実施形態にかかるブレーキペダル装置1の側面図である。
【図12】従来のペダル装置の作動の様子を示したペダル装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0029】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、本発明の一実施形態にかかるペダル装置をブレーキペダル装置に適用した場合について説明する。図1は、本実施形態にかかるブレーキペダル装置1が適用されるブレーキシステムの概略構成を示したブロック図である。また、図2は、本実施形態にかかるブレーキペダル装置1の側面図である。以下、これらの図を参照して本実施形態にかかるブレーキペダル装置1について説明する。
【0030】
図1に示すブレーキシステムは、ブレーキペダル装置1の操作量を検出し、それに応じて電動モータ(図示せず)を駆動することで各車輪FL〜RRに対して制動力を発生させる所謂ブレーキバイワイヤシステムである。
【0031】
具体的には、ブレーキペダル装置1に備えられたブレーキペダル2のペダル部3が踏み込まれ、ペダルアーム4がそれに伴って揺動させられると、その操作量がストロークセンサや踏力センサなどのペダル操作量センサ5にて検出される。そして、ペダル操作量センサ5の検出信号がブレーキ制御装置(以下、ECUという)6に入力されることでブレーキペダル2の操作量が検出され、ECU6が図示しない電動モータなどのアクチュエータを駆動することにより、各車輪FL〜RRに対して制動力を発生させる。
【0032】
本実施形態のブレーキペダル装置1は、ブレーキペダル2が上から吊り下げられた吊り下げ式とされている。このブレーキペダル装置1には、ブレーキペダル2に加えてペダル位置・反力調整装置7と反力発生装置8が備えられている。ペダル位置・反力調整装置7は、ペダルアーム4の位置を踏み込み方向前後に調整するものであり、反力発生装置8は、ブレーキペダル2に所定の反力を付与するものである。これらペダル位置・反力調整装置7および反力発生装置8は、ドライバが例えば車室内におけるインストルメントパネル(図示せず)に設置された操作スイッチ9a、9bを操作することにより駆動される。例えば、操作スイッチ9aはブレーキペダル2の位置を前後のいずれに調整するか、および、調整終了の3つの切替えが行え、操作スイッチ9bは、発生させる反力の大小のいずれに調整するか、および、調整終了の3つの切替が行えるものとされる。このため、各操作スイッチ9a、9bの切替え状態に応じた信号がECU6に入力され、ECU6からペダル位置・反力調整装置7や反力発生装置8に対して制御信号が出力される。これに基づき、ペダル位置・反力調整装置7や反力発生装置8が駆動される。
【0033】
図2は、図1に示すブレーキシステムに適用されたブレーキペダル装置1の詳細構造を示した側面図である。
【0034】
図2に示すように、車室内の車体壁面10において、車体壁面10から垂直方向(車両前後方向)に突き出すようにブラケット11が備えられている。そして、車体壁面10もしくはブラケット11に対して、ブレーキペダル装置1の各種構成要素が固定された構造とされている。
【0035】
ブレーキペダル装置1は、上述したように、ブレーキペダル2とペダル位置・反力調整装置7および反力発生装置8を備えた構成とされている。
【0036】
ブレーキペダル2は、ペダルアーム4の一端側にペダル部3が備えられ、他端がブラケット11に保持された回転軸12に支持されることで、回転軸12を中心として揺動可能、つまり車両前後方向に移動可能とされている。
【0037】
ペダル位置・反力調整装置7は、電動モータ13、ネジ機構14およびストッパ部15を備えた構成とされている。
【0038】
電動モータ13は、ブレーキペダル2のペダルアーム4よりも運転席側(ドライバ側)に配置され、ブラケット11の先端位置の保持面(車体壁面10と並行とした面)に固定されている。上述したECU6からの制御信号のうち、ペダル位置・反力調整装置7に対して出力される制御信号は、この電動モータ13を駆動する信号として用いられる。
【0039】
ネジ機構14は、電動モータ13によって駆動され、長手方向(紙面左右方向)に伸長収縮させられることにより、ストッパ部15を車両前後方向に移動させる。
