説明

ホトリソグラフィ用洗浄液およびその循環使用方法

【課題】i線仕様、KrF仕様、ArF仕様等の多種多様のホトレジストに対して幅広く適用可能で、優れた洗浄性を示す洗浄液であって、かつ、使用済みの該洗浄液を高収率で回収・再生してリサイクル洗浄液として循環使用することができるホトリソグラフィ用洗浄液、およびその循環使用方法を提供する。
【解決手段】(a)酢酸またはプロピオン酸の低級アルキルエステルの中から選ばれる少なくとも1種と、(b)炭素数5〜7の環状若しくは非環状ケトンの中から選ばれる少なくとも1種とを、(a)/(b)=4/6〜7/3(質量比)の割合で含有し、かつ、(c)ホトレジストに用いられる有機溶剤を0.01質量%以上1質量%未満の割合で含有するホトリソグラフィ用洗浄液、およびその循環使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の仕様のホトレジストに対して幅広く適用可能で、優れた洗浄性能を有するホトリソグラフィ用洗浄液、および、該洗浄液を使用後、その使用済み洗浄液を高収率で再生してリサイクル洗浄液として繰返し使用することができる循環使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の電子部品の製造においては、基板にエッチングなどの処理を施すに際し、活性放射線に感応するいわゆる感放射線ホトレジストを基板上に塗布・乾燥して被膜(ホトレジスト膜)を設け、次いでこれを活性放射線で選択的に照射して露光し、現像処理を行って、ホトレジスト膜を選択的に溶解除去して基板上に画像パターン(ホトレジストパターン)を形成し、これを保護膜(マスクパターン)として基板にホールパターン、トレンチパターン等のコンタクト用パターンなどの各種パターンを形成するホトリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
ホトレジストを基板上に塗布する方法としては、スピンナー等による回転塗布方法が多く用いられている。この回転塗布法では、基板の中心部から縁辺部に向けて基板表面全体にほぼ均一な膜厚で塗膜が形成されるようになっているが、表面張力の作用で基板の周辺部に塗布液が凝集して肉厚部分を生じたり、ホトレジスト膜形成の必要がない基板縁辺部や裏面にまで塗布液が付着して、しばしばその後の基板の加工に支障をきたす。
【0004】
そのため、基板処理を後続工程に進行させるに先立って、ホトレジスト塗布後、あるいはホトレジスト塗布後の乾燥時に、通常、基板端縁部の洗浄工程(エッジリンス工程、バックリンス工程)が設けられており、洗浄液(エッジリンス液、バックリンス液)により不要なホトレジストを洗浄除去している。
【0005】
このような目的で用いる洗浄液として、不要なホトレジストを効率的に溶解除去することができ、かつ迅速に乾燥し、しかも洗浄後のホトレジスト膜の特性を損なわないことが求められる。また、半導体素子の製造には紫外線仕様、i線仕様、KrF仕様、ArF仕様など、種々の波長仕様のホトレジストが用いられ、しかも同じ波長仕様向けであっても多品種化しており、多種多様の組成からなり、さらに、特殊な目的にはケイ素含有ホトレジストのような特殊な組成のものが用いられているため、それぞれの組成に応じ、適切な洗浄液を選ぶ必要がある。
【0006】
かかる洗浄液として従来、シクロヘキサノン、乳酸エチル等の有機溶剤の他に、種々の洗浄液が研究・開発され提供されている(例えば、特許文献1〜6参照)。しかし、これら洗浄液は、特定のホトレジストに対しては良好な洗浄性を示すが、他のホトレジストに対する洗浄性は必ずしも良好でない。
【0007】
一方、半導体素子製造メーカーは、各生産工程および生産ラインに一括して同じ洗浄液を供給する集中配管のシステムを採用しており、このような使用環境においては、各工程あるいは生産ラインごとに使用するホトリソグラフィ用洗浄液を切り替える、あるいは各生産ラインごとにホトリソグラフィ洗浄液の洗浄性能の評価を行うことは、莫大な労力と経費を要する。
【0008】
半導体製造装置に設置されるホトリソグラフィ用洗浄液の供給配管は、その配管の数が限られており、あらゆる用途、具体的には、ホトレジスト供給装置(供給カップ内、配管、ノズル等)洗浄、基板端縁部洗浄、基板裏面部洗浄、リワーク洗浄と、さらにはホトレジスト塗布前の基板のプリウェット処理など、を網羅的に達成し得る洗浄液が必要とされている。
【0009】
本出願人は従前に、酢酸またはプロピオン酸の低級アルキルエステルと特定のケトンとを特定割合で含むホトリソグラフィ洗浄液に係る発明の出願を行い、この洗浄液が種々の仕様のホトレジストに対して幅広く適用可能で優れた洗浄効果を示すことを確認している(特願2004−382130号明細書)。
【0010】
ところで、ホトリソグラフィ洗浄液はこれまで通常、1回使用で廃棄されていたが、昨今の環境指向の観点からも、使用済みの洗浄液を回収し、これをリサイクルして再使用する機運が高まっている。
【0011】
この回収した使用済み洗浄液中には、洗浄・除去したホトレジストに由来する成分、すなわちホトレジスト樹脂、有機溶剤、光重合開始剤、酸発生剤、架橋剤、アミン成分、界面活性剤等が溶解されて残留する。
【0012】
そこでこのような残留物を含む回収液を、蒸留分別により、残留する成分の沸点の違いを利用してホトレジスト由来成分の除去を行い、得られた分留液(留液)をリサイクル液として再利用することが試みられている。この場合、特にホトレジストに含まれる有機溶剤の除去において、該有機溶剤の沸点が洗浄液成分の沸点に近いこともあって、洗浄液の特性・性能を保持しつつ、しかも回収液の収率をある程度以上に確保して得ることは極めて難しい。このためホトレジスト由来物質をほぼ完全に分別除去して0質量%としようとすると、リサイクル液の収率(再生率)は30〜40%程度にしかならず、採算性の点で問題があり、コストパフォーマンスが極めて悪い。