【0040】
ストッパ部15は、ペダルアーム4の一端面、具体的には運転席側(車両後方側)の端面に当接することで、ペダルアーム4の可動範囲を規制する。すなわち、上述したようにペダルアーム4は回転軸12を中心として揺動可能とされているが、ペダルアーム4の車両後方側の移動可能範囲はストッパ部15と接する位置までとされ、ペダルアーム4がストッパ部15と接する位置がブレーキペダル2の初期位置となる。
【0041】
反力発生装置8は、カムフォロワ16、カム17、支持軸18、バネ19、固定部20、ネジ機構21および電動モータ22を備えた構成とされている。これらのうち、カムフォロワ16、カム17、支持軸18およびバネ19が実際に反力を発生させる反力発生機構として機能し、固定部20、ネジ機構21および電動モータ22が発生させる反力の調整を行う調整部として機能する。
【0042】
カムフォロワ16は、ペダルアーム4の移動をカム17に伝える働きと、カム17を通じてペダルアーム4に対して反力を付与する働きを行う。このカムフォロワ16は、ペダルアーム4の側面に固定されており、カム17と接触しつつ、カム17に対して摺動容易となるように例えば円形とされている。
【0043】
カム17は、支持軸18を回転軸12として回転可能に支持されている。カム17の形状は任意であるが、カムフォロワ16と接触する面17aの形状は、要求される反力特性に応じて設計されている。つまり、ブレーキペダル2の踏み込みによりカムフォロワ16がブレーキペダル2と共に回転軸12を中心として揺動させられたときにカム17がカムフォロワ16に押し上げられて移動させられるが、カムフォロワ16の移動(軌跡)に対してカムフォロワ16とカム17の面17aの接触位置が変わる。この接触位置から支持軸18までの距離などが面17aの形状によって調整されることにより、所望の反力特性が得られる。
【0044】
本実施形態では、図2に示されるように、カム17の面17aは、ブレーキペダル2が初期位置の状態のときにカムフォロワ16と接する側の先端位置が平坦部17bとされている。また、カム17の面17aのうち、平坦部17bよりも支持軸18側、つまりブレーキペダル2が初期位置から踏み込まれたときにカムフォロワ16と接する箇所において、平坦部17bに対してカムフォロワ16側に傾斜させられた傾斜部17cとされている。そして、さらに支持軸18側に近づくと、カム17の面17aは再び平坦部17dとされている。
【0045】
また、カム17のうちカムフォロワ16と接する側と反対側の先端位置には、支持軸18に対して回転可能に係合される係合部17eと、バネ19の弾性力を受け止めるためのストッパ部17fが備えられている。係合部17eは、支持軸18が嵌め込まれる丸穴もしくは支持軸18内に嵌め込まれる軸部を備えた部材とされる。ストッパ部17fは、バネ19の一端を係止する。
【0046】
支持軸18は、ブラケット11に対して固定、もしくは、回転可能に保持されている。支持軸18は円筒形状とされており、その中心軸がブラケット11の壁面に対して垂直方向に向けられている。そして、例えばカム17の一端に丸穴が形成されており、この丸穴内に支持軸18が嵌め込まれることで、カム17が支持軸18を中心として回転可能となっている。
【0047】
バネ19は、ブレーキペダル2の踏み込まれるときにカム17が回転させられる方向と反対方向にカム17を付勢するためのバネ手段として機能する。バネ19は、捩りバネにて構成されており、支持軸18に巻回されている。このように、バネ19を支持軸18に対して同軸的に配置することにより、省スペース化を図っている。バネ19の一端は、上述したようにストッパ部17fに係止されており、他端は、固定部20に固定されている。このバネ19は、カム17が支持軸18を中心として回動させられると、バネ19の中心軸を中心として撓む(収縮させられる)。このため、バネ19の撓みによる弾性力がカム17に対して反力として加えられ、カム17の回動量が大きくなる程バネ19の撓み量が多くなるため、カム17に対して加えられる反力も大きくなる。
【0048】
固定部20は、バネ19の他端を固定すると共に、バネ19の他端の位置を調整することにより、バネ19による反力特性を調整するためのものである。