【0013】
【特許文献1】特公平05−075110号公報
【特許文献2】特公平04−049938号公報
【特許文献3】特開平04−042523号公報
【特許文献4】特開平04−130715号公報
【特許文献5】特開平11−218933号公報
【特許文献6】特開2003−114538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、種々の仕様のホトレジストに対して一様に良好な洗浄性を示し、処理後の乾燥性がよく、しかも洗浄によってホトレジストの特性を損なうことがなく、さらには、半導体製造工程における各種工程における洗浄を網羅的に達成し得るホトリソグラフィ用洗浄液を提供すること、および、該洗浄液を使用後、その使用済み洗浄液を極めて高い収率で再生してリサイクル洗浄液として繰返し使用することができる循環使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは種々検討を重ねた結果、ホトレジストに含まれる有機溶剤を、ホトリソグラフィ用洗浄液に特定量配合することによって、使用済みの洗浄液を、洗浄液の性能を損なうことなく、従来に比べ採算が取れる程度まで再生率を向上させてリサイクル液を得ることができること、および、このリサイクル液を高収率(高再生率)で循環使用することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0016】
すなわち本発明は、(a)酢酸またはプロピオン酸の低級アルキルエステルの中から選ばれる少なくとも1種と、(b)炭素数5〜7の環状若しくは非環状ケトンの中から選ばれる少なくとも1種とを、(a)/(b)=4/6〜7/3(質量比)の割合で含有し、かつ、(c)ホトレジスト組成物に用いられる有機溶剤を0.01質量%以上1質量%未満の割合で含有するホトリソグラフィ用洗浄液を提供する。
【0017】
また本発明は、(i)基板上にホトレジストを塗布した後の基板裏面部または縁部あるいはその両方に付着した不要のホトレジストの除去、(ii)基板上にホトレジストを塗布・乾燥してホトレジスト膜を形成した後に、あるいは、前記ホトレジスト膜を選択的に露光・現像した後に、基板上に存するホトレジスト膜全体の除去、(iii)ホトレジストを基板上に供給・塗布するホトレジスト供給装置の洗浄、(iv)基板上へのホトレジストの塗布に先立って行う基板のプリウェット、の中の少なくとも1種以上の用途に用いる、上記ホトリソグラフィ用洗浄液を提供する。
【0018】
また本発明は、(i)基板上にホトレジストを塗布した後、基板裏面部または縁部あるいはその両方に付着した不要のホトレジストを、上記ホトリソグラフィ用洗浄液に接触させて除去する基板の洗浄方法、(ii)基板上にホトレジストを塗布・乾燥してホトレジスト膜を形成した後に、あるいは、前記ホトレジスト膜を選択的に露光・現像した後に、基板上に存するホトレジスト膜全体を、上記ホトリソグラフィ用洗浄液に接触させて除去する基板の洗浄方法、(iii)ホトレジストを基板上に供給・塗布するホトレジスト供給装置に、上記ホトリソグラフィ用洗浄液を接触させて、ホトレジスト供給装置に付着するホトレジスト由来の残留物を除去するホトレジスト供給装置の洗浄方法、の中の少なくとも1種以上の洗浄方法を提供する。
【0019】
また本発明は、上記いずれかの洗浄方法により除去されたホトレジストに由来する成分(ホトレジスト用有機溶剤を含む)が溶解残留する使用済みホトリソグラフィ用洗浄液を回収してなる回収液を提供する。
【0020】
また本発明は、(iv)基板上へのホトレジストの塗布に先立ち、上記ホトリソグラフィ用洗浄液を基板に接触させる基板のプリウェット方法を提供する。
【0021】
また本発明は、上記プリウェット方法を用いた使用済みホトリソグラフィ用洗浄液を回収してなる回収液を提供する。
【0022】
また本発明は、上記回収液を蒸留分別して、(a)成分を含む分留液と(b)成分を含む分留液を採取し、これら採取した分留液中の前記ホトレジスト由来成分中の有機溶剤と(c)成分との合計残留量が0.01質量%以上1質量%未満となるように調整してなる循環使用のためのホトリソグラフィ用洗浄液を提供する。
【0023】
また本発明は、上記循環使用のためのホトリソグラフィ用洗浄液を、上記のいずれかの用途に使用した後、該使用済みホトリソグラフィ用洗浄液を回収し、該回収液を蒸留分別して、(a)成分を含む分留液と(b)成分を含む分留液を採取し、これら採取した分留液中の前記ホトレジスト由来成分中の有機溶剤と(c)成分との合計残留量を、0.01質量%以上1質量%未満となるように調整して循環使用のためのホトリソグラフィ用洗浄液とし、該ホトリソグラフィ用洗浄液を、次の(I)〜(III)の一連の工程:(I)再び上記のいずれかの用途に使用する工程、(II)前記使用済みホトリソグラフィ用洗浄液を回収する工程、(III)該回収された回収液を蒸留分別して、(a)成分を含む分留液と(b)成分を含む分留液を採取し、これら採取した分留液中の前記ホトレジスト由来成分中の有機溶剤と(c)成分との合計残留量が0.01質量%以上1質量%未満となるように調整して次の再使用のためのホトリソグラフィ用洗浄液を得る工程、を循環して行う、ホトリソグラフィ用洗浄液の循環使用方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、i線仕様、KrF仕様、ArF仕様など、多種多様のホトレジストに対して一様に良好な洗浄性を示し、処理後の乾燥性がよく、しかも洗浄によってホトレジストの特性を損なうことのないホトリソグラフィ用洗浄液が提供される。本発明ホトリソグラフィ用洗浄液はまた、半導体製造工程における各種工程における洗浄〔例えば、基板のプレウェット、ホトレジスト供給装置の洗浄(配管洗浄、ノズル洗浄、コーターカップ内洗浄)、リワーク洗浄など〕を網羅的にカバーし得るという効果も奏する。また本発明により、上記ホトリソグラフィ用洗浄液を使用後、その使用済み洗浄液を極めて高い収率で再生してリサイクル洗浄液として繰返し使用することができる循環使用方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明ホトリソグラフィ用洗浄液には、(a)成分として、酢酸またはプロピオン酸の低級アルキルエステルが用いられる。低級アルキル基は直鎖、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。該エステルは炭素数の合計が5〜8のものが好ましい。
【0026】
(a)成分として、具体的には、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル等の酢酸エステルや、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル等のプロピオン酸エステル等が例示される。中でも酢酸ブチル、酢酸イソブチルが好適に用いられる。(a)成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0027】
(b)成分としては、ホトレジスト膜に対する親和性が比較的大きいケトン、すなわち炭素数5〜7の環状若しくは非環状ケトンが用いられる。炭素数が5未満では、ホトレジストとの親和性が大きくなって、洗浄する際に基板上のホトレジスト膜の不要部分のみでなく、必要な部分までも除去されるおそれがある。また、炭素数が7超ではホトレジスト膜の不要な付着部分を除去しにくくなる。なお、非環状ケトン中のアルキル基は直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。
【0028】
上記環状ケトンとしては、例えばシクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルペンタノン、2−メチルヘキサノン、2,5−ジメチルペンタノン等を挙げることができる。中でもシクロヘキサノンが好ましい。
【0029】
非環状ケトンとしては、例えばメチルペンチルケトン、メチルブチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン等を挙げることができる。
【0030】
本発明のホトリソグラフィ用洗浄液における(a)成分と(b)成分との配合割合は、(a)/(b)=4/6〜7/3(質量比)であり、好ましくは5/5〜6/4(質量比)である。(a)成分の配合割合が上記範囲よりも少ない場合は、洗浄した場合に端縁不要部が十分に除去され難く、一方、(a)成分の配合割合が上記範囲よりも多くなると、洗浄した部分に斑点を生じたり、膜厚が不均一になる。(a)/(b)=5/5(質量比)が最も好ましい。
【0031】
本発明洗浄液は、(c)成分として、上記(a)成分、(b)成分に加えて、ホトレジストに用いられる有機溶剤を、洗浄液全量に対し0.01質量%以上1質量%未満の割合で含む。
【0032】
(c)成分としての有機溶剤は、除去対象となるホトレジストの構成成分である有機溶剤であれば特に限定されることなく、任意に用いることができるが、多価アルコール類およびその誘導体、ラクトン類、および有機酸の低級アルキルエステル(ただし(a)成分を除く)の中から選ばれる1種または2種以上が好ましい。
【0033】
多価アルコール類およびその誘導体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、あるいはこれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルまたはモノフェニルエーテル等が挙げられる。
【0034】
ラクトン類としては、γ−ブチロラクトンが挙げられる。
【0035】
有機酸の低級アルキルエステルとしては、乳酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。
【0036】
上記の他に、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類や、ジオキサンのような環式エーテル類なども用いることができる。
【0037】
これら(c)成分の中でも、ホトレジストの有機溶剤として汎用性の高いプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、γ−ブチロラクトン、および乳酸エチルが好ましく用いられる。(c)成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0038】
(c)成分の配合量は本発明ホトリソグラフィ用洗浄液中に0.01質量%以上1質量%未満配合される。(c)成分の配合量が0.01質量%未満では(c)成分を配合することによる本願発明効果を十分に得ることができず、使用済み回収液から極めて高い再生率でリサイクル液を得ることが望めず、一方、1質量%以上では洗浄性能に支障をきたすおそれがあり、好ましくない。
【0039】
なお、洗浄・除去対象となるホトレジストの構成成分である有機溶剤と、本願発明洗浄液にあらかじめ配合される(c)成分とは、必ずしも同一化合物である必要はない。
【0040】
このような本発明ホトリソグラフィ用洗浄液は、好適には、(i)基板上にホトレジストを塗布した後の基板裏面部または縁部あるいはその両方に付着した不要のホトレジストの除去、(ii)基板上にホトレジストを塗布・乾燥してホトレジスト膜を形成した後に、あるいは、前記ホトレジスト膜を選択的に露光・現像した後に、基板上に存するホトレジスト膜全体の除去、(iii)ホトレジストを基板上に供給・塗布するホトレジスト供給装置の洗浄、(iv)基板上へのホトレジストの塗布に先立って行う基板のプリウェット、の中の少なくとも1種以上の用途に用いられる。ただしこれらの用途に限定されるものでない。