【0049】
ネジ機構21は、電動モータ22によって駆動され、長手方向に沿ってに伸長収縮させられることにより、固定部20をその方向に移動させる。これにより、固定部20と共にバネ19の一端の位置が調整される。
【0050】
電動モータ22は、車体壁面10に対して固定され、ネジ機構21の駆動に用いられる。上述したECU6からの制御信号のうち、反力発生装置8に対して出力される制御信号は、この電動モータ22を駆動する信号として用いられる。
【0051】
以上のような構造により、本実施形態にかかるブレーキペダル装置1が構成されている。次に、このようなブレーキペダル装置1の動作について説明する。図3は、ブレーキペダル2が踏み込まれる過程でのカムフォロワ16およびカム17の動きを示した概略図である。なお、図3中に示した一点鎖線は、カムフォロワ16の中心軌跡を描いたものであり、破線はブレーキペダル2が踏み込まれる前のカムフォロワ16の初期位置を示したものである。
【0052】
まず、図2に示されるように、ブレーキペダル2がドライバによって踏み込まれる前には、バネ19の弾性力がカム17を紙面反時計回りに回動させる方向に加わる。このため、カムフォロワ16がカム17によって押し付けられ、ブレーキペダル2をストッパ部15に当接させる。この状態では、図3(a)に示されるように、カムフォロワ16がカム17の平坦部17bに接触した状態となる。
【0053】
次に、ブレーキペダル2がドライバによって踏み込まれると、ブレーキペダル2が回転軸12を中心として揺動させられ、これに伴ってカムフォロワ16も移動させられる。これにより、図3(b)に示されるように、カムフォロワ16がカム17の平坦部17b上を摺動移動させられ、平坦部17bと傾斜部17cとの境界位置に至る。
【0054】
この後、さらにブレーキペダル2がドライバによって踏み込まれると、ブレーキペダル2が回転軸12を中心としてさらに揺動させられ、これに伴ってカムフォロワ16も移動させられる。これにより、図3(c)に示されるように、カムフォロワ16がカム17の傾斜部17cを摺接面として、傾斜部17cのうち平坦部17bとの境界位置からそれより離れる方向に摺動移動させられる。
【0055】
このような作動において、ペダル部3に加えられる踏力について考察してみる。図4(a)、(b)は、ペダル踏み込み前の初期位置とペダル踏み込み後の状態それぞれにおいて、ブレーキペダル2の揺動中心となる回転軸12の中心とカム17の回転中心となる支持軸18の中心およびカムフォロワ16に掛かる力の関係を示した模式図である。
【0056】
ここで、ペダルアーム4に固定されたカムフォロワ16の軌道の接線方向とカムフォロワ16がカム17から受ける力方向とのなす角度をθ1、カム17がカムフォロワ16から受ける力方向とカム17の回転方向との為す接触角度をθ2、捩りバネ19の支持軸18の中心からカム17とカムフォロワ16との接触点との距離をL、捩りバネ19のトルクをT、ペダル比をGと表すことにする。ペダル比Gについては、図5に示すように、踏力Fが加えられるペダル部3からペダルアーム4の揺動中心までの距離L1に対するペダルアーム4の揺動中心からカムフォロワ16とカム17との接触点までの距離L2の比(=L1/L2)で表される。
【0057】
踏力Fに対してペダル比Gを掛けた力F’は、カムフォロワ16から受ける反力F1と釣り合うことから数式2が成り立つ。また、カムフォロワ16が捩りバネ19の弾性力に基づいて受ける力をF2とすると、力F2は、トルクTをLで割った値になるため、数式3で表される。
【0058】
(数2) F・G=F’=F1
(数3) F2=T/L
そして、力F2をカムフォロワ16とカム17との接触点に対する垂直方向の力に変換した力と、反力F1をこれと同方向に変換した力とが釣り合うため、数式4が成り立つ。さらに、数式4に対して、数式2、数式3を代入すると、数式5を導出することができる。
【0059】
(数4) F2/cosθ2=F1/cosθ1
(数5) F=T・cosθ1/(L・cosθ2・G)
この数式5において、ペダル比Gは定数であるが、踏力Fは、捩りバネ19のトルクT、cosθ1、Lおよびcosθ2を変数として、つまり捩りバネ19のトルクT、軸受角度θ1、接触角度θ2と距離Lを変数として変動することになる。