【0041】
また本発明ホトリソグラフィ用洗浄液を用いた方法として、(i)基板上にホトレジストを塗布した後、基板裏面部または縁部あるいはその両方に付着した不要のホトレジストを、本発明ホトリソグラフィ用洗浄液に接触させて除去する基板の洗浄方法、(ii)基板上にホトレジストを塗布・乾燥してホトレジスト膜を形成した後に、あるいは、前記ホトレジスト膜を選択的に露光・現像した後に、基板上に存するホトレジスト膜全体を、本発明ホトリソグラフィ用洗浄液に接触させて除去する基板の洗浄方法、(iii)ホトレジストを基板上に供給・塗布するホトレジスト供給装置に、本発明ホトリソグラフィ用洗浄液を接触させて、配管に付着するホトレジスト由来の残留物を除去するホトレジスト供給装置の洗浄方法、(iv)基板上へのホトレジストの塗布に先立ち、上記ホトリソグラフィ用洗浄液を基板に接触させる基板のプリウェット方法、等が挙げられる。ただしこれらに限定されるものでない。
【0042】
本発明では、上記(i)〜(iii)の洗浄方法や(iv)のプリウェット方法に供された使用済み洗浄液を回収し、これを分留して、効率よくリサイクル液として再使用することができる。(i)〜(iii)の洗浄方法に供された後の使用済み洗浄液(回収液)中には、除去・洗浄されたホトレジスト由来成分が溶解残留しているため、これら成分を除去する必要があるが、本発明では、ホトレジスト用有機溶剤を従来のように完全に除去する必要はなく、極微量残留した状態で再生洗浄液として用いる。このため再生率が従来30〜40%程度であったのに比べ、60〜85%程度にまで飛躍的に向上させることができ、極めて効率よく、採算が取れる程度の収率で再使用することができる。しかも洗浄効果、ホトレジストへの影響はない。また、半導体装置におけるホトレジスト供給装置(配管洗浄、ノズル洗浄、コーターカップ洗浄など)、基板のプレウェット等にも網羅的に用いることができる。
【0043】
本発明では、使用済み回収液の蒸留分別において、(a)成分を含む分留液、(b)成分を含む分留液を採取し、これら採取した分留液中における、ホトレジストから溶解して残留する有機溶剤と洗浄液に含まれていた(c)成分との合計含有量が、採取した分留液中に0.01質量%以上1質量%未満となるよう調整したものを、リサイクル洗浄液として再利用に供することができる。この使用済み回収液の蒸留分別の具体例については、後掲の実施例5において説明する。
【0044】
また本発明ではこのようにして再生したリサイクル洗浄液を使用した後、この使用済みリサイクル洗浄液を再び回収して、上記と同様にして分留し、循環使用することができる。すなわち、使用済みホトリソグラフィ用洗浄液を回収し、該回収液を蒸留分別して、(a)成分を含む分留液および(b)成分を含む分留液を採取し、これら採取した分留液中の前記ホトレジスト由来成分中の有機溶剤と(c)成分との合計残留量が0.01質量%以上1質量%未満となるよう調整して循環使用のためのホトリソグラフィ用洗浄液を得た後、該ホトリソグラフィ用洗浄液を、次の(I)〜(III)の一連の工程:(I)再び上記(i)〜(iii)、(iv)のいずれかの用途に使用する工程、(II)前記(I)工程を終了した使用済みホトリソグラフィ用洗浄液を回収する工程、(III)該回収された回収液を蒸留分別して、(a)成分を含む分留液および(b)成分を含む分留液を採取し、これら採取した分留液中の前記ホトレジストに用いられる有機溶剤と(c)成分との合計残留量が0.01質量%以上1質量%未満となるよう調整して次の再使用のためのホトリソグラフィ用洗浄液を得る工程、を循環して行うことで、洗浄性能を維持しつつ、かつホトレジストパターン形成への影響を及ぼすことなく、廉価で、安全に、かつ安定的に循環使用することができる。
【0045】
循環使用回数は、洗浄を差し障りなく行うことが限り循環使用することができ、特に限定されるものでない。
【0046】
以下に本発明洗浄液を用いた使用態様について、一例を挙げて具体的に説明する。
【0047】
まず、基板上に本発明ホトリソグラフィ用洗浄液を滴下し、プレウェットする。プレウェットに用いた使用済み洗浄液は、回収液槽へ送り、再生使用のための回収液とする。このプレウェット工程は省略してもよい。
【0048】
次に、上記基板にホトレジストをスピン法等の公知の手段により塗布する。特にスピンナーを用いた回転塗布法により、基板上にホトレジストを塗布した場合、ホトレジストは、遠心力により放射方向に拡散塗布される。このようにして基板上に塗布されたホトレジストは、基板端縁部の膜厚が基板中央部よりも厚く、また基板の裏面にもホトレジストが回り込んで付着する。
【0049】
そこで基板の周辺部、縁辺部および裏面の少なくとも一部に付着した不要したホトレジストを、本発明洗浄液を接触させて洗浄・除去する。本発明洗浄液を用いることにより、基板端縁部の不要なホトレジストを効率的に、しかも従来不具合とされていた盛り上がり現象や裾引き現象等を起すことなく、除去することができる。
【0050】
上記不要のホトレジストを本発明洗浄液に接触させて洗浄・除去する方法としては特に限定されるものでなく、種々の方法を用いることができる。
【0051】
例えば、洗浄液供給ノズルにより、基板を回転させながらその周縁部や裏面部に洗浄液を滴下、または吹き付ける方法が挙げられる。この場合、ノズルからの洗浄液の供給量は、使用するホトレジストの種類や膜厚などにより適宜変わるが、通常は30〜50mL/分の範囲で選ばれる。あるいは、あらかじめ洗浄液を満たした貯留部に基板の縁辺部を水平方向から挿入した後、貯留部内の洗浄液に基板の縁辺部を所定時間浸漬する方法等が挙げられる。ただしこれら例示の方法に限定されるものでない。
【0052】
使用済み洗浄液は、再使用のため回収液槽に送られるが、該回収液には除去された不要のホトレジスト構成成分が溶解若しくは残留物として含まれる。
【0053】
次いで残存するホトレジストを乾燥してホトレジスト膜を形成する。その後、ホトレジスト膜を選択的に露光した後、現像してホトレジストパターンを形成する。露光、現像は常法により行うことができる。通常、このように形成されたホトレジストパターンをマスクとして、基板露出部をエッチングして、あるいはめっき等により金属層を形成する。
【0054】
次いで、ホトレジストパターンを、本発明洗浄液に接触させて溶解・除去することで、基板上に金属配線を形成する。
【0055】
洗浄液接触の方法は特に限定されるものでなく、上記と同様に、回転滴下、吹き付け、浸漬等、任意の方法で行うことができる。使用済み洗浄液には除去されたホトレジスト膜成分が溶解若しくは残留物として含まれ、これらを回収液槽へ送り、再生使用のための回収液とする。
【0056】
なお、実際の作業工程においては、ホトレジスト膜の形成に不都合が生じた場合など、選択的に露光・現像してホトレジストパターンを形成することなく、該不都合が生じたホトレジスト膜全体を、一旦洗浄液に接触させてホトレジスト膜全体を溶解・除去してリワークのため洗浄する場合もあるが、このような場合も本発明洗浄液を用いることができる。使用済み洗浄液は回収液槽に送られる。
【0057】
上記において、本発明洗浄液の使用態様として、半導体素子や液晶素子用の基板の洗浄、あるいは基板上に塗布したホトレジストの不要部分の除去、リワークのためのホトレジスト膜の除去、ホトレジストパターンの除去、等について説明したが、本発明の洗浄液はきわめて洗浄除去能力に優れるため、上述の使用態様のみならず、ホトレジスト供給装置の配管洗浄、ノズル洗浄、カップ内洗浄、など周辺機器に付着して固着したホトレジストの洗浄除去にも有効に利用することができる。
【0058】
ホトレジスト供給装置の配管洗浄の方法としては、例えば、ホトレジスト供給装置の配管内からホトレジスト塗布液を出し切って空にし、そこに本発明ホトリソグラフィ用洗浄液を流し込んで配管内に満たし、そのまま所定期間放置する。所定期間後、洗浄液を配管から排出しながら、若しくは排出した後、ホトレジスト塗布液を配管内に流し込んで軽く通液した後、基板上へのホトレジスト供給を開始する。本発明洗浄液は、種々のホトレジストに広く適用可能で相容性に優れ、また反応性もないことから、発熱やガス発生などがなく、配管内での分離・白濁等の液の性状異常もみられず、液中の異物増加がない、等の優れた効果がある。特に、長期間の使用により配管内にホトレジスト塗布液の残渣が付着していた場合であっても、本発明洗浄液によりこれら残渣が溶解され、パーティクル発生の要因を完全に除去することができる。またホトレジスト塗布液供給作業の再開にあたっては、洗浄液を排出しながら、若しくは排出した後、特に空流しを軽く行うだけで、ホトレジスト塗布液供給作業を開始することができる。
【0059】
このようにホトレジスト供給装置を洗浄した後、ホトレジスト塗布液を基板上に塗布する。
【0060】
またノズルの洗浄は、ホトレジスト供給装置のノズル部分に付着したホトレジスト残留物を洗浄・除去する他に、長時間ノズル先端を使用しない際のディスペンス液としても本発明ホトリソグラフィ用洗浄液に浸漬することによって行うことができる。ただしこの方法に限定されるものでない。
【0061】
これらホトレジスト供給装置の配管、ノズル、カップ内等の周辺機器に本発明ホトリソグラフィ用洗浄液に接触させた使用済み洗浄液には、ホトレジスト由来成分が溶解・残留する。これら使用済み洗浄液も、再利用のため、上記と同様に回収液槽へ送られる。
【0062】
回収液槽に送られた使用済み洗浄液(回収液)中には、ホトレジスト材料(樹脂等)や有機溶剤が残留する。この回収液を蒸留により分別することで、(a)成分を含む分留液、(b)成分を含む分留液を採取するが、該採取液中には、(a)成分、(b)成分に加え、ホトレジストに含まれていた有機溶剤と洗浄液に含まれていた(c)成分も留出分として含まれる。本発明では、該採取分留液全量中に、ホトレジストに含まれていた有機溶剤と洗浄液に含まれていた(c)成分との合計残留量が0.01質量%以上1質量%未満となるよう調整することで、該分留液を再生洗浄液として、簡易、安全、かつ安定に、再利用に供することができる。
【0063】
すなわち本発明は、ホトレジストに含まれる有機溶剤をあらかじめ洗浄液(第1回目洗浄液。当初洗浄液)中に(c)成分として特定の極微量配合しておいても、除去性能、パターン形成性能(プロフィル)は全く変わらないのみならず、洗浄液のリサイクル使用において、洗浄液の性能を損なうことなく、従来に比べ格段に向上した再生率でリサイクル液を得ることができることを見出したことによりなされたものである。
【0064】
本発明では、使用済み洗浄液中のホトレジスト由来成分中の有機溶剤と(c)成分との合計量を当初配合量と同量まで低減させたものを使用することで、第1回目洗浄液と同じ作用能力で繰り返し使用が可能となり、使い勝手が極めて良好となる。通常、第1回目洗浄液に有機溶剤(=(c)成分)が配合されていず、リサイクル液にホトレジスト由来成分中の有機溶剤が極微量残留したものを使用すると、液の作用動態が第1回目洗浄と第2回目(リサイクル)使用とでは変動する。半導体素子、液晶素子はナノメーター、マイクロメータを競う超微細な技術分野であるため、このようなことは製品の均一性に大きな影響を及ぼす。
【0065】