【0060】
ここで、ペダル踏み込みが為されてペダル部3およびペダルアーム2が初期位置から揺動させられたときの捩りバネ19のトルクT、軸受角度θ1、接触角度θ2および距離Lの変化について検討してみる。
【0061】
距離Lについては、ブレーキペダル2の揺動に伴ってカムフォロワ16が支持軸18に近づくため、徐々に減少していく。
【0062】
また、接触角度θ2については、カムフォロワ16とカム17との接触点の位置が図4(a)、(b)に示されるようにカムフォロワ16の上方位置から時計回転方向において下方位置に移動するため、増加していく。
【0063】
そして、軸受角度θ1については、ブレーキペダル2が揺動させられると、カムフォロワ16が揺動中心を中心とした移動軌跡で移動させられ、かつ、カムフォロワ16とカム17との接触点の位置が図4(a)、(b)に示されるようにカムフォロワ16の上方位置から時計回転方向において下方位置に移動するため、徐々に減少していく。また、捩りバネ19のトルクTは、ブレーキペダル2の揺動に伴って増加していく。
【0064】
つまり、ブレーキペダル2が初期位置から移動させられた場合、移動に伴って、捩りバネ19のトルクTが増加、軸受角度θ1が減少、接触角度θ2が増加、距離Lが減少する。そして、数式5において、T、cosθ1は分子、Lおよびcosθ2は分母に含まれることから、捩りバネ19のトルクTの増加、軸受角度θ1の減少、接触角度θ2の増加および距離Lの減少がすべて踏力Fを増加させることに寄与する。このため、従来のように、接触角度θ2の増加と距離Lの減少だけでなく、軸受角度θ1の減少も踏力Fを増加させることに寄与させられ、踏力Fの増加効率を向上させることが可能となる。
【0065】
さらに、本実施形態では、カム17に傾斜部17cを設けているため、より踏力Fの増加効率を向上させられる。これについて、図6を参照して説明する。
【0066】
図6は、本実施形態のブレーキペダル装置1におけるペダルストロークとカム17の回転角の関係を示したものである。カム17の回転角は、ブレーキペダル2が初期位置のときをゼロとして、初期位置から回転した角度として表してある。
【0067】
この図に示されるように、ペダルストロークに対してカム17の回転角が徐々に増加している。そして、カム17に対して傾斜部17cを設けてあることから、ブレーキペダル2の揺動に伴ってカムフォロワ16が傾斜部17cと接触させられると、その後は、カムフォロワ16が平坦部17bと接触していたときよりも、ペダルストロークの増加に対するカム17の回転角度の増加率が大きくなる。このため、さらに踏力Fの増加効率を向上させることが可能となる。
【0068】
次に、本実施形態のブレーキペダル装置1におけるペダル位置調整および反力調整について説明する。図7に、ペダル位置調整の様子を示したブレーキペダル装置1の側面図を示し、この図を参照して説明する。
【0069】
まず、ブレーキペダル2がドライバによって踏み込まれる前には、バネ19の弾性力がカム17を紙面反時計回りに回動させる方向に加わる。このため、カムフォロワ16がカム17によって押し付けられ、ブレーキペダル2をストッパ部15に当接させる。したがって、図7(a)に示すように、ブレーキペダル2は初期位置に位置する。
【0070】
続いて、ブレーキペダル2がドライバによって踏み込まれると、ブレーキペダル2が回転軸12を中心として揺動させられ、それに伴ってカムフォロワ16も回転軸12を中心として揺動させられる。そして、カムフォロワ16によってカム17の面17aに対して踏力に対応する力が加えられ、カム17が支持軸18を中心として紙面時計回りに回動させられる。これにより、バネ19が撓み、カム17に対して撓み量に応じた反力を加えることになり、それがカムフォロワ16を介してブレーキペダル2に加えられる。このようにして、ドライバの踏力に対する反力を発生させることが可能となる。
【0071】
また、ペダル位置・反力調整装置7によりブレーキペダル2の位置調整を行う際には、ブレーキペダル2の位置を前方に調整すべく操作スイッチ9aを切替える。これにより、電動モータ13が駆動され、ネジ機構14が伸長される。このため、図7(b)に示すように、ストッパ部15がペダルアーム4を踏み込み方向前方に移動させる方向に移動し、ブレーキペダル2の初期位置が図7(a)の場合と比べて前方に調整される。逆に、ペダルアーム4の位置を踏み込み方向後方に調整すべく操作スイッチ9aを切替えると、電動モータ13が駆動され、ネジ機構14が収縮される。このため、ストッパ部15がブレーキペダル2を後方に移動させる方向に移動し、図7(a)に示すように、ブレーキペダル2の位置が後方に調整される。そして、このようなブレーキペダル2の位置調整に伴って、カムフォロワ16の位置も変動し、それに伴ったカム17が支持軸18を中心として回動させられるため、バネ19が撓み、発生させられる反力も同時に調整される。
【0072】
さらに、反力調整のみを行う場合、もしくはペダル位置・反力調整装置7による反力調整に加えて更なる反力調整を行う場合には、反力発生装置8によってその調整を行う。具体的には、発生させる反力が大きくなるように調整すべく操作スイッチ9bを切替えると、電動モータ22が駆動され、ネジ機構21が収縮される。このため、ストッパ部20がバネ19を撓ませ、バネ19の弾性力がカム17およびカムフォロワ16を介してよりブレーキペダル2に加えられる。これにより、ブレーキペダル2に対して発生させられる反力が大きくされる。逆に、発生させる反力が小さくなるように調整すべく操作スイッチ9bを切替えると、電動モータ22が駆動され、ネジ機構21が伸長される。このため、ストッパ部20によるバネ19の撓み量が少なくされる。これにより、ブレーキペダル2に対して発生させられる反力が小さくされる。
【0073】
このように、本実施形態のブレーキペダル装置1では、ペダル位置・反力調整装置7にてペダルアーム4を踏み込み方向前後に移動させることで反力発生装置8内の反力発生機構にて発生させられる反力が調整できるようにしている。このため、ペダル位置・反力調整装置7を駆動することにより、これらペダル位置調整と反力調整の双方を同時に行うことが可能となる。
【0074】
図8は、ペダル位置調整を行うことにより、ブレーキペダル2の初期位置を車両後方(ドライバに近い側)にしたときと車両前方(ドライバから遠い側)にしたときのストローク量−踏力特性を示した図である。この図中の範囲Aおよび範囲Bは、必要な踏力を得るために必要なストローク量の範囲を示している。この図のうち範囲Aが図7(a)のようにブレーキペダル2が後方に位置している場合を示しており、範囲Bが図7(b)のようにブレーキペダル2が前方に位置している場合を示している。
【0075】
例えば女性のようにブレーキペダル2の初期位置をドライバ側に近づけたい場合には、図7(a)に示されるようにブレーキペダル2を後方に位置させるようにする。この場合には、図8中の範囲Aが用いられ、ストロークに対して比較的小さな踏力で必要な制動力が得られるようにすることができる。一方、例えば男性のようにブレーキペダル2の初期位置をドライバ側から遠ざけたい場合には、図7(b)に示されるようにブレーキペダル2を前方に位置させるようにする。この場合には、図8中の範囲Bが用いられ、ストロークに対して比較的大きな踏力を発生させなければ必要な制動力が得られないようにすることができる。
【0076】
さらに、本実施形態のブレーキペダル装置1では、ペダル位置・反力調整装置7の他に、さらに反力発生装置8を備えた構造としている。このため、反力発生装置8による反力調整も行うことが可能である。
【0077】
図9は、反力発生装置8によりペダルストローク量−踏力特性を変化させた場合の特性図である。この図に示すように、特性Cの状態から電動モータ22を駆動してネジ機構21を収縮させ、固定部20を図2中の右方向(車体壁面10側)に移動させると、その分バネ19が撓み、ストローク量−踏力特性がオフセットされる。このように、反力発生装置8を作動させることにより、ストローク量−踏力特性を調整することも可能となる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態のブレーキペダル装置1は、ペダルアーム4に固定されたカムフォロワ16の軌道の接線方向とカムフォロワ16がカム17から受ける力方向とのなす軸受角度θ1が、ブレーキペダル踏み込みに伴って増加するのではなく、減少する構造とされている。このため、軸受角度θ1の減少が踏力Fを増加させることに寄与させられ、踏力Fの増加効率を向上させることが可能となる。これにより、より油圧式ブレーキ装置のブレーキペダル装置に近い反力特性を得ることができる。