本願発明によれば、上記のような懸念はなく、循環使用を重ねても、常に同じ動態を示す洗浄液で極めて高率の回収率で資源再使用することができ、しかも従来のように0質量%とするには回収率がわずか30〜40%程度であったのに対し、リサイクル液として回収率を60〜85%、あるいはそれ以上に高めることができ、しかもホトレジスト除去能、パターンプロフィル形成能をなんら低下させることがない。
【0066】
本発明洗浄液が適用されるホトレジストは、i線仕様、KrF仕様、ArF仕様等の多種多様の各種ホトレジストが適用される。中でもネガ型およびポジ型ホトレジストを含めてアルカリ水溶液で現像可能なホトレジストに有利に使用できる。このようなホトレジストとしては、(i)アルカリ可溶性ノボラック樹脂とナフトキノンジアジド基含有化合物を含有するポジ型ホトレジスト、(ii)露光により酸を発生する化合物、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する化合物およびアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型ホトレジスト、(iii)露光により酸を発生する化合物、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する基を有するアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型ホトレジスト、および(iv)光により酸またはラジカルを発生する化合物、架橋剤およびアルカリ可溶性樹脂を含有するネガ型ホトレジスト等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
また、用いる基板についても特に限定されるものでなく、半導体用ウェーハ、液晶表示素子用ガラス基板、ホトマスク製造用基板等、任意に適用することができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0069】
なお、以下の実施例において、ホトリソグラフィ用洗浄液、ホトレジスト、反射防止膜は、特記しない限り、以下の組成のものを意味するものとする。
【0070】
〈ホトリソグラフィ用洗浄液〉
洗浄液A: 酢酸ブチル49.8質量部、シクロヘキノサン49.8質量部、およびホトレジストに用いられる有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)0.4質量部からなるホトリソグラフィ用洗浄液。
洗浄液B: 酢酸ブチル50質量部とシクロヘキノサンを50質量部からなるホトリソグラフィ用洗浄液。
洗浄液C: プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)70質量部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)30質量部からなるホトリソグラフィ用洗浄液。
洗浄液D: シクロヘキサノンからなるホトリソグラフィ用洗浄液。
洗浄液E: 乳酸エチルからなるホトリソグラフィ用洗浄液。
【0071】
〈ホトレジスト〉
i線ホトレジスト: i線用ポジ型ホトレジスト(「THMR−iP3650」;東京応化工業(株)製)。
KrFホトレジスト: KrF用ポジ型ホトレジスト(「TDUR−P015」;東京応化工業(株)製)。
ArFホトレジスト: ArF用ポジ型ホトレジスト(「TArF−P5071」;東京応化工業(株)製)。
Siホトレジスト: Si含有2層型ポジ型ホトレジスト(「TDUR−SC011」;東京応化工業(株)製)。
【0072】
〈反射防止膜〉
有機系反射防止膜組成物: 「ARC29」(Brewer社製)
【0073】
(実施例1: 洗浄液の洗浄力)
6インチのシリコンウェーハ表面上に、下記表1に示すホトレジストをスピンナー(「DNS D−SPIN」;大日本スクリーン製造(株)製)を用い、回転速度1500rpmで20秒間、スピンコートして塗布した後、100℃で90秒間ベークしてホトレジスト膜を形成した。
【0074】
次いでこのホトレジスト膜上に、下記表1に示す洗浄液を、上記スピンナーを用い、回転速度1500rpmで20秒間洗浄した後、3000rpm、10秒間スピンドライし、洗浄液による洗浄の前後でのホトレジストの膜厚を測定して評価した。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1の結果から明らかなように、従来の代表的な洗浄液C〜Eは、使用されるホトレジストの種類に対して、それぞれ特異的な溶解性を有する。しかし、本出願人によって従前に出願(特願2004−382130号明細書)された洗浄液Bはどのような種類のホトレジストに対しても一様に優れた溶解性を示す。また本発明に係る洗浄液Aは、洗浄液Bにあらかじめ微量の有機溶剤を配合したものであるが、どのような種類のホトレジストに対しても洗浄液Bと同等の溶解性を示すことが確認された。
【0077】
(実施例2: エッジバックリンス評価)
直径200mmのシリコンウェーハ上に、下記表2に示すホトレジスト、または反射防止膜組成物をスピンナー(「DNS D−SPIN」;大日本スクリーン製造(株)製)を用い、回転速度600rpm(3秒間)、続いて2500rpm(30秒間)でスピンコートして塗布した後、下記表2に示す洗浄液を、ウェーハ端縁から5mmの位置に配置したノズルから10mL/分(25℃)の割合で吹き付け、ホトレジスト膜端縁部を洗浄した後、9秒間スピンドライした。
【0078】
次いで、下記表2に示す条件でベークし、それぞれホトレジスト膜、あるいは反射防止膜を形成した。
【0079】
これについて、ウェーハの中心部〜縁辺部にかけての表面の状態とともに、ウェーハ端部の膜表面の状態、ウェーハべべル部(ウェーハ端部の表面〜側面にかけて傾斜面をもって面取りされた部分)の状態について、それぞれ目視で観察し、下記評価基準により評価した。結果を表2に示す。