【0079】
また、カム17に傾斜面17cを備えることにより、ペダルストロークの増加に対するカム17の回転角度の増加率を大きくできる。このため、さらに踏力Fの増加効率を向上させることが可能となる。
【0080】
さらに、ペダル位置・反力調整装置7や反力発生装置8により、ペダル位置調整や反力調整が行えるため、男性、女性、ドライバの体格等に応じた適切なペダル位置、反力特性を得ることも可能となる。
【0081】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態のブレーキペダル装置1は、第1実施形態に対してブレーキペダル装置1の形式を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0082】
図10は、本実施形態にかかるブレーキペダル装置1の側面図である。第1実施形態では、吊り下げ式のブレーキペダル装置1について説明しているが、本実施形態では、図10に示されるように、ブレーキペダル2が床面10aから突き出すように設定されたオルガン式のブレーキペダル装置1を採用している。
【0083】
本実施形態のブレーキペダル装置1は、第1実施形態に対してブレーキペダル装置1の各構成要素を第1実施形態に対して上下反対向きに配置したような構造とされている。具体的には、車体壁面10から垂直方向に突き出すように配置されたブラケット11に対して支持軸8が備えられているが、ブレーキペダル2は車体壁面10のうち車室内の床面10aを構成する部分から突き出すように配置されている。ブレーキペダル2におけるペダルアーム4の一端の回転軸12が車体壁面10に対して備えられた固定部30に回動可能に保持されている。そして、ペダルアーム4の一端のうち回転軸12よりもペダル部3とは反対側の位置において、車体壁面10よりも内側の位置にペダル位置・反力調整装置7が備えられている。このペダル位置・反力調整装置7は、ペダル部3がドライバ側に揺動することを規制するように、ブレーキペダル2よりも車両前方側に配置されている。
【0084】
また、カムフォロワ16は回転軸12よりもペダル部3側に配置されており、カム17はカムフォロワ16よりも回転軸12側に配置されている。そして、カム17の面17aは上方を向けられ、ブレーキペダル2が踏み込まれてカムフォロワ16が回転軸12を中心として回動させられたときに、それを面17aで受け止められるように構成されている。なお、バネ19の配置やストッパ部17fの配置なども、第1実施形態に対して上下逆向きにされ、第1実施形態と同様の働きを行うようにされている。
【0085】
以上説明した本実施形態のブレーキペダル装置1のように、吊り下げ式ではなくオルガン式のものにしても、第1実施形態と同様の動作を行うことが可能であり、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態のブレーキペダル装置1は、第1実施形態に対して反力発生装置8の構成を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0087】
図11は、本実施形態のブレーキペダル装置1の側面図である。この図に示されるように、本実施形態のブレーキペダル装置1では、反力発生装置8をカム17の上方、つまりブレーキペダル2の踏み込みに伴って回転させられるカム17の移動方向に配置した構造としている。反力発生装置8は、圧縮コイルスプリング40と、ブラケット11に固定された支持部41とを有した構成とされている。ブラケット11にて圧縮コイルスプリング40が支持され、圧縮コイルスプリング40の弾性力によりカム17をカムフォロワ16側に付勢することで、ブレーキペダル2に対して反力を発生させる。
【0088】
このように、バネ手段として圧縮コイルスプリング40を用いる構造としても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
(他の実施形態)
上記第1〜第3実施形態では、カム17の面17aの形状が平坦部17b、傾斜部17cおよび平坦部17dを有する形状としたが、面17aの形状を適宜変更することにより、ストローク量−踏力特性を変化させることが可能である。また、カムフォロワ16とカム17とが接触する初期位置を変更することによっても、ストローク踏力特性を調整することが可能である。例えば、上記第1〜第3実施形態では、カム17の面17aを平坦面17bと傾斜面17cおよび平坦面17dで構成しているが、これらを湾曲させた形状としても良い。その場合、傾斜面17cのみを湾曲させ、平坦面17bに対する傾斜面17cの角度が、平坦面17bと傾斜面17cとの境界部から離れるほど大きくなるような構造としても構わない。
【0090】
また、上記第1実施形態では、ペダル位置・反力調整装置7をブレーキペダル2の回転軸12に対してペダル部3側に配置すると共に、ペダルアーム4よりも車両後方に配置している。しかしながら、これは単なる一例であり、他の配置としても構わない。例えば、ペダルアーム4を回転軸12から更に上方に伸ばし、ペダルアーム4のうち回転軸12よりも上方においてペダルアーム4よりも車両前方にペダル位置・反力調整装置7を配置するようにしても良い。
【0091】
同様に、第2実施形態では、ペダル位置・反力調整装置7をブレーキペダル2の回転軸12に対してペダル部3と反対側に配置すると共に、ペダルアーム4よりも車両前方に配置している。しかしながら、これは単なる一例であり、他の配置としても構わない。例えば、回転軸12よりもペダル部3側において、ペダルアーム4よりも車両後方にペダル位置・反力調整装置7を配置するようにしても良い。ただし、オルガン式の場合、その位置にペダル位置・反力調整装置7を配置するとドライバの足に当たる可能性もあるため、好ましくは第2実施形態の配置とすると良い。
【0092】
また、上記第1、第3実施形態では、ペダル位置・反力調整装置7に加えて反力発生装置8を備えた構造について説明した。これに対し、第2実施形態では、ペダル位置・反力調整装置7のみが備えられ、反力発生装置8については備えられていない構造を示したが、第1実施形態と同様に反力発生装置8を備えた構造とすることもできる。
【0093】
また、上記第1、第2実施形態ではブレーキペダル2に対して反力を発生させるためにバネ19の弾性力を用い、かつ、省スペース化を図るために、バネ19を支持軸18と同軸的に配置できる捩りバネによって構成している。また、第3実施形態では圧縮コイルスプリング40を用いている。しかしながら、カム17に対して弾性力を付与するためのバネ手段を必ずしもバネ19や圧縮コイルスプリング40のようなバネ単体とする必要はない。例えば、ストロークシミュレータのようなシリンダ内にバネが配置された構造であっても構わない。
【0094】
さらに、上記第1〜第2実施形態では、カム17とバネ19とを別体とし、カム17に対して捩りバネにて構成されたバネ19の弾性力が伝えられることで、反力を発生させるようにしている。しかしながら、バネ19の一端をカムフォロワ16側まで延ばし、特許文献1のようにバネ19の一端をカム17として昨日させる構造としても良い。このような構造としても、第1、第2実施形態と同様の構造にできる。また、この場合にも、バネ19の一端の形状をカム17の面17aのように構成することで、所望の反力特性とすることができる。
【0095】
なお、上記第1〜第3実施形態では、ペダル装置としてブレーキペダル装置1を例に挙げて説明したが、その他のペダル装置、具体的にはアクセルペダル装置に対しても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1…ブレーキペダル装置、2…ブレーキペダル、3…ペダル部、4…ペダルアーム、7…反力調整装置、8…反力発生装置、9a、9b…操作スイッチ、10…車体壁面、10a…床面、11…ブラケット、12…回転軸、13…電動モータ、14…ネジ機構、15…ストッパ部、16…カムフォロワ、17…カム、18…支持軸、19…バネ、20…ストッパ部、20…固定部、21…ネジ機構、22…電動モータ、30…固定部、40…圧縮コイルスプリング、41…支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダル部(3)とペダルアーム(4)とを有し、車体壁面(10)に対して保持される回転軸(12)を中心として揺動するペダル(2)と、