【0080】
[ウェーハ端部表面の状態]
○: ウェーハ端部表面でのホトレジスト膜あるいは反射防止膜の表面、膜厚ともに均一で、良好であった
△: ウェーハ端部表面にホトレジスト膜あるいは反射防止膜が瘤状に隆盛する部分がわずかに認められたが、膜厚は中心部〜縁辺部にかけて均一で、実用上問題がないものであった
×: ウェーハ端部表面にホトレジスト膜あるいは反射防止膜が瘤状に隆盛し、かつ、ウェーハ中心部〜縁辺部にかけてスロープ状に膜が形成されていた
【0081】
[ウェーハべべル部の状態]
○: ウェーハべべル部に全く残留物はみられなかった
●: ウェーハべべル部にシミ状残渣がわずかにみられたが実用上問題はない程度であった
△: ウェーハべべル部にシミ状残渣がみられた
×: ウェーハべべル部に多量の残渣がみられた
【0082】
【表2】

【0083】
表2の結果から明らかなように、従来の代表的な洗浄液C〜Dの端面洗浄除去効果は使用されるホトレジストの種類によって差異があり、それぞれ使用可能な場合と使用不可能な場合がある。しかし本出願人によって従前に出願(特願2004−382130号明細書)された洗浄液Bは、どのような種類のホトレジストに対しても優れた端面不要部の除去に優れた効果を示す。また本発明に係る洗浄液Aは、洗浄液Bにあらかじめ微量の有機溶剤を配合したものであるが、どのような種類のホトレジストに対しても洗浄液Bと同等の除去溶解性を示すことが確認された。
【0084】
(実施例3: プレウェット評価)
有機系反射防止膜組成物「ARC29」(Brewer社製)をスピンナーを用いてシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの反射防止膜を形成した。
【0085】
そしてこの反射防止膜上に、上記洗浄液A、Cをノズルから回転滴下することでプレウェットした。
【0086】
次いで、このプレウェット後の反射防止膜上に、上記ArFホトレジストを塗布し、ホットプレート上で100℃にて60秒間プレベークして、乾燥させることにより、反射防止膜上に膜厚170nmのホトレジスト膜を形成した。
【0087】
次いで露光装置(「NSR−S306」;(株)ニコン製」)を用いて露光後、100℃、60秒間の条件でPEB処理し、続いて2.38質量%TMAH水溶液を用いて、23℃にて30秒間現像処理した。
【0088】
このようにして得た90nmのライン・アンド・スペースパターン(2:1)を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、洗浄液Aによる洗浄後のパターン形成も、洗浄液Cによる洗浄後のパターン形成と同様に、良好な形状のライン・アンド・スペースパターンが形成できた。
【0089】
(実施例4: ディフェクト)
実施例3において、ArFホトレジストを塗布後、プレベーク前、プレベーク後、露光後パターン形成した後、の各段階でのホトレジスト表面を表面欠陥装置により観察し、ディフェクト発生の有無について評価した。
【0090】
なお、コントロールとして、プレウェットを行わない以外は、実施例3と同様にしてホトレジストパターンを形成したものについて、同様に観察し、ディフェクト発生の有無について評価した。
【0091】
その結果、洗浄液A、Cによりプレウェット処理したものでは、いずれの段階においても、ディフェクトの発生がほとんどみられず、プレウェットを行わないものに比して発生の程度がより少なかった。
【0092】
(実施例5: 回収液の再生率)
実施例2において、エッジバックリンス評価を行った洗浄液Aの回収液を徐々に加熱し、分別蒸留した。なお、洗浄液Aを構成する溶剤成分の各沸点は、酢酸ブチル126℃、シクロヘキサノン156℃、PGMEA146℃である。上記回収液は、実施例2においてArFホトレジストに対して使用したものを用いた。該ArFホトレジストに含まれる有機溶剤はPGMEAであった。
【0093】
各分留段階において得られた分留液(留出液)の組成を表3に示す。表3中、最右欄の「PGMEA」は、各分留段階で得られた分留液中の、ArFホトレジスト由来のPGMEA残留分と、洗浄液Aに配合されていた(c)成分としてのPGMEAとの合計残留量を示す。
【0094】
【表3】

【0095】
表3において、回収液に対する分留液(留出液)の割合が85%を超えた部分については、有機溶剤以外の成分、すなわちホトレジスト樹脂成分等が混入しており、再生用として留出するのは不可能であった。
【0096】
表3の結果に示すように、第1〜17段階中、第1〜8段階と第11〜17段階で得られた留分の合計留分中、PGMEAの配合量が約0.95質量%であることから、本願発明では全17段階の分留中、2段階(=第9〜10段階)分留以外の、15段階分の留出液をリサイクル洗浄液としてそのまま再使用することができる。回収液全体に対する再生率は75%となる。
【0097】
これに対し、従来のようにPGMEAの含有量が0質量%の留出液のみをリサイクル用とする場合、第1〜6段階と第17段階の留出液しかリサイクル洗浄液とすることができない。回収液全体に対する再生率は35%である。
【0098】
すなわち本願発明により、従来に比べ再生率を格段に高めることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酢酸またはプロピオン酸の低級アルキルエステルの中から選ばれる少なくとも1種と、(b)炭素数5〜7の環状若しくは非環状ケトンの中から選ばれる少なくとも1種とを、(a)/(b)=4/6〜7/3(質量比)の割合で含有し、かつ、(c)ホトレジストに用いられる有機溶剤を0.01質量%以上1質量%未満の割合で含有するホトリソグラフィ用洗浄液。
【請求項2】