前記ペダルアーム(4)に備えられ、前記ペダル(2)の揺動に伴って、前記回転軸を中心とする移動軌跡で移動させられるカムフォロワ(16)と、
前記車体壁面(10)に保持される支持軸(18)に回動可能に支持されると共に、前記カムフォロワ(16)と接する面(17a)を有し、前記カムフォロワ(16)の移動に伴って前記支持軸(18)に対して回転させられるカム(17)と、
前記ペダル(2)が踏み込まれるときに前記カム(17)が前記支持軸(18)に対して回転させられる方向と反対方向に、前記カム(17)の回転角が大きくなるほど大きな付勢力を前記カム(17)に対して付与するバネ手段(19、40)とを具備し、
前記カムフォロワ(17)の軌道の接線方向と前記カムフォロワ(16)が前記カム(17)から受ける力方向とのなす軸受角度(θ1)が、前記ペダル(2)のペダルストロークの増加に伴って減少することを特徴とするペダル装置。
【請求項2】
前記カム(17)が前記カムフォロワ(16)から受ける力方向と前記カム(17)の回転方向との為す接触角度(θ2)が、前記ペダル(2)のペダルストロークの増加に伴って増加することを特徴とする請求項1に記載のペダル装置。
【請求項3】
前記支持軸(18)の中心から前記カム(17)と前記カムフォロワ(16)との接触点との距離(L)が、前記ペダル(2)のペダルストロークの増加に伴って減少することを特徴とする請求項1または2に記載のペダル装置。
【請求項4】
前記カム(17)における前記カムフォロワ(16)と接する面(17a)は、前記ペダル(2)のペダルストロークの増加に対する前記カム(17)の回転角度の増加率が大きくなる形状とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項5】
前記カム(17)は、前記回転軸(12)と前記カムフォロワ(16)との間に延在することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項6】
前記カム(17)における前記カムフォロワ(16)と接する面(17a)は、前記ペダル(2)が踏み込まれる前の初期位置において前記カムフォロワ(16)と接触する平坦面(17b)と、前記カムフォロワ(16)が前記ペダル(2)が踏み込まれて前記平坦面(17b)を摺動移動させられてから接する傾斜面(17c)とを具備することを特徴とする請求項4に記載のペダル装置。
【請求項7】
前記ペダル(2)の踏み込み方向前後に前記ペダルアーム(4)を移動させることで該ペダル(2)の初期位置の調整を行うと共に、該初期位置の調整に伴って、前記バネ手段(19、40)が前記カム(17)に付与する付勢力に基づいて前記ペダル(2)に発生させられる反力の調整を行うペダル位置・反力調整装置(7)を具備していることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項8】
前記バネ手段は、前記支持軸(18)に対して巻回された捩りバネ(19)であり、該支持軸(18)に対して同軸的に配置されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項9】
前記捩りバネ(19)の一端は前記カム(17)におけるストッパ部(17f)にて係止されており、前記捩りバネ(19)の他端は前記捩りバネ(19)の撓み量を調整することにより前記反力の調整を行う調整部(20〜22)に固定されていることを特徴とする請求項8に記載のペダル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−60099(P2011−60099A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210569(P2009−210569)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】