(a)成分が酢酸プロピル、酢酸ブチル、および酢酸ペンチルの中から選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載のホトリソグラフィ用洗浄液。
【請求項3】
(b)成分がシクロペンタノン、シクロヘキサノン、およびシクロヘプタノンの中から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2記載のホトリソグラフィ用洗浄液。
【請求項4】
(a)成分が酢酸ブチルであり、(b)成分がシクロヘキサノンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のホトリソグラフィ用洗浄液。
【請求項5】
(c)成分が、多価アルコール類およびその誘導体、ラクトン類、および、有機酸の低級アルキルエステル(ただし(a)成分を除く)の中から選ばれる1種または2種以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のホトリソグラフィ用洗浄液。
【請求項6】
(c)成分が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチロラクトン、および乳酸エチルの中から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のホトリソグラフィ用洗浄液。
【請求項7】
基板上にホトレジストを塗布した後の基板裏面部または縁部あるいはその両方に付着した不要のホトレジストの除去に用いる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のホトリソグラフィ用洗浄液。
【請求項8】
基板上にホトレジストを塗布・乾燥してホトレジスト膜を形成した後に、あるいは、前記ホトレジスト膜を選択的に露光・現像した後に、基板上に存するホトレジスト膜全体の除去に用いる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のホトリソグラフィ用洗浄液。
【請求項9】
ホトレジストを基板上に供給・塗布するホトレジスト供給装置の洗浄に用いる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のホトリソグラフィ用洗浄液。
【請求項10】
基板上へのホトレジストの塗布に先立ち、基板のプリウェットに用いる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のホトリソグラフィ用洗浄液。
【請求項11】
基板上にホトレジストを塗布した後、基板裏面部または縁部あるいはその両方に付着した不要のホトレジストを、請求項1〜6のいずれかに記載のホトリソグラフィ用洗浄液に接触させて除去する、基板の洗浄方法。
【請求項12】
基板上にホトレジストを塗布・乾燥してホトレジスト膜を形成した後に、あるいは、前記ホトレジスト膜を選択的に露光・現像した後に、基板上に存するホトレジスト膜全体を、請求項1〜6のいずれかに記載のホトリソグラフィ用洗浄液に接触させて除去する、基板の洗浄方法。
【請求項13】
ホトレジストを基板上に供給・塗布するホトレジスト供給装置に、請求項1〜6のいずれかに記載のホトリソグラフィ用洗浄液を接触させて、ホトレジスト供給装置に付着するホトレジスト由来の残留物を除去する、ホトレジスト供給装置の洗浄方法。
【請求項14】
基板上へのホトレジストの塗布に先立ち、請求項1〜6のいずれかに記載のホトリソグラフィ用洗浄液を基板に接触させる、基板のプリウェット方法。
【請求項15】
請求項11〜13のいずれかに記載の洗浄方法により除去されたホトレジストに由来する成分(ホトレジスト用有機溶剤を含む)が溶解残留する使用済みホトリソグラフィ用洗浄液を回収してなる回収液。
【請求項16】
請求項14記載のプリウェット方法を用いた使用済みホトリソグラフィ用洗浄液を回収してなる回収液。
【請求項17】
請求項15および/または16記載の回収液を蒸留分別して、(a)成分を含む分留液および(b)成分を含む分留液を採取し、これら採取した分留液中の前記ホトレジスト由来成分中の有機溶剤と(c)成分との合計残留量が0.01質量%以上1質量%未満となるように調整してなる循環使用のためのホトリソグラフィ用洗浄液。
【請求項18】
請求項17に記載の循環使用のためのホトリソグラフィ用洗浄液を、請求項7〜10のいずれかの用途に使用した後、該使用済みホトリソグラフィ用洗浄液を回収し、該回収液を蒸留分別して、(a)成分を含む分留液および(b)成分を含む分留液を採取し、これら採取した分留液中の前記ホトレジスト由来成分中の有機溶剤と(c)成分との合計残留量が、0.01質量%以上1質量%未満となるように調整してなる循環使用のためのホトリソグラフィ用洗浄液を得た後、該ホトリソグラフィ用洗浄液を、次の(I)〜(III)の一連の工程:(I)再び請求項7〜10のいずれかの用途に使用する工程、(II)前記使用済みホトリソグラフィ用洗浄液を回収する工程、(III)該回収された回収液を蒸留分別して、(a)成分を含む分留液および(b)成分を含む分留液を採取し、これら採取した分留液中の前記ホトレジスト由来成分中の有機溶剤と(c)成分との合計残留量が0.01質量%以上1質量%未満となるように調整して次の再使用のためのホトリソグラフィ用洗浄液を得る工程、を循環して行う、ホトリソグラフィ用洗浄液の循環使用方法。

【公開番号】特開2007−178589(P2007−178589A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375267(P2005−375267)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】